宝島
Treasure Island
- 出版年
- 1883年
- 翻訳
- 開原 藍誠
- 概要
- 少年ジムが宝の地図を手に、埋蔵金を求めて未知の島へ航海する。しかし、船員たちの正体は財宝を狙う海賊の一味だった。裏切りと反乱が渦巻く島で、ジムたちは知略を尽くして生き残りと財宝奪還を目指す。

挿絵入り児童文学ライブラリー
ロバート・ルイス・スティーヴンソン
挿絵
マイロ・ウィンター

**グラマシー・ブックス
ニューヨーク**
買おうか迷っている読者へ
船乗りの節に乗せた海の物語、
嵐と冒険、暑さと寒さ、
スクーナー船に島々、置き去りの男たち、
海賊たちに埋められた黄金、
そんな昔ながらの夢物語を、
昔ながらのやり方で語り直して、
かつての私がそうだったように、
今の賢い子どもたちも楽しめるなら――
それでよし、さあ読みたまえ! もしそうでなく、
勉強好きの若者たちが昔の好みを忘れ、
もう求めようともしないなら、
キングストンも、勇ましいバランタインも、
森と波のクーパーも[訳注:いずれも少年向けの冒険小説で知られた作家]――
それもよし! そのときは私も、
わが海賊たちと墓をともにしよう、
これらの作家とその創造物が眠る、
その同じ墓の中に!
捧ぐ
ロイド・オズボーン
アメリカの紳士へ
君の古典趣味にかなうよう
この物語は構想された
今ここに、数々の楽しいひとときへのお返しとして
心からの幸せを祈りつつ、この本を捧げる
君を愛する友
著者より

第一部 老海賊
第一章 「ベンボー提督亭」にて
トレローニー郷士、リヴジー博士、それにほかの方々から、宝島にまつわる一部始終を、初めから終わりまで包み隠さず書き記してほしいと頼まれた。ただし、島の位置だけは伏せておく。そこにはまだ掘り出されていない宝が残っているからだ。そこで西暦一七――年の今、僕は筆を取り、父が「ベンボー提督亭」を営んでいたころへ、そして日に焼けた、頬に刀傷のある老船乗りが、初めてうちに泊まるようになったころへと話を戻すことにする。
あの男が船乗りの大櫃を手押し車で後ろから運ばせ、宿の戸口まで重い足取りでやって来た姿を、僕は昨日のことのように覚えている。背が高く、がっしりと肉のついた、くるみ色に日焼けした男だった。タールの染みたお下げ髪が、汚れた青い上着の肩に垂れていた。手は荒れて傷だらけ、爪は黒ずんで欠け、片方の頬を横切る刀傷は、薄汚れた青白さを帯びていた。男は口笛を吹きながら入江を見回し、それから、のちに何度も聞かされることになる、あの古い船歌を歌いだした。
「死人の箱に十五人、
ヨー・ホー・ホー、ラム酒一本!」

宿の戸口まで重い足取りでやって来た姿を、僕は昨日のことのように覚えている
その声は年老いて高く震え、巻揚げ機の棒を押しながら節を覚え、そのまま声を潰してしまったようだった。それから、持っていた、てこの棒のような短い杖で戸をたたいた。父が出ていくと、乱暴な口調でラム酒を一杯注文した。運ばれてきた酒を、男は通人のように、舌に味を残しながらゆっくり飲み、その間もあたりの崖や、頭上の看板を眺めていた。
「こいつは使い勝手のいい入江だ」と、やがて男は言った。「酒場の場所も悪かねえ。相棒、客は多いか?」
父は、いや、残念ながらめったに来ない、と答えた。
「よし、それなら」と男は言った。「ここを俺の泊まり場にしよう。おい、相棒!」と手押し車の男に声をかけた。「横づけにして、その箱を運ぶのを手伝ってくれ。しばらくここにいる」と、男は続けた。「俺は気取らねえ男だ。ラム酒とベーコンと卵、それさえありゃいい。それに、沖の船を見張れる、あそこの岬だな。俺を何と呼べばいいかって? 船長とでも呼んでくれ。ああ、わかった、気になるのはそっちか――ほらよ」そう言って、金貨を三、四枚、敷居に投げ出した。「それを使い切ったら知らせろ」と、指揮官さながらの険しい顔で言った。
実際、服はみすぼらしく、口は悪かったが、普通の水夫にはまるで見えなかった。人を従わせ、従わなければ殴りつけることに慣れた、航海士か船長のようだった。手押し車を引いてきた男の話では、前の朝、郵便馬車で「ロイヤル・ジョージ亭」に着いたという。それから海岸沿いにどんな宿があるか尋ね、たぶん、うちの評判がよく、人里から離れていると聞いて、ほかではなくここを住まいに選んだのだろうとのことだった。この客についてわかったのは、それだけだった。
ふだんはひどく無口な男だった。昼間は真鍮の望遠鏡を持って入江や崖の上をうろつき、夜は酒場の暖炉わきの隅に座って、ひどく濃いラム酒の水割りを飲んだ。話しかけても、たいてい返事はせず、いきなり険しい顔を上げ、霧笛のように鼻を鳴らすだけだった。それで僕たちも、うちに来る人たちも、じきにそっとしておくことを覚えた。散歩から帰ると、毎日、船乗りが街道を通らなかったかと尋ねた。初めは同業の仲間が恋しいのだろうと思っていたが、そのうち、会いたくないのだとわかってきた。船乗りが「ベンボー提督亭」に泊まることもあった――海岸沿いの道をブリストルへ向かう途中で、たまに立ち寄るのだ――が、そんなとき男は、酒場に入る前に、カーテンのかかった戸口から客の様子をうかがった。そして船乗りがいる間は、必ずねずみのように押し黙っていた。少なくとも僕にとって、その理由は謎ではなかった。ある意味で、僕も男の恐れを分かち合っていたからだ。
ある日、男は僕を脇へ呼んで、「一本脚の船乗りに目を光らせ」、姿を見たらすぐ知らせるなら、毎月一日に四ペンス銀貨を一枚やると約束した。一日が来て僕が報酬を求めると、鼻を鳴らし、にらみつけるだけのこともよくあった。けれど、その週が終わるまでには必ず気を変えて、四ペンス銀貨を持ってきては、「一本脚の船乗り」を見張れと、改めて念を押すのだった。
その男がどれほど僕の夢につきまとったかは、説明するまでもないだろう。嵐の夜、風が家じゅうを揺さぶり、打ち寄せる波が入江から崖の上までとどろくと、一本脚の男は千変万化の姿と、千通りの悪魔じみた顔で現れた。脚が膝から切れていることもあれば、付け根からないこともあった。あるときは、生まれつき胴の真ん中に一本しか脚がない、怪物のような姿だった。その男が生け垣や溝を跳び越え、走りながら僕を追いかけてくるのは、何より恐ろしい悪夢だった。月々の四ペンス銀貨のために、僕はこうしたおぞましい妄想という、ずいぶん高い代償を払ったわけだ。
それほど一本脚の船乗りを恐れていた僕だったが、船長その人については、ほかの誰よりも怖がっていなかった。夜によっては、船長は限度をはるかに超えてラム酒の水割りを飲んだ。そんなときは、座ったまま、誰にもかまわず、下品で荒々しい昔の船歌を歌うこともあった。かと思うと、全員に酒を出させ、震え上がる客たちに、自分の話を聞かせたり、歌の合いの手を入れさせたりした。近所の人たちが死ぬほどおびえながら、目をつけられまいと競って声を張り上げ、家が揺れるほどの「ヨー・ホー・ホー、ラム酒一本」が響くのを、僕は何度も聞いた。この状態になると、船長ほど横暴な人間はいなかった。手のひらで食卓をたたいて一同を黙らせ、質問されればかっとなり、ときには誰も質問しないから話を聞いていないのだと怒った。そして、自分が飲み疲れて眠くなり、よろめきながら寝床へ引き揚げるまでは、誰も宿を出ることを許さなかった。
人々を何より怖がらせたのは、船長の話だった。絞首刑や、板を歩かせて海へ落とす処刑、海の嵐、ドライ・トートゥガス諸島、スペイン領カリブ海沿岸の荒々しい土地と悪事など、恐ろしい話ばかりだった。本人の話を信じるなら、神が海に放った者のうちでも、とびきりの悪党どもに交じって暮らしてきたに違いない。しかも、その話を語る言葉づかいは、語られる犯罪そのものと同じくらい、素朴な田舎の人たちをぎょっとさせた。父はいつも、このままでは宿が潰れてしまうと言っていた。威張り散らされ、怒鳴りつけられ、震えながら寝床に入るために、わざわざ来る客はいなくなるというのだ。けれど僕は、あの男がいたことは、むしろ商売の役に立ったのだと本気で思っている。その場では怖がっていても、あとになると、人々は案外楽しんでいた。静かな田舎暮らしには、格好の刺激だったのだ。若者の中には、船長を尊敬しているふうを装い、「本物の海の荒くれ者」だとか「筋金入りの古船乗り」だとか呼んで、ああいう男のおかげでイングランドは海の上で恐れられるのだと言う者さえいた。
ただし、ある点では、確かにうちを潰しかねなかった。何週間も、それが何か月にもなって居座り続け、預かった金などとうに尽きていたのに、父はどうしても勇気を出して追加を請求できなかったのだ。たまにその話を持ち出しても、船長はほえるような大きな鼻息を立て、気の毒な父をにらんで部屋から追い払った。そうしてはねつけられたあと、父が両手をもみ合わせて途方に暮れるのを、僕は見たことがある。あの絶え間ない心労と恐怖が、父の早すぎる不幸な死を、ずいぶん早めたに違いない。
うちにいた間、船長は行商人から靴下を買ったほかは、身なりをまったく変えなかった。帽子の折り上げたつばが一か所垂れ下がると、風の日にはひどく邪魔になったのに、そのままにしていた。上着の様子も覚えている。二階の部屋で自分で継ぎを当て、しまいには継ぎはぎばかりになっていた。手紙は一度も書かず、受け取ることもなかった。話す相手は近所の人だけで、それもほとんど、ラム酒に酔ったときに限られた。あの大きな船乗りの箱が開いているところは、誰も見たことがなかった。
船長に逆らった人は、一度だけあった。終わりに近いころ、気の毒な父が、やがて命を奪うことになる衰弱の病で、すっかり弱っていた時期のことだ。ある日の夕方近く、リヴジー博士が診察に来た。母の出した夕食を少し食べ、それから、村に預けた馬が連れてこられるまで、パイプを吸おうと酒場に入った。古い「ベンボー提督亭」には、馬小屋がなかったのだ。
僕もあとについて入った。身ぎれいで快活な博士は、髪の粉が雪のように白く、黒い目が輝き、物腰も気持ちよかった。その姿が、野放図な田舎の人たちと、何より、テーブルに両腕を乗せ、ラム酒ですっかり酔い潰れた、汚らしく図体の大きな、目の濁ったかかしのようなうちの海賊と、なんという違いだろうと思ったのを覚えている。そのとき突然、男――つまり船長が、例の終わりのない歌を張り上げた。
「死人の箱に十五人――
ヨー・ホー・ホー、ラム酒一本!
