モロー博士の島
The Island of Doctor Moreau
- 出版年
- 1896年
- 作者
- H. G. ウェルズ
- 翻訳
- 開原 藍誠
- 概要
- 絶海に漂着した男が、動物を人間に作り変える狂気の実験を行うモロー博士の島に迷い込む。理性と本能がせめぎ合う「獣人」たちが住まう島で、男は人間性の本質を問う戦慄の体験をする。
H・G・ウェルズ著
序文
1887年2月1日、レディ・ヴェイン号は南緯1度、西経107度付近で漂流船と衝突し、沈没した。
1888年1月5日――すなわち、その11か月と4日後――カヤオでレディ・ヴェイン号に乗り込んだことが確実で、溺死したと考えられていた私の伯父、エドワード・プレンディックが、南緯5度3分、西経101度の地点で、甲板のない小舟に乗っているところを救助された。伯父は定職を持たず、私財で暮らす紳士だった。小舟の船名は判読できなかったが、行方不明のスクーナー[訳注:縦帆を主とする帆船]、イペカクアナ号のものと推定されている。救助された伯父はあまりにも奇妙な身の上話をしたため、正気を失っていると思われた。その後、伯父は、レディ・ヴェイン号から脱出した瞬間以降の記憶がまったくないと主張した。当時、心理学者の間では、肉体的・精神的な重圧によって記憶が失われた珍しい例として、この事例が論じられた。以下の手記は、伯父の甥であり相続人でもある私、末尾の署名者が、その遺稿の中から見つけたものだ。ただし、公表を求める明確な指示は添えられていなかった。
伯父が救助された海域に存在すると知られている島は、ノーブル島だけである。小さな火山島で、無人島だ。1891年にはHMSスコーピオン号がこの島に立ち寄っている。その際、水兵の一隊が上陸したが、妙な白い蛾と、豚とウサギ、それにいささか奇異なネズミのほかには、生き物を見つけなかった。したがって、この手記の最も肝要な点には裏づけがない。そのことを承知のうえでなら、伯父の意図にもかなうと私が信じるこの奇妙な物語を、世に問うても差し支えあるまい。少なくとも、次の事実はこの手記を支えている。伯父は南緯5度、東経105度付近で人々の消息から消え、11か月後、同じ海域に再び姿を現した。その間、何らかの方法で生き延びていたはずなのだ。また、どうやらイペカクアナ号というスクーナーが、酒浸りのジョン・デイヴィーズ船長に率いられ、ピューマとほかの動物を何頭か積んで、1887年1月にアフリカを出航したことも確からしい。その船は南太平洋のいくつかの港ではよく知られており、1887年12月、かなりの量のコプラ[訳注:ココナッツの果肉を乾燥させた、油の原料]を積んでバイナを出航し、その後、この海域から姿を消して、消息不明となった。この日付は、伯父の話と完全に一致する。
チャールズ・エドワード・プレンディック
モロー博士の島
(エドワード・プレンディックの手記)
第一章 「レディ・ヴェイン号」の小舟で
レディ・ヴェイン号の遭難について、すでに書かれていることに何かを付け加えるつもりはない。周知のとおり、カヤオを出航して10日目、同船は漂流船と衝突した。乗組員7人を乗せた大型救命艇は、その18日後、英国海軍の砲艦マートル号に救助され、彼らが味わった恐ろしい窮乏の物語は、それをはるかにしのぐ惨事となったメデューサ号事件[訳注:1816年、フランスの軍艦が座礁し、筏に取り残された人々の間で殺人や人肉食が起きた事件]と同じほど広く知られるようになった。だが私は、公表されたレディ・ヴェイン号の物語に、もう一つの物語を付け加えなければならない。同じくらい恐ろしく、はるかに奇妙な物語を。これまで、小舟に乗っていた4人は全員死んだと考えられていたが、それは誤りだ。この言明には何より確かな証拠がある。私自身が、その4人のうちの一人なのだから。
ただし最初に断っておかなければならない。小舟には、初めから4人など乗っていなかった。3人だったのだ。「船長が小艇へ飛び乗るところを目撃した」とされるコンスタンスは、私たちにとっては幸いにも、本人にとっては不幸にも、こちらへたどり着かなかった。折れた船首斜檣の支索の下で、もつれた綱の間から降りてきたのだが、手を離したときに細い綱がかかとに絡んだ。しばらく頭を下にぶら下がったのち、落下して、水面に浮いていた滑車か帆桁にぶつかった。私たちは舟を漕いで近づいたが、彼は二度と浮かび上がらなかった。
こちらに来なかったのは私たちにとって幸いだったと書いたが、本人にとっても幸いだったと言ってよいくらいだ。私たちの手元には、小さな容器一杯の水と、水浸しの船用ビスケットがいくらかあるだけだった。警報はあまりにも突然で、船は災難に対して何の備えもしていなかったのだ。大型艇の人々にはもっと食糧があるだろうと思い――実際にはそうでもなかったらしいが――呼びかけようとした。声は届かなかったのだろう。翌朝、霧雨が晴れたときには――それも正午を過ぎてからだったが――もう姿は見えなかった。舟がひどく揺れるので、立ち上がって辺りを見渡すこともできなかった。その時点まで私とともに逃げ延びていたのは、私と同じ乗客のヘルマーという男と、名も知らない水夫だった。水夫は背が低く、頑丈な体つきで、言葉につかえる癖があった。
私たちは飢えに苦しみ、水が尽きてからは耐えがたい渇きに責められながら、合わせて8日間漂流した。2日目を過ぎると、海は次第に静まり、ついには鏡のようになった。普通の読者があの8日間を想像するのは、およそ不可能だろう。幸いにも、想像の手がかりとなるような経験が、その記憶にはないのだから。初日を過ぎると私たちはほとんど口をきかず、舟のそれぞれの場所に横たわって水平線を見つめるか、日ごとに大きく落ちくぼんでいく目で、仲間が苦痛と衰弱にむしばまれていくさまを眺めていた。太陽は容赦を失った。4日目に水が尽き、そのころにはすでに、私たちは異様なことを考え、それを目で語り合っていた。だが、誰もが考えていたことをヘルマーが口に出したのは、たしか6日目だった。声は乾いてか細く、私たちは互いに身を寄せ、言葉を惜しんで話したことを覚えている。私は全力で反対した。むしろ舟に穴をあけ、あとをついてくるサメの群れの中で、一緒に死のうと思っていた。だがヘルマーが、自分の提案を受け入れれば飲み物も手に入ると言うと、水夫は彼の側についた。
それでも私はくじを引くのを拒んだ。その夜、水夫は何度もヘルマーに何かをささやいた。私は折り畳みナイフを握って船首に座っていたが、戦うだけの力が残っていたかどうかは疑わしい。朝になると、私はヘルマーの提案に同意し、私たちは半ペニー銅貨を出して、仲間外れになる者を決めた。くじは水夫に当たった。だが、私たちの中で最も力の強い水夫は結果を受け入れず、ヘルマーに素手で襲いかかった。二人は組み合い、ほとんど立ち上がりかけた。私は水夫の脚をつかんでヘルマーを助けようと、舟の中を這って近づいた。ところが水夫は舟の揺れに足を取られ、二人は船べりに倒れかかると、そのまま一緒に海へ転がり落ちた。石のように沈んだ。それを見て笑ったことを覚えている。そして、なぜ笑ったのかと不思議に思った。笑いは何か外から襲ってきたもののように、突然私をとらえた。
私はどれほどの間か、横木に腹を預けて横たわっていた。力さえあれば海水を飲み、狂気に陥って早く死ねるのに、と考えていた。そしてそうして横たわったまま、水平線の向こうから帆がこちらへ近づいてくるのを見た。絵でも眺めるように、何の関心もなく。意識はさまよっていたに違いないが、起こったことはすべて、実にはっきり覚えている。波につれて頭が揺れ、その上に帆の浮かぶ水平線が上下に踊ったことを覚えている。だが、それと同じくらい明瞭に、自分はもう死んでいると確信していたことも覚えている。ほんのわずか遅れたばかりに、肉体に宿っている私をつかまえ損ねるとは、何という笑い話だろう、と考えていたのだ。
果てしなく長い時間に思えたあいだ、私は横木に頭を載せて、海の向こうからスクーナーが現れるのを見ていた。小さな船で、前後に縦帆を張っていた。真向かいの風に逆らって進んでいたので、左右への針路変更を繰り返し、次第に大きく迂回してきた。注意を引こうなどという考えは、まったく浮かばなかった。船腹を見たあとのことは、船尾の小さな船室で気づくまで、はっきり覚えていない。乗船口へ引き上げられたことと、そばかすだらけの大きな丸顔が、赤毛に縁取られて、船べり越しに私を見下ろしていたことが、ぼんやりと記憶に残っている。異様な目をした黒い顔が、自分の顔のすぐそばにあったという、脈絡のない印象もある。だが、それには再び出会うまで、悪夢だと思っていた。歯の間から何かを流し込まれたような気もする。覚えているのは、それだけだ。
第二章 どこへも行かない男
私が気づいた船室は小さく、かなり散らかっていた。亜麻色の髪と、麦わら色の硬い口ひげを持ち、下唇の垂れた、まだ若い男が座って、私の手首を握っていた。一分ほど、私たちは何も言わずに見つめ合った。男の灰色の目は潤んでいて、妙に表情がなかった。そのとき、すぐ頭上から、鉄製の寝台を乱暴に動かすような物音と、大きな動物の怒った低いうなりが聞こえた。同時に男が口を開いた。そして同じ問いをもう一度繰り返した。「気分はどうだい?」
大丈夫だと答えたと思う。どうしてここに来たのか思い出せなかった。声が出なかったので、男は私の顔に浮かんだ疑問を読み取ったのだろう。
「舟で拾われたんだよ。飢え死に寸前だった。舟にはレディ・ヴェイン号と書いてあって、船べりに血のしみがあった。」
そのとき、目に入った自分の手は、ばらばらの骨を詰めた汚い革の財布のように痩せていた。舟で起こったことが、すべてよみがえった。
「これを少し飲みなさい」と男は言って、氷で冷やした緋色の液体を一服飲ませてくれた。
血のような味がして、少し力が戻った。
「運がよかったね」と男は言った。「医者の乗っている船に拾われて。」
男の発音は唾の絡むような調子で、かすかに舌足らずな響きがあった。
「これは何という船です?」
長く口をきかなかったせいで、私はかすれた声でゆっくり言った。
「アリカとカヤオから来た、小さな商船だ。もともとどこから来たのかは聞いたことがない――生まれつきの馬鹿の国から来たんだろう。僕もアリカで乗った客だよ。船主の大馬鹿は船長も兼ねていて、デイヴィーズというんだが、船長の免状を取り上げられたか何かしたらしい。どういう男か、わかるだろう。よりによって船をイペカクアナ号と名づけてる。何とも馬鹿げた、忌々しい名前さ。もっとも、風がないのに海が荒れると、確かに名前どおりの働きをするがね[訳注:イペカクアナは吐剤に用いる植物の名]。」
(そこで頭上の物音がまた始まった。牙をむくようなうなりと、人の声が一緒に聞こえた。続いて別の声が、どこかの「神にも見放された大馬鹿」に、やめろと言った。)
「君は死にかけてたんだ」と話し相手は言った。「本当に、危ないところだった。だが、もう薬を入れてある。腕が痛いだろう? 注射だよ。30時間近く意識がなかったんだ。」
私はゆっくり考えた。(今度は何頭もの犬の甲高い鳴き声に気をそらされた。)「固形物を食べても大丈夫ですか?」
私は尋ねた。
「僕のおかげでね」と男は言った。「ちょうど今、羊肉を煮ている。」
「ええ」と私は確信を込めて言った。「羊肉なら食べられそうです。」
「ただ」と男は一瞬ためらって言った。「どうしてあの舟に一人きりになったのか、聞きたくてたまらないんだ。ああ、あの鳴き声め!。」
その目に、どこか疑うような色がある気がした。
男は突然船室を出ていった。誰かと激しく言い争う声が聞こえたが、相手の返事は、私にはわけのわからない言葉に聞こえた。最後には殴り合いになったようにも聞こえたが、それは耳の間違いだと思った。それから男は犬を怒鳴りつけ、船室へ戻ってきた。
「それで?」と戸口で言った。「話してくれるところだったね。」
私はエドワード・プレンディックという名を告げ、経済的には何不自由のない暮らしの退屈を紛らわそうと、博物学を始めた経緯を話した。
それには興味を持ったようだった。「僕も科学を少しやったことがある。ユニバーシティ・カレッジで生物学を学んだんだ――ミミズの卵巣を取り出したり、カタツムリの歯舌[訳注:細かな歯が並ぶ、食物を削り取る器官]を調べたり、そういうことをね。いやはや、10年も前のことだ。だが続けてくれ、続けて。舟の話を聞かせてくれ。」
私の話の率直さに、男は明らかに納得した。ひどく衰弱していたので、私は短い言葉を連ねて語ったのだが、話が終わると、男はすぐに博物学と、自分が学んだ生物学の話へ戻った。トートナム・コート・ロードやゴーワー・ストリートについて、細かく尋ね始めた。「カプラッツィはまだ繁盛しているかい? あれはいい店だった!」
どうやら、ごくありふれた医学生だったらしく、話はたちまちミュージックホールへと流れていった。男はいくつかの思い出話を聞かせてくれた。
「何もかも捨てたんだ」と言った。「10年前にね。あのころは何もかも楽しかった! だが若気の至りで馬鹿をやって、21歳になる前に身を持ち崩した。今ではすっかり変わってるんだろうな。さて、あの馬鹿な料理人を見つけて、君の羊肉がどうなったか確かめてこよう。」
頭上でまたうなり声が上がった。あまりにも突然で、凶暴な怒りに満ちていたので、私はぎょっとした。「あれは何です?」
あとから呼びかけたが、もう扉は閉まっていた。男は煮た羊肉を持って戻ってきた。その食欲をそそる匂いに胸が躍り、私は気になっていた獣の物音を忘れてしまった。
眠っては食べる一日を過ごすと、寝台から舷窓まで歩き、船と競って走ろうとする緑の海を眺められるほどに回復した。スクーナーは追い風に乗っているようだった。私がそこに立っていると、モンゴメリー――亜麻色の髪の男はそういう名だった――がまた入ってきたので、着るものを頼んだ。舟で着ていた服は海へ捨てられてしまったため、モンゴメリーは自分の厚手の綿布の服を貸してくれた。大柄で手脚の長い男だったので、私には少しだぶついた。船長は自分の船室で、すっかり酔っぱらっていると、何気なく教えてくれた。服を着ながら、私は船の行き先について尋ね始めた。船はハワイへ向かっているが、その前に自分を降ろさなければならないという。
「どこで?」と私は尋ねた。
「僕の住んでいる島だ。知るかぎり、名前はない。」
モンゴメリーは下唇を垂らして私を見つめた。突然、わざと愚鈍な顔をしているように見えたので、質問を避けたいのだろうと察した。私は分別を働かせ、それ以上は尋ねなかった。
第三章 奇妙な顔
船室を出ると、昇降口に男がいて、道をふさいでいた。こちらに背を向けて梯子に立ち、甲板の開口部の縁越しにのぞいていた。見るからに体のゆがんだ男で、背が低く、幅が広く、動きが鈍そうだった。背中は曲がり、首には毛が生え、頭は両肩の間に埋まっていた。濃紺のサージの服を着ており、黒い髪は異様に濃く、粗かった。姿の見えない犬たちが激しくうなるのが聞こえた。すると男はいきなり身をかがめて後退し、私がぶつかられまいと差し出した手に触れた。獣のような素早さで振り向いた。
そうしていきなり目の前に現れた黒い顔は、何とも言い表せない仕方で、私に深い衝撃を与えた。異様にゆがんだ顔だった。顔面が前へ張り出し、どこか獣の鼻面を思わせた。半ば開いた大きな口には、人間の口で見たこともないほど大きな白い歯が並んでいた。目の縁は血走り、榛色の瞳の周りには、白目がほとんど見えなかった。顔には、興奮の奇妙な光が宿っていた。
「まったく!」とモンゴメリーは言った。「どうして道をあけないんだ?」
黒い顔の男は、無言でびくりと脇へよけた。私は本能的に男を見つめながら、昇降口を上がった。モンゴメリーはしばらく梯子の下にとどまった。「ここに来てはいけないと、わかっているだろう」と、言い聞かせるように言った。「おまえの場所は船首だ。」
黒い顔の男は縮こまった。「あいつらが――船首へ入れてくれない。」
ゆっくりした話し方で、その声には奇妙なしわがれた響きがあった。
「船首へ入れてくれないだと!」モンゴメリーは威嚇するように言った。「それでも行けと言っているんだ!」
さらに何か言いかけたが、突然私を見上げ、あとから梯子を上がってきた。
私は開口部から半ば体を出したところで立ち止まり、振り返っていた。黒い顔の生き物の、あの異様な醜さに、まだ呆然としていたのだ。あれほど不快で、異様な顔を見たことはなかった。それなのに――この矛盾を信じてもらえるなら――今まさに私を驚かせているその顔立ちと仕草に、どこかですでに出会っているという、奇妙な感覚も同時に覚えた。あとになって、船へ引き上げられたときに見たのだろうと思い当たった。だが、それでも以前から知っていたような気がする理由を、十分には説明できなかった。これほど特異な顔を一度見ていながら、いつ見たのかを忘れてしまうなど、私には考えられなかった。
モンゴメリーがあとから上がってくる動きに注意を解かれ、私は向き直って、小さなスクーナーの平らな甲板を見渡した。耳にした物音のおかげで、目の前の光景にはすでに半ば心の準備ができていた。だが、これほど汚い甲板は見たことがなかった。ニンジンの切れ端や青菜のくず、何とも言いようのない汚物が散らばっていた。主檣には恐ろしげな鹿猟犬が何頭も鎖でつながれており、私を見ると跳びはねて吠え始めた。後檣のそばでは、巨大なピューマが、向きを変える余地すらない小さな鉄の檻に押し込められていた。さらに右舷の船べりの下には、何羽ものウサギを入れた大きな飼育箱があり、船首ではラマが一頭、ただの箱同然の檻に詰め込まれていた。犬たちは革ひもの口輪をはめられていた。甲板にいる人間は、舵輪を握る、痩せて無口な水夫だけだった。
つぎはぎだらけの汚れた船尾の縦帆は、風を受けてぴんと張っていた。見上げると、小さな船は持っている帆をすべて揚げているようだった。空は晴れ、太陽は西の空の中ほどにあった。そよ風に白い泡をかぶせられた長い波が、船とともに走っていた。私たちは操舵手の前を通り、船尾の手すりまで行った。船尾の下で水が泡立ち、航跡の中で気泡が踊っては消えていくのを眺めた。私は振り返り、船の不潔な全景を見渡した。
「これは海の上の動物園ですか?」と私は言った。
「そう見えるね」とモンゴメリーは答えた。
「この獣たちは何のために? 売り物ですか、見世物ですか? 船長は南の海のどこかで売れると思っているんでしょうか?」
「そう見えるだろう?」とモンゴメリーは言い、また航跡へ顔を向けた。
突然、昇降口から悲鳴と激しい罵声が聞こえ、体のゆがんだ黒い顔の男が、慌てて上がってきた。そのすぐあとから、白い帽子をかぶった太った赤毛の男が現れた。それまでに私に吠え飽きていた鹿猟犬たちは、先の男を見るなり、狂ったように興奮し、吠えながら鎖を張って跳びはねた。黒い男は犬の前でためらった。そのため赤毛の男に追いつかれ、肩甲骨の間に猛烈な一撃を食らった。気の毒な男は、打ち倒された牛のように崩れ落ち、ひどく興奮した犬たちの間で、汚物の中を転がった。口輪があったのは幸いだった。赤毛の男は得意げな叫びを上げて、よろめきながら立っていた。私には、後ろ向きに昇降口へ転落するか、前へ倒れて被害者の上に落ちるか、どちらかになりそうな危なっかしさに見えた。
二人目の男が現れると同時に、モンゴメリーは前へ進み出ていた。「おい、よせ!」と、とがめるように叫んだ。船首楼に水夫が二人現れた。黒い顔の男は奇妙な声でわめきながら、犬の足元を転がっていた。誰も助けようとしなかった。犬たちは口輪をぶつけ、何とか男を痛めつけようとした。灰色のしなやかな体が、地面に倒れた不格好な体の上で、素早く入り乱れていた。船首の水夫たちは、愉快な見世物でも見るように叫んだ。モンゴメリーは怒りの声を上げ、大股で甲板を進んだ。私もあとに続いた。黒い顔の男は這うように立ち上がり、よろめきながら船首へ向かった。主檣の支索のそばで船べりにもたれ、そのまま息を切らし、肩越しに犬たちをにらみつけていた。赤毛の男は満足そうに笑った。
「いいですか、船長」とモンゴメリーは、いつもより少し舌足らずな口調で言い、赤毛の男の両肘をつかんだ。「こんなことは許せません!」
私はモンゴメリーの背後に立っていた。船長は半ば振り返り、酔っぱらい特有の、鈍くしかつめらしい目で相手を見た。「何が許せねえんだ?」と言い、しばらく眠そうにモンゴメリーの顔を眺めたあと、付け加えた。「このくそ医者め!」
突然腕を振りほどき、二度ほど失敗した末に、そばかすのある拳を脇のポケットへ突っ込んだ。
「あの男は乗客です」とモンゴメリーは言った。「手を出さないほうがいい。」
「地獄へ落ちろ!」と船長は大声で言った。急に向きを変え、船べりへよろめいていった。「自分の船で、何をしようと俺の勝手だ。」
相手が酔った乱暴者だと見れば、モンゴメリーもそこで引き下がってよさそうなものだった。だが、顔を一段と青白くしただけで、船長を追って船べりへ行った。
「よく聞いてください、船長」と言った。「私の連れを乱暴に扱わないでいただきたい。乗船したときから、ずっといじめられている。」
しばらく船長は、酒の気に口をふさがれていた。「このくそ医者め!」それだけ言えば十分だと思ったらしい。
モンゴメリーは、じわじわと執念深く怒りを募らせ、日を追って白熱に達すると、二度と冷めて許すことのない気性の持ち主なのだと、私にはわかった。また、この争いが以前からくすぶっていたことも見て取れた。「酔っているんですよ」と私は言った。余計なおせっかいだったかもしれない。「何を言っても無駄です。」
モンゴメリーは垂れた唇を険しくゆがめた。「いつだって酔っている。だから乗客を殴っていいと、君は言うのか?」
「俺の船は」と船長は言い始め、檻のほうへ不安定に手を振った。「きれいな船だった。今のざまを見ろ!」
確かに、きれいとは程遠かった。「船員だって」と船長は続けた。「きれいで、まともな船員だった。」
「獣を運ぶことには同意したでしょう。」
「おまえの忌々しい島なんぞ、見なきゃよかった。あんな島で――何だって獣がいるんだ? それに、あの連れの男だ――人間だと聞いてたぞ。あいつは気違いだ。それに船尾へ来る資格はねえ。このくそ船全部が、おまえのものだとでも思ってるのか?」
「あなたの水夫たちは、あの気の毒な男が乗ったとたん、いじめ始めたんです。」
「あいつはそのとおりの悪魔だ! 醜い悪魔だ! 俺の船員は我慢できねえ。俺だって我慢できねえ。誰一人、我慢できねえ。おまえだってそうだ!」
モンゴメリーは背を向けた。「ともかく、あなたはあの男に手を出さないでください」と、念を押すようにうなずきながら言った。
だが船長は、もう喧嘩をする気になっていた。声を張り上げた。「あいつがまた船のこっち側へ来たら、腹をえぐってやる。いいか。あのくそ腹をえぐってやるんだ! おまえはいったい何様だ、俺に、俺が何をするか指図しやがって? 俺はこの船の船長だ――船長で船主なんだ。ここじゃ俺が法律だ。いいか――律法も預言者も俺なんだ[訳注:聖書の表現を借り、自分が絶対的な権威だと主張している]。俺が引き受けたのは、男とその従者をアリカへ往復させ、動物を連れて戻ることだ。気違いの悪魔と、間抜けな医者と、そんな――を運ぶ約束はしてねえ。」
さて、船長がモンゴメリーを何と呼んだかは、書かずにおこう。モンゴメリーが一歩踏み出すのを見て、私は割って入った。「酔っているんです」と言った。船長はさらに汚い悪口を浴びせ始めた。「黙れ!」
私は鋭く船長へ向き直って言った。モンゴメリーの白い顔に危険なものを見たからだ。それで、罵声の豪雨は私のほうへ降ってきた。
それでも、船長の酔った悪意を買った代償に、寸前まで来ていた乱闘を避けられたのはよかった。風変わりな連中とは相当つき合ってきたが、人の口から、あれほど大量の下品な言葉が絶え間なく流れ出るのを、それまで聞いたことはなかったと思う。温厚な私でも、いくつかは耐えがたかった。だが確かに、船長へ「黙れ」と言ったとき、私は、自分がただの漂流物同然の人間であることを忘れていた。自分の財産から切り離され、運賃も払わず、この船の慈悲か、あるいは何らかの思惑に、たまたますがっているだけの身なのだ。船長はかなりの勢いで、その事実を思い知らせてくれた。だが、とにかく私は殴り合いを防いだ。
第四章 スクーナーの船べりで
その夜、日没後に陸地が見つかり、スクーナーは帆を調整して停船した。モンゴメリーは、あそこが自分の目的地だと告げた。遠すぎて細部は見えず、そのとき私には、ぼんやりした青灰色の海に浮かぶ、低い薄青色の染みとしか見えなかった。そこから煙が、ほとんど垂直に空へ上がっていた。陸地が見えたとき、船長は甲板にいなかった。私に怒りをぶつけたあと、よろめきながら船室へ下り、自分の部屋の床で眠り込んだらしい。実質的には一等航海士が指揮を執っていた。舵輪のところで見た、あの痩せた無口な男だ。どうやらモンゴメリーに腹を立てているらしかった。私たち二人をまったく相手にしなかった。夕食をともにした際、私は何度か話しかけたが、いずれも無駄に終わり、そのあとは不機嫌な沈黙の中で食べた。また、水夫たちが私の連れとその動物たちを、ひどく敵意のある目で見ていることにも気づいた。モンゴメリーは、動物をどうするつもりなのかも、行き先についても、ほとんど話さなかった。どちらにも好奇心が募っていくのを感じたが、私は問い詰めなかった。
空が星で埋まるまで、私たちは後甲板で話していた。黄色い明かりのともる船首楼から、ときどき物音が聞こえ、動物がたまに身じろぎするほかは、夜はとても静かだった。ピューマは檻の隅で黒い塊となってうずくまり、光る目で私たちを見ていた。モンゴメリーは葉巻を取り出した。半ば苦痛を伴う思い出に浸るような口調でロンドンを語り、何がどう変わったかと、さまざまなことを尋ねた。その話し方は、かつてそこでの暮らしを愛しながら、突然、取り返しのつかない形で切り離された人のものだった。私はあれこれ、できるかぎりの世間話をした。その間ずっと、この男の奇妙さが、頭の中で形を取り始めていた。話しながら、背後の羅針盤灯の薄明かりで、奇妙な青白い顔をのぞき込んだ。それから暗くなっていく海へ目を向けた。その暗がりの中に、彼の小さな島が隠れていた。