残りは酒と悪魔にやられた――
ヨー・ホー・ホー、ラム酒一本!」
初めのころ僕は、「死人の箱」とは、二階の表の部屋にある、あの大きな箱そのものだと思っていた。その思いが一本脚の船乗りの姿と混じり合って、悪夢になったのだった。しかしこのころには、その歌にわざわざ気を留める者は、もう誰もいなかった。その晩、初めて聞いたのはリヴジー博士だけで、しかも、どうやらお気に召さなかったらしい。一瞬、ひどく不機嫌そうに顔を上げてから、庭師のテイラー老人を相手に、リウマチの新しい治療法について話を続けた。その間に船長は、自分の歌でだんだん元気づき、とうとう目の前のテーブルを平手でたたいた。あの仕草の意味は、みんな知っていた――黙れ、という合図だ。話し声はたちまちやんだが、博士だけは違った。相変わらず、はっきりした穏やかな声で話し、一言二言の合間に、勢いよくパイプを吸っていた。船長はしばらく博士をにらみ、もう一度テーブルをたたき、さらに険しい目つきになった。ついにひどい悪態をついて、怒鳴った。「おい、そこの甲板の下! 静かにしやがれ!」
「私におっしゃったのですか?」と博士は尋ねた。荒くれ男が、また悪態をついて、そうだと答えると、博士は言った。「あなたに言うことは一つだけです。そのままラム酒を飲み続ければ、この世から、ひどく汚らしい悪党が一人、じきにいなくなりますよ。」
老人の怒りようはすさまじかった。跳び上がるように立ち、船乗り用の折り畳みナイフを抜いて開くと、刃を出したまま手のひらに構え、博士を壁に串刺しにしてやると脅した。
博士は身じろぎ一つしなかった。先ほどと同じように肩越しに、同じ調子で話した。部屋じゅうに聞こえるよう少し声は張ったが、あくまでも落ち着き、揺るがなかった。
「今すぐそのナイフをポケットにしまわなければ、私の名誉にかけて、次の巡回裁判であなたを絞首台に送ります。」
それから二人はにらみ合った。けれど船長はすぐに折れ、刃物をしまうと、殴られた犬のようにうなりながら、元の席へ腰を下ろした。
「それから」と博士は続けた。「この地区にあなたのような男がいるとわかった以上、昼も夜も目を光らせておくつもりです。私は医者であるばかりでなく、治安判事でもある。あなたについて少しでも苦情を耳にしたら、今夜のような無礼な振る舞い一つでも、必ず手を打って、ここから追い出します。よく覚えておきなさい。」
まもなくリヴジー博士の馬が戸口に連れてこられ、博士は帰っていった。だが船長は、その晩はずっと静かにしていたし、その後も何晩もの間、おとなしくしていた。

第二章 ブラック・ドッグ、現れて消える
それからさほどたたないうちに、謎めいた事件の最初の一つが起こった。それらの事件のおかげで、僕たちはついに船長から解放された。ただし、これからわかるように、船長にまつわる厄介事から解放されたわけではない。その冬は厳しい寒さで、強い霜の降りる日が長く続き、激しい風が吹いた。気の毒な父が春を迎えられそうにないことは、初めから明らかだった。父は日ごとに弱り、宿の仕事は何もかも母と僕の肩にかかった。あの不愉快な客を気にかける暇など、ほとんどなかった。
一月のある朝、ごく早い時刻だった。身を刺すように冷え込み、入江は霜で灰色になり、小波が石をそっと洗っていた。太陽はまだ低く、丘の頂だけを照らし、はるかな沖に光を投げていた。船長はいつもより早く起き、古い青い上着の広い裾の下で舶刀を揺らし、真鍮の望遠鏡を小脇に抱え、帽子をあみだにかぶって、浜へ出ていった。大股で歩く船長のあとに、白い息が煙のように漂っていたのを覚えている。大岩を回るとき、最後に聞こえたのは、憤慨したような大きな鼻息だった。まだリヴジー博士のことを考えているようだった。
母は二階で父についており、僕は船長が帰ったときのために朝食のテーブルを整えていた。すると酒場の戸が開いて、見たこともない男が入ってきた。獣脂のように青白い顔をし、左手の指が二本なかった。舶刀を帯びてはいたが、あまり戦いそうな男には見えなかった。僕は一本脚でも二本脚でも、船乗りにはいつも注意していたが、この男には戸惑ったのを覚えている。船乗りらしくないのに、どこか海の匂いもするのだった。
何をご用意しましょうと尋ねると、ラム酒をくれと言った。ところが僕が取りに出ようとすると、テーブルに腰を下ろし、近くへ来いと手招きした。僕はナプキンを手にしたまま、その場で足を止めた。
「こっちへおいで、坊主」と男は言った。「もっと近くへ。」
僕は一歩近づいた。
「ここの席は、俺の仲間のビルのためかい?」と、薄笑いを浮かべて尋ねた。
ビルというお仲間は知らない、これはうちに泊まっている、船長と呼ばれる人の食事だと、僕は答えた。
「そうか」と男は言った。「俺の仲間のビルなら、船長と名乗っていても不思議じゃねえ。片頬に傷があってな、実に愛想のいい男だ、とくに飲んだときはな、あのビルは。まあ、たとえばの話だが、その船長の片頬にも傷があるとしよう――何なら、右の頬だとしてみよう。ああ、やっぱりな! 言ったとおりだ。で、俺の仲間のビルは、この家にいるのかい?」
散歩に出ていると答えた。
「どっちだ、坊主? どっちへ行った?」
僕は岩のほうを指し、船長がどの道を通って、どのくらいで戻りそうかを教え、ほかにも二、三の質問に答えた。すると男は、「ああ」と言った。「こいつはビルにとっちゃ、酒と同じくらい嬉しいことだろうよ。」
そう言う男の顔は、少しも感じのよいものではなかった。仮に本気で言っていたにしても、男の思い違いだと考えるだけの理由が僕にはあった。けれど、僕には関わりのないことだと思った。それに、どうしていいかわからなかった。
男は宿の戸口の内側をうろうろし、ねずみを待ち伏せる猫のように、角から外をのぞき込んでいた。一度、僕が街道へ出ると、すぐに呼び戻した。思うほど早く僕が従わないので、獣脂のような顔がぞっとするほど変わり、飛び上がるような悪態をついて、中へ入れと命じた。僕が戻ると、また半分おもねり、半分あざけるような前の態度になり、肩を軽くたたいて、いい子だ、すっかり気に入ったと言った。「俺にも息子がいてな」と言った。「おまえと瓜二つだ。俺の何よりの自慢さ。だがな、坊主、子どもに大事なのはしつけだ――しつけだよ。もしビルと同じ船に乗っていたら、二度も言われるまで、ぼうっと突っ立ってはいなかっただろうな。ああ、いられなかったさ。ビルも、あいつと船に乗る連中も、そんなことは許さねえ。おや、ほら、あの愛すべきビルのお出ましだ。望遠鏡を小脇に抱えてる。さあ坊主、二人で酒場に戻って、戸の陰に隠れよう。ビルをちょいと驚かせてやるんだ――まったく、懐かしいやつめ。」
そう言いながら、男は僕と一緒に酒場へ後ずさりし、僕を自分の後ろの隅へ押し込んだ。二人とも開いた戸の陰に隠れる格好になった。想像がつくだろうが、僕は不安でたまらなかった。しかも男自身が明らかにおびえているのを見て、いっそう怖くなった。男は舶刀の柄をつかみやすくし、刃を鞘から少し緩めた。そこで待つ間じゅう、喉に物がつかえたように、何度も唾をのみ込んでいた。
やがて船長が大股で入ってきた。左右には目もくれず、背後の戸をばたんと閉め、朝食の待つ席へ、まっすぐ部屋を横切った。
「ビル」と男が呼んだ。わざと太く、威勢よく出そうとした声に、僕には聞こえた。
船長はくるりと踵を返し、僕たちと向き合った。顔から日焼けの色がすっかり消え、鼻まで青くなった。幽霊か悪魔か、もしそんなものがあるなら、それより恐ろしいものを見た人の顔だった。一瞬のうちに年老いて、病人のようになってしまった姿を見ると、ほんとうに気の毒になった。
「おいビル、俺がわかるだろう。昔の船仲間を忘れちゃいねえだろう、ビル」と男は言った。
船長は息をのむような音を立てた。
「ブラック・ドッグ!」と言った。
「ほかの誰だっていうんだ?」と、相手はいくらか気を楽にして答えた。「昔ながらのブラック・ドッグさ。『ベンボー提督亭』に、古い船仲間のビリーに会いに来たんだ。ああ、ビル、ビル。この爪を二本なくしてから、二人でいろんな目に遭ったもんだな」そう言って、指の欠けた手を上げた。
「いいか」と船長は言った。「俺を見つけたな。ここにいるのはごらんのとおりだ。さあ、言え。何の用だ?」
「そうこなくちゃ、ビル」とブラック・ドッグが答えた。「そのとおりさ、ビリー。まず、このすっかり気に入ったかわいい坊主に、ラム酒を一杯もらおう。それから座って、昔の船仲間らしく、腹を割って話そうじゃねえか。」
僕がラム酒を持って戻ると、二人はもう、船長の朝食のテーブルを挟んで座っていた。ブラック・ドッグは戸に近い側で、体を斜めに向け、片目で昔の仲間を、もう片目で、僕の見るところ、逃げ道を見張っていた。
男は戸を大きく開けたまま、出ていけと僕に言った。「鍵穴からのぞくんじゃねえぞ、坊主」そう言われて、僕は二人を残し、酒の売り場へ引き下がった。
一生懸命に聞き耳を立てたのだが、長いこと、低いぼそぼそした声しか聞こえなかった。けれどやがて声が大きくなり、船長の言葉が一つ二つ聞き取れた。ほとんど悪態だった。
「だめだ、だめだ、だめだ、だめだ! この話は終わりだ!」と、一度は叫んだ。また、「首を吊られるなら、みんな一緒だ。それが俺の考えだ」とも言った。
すると突然、ものすごい悪態と物音が爆発した。椅子とテーブルがいっぺんに倒れ、鋼のぶつかる音が続き、苦痛の叫びがした。次の瞬間、ブラック・ドッグが全速力で逃げ出し、船長がぴったり追いかけていくのが見えた。二人とも舶刀を抜き、ブラック・ドッグは左肩から血を流していた。戸口で船長は、逃げる男めがけ、最後のすさまじい一太刀を浴びせた。もし「ベンボー提督亭」の大きな看板が邪魔をしなかったら、相手は顎まで真っ二つになっていたに違いない。
そのときの切り込みは、今でも看板の枠の下側に残っている。
それが最後の一撃だった。街道へ出ると、ブラック・ドッグは傷にもかかわらず、驚くほどの速さで走り去り、三十秒もしないうちに丘の向こうへ消えた。一方、船長は、ぼうぜんとしたように看板を見上げていた。それから何度か目を手でこすり、ようやく宿へ戻ってきた。
「ジム」と言った。「ラム酒だ」そう言いながら少しよろめき、片手を壁について体を支えた。
「けがをしたの?」と僕は叫んだ。
「ラム酒だ」と繰り返した。「ここから逃げなきゃならねえ。ラム酒だ! ラム酒!」
僕は取りに走ったが、今起こったことですっかり気が動転していた。コップを一つ割り、酒樽の栓までおかしくして、まだまごついているうちに、酒場でどさりと大きな音がした。駆け込むと、船長が床に長々と倒れていた。ちょうどそのとき、叫び声と争いに驚いた母も、僕を助けようと階段を駆け下りてきた。二人で船長の頭を持ち上げた。ひどく大きく苦しそうな息をしていたが、目は閉じ、顔は恐ろしい色になっていた。
「まあ、なんてこと!」と母は叫んだ。「うちの宿の面汚しだよ! お父さんが病気だっていうのに!」
けれど僕たちには、船長をどう助ければよいのか見当もつかず、あの見知らぬ男との争いで致命傷を負ったのだとしか考えられなかった。とにかくラム酒を持ってきて、口へ流し込もうとしたが、歯は固く食いしばられ、顎は鉄のように動かなかった。戸が開いて、父の診察にリヴジー博士が入ってきたときは、どれほどほっとしたことか。
「先生!」と僕たちは叫んだ。「どうすればいいんでしょう? どこをけがしたんでしょう?」
「けが? とんでもない!」と博士は言った。「君や私と同じで、けがなどしていない。私が警告したとおり、発作を起こしたんだ。さあ、ホーキンズ夫人、二階のご主人のところへ行って、できれば、このことは何も知らせないでください。私は、この三重にくだらん男の命を助けるため、できるだけのことをしなければならない。ジム、洗面器を持ってきてくれ。」
洗面器を持って戻ったとき、博士はもう船長の袖を裂き、筋張った太い腕をあらわにしていた。腕には何か所も入れ墨があった。前腕には「幸運を」「順風を」、それに「ビリー・ボーンズのお気に入り」と、きれいにはっきり彫ってあった。肩に近いところには、絞首台と、そこに吊られた男の絵があった。僕にはなかなか迫力のある出来に思えた。
「予言だな」と博士は、その絵を指で触りながら言った。「さて、ビリー・ボーンズ君。それが名前なら、血の色を見せてもらおうか。ジム」と言った。「血は怖いかい?」
「いいえ、先生」と僕は答えた。
「では」と博士は言った。「洗面器を持っていてくれ」そう言って、外科用の小刀を取り出し、静脈を切り開いた[訳注:当時、病気の治療として行われていた瀉血]。
かなりの血を抜いてから、ようやく船長は目を開け、ぼんやりとあたりを見回した。まず博士だとわかると、あからさまに顔をしかめた。それから僕に目が留まり、ほっとした様子になった。だが突然、顔色を変え、体を起こそうとして叫んだ。
「ブラック・ドッグはどこだ?」
「ここには黒い犬などいない」と博士は言った。「君自身に取りついているやつは別だがね。ラム酒を飲んで、私の言ったとおり発作を起こしたんだ。そして私は、まったく気が進まないながら、たった今、君を墓穴から頭を先にして引きずり出した。さて、ボーンズさん――」
「俺の名じゃねえ」と船長はさえぎった。
「知ったことか」と博士は答えた。「私の知っている海賊の名前だ。話を簡単にするため、そう呼ぶ。言いたいのは、こういうことだ。ラム酒一杯では死にはしない。だが一杯飲めば、二杯、三杯と飲むだろう。このかつらを賭けてもいい、きっぱりやめなければ、君は死ぬ――わかるかね? ――死んで、聖書に出てくる男のように、自分にふさわしい場所へ行くんだ。さあ、力を出しなさい。今回だけは、寝床まで手を貸してあげよう。」
二人でずいぶん苦労して二階へ運び上げ、寝床に横たえた。船長の頭は、気を失いかけたように、枕へがくりと落ちた。
「いいかね」と博士は言った。「私は言うべきことを言った。君にとって、ラム酒という名は死を意味するんだ。」
そう言うと博士は、僕の腕を取って連れ出し、父の診察へ向かった。
「たいしたことはない」と、戸を閉めるなり言った。「しばらくおとなしくしているだけの血は抜いた。一週間はあのまま寝ていなければならん。それが本人にも君たちにも一番いい。だが、もう一度発作を起こしたら、命はないよ。」
第三章 黒丸
昼ごろ、僕は冷たい飲み物と薬を持って、船長の部屋へ行った。船長は、さっきより少し上体を高くしただけで、ほぼ同じ姿勢で横になっていた。弱りきっているのに、気が高ぶっているようだった。
「ジム」と言った。「この家で頼りになるのは、おまえだけだ。俺がいつもよくしてやったのは知ってるな。毎月欠かさず、四ペンス銀貨をやったじゃねえか。ところが、見てのとおりだ、相棒。すっかり弱っちまって、みんなに見捨てられた。なあジム、ラム酒を小ジョッキ一杯、持ってきてくれるな、相棒?」
「でも、先生が――」と僕は言いかけた。
すると船長はさえぎり、弱々しい声で、それでも心底から博士をののしった。「医者なんぞ、みんな役立たずだ」と言った。「とくにあの医者だ。船乗りの何がわかる? 俺は煮えたタールみてえに暑い土地にいたことがある。仲間は黄熱病でばたばた倒れ、地震で陸が海みてえに波打ってた――あの医者に、そんな土地の何がわかる? ――そこで俺は、ラム酒で生き延びたんだ。飯でもあり水でもあり、亭主でも女房でもあった。今ラム酒を飲めねえなら、風下の岸へ吹き寄せられた、ぼろ船も同然だ。俺を死なせたら、おまえとあのやぶ医者のせいだぞ、ジム」そしてまた、しばらく悪態を続けた。「見ろ、ジム、この指がぴくぴくするのを」と、今度は哀願する声になった。「じっとさせられねえんだ。今日は一滴も飲んでねえ。あの医者は馬鹿だ。ラム酒をちょっぴり飲まなきゃ、ジム、恐ろしいものが見えてくる。もう見え始めてるんだ。そこの隅、おまえの後ろに、フリントの親父を見た。はっきり見えたんだ。ああいうものが見えだしたら、俺は荒っぽく生きてきた男だ、ただじゃ済まさねえ。あの医者だって、一杯なら害はねえと言ったろう。小ジョッキ一杯で、一ギニー金貨をやるぞ、ジム。」
船長はますます興奮してきた。それが僕には心配だった。その日、父はひどく弱っていて、静かにしておかなければならなかったからだ。それに、今持ち出された博士の言葉でいくらか安心したし、金で釣ろうとされたのには、少し腹も立った。
「お金なんかいらない」と僕は言った。「父さんに払う分以外はね。一杯だけ持ってくるよ。それ以上はだめだ。」
持ってくると、船長はむさぼるようにつかみ、一息に飲み干した。
「ああ、ああ」と言った。「確かに、いくらかましになった。ところで相棒、あの医者は、いつまでこの寝床にいろと言った?」
「少なくとも一週間」と僕は答えた。
「畜生!」と船長は叫んだ。「一週間! そんなに待てるか。それまでに黒丸を渡されちまう。やつらは今この瞬間にも、俺の風上へ回ろうとしてるんだ。自分の取り分を守ることもできねえくせに、人の物をかっぱらおうとする間抜けどもめ。それが船乗りのやることか、ええ? だが俺は倹約家だ。大事な金を無駄遣いしたことも、なくしたこともねえ。もう一度、出し抜いてやる。怖くなんかねえ。帆をもう一段広げてな、相棒、またまいてやるんだ。」
そう話しながら、船長はやっとのことで寝床から起き上がっていた。僕の肩を、叫びそうになるほど強くつかみ、重い荷物のように脚を動かした。言葉だけは威勢がいいのに、その声は悲しくなるほど弱々しかった。寝床の縁に腰を下ろすと、そこで動きを止めた。
「あの医者にやられた」とつぶやいた。「耳が鳴る。寝かせてくれ。」
僕がろくに手を貸す間もなく、船長は元の場所へ倒れ込み、しばらく黙って横たわっていた。
「ジム」と、ようやく言った。「今日のあの船乗りを見たな?」
「ブラック・ドッグ?」
と僕は尋ねた。
「ああ、ブラック・ドッグだ」と船長は言った。「あいつは悪党だ。だが、もっとひでえやつが、裏で糸を引いてる。いいか、どうしても逃げられず、黒丸を渡されたら、やつらの狙いはあの古い船乗りの箱だと覚えておけ。馬に乗れ――乗れるな? よし、馬に乗って行くんだ、あの――そうだ、そうしよう! ――あの忌々しいやぶ医者のところへ。総員を呼び集めろと言え。治安判事だの、そういう連中をだ。そしたら『ベンボー提督亭』で、やつらに乗り込んでくれるだろう。フリントの昔の一味が、若いのも年寄りも、生き残りはみんな来る。俺は一等航海士だった。フリントの一等航海士で、あの場所を知ってるのは俺だけだ。サバンナで、あいつが死にかけていたとき、俺に渡した。ちょうど今の俺みたいな具合だった。だが、黒丸を渡されるまでは、しゃべるんじゃねえぞ。ブラック・ドッグをまた見たときか、一本脚の船乗りを見たときは別だ、ジム――何より、そいつだ。」
「でも、黒丸って何なの、船長?」
と僕は尋ねた。
「呼び出し状だ、相棒。渡されたら教えてやる。だが目を光らせておけよ、ジム。そうすりゃ山分けだ。約束する。」
そのあとも少しうわごとを言い、声はだんだん弱くなった。僕が薬を渡すと、「薬が必要な船乗りがいるとすりゃ、俺だな」と言って、子どものように素直に飲んだ。まもなく、気絶したような深い眠りに落ちたので、僕はそのままにして部屋を出た。もし何事もなく済んでいたら、僕がどうしたかはわからない。たぶん、一部始終を博士に話しただろう。船長が告白を悔やみ、僕を殺すのではないかと、死ぬほど怖かったからだ。ところがその晩、父がまったく突然に息を引き取り、ほかのことはすべて脇へ押しやられた。当然の悲しみに加え、近所の人の弔問、葬式の手配、その間にも続けなければならない宿の仕事で、僕は忙しかった。船長のことを考える暇さえほとんどなく、まして怖がるどころではなかった。
確かに、船長は翌朝、階下へ下りてきて、いつものように食事をした。もっとも、ほとんど食べず、ラム酒のほうは、残念ながら、いつも以上に飲んだと思う。顔をしかめ、鼻息を鳴らしながら、酒の売り場から勝手に持ち出したが、誰も逆らう勇気はなかった。葬式の前夜には、以前と変わらず酔っ払っていた。喪中の家で、あのいやらしい古い船歌を歌い続けるのを聞くのは、つらいことだった。だが弱っていても、僕たちはみんな死ぬほど船長を恐れていたし、博士は急に何マイルも離れた病人の世話にかかりきりになり、父が死んでからは一度も来なかった。船長は弱っていたと書いたが、実際、回復するどころか、いっそう衰えていくようだった。階段を苦労して上り下りし、酒場と売り場を行き来し、ときには潮の匂いを嗅ごうと戸口から鼻を突き出した。動くときは壁にすがり、急な山を登る人のように、速く荒い息をしていた。僕にわざわざ話しかけることはなく、あの打ち明け話もほとんど忘れていたのではないかと思う。だが機嫌はいっそう変わりやすくなり、体の弱さを差し引いても、以前より乱暴になった。酔うと舶刀を抜き、むき出しで目の前のテーブルに置くという、恐ろしい癖もついた。それでも、人には前ほどかまわず、自分の考えに閉じこもり、少しぼんやりしているようだった。たとえば一度、まるで違う節の、田舎の恋歌のような歌を歌いだし、僕たちをひどく驚かせた。海へ出る前の若いころに覚えた歌に違いなかった。
そんなふうに日が過ぎ、葬式の翌日になった。霧が立ちこめ、霜の降りた、身を切るように寒い午後の三時ごろ、僕は少しの間、戸口に立って、悲しく父のことを考えていた。すると街道を、誰かがゆっくり近づいてくるのが見えた。杖で前をたたき、目と鼻を覆う大きな緑の目隠しをつけていたので、目が見えないのは明らかだった。年のせいか、体が弱いのか、背は曲がり、大きな、古くぼろぼろの頭巾つき船乗り外套にくるまって、体そのものがゆがんでいるように見えた。生まれてこのかた、あれほど恐ろしい姿を見たことはなかった。男は宿から少し離れたところで止まり、妙に節のついた声を張り上げ、目の前の何もない空間に呼びかけた。
「どなたかご親切な方、哀れな盲人にお教えくださいまし。祖国イングランドを守る尊い務めで、大切なこの目の光を失った者でございます。ジョージ国王に神のご加護を! ――さて、ここはどこで、この国のどのあたりでございましょう?」
「ブラック・ヒル入江の『ベンボー提督亭』ですよ」と僕は答えた。
「声が聞こえる」と男は言った。「若い声だ。親切な若いお友達、手を貸して、中へ案内してくれないかね?」
僕が手を差し出すと、その恐ろしい、物腰だけは柔らかな、目の見えない男は、たちまち万力のようにつかんだ。驚いて引き抜こうとしたが、男は腕の一振りで、僕をぐっと引き寄せた。
「さあ、坊主」と言った。「船長のところへ連れていけ。」
「すみません」と僕は言った。「ほんとうに、それはできません。」
「ほう」と男はせせら笑った。「そういうわけか! さっさと連れていけ。さもなきゃ腕をへし折るぞ。」
そう言いながら腕をねじり上げたので、僕は悲鳴を上げた。
「あなたのために言ってるんです」と僕は言った。「船長は前とは違うんです。剣を抜いて座ってるんです。この前も、別の人が――」
「いいから歩け」と男はさえぎった。あれほど残酷で、冷たく、いやな声は聞いたことがなかった。痛みよりもその声にすくみ上がり、僕はすぐに言うとおりにした。戸口からまっすぐ入り、病気の老海賊がラム酒でぼんやり座っている酒場へ向かった。盲人はぴったりとつきまとい、鉄のような片手で僕をつかみ、支えきれないほどの体重をかけてきた。「まっすぐやつの前へ連れていけ。俺が見えるところへ来たら、『友達が来たよ、ビル』と叫べ。そうしなきゃ、こうだ」そう言ってまたひねったので、僕は気が遠くなりそうだった。そうこうするうちに、この盲目の物乞いがあまりに恐ろしく、船長への恐れを忘れてしまった。酒場の戸を開けると、命じられた言葉を震える声で叫んだ。
哀れな船長は目を上げた。一目見ただけで酔いが吹き飛び、しらふになってじっと見つめた。その顔に浮かんだのは、恐怖というより、死ぬほどの苦しみだった。立とうと身を動かしたが、もうそれだけの力さえ残っていなかったと思う。
「さあビル、そのまま座ってろ」と物乞いは言った。「目は見えねえが、指一本動かす音も聞こえる。用事は用事だ。左手を出せ。坊主、こいつの左の手首をつかんで、俺の右手のそばへ持ってこい。」
僕たちは二人とも、言われたとおりにした。男が、杖を握る手のくぼみから何かを船長の手のひらへ移すのが見えた。船長はすぐにそれを握り込んだ。