この男は、ただ私の命を救うために、無限の広がりから現れたように思えた。明日には船べりから降り、私の人生から再び消えてしまう。ごくありふれた事情であったとしても、少しはもの思いに誘われただろう。だが何より、教育を受けた人間が、この名もない小島に暮らしているという奇妙さがあった。そのうえ、荷物まで異常だった。私は船長と同じ問いを、心の中で繰り返していた。あの獣を何に使うのだろう? また、最初に私が動物のことを口にしたとき、なぜ自分のものではないふりをしたのだろう? さらに、その従者には、強く心に残る異様なところがあった。こうした事情が、この男を謎の霧で包んでいた。それは私の想像力をとらえ、舌を鈍らせた。
真夜中近く、ロンドンの話は途切れた。私たちは船べりに並んでもたれ、星明かりの下に静まった海を夢見るように眺めながら、それぞれの思いにふけった。感傷に誘われる雰囲気だったので、私は感謝の言葉を切り出した。
「言わせていただけるなら」と、しばらくして私は言った。「あなたは私の命を救ってくれました。」
「偶然だよ」と答えた。「ただの偶然だ。」
「私は、その偶然を実際に働かせてくれた方に、お礼を言いたいんです。」
「誰にも礼など言うことはない。君には助けが必要で、僕には知識があった。標本を採集するのと大差なく、注射をして、食べ物を与えたんだ。退屈していて、何かやることが欲しかった。あの日くたびれていたり、君の顔が気に入らなかったりしたら――さて、今ごろ君がどこにいたか、面白い問題だね!」
その言葉で、私の気分は少し冷えた。「それでも」と言いかけた。
「偶然だと言ってるだろう」とモンゴメリーは遮った。「人の一生は、何もかもそうなんだ。馬鹿だけがそれを認めない! なぜ僕は、ロンドンのあらゆる楽しみを満喫する幸せな男ではなく、文明から追放されて、今ここにいる? ただ、11年前――霧の深い夜に、10分ほど我を忘れたからさ。」
そこで口を閉ざした。「それで?」と私は言った。
「それだけだ。」
私たちはまた黙った。やがてモンゴメリーは笑った。「この星明かりには、口を軽くさせる何かがあるな。僕は馬鹿だが、どういうわけか君に話したくなってしまう。」
「何を話してくださっても、私だけの胸にしまっておきます。それがご心配なら。」
話し始めかけたが、ためらうように首を振った。
「話さなくていいですよ」と私は言った。「私には、どちらでもいいことです。結局、秘密は守っておくほうがいい。私が信頼に応えたところで、少し気が楽になるだけです。もし応えなかったら――どうなります?」
モンゴメリーは決めかねたように、低くうなった。私は、相手の不利につけ込み、うっかり話しそうになっているところをとらえたような気がした。正直に言えば、若い医学生が何のためにロンドンを追われたのか、知りたいとも思っていなかった。私にも想像力はある。私は肩をすくめて背を向けた。船尾の手すりに、黒い人影が無言でもたれ、星を見ていた。モンゴメリーの奇妙な従者だった。私が動くと、素早く肩越しにこちらを見て、また目をそらした。
読者には、ささいなことに思えるかもしれない。だが私には、突然殴られたような衝撃だった。近くにある明かりは、舵輪のところのランタンだけだった。その生き物はほんの一瞬、船尾の薄闇から、その光へ顔を向けた。私をちらりと見た目が、淡い緑色に輝くのを見た。そのころの私は、少なくとも赤みがかった反射光なら、人間の目にも珍しくないことを知らなかった。私には、それがむき出しの非人間性として迫ってきた。火のような目をした黒い人影は、成人した私の思考や感情の奥深くを突き刺し、忘れていた幼少時の恐怖を、一瞬よみがえらせた。だが、その作用は現れたときと同じように消えた。星明かりを背に、船尾の手すりにもたれているのは、不格好な黒い男の姿にすぎず、特別な意味は何もなかった。そしてモンゴメリーが、私に話しかけているのに気づいた。
「そろそろ寝ようと思うんだ」と言った。「君ももう十分ならね。」
私はちぐはぐな返事をした。二人で下へ降りると、モンゴメリーは私の船室の戸口で、おやすみと言った。
その夜は、ひどく不愉快な夢を見た。欠けかけた月が遅く昇った。その光は船室を幽霊のような白い筋となって横切り、寝台の脇の板床に不吉な形を描いた。やがて鹿猟犬たちが目を覚まし、遠吠えや吠え声を上げ始めた。そのため途切れ途切れに夢を見て、夜明け近くまで、ほとんど眠れなかった。
第五章 行き場のない男
早朝――意識を取り戻してから二度目の朝で、救助されてからは四度目だったと思う――私は、銃声と怒号を上げる群衆の、騒然とした夢の連なりを抜けて目を覚まし、頭上のしわがれた叫び声に気づいた。目をこすり、しばらく自分がどこにいるのかわからぬまま、横になって物音を聞いていた。すると突然、裸足の足音がぱたぱたと響き、重い物を投げ動かす音、激しいきしみ、鎖のがらがらいう音が聞こえた。船が急に向きを変え、水を切る音がした。黄緑色の泡立った波が小さな丸窓を横切り、窓には水が流れ残った。私は急いで服を着て、甲板へ上がった。
梯子を上がると、赤く染まった空――ちょうど日の出だった――を背に、船長の広い背中と赤毛が見えた。その肩越しには、後檣の帆のブームに取りつけた滑車から、ピューマの檻が吊られ、くるくる回っていた。
気の毒な獣はひどくおびえ、小さな檻の底にうずくまっていた。
「海へ放り出せ!」と船長はわめいた。「海へ放り出せ! あの連中を一匹残らず片づけりゃ、船もじきにきれいになる!」
船長が道をふさいでいたので、甲板へ出るには肩をたたくしかなかった。びくりとして振り返り、数歩よろめいて後退すると、私をまじまじと見た。まだ酔っていることは、誰の目にも明らかだった。
「よう!」と間の抜けた声で言い、それから目に光を浮かべた。「おや、あんたは、ええと――何さんだった?」
「プレンディックです」と私は言った。
「プレンディックなんぞ、くそくらえだ!」と言った。「黙れ――あんたの名前はそれだ。黙れさんだ。」
この乱暴者に返事をしても無駄だった。だが、次の行動はまったく予想していなかった。船長は乗船口へ手を差し伸べた。そこではモンゴメリーが、汚れた青いフランネルを着た、大柄な白髪の男と話していた。どうやら、今しがた乗り込んできたらしかった。
「あっちだ、このくそ黙れさん! あっちだ!」と船長は怒鳴った。
その声で、モンゴメリーと連れの男が振り向いた。
「どういうことです?」
私は言った。
「あっちだ、このくそ黙れさん――そういうことだ! 船を降りろ、黙れさん――さっさとな! 船を掃除してるんだ――このいまいましい船を丸ごと掃除してるんだ。あんたも海へ出ていけ!」
私は呆然として船長を見つめた。だが、これはまさに自分の望んでいたことだと思い当たった。この喧嘩好きな酔っぱらいと、ただ一人の乗客として旅を続けずにすむなら、嘆くことはない。私はモンゴメリーへ向き直った。
「あなたは引き取れん」と、その連れが短く言った。
「引き取れないですって!」私は愕然として言った。これほど四角く、断固とした顔は、見たことがなかった。
「ちょっと待ってください」と私は言い、船長へ向き直った。
「海へ出ろ!」と船長は言った。「もうこの船は、獣や人食いや、獣より悪い連中のための船じゃねえ。海へ出るんだ、黙れさん。あいつらが引き取れねえなら、海へ出ろ。とにかく出ていくんだ――お仲間と一緒にな。こんな島とは永久におさらばだ、アーメン! もううんざりなんだよ。」
「でも、モンゴメリー」と私はすがった。
モンゴメリーは下唇をゆがめ、隣の白髪の男へ絶望的にうなずいて、自分にはどうにもできないことを示した。
「あんたは、あとで片づけてやる」と船長は言った。
そこから、奇妙な三つどもえの口論が始まった。私は三人の一人一人に、交互に訴えた。まず白髪の男に上陸させてくれと頼み、次には酔った船長に船へ残してくれと頼んだ。水夫たちに向かって、声を張り上げて懇願もした。モンゴメリーは一言も言わず、ただ首を振るだけだった。「海へ出すと言ってるんだ」が船長の決まり文句だった。「法律なんぞ、くそくらえだ! ここじゃ俺が王様だ。」
ついに私は、激しく脅しつけている途中で、突然声を詰まらせてしまったことを認めなければならない。ヒステリックないらだちがどっと込み上げ、私は船尾へ行って、何を見るでもなく、惨めな気持ちで目を据えた。
その間、水夫たちは荷物や動物の檻を、手早く船から降ろしていた。スクーナーの風下には、二枚のラグスル[訳注:斜めに吊った帆桁に張る四角い縦帆]を揚げた大型艇が浮かび、その中へ奇妙な取り合わせの荷が吊り降ろされた。その時点では、荷を受け取る島の者たちは見えなかった。艇の船体がスクーナーの舷側に隠れていたからだ。モンゴメリーもその連れも私をまったく顧みず、荷を降ろす4、5人の水夫を手伝ったり、指図したりするのに忙しかった。船長は船首へ行ったが、手伝うより邪魔をしていた。私は絶望と、捨て鉢な気分の間を揺れ動いていた。そこで成り行きを待ちながら、一度か二度、自分の惨めな窮地がおかしくなり、笑いたい衝動を抑えられなかった。朝食を食べていないことが、惨めさをいっそう増した。飢えと血球の不足は、人からあらゆる気力を奪う。船長が追い出すために何をしようと、それに抵抗する体力も、モンゴメリーとその連れに無理やりついていく体力もないと、かなりはっきりわかっていた。だから私は、なすすべもなく運命を待った。モンゴメリーの持ち物を艇へ移す作業は、私などいないかのように続いていた。
やがて作業は終わり、揉み合いが始まった。私は弱々しく抵抗しながら、乗船口まで引きずられた。そのときでさえ、艇でモンゴメリーと一緒にいる男たちの、褐色の顔の異様さに気づいた。だが艇はすでに満載で、急いで船から押し離された。足元に緑の水の隙間が広がり、私は頭から落ちないよう、全力で後ろへ踏ん張った。艇の男たちは嘲るように叫び、モンゴメリーが彼らを罵るのが聞こえた。それから船長と一等航海士、それを手伝う水夫の一人が、私を船尾へ引き立てた。
レディ・ヴェイン号の小舟は、船の後ろに曳かれていた。半分ほど水がたまり、オールもなく、食糧もまったくなかった。私は乗るのを拒み、甲板に大の字に身を投げ出した。結局、船尾に梯子がなかったので、連中は綱で私を吊って小舟へ降ろし、それから綱を切って漂流させた。私はゆっくりスクーナーから離れていった。半ば放心して、全員が索具へ取りつくのを見ていた。船はゆっくり、しかし確実に風へ向きを変えた。帆がはためき、やがて風をはらんで膨らんだ。こちらへ大きく傾く、風雨にさらされた船腹を見つめているうち、船は視界の外へ出ていった。
私は頭を動かして追おうとはしなかった。初めは、何が起きたのか、ほとんど信じられなかった。小舟の底にうずくまり、茫然として、油を流したような、何もない海をぼんやり見ていた。やがて、半ば水に沈みかけた、自分だけのあの小さな地獄へ戻されたのだと悟った。船べり越しに振り返ると、スクーナーが遠ざかり、赤毛の船長が船尾の手すり越しに私を嘲っていた。島へ目を向けると、艇は浜へ近づきながら小さくなっていた。
突然、この置き去りの残酷さが身にしみた。偶然流れ着かないかぎり、陸へたどり着く方法はなかった。思い出していただきたい。私は舟で苦しんだため、まだ衰弱していた。腹は空っぽで、ひどく力が抜けていた。そうでなければ、もう少し気を強く持てただろう。だが実際の私は、幼いころ以来なかったほど、突然すすり泣き、泣きじゃくり始めた。涙が頬を伝った。絶望に駆られ、舟底の水を拳でたたき、船べりを激しく蹴った。どうか死なせてくださいと、声に出して神に祈った。
第六章 人相の悪い舟の男たち
だが島の者たちは、本当に私が漂流させられたと見ると、哀れに思った。私はごくゆっくり東へ流れ、斜めに島へ近づいていた。やがて艇が向きを変え、こちらへ戻ってくるのを見て、狂乱に近い安堵を覚えた。艇は重い荷を積んでいた。近づいてくると、モンゴメリーの白髪で肩幅の広い連れが、船尾の座席で、犬といくつもの荷箱の間に窮屈そうに座っているのがわかった。その男は、動きも話しもせず、じっと私を見つめていた。船首では、体のゆがんだ黒い顔の男が、ピューマのそばで同じように私をにらんでいた。ほかに3人の男がいた。奇妙な、獣じみた顔つきの連中で、鹿猟犬たちは彼らに向かって激しくうなっていた。舵を取っていたモンゴメリーは艇を私のそばへ寄せ、立ち上がると、小舟の舫い綱をつかんで舵柄へ結びつけ、曳いていくことにした。艇には乗せる余地がなかったのだ。
そのころには、私はヒステリーから立ち直っていた。近づいてくるモンゴメリーの呼びかけにも、かなり気丈に応じた。小舟が水浸しで沈みかけていると言うと、手桶を渡してくれた。二艘の間の綱が張り、私は後ろへぐいと引かれた。しばらくは、水を汲み出すのに忙しかった。
水をどうにか汲み出してから――小舟の水は波をかぶって入ったもので、舟そのものには何の損傷もなかった――ようやく艇の人々をもう一度眺める余裕ができた。
白髪の男はまだじっと私を見ていたが、今度は、その表情にいくらか困惑があるように思えた。目が合うと、膝の間に座る鹿猟犬へ視線を落とした。すでに述べたように、がっしりした体格で、立派な額と、いささか重々しい顔立ちの男だった。だが、まぶたの上の皮膚には、年を取るとよく現れる独特なたるみがあり、厚い唇の両端が下がって、喧嘩腰の決意を感じさせた。私には聞き取れない低い声で、モンゴメリーと話していた。
私はその男から、従う3人へ目を移した。奇妙な一団だった。顔しか見えなかったが、その顔には、何だかわからない何かがあり、妙な嫌悪が発作のように込み上げた。じっと見ていても、その印象は消えず、何が原因なのかはわからなかった。そのときは褐色の肌の男たちに見えた。だが手脚は、指先や足先まで、薄く汚れた白い布で奇妙に包まれていた。これほど全身をくるんだ男は見たことがなく、女でも東方でしか見たことがなかった。ターバンも巻いていて、その下から、下顎の突き出た、目の輝く小鬼のような顔で私を見ていた。黒い髪は、ほとんど馬の毛のように長くまっすぐだった。座っている姿からすると、私が見たどの人種よりも背が高そうだった。白髪の男は優に6フィートあるとわかっていたが、座高は3人の誰よりも頭一つ低かった。あとで知ったところでは、実際には誰も私より背が高くなかった。ただ胴が異常に長く、太腿が短いうえに奇妙にねじれていたのだ。いずれにしても、驚くほど醜い一団だった。その頭越しに、前のラグスルの下から、暗闇で目の光るあの男の黒い顔がのぞいていた。私が見つめると、彼らも目を合わせた。それから一人、また一人と、私の正面からの視線を避け、奇妙な盗み見る目つきでこちらをうかがった。自分が彼らを不快にさせているのかもしれないと思い、私は近づきつつある島へ目を向けた。
低い島で、濃い植物に覆われていた。大部分は、私の知らない種類のヤシだった。一か所から、白い糸のような蒸気が斜めに非常な高さまで昇り、先で羽毛のようにほぐれていた。私たちは今、両側を低い岬に囲まれた広い湾の中へ入っていた。浜はくすんだ灰色の砂で、海面から60か70フィートほどの高さの尾根まで、急な斜面となって上がっていた。木や下草が不規則に生えていた。その斜面の中ほどに、灰色がかった石で囲んだ四角い敷地があった。あとで知ったところでは、石の一部はサンゴ、一部は軽石質の溶岩だった。囲いの中から、茅葺きの屋根が二つのぞいていた。水際には、男が一人立って待っていた。まだ遠くにいるうち、斜面の茂みへ、ほかにもひどく異様な生き物が何匹か駆け込むのを見た気がした。だが近づくと、その姿はどこにもなかった。待っていた男は中背で、黒い、黒人に似た顔をしていた。唇がほとんどない大きな口、異常に長い腕、細長い足、湾曲した脚を持ち、重々しい顔を突き出して、こちらを見つめていた。モンゴメリーや白髪の連れと同じように、青いサージの上着とズボンを着ていた。さらに近づくと、その男は浜を行ったり来たり走り始め、このうえなく奇怪な動きをした。
モンゴメリーが一声命じると、艇の4人は跳ね起き、異様にぎこちない仕草で帆を下ろした。モンゴメリーは舵を切り、浜に掘られた狭い小さな船着き場へ艇を入れた。すると浜の男が急いで近づいてきた。船着き場と呼んだが、実際にはただの溝で、その潮位では、大型艇がようやく収まる長さしかなかった。船首が砂に乗り上げる音が聞こえた。私は手桶で小舟を大型艇の舵から押し離し、舫い綱をほどいて上陸した。布に包まれた3人は、このうえなく不器用な動きで砂の上へ這い出し、浜の男の手を借りて、すぐに荷を降ろし始めた。私がとりわけ気になったのは、布や帯で巻かれた3人の舟の男たちの、奇妙な脚の動きだった。硬直しているのではなく、何とも奇妙にゆがんでいた。まるで関節が違う場所についているようだった。犬たちはまだうなり、白髪の男に連れられて上陸すると、鎖を張って彼らを追おうとした。3人の大男は奇妙な喉声で話し合った。船尾近くに積まれた包みに手をかけると、浜で待っていた男が興奮してまくしたて始めた。私には外国語のように思えた。どこかでこんな声を聞いたことがあるのに、どこだったか思い出せなかった。白髪の男は、騒ぐ6頭の犬を押さえながら立ち、その騒音に負けじと命令を怒鳴っていた。モンゴメリーも舵を外して上陸し、皆で荷揚げに取りかかった。私は長く何も食べておらず、むき出しの頭に太陽が照りつけて、あまりにも気が遠くなっていたので、手伝いを申し出ることもできなかった。
やがて白髪の男は私の存在を思い出したように、近づいてきた。
「どうも」と言った。「朝食をほとんど食べていないようだね。」
重い眉の下で、小さな目が鮮やかな黒さを見せていた。「それは詫びなければならん。今はわれわれの客なのだから、快適に過ごしてもらわなくては――招いたわけではないがね。」
鋭く私の顔を見た。「モンゴメリーによれば、あなたは教育を受けた方だそうだ、プレンディックさん。科学にも多少心得があるという。具体的には、どういうことかな?」
私は王立科学大学で数年学び、ハクスリーのもとで生物学の研究をいくらか行ったと答えた。男はそれを聞いて、わずかに眉を上げた。
「それなら、少し事情が変わるな、プレンディックさん」と、幾分敬意を増した態度で言った。「実は、ここにいるわれわれも生物学者なのだ。ここは生物学の研究所だ――ある種のね。」
男の目は、ピューマをころに載せ、石壁で囲まれた庭へ懸命に運ぶ、白い服の男たちへ向いた。「少なくとも、私とモンゴメリーは」と付け加えた。それから、「いつ出ていけるかは、何とも言えん。ここは、どこへ向かう航路からも外れている。船を見かけるのは、1年に一度くらいだ。」
男は唐突に私を離れ、一団の脇を通って浜を上がり、おそらく囲いの中へ入った。残る二人の男は、モンゴメリーとともに、車輪の低い台車へ小さな荷物を積み上げていた。ラマはまだウサギの飼育箱と一緒に艇に残り、鹿猟犬たちもまだ座板につながれていた。荷を積み終えると、3人はそろって台車をつかみ、その上の1トンほどの荷を、ピューマのあとから押していった。やがてモンゴメリーは二人を離れ、私のところへ戻ると手を差し出した。
「僕としては」と言った。「君が来てくれてうれしいよ。あの船長は大馬鹿だ。君もずいぶん苦労させられただろう。」
「またあなたに」と私は言った。「救ってもらいました。」
「どうだろうね。この島は、とんでもなく妙な場所だとわかるよ、請け合う。僕が君なら、行動には十分気をつける。あの人は――」モンゴメリーはためらい、口にしかけたことを変えたようだった。「このウサギを手伝ってくれないか」と言った。
ウサギの扱いは奇妙だった。私はモンゴメリーと一緒に水へ入り、飼育箱を一つ、岸へ運ぶのを手伝った。それが済むやいなや、扉を開け、箱の片端を持ち上げて、中の生き物を地面へ出した。ウサギたちは、互いに重なり合い、もがく塊となって落ちた。モンゴメリーが手をたたくと、たちまち、ウサギ特有の跳ねる走り方で浜を上っていった。15羽か20羽ほどいたと思う。
「生めよ、増えよ、わが友よ」とモンゴメリーは言った。「島を満たせ。これまでは、ここは少々肉が足りなかったんだ。」
その姿が消えていくのを眺めていると、白髪の男が、ブランデーの小瓶とビスケットを持って戻ってきた。「当座の腹の足しだ、プレンディック」と、先ほどよりずっと親しげな口調で言った。私は遠慮せず、すぐにビスケットを食べ始めた。その間、白髪の男はモンゴメリーを手伝い、さらに20羽ほどのウサギを放した。ただし、大きな飼育箱3つは、ピューマと一緒に家へ運ばれた。私は生まれてこのかた酒を飲まないので、ブランデーには手をつけなかった。
第七章 錠のかかった扉
読者にはおそらく理解していただけると思うが、当初、周囲のすべてがあまりにも奇妙で、今の境遇もあまりに思いがけない冒険の結果だったので、どれがどれほど奇妙なのか、私は区別できなかった。ラマのあとから浜を上がっていくと、モンゴメリーが追いつき、石の囲いの中へ入らないでくれと言った。そのとき、檻に入ったピューマと積み上げられた荷が、四角い囲いの入口の外へ置かれていることに気づいた。
振り返ると、艇はもう荷を降ろし終え、いったん沖へ出されてから、浜へ引き上げられていた。白髪の男がこちらへ歩いてきた。モンゴメリーに話しかけた。
「さて、招かれざる客の問題だ。この人をどうする?」
「科学の心得はあります」とモンゴメリーは言った。
「私は早く仕事に戻りたくて、うずうずしている――この新しい材料でな」と白髪の男は言い、囲いのほうへ顎を向けた。目がいっそう輝いた。
「そうでしょうね」とモンゴメリーは、少しも愛想のない口調で言った。
「向こうへ送るわけにはいかんし、新しい小屋を建てる時間もない。もちろん、まだ内情を明かすわけにもいかん。」
「お任せします」と私は言った。「向こう」が何を指すのか、見当もつかなかった。
「僕も同じことを考えていました」とモンゴメリーは答えた。「外へ出る扉のある、僕の部屋なら――」
「それだ」と年長の男は即座に言い、モンゴメリーを見た。私たちは3人で囲いへ向かった。「謎めかせて申し訳ない、プレンディックさん。だが、あなたは招かれて来たわけではないことを、思い出してもらいたい。ここには、一つ二つ秘密がある。いわば青ひげの部屋[訳注:童話で、青ひげが妻に入室を禁じた、殺された妻たちの遺体がある部屋]のようなものだ。正気の人間にとっては、実際、ひどく恐ろしいものでもない。ただ今は、あなたのことがわからんので――」
「もちろんです」と私は言った。「信用していただけないからと気を悪くするほど、愚かではありません。」
男は厚い唇をゆがめ、かすかな笑みを浮かべた。口の両端を下げて笑う、陰鬱な人間の一人だった。そして私の従順さに謝意を示すように、頭を下げた。私たちは囲いの正面入口を通り過ぎた。鉄枠をはめた重い木の門で、錠がかかり、その外には艇から運んだ荷が積んであった。角へ来ると、これまで気づかなかった小さな戸口があった。白髪の男は、脂じみた青い上着のポケットから鍵束を取り出し、扉を開けて入った。鍵を持ち歩くことや、まだ自分の目が届く場所なのに厳重に施錠していることが、奇妙に感じられた。あとに続くと、小さな部屋だった。質素だが、不快というほどでもない家具が置かれていた。内側の扉は少し開いており、石を敷いた中庭へ通じていた。モンゴメリーはその扉をすぐ閉めた。部屋の暗い隅にはハンモックが吊られ、ガラスのない小窓には鉄棒がはまり、その向こうに海が見えた。
白髪の男は、ここを私の部屋にすると言った。そして内側の扉は、「不測の事態を避けるため」、向こう側から錠をかけるので、それより内へは入らないようにと言った。窓の前の便利なデッキチェアと、ハンモック近くの棚に並ぶ古い本を示してくれた。本は主に外科の書物と、ラテン語やギリシャ語の古典だった。どちらの言語も、私には楽に読めない。男は内側の扉を再び開けるのを避けるように、外へ通じる扉から出ていった。
「普段、食事はここで取るんだ」とモンゴメリーは言い、それから迷うように、もう一人のあとを追って外へ出た。「モロー!」
そう呼ぶのが聞こえたが、その瞬間は気にとめなかったと思う。だが棚の本を手に取っているうちに、意識に浮かんできた。モローという名を、以前どこで聞いたのだろう? 私は窓の前に座り、残っていたビスケットを取り出して、大いに食欲を発揮した。モロー!
窓から、あの不可解な白い服の男の一人が、浜で荷箱を引きずっているのが見えた。やがて窓枠に隠れた。それから背後で、鍵が差し込まれ、錠が回る音が聞こえた。しばらくすると、錠のかかった扉の向こうから、浜から連れてこられた鹿猟犬たちの物音が聞こえた。吠えているのではなく、奇妙に鼻を鳴らし、うなっていた。せわしない足音と、それをなだめるモンゴメリーの声が聞こえた。
この場所の中身について二人が厳重に秘密を守っていることは、私に強い印象を与えた。しばらくは、そのことと、モローという名の不可解な懐かしさを考えていた。だが人の記憶は奇妙なもので、そのときは、このよく知られた名を、正しい出来事に結びつけて思い出せなかった。そこから考えは、浜にいた体のゆがんだ男の、何とも言えない奇妙さへ移った。箱を引くときの、あんな歩き方、あんな奇妙な動きは、見たことがなかった。男たちは誰も私に話しかけなかった。ほとんどは、どこかの時点で私を見ていたが、その目つきは妙にこそこそしていて、文明を知らない人間の率直な凝視とはまるで違った。皆、ひどく無口に見え、話すときには、実に不気味な声を出した。何がおかしいのだろう? それから、モンゴメリーの不格好な従者の目を思い出した。
ちょうどその男のことを考えていると、本人が入ってきた。今は白い服を着て、コーヒーとゆでた野菜を載せた小さな盆を持っていた。愛想よく身をかがめ、目の前の卓上へ盆を置いたとき、私は震えて身を引くのを、ほとんど抑えられなかった。すると驚きで体が動かなくなった。筋のように垂れる黒髪の下に、耳が見えたのだ。突然、顔のすぐそばへ飛び込んできた。その男の耳はとがり、細かな褐色の毛に覆われていた!
「朝ごはんです、だんなさま」と男は言った。
私は答えようともせず、その顔を見つめた。男は振り返って扉へ向かい、肩越しに奇妙な目でこちらを見た。私は目でその姿を追った。すると、無意識の思考の奇妙な働きによって、「モローの空洞」――だったか? ――「モローの――」という言葉が、頭へ押し寄せてきた。ああ! 記憶は10年前へ飛んだ。「モローの恐怖」だ!