「これで済んだ」と盲人は言った。その言葉と同時に、不意に僕を放し、信じがたいほど正確で素早い足取りで、酒場から街道へ飛び出した。僕が立ちすくんでいる間に、杖がこつ、こつ、こつと遠ざかっていくのが聞こえた。
僕も船長も、しばらくは我に返れなかった。やがて、ほとんど同時に、僕はまだつかんでいた手首を放し、船長は手を引き寄せ、手のひらを鋭くのぞき込んだ。
「十時!」と叫んだ。「六時間! まだ出し抜ける!」そして跳び上がるように立った。
だが立った瞬間によろめき、喉に手を当て、しばらく揺れながら突っ立っていた。それから妙な音を立て、立った高さからそのまま、顔を先に床へ倒れた。
僕は母を呼びながら、すぐに駆け寄った。けれど、急いでも無駄だった。船長は激しい脳卒中で、その場で死んでいた。不思議なものだ。近ごろは気の毒に思い始めていたとはいえ、僕は決してあの男が好きではなかった。それなのに、死んだとわかったとたん、涙がどっとあふれた。僕が知った二度目の死だった。そして最初の死の悲しみが、まだ心に生々しく残っていたのだ。
第四章 船乗りの箱
もちろん僕は、すぐに母へ知っていることをすべて話した。本当なら、もっと前に話しておくべきだったのだろう。すると僕たちが、難しく危険な立場にいることが、たちまちわかった。あの男に金があるなら、その一部は確かに僕たちに支払われるべきものだった。だが船長の船仲間、とくに僕が見た二人――ブラック・ドッグと盲目の物乞い――が、死んだ男の借金を払うために獲物を手放すとは思えなかった。船長の言いつけどおり、すぐ馬に乗ってリヴジー博士のところへ行けば、母を一人、無防備で残すことになる。それは考えられなかった。実際、どちらもこれ以上家にいられそうになかった。台所の炉で石炭が崩れる音も、時計の刻む音さえも、僕たちをおびえさせた。近づく足音が、あたりじゅうに潜んでいるように聞こえた。酒場の床にある船長の死体と、あの忌まわしい盲人がすぐ近くをうろつき、いつでも戻ってくるかもしれないという思いで、僕は何度も、文字どおり体が跳ね上がるほど恐ろしくなった。早くどうするか決めなければならなかった。そこでようやく、二人で外へ出て、近くの村に助けを求めようと思いついた。言うが早いか、帽子もかぶらず、夕闇の深まる、凍るような霧の中へ飛び出した。
村は隣の入江の向こう側にあり、見えはしなかったが、数百ヤードも離れてはいなかった。何より心強かったのは、盲人が来た方角、そしてたぶん戻った方角とは、反対にあることだった。ときどき立ち止まり、互いにつかまって耳を澄ませたが、道のりは数分にすぎなかった。変わった音は何もせず、小波の低い音と、森の生き物の鳴き声だけが聞こえた。
村に着くころには、もうろうそくがともっていた。戸口や窓の黄色い明かりを見たとき、どれほど元気づけられたか、僕は決して忘れない。だが結局、その村で得られた一番の助けは、その明かりだった。男なら恥ずかしくないのかと思うのだが、「ベンボー提督亭」へ一緒に戻ってくれる者は、一人もいなかったのだ。
僕たちが窮状を話せば話すほど、男も女も子どもも、ますます家の中へ引っ込んだ。僕には初耳だったフリント船長という名を、よく知る者が何人かいて、それは途方もない恐怖を呼び起こした。それに、「ベンボー提督亭」の向こうの畑へ出ていた男たちは、街道で何人かの見知らぬ男を見かけ、密輸業者だと思って逃げ帰ったことを思い出した。少なくとも一人は、僕たちがキットの穴と呼ぶ場所に、小さなラガー船[訳注:斜めに渡した帆桁に帆を張る小型帆船]がいるのを見ていた。そもそも船長の仲間というだけで、村人を死ぬほど怖がらせるには十分だった。つまり、別の方角にあるリヴジー博士の家へ馬を走らせてもいいという者は何人かいたが、宿を守るのを手伝ってくれる者は、一人もいなかった。
臆病はうつるという。だが一方で、言い争いは人を大いに奮い立たせる。みんなが言いたいことを言い終わると、母は一同に向かって言った。父をなくした息子のものになる金を、失うわけにはいかない、と。「あなた方が誰一人行く勇気がないなら」と母は言った。「ジムと私は行きます。来た道を戻りますよ。体ばかり大きな臆病者の男たちに、お礼なんて言いません! 命がけでも、あの箱を開けます。クロスリーさん、その袋を貸してくださいな。正当に受け取るお金を入れて戻りますから。」
もちろん僕は、母と一緒に行くと言った。もちろんみんなは、無茶だと騒いだ。それでも、ついてくる男はいなかった。してくれたのは、襲われたときのために弾を込めた拳銃を一丁くれたことと、帰りに追われた場合に備えて、鞍をつけた馬を用意しておくと約束したことだけだった。それから、一人の若者が博士の家へ馬を走らせ、武装した助けを求めることになった。
二人でこの危険な仕事のため、冷たい夜の中へ踏み出したとき、僕の心臓は激しく打っていた。満月が昇り始め、霧の上端から赤くのぞいていた。それが僕たちをいっそう急がせた。次に宿を出るころには、あたりが昼のように明るくなり、見張る者がいれば、姿が丸見えになるのは明らかだった。僕たちは生け垣沿いに、音を立てず、素早く進んだ。恐怖を増すようなものは何も見ず、何も聞かず、やがて「ベンボー提督亭」の戸が背後で閉まったときには、心底ほっとした。
僕はすぐにかんぬきをかけた。船長の死体のほかには誰もいない家の暗がりで、二人はしばらく息を切らして立っていた。それから母が売り場でろうそくを手に取り、僕たちは互いの手を握って酒場へ進んだ。船長は置いていったまま、仰向けに、目を開き、片腕を伸ばして横たわっていた。
「日よけを下ろして、ジム」と母がささやいた。「外からのぞかれるかもしれない。さて」と、僕が下ろすと言った。「今度はあれから鍵を取らなきゃならない。でも、誰が触れるっていうんだろう!」そう言いながら、しゃくり上げるような声を漏らした。
僕はすぐに膝をついた。船長の手のすぐそばの床に、小さな丸い紙があり、片面が黒く塗ってあった。これが黒丸だと、疑う余地はなかった。拾い上げると、裏には、整った読みやすい字で、「今夜十時まで猶予をやる」とだけ書いてあった。
「十時までだったんだ、母さん」と僕は言った。ちょうどそのとき、古い時計が時を打ち始めた。突然の音に二人ともひどく驚いたが、知らせはありがたかった。まだ六時だったのだ。
「さあジム」と母は言った。「鍵を!」
僕はポケットを一つずつ探った。少しの小銭、指ぬき、糸と大きな針、端をかじり取った縄状のたばこ、柄の曲がった大ナイフ、懐中羅針盤、それに火口箱しか入っていなかった。僕は絶望しかけた。
「首にかけてるんじゃないかしら」と母が言った。
強い嫌悪感をこらえてシャツの襟元を引き開くと、果たして、タールの染みた細いひもに鍵が下がっていた。僕は船長自身のナイフでひもを切った。この成功に希望がわき、二人はすぐに二階へ急いだ。船長が長いこと寝起きし、来た日からずっと箱を置いていた、小さな部屋だった。
外見はほかの船乗りの箱と変わらず、ふたに頭文字の「B」が焼き印で押されていた。角はいくらか潰れ、欠けていて、長年乱暴に扱われてきたらしかった。
「鍵をおよこし」と母は言った。錠はひどく固かったが、母はたちまち回して、ふたを跳ね上げた。
中からたばことタールの強い匂いが立ちのぼった。いちばん上には、丁寧にブラシをかけて畳んだ、立派な服が一そろい見えるだけだった。一度も着ていない服だと母は言った。その下から、さまざまな物が出てきた。四分儀[訳注:天体の高さを測って船の位置を求める航海用具]、ブリキの小さな杯、棒状のたばこが数本、とても見事な拳銃が二組四丁、銀の延べ棒一本、古いスペインの時計。そのほか、たいした値打ちのない、たいてい外国製の小物、真鍮をあしらった製図用コンパス、それに西インド諸島の珍しい貝殻が五、六個あった。罪を重ね、追われながらさまよう暮らしの中で、なぜこんな貝殻を持ち歩いたのか、僕はその後もよく考えた。
ここまでは、銀と小物のほかに値打ちのあるものは見つからなかったし、どちらも僕たちの目的にはかなわなかった。その下には、幾多の港口で潮を浴びて白くなった、古い船用外套があった。母がもどかしそうに引き上げると、箱の最後の品々が現れた。書類らしいものを油布で包んで縛った包みと、触れると金貨の音を立てる帆布の袋だった。
「私が正直な女だってことを、あの悪党どもに見せてやる」と母は言った。「もらうべき分だけ、四分の一ペニーだって余計には取らない。クロスリーさんの袋を持っておいで。」
そうして母は、船長の宿代に当たる金を、船乗りの袋から数え出し、僕の持つ袋へ移し始めた。
長く、厄介な仕事だった。硬貨は国も大きさもさまざまで、ダブロン金貨、ルイ金貨、ギニー金貨、八レアル銀貨、そのほか何だかわからないものが、無造作に混ざっていた。しかも母が計算できるのはギニーだけなのに、それがとりわけ少なかった。
半分ほど済んだとき、僕は突然、母の腕に手を置いた。凍てつく静かな空気の中に、心臓が喉まで飛び上がるような音が聞こえたのだ。凍った街道を、あの盲人の杖がこつこつと打つ音だった。息をひそめていると、音はどんどん近づいてきた。やがて宿の戸を鋭くたたき、次に取っ手が回され、あの忌まわしい男が入ろうとして、かんぬきをがたがた鳴らした。それから長い間、家の中も外も静まり返った。ついに杖の音がまた始まり、言いようのない喜びとありがたさのうちに、少しずつ遠のいて、やがて聞こえなくなった。
「母さん」と僕は言った。「全部持って、もう行こう」かんぬきのかかった戸はきっと怪しまれ、蜂の巣をつついたように、一味が押し寄せるに違いないと思ったからだ。とはいえ、あの恐ろしい盲人に会ったことのない人には、かんぬきをかけておいてどれほどよかったと思ったか、とてもわからないだろう。
だが母は、怖がりながらも、支払われるべき額よりほんの少しでも多く取るのを承知せず、かといって少ない額であきらめるのも、頑として嫌がった。七時まではまだたっぷり間がある、自分の権利はわかっている、受け取るものは受け取る、と言った。そうしてまだ僕と言い合っていると、かなり離れた丘の上で、低い短い口笛が鳴った。それで十分だった。僕たち二人には、十分すぎた。
「今ある分だけにするよ」と母は言い、跳び上がった。
「じゃあ僕は、足りない分にこれをもらう」と僕は言い、油布の包みを取り上げた。
次の瞬間には、空になった箱のそばにろうそくを残し、二人で手探りで階段を下りていた。そのまた次には戸を開け、逃げ出していた。一瞬でも遅かったら危なかった。霧は急速に晴れつつあり、両側の高い土地は、もう月にはっきり照らされていた。谷のいちばん低いところと宿の戸口のまわりにだけ、薄い幕のような霧が途切れず残り、逃げ始めた僕たちを隠してくれた。村までの半分にも遠く及ばず、丘のふもとを少し過ぎただけで、月明かりの中へ出なければならなかった。しかもそれだけではない。もう何人もの走る足音が聞こえてきた。そちらを振り返ると、揺れながら急速に近づく明かりが見え、一人が手提げランタンを持っているとわかった。
「ジム」と母が突然言った。「お金を持って先へお行き。気が遠くなりそうだよ。」
これで二人とも終わりだと思った。近所の人たちの臆病さを、どれほど呪ったことか。母の正直さと欲深さ、さっきまでの向こう見ずと今の弱さを、どれほど責めたことか。幸い、僕たちはちょうど小さな橋のところにいた。僕はよろめく母を支えて土手の縁へ連れていった。案の定、母はため息をつき、僕の肩に倒れかかった。あれだけの力がどこから出たのかわからない。手荒なやり方だったと思うが、どうにか母を土手の下へ引きずり下ろし、橋のアーチの下に少しだけ入れた。それ以上は動かせなかった。橋が低く、僕ははって進むしかなかったからだ。そこでじっとしているほかなかった。母の体はほとんど丸見えで、二人とも宿の物音が聞こえるところにいた。
第五章 盲人の最期
ある意味では、僕の好奇心は恐怖より強かった。そこにじっとしていられず、もう一度土手へはい上がり、エニシダの茂みの陰に頭を隠して、うちの戸口前の街道を見渡せる場所へ出た。身を落ち着けるか落ち着けないうちに、敵が到着し始めた。七、八人がばらばらの足音を響かせながら懸命に走り、ランタンを持つ男が数歩先にいた。三人は手をつないで一緒に走っていたが、霧越しにも、真ん中があの盲目の物乞いだとわかった。次の瞬間、その声で間違いないと知れた。
「戸をぶち破れ!」と叫んだ。
「へい、承知!」と二、三人が答えた。「ベンボー提督亭」へどっと押し寄せ、ランタンの男があとに続いた。連中がそこで立ち止まるのが見え、戸が開いていたことに驚いたらしく、低い声を交わすのが聞こえた。だが、その間は短かった。盲人がまた命令を下した。焦りと怒りに燃えているように、声はいっそう高く、大きくなっていた。
「入れ、入れ、入れ!」と叫び、ぐずぐずするなと悪態をついた。
四、五人がすぐに従い、二人は恐ろしい物乞いと街道に残った。少し間があり、驚きの声がした。それから宿の中から叫ぶ声が聞こえた。
「ビルが死んでる!」
だが盲人は、また、手間取るなとののしった。
「怠け者ども、何人かで体を探れ! 残りは上へ行って箱を持ってこい!」と叫んだ。
古い階段をどたどた駆け上がる足音が聞こえ、家じゅうが揺れたに違いなかった。すぐにまた、驚きの声が上がった。船長の部屋の窓がばたんと開き、割れたガラスが鳴った。男が月明かりの中へ頭と肩を突き出し、下の街道にいる盲人へ呼びかけた。

「ピュー!」と男は叫んだ。「先を越されたぞ」
「ピュー!」と男は叫んだ。「先を越されたぞ。誰かが箱を上から下までひっくり返してやがる。」
「あれはあるか!」とピューがほえた。
「金はある。」
盲人は金などくそくらえと悪態をついた。
「フリントの書いたやつだ!」と叫んだ。
「どこにも見当たらねえ」と男が答えた。
「おい、下のやつら! ビルが持ってるか?」と盲人はまた叫んだ。
すると別の男が宿の戸口へ来た。たぶん、下に残って船長の死体を探っていた男だろう。「ビルも、とっくに調べられてる」と言った。「何もねえ。」
「宿のやつらだ――あの小僧だ! 目をくり抜いとけばよかった!」と盲人のピューは叫んだ。「さっきまでここにいたんだ。俺が試したときは、戸にかんぬきがかかってた。散れ、野郎ども、探し出せ!」
「確かに、ろうそくを置いていってる」と窓の男が言った。
「散って探せ! 家を引っくり返せ!」とピューは繰り返し、杖で街道をたたいた。
それから古い宿じゅうが、大騒ぎになった。重い足があちこちを踏み鳴らし、家具はひっくり返され、戸は蹴破られ、岩山までこだました。やがて男たちは、一人また一人と街道へ出てきて、どこにも僕たちはいないと言った。ちょうどそのとき、死んだ船長の金を数えていた母と僕を驚かせた、あの口笛が、また夜の中にはっきり響いた。ただし今度は、二度繰り返された。僕はあれを、いわば盲人の突撃ラッパ、一味を襲撃に呼び集める合図だと思っていた。けれど今、それが村の方角の丘からの合図で、海賊たちの反応から、危険が近づいていることを知らせるものだとわかった。
「またダークだ」と一人が言った。「二回だ! ずらからなきゃ、みんな。」
「ずらかるだと、腰抜け!」とピューが叫んだ。「ダークなんぞ初めから馬鹿で臆病者だ。相手にするな。やつらはこの近くにいる。遠くへ行けるもんか。もう手が届いてるんだ。散って探せ、犬ども! ああ、畜生」と叫んだ。「俺に目があれば!」
この訴えは、いくらか効いたようだった。二人が、がらくたの間をあちこち探し始めた。だが僕には、気乗りせず、いつも半分は自分の危険を気にしているように見えた。残りは街道で、どうしようかと立ち尽くしていた。
「何千ポンドも、手を伸ばせば届くんだぞ、馬鹿ども! それをぐずぐずしやがって! 見つけりゃ王様みてえな金持ちだ。ここにあるとわかってて、びくびく突っ立ってやがる。おまえらの誰一人、ビルに立ち向かう勇気はなかった。俺がやったんだ――目の見えねえ俺が! それでおまえらのせいで、この好機を逃すのか! 馬車にふんぞり返れるものを、ラム酒をせびって這い回る、哀れな乞食でいろってのか! 乾パンの虫ほどの度胸でもあれば、今からでも捕まえられる!」
「ちくしょう、ピュー、ダブロン金貨は手に入れたじゃねえか!」と一人が不平を言った。
「あれは隠しちまったのかもしれねえ」と別の男が言った。「ジョージ王の金貨で我慢しろ、ピュー。ここで金切り声を上げるな。」
まさしく金切り声だった。こうした反論にピューは怒りを募らせ、とうとう激情に完全にのみ込まれた。見えないまま左右へ杖を振り回し、何人もの体に、重い音を立てて打ちつけた。
今度は打たれた連中が、盲目の悪党に悪態を返し、恐ろしい言葉で脅した。杖をつかんで奪い取ろうとしたが、うまくいかなかった。
この仲間割れが、僕たちを救った。争いがまだ続くうちに、村のある側の丘の頂から、別の音が聞こえてきた。全速力で駆ける馬のひづめの音だった。ほぼ同時に、生け垣のわきで拳銃が一発、閃光と銃声を発した。それが最後の危険信号なのは明らかだった。海賊たちはたちまち向きを変え、四方へ散って逃げた。一人は入江沿いに海へ、一人は丘を斜めに越え、そんな具合で、三十秒もしないうちに、ピューを除いて影も形もなくなった。連中がピューを見捨てたのは、ただ恐慌にかられたせいか、それとも罵声と殴打への仕返しか、僕にはわからない。だがピューだけはそこに残り、狂ったように杖で道をたたいて行き来し、手探りしながら仲間を呼んだ。ついには道を間違え、僕の数歩先を通って村のほうへ走り、叫んだ。
「ジョニー、ブラック・ドッグ、ダーク!」と、ほかにも何人かの名を呼んだ。「おい、仲間、ピューを置いていかねえだろうな――このピューを!」
ちょうどそのとき、馬の音が丘を越え、月明かりの中に四、五人の騎手が現れて、全速力で坂を駆け下りてきた。
ピューはそこで間違いに気づき、叫びながら向きを変え、まっすぐ溝へ突っ込み、転がり落ちた。だが一瞬でまた起き上がり、もう完全に方角を失ったまま飛び出し、迫る馬のうち、いちばん近い一頭の真下へ入ってしまった。
騎手は避けようとしたが、間に合わなかった。ピューは夜空に響く甲高い叫びとともに倒れ、四つのひづめが踏みつけ、蹴り飛ばして通り過ぎた。横倒しになった体が、ゆっくりうつ伏せに崩れ、それきり動かなくなった。
僕は跳び起き、騎手たちに声をかけた。彼らも事故にぎょっとして馬を止めようとしていたので、すぐに誰かわかった。一人、少し遅れて来たのは、村からリヴジー博士の家へ向かった若者だった。ほかは税関の役人たちで、若者が途中で出会い、気を利かせてすぐ引き返してきたのだ。キットの穴にいるラガー船の噂が、監督官のダンスの耳に入り、その晩、こちらへ出向いてきたのだった。そのおかげで、母と僕は死なずに済んだ。
ピューは死んでいた。まったく息がなかった。母のほうは、村へ運び上げて冷たい水と気つけ薬を少し使うと、すぐに意識を取り戻した。恐怖の後遺症もなかったが、取り損ねた金の残りは、相変わらず惜しんでいた。
その間、監督官はできるだけ速く馬を走らせ、キットの穴へ向かった。だが部下たちは馬を下り、手綱を引き、ときには馬の体を支えながら、暗い谷を探り探り下らなければならなかった。そのうえ、いつ待ち伏せに遭うかと始終警戒していた。だから穴へ下り着いたとき、ラガー船がもう岸近くを離れ始めていたのも、無理はなかった。監督官が呼びかけると、月明かりの中からどけ、さもなきゃ鉛を食らうぞ、と返事があった。同時に一発の弾丸が、腕のすぐそばをうなって飛んだ。まもなく船は岬を回って消えた。ダンスは、自分で言うところの「陸に上がった魚」のように立ち尽くした。できることは、B――へ一人を送り、税関の監視船に知らせるだけだった。「それも」と彼は言った。「何もしないのと、まず変わらん。まんまと逃げられた。それで終わりだ。ただ」と付け加えた。「ピュー先生の足のたこを踏んでやったのだけは、よかったよ」そのころには、僕の話を聞いていたのだ。
僕はダンスと一緒に「ベンボー提督亭」へ戻った。あれほどめちゃめちゃにされた家など、想像もつかないだろう。連中は僕と母を血眼で捜して、時計まで倒していた。実際に持ち去られたのは船長の金袋と、店の引き出しのわずかな銀貨だけだったが、それでも僕たちが破産したことは、ひと目でわかった。ダンスには、このありさまのわけがわからなかった。
「金は持っていったと言ったね? それならホーキンズ、連中はいったい何を探してたんだ? もっと金があると思ったのか?」
「いいえ、金じゃないと思います」と僕は答えた。「実は、連中が欲しかったものは、僕の胸ポケットにあると思うんです。正直に言うと、安全なところへ預けたいんです。」
「そうとも、坊や。それがいい」とダンスは言った。「よければ私が預かろう。」
「できれば、リヴジー博士に――」と僕は言いかけた。
「大正解だ」と、ダンスは明るくさえぎった。「まったく、そのとおり。立派な紳士で、治安判事でもある。考えてみれば、私もあちらへ回って、博士か郷士に報告したほうがよさそうだ。何しろピュー先生は死んだんだからな。残念というわけじゃないが、とにかく死んだ。陛下の税関役人を責める口実にできるなら、そうしたがる連中もいる。どうだ、ホーキンズ。よければ一緒に連れていこう。」
僕はその申し出に心から礼を言い、馬を置いた村へ一緒に戻った。母に行き先を話している間に、みんなは鞍にまたがっていた。
「ドッガー」とダンスは言った。「君の馬は丈夫だ。この子を後ろへ乗せてやれ。」
僕が乗ってドッガーのベルトにつかまると、監督官が号令をかけた。一行は、リヴジー博士の家へ続く道を、跳ねるような速歩で進み始めた。

第六章 船長の書類
僕たちは道中ずっと馬を急がせ、リヴジー博士の家の戸口で止まった。家の正面は、どこも真っ暗だった。
ダンスに下りて戸をたたくよう言われ、ドッガーが鐙を使わせてくれた。戸はほとんどすぐに、女中が開けた。
「リヴジー博士はいらっしゃいますか?」
と僕は尋ねた。
「いいえ」と女中は答えた。午後に一度帰ったが、郷士と夕食をとり、そのまま夜を過ごすため、お屋敷へ出かけたという。
「では、そっちへ行こう、みんな」とダンスは言った。
今度は近かったので、僕は馬に乗らず、ドッガーの鐙革につかまって走った。門番小屋のある門をくぐり、葉の落ちた木々が月に照らされる長い並木道を進むと、大きな古い庭園を両側に見下ろす、白い屋敷の建物が現れた。そこでダンスは馬を下り、僕を連れて、一言告げただけで中へ通された。
召使いが敷物の敷かれた廊下を案内し、その突き当たりの大きな書斎へ僕たちを入れた。壁一面に本棚が並び、その上には胸像が置かれていた。郷士とリヴジー博士が、明るい暖炉を挟んで、パイプを手に座っていた。
僕は郷士をこんなに間近で見たことがなかった。六フィートを超える長身で、それに釣り合う堂々とした体つきだった。顔はざっくばらんで豪快、長い旅の年月に荒れ、赤く焼け、しわが刻まれていた。眉はとても黒く、よく動き、そのため、意地悪ではないにしても、気が短く、激しい人に見えた。
「入りたまえ、ダンス」と、郷士は威厳たっぷりに、鷹揚な調子で言った。
「こんばんは、ダンス」と博士はうなずいた。「ジム君も、こんばんは。どんな風に乗って来たんだね?」
監督官はまっすぐ、こわばった姿勢で立ち、暗唱するように話をした。その二人の紳士が、驚きと興味のあまりパイプを吸うのも忘れ、身を乗り出し、顔を見合わせる様子は、見ものだった。母が宿へ引き返したくだりになると、博士は思わず腿をたたき、郷士は「見事だ!」と叫んで、長いパイプを暖炉の格子にぶつけて折ってしまった。話が終わるよりずっと前に、トレローニーさん――覚えているだろうが、これが郷士の名だ――は席を立ち、部屋を大股で歩き回っていた。博士は、もっとよく聞こえるようにとでもいうように、粉を振ったかつらを外していた。短く刈った地毛の黒い頭で座っている姿は、ひどく見慣れなかった。
やがてダンスは話し終えた。
「ダンス」と郷士は言った。「君はまことに立派な男だ。あの腹黒い極悪人を馬でひき倒したことなど、実に善行だと私は思う。ごきぶりを踏み潰すのと同じだ。このホーキンズという少年も、頼もしいじゃないか。ホーキンズ、そこの呼び鈴を鳴らしてくれ。ダンスにはエールを飲んでもらわねば。」
「それでジム」と博士は言った。「連中が探していたものを、君が持っているんだね?」
「これです、先生」と僕は言って、油布の包みを渡した。