その言葉はしばらく心の中を漂った。それから、薄い黄褐色の小冊子の表紙に、赤い文字で書かれていたのが見えた。読むと身震いし、ぞっとする冊子だった。そこで私は、すべてをはっきり思い出した。長く忘れていた小冊子が、驚くほど鮮やかによみがえった。当時、私はほんの若者で、モローはおそらく50歳くらいだった。著名で、強い自信を持つ生理学者であり、並外れた想像力と、議論の際の容赦ない率直さによって、科学界によく知られていた。
あのモローと同じ人物なのだろうか? 彼は輸血に関して、実に驚くべき事実をいくつか発表していた。また、病的な組織の増殖について、価値ある研究を進めていることでも知られていた。ところが突然、その経歴は断たれた。イングランドを去らねばならなくなったのだ。新聞記者が、扇情的な暴露を行う明確な意図を持って、実験助手として研究室へ入り込んだ。そして、衝撃的な事故――本当に事故だったならだが――の助けを得て、その残酷な小冊子は広く知られるようになった。刊行の日、皮を剥がれ、ほかにも傷つけられた哀れな犬が、モローの家から逃げ出した。折しも新聞の種になる事件の乏しい時期で、有力な編集者が――臨時の実験助手のいとこだった――国民の良心に訴えた。良心が研究方法に反旗を翻したのは、これが初めてではなかった。博士は、ただ罵声によって国を追い出されたのだ。その扱いは当然だったのかもしれない。だが、研究仲間の支援が生ぬるく、科学者の大多数が彼を見捨てたことは、今でも恥ずべきことだったと思う。それでも記者の報告によれば、実験の一部は無意味に残酷だった。研究を捨てれば、社会の中で平穏に暮らすこともできたかもしれない。だが彼は、研究を選んだらしい。一度でも研究の抗いがたい魅力にとらわれた者なら、たいていそうするだろう。独身で、自分の関心以外に考慮すべきものは、実際何もなかった。
これは同じ人物に違いないと、私は確信した。何もかもが、それを示していた。ピューマやほかの動物――今では荷物と一緒に、家の裏の囲いへ運び込まれていた――が、何のために連れてこられたのか、わかり始めた。そのとき、奇妙なかすかな匂い、どこか覚えのあるものの気配が、これまで意識の奥にあったところから、突然、思考の前面へ出てきた。それは解剖室の消毒薬の匂いだった。壁越しにピューマのうなりが聞こえ、犬が一頭、殴られたように甲高く鳴いた。
だが生体解剖は、とりわけ同じ科学者に対して、これほど秘密にするほど恐ろしいものでもないはずだった。そのとき、思考が奇妙に跳び、モンゴメリーの従者の、とがった耳と光る目が、またこのうえなく鮮明に浮かび上がった。私は、強まる風の下で泡立つ緑の海を窓越しに見つめ、ここ数日の、こうした奇妙な記憶や、ほかの記憶が、心の中で次々に追い合うままにしていた。
いったい、何を意味するのだろう? 孤島の、錠をかけた囲い。悪名高い生体解剖者。そして、あの不具で、体のゆがんだ男たち。
第八章 ピューマの叫び
1時ごろ、モンゴメリーが入ってきて、謎と疑惑に絡み合う私の思考を中断させた。その異様な従者があとから来て、パンと葉物やほかの食べ物、ウイスキーの瓶、水差し、グラスとナイフを3つずつ載せた盆を運んだ。私はこの奇妙な生き物を横目で見た。相手も、あの奇妙な落ち着かない目で私を見ていた。モンゴメリーは、一緒に昼食を取るが、モローは仕事にかかりきりで来られないと言った。
「モロー!」と私は言った。「その名前なら知っています。」
「何だって、知ってるのか!」とモンゴメリーは言った。「君の前で名前を言うとは、僕も馬鹿だった! 気づいてよさそうなものなのに。まあ、これで僕たちの――謎について、少し見当がつくだろう。ウイスキーは?」
「いえ、結構です。酒は飲まないので。」
「僕もそうだったらよかった。だが、馬を盗まれてから戸を閉めても仕方がない。あの忌々しい酒のせいで、ここに来ることになったんだ――酒と、霧の深い夜のせいでね。モローが逃がしてくれると言ったときは、運がよかったと思った。妙なものだ――」
「モンゴメリー」と、外の扉が閉まったとき、私は突然言った。「なぜあなたの連れは、耳がとがっているんです?」
「しまった!」最初の一口を食べながら、そう言った。しばらく私を見つめ、それから繰り返した。「耳がとがってる?」
「先が少しとがっています」と私は、息を詰まらせながらも、できるだけ落ち着いて言った。「それに縁には、細かな黒い毛が生えているでしょう?」
モンゴメリーはひどくゆっくり、ウイスキーを水で割って注いだ。「僕は――髪で耳が隠れていると思っていたが。」
「あなたが寄こしてくれたコーヒーを卓に置こうと、そばでかがんだとき、見えたんです。それに目が暗闇で光ります。」
そのころには、モンゴメリーは質問への驚きから立ち直っていた。「僕もいつも」と、舌足らずな響きをいくらか強め、ゆっくり言った。「ああして耳を隠すところから、何か変なところがあるとは思っていた。どんな耳だった?」
その態度から、知らないというのは見せかけだと確信した。だが、嘘つきだと思うと、本人に言うわけにもいかなかった。「とがっています」と私は言った。「やや小さくて、毛が生えている――はっきりと毛が。ですが、耳だけでなく、あの男全体が、これまで見た中でも指折りの奇妙な生き物です。」
背後の囲いから、動物の苦痛に満ちた、鋭いしわがれた叫びが上がった。声の深さと大きさから、ピューマだとわかった。モンゴメリーが身をすくめた。
「そうかい?」と言った。
「あの生き物は、どこで見つけたんです?」
「サンフランシスコだ。醜い男なのは認める。知能が少し足りないんだよ。どこから来たのか、覚えていない。だが僕は慣れている。二人ともね。君にはどう見える?」
「不自然です」と私は言った。「どこか――空想好きだと思わないでほしいのですが、近づかれると、妙に嫌な感じがして、筋肉がこわばるんです。どこか――悪魔的なんです、実際。」
話している間、モンゴメリーは食べるのをやめていた。「妙だな!」と言った。「僕にはわからない。」
また食べ始めた。「そんなことは思いもしなかった」と言って、噛んだ。「スクーナーの連中も、同じように感じたんだろう。あの気の毒な男に目をつけて、徹底的にいじめた。船長を見ただろう?」
突然ピューマがまた叫んだ。今度はもっと苦しげだった。モンゴメリーは小声で罵った。私は浜の男たちについても問い詰めようかと思った。すると中の哀れな獣が、短く鋭い叫びを、立て続けに上げた。
「浜にいたあなた方の男たちは」と私は言った。「どこの人種です?」
「いい連中だろう?」とモンゴメリーは上の空で言い、動物が鋭く叫ぶと眉を寄せた。
私はそれ以上何も言わなかった。前よりひどい叫びが、また上がった。モンゴメリーは鈍い灰色の目で私を見て、さらにウイスキーを飲んだ。酒についての議論へ私を引き込もうとし、酒で私の命を救ったのだと言った。私が命を借りていることを、強調したくてたまらないようだった。私は気もそぞろに答えた。
やがて食事は終わり、とがった耳の、体のゆがんだ怪物が残りを片づけ、モンゴメリーも去って、私は再び部屋に一人になった。モンゴメリーはその間ずっと、生体解剖されるピューマの声に、隠しきれないいらだちを見せていた。妙に神経が弱いのだと話していたが、それが何を意味するかは、私の察しに任せた。
私自身、その叫びはひどく神経に障った。午後が進むにつれ、声はさらに深く、激しくなった。初めは聞くのがつらかったが、何度も繰り返されるうちに、ついには心の均衡を完全に乱された。読んでいたホラティウスの対訳本を放り出し、拳を握り、唇を噛み、部屋を歩き回った。やがて指で耳をふさぐようになった。
あの叫びが感情に訴える力は、次第に増していった。ついには苦痛そのものをあまりにも鮮烈に表すものとなり、狭い部屋では、それ以上耐えられなくなった。私は扉から出て、午後遅くの眠たげな暑さの中へ入り、正面の入口――また錠がかかっていると気づいた――を通り過ぎ、壁の角を曲がった。
戸外では、叫びはいっそう大きく聞こえた。世界中の苦痛が、声を得たようだった。だが、これほどの苦痛が隣の部屋にあると知っていても、声がなければ、私は十分耐えられただろう――あとで、そう思った。苦痛が声となって神経を震わせるとき、この憐れみが私たちを苦しめに来るのだ。だが、輝く日差しも、心地よい海風に揺れる緑の扇のような葉も、何の助けにもならなかった。まだらな石壁の家から離れ、声が聞こえなくなるまで、世界は漂う黒と赤の幻影にぼやけ、混乱に満ちていた。
第九章 森の中のもの
私は、家の裏の尾根を覆う下草の中を、どこへ向かうのかもほとんど気にせず、大股に歩いた。その先の、まっすぐな幹の木々が密生する木陰を抜け、やがて尾根の向こう側へかなり進んで、狭い谷を流れる小川へ下り始めていた。立ち止まって耳を澄ました。歩いてきた距離のためか、間にある厚い茂みのためか、囲いからの音は届かなかった。空気は静まっていた。すると、がさりと音がしてウサギが現れ、目の前の斜面を駆け上がっていった。私はためらい、木陰の縁に腰を下ろした。
気持ちのよい場所だった。小川は岸の繁茂した植物に隠れていたが、一か所だけ、きらめく水が三角形に見えていた。向こう岸では、青みがかった霞を透かして、木々とつるが絡み合い、その上には明るい青空があった。あちこちに飛び散る白や深紅の色が、垂れ下がった着生植物の花を示していた。しばらくこの景色へ目をさまよわせ、それからモンゴメリーの従者の奇妙な特徴を、また考え始めた。だが、込み入ったことを考えるには暑すぎた。やがて、眠りと目覚めの中間のような、静かな状態に落ちていった。
どれほどたったかわからないが、対岸の緑の中で、がさがさという音がして、私はその状態から引き戻された。しばらくは、シダやアシの先が揺れるほか、何も見えなかった。すると突然、小川の岸へ何かが現れた。最初は何なのか、見分けられなかった。丸い頭を水へ下げ、飲み始めた。そこで男だとわかった。獣のように四つん這いになっていた。青みがかった布をまとい、肌は銅色で、髪は黒かった。異様な醜さは、この島の者に共通する特徴らしかった。水を飲む唇から、吸い込む音が聞こえた。
よく見ようと身を乗り出すと、手に触れた溶岩のかけらが外れ、斜面をぱらぱらと転がった。男は後ろめたそうに顔を上げ、目が合った。たちまち慌てて立ち上がり、不器用そうな手で口をぬぐいながら、私を見た。脚は胴体の半分ほどの長さもなかった。そうして互いに顔をそらせなくなったまま、一分ほど過ぎた。やがて男は、一、二度立ち止まって振り返りながら、私の右手の茂みへ、こそこそと消えた。葉をこする音が遠ざかり、かすかになり、やがて途絶えた。姿が消えてずいぶんたっても、私は身を起こしたまま、去った方向を見つめていた。うとうとした安らぎは消えていた。
背後の音に驚いて振り向くと、ウサギの白い尾が揺れながら、斜面の上へ消えていった。私は跳ね起きた。あの異様な、半ば獣じみた生き物の出現によって、静かな午後は、突然、目に見えないものたちで満ちたように感じられた。私は不安げに辺りを見回し、武器を持っていないことを悔やんだ。それから、今見た男は青みがかった布をまとっていて、未開人のように裸ではなかったと思い出した。そのことを根拠に、顔の鈍い凶暴さに反して、実は穏やかな性質なのだろうと、自分に言い聞かせようとした。
それでも、あの姿にはひどく動揺していた。私は斜面を左へ歩き、何度も頭を巡らせ、まっすぐな木の幹の間を、あちらこちらとのぞいた。なぜ人間が四つん這いになり、唇を水につけて飲むのだろう? やがてまた動物の悲鳴が聞こえた。ピューマだと思い、私は向きを変えて、声と正反対の方向へ歩いた。そうして小川へ下り、またいで渡ると、向こうの下草をかき分けて上がった。
地面に鮮烈な緋色の大きなものがあり、私はぎょっとした。近づくと、奇妙なキノコだった。葉状の地衣類のように枝分かれし、ひだがあったが、触ると溶けて、ぬめるものになった。それから、よく茂ったシダの陰で、嫌なものを見つけた。ウサギの死骸だった。光るハエに覆われていたが、まだ温かく、頭は引きちぎられていた。飛び散った血を見て、私は愕然と立ち止まった。少なくとも、島を訪れた一匹は、ここで始末されたのだ! ほかに傷つけられた跡はなかった。突然つかみ上げられ、殺されたように見えた。小さな毛皮の体を見つめながら、どうやってこんなことが起きたのかと考えた。小川であの人間離れした顔を見て以来、心にあった漠然とした恐怖が、そこに立つうちに、はっきりしてきた。見知らぬ者たちの中へ出てきたことが、いかに無謀だったか、わかり始めた。周囲の茂みは、想像の中で姿を変えた。どの影も、ただの影ではなく、待ち伏せになった。どんな葉擦れも、脅しになった。見えない何かが、私を見ているようだった。浜の囲いへ戻ろうと決めた。突然向きを変え、激しく、ことによると狂ったように茂みをかき分けた。早くまた、周りの開けた場所へ出たかった。
開けた場所へ出る寸前に、私は立ち止まった。倒木によってできた、森の空き地のようなところだった。苗木がすでに芽を出し、空いた場所を奪い合おうとしていた。その向こうでは、幹や絡むつる、点々としたキノコや花が密生し、また森が閉じていた。目の前の、キノコに覆われて朽ちた巨木の倒木に、異様な人影が3体、一緒にうずくまっていた。まだ私の接近には気づいていなかった。一人は明らかに女で、あとの二人は男だった。腰の辺りに緋色の布を巻いているだけで、裸だった。皮膚は、どんな未開の人々にも見たことのない、くすんだ桃色がかった灰褐色だった。顔は太って重く、顎がなく、額は後ろへ傾き、頭には硬い毛がまばらに生えていた。これほど獣じみた生き物は、見たことがなかった。
話していた。少なくとも男の一人が、ほかの二人に話していた。3人とも夢中になっており、私が近づく葉擦れの音にも気づかなかった。頭と肩を左右へ揺らしていた。話す者の言葉は濁って、唾の絡むような音だった。はっきり聞こえるのに、何を言っているのかはわからなかった。複雑な、わけのわからない文句を唱えているようだった。やがて声は甲高くなり、手を広げて立ち上がった。するとほかの二人も声をそろえてわめき始め、立ち上がり、手を広げ、唱える声に合わせて体を揺らした。そのとき、異常に短い脚と、細長く不格好な足に気づいた。3人はゆっくり輪になって回り始め、足を上げて踏み鳴らし、腕を振った。調子をそろえた朗唱に、一種の旋律が入り込み、「アルーラ」か「バルーラ」のように聞こえる繰り返しが加わった。目が輝き始め、醜い顔が、奇妙な喜びの表情で明るくなった。唇のない口から、唾液が垂れた。
その不可解で奇怪な仕草を見ているうち、突然私は、初めてはっきり気づいた。何が私を不快にさせ、まったく見知らぬものなのに、妙になじみ深いという、矛盾し、相反する二つの印象を与えたのか。謎めいた儀式を行う3体は、人間の形をしていながら、よく知っているある動物の、異様な気配をまとっていた。一体一体に、人間の姿や、衣服の切れ端や、おおまかには人間らしい体つきにもかかわらず、何か豚を思わせるものが織り込まれていた。その動きに、表情に、全身のたたずまいに。今や見過ごしようのない、豚の性質、まぎれもない獣の刻印があった。
驚くべき発見に圧倒されて立ち尽くすと、このうえなく恐ろしい疑問が、次々に頭へ押し寄せた。3体は、一体ずつ交互に跳び上がり、叫び、鼻を鳴らし始めた。それから一体が滑り、一瞬四つん這いになった。たちまち立ち直ったのだが、怪物たちの本当の獣性を垣間見せた、その一瞬で十分だった。
私はできるだけ音を立てずに向きを変え、茂みへ引き返した。枝が折れたり、葉が擦れたりするたびに、見つかる恐怖で体がこわばった。大胆さが戻り、自由に動けるようになるまで、かなりかかった。そのときは、あの汚らわしい生き物から離れることしか考えておらず、木々の間のかすかな小道へ出たことにも、ほとんど気づかなかった。やがて小さな空き地を横切ったとき、突然、ぎくりとして、木々の間に不格好な二本の脚を見た。30ヤードほど離れたところで、音もなく、私と平行に歩いていた。頭と上半身は、絡んだつるに隠れていた。相手が私に気づいていないことを願って、私は急に立ち止まった。脚も同時に止まった。あまりに神経が高ぶっていて、一目散に逃げたい衝動を抑えるのに、ひどく苦労した。それから目を凝らすと、絡み合う網の向こうに、水を飲んでいたあの生き物の頭と胴が見分けられた。相手は頭を動かした。木陰からこちらへ目を向けると、目にエメラルド色の光が走った。半ば自ら光るような色で、また頭を動かすと消えた。しばらく動かずにいたあと、音もない足取りで、入り乱れる緑の中を走り始めた。次の瞬間には、茂みの陰へ消えていた。見えなくなったが、立ち止まり、再び私を見ていると感じた。
いったい何者なのだ――人間か、獣か? 私に何の用がある? 武器はなく、棒一本すら持っていなかった。逃げるのは無謀だった。とにかく、そのものには、正体が何であろうと、私を襲う勇気がなかった。私は歯を食いしばり、まっすぐ相手へ歩いた。背骨を冷やすような恐怖を、見せまいとした。白い花をつけた高い茂みをかき分けると、20歩先に相手が見えた。肩越しに私を見て、ためらっていた。私は一、二歩進み、その目をじっと見据えた。
「誰だ?」と私は言った。
相手は目を合わせようとした。「いやだ!」と突然言い、向きを変えて、下草を跳ねるように逃げた。それから振り返り、また私を見つめた。木々の下の薄闇から、目が明るく光っていた。
心臓が口から飛び出しそうだった。だが、虚勢を張るしかないと感じ、落ち着いた足取りで近づいた。相手はまた向きを変え、薄闇へ消えた。もう一度、目の光を見たように思った。それだけだった。
そこで初めて、時刻が遅いことの意味に気づいた。太陽は数分前に沈み、熱帯の短い薄暮は、すでに東の空から消えかけていた。先駆けの蛾が一匹、頭のそばを音もなく舞った。謎めいた森の、知られざる危険の中で夜を過ごすのでなければ、急いで囲いへ戻らなければならない。苦痛の満ちるあの避難所へ戻るのは、ひどく嫌だった。だが、外で闇と、その中に隠れるすべてに追いつかれるのは、さらに嫌だった。奇妙な生き物を呑み込んだ青い影へ、もう一度目をやり、それから来た方向と思うほうへ、小川を目指して斜面を引き返した。
私は急いで歩いた。頭の中はいろいろなことが混乱していた。やがて、まばらな木々の間の平地へ出た。夕焼けのあとに訪れる、色のない澄んだ光が暗くなっていた。頭上の青空は刻々と深みを増し、薄れていく光を、小さな星が一つずつ突き破った。昼間は青く霞んでいた木々の間、遠くの植物の隙間が、黒く謎めいたものになった。私は先へ進んだ。世界から色が消えた。梢は明るい青空を背に、墨色の輪郭を浮かべ、その下はすべて、形のない一つの闇へ溶けた。やがて木々はまばらになり、低い茂みが増えた。それから白い砂に覆われた寂しい場所があり、さらに、また絡み合う茂みが続いた。この砂の空き地を、前に通った覚えはなかった。右手のかすかな葉擦れの音が、気になり始めた。初めは気のせいだと思った。立ち止まるたびに、梢を吹く夕風のほか、何も聞こえなくなったからだ。だが、また急いで歩き出すと、私の足音にもう一つの足音が重なった。
私は茂みから離れ、開けた場所を選び、ときどき急に向きを変えて、忍び寄る何かを現場でとらえようとした。何も見えなかった。それでも、ほかの何かがいるという感覚は、次第に強まった。歩みを速め、しばらくして低い尾根へ来た。越えてから急に振り返り、向こう側からじっと見据えた。暗くなる空を背に、尾根が黒く、鋭い輪郭を見せていた。やがて、形の定まらない塊が一瞬、空との境にせり上がり、また消えた。黄褐色の顔の敵が、また私をつけていると、今度は確信した。それとともに、もう一つ不愉快なことがわかった。道に迷っていたのだ。
しばらく私は、途方に暮れながら急ぎ、その忍び寄るものに追われた。正体が何であろうと、そいつには私を襲う勇気がないか、こちらが不利になるのを待っているか、どちらかだった。私は努めて開けた場所を通った。ときどき振り返って耳を澄まし、やがて追跡者は諦めたか、あるいは乱れた想像が生んだ幻にすぎないのだと、半ば思うようになった。そこへ海の音が聞こえた。私はほとんど走るほどに歩みを速めた。するとすぐ背後で、つまずく音がした。
急に振り返り、背後のぼんやりした木々を見つめた。一つの黒い影が、別の影へ跳び込んだように見えた。私は硬直して耳を澄ましたが、耳の中を流れる血の音しか聞こえなかった。神経がおかしくなり、想像力にだまされているのだと思い、決然と、また海の音へ向きを変えた。
一分ほどすると木々がまばらになり、私は暗い海へ突き出した、低くむき出しの岬へ出た。夜は穏やかで、空は澄んでいた。増え続ける星の反射が、静かにうねる海の上で震えていた。少し沖には、不規則な礁の帯に打ち寄せる波が、それ自体の淡い光を放っていた。西には黄道光[訳注:宇宙の塵に太陽光が散乱して見える、淡い帯状の光]が見え、宵の明星の黄色い輝きと混じっていた。東では海岸が遠ざかり、西では岬の張り出しに隠れていた。そこで、モローの浜は西にあることを思い出した。
背後で小枝が折れ、葉擦れがした。私は振り返り、暗い木々へ向き合って立った。何も見えなかった――いや、見えすぎたのかもしれない。薄闇の中のどんな黒い形にも、不吉な性質があり、油断なく見張るものの気配があった。一分ほどそうして立っていた。それから、なお木々に目を配りながら西へ向き直り、岬を横切ろうとした。私が動くと、潜む影の一つが動き、ついてきた。
心臓が速く打った。やがて西の湾の広い曲線が見え、私はまた立ち止まった。音もない影も、12ヤードほど離れたところで止まった。曲線の向こうの曲がり角に、小さな光の点が輝き、灰色の砂浜の弧が、星明かりの下にかすかに横たわっていた。光の点までは、おそらく2マイルあった。浜へ行くには、影の潜む木々を通り、茂みの斜面を下らなければならなかった。
今では、そのものがいくらかはっきり見えた。まっすぐ立っているのだから、動物ではなかった。そこで口を開いて話そうとしたが、痰が絡み、声が出なかった。もう一度試みて、叫んだ。「そこにいるのは誰だ?」
返事はなかった。私は一歩進んだ。相手は動かず、ただ身を縮めた。足が石に当たった。それで思いついた。目の前の黒い姿から目を離さず、かがんで石の塊を拾った。だが私の動きに、相手は犬のように急に向きを変え、斜めに遠い闇へ忍び去った。そこで、大きな犬に対抗する、子供のころの工夫を思い出した。石をハンカチに包み、ねじり、その端を手首へ一巻きした。遠くの影の中で物音がし、相手は退却しているようだった。すると突然、張り詰めた興奮が崩れた。敵を追い払い、手には武器があるというのに、私は大量の汗を流し、震え出した。
岬の脇の木々と茂みを通り、浜へ下りる決心を固めるまで、しばらくかかった。ついに私は駆け下りた。茂みから砂浜へ出ると、何か別の体が、あとから茂みを激しくかき分けてくるのが聞こえた。その瞬間、私は恐怖で完全に我を失い、砂の上を走り始めた。たちまち、柔らかな足の素早い音が追ってきた。私は狂ったような叫びを上げ、さらに速く走った。私が通ると、ウサギの3、4倍ほどの大きさの、ぼんやりした黒いものが何匹か、走ったり跳ねたりして、浜から茂みへ逃げていった。
生きているかぎり、あの追跡の恐怖を忘れることはない。私は水際近くを走り、ときどき、迫る足が水をはねる音を聞いた。黄色い光は遠く、絶望するほど遠かった。周囲の夜は、黒く静まり返っていた。ぴちゃ、ぴちゃと、追う足音が近づき、また近づいた。運動不足だったため、息が続かなくなってきた。吸い込むたびにひゅうと鳴り、脇腹には刃物で刺すような痛みが走った。囲いに着くはるか前に追いつかれるとわかった。絶望し、息を求めてすすり泣きながら、私はくるりと振り向き、追いついてきた相手を殴った――全力で殴った。そのとき、石がハンカチの輪から飛び出した。私が振り向くと、それまで四つん這いで走っていたものは立ち上がり、飛んだ石が左のこめかみにまともに当たった。頭蓋骨が大きな音を立てた。獣人は勢いのまま私にぶつかり、手で押し戻すと、よろめきながら私の脇を通り、砂に頭から倒れ込んで、顔を水につけた。そのまま動かなかった。
私は、その黒い塊へ近づく気にはなれなかった。静かな星の下で、水が周囲にさざ波を立てるまま、そこへ残した。大きく迂回して、家の黄色い光へ歩き続けた。やがて、はっきり安堵を感じさせるものとして、ピューマの哀れなうめきが聞こえた。そもそも、その音に追い出されて、この謎めいた島の探索に出たのだった。それを聞くと、気が遠く、恐ろしく疲れていたにもかかわらず、残る力をすべてかき集め、また明かりへ走り始めた。私を呼ぶ声が聞こえた気がした。
第十章 人間の叫び
家へ近づくと、明かりは私の部屋の、開いた扉から漏れているのがわかった。そして、橙色の長方形の明かりの脇の闇から、モンゴメリーの叫ぶ声が聞こえた。「プレンディック!」
私は走り続けた。やがてもう一度、声がした。弱々しく「ここです!」と答え、そのすぐあとには、よろめきながらモンゴメリーのところへ着いていた。
「どこにいたんだ?」と言い、私を腕の長さだけ離して支えた。扉の明かりが顔に当たった。「二人とも忙しくて、30分ほど前まで君のことを忘れていた。」
部屋へ連れていき、デッキチェアに座らせてくれた。しばらくは光に目がくらんだ。「黙ってこの島の探索に出るとは、思わなかったよ」と言った。それから、「僕は心配で――だが――何だ――おい!」
最後に残っていた力が抜け、頭が胸へ落ちた。私にブランデーを飲ませることに、モンゴメリーは幾分満足を感じていたと思う。
「お願いです」と私は言った。「あの扉を閉めて、錠をかけてください。」
「僕たちの珍しいものに、いくつか出会ったんだね?」とモンゴメリーは言った。
扉に錠をかけ、また私のほうへ向き直った。質問はせず、さらにブランデーの水割りをくれ、食べるよう勧めた。私はへたりきっていた。モンゴメリーは、注意しておくのを忘れた、と曖昧なことを言い、いつ家を出て、何を見たのか、手短に尋ねた。
私も同じように、断片的な言葉で短く答えた。「すべて、どういうことなのか教えてください」と、ヒステリー寸前の状態で言った。
「そう恐ろしいことでもないんだ」とモンゴメリーは言った。「だが、今日はもう十分すぎるほど経験しただろう。」
突然ピューマが、苦痛の鋭い叫びを上げた。モンゴメリーは小声で罵った。「まったく」と言った。「ここのひどさは、猫の多いゴーワー・ストリートにも負けてないな。」
「モンゴメリー」と私は言った。「私を追ってきた、あれは何です? 獣ですか、人間ですか?」
「今夜眠らなければ」と言った。「明日は頭がおかしくなるぞ。」
私は目の前に立ち上がった。「私を追ってきた、あれは何なんです?」
私は尋ねた。
モンゴメリーはまっすぐ私の目を見て、口を片方へゆがめた。ついさっきまで生気があった目が、鈍くなった。「君の話からすると」と言った。「化け物だろうと思うよ。」
強烈ないらだちが込み上げたが、すぐに消えた。私はまた椅子へ身を投げ、両手を額へ押し当てた。ピューマがまた鳴き始めた。
モンゴメリーは背後へ回り、肩に手を置いた。「いいかい、プレンディック」と言った。「こんな馬鹿げた島へ、一人でふらふら出ていかせるべきじゃなかった。だが、君が感じているほど悪いところでもないんだ。神経がぼろぼろになってるんだよ。眠れる薬を飲ませよう。あれは――まだ何時間も続く。とにかく眠らなきゃいけない。そうしなければ、どうなるか保証できない。」
私は答えなかった。前へ身を折り、両手で顔を覆った。やがてモンゴメリーが、暗い液体の入った小さな計量杯を持って戻り、渡してくれた。私は逆らわずに飲み、助けてもらってハンモックへ入った。
目を覚ますと、すっかり日が昇っていた。しばらく仰向けのまま、頭上の屋根を見つめた。垂木は、船の木材で作られていると気づいた。それから頭を動かすと、卓に食事が用意してあった。空腹だとわかり、ハンモックから降りようとした。するとハンモックは、実に親切にも私の意図を先取りし、くるりと回って、私を床へ四つん這いに落としてくれた。
私は起き上がり、食事の前に座った。頭が重く、前の晩の出来事は、初めはごく曖昧にしか思い出せなかった。ガラスのない窓から吹く朝風は心地よく、食べ物とともに、体の安らぎを感じさせてくれた。やがて背後の扉――囲いの中庭へ通じる扉――が開いた。振り返ると、モンゴメリーの顔が見えた。
「大丈夫だね」と言った。「ひどく忙しいんだ。」
そして扉を閉めた。
あとでわかったのだが、モンゴメリーは錠をかけ直すのを忘れていた。そのとき私は、昨夜の顔つきを思い出し、それとともに、体験したすべての記憶が、目の前で組み上がっていった。恐怖が戻るのと同時に、中から叫びが聞こえた。だが今度は、ピューマの叫びではなかった。私は口元で止まっていた食べ物を置き、耳を澄ました。朝風のささやきのほかは、静かだった。聞き違いだったのかと思い始めた。
長い間を置いて、私は食事を再開したが、耳は警戒を続けていた。やがて別の音が聞こえた。ごくかすかで、低かった。私はその姿勢のまま、凍りついたようになった。かすかで低い音だったが、壁の向こうの忌まわしさについて、これまで聞いた何よりも深く私を揺さぶった。今度は、ぼんやりした途切れがちな音の性質を、間違えようがなかった。その源も疑いようがなかった。すすり泣きと、苦悶のあえぎに途切れる、うめき声だったのだ。今度は獣ではなかった。責め苦を受ける人間だった!