博士は包みをあちこち眺めた。今にも開けたくて指がうずいているようだったが、そうせず、静かに上着のポケットへしまった。
「郷士」と博士は言った。「ダンスはエールを飲んだら、もちろん陛下のお勤めに戻らなくてはならない。だがジム・ホーキンズは引き留めて、今夜は私の家へ泊めるつもりだ。よろしければ、冷たいパイを出して、この子に夕食をとらせたい。」
「好きにしたまえ、リヴジー」と郷士は言った。「ホーキンズの働きなら、冷たいパイ以上のごちそうに値する。」
そこで大きな鳩肉のパイが運ばれ、脇のテーブルに置かれた。僕は鷹のように腹をすかせていたので、たっぷり食べた。その間にダンスはさらに褒められ、やがて送り出された。
「さて、郷士」と博士が言った。
「さて、リヴジー」と郷士も同時に言った。
「一人ずつ、一人ずつ」とリヴジー博士は笑った。「このフリントという男のことは、ご存じでしょうね?」
「知っているかだと!」と郷士は叫んだ。「聞いたことがあるか、だって! 海に出た海賊の中でも、いちばん血に飢えた男だ。黒ひげなど、フリントに比べれば子どもだよ。スペイン人はあいつをひどく恐れていてね、まったく、あいつがイングランド人なのを、時には誇りに思ったものだ。トリニダード島の沖で、この目でやつのトップスルを見たことがある。ところが私の乗っていた船の、あの臆病なラム酒樽野郎の船長は引き返した――引き返したんだぞ、ポート・オブ・スペインへ!」
「まあ、私もイングランドで噂は聞いたことがあります」と博士は言った。「だが肝心なのは、金を持っていたかどうかです。」
「金!」と郷士は叫んだ。「今の話を聞かなかったのか? あの悪党どもが狙うのは、金以外に何がある? 金のほかに何を気にかける? あのろくでもない命を、金以外の何のために危険にさらす?」
「それは、じきにわかるでしょう」と博士は答えた。「しかし、あなたはまったく、すぐ熱くなって大声を出すから、口を挟めやしない。私が知りたいのは、こういうことです。このポケットに、フリントが宝を埋めた場所の手がかりがあるとしたら、その宝は大した額になるのでしょうか?」
「額だと!」と郷士は叫んだ。「こういう額になる。あなたの言う手がかりがあるなら、私はブリストルの港で船を仕立てる。あなたと、ここにいるホーキンズを連れて、一年探してでも、その宝を手に入れる!」
「結構」と博士は言った。「では、ジムがよければ、包みを開けましょう」そう言って、テーブルの上へ置いた。
包みは縫い合わせてあったので、博士は医療器具のケースを取り出し、外科用のはさみで縫い目を切らなければならなかった。中には二つのものが入っていた。一冊の帳面と、封をした紙だった。
「まず帳面から見てみよう」と博士は言った。
博士が開くと、郷士と僕は二人とも肩越しにのぞき込んだ。僕は脇のテーブルで食べていたのだが、博士が親切に手招きして、宝探しの楽しみに加えてくれたのだ。最初のページには、ペンを手にした人が暇つぶしや練習に書くような、断片的な文字しかなかった。一つは入れ墨と同じ「ビリー・ボーンズのお気に入り」。そのほかに「W・ボーンズ氏、航海士」「もうラム酒はいらない」「パーム・キー沖で、やつはやられた」などがあり、残りはほとんど単語だけで、意味がわからなかった。誰が、何を「やられた」のだろうと、僕は考えずにはいられなかった。おそらく背中をナイフで刺されたのだろう。
「ここからは、たいしたことはわからんね」とリヴジー博士は言い、先へ進んだ。
次の十ページか十二ページは、妙な記録で埋まっていた。普通の帳簿のように、行の一端に日付、反対側に金額があった。だが説明文の代わりに、間には数の違う十字の印が並んでいるだけだった。たとえば一七四五年六月十二日には、誰かが七十ポンドを受け取ることになったのは明らかだったが、その理由を示すのは、十字が六つだけだった。もっとも、ときには「カラカス沖」といった地名が添えてあったり、「62°17′20″、19°2′40″」のように、緯度と経度だけが記されていたりした。
記録は二十年近くに及び、時がたつにつれて一件ごとの額が大きくなっていた。最後には五、六回の足し算の間違いの末に、総額が出され、「ボーンズの蓄え」という言葉が添えられていた。
「さっぱりわからん」とリヴジー博士は言った。
「白昼のように明らかだ」と郷士は叫んだ。「この腹黒い犬めの会計帳簿だよ。十字は、やつらが沈めた船や、略奪した船や町の名前の代わりだ。金額はこの悪党の取り分で、間違えそうなところには、もっとはっきりした目印を足したんだ。たとえば、この『カラカス沖』。あの海岸の沖で、不幸な船が一隻、襲われたというわけだ。乗っていた気の毒な者たちに、神の憐れみを――もうとうに珊瑚になっているだろう。」
「なるほど!」と博士は言った。「旅をした人は違いますね。そのとおりだ! それに、地位が上がるにつれて、金額も増えている。」
帳面には、それ以外はほとんど何もなかった。後ろのほうの空白のページに、いくつかの場所の方位が記され、フランス、イングランド、スペインの貨幣を同じ価値に換算する表があっただけだった。
「倹約家だ!」と博士は叫んだ。「こいつは、だまし取られはしなかっただろうな。」
「では」と郷士は言った。「もう一つを。」
紙には、指ぬきを印章代わりにして、何か所も封がしてあった。たぶん、僕が船長のポケットで見つけた、あの指ぬきだったのだろう。博士が丁寧に封を開けると、島の地図が落ちてきた。緯度と経度、水深、丘や湾や入江の名前など、その岸の安全な停泊地まで船を導くのに必要なことが、すべて書かれていた。島は長さがおよそ九マイル、幅が五マイルで、いってみれば、太った竜が立ち上がったような形だった。陸に囲まれたよい港が二つあり、中央部の丘には「望遠鏡山」と記されていた。
あとから書き足されたものもいくつかあった。とくに目立ったのは赤インクの十字が三つで、二つは島の北部、一つは南西部にあった。最後の印のそばには、同じ赤インクで、船長の震えた文字とはまったく違う、小さく整った字で、「宝の大部分はここ」と書いてあった。
裏には、同じ筆跡で、さらにこう書かれていた。
「高い木。望遠鏡山の肩、北北東より北へ一方位点[訳注:羅針盤の三十二方位の一目盛りは一一・二五度]。
「骸骨島、東南東より東へ一方位点。
「十フィート。
「銀の延べ棒は北の隠し場所。東の小丘の延びる方向をたどれ。顔のある黒い岩から南へ十ファゾム[訳注:一ファゾムは六フィート]。
「武器は見つけやすい。北の入江の岬、その北端の砂丘。方位は東より北へ四分の一方位点。
「J・F。」
それだけだった。短く、僕には意味のわからない内容だったが、郷士とリヴジー博士は大喜びした。
「リヴジー」と郷士は言った。「つまらん診療など、すぐにやめたまえ。私は明日ブリストルへ発つ。三週間で――三週間! ――いや、二週間、十日で、イングランド一の船と、選り抜きの船員をそろえてみせる。ホーキンズは船室給仕として連れていく。立派な給仕になるぞ、ホーキンズ。あなたは船医だ、リヴジー。私は提督。レッドルース、ジョイス、ハンターを連れていこう。順風に乗って、あっという間に着く。場所など難なく見つけられる。そうしたら、一生食うに困らぬどころか、金に埋もれ、金貨を水切り遊びに投げて暮らせるぞ。」
「トレローニー」と博士は言った。「ご一緒します。ジムも行くでしょうし、きっと役に立つと保証します。ただ、一人だけ心配な男がいる。」
「誰だ?」と郷士は叫んだ。「その犬の名前を言いたまえ!」
「あなたです」と博士は答えた。「口を閉じていられないから。この紙のことを知るのは、私たちだけではありません。今夜、宿を襲った連中――大胆で命知らずなのは間違いない――と、ラガー船に残った仲間、それにおそらく、そう遠くないところにまだいる連中も、誰も彼も、何があろうとあの金を手に入れると決めています。海へ出るまでは、誰も一人で出歩いてはいけない。ジムと私は、それまで一緒にいます。あなたはブリストルへ行くとき、ジョイスとハンターを連れていってください。そして初めから終わりまで、見つけたことは誰一人、一言も漏らしてはいけません。」
「リヴジー」と郷士は答えた。「あなたはいつも正しい。墓のように黙っていよう。」
第二部 船の料理番
第七章 ブリストルへ行く
出航の支度が整うまでには、郷士が思ったよりも時間がかかった。最初の計画は一つとして、僕をそばに置くというリヴジー博士の案さえ、思いどおりには実行できなかった。博士は診療を代わってくれる医者を探しにロンドンへ行かなければならず、郷士はブリストルで忙しく働いていた。僕は屋敷で、猟場番のレッドルース爺さんに見張られ、ほとんど囚人のように暮らした。それでも頭の中は、海への夢と、未知の島や冒険への、すばらしい期待でいっぱいだった。地図の細部はすべてよく覚えていて、何時間も続けて思いを巡らせた。家政婦の部屋の暖炉のそばに座り、想像の中で、ありとあらゆる方角から島へ近づいた。島じゅうを一エーカー残らず探検した。望遠鏡山という高い山に千回も登り、頂から、次々に変わるすばらしい景色を楽しんだ。あるときは島に未開の住民が大勢いて、僕たちは戦った。またあるときは危険な獣があふれ、追いかけられた。けれど、どんな空想にも、実際の冒険ほど奇妙で、悲惨な出来事は現れなかった。
そうして何週間かが過ぎたある晴れた日、リヴジー博士宛ての手紙が届いた。そこには「不在の場合は、トム・レッドルース、またはホーキンズ少年が開封のこと」と書き添えてあった。
その指示に従って、僕たちは――いや、活字以外の字を読むのは猟場番には難しかったので、正確には僕が――次の大切な知らせを読んだ。
「ブリストル、オールド・アンカー亭、一七――年三月一日。
「親愛なるリヴジー。お屋敷にいるのか、まだロンドンなのかわからないので、同じ手紙を両方へ送る。
「船は買い入れ、艤装も済んだ。錨を下ろし、いつでも出航できる。これほど見事なスクーナー船は、想像もできまい。子どもにでも操れる。二百トン、名はヒスパニオラ号。
「旧友ブランドリーの世話で手に入れた。彼は終始、驚くほど頼りになる男だった。まったく立派な人物で、文字どおり身を粉にして私のために働いてくれた。われわれの向かう港――つまり宝のことだが――を聞きつけると、ブリストルじゅうの人が、同じように働いてくれたといってよい。」
「レッドルースさん」と、僕は読むのをやめて言った。「リヴジー博士は、これを聞いたら嫌がるよ。郷士はやっぱり、しゃべってしまったんだ。」
「ふん、誰よりもしゃべる権利がおありだろう」と猟場番はうなった。「リヴジー博士のために、ご主人がお口をきけんとは、妙な話じゃないか。」
それで僕は感想を言うのをあきらめ、先を読み続けた。
「ブランドリー自身がヒスパニオラ号を見つけ、見事な手腕で、ただ同然の値で手に入れてくれた。ブリストルには、彼にひどい偏見を抱く連中がいる。あの正直者を、金のためなら何でもする男だと言い、ヒスパニオラ号はもともと彼の持ち船で、法外な高値で私に売りつけたなどと言い張る。見え透いた中傷だ。とはいえ、船の優秀さだけは、誰も否定できない。
「ここまでは何の支障もなかった。むろん、索具をつける職人やら何やらの仕事が、実にいらいらするほど遅かったが、それも時が解決した。困ったのは船員だ。
「原住民や海賊、あの忌々しいフランス人に備えて、二十人はそろえたかった。だが六人ほどを見つけるだけでも、まるで悪魔に取りつかれたような苦労だった。そこへ、この上ない幸運が、まさに必要としていた男を連れてきてくれた。
「港に立っていたとき、まったくの偶然から、その男と話をした。老練な船乗りで、酒場を営み、ブリストルの船乗りを残らず知っていた。陸で体を悪くし、再び海へ出ようと、料理番のよい口を探しているという。その朝も潮の匂いを嗅ぎたくて、足を引きずりながら港まで来たのだそうだ。
「私はひどく心を動かされた。あなたもきっとそうだったろう。そこで、ただ気の毒に思って、その場で船の料理番に雇った。ロング・ジョン・シルバーといい、片脚がない。だが私には、それこそ推薦状だった。かの不朽のホーク提督のもとで、国のために戦って失った脚なのだから。年金ももらっていないのだ、リヴジー。なんというひどい時代に、われわれは生きていることか!