そう悟ると、私は立ち上がり、3歩で部屋を横切って、中庭への扉の取っ手をつかみ、目の前に勢いよく開けた。
「プレンディック、よせ! 止まれ!」とモンゴメリーが叫び、間に入った。
驚いた鹿猟犬が、甲高く吠えてうなった。流しには血があった――褐色のものと、鮮やかな赤いものが見えた――そして石炭酸の独特な匂いがした。その先の開いた戸口越しに、陰の薄明かりの中で、枠組みに苦しげに縛りつけられた何かが見えた。傷だらけで、赤く、包帯が巻かれていた。するとそれをさえぎって、老モローの、白く恐ろしい顔が現れた。次の瞬間、赤く汚れた手で私の肩をつかみ、足が床から離れるほどねじり上げ、頭から自室へ投げ戻した。まるで幼い子供のように、私を持ち上げたのだ。私は床へ長々と倒れた。扉が激しく閉まり、激情のこもった顔をさえぎった。それから、錠の中で鍵が回る音と、抗議するモンゴメリーの声が聞こえた。
「一生をかけた仕事を台なしにするところだ」とモローが言うのが聞こえた。
「彼にはわからないんです」とモンゴメリーは言い、さらに聞き取れないことを続けた。
「まだ時間を割けん」とモローは言った。
あとは聞こえなかった。私は身を起こし、震えながら立った。心は、このうえなく恐ろしい懸念で混乱していた。ここでは、人間の生体解剖などというものが行われているのだろうか? その問いは、荒れ狂う空を横切る稲妻のように走った。そして突然、心を曇らせていた恐怖が凝縮し、自分自身の危険を鮮明に悟らせた。
第十一章 人間狩り
まだ部屋の外扉からは出られるということが、道理を超えた逃亡の希望とともに頭へ浮かんだ。モローが人間を生体解剖していたことを、私は今や完全に確信していた。名を聞いて以来ずっと、島の者たちの異様な獣性と、彼の忌まわしい実験を、頭の中で何とか結びつけようとしていた。そして今、すべてがわかったと思った。輸血に関する研究の記憶が戻ってきた。見てきた生き物たちは、恐ろしい実験の犠牲者なのだ。あの胸の悪くなる悪党どもは、ただ私を引き留め、信頼を示すふりをして欺き、やがて襲いかかって、死よりも恐ろしい運命――拷問を与えるつもりだった。そして拷問のあとには、想像できるかぎり最も忌まわしい堕落が待っている。魂を失った獣にして、ほかのコーモスの群れ[訳注:ミルトンの仮面劇『コーモス』に登場する、獣の頭を持つ者たちの群れ]の中へ送り込むのだ。
武器になるものを探して、部屋を見回した。何もない。そこで思いつき、デッキチェアをひっくり返して脇へ足をかけ、側面の木の棒を引き剥がした。たまたま釘が一本、木について抜け、その先が突き出したおかげで、貧弱な武器にも、いくらか危険な力が加わった。外で足音がした。私は即座に扉を開け放った。1ヤードも離れていないところに、モンゴメリーがいた。外扉にも錠をかけるつもりだったのだ! 私は釘のついた棒を振り上げ、顔へ打ちかかったが、モンゴメリーは後ろへ跳んだ。一瞬ためらい、それから向きを変えて、家の角を回り、逃げた。「プレンディック、おい!」
驚いた叫びが聞こえた。「馬鹿な真似はよせ!」
あと一分遅ければ、閉じ込められ、病院の実験用ウサギのように、運命を待つばかりにされていたと思った。モンゴメリーが角から現れた。「プレンディック!」という叫びが聞こえたからだ。
それから、何か叫びながら追って走り始めた。今度はやみくもに走り、前の探索と直角の方向、北東へ向かった。一度、浜を一目散に走りながら肩越しに見ると、従者も一緒にいた。私は猛烈に斜面を駆け上がり、越えてから東へ曲がり、両側を密林に縁取られた岩の谷を走った。合わせて1マイルほどだっただろう。胸が張り裂けそうで、耳に心臓の鼓動が響いていた。モンゴメリーや従者の物音が聞こえなくなり、もう疲労の限界だと感じると、浜と思える方向へ鋭く折り返し、アシの茂みに身を隠して横たわった。長い間、そこにいた。恐ろしくて動けず、何をするか考えることさえ怖かった。周囲の野生の景色は、日差しの下で静かに眠り、近くの音は、私を見つけた小さな羽虫の、細い羽音だけだった。やがて、眠たげな息のような音に気づいた。浜に寄せる海の音だった。
一時間ほどすると、遠い北のほうから、モンゴメリーが私の名を叫ぶのが聞こえた。それで、どう行動するか考え始めた。そのときの私の解釈では、この島の住人は、二人の生体解剖者と、獣にされた犠牲者だけだった。必要があれば、そのうち何人かを使って、私を襲わせることもできるだろう。モローもモンゴメリーもリボルバーを携帯していると知っていた。小さな釘のついた弱い松材の棒、棍棒の笑い物のようなもののほか、私には武器がなかった。
だから私は、じっと横たわっていた。やがて食べ物と水のことを考え始めると、自分の境遇の本当の絶望が身にしみた。食べ物を手に入れる方法は、何一つ知らなかった。植物学に無知すぎて、周りにあるかもしれない食用の根や実を見分けられなかった。島のわずかなウサギを捕らえる手段もなかった。先行きを考えるほど、見通しは暗くなった。ついに追い詰められ、私は、出会った獣人たちへ考えを向けた。記憶の中に、何か希望を見つけようとした。見た一人一人を順に思い起こし、そこから助けの兆しを読み取ろうとした。
そのとき突然、鹿猟犬の吠え声が聞こえ、新たな危険を悟った。考えている暇はほとんどなかった。そうしていたら、その場で捕まっていただろう。私は釘のついた棒をひっつかみ、海の音を目指して、隠れ場所から一目散に飛び出した。いばらの茂みを覚えている。棘は小型のナイフのように刺さった。私は血を流し、服を裂かれながら、北へ開く長い入り江の縁へ出た。一瞬もためらわず水へ入り、入り江を歩いて上がり、やがて小さな川で膝まで浸かっていた。ついに西の岸へ這い上がり、耳に大きく響く鼓動を聞きながら、シダの茂みへ忍び込み、成り行きを待った。犬――一頭だけだった――が近づき、いばらへ来たときに鳴くのが聞こえた。それからは何も聞こえず、やがて逃げ切ったと思い始めた。
時が過ぎ、沈黙は長く続いた。ついに無事なまま一時間が過ぎると、勇気が戻り始めた。そのころには、もうそれほど怯えても、惨めでもなかった。いわば、恐怖と絶望の限界を通り越したのだ。自分の命は事実上失われたと感じ、その確信によって、どんなことでも敢行できるようになった。モローと正面から出会いたいという気持ちさえ、いくらかあった。また、水へ入ったとき、追い詰められすぎたら、少なくとも苦痛から逃れる道が一つは残っていると思い出していた。彼らにも、私が自ら溺死するのを防ぐのは難しい。そこで溺死してしまおうかとも思ったが、この冒険を最後まで見届けたいという奇妙な願い、自分を見世物のように眺める、妙に他人事の関心が、それをとどめた。私は棘で痛む手脚を伸ばし、周囲の木々を見た。すると、周りの緑の網目から飛び出したように突然、私を見つめる黒い顔に目がとまった。浜で艇を迎えた、あの猿じみた生き物だった。斜めに伸びるヤシの幹へしがみついていた。私は棒を握り、立ち上がって向き合った。相手は何かしゃべり始めた。最初に聞き分けられたのは、「おまえ、おまえ、おまえ」だけだった。突然木から下り、次の瞬間には、葉を左右へ分けて、好奇心に満ちた目で私を見ていた。
この生き物には、ほかの獣人に出会ったときと同じ嫌悪は感じなかった。「おまえ」と言った。「舟にいた。」
それなら人間だったのだ。少なくとも、モンゴメリーの従者と同じくらいには。言葉を話せるのだから。
「そうだ」と私は言った。「舟で来た。船から。」
「ああ!」と言い、輝く落ち着かない目が、私の全身を巡った。手、持っている棒、足、上着の破れ、いばらでできた切り傷や引っかき傷。何かに戸惑っているようだった。目が手へ戻った。自分の手を差し出し、ゆっくり指を数えた。「一、二、三、四、五――え?」
そのときは意味がわからなかった。あとで知ったのだが、獣人たちの多くは手が変形しており、指が3本も欠けていることさえあった。だが私は、何かの挨拶なのだろうと思い、同じことをして応じた。相手はひどく満足そうに歯を見せて笑った。それから、素早くさまよう目をまた巡らせ、さっと動いて――消えた。立っていたところのシダの葉が、音を立てて重なった。
私はあとを追って茂みから出た。すると、頭上の葉から輪になって垂れたつるに、長い腕一本でぶら下がり、楽しげに揺れていたので驚いた。こちらに背を向けていた。
「おい!」と私は言った。
体をひねって跳び下り、私に向き合って立った。
「聞きたいんだが」と私は言った。「食べ物は、どこで手に入る?」
「食べる!」と言った。「今は、人間の食べ物を食べる。」
そして、目がつるのぶらんこへ戻った。「小屋にある。」
「だが、小屋はどこだ?」
「ああ!」
「私は新入りなんだ。」
それで相手はくるりと向きを変え、速足で歩き始めた。どの動きも妙に素早かった。「ついてこい」と言った。
私は冒険を見届けようと、ついていった。小屋は、この生き物とほかの獣人が暮らす、粗末な住まいだろうと思った。友好的かもしれないし、心を動かす何かの手がかりが見つかるかもしれない。人間として受け継いだものを、どれほど忘れているのか、私にはわからなかった。
猿のような連れは、手を垂らし、顎を突き出して、私の脇を小走りに進んだ。どんな記憶が残っているのだろうと思った。「この島には、どれくらいいる?」と私は尋ねた。
「どれくらい?」と聞き返し、質問を繰り返すと、指を3本立てた。
知能は、ほとんど幼児程度だった。3本の意味を確かめようとすると、退屈させたらしい。さらに一、二度尋ねると、突然脇を離れ、木にぶら下がる実へ跳びついた。棘のある殻をひとつかみ引き下ろし、歩きながら中身を食べた。私はそれを見て、ほっとした。少なくとも、食べ物についての手がかりがあったのだ。ほかにも質問を試したが、素早くまくしたてる答えは、しばしば質問とはまるで噛み合わなかった。いくつかは適切だったが、ほかは、まったくオウム返しのようだった。
こうした特徴に気を取られ、通る道にはほとんど注意を払っていなかった。やがて、すっかり焦げて褐色になった木々へ来て、それから黄白色の固い層に覆われた裸地へ出た。煙がその上を漂い、ときどき鼻や目を刺激した。右手では、むき出しの岩の張り出し越しに、平らな青い海が見えた。道は急に曲がり下り、黒っぽい岩滓が、崩れたごつごつした塊となる、その二つの間の狭い谷へ入った。私たちはそこへ飛び込んだ。
硫黄質の地面に反射するまばゆい日差しのあとでは、その通路はひどく暗かった。壁は急になり、互いに迫った。目の前を緑と深紅の斑点が漂った。案内役は急に止まった。「家だ!」と言った。私は裂け目の底に立っていた。最初は何もかも真っ暗だった。奇妙な物音が聞こえ、私は左手の拳を目へ押しつけた。掃除の行き届かない猿の檻のような、嫌な匂いに気づいた。その先では岩が再び開け、日差しに照らされた緑の緩い斜面があった。左右では、細い通路から光が差し込み、中央の闇を照らしていた。
第十二章 律法の説き手たち
そのとき、冷たいものが手に触れた。私は激しく飛び上がった。すぐそばに、ぼんやりした桃色がかったものがいた。何よりも、皮を剥がれた子供に似ていた。その生き物の顔は、まさにナマケモノの、おとなしいが不快な顔つきで、低い額も、ゆっくりした仕草も同じだった。
明暗の変化の最初の衝撃が過ぎると、周囲がもっとはっきり見えてきた。小さなナマケモノのような生き物が立って、私を見ていた。案内役は消えていた。そこは、高い溶岩壁の間の狭い通路、ごつごつした岩の裂け目だった。左右では、海草の敷物やヤシの葉、アシを編み合わせた塊が岩にもたせてあり、粗末で、中の見えない暗いねぐらになっていた。その間を谷沿いに曲がり上がる道は、3ヤードほどの幅しかなく、腐った果肉の塊や、ほかのごみで汚れていた。嫌な悪臭の原因はこれだった。
小さな桃色のナマケモノの生き物が、まだまばたきしながら私を見ていると、猿男がいちばん近いねぐらの入口へ現れ、手招きした。そのとき、この奇妙な通りの先にあるねぐらの一つから、だらしない姿の怪物が身をくねらせて出てきた。向こうの明るい緑を背に、顔の見えない輪郭となって立ち、私を見た。私はためらい、来た道を逃げ戻ろうかとも思った。それから冒険をやり通すと決め、釘のついた棒の中ほどを握り、案内役のあとから、小さな悪臭のする片屋根の小屋へ這い込んだ。
そこは、蜂の巣を半分にしたような半円形の空間だった。内側を作る岩壁に寄せて、ココナッツなど、いろいろな果実が積まれていた。床には溶岩や木で作った粗い器がいくつか置かれ、粗末な腰掛けにも一つあった。火はなかった。小屋のいちばん暗い隅には、形のない闇の塊が座っていて、私が入ると「おい!」とうなった。私は反対側の隅へ這っていき、しゃがんだ。猿男は戸口の薄明かりの中に立ち、割ったココナッツを差し出した。私は受け取り、いくらか怯え、小屋のむっとする空気がほとんど耐えがたかったにもかかわらず、できるだけ平静にかじり始めた。小さな桃色のナマケモノの生き物が小屋の入口に立ち、その肩越しには、灰褐色の顔と光る目を持つ別の何かが、こちらを見つめていた。
「おい!」と、向かいの謎の塊が言った。「人間だ。」
「人間だ」と案内役がまくしたてた。「人間、人間、五本の人間だ。おれと同じだ。」
「黙れ!」と暗がりの声は言い、うなった。私は重苦しい静けさの中で、ココナッツをかじった。
闇をじっとのぞいたが、何も見分けられなかった。
「人間だ」と声は繰り返した。「われらと暮らしに来たのか?」
太い声で、妙な響きがあった。笛のような高い音が重なっているのだ。だが、英語の発音は、奇妙なほどよかった。
猿男は、何かを待つように私を見た。この間は質問なのだとわかった。「あなたたちと暮らしに来た」と私は言った。
「人間だ。律法を学ばねばならぬ。」
今では、闇の中のさらに深い黒さ、体を丸めた姿の、ぼんやりした輪郭が見分けられ始めた。それから、入口がさらに二つの黒い頭で暗くなっているのに気づいた。私は棒を握る手に力を込めた。
暗闇のものが、もっと大きな声で繰り返した。「言葉を唱えよ。」
私はその前の言葉を聞き落としていた。「四つ足で歩くなかれ。それが律法」と、節をつけるように繰り返した。
私は戸惑った。
「言葉を唱えよ」と猿男が繰り返した。戸口の者たちも、脅すような口調で同じことを言った。
この馬鹿げた文句を繰り返さなければならないのだとわかった。そうして、このうえなく狂気じみた儀式が始まった。暗闇の声が、狂った連祷を一行ずつ唱え、私とほかの者たちが繰り返した。唱えながら、彼らはひどく奇妙に体を左右へ揺らし、膝を手でたたいた。私もまねた。もう死んで、別の世界へ来たのではないかと思えるほどだった。暗い小屋。あちこちにかすかな光の当たる、異様なぼんやりした姿。そして皆が一斉に揺れながら唱える。
「四つ足で歩くなかれ。それが律法。われらは人間ではないか? 「水をすすって飲むなかれ。それが律法。われらは人間ではないか? 「魚や肉を食らうなかれ。それが律法。われらは人間ではないか? 「木の皮を爪で引っかくなかれ。それが律法。われらは人間ではないか? 「ほかの人間を追うなかれ。それが律法。われらは人間ではないか?」
こうした愚かな行為の禁止から、唱える言葉は、当時の私には、およそ想像できるかぎり最も狂気じみ、あり得ず、下品だと思われる行為の禁止へ進んだ。調子に乗った熱狂が、皆をとらえた。私たちは、この驚くべき律法を繰り返しながら、ますます速く、まくしたて、体を揺らした。表面では、私も獣たちの熱狂に感染していたが、心の奥では、笑いと嫌悪がせめぎ合っていた。長い禁止の一覧を唱え終えると、朗唱は新たな文句へ転じた。
「苦痛の家は、かの御方のもの。
「造る手は、かの御方のもの。
「傷つける手は、かの御方のもの。
「癒やす手は、かの御方のもの。」
そのように、さらに長く続いた。かの御方とは誰なのか、私にはわからず、ほとんどは意味不明のたわごとだった。夢だと思いたくもなったが、夢の中で朗唱を聞いたことは、それまで一度もなかった。
「稲妻の閃光は、かの御方のもの」と私たちは唱えた。「深い塩の海は、かの御方のもの。」
モローは、これらの人間を獣に変えたあと、その萎縮した脳へ、自分を神としてあがめる信仰を植えつけたのではないかという、恐ろしい考えが浮かんだ。だが周囲の白い歯と強い爪を、あまりにもはっきり意識していたので、それを理由に唱えるのをやめることはできなかった。
「空の星々は、かの御方のもの。」
ようやく唱歌が終わった。猿男の顔が汗で光っているのが見えた。目が暗さに慣れたので、声の出ていた隅の姿も、もっとはっきり見えた。人間ほどの大きさだったが、スカイ・テリアのようなくすんだ灰色の毛に覆われているようだった。何なのだろう? 皆、何なのだろう? 想像できるかぎり、このうえなく恐ろしい不具者や狂人たちに囲まれた自分を、思い描いていただきたい。そうすれば、この奇怪な、人間の戯画のような者たちに囲まれた私の気持ちも、少しは理解できるだろう。
「こいつは五本の人間だ、五本の人間、五本の人間――おれと同じだ」と猿男は言った。
私は両手を差し出した。隅の灰色の生き物が、身を乗り出した。
「四つ足で走るなかれ。それが律法。われらは人間ではないか?」と言った。
奇妙にゆがんだ鉤爪を伸ばし、私の指をつかんだ。その手は、鹿の蹄を爪の形に伸ばしたようだった。驚きと痛みで、叫びそうになった。顔が前へ出て、私の爪をのぞき込んだ。小屋の入口の光まで出てきたとき、私は震えるほどの嫌悪を覚えた。それは人間の顔にも獣の顔にも似ていなかった。ただ灰色の毛がもじゃもじゃと生え、目と口を示す、三つの影のかかったくぼみがあるだけだった。
「小さな爪を持っている」と、その恐ろしげな生き物は、毛深いひげの中で言った。「よいことだ。」
私の手を放り出した。私は本能的に棒を握った。
「根と草を食べよ。かの御方の御心だ」と猿男は言った。
「われは律法の説き手」と灰色の姿は言った。「新しく来る者は皆、ここで律法を学ぶ。われは闇に座り、律法を説く。」
「そのとおりだ」と戸口の獣の一体が言った。
「律法を破る者の罰は恐ろしい。逃れる者はない。」
「逃れる者はない」と獣人たちは言い、こそこそと互いを見た。
「ない、ない」と猿男は言った。「逃れる者はない。見ろ! おれは一度、小さなことをした。悪いことを。しゃべった、しゃべった、人の言葉をやめた。誰にもわからなかった。焼かれた。手に焼き印を押された。かの御方は偉大だ。かの御方は善い!」
「逃れる者はない」と隅の灰色の生き物は言った。
「逃れる者はない」と獣人たちは言い、互いを横目で見た。
「誰にも、悪い欲望がある」と灰色の律法の説き手は言った。「おまえが何を望むか、われらは知らぬ。いずれ知る。動くものを追いたがる者がいる。見張り、忍び寄り、待ち、跳びかかる。殺して噛む。深く、存分に噛み、血をすする。それは悪い。『ほかの人間を追うなかれ。それが律法。われらは人間ではないか? 肉や魚を食らうなかれ。それが律法。われらは人間ではないか?』。」
「逃れる者はない」と戸口に立つ、まだら模様の獣が言った。
「誰にも、悪い欲望がある」と灰色の律法の説き手は言った。「歯と手で、物の根を引き裂き、土を嗅ぎたがる者がいる。それは悪い。」
「逃れる者はない」と戸口の男たちは言った。
「木を爪で引っかく者がいる。死者の墓を掘る者がいる。額や足や爪で戦う者がいる。何もされていないのに、突然噛む者がいる。不潔を好む者がいる。」
「逃れる者はない」と猿男は言い、ふくらはぎを掻いた。
「逃れる者はない」と小さな桃色のナマケモノの生き物は言った。
「罰は厳しく、必ず下る。ゆえに律法を学べ。言葉を唱えよ。」
そしてすぐに、また律法の奇妙な連祷を始め、私もこれらの生き物も、再び唱え、体を揺らし始めた。まくしたてる声と、こもった悪臭で、頭がくらくらした。それでも、やがて何か新たな展開の機会があるだろうと信じ、続けた。
「四つ足で歩くなかれ。それが律法。われらは人間ではないか?」
あまりに騒がしかったので、外の騒動には気づかなかった。やがて誰か――私が見た二人の豚男の一人だったと思う――が、小さな桃色のナマケモノの生き物の上へ頭を突き出し、興奮して何か叫んだ。何と言ったのかは聞き取れなかった。たちまち入口の者たちが消え、猿男が外へ飛び出した。闇の中に座っていたものも続いた。大きく、不格好で、銀色の毛に覆われていることしか見て取れなかった。私は一人残された。それから、入口へ着く前に、鹿猟犬の甲高い声が聞こえた。
次の瞬間には、小屋の外に立っていた。椅子から外した棒を手に、全身の筋肉が震えていた。目の前には、おそらく20体ほどの獣人の、不格好な背中があった。ゆがんだ頭は、肩甲骨に半ば隠れていた。興奮して身振りをしていた。ほかの半獣の顔が、小屋から問いかけるように目を光らせていた。彼らの向く方向を見ると、小屋の通路の先、木々の下の霞を通って、モローの黒い姿と、恐ろしい白い顔がやってきた。跳びはねる鹿猟犬を押さえ、そのすぐあとには、リボルバーを持ったモンゴメリーがいた。
一瞬、私は恐怖に打たれて立ち尽くした。振り返ると、背後の通路は別の重々しい獣にふさがれていた。巨大な灰色の顔と、きらきらした小さな目を持ち、こちらへ進んでいた。辺りを見ると、右手の6ヤードほど先に、岩壁の狭い隙間があり、そこから一筋の光が斜めに闇へ差していた。
私がそこへ大股に進むと、「止まれ!」とモローが叫んだ。続いて、「そいつを押さえろ!」
それで、一つの顔が私へ向き、続いてほかの顔も向いた。幸い、彼らの獣の頭の働きは鈍かった。モローの意図を確かめようと振り向いた不格好な怪物へ、私は肩をぶつけ、別の者へ突き飛ばした。相手の手が振り回され、私をつかもうとして、つかみ損ねたのを感じた。小さな桃色のナマケモノの生き物が飛びかかってきたので、棒の釘でその醜い顔を切りつけた。次の瞬間には、谷から外へ向かう、斜めの煙突のような急な脇道をよじ登っていた。背後で悲鳴と、「捕まえろ!」「押さえろ!」という声が聞こえた。灰色の顔の生き物があとに現れ、巨体を裂け目へ押し込んだ。「進め! 進め!」と皆がわめいた。私は岩の細い裂け目をよじ登り、獣人の村の西側の、硫黄の地面へ出た。
あの隙間は、実に幸運だった。斜め上へ延びる狭い煙突が、すぐ後ろの追跡者を妨げたに違いない。私は白い地面を走り、まばらな木々の間の急斜面を下って、背の高いアシの生える低地へ来た。それをかき分け、足元の黒く水気の多い、暗い濃密な下草へ突っ込んだ。私がアシへ入ると、追跡者の先頭が隙間から現れた。私は数分、下草を強引にかき分けた。背後と周囲の空気は、すぐに脅すような叫びで満ちた。斜面の上の隙間で追跡者が騒ぐのが聞こえ、続いてアシの倒れる音、ときどき枝の折れる激しい音がした。興奮した猛獣のように吼える者もいた。左で鹿猟犬が鳴いた。同じ方向で、モローとモンゴメリーの叫ぶ声が聞こえた。私は鋭く右へ曲がった。そのときでさえ、モンゴメリーが、命が惜しければ走れ、と叫んでいるのが聞こえた気がした。
やがて足元の地面が、柔らかく、泥深く沈んだ。だが必死だったので、そのまま突っ込み、膝まで埋まりながらもがいて進み、背の高いアシの間の曲がりくねる道へ出た。追跡者の音は、左へ遠ざかった。一か所では、猫ほどの大きさの、奇妙な桃色の跳ねる動物が3匹、私の足音に逃げた。道は丘を上がり、白い固い層に覆われた別の空き地を横切り、またアシの茂みへ入った。それから突然、イングランドの公園の空堀[訳注:景観を遮らずに境界を設ける、ハハと呼ばれる堀]のように、不意に現れた急壁の裂け目の縁に沿って、思いがけなく鋭く曲がった。私はまだ全力で走っていた。落差が見えたときには、もう頭から宙を飛んでいた。
いばらの中へ、前腕と頭から落ち、耳を裂き、顔から血を流して立ち上がった。落ちた場所は、岩といばらの多い、切り立った谷だった。霞のような霧が漂っていて、筋になって私の周りを流れ、その霧の湧く細い小川が、中央を曲がりながら下っていた。真昼のまばゆい光の中に、この薄霧があるのは驚きだったが、立って不思議がる暇はなかった。右へ向きを変え、下流へ進んだ。そちらで海へ出られれば、溺死する道が開けると望んだ。転落の際、釘のついた棒を落としたと気づいたのは、あとになってからだった。
やがて谷がしばらく狭まり、私はうっかり川へ足を入れた。すぐに飛び出した。水はほとんど煮え立っていたのだ。渦を巻く水面には、硫黄を含む薄い膜が漂っていることにも気づいた。間もなく谷が曲がり、ぼんやりした青い水平線が見えた。近くの海は、無数の面で日光をきらめかせていた。目の前に、自分の死が見えた。だが体は熱く、息は弾み、温かな血が顔へにじみ、血管を心地よく流れていた。追跡者を引き離したことに、少なからぬ高揚も感じていた。そのときはまだ、海へ出て溺れる気にはなれなかった。私は来た道を振り返った。
耳を澄ました。羽虫の羽音と、いばらの間を跳ねる小さな虫の声のほか、空気はまったく静かだった。それから、ごくかすかな犬の鳴き声、まくしたてる声、鞭の音、人の声が聞こえた。音は大きくなり、また小さくなった。川の上流へ遠ざかり、消えていった。当面、追跡は終わった。だが今では、獣人たちに助けを望む余地が、どれほどあるのか、よくわかっていた。
第十三章 対話
私はまた向きを変え、海へ下っていった。熱い川は広がり、海草の生えた浅い砂地になっていた。たくさんのカニや、胴が長く脚の多い生き物が、足音に驚いて飛び出した。私は海水の際まで歩き、そこで安全だと感じた。振り返り、腰に両手を当てて、背後の濃い緑を見つめた。その中へ、蒸気の立つ谷が、煙る傷口のように切れ込んでいた。だが、先ほども言ったとおり、私は興奮でいっぱいで、そして――危険を知らない人には疑われるかもしれないが、真実なのだ――絶望があまりにも深く、死ぬ気にはなれなかった。
そこで、まだ一つ可能性があると思いついた。モローとモンゴメリー、その獣の群れが島中で私を追っている間に、浜を回って囲いへたどり着けないだろうか。いわば側面から回り込むのだ。それから、粗く積まれた石壁から岩でも引き抜き、小さい扉の錠を壊して、彼らが戻ったとき戦えるもの――ナイフでも拳銃でも何でも――を探せないか? 少なくとも、試す価値はあった。
そこで私は西へ向きを変え、水際を歩いた。沈みゆく太陽の、まばゆく熱い光が目に差し込んだ。太平洋の小さな満ち潮が、穏やかなさざ波となって寄せていた。やがて岸は南へ曲がり、太陽は右手へ回った。すると突然、はるか前方で、一つ、続いていくつもの人影が茂みから現れた。灰色の鹿猟犬を連れたモロー、次にモンゴメリー、そしてほかの二人。私は立ち止まった。
向こうも私を見つけ、身振りをしながら進んできた。私は立って、その接近を見ていた。二人の獣人は走って先へ出て、内陸の下草へ逃げる道をふさいだ。モンゴメリーも走ったが、まっすぐ私へ向かってきた。モローは犬を連れ、ゆっくりあとに続いた。
ようやく私は動けるようになり、海へ向き直ると、まっすぐ水へ入った。最初はひどく浅かった。30ヤードも沖へ出て、ようやく波が腰まで来た。潮間帯の生き物が足元から逃げるのが、ぼんやり見えた。
「何をしているんだ!」とモンゴメリーが叫んだ。
私は腰まで浸かったまま振り向き、彼らを見た。モンゴメリーは水際に立ち、息を切らしていた。顔は走ったため真っ赤で、長い亜麻色の髪が頭の周りで風に乱れ、垂れた下唇から、不揃いの歯が見えていた。モローがちょうど追いついた。顔は青白く、揺るがなかった。手元の犬が私へ吠えた。二人とも重い鞭を持っていた。浜の少し上では、獣人たちが見つめていた。
「何をしているかですって? 溺死するつもりです」と私は言った。
モンゴメリーとモローは顔を見合わせた。「なぜだ?」とモローが尋ねた。
「あなたに拷問されるよりは、ましだからです。」
「言ったでしょう」とモンゴメリーは言った。モローは低い声で何か言った。
「私が拷問すると、なぜ思う?」とモローは尋ねた。
「見たからです」と私は言った。「それに、あの――向こうの連中です。」
「黙りなさい!」とモローは言い、手を上げた。