「さて、料理番を一人見つけただけと思っていたら、実は船員一組を見つけていたのだ。シルバーと私で、数日のうちに、これ以上ないほどたくましい古船乗りたちを集めた。見てくれこそよくないが、顔を見れば、いずれも不屈の精神の持ち主とわかる。まったく、フリゲート艦とでも戦えそうだ。
「ロング・ジョンは、私がすでに雇っていた六、七人のうち、二人まで追い払ってくれた。重要な冒険に連れていくには危ない、まさに陸育ちの役立たずだと、すぐに見抜いてくれたのだ。
「私は体も気分も最高で、牡牛のように食べ、木のように眠っている。それでも、古強者たちが巻揚げ機のまわりを踏み鳴らす音を聞くまでは、一刻も満足できない。いざ海へ! 宝などくそくらえだ! 海のすばらしさに、私はすっかり夢中なのだ。だからリヴジー、急いで来てくれ。私を大事に思うなら、一時間も無駄にするな。
「ホーキンズ少年には、レッドルースを護衛につけ、すぐ母親に会いに行かせること。それから二人で全速力でブリストルへ来るように。
「ジョン・トレローニー。
「追伸――言い忘れたが、ブランドリーは、八月末までに戻らなければ、あとを追って僚船を出してくれることになっている。その彼が、操船を任せる船長に、実に優れた男を見つけた。堅苦しいのは残念だが、それ以外は申し分ない。ロング・ジョン・シルバーも、アロウという、非常に有能な航海士を見つけてくれた。笛を吹く甲板長までいるぞ、リヴジー。わが立派なヒスパニオラ号では、軍艦式に事を運べる。
「シルバーが資産家であることも言い忘れた。銀行に口座を持ち、一度も残高以上に引き出していないのを、私は自分で確かめた。宿の経営は妻に任せて出るという。その妻は有色人種の女だから、われわれのような老いた独身男二人が、健康と同じくらい妻も、彼をまた放浪に駆り立てる理由だろうと勘繰っても、許してもらえるだろう。
「J・T。
「追々伸――ホーキンズは、母親のところに一晩泊まってよい。
「J・T。」
この手紙に僕がどれほど興奮したか、想像できるだろう。嬉しくて半ば我を忘れていた。そして人を軽蔑するとしたら、このとき、ぶつぶつ不平を言って嘆いてばかりいる、トム・レッドルース爺さんほど軽蔑した相手はいなかった。下働きの猟場番なら、誰だって喜んで代わっただろう。だが、それは郷士の望みではなかった。彼らにとって郷士の望みは法律も同然で、レッドルース爺さん以外、愚痴をこぼす勇気さえなかった。
翌朝、爺さんと僕は歩いて「ベンボー提督亭」へ出発した。母は元気で、機嫌もよかった。あれほど長く、あれほど迷惑をかけた船長は、悪人も人を悩ませるのをやめる場所へ行ってしまった。郷士がすべて修理させ、客間や看板を塗り直し、家具も少し増やしてくれていた。何より、売り場に置く、母のための美しい肘掛け椅子があった。僕がいない間も人手に困らないよう、見習いの少年まで見つけてくれていた。
その少年を見たとき、僕は初めて、自分の立場を理解した。それまで考えていたのは、これからの冒険ばかりで、あとにする家のことは、少しも考えていなかった。ところが、自分に代わって母のそばに残る、不器用な見知らぬ少年を目にしたとたん、初めて涙が出た。僕はきっと、その子をひどくこき使ったと思う。仕事に不慣れだったので、教え直したり、叱りつけたりする機会は山ほどあり、僕はそれを見逃さなかった。
夜が明け、翌日、昼食のあと、レッドルースと僕は再び道を歩き出した。母と、生まれてからずっと暮らした入江と、愛しい古い「ベンボー提督亭」に別れを告げた――もっとも、塗り直された提督は、前ほどには愛しくなかった。最後に思ったことの一つは、船長のことだった。三角帽をかぶり、頬に刀傷をつけ、古い真鍮の望遠鏡を持って、何度も浜を大股で歩いた姿が浮かんだ。次の瞬間、僕たちは角を曲がり、家は見えなくなった。
夕暮れごろ、荒野の「ロイヤル・ジョージ亭」で、郵便馬車に乗った。僕はレッドルースと太った老紳士の間に挟まれた。馬車の速い動きと冷たい夜気にもかかわらず、初めからずいぶんうとうとしていたらしい。そのうち、丘を上り谷を下り、宿駅を幾つも過ぎる間、丸太のように眠った。ようやく脇腹を小突かれて目を覚ますと、馬車は町の通りの大きな建物の前に止まっていて、夜が明けてから、もうかなりたっていた。
「ここ、どこ?」
と僕は尋ねた。
「ブリストルだ」とトムは言った。「下りろ。」
トレローニーさんは、スクーナー船の仕事を監督するため、港のずっと奥の宿に滞在していた。僕たちはそこまで歩かなければならなかった。嬉しいことに、道は埠頭沿いで、大きさも帆装も国籍もさまざまな、たくさんの船のそばを通った。ある船では船員たちが歌いながら働き、別の船では、僕の頭上はるか高く、蜘蛛の糸ほどにしか見えない綱に、人がぶら下がっていた。生まれてからずっと海辺で暮らしてきたのに、そのときまで海のそばにいたことなどなかったような気がした。タールと潮の匂いさえ新しかった。すばらしい船首像を幾つも見た。どれも、はるかな海を越えてきたのだ。それに、耳輪をつけ、頬ひげをくるくる巻き、タールの染みたお下げ髪を垂らし、威張った、ぎこちない船乗り歩きで進む老水夫を何人も見た。同じ数の王様や大司教を見ても、これ以上嬉しくはなかっただろう。
しかも、僕自身が海へ出るのだ。笛を吹く甲板長や、お下げ髪で歌う水夫たちと一緒に、スクーナー船で海へ。未知の島を目指し、埋められた宝を探すために。
そんな楽しい夢に浸っているうちに、ふいに大きな宿の前へ出た。そして、丈夫な青い布の服で海軍士官そっくりに装ったトレローニー郷士に出会った。顔に笑みを浮かべ、船乗りの歩き方を実にうまくまねながら、戸口から出てくるところだった。
「来たな!」と郷士は叫んだ。「博士も昨夜、ロンドンから着いたぞ。万歳! ――これで乗組員がそろった。」
「ねえ、郷士」と僕は叫んだ。「いつ出航するんですか?」
「出航か!」と郷士は言った。「明日だよ。」
第八章 「望遠鏡亭」にて
朝食を終えると、郷士は「望遠鏡亭」のジョン・シルバー宛ての手紙を僕に渡した。港沿いに進み、大きな真鍮の望遠鏡を看板にした小さな酒場を注意して探せば、すぐにわかるという。船や船乗りをもっと見られる機会に大喜びして、僕は出かけた。港は今やいちばん忙しい時刻で、人や荷車や荷物の山を縫うように進み、やがて目当ての酒場を見つけた。
なかなか明るい、小さな店だった。看板は塗りたてで、窓には小ぎれいな赤いカーテンがかかり、床には清潔な砂が敷いてあった。両側が通りに面し、それぞれの戸が開いていたので、たばこの煙が立ちこめていても、広く天井の低い部屋は、かなりよく見渡せた。
客はほとんど船乗りで、大声で話していた。僕は入りかねて、少し怖くなり、戸口に立ち止まった。
ためらっていると、一人の男が脇の部屋から出てきた。ひと目で、これがロング・ジョンに違いないと思った。左脚は付け根近くからなく、左脇に松葉杖を挟み、それを見事に操って、鳥のように跳ね回っていた。ひどく背が高く、力強い体つきで、ハムほどもある大きな顔は、不器量で青白かったが、利口そうで、笑みを浮かべていた。実際、これ以上ないほど上機嫌に見えた。テーブルの間を口笛を吹いて回り、とくに親しい客には愉快な言葉をかけたり、肩をたたいたりした。
正直に言うと、トレローニー郷士の手紙でロング・ジョンのことを初めて聞いたときから、僕の胸には、あの古い「ベンボー提督亭」で長いこと見張っていた、一本脚の船乗りその人ではないかという恐れがあった。
だが目の前の男をひと目見れば、それで十分だった。船長やブラック・ドッグや盲人のピューを見て、僕は海賊がどんなものか知っているつもりだった。僕に言わせれば、それは、この清潔で愛想のいい店主とは、まるで別の生き物だった。
すぐに勇気を出して敷居をまたぎ、松葉杖に体を預けて客と話している男のところへ、まっすぐ歩いていった。
「シルバーさんですか?」
と、手紙を差し出しながら尋ねた。
「そうだよ、坊や」と男は言った。「確かにそれが俺の名前だ。おまえさんは、どなたかな?」
そして郷士の手紙を見ると、ほんの少し、はっとしたように僕には見えた。
「ああ!」と、かなり大きな声で言い、手を差し出した。「わかったぞ。新しい船室給仕の坊主だな。会えて嬉しいよ。」
そして僕の手を、大きくしっかりした手で握った。
ちょうどそのとき、向こう側にいた客の一人が、突然立ち上がって戸口へ向かった。戸はすぐそばで、一瞬のうちに通りへ出た。だが、その慌てぶりが僕の目を引き、ひと目で誰かわかった。「ベンボー提督亭」に最初に来た、指が二本ない、獣脂のような顔の男だった。
「あっ!」と僕は叫んだ。「あの人を止めて! ブラック・ドッグだ!」
「誰だろうと知ったこっちゃねえ」とシルバーは叫んだ。「だが勘定を払ってねえぞ。ハリー、走って捕まえろ!」
戸口の近くにいた一人が跳び上がり、追いかけていった。
「ホーク提督だって、飲み代は払ってもらう!」とシルバーは叫んだ。それから僕の手を放し、「誰だって?」と尋ねた。「ブラック何だ?」
「ドッグです」と僕は答えた。「トレローニーさんから、海賊の話を聞いていませんか? あの人は、その一人です。」
「何だと!」とシルバーは叫んだ。「俺の店に! ベン、走ってハリーを手伝え。あの薄汚ねえ連中の一人だったのか? モーガン、一緒に飲んでたのはおまえか? こっちへ来い。」
モーガンと呼ばれた男――白髪で、マホガニー色の顔をした老水夫――は、噛みたばこを口の中で転がしながら、ひどくきまり悪そうに進み出た。

*「さて、モーガン」とロング・ジョンは厳しく言った。「あのブラック・ドッグを
見るのは初めてだな、そうだろう?」*
「さて、モーガン」とロング・ジョンは厳しく言った。「あのブラック――ブラック・ドッグを見るのは初めてだな、そうだろう?」
「へい、初めてです」とモーガンは敬礼した。
「名前も知らなかったんだな?」
「へい。」
「まったく、トム・モーガン、それならおまえのためだ!」と店主は言った。「あんなやつと関わりがあったら、二度とこの店に足を踏み入れさせなかったぞ。間違いなくな。で、何を話してた?」
「よくはわかりません」とモーガンは答えた。
「肩に乗ってるのは頭か、それとも索具の滑車か!」とロング・ジョンは叫んだ。「よくわからねえだと? 誰と話してるのかも、よくわからねえんじゃあるまいな? さあ、何をしゃべってた。航海か、船長か、船か? 声を出せ! 何だ?」
「船底くぐりの話をしてました」とモーガンは答えた[訳注:人を綱で縛り、海中へ落として船底の下を引き回す刑罰]。