「黙りません」と私は言った。「あの人たちは人間だった。今は何です? 少なくとも私は、あんなふうにはなりません。」
私は話し相手の向こうへ目を向けた。浜の上には、モンゴメリーの従者のムリンと、舟にいた白い布でくるまれた獣の一体がいた。さらに上の木陰には、小さな猿男が見え、その後ろにも、ぼんやりした姿がいくつかあった。
「この生き物たちは何者です?」と私は指さし、彼らまで届くように、だんだん声を張り上げた。「あなたたちと同じ、人間だったんでしょう。あなたたちが獣の性質を植えつけた人間だ。奴隷にして、それでいて、今も恐れている人間だ。
「聞いている者たち!」と私は叫んだ。今度はモローを指さし、その向こうの獣人たちへ怒鳴った。「聞いている者たち! この男たちが、今でもおまえたちを恐れ、怯えているのがわからないか? それなら、なぜおまえたちは、こいつらを恐れる? おまえたちは大勢いる――」
「頼むから」とモンゴメリーが叫んだ。「やめてくれ、プレンディック!」
「プレンディック!」とモローが叫んだ。
二人は私の声をかき消そうとするように、同時に叫んだ。その背後では、獣人たちの顔が、いぶかしげに、暗く険しくこちらを見ていた。ゆがんだ手を垂らし、肩を丸めていた。私を理解しようとし、かつて人間だったころの何かを思い出そうとしているように、私には見えた。
私は叫び続けた。何を言ったのか、ほとんど覚えていない。モローもモンゴメリーも殺せるのだ、恐れることはない――獣人たちの頭へ吹き込んだのは、おおむねそういうことだった。到着した日の夕方に出会った、黒いぼろをまとった緑の目の男が、木々の間から出てきた。ほかの者も、もっとよく聞こうとあとに続いた。ついに息が切れて、私は黙った。
「少しだけ私の話を聞きなさい」と、モローの落ち着いた声がした。「そのあとで、好きなことを言えばいい。」
「何です?」と私は言った。
モローは咳払いし、考え、それから叫んだ。「ラテン語だ、プレンディック! ひどいラテン語だ。学生程度のな。だが、わかってくれ。Hi non sunt homines; sunt animalia qui nos habemus[訳注:彼らは人間ではない。われわれが持つ動物だ、の意。文法に誤りがある]――生体解剖した動物だ。人間化の処置なのだ。説明しよう。岸へ来なさい。」
私は笑った。「うまい作り話ですね」と言った。「あいつらは話し、家を建てる。人間だったんです。岸へ行くものですか。」
「立っている場所のすぐ先は深い――それに、サメだらけだ。」
「それが私の逃げ道です」と私は言った。「手短に、きっぱりと。もうじきです。」
「少し待ちなさい。」
モローはポケットから何かを取り出した。それは日光を反射して光り、足元へ落とされた。「弾の入ったリボルバーだ」と言った。「ここにいるモンゴメリーも同じようにする。われわれはこれから浜を上がり、あなたが安全な距離だと思うところまで行こう。それから岸へ来て、拳銃を取るといい。」
「行きません! 二人のどちらかが、3挺目を持っているでしょう。」
「よく考えてもらいたい、プレンディック。第一に、私はこの島へ来てくれと頼んだことはない。人間を生体解剖するのなら、獣ではなく人間を連れてくるはずだ。第二に、危害を加えたかったのなら、昨夜、薬で眠らせていた。そして次に、最初の恐慌が去り、少しは考えられるようになった今、ここにいるモンゴメリーは、あなたの考えるような人間かね? われわれは、あなたのために追ったのだ。この島は――敵意ある現象に満ちているからだ。それに、自分から溺死すると言っている人間を、どうしてわざわざ撃ちたいと思う?」
「では、なぜ――小屋にいたとき、あなたの連中を私へけしかけたんです?」
「必ず捕まえて、危険から連れ出せると思ったからだ。そのあとは、あなたのために、匂いの跡から離れた。」
私は考え込んだ。あり得ない話ではなかった。それから、またあることを思い出した。「でも、私は見ました」と言った。「囲いの中で――」
「あれはピューマだ。」
「いいかい、プレンディック」とモンゴメリーは言った。「君は大馬鹿だ! 水から出て、この拳銃を取り、話をしよう。今できること以上のことは、僕たちにもできない。」
そのときも、そして実際いつも、私はモローを信じず、恐れていたと認めよう。だがモンゴメリーは、理解できると思える人間だった。
「浜を上がってください」と、考えてから私は言った。そして付け加えた。「両手を上げて。」
「それはできない」とモンゴメリーは言い、理由を示すように肩越しにうなずいた。「威厳がなくなる。」
「では木々のところまで行ってください」と私は言った。「好きなように。」
「とんだ馬鹿げた儀式だ」とモンゴメリーは言った。
二人とも向きを変え、6、7体の異様な生き物に向き合った。生き物たちは日差しの中に立ち、実体を持ち、影を落とし、動いていながら、信じられないほど現実離れしていた。モンゴメリーが彼らへ鞭を鳴らすと、たちまち全員が振り向き、われ先に木々へ逃げた。モンゴメリーとモローが、十分だと思える距離まで離れると、私は水を歩いて岸へ戻り、リボルバーを拾って調べた。どんな巧妙な仕掛けにもだまされていないと確かめるため、一挺で丸い溶岩の塊を撃った。石が砕け、浜に鉛が飛び散るのを見て、満足した。それでも、まだ一瞬ためらった。
「賭けてみましょう」と、ようやく私は言った。両手に一挺ずつリボルバーを持ち、浜を上がって二人へ向かった。
「それでいい」とモローは、気取らずに言った。「まったく、あなたの忌々しい想像力のおかげで、一日の大半を無駄にした。」
そして、私を辱めるような、かすかな軽蔑を示して、モローとモンゴメリーは向きを変え、無言で私の前を歩いていった。
獣人の一団は、まだ不思議そうにしながら、木々の間へ下がって立っていた。私はできるだけ平静を装って、その前を通った。一体がついてこようとしたが、モンゴメリーが鞭を鳴らすと、また退いた。ほかの者たちは黙って立ち、見ていた。かつては動物だったのかもしれない。だが、考えようとする動物を、私はそれまで一度も見たことがなかった。
第十四章 モロー博士の説明
「さて、プレンディック、説明しよう」と、食事と飲み物を済ませるなり、モロー博士は言った。「正直なところ、これほど命令好きな客を迎えたのは初めてだ。言っておくが、君の要求に応じるのはこれが最後だぞ。次に何かしてくれなければ自殺すると脅しても、私は従わん。多少こちらが困ることになってもな。」
博士は私のデッキチェアに腰掛け、白い、いかにも器用そうな指に、半ば吸い終えた葉巻を挟んでいた。揺れるランプの光が白髪に落ちていた。小さな窓越しに、星明かりの外を見つめている。私はテーブルを挟んで、できるだけ遠くに座り、拳銃を手元に置いた。モンゴメリーはいなかった。こんな狭い部屋で二人を同時に相手にする気にはなれなかったのだ。
「君が生体解剖された人間と呼んでいたものは、結局ただのピューマだったと認めるのだな?」とモローは言った。博士は私を奥の部屋へ連れていき、あの恐ろしいものが人間ではないことを、じかに確かめさせていた。
「ピューマでした」と私は言った。「まだ生きていましたが、あれほど切り刻まれ、姿を変えられた生きた肉体は、二度と見たくありません。あらゆる卑劣な――」
「その話はいい」とモローは言った。「せめて、若者じみた恐怖の感想は勘弁してくれ。モンゴメリーも昔はまったく同じだった。あれがピューマだと認めるのだな。それでは黙って、私の生理学講義を聞きたまえ。」
そして博士はさっそく自分の仕事を説明し始めた。最初はひどく退屈そうな口調だったが、やがて少し熱が入ってきた。説明はきわめて明快で、説得力があった。ときおり声に皮肉が交じった。しばらくすると、私は互いの立場を思い、恥ずかしさに顔が熱くなるのを感じた。
私の見た生き物は人間ではなく、かつて人間だったこともなかった。動物だった。人間に変えられた動物――生体解剖の勝利の産物だった。
「熟練した生体解剖者が生き物に何をなしうるか、君は忘れている」とモローは言った。「私にはむしろ、ここでやってきたことが、なぜ以前に誰も手がけなかったのか不思議なのだ。もちろん、ささやかな試みはあった。手足の切断、舌の切除、組織の摘出。手術で斜視を起こしたり治したりできることは、当然知っているだろう? また、組織を摘出すれば、さまざまな二次的変化が生じる。色素の異常、情動の変化、脂肪組織の生成の変化などだ。この程度のことは聞いたことがあるだろうね?」
「もちろんです」と私は言った。「しかし、あなたのあの忌まわしい生き物は――」
「順を追って話す」と博士は手を振って私を制した。「まだ話し始めたばかりだ。今挙げたのは、ごく些細な改変にすぎん。外科手術にはもっと大きなことができる。壊したり変えたりするだけでなく、造り上げることもできるのだ。鼻を失った場合によく行われる手術を、君も聞いたことがあるだろう。額から皮膚の一片を切り起こし、鼻の位置へ折り下げ、そこで癒着させる。これは、動物の体の一部を、同じ動物の別の場所へ移植する一種の接ぎ木だ。別の動物から採ったばかりの組織も移植できる。歯などがその例だ。皮膚や骨の移植は、傷の治癒を促すために行われている。外科医は傷の中に、別の動物から切り取った皮膚片や、殺したばかりの動物から採った骨片を置く。ハンターの雄鶏の蹴爪――聞いたことがあるかもしれんが――は、雄牛の首に移されて成長した。アルジェリアのズアーブ兵[訳注:フランス軍の北アフリカ歩兵部隊]が作ったサイ鼠も挙げてよいだろう。普通の鼠の尾の一片を鼻先へ移し、そこで癒着させて作った怪物だ。」
「作った怪物ですって!」と私は言った。「では、あなたは――」
「そうだ。君が見た生き物は、動物を切り削り、造り替え、新たな姿にしたものだ。生きた形態の可塑性を調べること、それに私は生涯を捧げてきた。長年研究を続け、そのたびに知識を増やしてきたのだ。君は恐ろしい顔をしているが、私は何も新しいことを話してはいない。すべて何年も前から、応用解剖学の表面に顔を出していた。だが誰にも、それに手をつけるだけの大胆さがなかった。私が変えられるのは、動物の外形だけではない。生理機能、つまりその生き物の化学的な律動にも、恒久的な変化を与えられる。種痘や、生きた物質、死んだ物質を接種するほかの方法は、君にもなじみのある例だろう。同種の操作としては輸血もある。実際、私が最初に手がけたのはそれだった。ここまではどれも、よく知られた例だ。あまり知られていないが、おそらくはるかに大がかりだったのは、中世の施術者たちの仕事だ。彼らは小人や、物乞いにするための不具者、見世物の怪物を作った。その技術の名残は、若い大道芸人や曲芸師の体を仕込む処置にもまだ残っている。ヴィクトル・ユゴーは『笑う男』で彼らについて書いている。――だが、もう私の言いたいことがわかってきたのではないかね。動物の体の一部から別の部分へ、あるいは一匹から別の一匹へ組織を移すこと、その化学反応や成長の仕方を変えること、四肢の関節の構造を変えること、さらには体の最も奥深い構造まで変えてしまうことが、可能なのだとわかり始めているはずだ。
「しかも、この驚くべき知識の分野を、それ自体のために体系的に追究した近代の研究者は、私が着手するまで一人もいなかった! 外科手術の最後の手段として、同じようなことが偶然発見された例はいくつかある。君が思い浮かべる関連の証拠も、その大半は、いわば偶然に示されたものだ。暴君、犯罪者、馬や犬の飼育者、目先の目的のために働く、訓練も受けていない不器用な人間たちによってな。消毒外科と、成長の法則についての真に科学的な知識を備えて、この問題に取り組んだ最初の人間は私だ。とはいえ、以前にもひそかに行われていたと思いたくなる。シャム双生児[訳注:当時広く知られた結合双生児]のような存在――それに、異端審問の地下室でも。主眼は、むろん技巧を凝らした拷問だったろうが、審問官の何人かには、科学的な好奇心もあったはずだ。」
「しかし」と私は言った。「あの生き物は――あの動物は、言葉を話します!」
博士はそのとおりだと答え、生体解剖の可能性は、単なる肉体の変形にとどまらないと指摘した。豚でも教育はできる。精神の構造は、肉体の構造よりなお不確定なのだ。発展しつつある催眠術の科学には、新たな暗示によって生来の古い本能を乗り越え、遺伝した固定観念に別の観念を接ぎ足したり、置き換えたりできる可能性が見えている。いわゆる道徳教育のかなりの部分も、そうした本能の人為的な改変や歪曲にほかならない、と博士は言った。闘争心は勇敢な自己犠牲へと仕込まれ、抑圧された性欲は宗教的感情へと変えられる。そして、人間と猿の大きな違いは喉頭にある、と博士は続けた。猿には、思考を支える、微妙に異なる音声の記号を作れないのだという。この点では私は同意できなかったが、博士は少々無礼にも私の反論を取り合わなかった。そういうものなのだと繰り返し、自分の仕事の説明を続けた。
私は、なぜ人間の姿を手本に選んだのかと尋ねた。その選択には、当時も今も、奇妙な邪悪さがあるように思える。
博士は、その姿を選んだのは偶然だと認めた。「羊をラマに、ラマを羊に変える仕事でも、同じようによかったのだ。人間の姿には、どんな動物の姿よりも強く、芸術的な心に訴える何かがあるのだろう。だが、人間を作ることだけに専念してきたわけではない。一度か二度――」博士は、おそらく一分ほど黙り込んだ。「これほどの歳月が! なんと早く過ぎてしまったことか! しかも今日は、君の命を救うために一日を潰し、今また自分の説明に一時間を費やしている!」
「しかし」と私は言った。「まだわかりません。これほどの苦痛を与えることを、何によって正当化するのです? 私が生体解剖を許せるとしたら、何らかの役に立つ――」
「そのとおり」と博士は言った。「だがね、私の性分は違うのだ。我々は立っている場所が違う。君は唯物論者だ。」
「私は唯物論者ではありません」と私はかっとして言いかけた。
「私から見ればだ――私から見れば。なぜなら、我々を隔てているのは、まさにこの苦痛の問題なのだから。苦痛を目や耳で感じて気分を悪くする限り、自分の痛みに動かされる限り、罪についての主張の根底に苦痛がある限り、君は動物なのだ。動物が感じていることを、いくらか明瞭に考えているだけだ。この苦痛というものは――」
そんな詭弁に、私はいらだって肩をすくめた。
「いや、実に些細なものなのだよ! 科学の教えに真に心を開いた者なら、些細なものだとわかるはずだ。最も近い恒星にたどり着くはるか手前で見えなくなる、この小さな惑星、この宇宙の塵のひとかけらを除けば――よいかね、この苦痛と呼ばれるものは、ほかのどこにも存在しないのかもしれん。だが、我々が手探りで求めている法則は――そもそも、この地球上でさえ、生き物の間でさえ、苦痛がどれほどあるというのだ?」
博士は話しながらポケットから小さな折り畳みナイフを取り出し、小さいほうの刃を開くと、私に腿が見えるよう椅子を動かした。そして慎重に場所を選び、脚に刃を突き刺して引き抜いた。
「これも見たことがあるだろう」と博士は言った。「針で刺すほどにも痛くない。だが、これは何を示す? 筋肉には痛みを感じる能力が必要ないから、備わっていない。皮膚にも大して必要はなく、腿のあちこちに、痛みを感じる点があるだけだ。苦痛とは単に、警告し、行動を促すために体内に備わった医療顧問なのだ。生きた肉がすべて痛むわけではない。神経もそうだ。感覚神経ですら、すべてではない。視神経の感覚には、痛み、本当の痛みは少しも含まれない。視神経を傷つけても、ただ閃光が見えるだけだ。聴覚神経の病気が、ただ耳の中のうなりとなるのと同じだ。植物は痛みを感じないし、下等な動物も感じない。ヒトデやザリガニなどは、まったく痛みを感じないかもしれん。そして人間は、知性が高まるほど、自分の身をより賢く守るようになり、危険から遠ざけるための鞭を必要としなくなる。役に立たないものが、遅かれ早かれ進化によってすり潰されずに残った例など、私は聞いたことがない。君はあるかね? 苦痛も不要になるのだ。
「それに私は信仰のある人間だ、プレンディック。正気の人間なら誰でもそうであるはずだ。おそらく私は君よりも、この世界の造り主のやり方を多く見てきたと思う。生涯、私なりの方法でその法則を探ってきたからだ。一方、君は蝶を集めていたそうだね。そして言っておくが、快楽や苦痛は、天国や地獄とは何の関係もない。快楽と苦痛――ふん! 神学者のいう恍惚など、暗闇の中のマホメットの天女[訳注:イスラムの楽園で信者を迎えるとされる乙女]と何が違う? 男も女も、快楽や苦痛をこれほど重んじるのは、プレンディック、身に獣の刻印がある証拠なのだ。祖先である獣の刻印だ! 苦痛、苦痛と快楽は、我々が塵の中をのたうっている間だけのものだ。
「私はね、この研究が導くままに進んできた。それが、私の知るかぎり、真の研究の唯一の進み方だ。問いを立て、答えを得る方法を考え、すると新たな問いが生まれた。これは可能か、あれは可能か? それが研究者にとって何を意味するか、どんな知的な情熱が育つか、君には想像できまい! こうした知的欲求の、奇妙で色彩のない喜びは想像できまい! 目の前のものは、もはや動物でも、同じ命を持つ仲間でもなく、一つの問題なのだ! 他者の痛みへの共感――私がそれについて知っているのは、何年も前には自分も苦しんでいた、という記憶だけだ。私が望んだのは――ただ一つ望んだのは――生きた形態の可塑性、その極限を知ることだった。」
「しかし」と私は言った。「それは忌まわしい行為です――」
「今日に至るまで、その倫理性について悩んだことはない」と博士は続けた。「自然を研究していると、人間はついには自然と同じほど無慈悲になる。私は追究する問題以外には目もくれず進んできた。そして材料は――向こうの小屋へ流れ出ていった。私とモンゴメリー、それに六人のカナカ人[訳注:当時、太平洋諸島の先住民を指した呼称]がここへ来て、もう十一年近くになる。島の緑の静けさと、その周囲の空虚な海を、昨日のことのように覚えている。ここは私を待っているように思えた。
「物資を陸揚げし、家を建てた。カナカ人たちは谷のそばに小屋を作った。私はここで、持ってきた材料に取りかかった。最初は、いくつか不愉快なことが起こった。まず羊を使ったが、一日半の後、メスを滑らせて死なせてしまった。別の羊を使い、苦痛と恐怖の塊を作り上げ、包帯を巻いて治るのを待った。仕上げたときには、ずいぶん人間らしく見えた。だが、見にいくと不満が湧いた。そいつは私を覚えていて、想像もつかないほど怯えた。しかも知恵は羊のままだった。見れば見るほど出来が悪く思え、最後にはその怪物を苦しみから解放してやった。勇気のない動物、恐怖に取りつかれ、痛みに追い立てられ、苦痛に立ち向かう闘争的な力のひとかけらもないものは、人間を作るには向かない。
「そこで、持っていたゴリラを使った。細心の注意を払い、難題を一つずつ克服し、最初の人間を作ったのだ。丸一週間、昼も夜も、その体を造り替えた。そいつの場合、主に造り替える必要があったのは脳だった。多くを加え、多くを変えねばならなかった。完成したときには、黒人型のまずまずの標本ができたと思った。そいつは包帯を巻かれ、縛られ、私の前にじっと横たわっていた。命が助かると確かめてから、ようやくそばを離れ、この部屋へ戻ってきた。するとモンゴメリーが、今の君と同じような状態だった。あれが人間になっていく途中の叫びを聞いたのだ。君をあれほど悩ませたのと同じ叫びをな。最初は彼にすべてを打ち明けてはいなかった。カナカ人たちも、何かに気づいていた。私を見ると、正気を失いそうなほど怯えた。モンゴメリーは、ある程度は味方につけた。だがカナカ人たちが逃げ出すのを防ぐのには、二人ともひどく苦労した。結局、彼らは逃げた。こうしてヨットを失ったのだ。私は何日もかけて、その獣を教育した。全部で三、四か月は手元に置いた。初歩の英語を教え、数えることを教え、アルファベットまで読ませた。そこは覚えが遅かったが、それより鈍い白痴も見たことがある。精神は白紙の状態から始まった。かつての自分の記憶は、何も残っていなかった。傷がすっかり治り、痛みとこわばりだけが残る状態になって、少し会話もできるようになると、向こうへ連れていき、面白い密航者だとカナカ人たちに紹介した。
「彼らは、どういうわけか最初ひどくそいつを怖がった。私は出来栄えに自信があったので、少々気に障った。だが物腰がおとなしく、あまりに従順なので、やがて仲間に受け入れ、教育を引き受けた。覚えが早く、何でもよく真似し、よく順応した。自分で粗末な小屋を建てたが、私には彼らの小屋より少し出来がよいように見えた。彼らの中に、いくらか宣教師じみた男がいて、そいつに読み方を、少なくとも文字の見分け方を教え、道徳の初歩も授けた。だが、その獣の習慣には、望ましくないところもあったらしい。
「その後、私は数日仕事を休み、一部始終をまとめて、イングランドの生理学界を目覚めさせようかと考えていた。ところが、木の上にうずくまり、からかっていた二人のカナカ人に向かって、猿のような声を上げているそいつを見つけた。私は叱りつけ、そんな振る舞いは人間にあるまじきことだと言い、羞恥心を呼び起こした。そして、研究をイングランドへ持ち帰る前に、もっとよいものを作ろうと決めて帰った。実際、進歩はしている。だが、どういうわけか、また元へ戻っていく。頑固な獣の肉が、日に日に元へ戻っていくのだ。それでも、もっとよいものを作るつもりだ。それを克服するつもりなのだ。このピューマは――
「まあ、これが経緯だ。カナカ人は今では全員死んでいる。一人は小艇から海へ落ち、一人は踵の傷に、何か植物の汁で毒を入れて死んだ。三人はヨットで逃げた。溺れたと思うし、そう願っている。残る一人は――殺された。ともかく、私は代わりを作った。モンゴメリーも最初は、今の君のような振る舞いを続けたが、そのうち――」
「残る一人は、どうなったのです?」と私は鋭く尋ねた。「殺されたというカナカ人は?」
「実は、人間型の生き物を何匹も作った後で、ある〈もの〉を作ったのだ――」博士は言いよどんだ。
「それで?」と私は言った。
「あれは殺した。」
「わかりません」と私は言った。「つまり――」
「そいつがカナカ人を殺した――そうだ。捕まえたほかの生き物も、何匹か殺した。二日ほど追い回した。逃げたのは事故だった。逃がすつもりはなかった。未完成だったのだ。純粋な実験にすぎなかった。手足がなく、恐ろしい顔をして、蛇のように地面をくねって進むものだった。途方もなく力が強く、気が狂うような苦痛を味わっていた。数日間、森に潜んでいたが、我々が狩り出すと島の北部へ逃げた。そこで手分けして包囲することにした。モンゴメリーはどうしても私と来ると言った。あの男は小銃を持っていた。死体が見つかったとき、その銃の片方の銃身はS字に曲がり、噛み切られる寸前だった。そいつはモンゴメリーが撃った。それ以来、私は人間という理想から離れないようにしている。小さなものは別だが。」
博士は黙った。私も黙って、その顔を見つめていた。
「こうして、イングランドでの九年を含めて、全部で二十年、私は続けてきた。それでも、作るものには必ず、私を打ち負かし、不満を抱かせ、さらなる努力へと駆り立てる何かが残る。自分の水準を超えることもあれば、下回ることもある。だが、夢に描いたものには、いつも届かない。人間の姿なら今ではほとんど苦もなく作れる。しなやかで優美なものでも、太く頑丈なものでもな。だが、手や爪では困ることが多い。痛みが強く、思いきった造形ができないのだ。しかし、本当の難しさは、脳に施さねばならない、微妙な移植と造り替えにある。知能が妙に低いことが多く、説明のつかない行き止まりや、思いがけない欠落がある。そして何より不満なのは、感情の座のどこか――どこなのか突き止められない――にあって、私には手をつけられない何かだ。人間らしさを損なう渇望、本能、欲望。奇妙な隠れた貯蔵庫が突然破裂し、その生き物の全身を怒りや憎しみや恐怖で浸してしまう。君は私の生き物を見始めるなり、奇妙で不気味だと感じた。だが私には、作り上げた直後には、疑いようもなく人間に見える。その後、観察するうちに、その確信が薄れていくのだ。まず一つの獣の特徴、次に別の特徴が、表面へ忍び出て、私を見返す。だが、いつか克服してみせる! 生き物を焼けつく苦痛の浴槽へ沈めるたびに、私は言う。『今度こそ、獣をすべて焼き尽くす。今度こそ、自分の手で理性ある生き物を作る!』と。そもそも十年が何だ? 人間ができるまでには十万年かかっている。」
博士は暗い顔で考え込んだ。「だが、核心の砦には近づいている。このピューマは――」しばらく黙ってから言った。「しかも、元へ戻るのだ。私の手を離れた途端、獣が忍び戻り、再び自己を主張し始める。」
また長い沈黙があった。
「では、作ったものを、あの巣穴へ連れていくのですか?」と私は尋ねた。
「自分で行くのだ。獣を感じ始めると、私は追い出す。すると、やがてあそこへ流れていく。どれもこの家と私を恐れている。あそこには、人間の生活の一種の戯画がある。モンゴメリーは知っている。あれらのことに口を出すからな。一、二匹を仕込んで、我々の用を足させている。それを恥じているが、あの獣の何匹かを、半ば好きなのだと思う。彼の仕事であって、私の仕事ではない。私には、失敗を思い知らされて気分が悪くなるだけだ。興味はない。あのカナカ人の宣教師が示した道をたどり、理性的な生活のまねごとをしているのだろう。哀れな獣どもだ! 律法と呼ぶものがある。『すべては汝のもの』などと賛歌を歌う。巣穴を作り、果物を集め、草を摘み、結婚までする。だが私はすべてを見透かせる。その魂の底まで見通し、そこにあるのが獣の魂だけだとわかる。滅びる獣、怒りと、生きたい、自分の欲を満たしたいという欲望だけだ。――とはいえ、奇妙なものではある。ほかの生き物と同じく、複雑なのだ。上へ向かおうとする何かがある。一部は虚栄、一部は余った性的感情、一部は余った好奇心。それはただ私を嘲るばかりだ。このピューマには、多少期待している。頭と脳には、ずいぶん手をかけた――
「さて」と博士は、互いに自分の考えにふけった長い沈黙の後、立ち上がって言った。「どう思うかね? まだ私が怖いか?」
私は博士を見た。そこにいたのは、顔も髪も白い、穏やかな目をした男にすぎなかった。その静穏さ、揺るがぬ落ち着きと堂々たる体格から生まれる、ほとんど美しさと呼べるものを除けば、裕福で気楽な老紳士が百人もいる中に交じっていても、不思議はなかった。だが、私は身震いした。二つ目の問いへの答えとして、両手に一丁ずつ持った拳銃を差し出した。
「持っていたまえ」と博士は言い、あくびを噛み殺した。立ったまま、しばらく私を見つめ、微笑んだ。「君には波乱の二日間だった」と言った。「少し眠ることを勧める。すべてわかってもらえてよかった。おやすみ。」
博士は一瞬、私を見定めるようにしてから、奥の扉から出ていった。
私はすぐ外の扉の鍵を回した。それからまた腰を下ろし、しばらく、よどんだような気分で座っていた。感情も頭も体も疲れ果て、博士が話を終えたところから先へ、何も考えられなかった。黒い窓が、目のように私を見つめていた。やがて、ようやく力を振り絞って明かりを消し、ハンモックへ入った。ほどなく眠りに落ちた。
第十五章 獣人たちについて
私は早く目覚めた。目を開けた瞬間から、モローの説明が明瞭に、はっきりと頭の中にあった。ハンモックを出て扉へ行き、鍵がかかっていることを確かめた。それから窓の鉄棒を試し、しっかり固定されていると知った。人間に似たあの生き物が、実は獣の怪物にすぎず、人間を醜くまねたものにすぎないという事実は、どんなことをしでかすかわからないという漠然とした不安を私に抱かせた。それは、はっきりしたどんな恐怖よりも悪かった。
扉を叩く音がし、ムリンの粘つくような声が聞こえた。私は拳銃の一丁をポケットへ入れ、片手を添えたまま、扉を開けた。
「おはようございましゅ、旦那」とムリンは言い、いつもの草の朝食に加えて、料理の下手な兎を持ち込んだ。その後からモンゴメリーが入ってきた。動き回る目が私の腕の位置をとらえ、口元に歪んだ笑みを浮かべた。
その日はピューマの傷を治すため、手術を休んでいた。だが、ひどく孤独を好むモローは、食卓に加わらなかった。私は獣人たちの暮らしぶりを理解するため、モンゴメリーと話した。とりわけ知りたかったのは、あの人間ならぬ怪物が、どうしてモローとモンゴメリーを襲わず、互いを引き裂きもしないのかということだった。彼の説明では、二人が比較的安全なのは、怪物たちの精神の範囲が限られているためだった。知能を高められ、獣の本能が目覚め直す傾向はあっても、モローが心に植えつけた固定観念があり、それが想像力に絶対の境界を設けていた。実際、催眠状態にあったのだ。あることは不可能だ、あることはしてはならないと教えられ、その禁令が心の組織に織り込まれているため、逆らうことも疑うこともできなかった。
しかし、古い本能がモローの都合と争う事柄については、そこまで安定していなかった。律法と呼ばれる一連の命題――私はすでにその唱和を聞いていた――が、獣性の奥深くに根づき、常に反抗する欲求と、心の中で争っていた。わかってきたのは、彼らがいつもこの律法を繰り返し、いつも破っているということだった。モンゴメリーもモローも、血の味を覚えさせないよう、特に気を配っていた。その味が必ず呼び起こすものを恐れていた。モンゴメリーによると、特にネコ科の獣人の間では、日暮れごろ、律法の力が奇妙に弱まるという。獣が最も強くなる時刻なのだ。薄暮には冒険心が芽生え、昼間には夢想もしないようなことを、あえて行う。そのため、私が着いた夜、ヒョウ男が私につきまとったのだった。だが、滞在の初めのころ、彼らは暗くなってから、こそこそと律法を破るだけだった。昼間は、数々の禁令をおおむね尊重する空気があった。
ここで、島と獣人たちについて、いくつか全般的な事実を述べておこう。島は不規則な輪郭を持ち、広い海面から低く盛り上がっていた。面積は全部で七、八平方マイルほどだったと思う。火山によって生まれ、今では三方を珊瑚礁に縁取られていた。はるか昔に島を生み出した力の名残は、北方のいくつかの噴気孔と、一つの温泉だけだった。ときおり微かな地震の揺れを感じ、立ちのぼる煙の柱が、蒸気の噴出で激しく乱れることもあったが、それだけだった。モンゴメリーの話では、そのとき島には、モローの技術が生んだ奇妙な生き物が六十余りいた。茂みに住む、人間の形をしていない小さな怪物は数に入っていない。全部で百二十近く作ったが、多くは死に、ほかにも、博士が話した、のたうつ〈足のないもの〉のように、非業の死を遂げたものがいた。私が尋ねると、モンゴメリーは、実際に子供を産むが、たいていは死ぬと答えた。生き残れば、モローが引き取り、人間の形を刻みつけた。後から得た人間的特徴が遺伝する証拠はなかった。雌は雄より少なく、律法が一夫一妻を命じていたにもかかわらず、陰でたびたび虐げられていた。
この獣人たちを細かく描写することは、私にはできない。細部を見分ける訓練を積んでいないし、残念ながら絵も描けない。全体の外見で、おそらく最も目立ったのは、脚と胴の長さの釣り合わなさだった。だが――優美さの観念とはこれほど相対的なのだ――目はその姿に慣れ、しまいには、私自身の長い腿のほうが不格好だという彼らの考えにまで同調するようになった。もう一つは、前へ突き出した頭と、ぎこちなく人間離れした背骨の湾曲だった。猿男にさえ、人間の姿を優美にする、背中の内側へのなだらかな曲線がなかった。大半は肩を不格好にすぼめ、短い前腕を力なく脇に垂らしていた。目立って毛深いものは少なかった。少なくとも、私の島での暮らしが終わりに近づくまでは。
次に目立つ異形は顔にあった。ほとんどが顎を突き出し、耳のあたりは形が崩れ、鼻は大きく張り出していた。毛は非常にふさふさしているか、剛毛で、目の色や位置が奇妙なものも多かった。誰も笑えなかった。ただし、猿男は甲高い声で細かく笑った。こうした一般的特徴のほかには、頭部の共通点はほとんどなかった。それぞれが元の種の性質を保っていた。人間の印は姿を歪めてはいたが、材料となったヒョウや牛や雌豚、そのほか一種または数種の動物を、隠しきってはいなかった。声も実にさまざまだった。手は必ず奇形だった。思いがけず人間らしい手に驚かされることもあったが、ほとんどは指の数が足りず、爪の周囲の造りが悪く、触覚がなかった。
最も恐ろしい二人の獣人は、私を追ったヒョウ男と、ハイエナと豚から作られた生き物だった。それより大きかったのは、舟を引き上げた三人の牛男だった。次いで、律法の説き手でもある銀毛の男、ムリン、そして猿と山羊から作られたサテュロスのような生き物がいた。三人の豚男と一人の豚女、サイ馬の生き物、それに何を材料にしたのかわからない雌が何人かいた。オオカミの生き物が数人、クマ牛とセントバーナード男もいた。猿男についてはすでに述べた。ほかに、雌ギツネと熊から作られた、ひどく憎らしい、悪臭を放つ老女がいて、私は最初から嫌っていた。律法の熱烈な信奉者だということだった。小さいものでは、まだら模様の若者たちと、私の小さなナマケモノの生き物がいた。だが、名簿はこのくらいにしておこう。
初めは、私はこの獣どもに震え上がるほどの恐怖を抱き、依然として獣なのだということを、いやというほど感じていた。だが知らぬ間に、その存在に少し慣れていった。さらに、モンゴメリーの態度にも影響された。彼はあまりに長く一緒にいたので、ほとんど普通の人間と見なすようになっていた。ロンドンでの日々は、輝かしく、ありえない過去に思えるという。年に一度ほど、アフリカへ行き、モローの代理人である現地の動物商と取引するだけだった。スペイン系の混血者が住むその船乗りの村で、上等な人間に出会うことはほとんどなかった。船上の人間は、最初は彼にとって、私にとっての獣人と同じほど奇妙に見えるのだと言った。脚が不自然に長く、顔は平たく、額は突き出し、疑い深く、危険で、冷酷なのだ。実際、彼は人間が好きではなかった。私に親しみを感じたのは、私の命を救ったからだろうと考えていた。私はそのころから、彼が変形された獣の何匹かにひそかな愛情を持ち、その習性のいくつかに、好ましからぬ共感を抱いていると感じていた。ただ、初めは私に隠そうとしていた。
黒い顔をしたモンゴメリーの従者ムリン、私が最初に出会った獣人は、島の向こう側でほかの者と暮らさず、囲いの裏手にある小さな犬小屋に住んでいた。猿男ほどの知能はなかったが、はるかに従順で、獣人の中では最も人間らしい姿をしていた。モンゴメリーは料理を仕込み、そのほか必要な細々した家事も、すべてこなせるようにしていた。ムリンはモローの恐るべき技術の、複雑な戦利品だった。犬と牛の要素を混ぜられた熊で、博士の生き物の中でも、最も入念に造られたものの一つだった。モンゴメリーには、奇妙な優しさと献身を示した。彼が気にかけ、撫でてやり、半ばからかい、半ばふざけた呼び名で呼ぶと、ムリンは並外れた喜びで跳ね回った。反対に彼が虐待することもあった。とりわけウイスキーを飲んだ後には、蹴り、殴り、石や火のついたマッチを投げた。だが、優しくされてもひどく扱われても、ムリンは彼のそばにいることを何より好んだ。
獣人たちに慣れたと言った。初めは不自然で不快に思えた無数のことが、たちまち自然で普通のことになった。存在するすべてのものは、周囲の平均的な色合いに染まるのだろう。モンゴメリーとモローはあまりに特殊で個性的だったため、人間一般についての印象を、私の中にはっきり保たせることができなかった。小艇を扱う不格好な牛の生き物が、茂みの中を重い足取りで歩くのを見ると、単調な労働を終えて家路をたどる本物の田舎者と、いったい何が違うのか、必死に思い出そうとする自分に気づいた。あるいは、キツネクマ女の、狐らしくずるそうな顔に出会うと、その打算的な狡猾さが妙に人間めいていて、どこか都会の裏通りで会ったことさえある気がした。
それでも、ときおり、疑いも否定も許さぬ獣性が、突如として目の前に現れた。見たところ、背の曲がった野蛮人そのものの醜い男が、巣穴の入口にうずくまり、腕を伸ばしてあくびをする。すると、鋏の刃のような門歯と、サーベルのような犬歯が、思いがけないほど突然あらわになる。ナイフのように鋭く、光っている。あるいは狭い道で、白い布をまとったしなやかな女の姿に、一瞬の大胆さから目を合わせると、瞳孔が細い裂け目になっているのを見て、痙攣するような嫌悪に襲われた。また、目を下へやれば、形のない衣を押さえる曲がった爪が見えた。ところで、この異様な生き物――雌のことだ――は、私の滞在の初めのころ、自分たちの不快な不格好さを本能的に意識し、そのため、体を広く覆う服装の慎みと礼儀を、人間以上に重んじていた。奇妙なことで、私にはまったく説明がつかない。
第十六章 獣人たちが血の味を知る
書き手としての未熟さが顔を出し、話の筋からそれてしまった。
モンゴメリーと朝食を取った後、私は彼に連れられて島を横切り、噴気孔と、前日にうっかり熱湯へ踏み込んだ温泉の源を見にいった。二人とも鞭と、弾を込めた拳銃を持っていた。途中、葉の茂る密林を通っていると、兎の悲鳴が聞こえた。足を止めて耳を澄ませたが、もう何も聞こえず、やがてまた歩き出し、その出来事は頭から消えた。モンゴメリーは、長い後脚で茂みの中を跳ねる、桃色の小動物を指さした。獣人の子供を材料に、モローが考案した生き物だという。食肉に使えるかと思ったが、兎のように自分の子を食う習性のため、その目論見は外れた。私はすでに何匹かに出会っていた。一度は月明かりの中、ヒョウ男から逃げたとき、もう一度は前日モローに追われたときだった。たまたま一匹が、私たちを避けようとして跳ね、風で倒れた木の根が抜けた穴へ落ちた。抜け出す前に、私たちは捕まえることができた。猫のように威嚇し、引っかき、後脚で激しく蹴り、噛もうともした。だが、歯が弱く、噛まれても、痛くない程度につねられるだけだった。私には、なかなか可愛い小動物に思えた。モンゴメリーによると、穴を掘って芝を荒らすこともなく、習性もたいへん清潔だというので、紳士の邸園では、普通の兎の代わりに重宝するかもしれないと思った。
途中では、樹皮が長く筋状に剥がされ、深く裂けた木の幹も見た。モンゴメリーはそれを指さした。「木の皮を爪で引っかいてはならぬ。それこそ律法だ」と言った。「まったく、守る気のない奴らがいる!」
サテュロスと猿男に会ったのは、その後だったと思う。サテュロスには、モローの古典の記憶が一筋きらめいていた。顔は羊のような表情で、粗野なヘブライ人の顔つきに似ていた。声は耳障りな羊の鳴き声で、下半身は悪魔そのものだった。すれ違うとき、莢のような果実の皮をかじっていた。二人ともモンゴメリーに挨拶した。
「幸あれ」と二人は言った。「鞭を持つ、もう一人のお方に!」
「今は三人目の鞭を持つ者もいるぞ」とモンゴメリーは言った。「せいぜい気をつけるんだな!」
「作られたのではないのか?」と猿男は言った。「この人は言った――作られたと言った。」
サテュロス男は、不思議そうに私を見た。「三人目の鞭を持つ者、泣きながら海へ歩いていく者は、細く白い顔をしている。」
「細くて長い鞭も持っている」とモンゴメリーは言った。
「昨日は血を流して泣いた」とサテュロスは言った。「おまえは血も流さず、泣きもしない。主は血も流さず、泣きもしない。」
「オレンドルフ式の野郎め! [訳注:同じ構文を反復する当時の語学学習法にかけた罵り]」とモンゴメリーは言った。「気をつけないと、おまえが血を流して泣くことになるぞ!」
「指が五本ある。俺と同じ五本指の人間だ」と猿男は言った。
「行こう、プレンディック」とモンゴメリーは私の腕を取った。私は彼と歩き出した。
サテュロスと猿男は立ったまま私たちを見送り、互いにまだ何か言い合っていた。
「何も言わない」とサテュロスは言った。「人間には声がある。」
「昨日、俺に食べるものを聞いた」と猿男は言った。「知らなかったのだ。」
それから、聞き取れないことを話し、サテュロスの笑い声がした。
死んだ兎に出くわしたのは、帰り道だった。哀れな小動物の赤い体はずたずたに引き裂かれ、肋骨の多くは肉を剥がれて白くなり、背骨には明らかな歯の跡があった。
モンゴメリーは立ち止まった。「何てことだ!」と言ってかがみ、砕けた椎骨をいくつか拾い、詳しく調べた。「何てことだ!」と繰り返した。「どういうことなんだ?」
「あなたの肉食動物の誰かが、昔の習性を思い出したのでしょう」と、少し間を置いて私は言った。「この背骨は噛み切られています。」
彼は青ざめ、唇を歪めて、立ったまま見つめていた。「これはまずい」と、ゆっくり言った。
「同じようなものを見ました」と私は言った。「ここへ来た最初の日に。」
「何だって! 何を?」
「頭をねじ切られた兎です。」
「来た日に?」
「来た日です。夕方外へ出たとき、囲いの裏の茂みで。頭は完全にねじ切られていました。」
彼は低く、長く口笛を吹いた。
「それに、どの獣がやったか、心当たりもあります。ただの疑いですがね。兎を見つける前に、あなたの怪物が一匹、川で水を飲んでいるのを見ました。」
「口で吸っていたのか?」
「ええ。」
「『飲み物を口で吸ってはならぬ。それが律法』。まったく、モローがいなければ、獣どもは律法なんか気にもかけないってわけだ!」
「私を追いかけた獣です。」
「なるほど」とモンゴメリーは言った。「肉食動物はそうするんだ。獲物を殺した後、水を飲む。血の味のせいだ。――どんな奴だった?」と続けた。「また見たらわかるか?」
彼は兎の残骸をまたいで立ち、周囲を見回した。目は緑の陰や葉の幕を走り、私たちを取り囲む森の隠れ場所や伏せ場所を探っていた。「血の味だ」と、また言った。
拳銃を抜き、弾を確かめ、元に戻した。それから、垂れた唇を引っ張り始めた。
「もう一度見ればわかると思います」と私は言った。「殴って気絶させました。額に立派な痣があるはずです。」
「だが、そいつが兎を殺したと証明しなければならない」とモンゴメリーは言った。「こんなもの、持ち込まなければよかった。」
私は先へ行きたかったが、彼はずたずたの兎の前にとどまり、頭を混乱させて考え込んでいた。私は兎の残骸が見えなくなるところまで歩いた。
「行きましょう!」
私は言った。
やがて彼は我に返り、私のほうへ来た。「いいか」と、ほとんど囁くように言った。「あいつらには皆、陸を走るものは食べてはならないという固定観念があるはずなんだ。何かの拍子に、どれかが血を味わったとなると――」
しばらく黙って歩いた。「何が起きたんだろう」と彼は独り言を言った。それからまた間を置き、「この前、馬鹿なことをした。あの従者に――兎の皮の剥ぎ方と料理の仕方を教えたんだ。変だな――手を舐めているのを見た――思いもしなかった。」
それから、「これは止めなければ。モローに知らせないと。」
帰り道、彼の頭にはそのことしかなかった。
モローはモンゴメリー以上に事態を深刻に受け止めた。二人の明らかな狼狽が私にも伝わったことは、言うまでもない。
「見せしめが必要だ」とモローは言った。「犯したのはヒョウ男だと、私は疑っていない。だが、どう証明する? モンゴメリー、君が肉への食欲を抑え、こんな刺激的な新顔を持ち込まなければよかったのだ。これで厄介なことになるかもしれん。」
「馬鹿だった」とモンゴメリーは言った。「だが、もうやってしまった。それに、飼ってもいいと言ったのは、あなたですよ。」
「すぐ対処しなければならん」とモローは言った。「何か起こっても、ムリンは自分で身を守れるだろう?」
「ムリンのことは、そう確信が持てません」とモンゴメリーは言った。「よく知っているつもりなんですが。」
午後、モロー、モンゴメリー、私、それにムリンは、島を横切って谷の小屋へ向かった。私たち三人は武装していた。ムリンは薪を割る小さな手斧と、巻いた針金をいくつか持っていた。モローは牛飼いの使う大きな角笛を肩から下げていた。
「獣人の集会を見ることになる」とモンゴメリーは言った。「見ものだぞ!」
モローは道中一言も話さなかったが、白い毛に縁取られた重々しい顔には、険しい決意が刻まれていた。
湯気を立てて温水が流れる谷を渡り、葦の茂みの間の曲がりくねった道を進んだ。やがて、黄色い粉状の物質が厚く覆った広場へ出た。硫黄だったと思う。雑草に覆われた土手の肩越しに、海がきらめいていた。浅い天然の円形劇場のような場所に入り、四人はそこで止まった。それからモローが角笛を吹き、熱帯の午後の眠るような静寂を破った。肺がよほど強かったに違いない。響き渡る低い音は、反響の中で次々と高まり、ついには耳を貫く強さになった。
「ああ!」とモローは言い、曲がった笛をまた脇へ下ろした。
すぐに黄色い葦の中でがさがさ音がし、前日私が走り抜けた沼地を覆う、濃い緑の密林から声が聞こえた。次いで、硫黄の広場の端の三、四か所に、急いでこちらへ来る獣人たちの異様な姿が現れた。木々や葦の間から一人、また一人と小走りで出てきて、熱い粉塵の上をぎこちなく進むのを見ると、恐怖が背を這い上がるのを抑えられなかった。だがモローとモンゴメリーは平然と立っていた。私もやむなく、そのそばに踏みとどまった。
最初に来たのはサテュロスだった。影を落とし、蹄で土を蹴り上げているのに、奇妙に現実離れしていた。次いで葦の中から、馬とサイを合わせた、怪物じみた大柄な生き物が、藁を噛みながら現れた。それから豚女と二人のオオカミ女、尖った赤い顔に赤い目をしたキツネクマの魔女、さらにほかの者たちが、皆熱心に急いで来た。近づくにつれ、モローに身をすくめ、それぞれ勝手に、律法の連祷の後半の断片を唱え始めた。「傷を与える手は彼のもの、癒す手は彼のもの」などと。三十ヤードほどの距離まで来ると止まり、膝と肘をついてひれ伏し、白い粉塵を頭に振りかけ始めた。
できることなら、その光景を想像してほしい! 燃えるような青空の下、日を浴びた黄色い粉塵の広場に、青い服を着た私たち三人と、黒い顔をした奇形の従者が立っている。周囲には、うずくまり、身振りをする怪物の輪がある。微妙な表情と動作を除けばほとんど人間に見えるもの、不具者のようなもの、あまりに奇怪に歪み、最も荒唐無稽な夢の住人にしか見えないもの。そしてその向こう、一方には葦の茂みが線をなし、もう一方には、小屋のある谷と私たちを隔てる、密集した椰子の木々があり、北には霞んだ太平洋の水平線がある。
「六十二、六十三」とモローは数えた。「あと四つだ。」
「ヒョウ男が見えません」と私は言った。
やがてモローは、もう一度大きな角笛を鳴らした。その音に、獣人たちは皆、粉塵の中で身をよじり、ひれ伏した。そのとき、葦の茂みからヒョウ男が忍び出てきた。地面近くまで身をかがめ、モローの背後から、粉をかぶる輪に交じろうとしていた。最後に着いたのは小さな猿男だった。先にいた獣たちは、ひれ伏して暑く、疲れた身で、彼に険しい目を向けた。
「やめよ!」とモローが、力強い大声で言った。獣人たちは尻を落とし、礼拝をやめた。
「律法の説き手はどこだ?」とモローが言うと、灰色の毛深い怪物が顔を粉塵につけた。
「言葉を唱えよ!」とモローは言った。
たちまち、ひざまずく一同は左右に揺れ、手で硫黄を跳ね上げながら――まず右手でひと吹き、次に左手で――再び奇妙な連祷を唱え始めた。「肉や魚を食べてはならぬ。それが律法」というところで、モローは細長い白い手を上げた。
「止まれ!」と叫ぶと、一同に完全な沈黙が落ちた。
皆、これから何が起こるかを知り、恐れていたのだと思う。私はその奇妙な顔を見回した。身をすくめる姿と、光る目に潜む恐怖を見ると、かつて人間だと思ったことが不思議だった。
「その律法が破られた!」とモローは言った。
「逃れる者なし」と、銀毛の、顔のはっきりしない生き物が言った。「逃れる者なし」と、ひざまずく獣人の輪が繰り返した。
「誰だ?」とモローは叫び、鞭を鳴らして顔を見回した。ハイエナ豚がしょげて見えた。ヒョウ男もそうだった。モローはその前に立ち止まった。ヒョウ男は、果てしない苦痛の記憶と恐怖に、博士へ向かって身を縮めた。
「誰だ?」とモローは、雷のような声で繰り返した。
「律法を破る者は悪しき者」と、律法の説き手は唱えた。
モローはヒョウ男の目を見据え、その魂まで引きずり出そうとしているようだった。
「律法を破る者は――」とモローは、犠牲者から目を離し、私たちへ向き直って言った。その声には、得意げな響きがあるように思えた。
「苦痛の家へ戻る」と、皆が叫んだ。「苦痛の家へ戻る、おお、主よ!」
「苦痛の家へ戻る――苦痛の家へ戻る」と猿男は早口に言った。その考えが嬉しいかのようだった。
「聞こえたかね?」とモローは罪人に向き直った。「君――おい!」
モローの目から解放されたヒョウ男は、ひざまずいた姿勢からまっすぐ立ち上がっていた。そして今、目を燃やし、めくれた唇の下に巨大なネコ科の牙を閃かせ、拷問者に飛びかかったのだ。この攻撃を駆り立てたのは、耐えきれない恐怖が生んだ狂気だけだったと、私は確信している。六十余りの怪物の輪が、私たちの周囲で一斉に立ち上がったようだった。私は拳銃を抜いた。二つの姿が衝突した。ヒョウ男の一撃に、モローがよろめいて後退するのが見えた。周囲で凄まじい叫びとうなりが上がった。誰もが激しく動いていた。一瞬、総反乱かと思った。怒り狂うヒョウ男の顔が私の横を走り抜け、ムリンがぴたりと追った。ハイエナ豚の黄色い目が興奮に燃え、半ば私を襲おうと決めたような構えをしているのが見えた。サテュロスも、ハイエナ豚の丸まった肩越しに私を睨んだ。モローの拳銃が鳴り、桃色の閃光が混乱を横切った。一群はその火のきらめきへ向かって大きく向きを変え、私も、その動きに引き寄せられて向きを変えた。次の瞬間には、騒々しく叫ぶ群れの一人として、逃げるヒョウ男を追って走っていた。
確かに言えるのは、それだけだ。ヒョウ男がモローを殴ったのを見た。それから周囲のすべてが回転し、気づけば私は全速力で走っていた。先頭にはムリンがいて、逃亡者に迫っていた。その後をオオカミ女たちが、早くも舌を垂らし、大きく跳ねるように走っていた。豚たちが興奮して甲高く鳴きながら続き、白い布に包まれた二人の牛男が続いた。その後、獣人の一団の中にモローがいた。広いつばの麦藁帽子は吹き飛び、手には拳銃を持ち、長い白髪をなびかせていた。ハイエナ豚は私の隣を同じ速さで走り、ネコ科の目でこそこそ私を見ていた。ほかの者は、足音を立て、叫びながら後に続いた。
ヒョウ男は長い葦を押し分けて突進した。葦は通過した後にはね戻り、ムリンの顔を打った。後続の私たちが茂みに着くころには、踏み倒された道ができていた。四分の一マイルほど葦の中を追い、それから濃い藪へ突っ込んだ。皆まとまって進んだが、ここでは動きがひどく鈍った。葉が顔を打ち、縄のような蔓が顎の下や足首に絡み、棘のある植物が服と肉を一緒に引っかけて裂いた。
「ここは四つ足で抜けたな」と、今は私のすぐ前にいたモローが、息を切らして言った。
「逃れる者なし」とオオカミ熊が、狩りの歓喜に笑いながら私の顔へ言った。再び岩場へ飛び出すと、前方で獲物が軽々と四つ足で走り、肩越しにこちらへ唸っていた。それを見て、オオカミたちは喜びの遠吠えを上げた。その〈もの〉はまだ服を着ていて、遠目には顔も人間に見えた。だが四肢の運びはネコ科のものだったし、こそこそと肩を落とす姿は、明らかに追われる獣だった。黄色い花の咲いた棘のある茂みを跳び越え、見えなくなった。ムリンは開けた場所を半分ほど渡っていた。
私たちの大半は、追跡の初めの速さを失い、長く安定した歩幅へ移っていた。開けた場所を横切る間、追跡隊が縦の列から横の列へ広がっているのが見えた。ハイエナ豚は依然として私のすぐそばを走り、私を見ながら、ときおり鼻面を歪め、唸るように笑った。岩場の端で、ヒョウ男は、到着した夜に私をつけた岬へ向かっていると気づき、茂みの中で方向を変えた。だがモンゴメリーがそれを見て、再び追い返した。こうして私は、息を切らし、岩にぶつかり、茨に引き裂かれ、シダや葦に阻まれながら、律法を破ったヒョウ男を追った。ハイエナ豚は、野蛮に笑いながら横を走った。頭がくらみ、心臓が肋骨を叩き、死ぬほど疲れても、私はよろめきながら進んだ。この恐ろしい連れと二人きりにならぬよう、追跡隊を見失うわけにはいかなかった。限りない疲労と、熱帯の午後の重苦しい暑さにもかかわらず、私は進み続けた。
ついに、狩りの狂奔が弱まった。哀れな獣を、島の一角へ追い詰めたのだ。モローは鞭を手に、私たちを不規則な列へ並べた。今はゆっくり進み、互いに声をかけ、獲物を囲む輪を締めていった。あの真夜中の追跡で、私が彼から逃げて走り抜けた藪に、彼は音も姿もなく潜んでいた。
「落ち着け!」とモローは叫んだ。「落ち着け!」列の両端が、絡み合う藪を回り込み、獣を囲んでいった。
「突進に気をつけろ!」と、藪の向こうからモンゴメリーの声がした。
私は藪の上の斜面にいた。モンゴメリーとモローは、下の浜辺から探っていた。枝葉の複雑な網の中へ、私たちはゆっくり押し入った。獲物は沈黙していた。
「苦痛の家へ戻れ、苦痛の家、苦痛の家!」と、二十ヤードほど右で猿男が甲高く叫んだ。
それを聞いたとき、あの哀れな生き物が私にもたらした恐怖を、私はすべて許した。右手でサイ馬が重く踏み進み、小枝が折れ、枝が払いのけられる音が聞こえた。そのとき突然、緑に囲まれた多角形の隙間から、繁茂する草木の下の薄闇に、追っている生き物が見えた。私は止まった。彼はできるだけ小さく体を縮め、光る緑の目を肩越しに向け、私を見ていた。
私自身の奇妙な矛盾と思われるかもしれない。私にも説明はできない。だが、その生き物が完全に動物の姿勢でうずくまり、目を光らせ、なりきれない人間の顔を恐怖に歪めているのを見て、私は再び、その人間性を悟った。あと一瞬で、ほかの追跡者も見つけ、押さえつけて捕らえるだろう。そして囲いの中で、またあの恐るべき拷問を受けるのだ。私は不意に拳銃を抜き、恐怖に満ちた両目の間を狙い、撃った。その瞬間、ハイエナ豚がそいつを見つけ、貪るような叫びとともに飛びつき、血に飢えた歯を首へ突き立てた。獣人たちが駆け集まり、周囲の緑の藪が揺れ、折れた。一つ、また一つと顔が現れた。
「殺すな、プレンディック!」とモローは叫んだ。「殺すな!」大きなシダの葉の下を、かがんで押し分けてくる姿が見えた。
次の瞬間、博士は鞭の柄でハイエナ豚を追い払い、モンゴメリーとともに、まだ震えている体から、興奮した肉食の獣人たち、特にムリンを遠ざけていた。灰色の毛深い〈もの〉が、私の腕の下から死骸の匂いを嗅いだ。ほかの獣も、獣らしい熱に浮かされ、もっと近くで見ようと私を押した。
「何ということを、プレンディック!」とモローは言った。「あれは必要だったのに。」
「すみません」と私は言ったが、すまないとは思っていなかった。「とっさにしてしまいました。」
激しい運動と興奮で気分が悪かった。私は向きを変え、群がる獣人たちを押し分け、一人で岬の高いところへ斜面を上った。モローの叫ぶ指示に従い、白い布を巻いた三人の牛男が、死体を水辺へ引きずり始めるのが聞こえた。
今は一人になるのも簡単だった。獣人たちは死体に実に人間らしい好奇心を示し、牛男が浜を引きずっていく間、密集してついていき、匂いを嗅ぎ、唸っていた。私は岬へ行き、夕空を背に黒く見える牛男たちが、重しをつけた死体を海へ運ぶのを眺めた。すると、この島のすべてが、言葉にできないほど無意味なのだという思いが、波のように心を横切った。眼下の岩の間の浜辺では、猿男、ハイエナ豚、ほかの何人かが、モンゴメリーとモローの周りに立っていた。まだひどく興奮し、律法への忠誠を騒々しく叫び立てていた。だが私は、ハイエナ豚も兎殺しにかかわっていたと、心の中で確信していた。輪郭の粗さ、姿の異様さを別にすれば、ここには人間生活の均衡の全体が縮図となって現れ、本能、理性、運命の絡み合いが、最も単純な形で示されているという、奇妙な確信に襲われた。ヒョウ男は、たまたま敗れた。それだけの違いだった。哀れな獣だ!
哀れな獣たち! 私はモローの残酷さの、さらに醜悪な面を見始めた。それまで、博士の手を離れた後、哀れな犠牲者たちに降りかかる苦痛や苦労を、考えたことがなかった。囲いの中で実際に拷問される日々にだけ、震えていた。だが今は、それは小さいほうの苦痛に思えた。以前は獣であり、本能は環境にうまく適応し、生き物なりに幸福だった。それが今は、人間性の枷につまずきながら、消えない恐怖の中で生き、理解できない律法に悩まされている。苦悶の中で始まった偽の人間生活は、果てしない内面の葛藤、果てしないモローへの恐怖だった――何のために? その無意味な勝手さが、私を憤らせた。
モローに理解できる目的があったなら、少しは共感できただろう。私は、苦痛についてそこまで潔癖ではない。動機がただ憎しみだけであっても、多少は許せたかもしれない。だが博士は、あまりに無責任で、まったく気にもかけなかった! 好奇心と、狂った、目的のない研究に駆り立てられていた。そして〈もの〉たちは放り出され、一年ほど生き、もがき、間違い、苦しみ、ついには苦痛のうちに死ぬ。それ自体すでに惨めだった。そのうえ、昔ながらの獣の憎悪が、互いを苦しめるよう駆り立てた。律法は、短い激烈な争いによって、本来の敵意を決着させることさえ妨げていた。
そのころ、獣人たちへの恐怖は、モロー自身への恐怖と同じく消えていった。私は実際、深く長く続く、恐怖とは異なる病的な状態に陥り、それは心に消えない傷を残した。この島の苦しい混乱に悩む世界を見て、世界が正気だという信頼を失ったことを、認めねばならない。盲目の運命、巨大で無慈悲な機構が、存在の織物を切り、形づくっているようだった。私、研究への情熱に駆られたモロー、酒への情熱に駆られたモンゴメリー、本能と精神の制約を抱えた獣人たちは、絶え間なく回る無限に複雑な歯車の中で、容赦なく、避けようもなく、引き裂かれ、押し潰されていた。だが、その状態は一度に訪れたわけではない。今こうして語るのは、少し先を急ぎすぎていると思う。
第十七章 大惨事
六週間もたたないうちに、モローのこの忌まわしい実験に対する嫌悪と憎悪以外、私は何も感じなくなっていた。唯一の望みは、造り主の姿を恐ろしく戯画化したこの者たちから逃れ、人間同士の心地よく健全な交わりへ戻ることだった。こうして隔てられた同胞は、記憶の中で、牧歌的な美徳と美しさを帯び始めた。モンゴメリーとの最初の友情も深まらなかった。人間社会から長く離れていたこと、ひそかな飲酒の悪癖、獣人たちへの明らかな共感が、私の目には彼を汚していた。何度か、彼だけを獣人の中へ行かせた。私はできるだけ、彼らとの接触を避けた。浜辺で過ごす時間が増え、姿を現さない救いの帆を探していた。――そこへ、ある日、恐るべき災厄が私たちを襲い、この奇妙な環境をまったく違うものに変えてしまった。
惨事が起きたのは、上陸から七、八週間後だった。日を数えていなかったのでわからないが、もう少し後だったかもしれない。早朝、おそらく六時ごろだった。三人の獣人が囲いへ木を運び込む音に起こされ、私は早く起き、朝食を済ませていた。
朝食後、開いている囲いの入口へ行き、煙草を吸いながら、朝の清々しさを楽しんでいた。やがてモローが囲いの角を回ってきて挨拶した。私の横を通り過ぎ、背後で実験室の鍵を開けて入る音がした。そのころには、この場所の忌まわしさにあまりに慣れきっていたので、犠牲となったピューマが、新たな一日の拷問を始めるのを、何の感情もなく聞いた。ピューマは虐待者を、怒った悪女の叫びにそっくりな悲鳴で迎えた。
そのとき突然、何かが起きた。何だったのか、今でもわからない。背後で短く鋭い叫びと、倒れる音がした。振り向くと、恐ろしい顔が私へ突進してきた。人間でも動物でもなく、地獄のものだった。茶色の顔に赤い傷跡が枝分かれし、赤い血の滴が滲み、瞼のない目が燃えていた。私はとっさに腕を上げて防いだが、一撃に前腕を折られ、真っ逆さまに投げ飛ばされた。綿布に包まれ、血に染まった包帯をひらめかせた巨大な怪物が、私を跳び越えて走り去った。私は浜辺を何度も転がり、起き上がろうとして、折れた腕の上に崩れた。そこへモローが現れた。額から血が流れ、重々しい白い顔はいっそう恐ろしかった。片手に拳銃を持っていた。私にはほとんど目もくれず、すぐピューマを追って走り去った。
もう一方の腕を使い、私は起き上がった。前方の包帯にくるまれた姿は、大きく跳ねながら浜を走り、モローが追っていた。ピューマは頭を向けて博士を見ると、突然方向を変え、藪へ向かった。一歩ごとに距離を広げていた。藪へ飛び込むのが見え、モローは斜めに走って行く手を遮ろうとし、姿が消える瞬間に撃ったが外した。次いで博士も、緑の混沌に消えた。私はその後を見つめていたが、腕の痛みが燃え上がり、うめきながら、よろよろ立ち上がった。戸口に、服を着て拳銃を持ったモンゴメリーが現れた。
「大変だ、プレンディック!」と、私の怪我に気づかず言った。「あの獣が逃げた! 壁から鎖を引き抜いたんだ! 二人を見たか?」
それから、私が腕を押さえているのを見て、鋭く尋ねた。「どうした?」
「戸口に立っていたんです」と私は言った。
彼は近づき、腕を取った。「袖に血が」と言って、フランネルをまくった。銃をポケットへ入れ、痛む腕をあちこち触り、中へ連れていった。「折れている」と言った。それから、「何が起きたのか、詳しく話してくれ。」
私は見たことを伝えた。痛みに息を詰め、途切れ途切れに話した。その間、彼は実に手際よく、素早く腕を固定した。肩から吊り、少し下がって私を見た。
「これで大丈夫だ」と言った。「さて、どうする?」
彼は考えた。それから外へ出て、囲いの門を閉めた。しばらく戻らなかった。
私は主に腕のことを考えていた。この出来事も、数々の恐ろしいことの一つにすぎない気がした。デッキチェアへ座り、正直に言えば、この島を思いきり罵った。腕の最初の鈍い痛みが、焼けつく痛みに変わったころ、モンゴメリーが戻った。顔は少し青ざめ、いつも以上に下の歯茎が見えていた。
「姿も見えず、何も聞こえない」と言った。「助けがいるかもしれないと思っていたんだ。」
表情のない目で私を見つめた。「強い獣だった」と言った。「壁から鎖を引き抜いてしまった。」
窓へ行き、それから扉へ行って、こちらを振り返った。「後を追おう」と言った。「君には、もう一丁の拳銃を置いていく。正直、何だか心配なんだ。」
銃を持ってきて、テーブルの手が届くところへ置いた。それから外へ出た。その不安は空気に伝染して残った。彼が去った後、私は長く座っていられず、拳銃を持って戸口へ行った。
朝は死のように静かだった。風のそよぎ一つなく、海は磨いたガラスのようで、空には何もなく、浜辺は荒涼としていた。半ば興奮し、半ば熱に浮かされた私には、この静けさが重くのしかかった。口笛を吹こうとしたが、曲は消えていった。また罵った。その朝二度目だった。それから囲いの角へ行き、モローとモンゴメリーを呑み込んだ内陸の緑の藪を見つめた。いつ、どんな姿で帰ってくるのか? そのとき、浜辺の遠くに小さな灰色の獣人が現れ、水際へ走って、水を跳ね始めた。私は戸口へ戻り、また角へ行き、こうして歩哨のように行き来し始めた。一度、遠くでモンゴメリーが「おーい――モロー!」と叫ぶ声に足を止めた。
腕の痛みは弱まったが、ひどく熱を持っていた。熱っぽく、喉が渇いた。影が短くなっていった。遠くの姿が再び去るまで、私は見ていた。モローとモンゴメリーは、いつまでたっても戻らないのか? 三羽の海鳥が、打ち上げられた何かを争い始めた。
そのとき、囲いの背後の遠くから銃声がした。長い沈黙の後、もう一発。それから、もっと近くで叫び声がし、再び不気味な沈黙が続いた。私の困った想像力が働き始め、私を苦しめた。すると突然、すぐ近くで一発。驚いて角へ行くと、モンゴメリーがいた。顔は真っ赤、髪は乱れ、ズボンの膝は破れていた。顔には深い狼狽があった。背後を獣人ムリンがだらだら歩き、その口の周りには奇妙な黒ずんだ染みがあった。
「帰ったか?」とモンゴメリーは言った。
「モローですか?」と私は言った。「いいえ。」
「何てことだ!」
彼は息を切らし、ほとんどすすり泣いていた。「中へ戻れ」と、私の腕を取って言った。「狂っている。みんな狂って走り回っている。何が起きたんだ? わからない。息が戻ったら話す。ブランデーはどこだ?」
モンゴメリーは足を引きずって先に部屋へ入り、デッキチェアへ座った。ムリンは戸口のすぐ外に身を投げ出し、犬のように喘ぎ始めた。私はモンゴメリーに、水で割ったブランデーを渡した。彼は何もない前方を見つめ、息を整えていた。数分後、起きたことを話し始めた。
しばらくは二人の跡を追えた。押し潰された藪や折れた枝、ピューマの包帯からちぎれた白い布、低木や茂みの葉についた、ときどきの血の跡があり、最初ははっきりしていた。だが、私が獣人の水を飲むのを見た川を越え、石の多い地面に出ると、跡を見失った。彼はモローの名を叫びながら、あてもなく西へさまよった。そこへ、小さな手斧を持ったムリンが来た。ムリンはピューマの一件を何も見ていなかった。木を切っていて、呼ぶ声を聞いたのだ。二人で叫びながら進んだ。二人の獣人が身をかがめ、藪越しにこちらを窺った。その身振りと、こそこそした姿勢の異様さが、モンゴメリーを不安にさせた。声をかけると、やましげに逃げた。その後は叫ぶのをやめ、しばらく迷いながら歩き、小屋へ行くことにした。
谷には誰もいなかった。
刻々と不安が増し、引き返し始めた。そのとき、到着した夜に私が踊るのを見た、二人の豚男に出会った。口の周りに血をつけ、ひどく興奮していた。シダを荒々しくかき分けて来て、彼を見ると険しい顔で止まった。彼が多少怯えながら鞭を鳴らすと、たちまち襲いかかってきた。獣人がそんなことをしたのは初めてだった。一人は頭を撃った。ムリンはもう一人に飛びつき、取っ組み合って転がった。相手を押さえ込み、喉に歯を立てた。モンゴメリーは、ムリンに押さえられてもがくそいつも撃った。ムリンを連れて先へ行くのには、少し苦労した。それから急いで私のところへ戻った。途中、ムリンが突然藪へ飛び込み、血まみれで、足の傷のために足を引きずる、小柄なオセロット男を追い出した。その獣は少し走った後、追い詰められて凶暴に向き直った。モンゴメリーは――私にはいささか無用に思えたが――そいつも撃った。
「どういうことなのでしょう?」と私は言った。
彼は首を振り、またブランデーに手を伸ばした。
第十八章 モローの発見
モンゴメリーが三杯目のブランデーを飲むのを見て、私は止めることにした。すでにかなり酔っていた。モローにはもう重大なことが起きたに違いない、そうでなければとっくに戻っているはずだ、何が起きたか確かめねばならないと伝えた。モンゴメリーは弱々しく反対したが、ついには同意した。少し食べてから、三人で出発した。
当時の精神の緊張のせいかもしれないが、熱帯の午後の熱い静寂へ踏み出したときの印象は、今でも異様に鮮明だ。ムリンが先に行った。肩をすぼめ、奇妙な黒い頭を素早く動かして、道の右や左を窺っていた。武器はなかった。豚男と出会ったとき、斧を落としていた。戦いとなれば、彼の武器は歯だった。モンゴメリーがよろめく足取りで続いた。手をポケットに入れ、うつむいていた。ブランデーのことで私に腹を立て、酔いの残る不機嫌な状態だった。私の左腕は吊ってあり――左で幸いだった――右手に拳銃を持っていた。やがて島の荒々しい繁茂の中を、北西へ向かう細い道に入った。ほどなくムリンが止まり、警戒に身を硬くした。モンゴメリーは危うくぶつかりそうになって止まった。耳を澄ますと、木々を通して、近づく声と足音が聞こえた。
「彼は死んだ」と、深く震える声が言った。
「死んでいない、死んでいない」と、別の声が早口に言った。
「見た、見た」と、いくつもの声が言った。
「おーい!」と、突然モンゴメリーが叫んだ。「そこにいる奴ら!」
「何をするんです!」と私は言い、拳銃を握りしめた。
沈黙があり、絡み合う草木が、まずこちら、次にあちらで音を立てた。それから六つほどの顔が現れた。奇妙な光を宿した、奇妙な顔だった。ムリンは喉の奥で唸った。猿男がいた。すでに声でわかっていた。ほかに、モンゴメリーの舟で見た、白い布を巻き、茶色い顔をした二人がいた。まだら模様の獣が二人、それに、律法を唱える、灰色で恐ろしく歪んだ生き物がいた。灰色の毛が頬へ流れ、濃い灰色の眉があり、傾斜した額の中央の分け目から灰色の髪が垂れていた。重々しく、顔の形が定かでない〈もの〉が、奇妙な赤い目で、緑の中から不思議そうに私たちを見ていた。
しばらく誰も話さなかった。それからモンゴメリーがしゃっくりをした。「誰が――死んだと言った?」
猿男は、灰色の毛深い〈もの〉を、やましげに見た。「彼は死んだ」と、その怪物が言った。「彼らが見た。」
少なくとも、この一団に威嚇の気配はなかった。恐れおののき、困惑しているようだった。
「どこにいる?」とモンゴメリーは言った。
「あちら」と、灰色の生き物は指さした。
「今も律法はあるのか?」と猿男は尋ねた。「まだ、あれもこれも、しなければならないのか? 本当に死んだのか?」
「律法はあるのか?」と、白い服の男が繰り返した。「律法はあるのか、鞭を持つ、もう一人のお方よ?」
「彼は死んだ」と、灰色の毛深い〈もの〉は言った。皆、立ったまま私たちを見ていた。
「プレンディック」とモンゴメリーは鈍い目を私に向けた。「どうやら死んだらしい。」
私はそのやり取りの間、彼の後ろに立っていた。彼らの中で、どんな事態になっているのか、わかり始めた。私は突然モンゴメリーの前へ出て、声を張った。「律法の子らよ」と言った。「彼は死んでいない!。」
ムリンが鋭い目を私に向けた。「姿を変えたのだ。体を変えたのだ」と私は続けた。「しばらくは、その姿を見られない。彼は――そこにいる」と上を指さした。「そこからおまえたちを見ている。おまえたちには見えないが、彼には見える。律法を恐れよ!」
私はまっすぐ彼らを見た。彼らはたじろいだ。
「彼は偉大、彼は善」と猿男は言い、恐る恐る密集する木々の上を見た。
「もう一つの〈もの〉は?」
私は尋ねた。
「血を流し、叫び、泣きながら走った〈もの〉――あれも死んだ」と、灰色の〈もの〉は私を見たまま言った。
「それはよかった」とモンゴメリーは唸った。
「鞭を持つ、もう一人のお方は――」と灰色の〈もの〉が言いかけた。
「何だ?」と私は言った。
「死んだと言った。」
だがモンゴメリーには、私がモローの死を否定する意図を理解できるだけの正気が残っていた。「死んでいない」と、ゆっくり言った。「まったく死んでいない。私と同じく生きている。」
「律法を破った者がいる」と私は言った。「その者たちは死ぬ。すでに死んだ者もいる。さあ、古い体のある場所へ案内せよ。もう必要がなくなって捨てた体のある場所へ。」
「こちらだ、海を歩いた人よ」と灰色の〈もの〉は言った。
六人の生き物に案内され、私たちはシダ、蔓、木の幹の入り乱れる中を、北西へ進んだ。すると叫び声と、枝をかき分ける音がし、小さな桃色の人型の生き物が、悲鳴を上げて横を走り抜けた。すぐ後に、血まみれの怪物が全速力で追って現れ、止まる間もなく私たちの中へ入ってきた。灰色の〈もの〉は脇へ跳んだ。ムリンが唸って飛びかかり、打ち払われた。モンゴメリーは撃って外し、頭を下げ、腕を上げて逃げようとした。私は撃ったが、〈もの〉はなお来た。もう一発、醜い顔へ至近距離から撃った。一瞬で顔立ちが消え、顔が陥没するのが見えた。それでも私の横を通り、モンゴメリーをつかみ、そのまま真っ逆さまに倒れ、死の苦悶の中で、彼を自分の上へ引き倒した。
気づくと、ムリンと、死んだ獣と、倒れた男だけが残っていた。モンゴメリーはゆっくり身を起こし、隣の粉砕された獣人を、ぼんやり見た。それでかなり酔いが覚めた。慌てて立ち上がった。そのとき、灰色の〈もの〉が木々の間から慎重に戻ってくるのが見えた。
「見よ」と私は死んだ獣を指さした。「律法は生きているではないか? 律法を破ったため、こうなったのだ。」
彼は死体を覗き込んだ。「殺す火を送るのは彼」と、深い声で儀式の一節を繰り返した。ほかの者も集まり、しばらく見つめた。
ついに島の西端近くへ来た。噛まれ、損なわれたピューマの死体を見つけた。肩の骨は弾丸で砕けていた。それから二十ヤードほど先で、ようやく探していたものを見つけた。モローは、葦の茂みの踏み荒らされた場所に、うつ伏せで倒れていた。片手は手首でほとんど切れ、銀色の髪は血に染まっていた。頭はピューマの足枷で打ち砕かれていた。下の折れた葦には血が塗りつけられていた。拳銃は見つからなかった。モンゴメリーが仰向けにした。博士は重かったので、七人の獣人の助けを借り、ときおり休みながら囲いへ運んだ。夜が暗さを増していた。姿の見えない生き物が、遠吠えや悲鳴を上げて小さな一行のそばを通るのを二度聞いた。一度は小さな桃色のナマケモノの生き物が現れ、こちらを見つめ、また消えた。だが、もう襲われなかった。囲いの門で獣人たちは去り、ムリンも一緒に行った。私たちは中へ入り、鍵をかけ、モローの損なわれた体を中庭へ運び、積んだ柴の上に置いた。それから実験室へ入り、そこで生きていたものを、すべて死なせてやった。
第十九章 モンゴメリーの「休日。」
それを終え、体を洗い、食事を済ませると、モンゴメリーと私は小さな私の部屋へ入り、初めて真剣に今の立場を話し合った。もう真夜中近かった。彼はほぼ酔いが覚めていたが、心はひどく乱れていた。モローの人格に、奇妙なほど支配されていたのだ。モローも死にうるということを、考えたことさえなかったのだと思う。この災厄は、島で過ごした十年余りの単調な年月の中で、性分の一部となった習慣を、突然崩壊させたのだった。話は曖昧で、質問には的外れに答え、一般論へ迷い込んだ。
「この馬鹿げた世界」と彼は言った。「何もかも、何という混乱だ! 俺には人生なんかなかった。いつ始まるんだろう。十六年、乳母や教師に好き放題にいじめられ、五年はロンドンで医学の勉強に明け暮れ、まずい飯、みすぼらしい下宿、みすぼらしい服、みすぼらしい悪事、そして失敗――俺は何もわかっていなかった――それで、この忌々しい島へ追い払われた。ここで十年! 何のためだ、プレンディック? 俺たちは赤ん坊が吹いた泡なのか?」
そんな取りとめのない言葉に応じるのは難しかった。「今考えなければならないのは」と私は言った。「この島から逃げる方法です。」
「逃げて何になる? 俺は社会のはみ出し者だ。俺がどこへ戻れる? 君はいいさ、プレンディック。かわいそうなモロー! ここへ置いて、骨までつつかせるわけにはいかない。今のままでは――それに、まともな獣人たちはどうなる?」
「まあ」と私は言った。「それは明日でよいでしょう。柴を火葬の山にして、博士の体を焼こうと考えていました。ほかの生き物も。すると、獣人たちはどうなるでしょう?」
「俺にはわからない。猛獣から作られた奴らは、遅かれ早かれ馬鹿をやるだろう。全部殺すわけにはいかない――そうだろう? 君の人道主義なら、そうしろと言うのか? だが、あいつらは変わる。必ず変わる。」
彼はこんなふうに結論のない話を続け、私はついにいらだち始めた。
「畜生!」と、私の苛立った言葉に彼は叫んだ。「君より俺のほうが、よほどひどい窮地にいるとわからないのか?」
そして立ち上がり、ブランデーを取りにいった。「飲め!」と、戻って言った。「屁理屈好きで、白い顔をした、聖人ぶった無神論者め。飲め!」
「私は飲みません」と言い、灯油の黄色い炎の下にある彼の顔を、険しく見守った。彼は飲み続け、おしゃべりな惨めさへ沈んでいった。
果てしない退屈の記憶がある。彼は獣人やムリンについて、感傷的な弁護を始めた。本当に自分を大切に思ってくれたのは、ムリンだけだったと言った。そして突然、ある考えが浮かんだ。
「そうだ!」と彼は言い、ブランデーの瓶をつかみ、よろめいて立った。
直感の閃きで、何をするつもりかわかった。「あの獣に酒を飲ませてはいけません!」
私は立ち上がり、向かい合って言った。
「獣だと!」と彼は言った。「獣は君だ。あいつはまともな人間と同じように酒を飲む。どけ、プレンディック!」
「お願いです」と私は言った。
「どけ――邪魔だ!」と彼は怒鳴り、突然拳銃を抜いた。
「いいでしょう」と私は言って、脇へ退いた。彼が掛け金に手をかけるとき、飛びかかろうかとも思ったが、役に立たない腕のことを考えてやめた。「自分を獣にしたのだから、獣のところへ行けばいい。」
彼は扉を勢いよく開き、黄色いランプの光と、青白い月明かりの間で、半ば私を振り向いて立った。短い剛毛の眉の下で、眼窩は黒い染みになっていた。
「君は大真面目な気取り屋だ、プレンディック。馬鹿だ! いつも怖がって、想像ばかりしている。俺たちはもう崖っぷちなんだ。明日は喉を切るしかない。今夜は思いきり休日[訳注:原文のBank Holidayは英国の銀行休業日に由来する祝日]を楽しむぞ。」
彼は背を向け、月明かりへ出ていった。「ムリン!」と叫んだ。「ムリン、古い友よ!」
銀色の光の中、三つのぼんやりした姿が、白っぽい浜の縁を歩いてきた。一つは白い布を巻いた生き物で、後を二つの黒い影が追っていた。彼らは止まって見つめた。それから、家の角を回ってくるムリンの、丸まった肩が見えた。
「飲め!」とモンゴメリーは叫んだ。「飲め、獣ども! 飲んで人間になれ! 畜生、いちばん賢いのは俺だ。モローはこれを忘れていた。これが最後の仕上げだ。飲めと言っているんだ!」
そして瓶を振り、妙な小走りで西へ進んだ。ムリンは、彼と、後を追う三つのぼんやりした姿との間についた。
私は戸口へ行った。モンゴメリーが止まったころには、彼らはすでに、月明かりの霞にぼやけていた。ムリンに生のブランデーを飲ませるのが見え、それから五つの姿は一つの曖昧な塊へ溶けた。
「歌え!」
モンゴメリーの叫びが聞こえた。「みんな一緒に、『くたばれ、プレンディック!』。そうだ、もう一度、『くたばれ、プレンディック!』。」
黒い一団は五つの姿に分かれ、光る浜の帯に沿って、ゆっくり遠ざかっていった。それぞれ気ままに吠え、私への罵りを甲高く叫び、あるいはブランデーという新たな刺激が求めるまま、別の方法で発散していた。やがてモンゴメリーが「右向け!」と叫ぶのが聞こえ、一行は叫びや遠吠えとともに、内陸の黒い木々へ入った。ゆっくり、実にゆっくり、声は遠のき、静寂へ消えた。
夜の静かな輝きが、また傷を癒した。月はすでに天頂を過ぎ、西へ下り始めていた。満月で、何もない青い空に明るく浮かんでいた。足元には、壁の影が一ヤードの幅で、墨のように黒く横たわっていた。東の海は輪郭のない灰色で、暗く神秘的だった。海と影の間では、火山ガラスと結晶からなる灰色の砂が、ダイヤモンドの浜のように閃き、輝いていた。背後では灯油ランプが、熱く赤く燃えていた。
私は扉を閉めて鍵をかけ、囲いの中へ行った。モローは、最後の犠牲者たち――猟犬、ラマ、そのほかの哀れな獣――のそばに横たわっていた。恐ろしい死を遂げた後も、重々しい顔は穏やかで、開いた冷厳な目が、頭上の死んだように白い月を見つめていた。私は流しの縁へ腰を下ろし、銀色の光と不吉な影が織りなす、その凄惨な山を見ながら、計画を練り始めた。朝には食料を小舟へ積み、目の前の火葬の山へ火をつけてから、もう一度、荒涼とした外海へ漕ぎ出そう。モンゴメリーには、もう救いがないと感じた。実際、半ば獣人の同類になっており、人間の仲間には戻れないのだ。
どれほど座って考えていたかわからない。一時間ほどだっただろう。そこへモンゴメリーが近くへ戻ってきて、計画は中断された。いくつもの喉から叫びが上がり、歓喜の騒ぎが浜辺へ下っていった。歓声、遠吠え、興奮した悲鳴は、水際で止まったようだった。騒ぎは高まったり弱まったりした。重い打撃と、木が裂け砕ける音が聞こえたが、そのときは気にならなかった。不揃いな唱和が始まった。
私は逃げる方法へ考えを戻した。立ってランプを持ってきて、以前見た小樽を調べるため、物置へ入った。それからビスケットの缶の中身が気になり、一つ開けた。目の端に何か――赤い姿――が見え、私は素早く振り返った。
背後には、月明かりで鮮明な白黒となった中庭と、モローと損なわれた犠牲者たちが重なって横たわる、薪と柴の山があった。最後の復讐の取っ組み合いで、互いをつかんでいるようだった。傷口は夜のように黒く開き、滴った血は砂の上に黒い染みを作っていた。それから、幻影の原因が見えたが、その意味はわからなかった。向かいの壁へ、赤い光が現れ、踊り、消えていたのだ。私はそれを、揺れるランプの反射だと思い込み、物置の備蓄へ向き直った。片腕でできるかぎり探り回り、役立ちそうなものを見つけては、翌日の出航のために取り分けた。動作は遅く、時間は早く過ぎた。気づかぬうちに、夜明けが忍び寄っていた。
唱和が弱まり、喧騒に変わった。それからまた始まり、突然大騒ぎになった。「もっと! もっと!」という叫び、喧嘩のような音、そして突然の狂った悲鳴が聞こえた。音の質があまりに変わったので、私は注意を引かれた。中庭へ出て耳を澄ませた。すると、混乱をナイフのように切り裂き、拳銃の音がした。
私はすぐ、自分の部屋を通って小さな扉へ駆けた。そのとき背後で、荷箱が滑り落ち、物置の床でぶつかり合い、ガラスの砕ける音がした。だが気に留めなかった。扉を勢いよく開け、外を見た。
浜の先、舟小屋のそばで焚き火が燃え、薄暗い夜明けへ火花の雨を上げていた。その周りで、黒い姿の塊が争っていた。モンゴメリーが私の名を呼ぶのが聞こえた。私は拳銃を持ち、すぐ火へ向かって走った。地面近くで、彼の銃から桃色の舌が一度出るのが見えた。倒れていたのだ。私は声の限り叫び、空へ一発撃った。誰かが「主だ!」と叫んだ。
もつれ合う黒い争いは、散らばる個々の姿へほどけ、火が高く跳ねて、また沈んだ。獣人の群れは突然の恐慌に陥り、私の前から浜を走り逃げた。興奮した私は、藪へ消える背中へ撃った。それから地面の黒い塊へ向き直った。
モンゴメリーは仰向けに倒れ、その上に灰色の毛深い獣人が横たわっていた。獣は死んでいたが、曲がった爪で、まだ彼の喉をつかんでいた。近くではムリンがうつ伏せになり、まったく動かなかった。首は噛み裂かれ、手には砕けたブランデー瓶の上半分を持っていた。火のそばには、ほかに二つの姿があった。一つは動かず、もう一つはとぎれとぎれにうめき、ときおりゆっくり頭を上げては、また落とした。
私は灰色の男をつかみ、モンゴメリーから引き離した。爪は、離れまいとするように、破れた上着を引き下げた。モンゴメリーの顔は黒ずみ、息はほとんどなかった。海水を顔へかけ、丸めた自分の上着を枕にした。ムリンは死んでいた。火のそばの負傷した生き物は、灰色の髭面をしたオオカミの獣で、体の前半を、まだ赤く光る木の上へ載せていた。あまりにひどい傷だったので、慈悲からすぐ頭を撃ち抜いた。もう一つは白い布を巻いた牛男だった。こちらも死んでいた。ほかの獣人は浜から消えていた。
私はモンゴメリーへ戻り、そばにひざまずき、医学の知識がないことを呪った。隣の火は燃え落ち、真ん中の端が赤く光る、炭化した木材と、柴の灰色の灰だけが残っていた。彼がどこで薪を手に入れたのかと、ふと思った。そのとき、夜が明けたと気づいた。空は明るくなり、沈む月は、日の光を帯びた青空の中で、白く不透明になりつつあった。東の空の縁が赤く染まっていた。
突然、背後でどさりという音と、しゅうっという音がした。振り返った私は、恐怖の叫びを上げて立ち上がった。暖かな夜明けを背景に、囲いから巨大な黒煙の塊が激しく湧き上がり、その嵐のような闇を、血のように赤い炎の糸が走っていた。それから茅葺きの屋根に火がついた。傾斜した藁の上を、炎が弧を描いて突進するのが見えた。私の部屋の窓から、火が噴き出した。
何が起きたか、すぐわかった。あの物音を思い出した。モンゴメリーを助けに飛び出したとき、私はランプを倒したのだ。
囲いの中から何一つ救えないという絶望が、目の前にあった。私は逃亡の計画へ思いを戻し、素早く振り返って、浜の二艘の舟を探した。なかった! 足元の砂には斧が二本あり、木片や裂けた木が一面に散っていた。焚き火の灰は、夜明けの下で黒くなり、煙を立てていた。モンゴメリーは私への復讐に、そして人間社会へ戻れないようにするため、舟を燃やしたのだ!
突然、怒りの発作が私を震わせた。足元に無力に横たわる、愚かな頭を叩き潰したい衝動に、ほとんど負けそうになった。だが、そのとき手が動いた。あまりに弱々しく、哀れで、怒りは消えた。彼はうめき、しばらく目を開けた。私はそばにひざまずき、頭を持ち上げた。彼はまた目を開け、黙って夜明けを見た。それから目が合った。瞼が落ちた。
「すまない」と、やがて力を振り絞って言った。考えようとしているらしかった。「最後だ」と呟いた。「この馬鹿げた宇宙の、最後だ。何という混乱――」
私は耳を澄ませた。頭が力なく横へ落ちた。何か飲ませれば元気が戻るかと思ったが、飲み物も、それを運ぶ器も手元になかった。突然、体が重くなったようだった。胸が冷えた。顔へかがみ、上着の裂け目から手を入れた。死んでいた。その死とともに、東の湾の突端の向こうへ、白熱する線、太陽の縁が現れた。光が空へ広がり、暗い海を、目もくらむ光のうねりへ変えた。その輝きは、死に縮んだ彼の顔へ、後光のように降り注いだ。
私は、作ってやった粗末な枕へ、頭をそっと戻し、立ち上がった。前には輝く海の荒野があった。すでにあれほど苦しんだ、恐ろしい孤独だった。背後には、夜明けの下で静まる島があり、獣人たちは声も姿も見せなかった。囲いは、食料も弾薬もろとも、騒がしく燃えていた。炎が突然吹き上がり、ぱちぱちと不規則に音を立て、ときおり崩れ落ちた。重い煙は浜を私から遠ざかるほうへ流れ、遠くの梢の上を低く転がり、谷の小屋へ向かっていた。隣には、舟の焼け残りと、五つの死体があった。
すると藪から三人の獣人が出てきた。肩をすぼめ、頭を突き出し、歪んだ手を不器用に構え、好奇心と敵意のある目をして、ためらう身振りで近づいてきた。
第二十章 獣人たちと二人きりで
私は彼らに向き合い、その姿に宿る自分の運命に向き合った。今や一人で、しかも文字どおり片腕だけで――もう一方は折れていた。ポケットには、二つの薬室が空になった拳銃があった。浜に散る木片の中には、舟を切り割った二本の斧があった。背後では潮が上げ始めていた。頼れるのは勇気だけだった。私は近づく怪物の顔を、まっすぐ見た。彼らは目をそらし、震える鼻孔で、私の向こうの浜に横たわる死体の匂いを探った。私は六歩ほど歩き、オオカミ男の死体の下にあった血まみれの鞭を拾い、鳴らした。彼らは止まって私を見た。
「礼をせよ!」と私は言った。「ひれ伏せ!」
彼らはためらった。一人が膝を曲げた。私は心臓が口へ飛び出しそうになりながら、命令を繰り返し、近づいた。一人がひざまずき、それから残る二人もひざまずいた。
私は向きを変え、ひざまずく三人の獣人に顔を向けたまま、死体へ歩いた。舞台の奥へ進む役者が、観客に顔を向けているのと、よく似ていた。
「律法を破ったのだ」と私は、律法の説き手へ足を載せて言った。「殺された。律法の説き手でさえ、鞭を持つ、もう一人のお方でさえ。偉大なる律法! 来て見よ。」
「逃れる者なし」と、一人が近づき、覗き込んで言った。
「逃れる者なし」と私は言った。「だから、私の命令を聞き、従え。」
彼らは立ち上がり、問いかけるように互いを見た。
「そこに立っていろ」と私は言った。
手斧を拾い、刃の部分を腕の吊り布にかけた。それからモンゴメリーを裏返し、まだ二発残っている拳銃を拾い、かがんで探ると、ポケットに六発ほど弾があった。
「この者を持て」と私は立ち上がり、鞭で指した。「持っていけ。海へ運び、投げ込め。」
彼らは、明らかにまだモンゴメリーを恐れていたが、鳴り響く私の赤い鞭を、もっと恐れて近づいた。手間取り、ためらい、私が鞭を鳴らして叫ぶうちに、ようやく恐る恐る持ち上げ、浜を下り、眩しくうねる海へ入っていった。
「進め!」と私は言った。「進め! 遠くへ運べ。」
脇まで水に入り、止まって私を見た。
「放せ」と私は言った。モンゴメリーの体は、水音とともに消えた。胸を何かが締めつけた。
「よし!」と、声を詰まらせて言った。彼らは恐れて急ぎ、水際へ戻ってきた。銀色の水に、長い黒い航跡を残した。岸で止まると、振り返って海を睨んだ。今にもモンゴメリーが現れ、復讐すると思っているようだった。
「次は、これだ」と、私はほかの死体を指した。
彼らはモンゴメリーを投げ入れた場所に近づかぬよう気をつけ、代わりに四人の死んだ獣人を、浜に沿って斜めに百ヤードほど運び、それから水へ入り、捨てた。
ムリンの損なわれた亡骸を片づけるのを見ていると、背後に軽い足音がした。素早く振り向くと、大きなハイエナ豚が十二ヤードほど先にいた。頭を下げ、光る目を私に据え、短い手を握って脇へ寄せていた。私が振り向くと、その身をかがめた姿勢で止まり、少し目をそらした。
一瞬、互いに見つめ合った。私は鞭を落とし、ポケットの拳銃へ手を伸ばした。何か口実があれば、島に残る最も手強いこの獣を殺すつもりだった。卑怯と思われるかもしれないが、そう決めていた。ほかの獣人を二人合わせたよりも、こいつのほうが、はるかに怖かった。生かしておけば自分の命が危ういと、わかっていた。
気を落ち着けるのに、十二秒ほどかかっただろう。それから叫んだ。「礼をせよ! ひれ伏せ!」
唸り声とともに歯が光った。「おまえは誰だ、なぜ俺が――」
いささか性急すぎたかもしれない。私は拳銃を抜き、素早く狙って撃った。悲鳴が聞こえ、横へ走って向きを変えるのが見えた。外したとわかり、親指で撃鉄を起こした。だが、すでに左右へ跳びながら全速力で逃げていて、もう一度外す危険は冒せなかった。ときおり肩越しに振り返っていた。浜を斜めに走り、燃える囲いから流れ続ける濃い煙の下へ消えた。しばらく私は、その後を見つめていた。それから、従順な三人へ向き直り、まだ持っている死体を下ろすよう合図した。火のそばの、死体が倒れていた場所へ戻り、茶色い血の染みがすべて砂に吸われ、隠れるまで、足で砂をかけた。
手を振って三人の従僕を去らせ、浜を上って藪へ入った。拳銃を手に持ち、鞭は斧とともに腕の吊り布へ差し込んでいた。一人になり、今の立場を考えたかった。ようやく理解しかけていた恐ろしい事実は、この島のどこにも、もう安心して一人で休み、眠れる場所がないということだった。上陸してから体力は驚くほど戻っていたが、まだ神経質になりやすく、大きな重圧には崩れそうだった。島を横切って獣人とともに暮らし、信頼を得て安全を確保すべきだと感じた。だが勇気が出なかった。浜へ戻り、燃える囲いを過ぎて東へ向かい、浅い珊瑚砂の洲が礁へ伸びている場所へ行った。ここなら海を背にして座り、不意の襲撃に正面を向けながら考えられる。私はそこで膝に顎を載せ、頭に照りつける日と、言いようのない恐怖の中で、救助の時まで――救助が来るとして――どう生きるかを考えた。できるだけ冷静に、状況全体を見直そうとしたが、感情を取り除くのは難しかった。
モンゴメリーの絶望の理由を考え始めた。「あいつらは変わる」と言った。「必ず変わる。」
そしてモローは、何と言っていたか? 「頑固な獣の肉が、日に日に元へ戻っていく。」
それから、ハイエナ豚へ考えが戻った。あの獣を殺さなければ、私が殺されると確信していた。律法の説き手も死んだ。実に不運だった。鞭を持つ私たちも、彼ら同様に殺せることを、彼らは知ってしまった。向こうの緑のシダや椰子の中から、すでに私を窺い、飛びかかれる距離へ来るのを待っているのか? 私に対する陰謀を企てているのか? ハイエナ豚は何を話しているのか? 想像は暴走し、実体のない恐怖の泥沼へ私を引き込んだ。
囲いの近くの浜へ波が打ち上げた、黒い物体に海鳥が群がり、その鳴き声が思考を乱した。何かはわかっていたが、戻って追い払う気力はなかった。私は逆方向へ浜を歩き始めた。島の東の角を回り、藪にあるかもしれない待ち伏せを通らず、小屋の谷へ行くつもりだった。
半マイルほど歩くと、あの三人の一人が、内陸の藪から近づいてくるのに気づいた。自分の想像に神経を尖らせていた私は、すぐ拳銃を抜いた。機嫌を取るような身振りにも、警戒は解けなかった。そいつは近づきながらためらった。
「あっちへ行け!」と私は叫んだ。
身をすくめる姿は、ひどく犬を思わせた。家へ帰れと言われた犬のように、少し退き、止まって、犬らしい茶色い目で哀願するように私を見た。
「あっちへ行け」と私は言った。「近づくな。」
「近づいてはいけないのか?」とそいつは言った。
「だめだ。行け」と私は繰り返し、鞭を鳴らした。それから鞭を歯にくわえ、石を拾い、その脅しで追い払った。
こうして一人で獣人の谷へ回り込み、その裂け目と海の間の雑草や葦に隠れ、姿を見せる者を観察した。モローとモンゴメリーの死、苦痛の家の破壊が、彼らにどう作用したか、身振りや様子から判断しようとした。今では、自分の臆病さの愚かさがわかる。夜明けと同じ勇気を保ち、一人の思索でそれを衰えさせなければ、モローの空いた王笏を握り、獣人たちを支配できたかもしれない。だが、機会を失い、仲間の中の一指導者にすぎない地位へ落ちてしまった。
昼ごろ、何人かが来て、熱い砂に座り、日を浴びた。飢えと渇きの強い命令が、恐怖に勝った。私は藪を出て、拳銃を手に、座った姿へ近づいた。一人のオオカミ女が振り向いて私を見た。それからほかの者も見た。誰も立たず、礼もしなかった。あまりに弱り、疲れていた私は、強いることができず、その機会を逃した。
「食べ物が欲しい」と、ほとんど詫びるように言い、近づいた。
「小屋にある」と、牛イノシシ男が眠そうに言い、目をそらした。
私はそばを通り、ほとんど人のいない谷の、影と臭いの中へ下った。空いた小屋で、染みがあり、半ば腐った果実をむさぼった。それから入口に枝や棒を立てかけ、そこへ顔を向け、拳銃に手を載せて座ると、この三十時間の疲れに負け、浅い眠りへ落ちた。作った頼りない防壁を動かせば、不意を襲われぬだけの音がするだろうと願いながら。
第二十一章 獣人たちの退化
こうして私は、モロー博士の島で、獣人たちの一人となった。目覚めると、周囲は暗かった。包帯の中の腕が痛んだ。起き上がり、初めは、ここはどこだろうと思った。外で粗い声が話していた。それから、防壁がなくなり、小屋の入口が開いているのに気づいた。拳銃はまだ手にあった。
何かの息が聞こえ、すぐそばに何かがうずくまっているのが見えた。私は息を止め、何か見極めようとした。それはゆっくり、いつ果てるともなく動き始めた。それから、柔らかく、暖かく、湿ったものが手をなぞった。全身の筋肉が縮んだ。手を引き抜いた。驚きの叫びが喉に生まれ、そのまま抑え込まれた。そのとき、何が起きたか、拳銃の指を止められるだけの理解が生まれた。
「誰だ?」
銃を向けたまま、かすれた囁きで言った。
「私です――主よ。」
「おまえは誰だ?。」
「今は主はいないと、皆は言う。だが私は知っている、知っている。死体を海へ運んだ、おお、海を歩くお方! あなたが殺した者たちの死体を。私はあなたの奴隷です、主よ。」
「浜で会った者か?」
私は尋ねた。
「そうです、主よ。」
眠っている間に襲えたのだから、この〈もの〉は、十分忠実なのだろう。「よい」と私は言い、もう一度舐めさせるため、手を差し出した。その存在の意味を理解し始め、勇気の潮が満ちてきた。「ほかの者はどこだ?」
私は尋ねた。
「狂っている。愚か者だ」と犬男は言った。「今も向こうで話している。こう言う。『主は死んだ。鞭を持つ、もう一人のお方は死んだ。海を歩いた、あのもう一人は、俺たちと同じだ。もう主も、鞭も、苦痛の家もない。終わったのだ。俺たちは律法を愛し、守る。だが、もう永久に苦痛も、主も、鞭もない』。そう言っている。だが私は知っている、主よ、知っている。」
私は暗闇で手を伸ばし、犬男の頭を撫でた。「よい」と、また言った。
「やがて皆を殺すのですね」と犬男は言った。
「やがて」と私は答えた。「皆を殺す。ある日数が過ぎ、あることが起きた後で。おまえが助命を願う者を除き、一人残らず殺される。」
「主が殺したいものを、主は殺す」と犬男は、いくらか満足げな声で言った。
「そして罪が増すように」と私は言った。「時が満ちるまで、愚かさの中で生かしておこう。私が主だと知らせるな。」
「主のご意志は喜ばしい」と犬男は、犬の血の持つ、素早い気の利かせ方で言った。
「だが、一人は罪を犯した」と私は言った。「あいつは会い次第殺す。私が『あれだ』と言ったら、飛びかかれ。さて、集まっている男と女のところへ行こう。」
犬男が出ていくとき、小屋の入口は一瞬黒く塞がれた。私は続いて外へ出て立った。モローと猟犬が私を追うのを聞いたときと、ほとんど同じ場所だった。だが今は夜で、瘴気の漂う谷はすべて黒かった。その向こうには、日の当たる緑の斜面ではなく、赤い火が見え、その前を、肩を丸めた異様な姿が行き来していた。さらに向こうには、厚い木々が闇の壁を作り、上縁には高い枝が、黒いレースのように連なっていた。月がちょうど谷の端に昇り、島の噴気孔から絶えず立ちのぼる蒸気の柱が、その面を横棒のように横切っていた。
「そばを歩け」と私は気を奮い立たせて言った。小屋からこちらを窺う、薄暗い〈もの〉たちにはあまり構わず、二人並んで細い道を下った。
火の周りでは、誰も私に礼をしなかった。大半は、わざとらしく無視した。ハイエナ豚を探したが、いなかった。全部で二十人ほどが座り、火を見たり、互いに話したりしていた。
「死んだ、死んだ! 主は死んだ!」と、右手で猿男の声が言った。「苦痛の家――苦痛の家はもうない!」
「死んでいない」と私は大声で言った。「今も我々を見ている!」
彼らは驚いた。二十対の目が私を見た。
「苦痛の家はなくなった」と私は言った。「また現れる。主の姿は見えないが、今も、おまえたちの中で耳を澄ませている。」
「本当だ、本当だ!」と犬男は言った。
私の確信に、彼らは動揺した。動物はどれほど獰猛にも狡猾にもなれる。だが嘘をつくには、本物の人間が必要なのだ。
「腕に包帯を巻いた男は、奇妙なことを言う」と、一人が言った。
「そのとおりなのだ」と私は言った。「主も苦痛の家も、また現れる。律法を破る者に災いあれ!」
彼らは不思議そうに互いを見た。私は無関心を装い、手斧で目の前の地面を、何気なく切り始めた。芝にできる深い切れ目を、彼らが見ているのに気づいた。
それからサテュロスが疑問を口にした。私は答えた。次にまだらの一人が異議を唱え、火の周りで活発な議論が始まった。刻々と、今は安全だという確信が強まっていった。初めは強い興奮のせいで息が詰まっていたが、もう普通に話せた。一時間ほどの間に、何人かには本当に私の主張を信じさせ、ほかの大半も、疑いながら迷う状態へ持ち込んだ。敵であるハイエナ豚を厳しく警戒していたが、現れなかった。ときおり疑わしい動きに驚いたものの、自信は急速に育った。それから月が天頂を離れて下るにつれ、聞き手は一人ずつあくびを始めた。衰える火の光に、実に奇妙な歯が現れた。一人、また一人と、谷の巣穴へ引き上げた。私は沈黙と闇を恐れ、一緒に行った。一人と二人きりになるより、何人かといるほうが安全だと知っていた。
このようにして、モロー博士の島での滞在の、長い部分が始まった。だが、その夜から終わりまで、無数の不快な細事と、絶えない不安の苛立ちを除けば、語るべき出来事は一つしかない。だから、その期間の日誌は記さず、半ば人間にされた獣たちの仲間として過ごした十か月の、ただ一つの重大な事件だけを述べたい。書けることは記憶に数多く残っている。忘れられるなら、喜んで右手を差し出したいこともある。だが、物語を進める役には立たない。
振り返ると、あの怪物たちのやり方に、あれほど早く馴染み、自信を取り戻したのが不思議だ。当然、争いもあった。歯の跡なら今もいくつか見せられる。だが彼らは、私の石を投げる技と、手斧の刃に、ほどなく適切な敬意を持つようになった。また、セントバーナード男の忠実さは、計り知れない助けになった。彼らの単純な名誉の尺度は、主に深い傷を与える力に基づいていた。実際、虚栄ではないと思いたいが、私は彼らの中で、優位に近い地位を得ていたと言ってよい。珍しく気分が高揚したとき、ひどい傷をつけた一、二人は恨みを抱いたが、それを表すのは、主に私の背後、投石の届かない安全な距離で、顔をしかめることだった。
ハイエナ豚は私を避け、私は常に警戒していた。離れずついてくる犬男は、そいつを激しく憎み、恐れていた。それが私への愛着の根にあったのだと、本当に思う。ほどなく、ハイエナ豚が血の味を知り、ヒョウ男と同じ道をたどったのは明らかになった。森のどこかに巣を作り、独りで暮らすようになった。一度、獣人たちに狩り出させようとしたが、一つの目的のために協力させるだけの権威がなかった。何度も巣へ近づき、不意を突こうとしたが、いつも私より敏く、姿か匂いを察して逃げた。そいつも待ち伏せによって、森のどの道も、私と味方にとって危険にした。犬男は、ほとんど私のそばを離れられなかった。
最初の一か月ほどは、後の状態に比べれば獣人は十分人間らしかった。犬の友のほかにも、一、二人には親しみのある寛容さを抱いた。小さな桃色のナマケモノの生き物は、奇妙な愛情を示し、私について歩くようになった。しかし猿男には閉口した。指が五本あることを根拠に私と対等だと思い込み、絶えず話しかけてきた。とんでもない、まったくのたわごとばかりだった。少し面白かったのは、新しい言葉を作るという奇抜な癖だった。意味のない名について早口にしゃべるのが、言葉の正しい使い方だと思っていたらしい。日常のまともな関心事である「小さい考え」と区別して、それを「大きい考え」と呼んだ。私が理解できないことを言うと、ひどく褒め、もう一度言うよう頼み、暗記し、ところどころ言葉を間違えながら、温和な獣人たちに繰り返して回った。明快で理解できることは、何とも思わなかった。私は彼専用に、実に妙な「大きい考え」をいくつか作ってやった。今では、これまで会った中で最も愚かな生き物だったと思う。猿本来の愚かさを少しも失わず、人間特有の愚かさを、驚くほど発達させていた。
繰り返すが、これは獣の中で孤独に暮らし始めた、最初の数週間のことだ。その間は律法に定められた慣習を尊重し、おおむね礼儀正しく振る舞った。一度、また兎が引き裂かれているのを見つけた。ハイエナ豚の仕業だと確信している。だが、それだけだった。言葉や身のこなしの変化、発音が粗くなり、話したがらなくなる傾向を、はっきりと感じたのは、五月ごろだった。猿男のおしゃべりは量こそ増えたが、ますますわかりにくくなり、猿に近づいた。ほかの何人かは、言葉をまったく失いつつあるようだった。もっとも、そのころは、私の言うことはまだ理解していた。(かつて明確で正確だった言葉が、柔らかく崩れ、形と意味を失い、再びただの音の塊になるのを、想像できるだろうか?)また、直立して歩くことも、次第に難しくなっていた。明らかに恥じてはいたが、ときおり、足の指と手の指先で走り、どうしても直立姿勢に戻れない者に出会った。ものを持つのも不器用になり、口で吸って飲み、かじって食べることが、日ごとに増えた。モローが「頑固な獣の肉」について語った意味を、以前よりはるかに痛切に理解した。
元へ戻っていた。しかも、きわめて急速に。
何人かは――少し驚いたことに、その先駆けは皆雌だった――慎みの命令を無視し始めた。大半はわざとだった。ほかには、一夫一妻の制度を、公然と踏みにじろうとする者もいた。律法の伝統は、明らかに力を失いつつあった。この不快な話題を、これ以上続けることはできない。
犬男は気づかぬうちに、また犬へ戻っていった。日ごとに言葉を失い、四つ足になり、毛深くなった。右腕となる仲間が、そばをよろよろ歩く犬へ変わる、その過程を私はほとんど意識しなかった。
怠慢と乱れが日に日に増すにつれ、もともとよい匂いなどしなかった住居の道は、あまりに不快になった。私はそこを離れ、島を横切り、モローの囲いの黒い焼け跡に、枝で小屋を作った。苦痛の記憶がいくらか残っているため、そこはまだ獣人から最も安全な場所だった。
この怪物たちの退化を、逐一語ることはできない。日ごとに人間らしい外見が失われ、包帯や巻き布をやめ、ついには衣服を一片残らず捨てたこと。露出した四肢を毛が覆い始め、額が後退し、顔が突き出したこと。孤独の最初の月に、何人かと交わした人間めいた親密さが、思い出すだけで震える恐怖になったこと。
変化は緩やかで、避けられなかった。彼らにも私にも、はっきりした衝撃なしに訪れた。私はまだ安全に彼らの中へ入れた。下降が滑らかに進み、人間性を日に日に追い出す、増大する爆発的な獣性を解き放つ衝撃が、なかったからだ。だが、やがてその衝撃が来るに違いないと、恐れ始めた。セントバーナードの獣は、毎晩囲いまでついてきた。その警戒のおかげで、ときには多少安らかに眠れた。小さな桃色のナマケモノは臆病になり、私を去って、枝の間の本来の暮らしへ戻った。私たちはちょうど、動物使いが見せる「仲よし一家」の檻から、使い手が永久に去った後に残るような、均衡の状態にあった。
もちろん、この生き物たちは、読者が動物園で見るような獣、普通の熊、狼、虎、牛、豚、猿になったわけではない。どれにも、まだ奇妙なところがあった。モローは、一つの動物に別の動物を混ぜていた。一匹は主に熊、別の一匹は主に猫、また別の一匹は主に牛だったかもしれない。だが、どれにもほかの生き物が混じり、それぞれの性質を通して、ある種の総合された獣性が現れていた。そして、少なくなる人間性の断片も、ときおりまだ私を驚かせた。ふとした言葉の復活、思いがけない前足の器用さ、直立して歩こうとする哀れな試みなどだった。
私自身も、奇妙に変わっていたはずだ。服は黄色いぼろになって垂れ、その裂け目から日焼けした肌が見えた。髪は長く伸び、もつれ合った。今でも私の目には、奇妙な輝きと、素早く警戒する動きがあるという。
初めは昼の時間を南の浜で過ごし、船を待ち、望み、祈っていた。年が進めばイペカクアナ号が戻ると当てにしていたが、来なかった。帆を五度、煙を三度見た。だが、島に寄るものはなかった。いつも焚き火を用意していたが、島が火山だという評判のため、煙もそのせいだと思われたのだろう。
筏を作ろうと考え始めたのは、ようやく九月か十月ごろだった。そのころには腕も治り、両手が使えた。最初、自分の無力さに愕然とした。大工仕事や、その種の仕事をしたことが一度もなく、木々の間で、毎日試しに切ったり縛ったりした。縄はなく、縄を作る材料も思いつかなかった。豊富な蔓のどれも、しなやかさか強さが足りなかった。科学教育の雑多な知識をこれほど抱えていても、それを使えるようにする方法が考えつかなかった。二週間以上、囲いの黒い焼け跡や、舟を燃やした浜を掘り返し、役立ちそうな釘や金属片を探した。ときおり獣の生き物が私を見ていて、声をかけると跳ねて逃げた。雷雨と大雨の季節になり、作業はひどく遅れたが、ついに筏が完成した。
私は大喜びした。だが、いつも私を悩ませる実際的な感覚の欠如から、海から一マイル以上離れた場所で作ってしまっていた。浜へ引きずっていく途中で、ばらばらになった。海へ出さずに済んだのは、かえってよかったのかもしれない。だが、そのときは失敗の苦しさがあまりに強く、数日間、ただ浜で塞ぎ込み、水を見つめ、死を考えた。
それでも、死ぬつもりはなかった。日をそんなふうに過ごす愚かさを、はっきり警告する出来事が起きた。獣人たちからの危険は、新しい日ごとに増していたのだ。
囲いの壁の陰に横たわり、海を見ていると、冷たいものが踵に触れた。驚いて振り向くと、小さな桃色のナマケモノの生き物が、顔を見て瞬きしていた。ずっと前に言葉と活発な動きを失い、長い毛は日に日に濃くなり、短い爪はますます歪んでいた。私の注意を引いたとわかると、うめくような声を出し、少し藪のほうへ進んで、振り返った。
初めはわからなかったが、やがて、ついてきてほしいのだと思いついた。ついに私は従った。暑い日だったので、ゆっくり歩いた。木々へ着くと、そいつはよじ登った。地面より、揺れる蔓の間のほうが、うまく進めるのだ。そのとき突然、踏み荒らされた場所で、恐ろしい光景に出会った。セントバーナードの生き物が、死んで横たわっていた。そのそばにハイエナ豚がうずくまり、歪んだ爪で震える肉をつかみ、かじり、喜びに唸っていた。私が近づくと、怪物は光る目を上げ、血に染まった歯から唇を震わせて引き、威嚇の唸りを上げた。恐れも恥もなかった。人間の混じりものの最後の名残も、消えていた。私はもう一歩進み、止まって拳銃を抜いた。ついに、正面から向き合えた。
獣は退く気配を見せなかった。ただ耳を伏せ、毛を逆立て、体を縮めた。私は両目の間を狙って撃った。同時に〈もの〉がまっすぐ跳びかかり、私は九柱戯の駒のように倒された。歪んだ手で私をつかみ、顔を打った。勢いで私を越え、私はその体の後半の下に倒れた。だが幸い、狙ったとおり命中し、そいつは跳んだ瞬間に死んでいた。私は汚らしい重みの下から這い出し、震えながら立ち、その痙攣する体を見つめた。少なくとも、この危険は終わった。だが、これから必ず起こる一連の逆戻りの、最初にすぎないとわかっていた。
柴を積んだ火で、両方の死体を焼いた。だがその後、島を離れなければ、死ぬのは時間の問題だと悟った。そのころ獣人たちは、一、二の例外を除いて谷を去り、島の藪に、好みどおりの巣を作っていた。昼にうろつくものは少なく、大半は眠っていた。初めて来る者には、無人島に見えたかもしれない。だが夜は、その声と遠吠えが、空気を恐ろしく満たした。罠を作るか、ナイフで戦うかして、皆殺しにしようかと半ば考えた。弾が十分あれば、ためらわず殺し始めただろう。危険な肉食獣は、もう二十も残っていなかったはずだ。勇敢なものは、すでに死んでいた。最後の友、哀れな犬が死んだ後、私もある程度、昼に眠り、夜に警戒する習慣を採った。囲いの壁の中に巣を造り直し、何かが入ろうとすれば必ずかなりの音がするほど、入口を狭くした。生き物たちは火を扱う技術も失い、再び火を恐れるようになった。私はまた、今度はほとんど熱狂的に、杭や枝を組み、逃亡の筏を作る仕事へ戻った。
無数の困難があった。私は極端に不器用な人間だ。スロイド[訳注:北欧で始まった手工教育]が広まる前に、学校教育を終えていた。だが、筏に必要なものの大半は、何とか不格好で遠回りな方法で用意できた。今回は強度にも注意した。唯一、克服できなかったのは、この船の通らぬ海へ出る際、必要な水を入れる容器がなかったことだ。陶器作りでも試したかったが、島には粘土がなかった。この最後の問題を懸命に解こうとして、私は沈んだ気分で島を歩き回った。ときには激しい怒りに負け、耐えられない苛立ちから、運の悪い木を切りつけ、裂いた。だが、何も思いつかなかった。
そして、ある日が来た。驚くべき日、一日じゅう歓喜に包まれた日だった。南西に帆を見た。小さなスクーナーのような、小さい帆だった。すぐ大きな柴の山へ火をつけ、その熱と真昼の日の熱の中で、そばに立って見守った。何も食べず、飲まず、頭がくらむまで、一日じゅうその帆を見ていた。獣たちが来て私を睨み、不思議そうにして、去った。夜が来て帆を呑み込んだとき、まだ遠くにあった。私は夜通し、炎を高く明るく保つために働いた。闇から、驚く獣たちの目が光った。夜明けには帆が近づき、小舟の汚れたラグスル[訳注:斜めに渡した帆桁に張る四辺形の帆]だとわかった。だが、航行の仕方がおかしかった。見続けた目は疲れ、凝らしても信じられなかった。舟には二人の男が低く座っていた。一人は舳先、もう一人は舵のそばだった。船首は風に保たれず、左右へ振れ、流されていた。
日が明るくなると、私は上着の最後のぼろを振り始めた。だが二人は気づかず、向かい合ってじっと座っていた。低い岬の最も低いところへ行き、身振りをして叫んだ。返事はなく、舟はあてもなく進み、ゆっくり、実にゆっくり、湾へ向かった。突然、大きな白い鳥が舟から飛び立った。二人は動かず、気づきもしなかった。鳥は一周してから、力強い翼を広げ、頭上を滑っていった。
私は叫ぶのをやめ、岬に座り、両手に顎を載せて見つめた。ゆっくり、ゆっくり、舟は西へ流れていった。泳いでいきたかったが、何か――冷たく曖昧な恐怖――が引き止めた。午後、潮が舟を座礁させ、囲いの焼け跡から西へ百ヤードほどの場所に残した。男たちは死んでいた。あまりに長く死んでいたため、舟を横へ傾け、引き出すと、体がばらばらになった。一人はイペカクアナ号の船長のような、赤い蓬髪をしていた。舟底には、汚れた白い帽子があった。
舟のそばに立っていると、三匹の獣が藪から忍び出て、匂いを嗅ぎながら近づいた。あの嫌悪の発作が私を襲った。小舟を浜から押し出し、よじ登った。二匹はオオカミの獣で、鼻孔を震わせ、目を光らせて近づいた。三匹目は、熊と牛を合わせた、恐ろしい正体不明のものだった。哀れな亡骸へ寄るのを見、互いに唸る声を聞き、歯の光を目にすると、嫌悪は狂乱の恐怖へ変わった。私は背を向け、帆を下ろし、海へ漕ぎ出した。後ろを見ることはできなかった。
しかし、その夜は礁と島の間にとどまり、翌朝、川へ回って、舟の空の小樽に水を満たした。それから、できる限り辛抱して果実を集め、最後の三発で、待ち伏せして兎を二匹殺した。その作業の間は、獣人を恐れ、舟を礁の内側へ突き出した部分につないでおいた。
第二十二章 孤独な人間
夕方、私は出発した。南西からの穏やかな風に押され、ゆっくり、着実に海へ出た。島は次第に小さくなり、長い煙の柱は、熱い夕焼けを背に、ますます細い線になった。海が周囲に盛り上がり、あの低く黒い影を目から隠した。日の光、太陽の尾を引く栄光は、空から流れ去り、光る幕のように引き払われた。ついに私は、陽光が隠していた青い無限の深淵を見つめ、浮かぶ星々の大群を見た。海は静かで、空も静かだった。私は夜と沈黙の中に、ただ一人だった。
こうして三日間漂い、食べ物と水を節約しながら、身に起きたすべてを考えた。そのときは、また人間に会いたいという望みも、さほどなかった。汚れたぼろを一枚まとい、髪は黒くもつれていた。発見した人々は、狂人だと思ったに違いない。
奇妙だが、人間社会へ戻りたいとは思わなかった。ただ、獣人たちの汚らわしさから離れられたことが嬉しかった。そして三日目、アピアからサンフランシスコへ向かうブリッグ船に拾われた。船長も航海士も話を信じず、孤独と危険が私を狂わせたと思った。ほかの人もそう考えるかもしれないと恐れ、私はそれ以上冒険を語るのをやめ、レディ・ヴェイン号を失ってから再び救助されるまでの一年間、何が起きたか何も覚えていないと申し立てた。
精神異常を疑われぬため、最大限慎重に振る舞わねばならなかった。律法、死んだ二人の船員、闇の待ち伏せ、葦の中の死体の記憶が、私につきまとった。そして不自然に思えるだろうが、人間社会へ戻ってきたことで、期待していた安心と共感の代わりに、島で経験した不安と恐怖が、奇妙に強まった。誰も信じてくれなかった。獣人たちにとってそうだったのと、ほとんど同じほど、人間にも私は奇異に見えた。仲間たちの生来の野性を、いくらか身につけたのかもしれない。恐怖は病だという。ともかく私は、ここ数年来、半ば馴らされた子ライオンのような、落ち着かぬ恐れが心に宿っていると、証言できる。
悩みは、実に奇妙な形を取った。出会う男も女も、また別の獣人ではないか、人間の魂の外形へ半ば造り替えられた動物で、やがて元へ戻り始め、まず一つ、次に別の獣の印を現すのではないかという思いを、どうしても振り払えなかった。だが、私は並外れて有能な人に、この状態を打ち明けた。モローを知っていて、私の話を半ば信じるようだった、精神の専門医だ。その人には大いに助けられた。もっとも、島の恐怖が完全に去るとは思っていない。大半の時間、それは心の遠い奥にあり、ただ遠い雲、記憶、微かな不信でしかない。だが、その小さな雲が広がり、空全体を覆うことがある。そうなると私は周囲の人間を見回し、恐れて歩く。鋭く明るい顔、鈍い顔や危険な顔、落ち着きのない、不誠実な顔が見える。理性ある魂の穏やかな威厳を持つ顔は、一つもない。獣がその身の内から湧き上がり、やがて島の者たちの退化が、もっと大きな規模で繰り返される気がする。幻覚だとは知っている。周囲の、一見男や女に見えるものは、実際に男であり女なのだ。永久にそうであり、まったく理性ある生き物で、人間の欲望と優しい気遣いに満ち、本能から解放され、奇怪な律法の奴隷でもない。獣人とはまったく違う存在だ。それでも私は、好奇の視線、問いかけ、助力を避け、彼らから離れ、一人になりたいと願う。そのため、広く開けた丘陵地の近くに住み、心に影がかかると、そこへ逃げられるようにしている。そんなとき、風の吹き抜ける空の下の、人のいない丘陵は、実に心地よい。
ロンドンにいたころ、この恐怖はほとんど耐え難かった。人間から逃げられなかった。声は窓を通して届き、鍵をかけた扉も頼りない防壁だった。妄想と戦おうと通りへ出ると、うろつく女たちが後ろから猫のように呼びかけ、こそこそした、欲望の強い男たちが、嫉妬深い目を向けた。疲れた青白い労働者は、疲労した目と急ぐ足取りで、血を滴らせる傷ついた鹿のように、咳をしながら通り過ぎた。背の曲がった鈍い老人は、独り言を呟いて歩き、ぼろを着た子供の列が、何も知らずに嘲りながらついてきた。そこで礼拝堂へ入った。だが、そこでも私の乱れた心には、説教師が猿男と同じく「大きい考え」をまくしたてているように思えた。図書館へ入れば、本へ向かう熱心な顔は、辛抱強く獲物を待つ生き物にしか見えなかった。特に吐き気を催したのは、列車や乗合馬車の人々の、空白で無表情な顔だった。死体と同じほど、同胞には見えず、一人でいられるとわからなければ、乗る勇気がなかった。さらには私自身も、理性ある生き物ではなく、脳の奇妙な病に苦しめられ、旋回病[訳注:寄生虫などによる神経障害で、羊が旋回行動を示す病気]にかかった羊のように、一人さまよう動物にすぎないと思えた。
だが、ありがたいことに、今ではそんな気分になることは、ずっと少ない。都市と群衆の混乱から退き、賢明な本に囲まれて日々を送っている。本は、私たちの生の中に開く明るい窓であり、人間の輝く魂に照らされている。知らない人に会うことは少なく、家の者もわずかだ。昼は読書と化学の実験に費やし、晴れた夜の多くを天文学の研究に捧げる。天のきらめく星々には――どうして、なぜそうなのかわからないが――限りない安らぎと、守られている感覚がある。私たちの内にある、獣を超えた何ものかが、慰めと希望を見出すべきなのは、人間の日々の心配や罪や苦労ではなく、物質の広大で永遠の法則なのだと思う。私は希望を抱く。そうでなければ、生きてはいけない。
こうして、希望と孤独の中で、私の物語は終わる。
エドワード・プレンディック。
注記。
物語の中心となる着想を含む「モロー博士の説明」の章の内容は、1895年1月、サタデー・レビューの中面記事として掲載された。以前に発表したのは、本作のこの部分だけであり、物語の形式に合わせるため、全面的に書き直してある。