「船底くぐりだと? そいつは実にお似合いの話だ、まったくな。席へ戻れ、間抜けのトム。」
モーガンが体を揺らして席へ戻ると、シルバーは僕に、内緒話のように声を落として言った。その親しげな様子が、僕にはとても嬉しかった。
「まったく正直な男なんだ、トム・モーガンは。ただ、頭が鈍くてな。さて」と、また声を大きくした。「何だっけ――ブラック・ドッグ? いや、そんな名は知らねえ。だが、どうも――そうだ、あのやくざ者は見たことがある。盲目の乞食と一緒に、ここへ来てた。」
「それは間違いないと思います」と僕は言った。「僕、その盲人も知ってます。ピューという名前でした。」
「そうだ!」とシルバーは叫んだ。今度はすっかり興奮していた。「ピューだ! 確かにそういう名だった。ああ、鮫みてえな顔のやつだったな! 今度このブラック・ドッグを捕まえられりゃ、トレローニー船長にいい知らせができるぞ! ベンは足が速い。船乗りで、あいつより速く走るやつはめったにいねえ。きっとぐんぐん追いつくぞ、畜生! 船底くぐりの話だと? 俺がやつを船底くぐりにしてやる!」
こうした言葉を次々と吐き出す間じゅう、シルバーは松葉杖で酒場を行ったり来たりし、テーブルを平手でたたいた。その興奮ぶりは、オールド・ベイリーの判事やボウ・ストリートの捕吏[訳注:それぞれロンドンの刑事裁判所の判事と、初期の警察組織の捜査員]でも信じただろう。「望遠鏡亭」でブラック・ドッグを見つけて、僕の疑いはすっかりよみがえり、料理番を注意深く観察していた。けれど相手は、僕にはあまりに底が深く、機転が利き、頭がよすぎた。二人の男が息を切らして戻り、人混みで見失ったと告白し、泥棒のように叱り飛ばされたころには、僕はロング・ジョン・シルバーの潔白を、保証してもいいと思っていた。
「いいか、ホーキンズ」とシルバーは言った。「俺みてえな男にとっちゃ、とんだ災難だろう? トレローニー船長は、どう思う? あの忌々しいオランダ野郎を、よりによって俺の店に座らせ、俺のラム酒を飲ませてたんだ! そこへおまえが来て、はっきり教えてくれたってのに、この目の前で、まんまと逃がしちまった! なあホーキンズ、船長には公平に話してくれ。子どもでも、おまえは切れ者だ。入ってきたときからわかってた。だが考えてくれ、この古い棒にすがって歩く俺に、何ができた? 一人前の船乗りだったころなら、ぐんぐん追いついて、あっという間に行く手をふさいでやったさ。ところが今じゃ――」
そこで突然、何か思い出したように口を開けたまま、ぴたりと止まった。
「勘定だ!」と叫んだ。「ラム酒三杯分! 畜生、勘定をすっかり忘れてた!」
そして長椅子にどさりと座り、涙が頬を伝うまで笑った。僕もつられて笑わずにいられなかった。二人で何度も何度も笑い、酒場じゅうが響いた。
「まったく、とんだ間抜けな海坊主だ、俺は!」と、やがて頬をぬぐいながら言った。「おまえと俺は、うまくやれそうだな、ホーキンズ。俺なんぞ、船の小僧に格下げでちょうどいい。だが、さあ、回頭の用意だ。こうしちゃいられねえ。務めは務めだ、相棒。古い三角帽をかぶって、おまえと一緒にトレローニー船長のところへ行き、この件を報告しよう。いいか、若いホーキンズ、こいつは重大だ。おまえも俺も、手柄を立てたとは、とても言えねえ。おまえもだよ、な? 賢くなかった――二人とも賢くなかった。だが、ちくしょう、勘定を忘れたのだけは傑作だった!」
そしてまた、あまりに心から楽しそうに笑いだしたので、僕にはそれほどおかしさがわからなかったのに、また一緒に笑わずにはいられなかった。
埠頭を歩く短い道中、シルバーほど面白い連れはいなかった。そばを通る船について、帆装やトン数や国籍を教え、そこで進んでいる仕事を説明してくれた。あちらは荷下ろし、こちらは荷積み、もう一隻は出航の支度、といった具合だ。そしてときどき、船や船乗りの短い逸話を話したり、海の言い回しを、僕がすっかり覚えるまで繰り返したりした。これこそ、考えられるかぎり最高の船仲間の一人だと、僕には思えてきた。
宿へ着くと、郷士とリヴジー博士は一緒に座り、焼いたパンを浮かべた一クォートのエールを飲み終えようとしていた。それからスクーナー船へ、点検に乗り込むつもりだった。
ロング・ジョンは初めから終わりまで、とても生き生きと、しかもまったく事実どおりに話した。「そういうことだったな、ホーキンズ?」と、ときどき言った。僕はいつでも、すべてそのとおりだと答えられた。
二人の紳士はブラック・ドッグを逃がしたことを残念がったが、どうしようもないという点では、みんなの意見が一致した。ロング・ジョンは褒められたあと、松葉杖を取り、帰っていった。
「今日の午後四時までに、総員乗船だ!」と郷士が背中に叫んだ。
「へい、承知しました」と料理番は廊下から答えた。
「さて、郷士」とリヴジー博士は言った。「普段は、あなたの見つけた人間をあまり信用しないのですが、これだけは言えます。ジョン・シルバーは気に入りました。」
「あれこそ、まったく頼りになる男だ」と郷士は断言した。
「それでは」と博士は付け加えた。「ジムも一緒に乗船してかまいませんね?」
「もちろんだ」と郷士は言った。「帽子を取れ、ホーキンズ。船を見にいこう。」

第九章 火薬と武器
ヒスパニオラ号は少し沖に停泊していた。僕たちは多くの船の船首像の下をくぐり、船尾を回り、その錨綱が小舟の底をこすったり、頭上に垂れたりする間を進んだ。ようやく船の横につけ、乗り込むと、航海士のアロウが出迎えて敬礼した。日に焼けた老水夫で、耳輪をつけ、片目が少しよそを向いていた。郷士とはたいへん親しく、気が合っていた。だが、トレローニーさんと船長の間は、そうではないことに、僕はすぐ気づいた。
船長は鋭い顔つきの男で、船の何もかもが気に入らないようだった。その理由も、じきに聞かされることになった。僕たちが船室へ下りるか下りないうちに、水夫があとから来たのだ。
「スモレット船長が、お話ししたいと申しております」と言った。
「船長の用なら、いつでも聞く。通してくれ」と郷士は言った。
使いのすぐ後ろにいた船長は、ただちに入ってきて、背後の戸を閉めた。
「さて、スモレット船長、何のお話かな? 万事順調だろうね。船らしく整い、航海の準備はできているか?」
「さて、旦那」と船長は言った。「お気を悪くされても、率直に申し上げるべきでしょう。この航海は気に入りません。船員も気に入りません。航海士も気に入りません。手短に言えば、以上です。」
「船もお気に召さないのかな?」と郷士は尋ねた。ひどく怒っているのが、僕にもわかった。
「それはまだ申し上げられません。走らせてみておりませんので」と船長は言った。「よくできた船には見えます。それ以上は何とも。」
「雇い主も気に入らないのではないかね?」と郷士は言った。
だがそこで、リヴジー博士が割って入った。
「少々待ってください」と言った。「ちょっと待って。そんな質問では、感情をこじらせるだけです。船長の言葉は、言いすぎか、言い足りないかのどちらかだ。説明を求めざるを得ません。この航海が気に入らないとのことですが、なぜです?」
「私は、いわゆる密封命令という条件で雇われました」と船長は言った。「こちらの紳士のお望みの場所へ、この船を運ぶということです。そこまでは結構。ところが今になって、どの水夫も私より事情を知っているとわかりました。これは公平とは思えません。そうではありませんか?」
「ええ」とリヴジー博士は言った。「公平ではありませんね。」
「次に」と船長は言った。「宝を探しにいくと知りました。私自身の部下から聞いたのですぞ。宝探しは厄介な仕事です。どんな場合でも、私は宝探しの航海が好きではありません。まして秘密の航海でありながら――失礼ですが、トレローニーさん――その秘密をオウムにまでしゃべってしまったとなれば、なおさらです。」
「シルバーのオウムか?」と郷士は尋ねた。
「言葉のあやです」と船長は言った。「しゃべり散らした、という意味です。お二人とも、ご自分たちが何をしようとしているか、おわかりでないと私は思います。私の考えを申し上げましょう。これは生きるか死ぬか、しかも紙一重の仕事です。」
「お話はよくわかりますし、おそらくそのとおりでしょう」とリヴジー博士は答えた。「危険は承知しています。ただ、あなたがお考えほど無知でもありません。次に、船員が気に入らないとのことでしたね。よい船乗りではないのですか?」
「気に入らないのです」とスモレット船長は答えた。「それを言うなら、私の部下は、私自身に選ばせていただくべきだったと思います。」
「それはそうかもしれません」と博士は答えた。「友人は、あなたを一緒に連れていくべきだったのでしょう。ですが、ないがしろにされたとしたら、それは故意ではありません。それから、アロウも気に入らないのですね?」
「はい。腕のよい船乗りだとは思いますが、部下となれ合いすぎて、よい航海士とは言えません。航海士は一線を引くべきです。平の水夫と一緒に酒を飲んではいけません。」
「酒を飲むというのか?」と郷士は叫んだ。
「いいえ」と船長は答えた。「親しすぎるというだけです。」
「では、船長、要するにどういうことです?」と博士は尋ねた。「何を望んでいるのか、聞かせてください。」
「では、お二人とも、この航海を決行なさるおつもりですか?」
「鉄のように固い決意だ」と郷士が答えた。
「よろしい」と船長は言った。「証拠も示せない話を、ここまで辛抱強く聞いていただきました。もう少しだけ、お聞きください。今、火薬と武器を船首の船倉へ積んでおります。ところが、この船室の下に、よい場所がある。そこへ置いてはどうでしょう。これが第一点。それから、お連れになる身内の方が四人いて、そのうち何人かは前方に寝床を割り当てられると聞きました。この船室のそばへ移してはいかがですか。これが第二点です。」
「まだあるかね?」とトレローニーさんは尋ねた。
「もう一つ」と船長は言った。「すでに、しゃべりすぎています。」
「まったく、しゃべりすぎです」と博士も同意した。
「私自身が聞いたことを申し上げましょう」とスモレット船長は続けた。「あなた方は島の地図を持っている。その地図には、宝のありかを示す十字がついている。そして、その島の位置は――」そう言って、緯度と経度を正確に挙げた。
「それは誰にも話していない!」と郷士は叫んだ。
「船員は知っております」と船長は答えた。
「リヴジー、あなたかホーキンズに違いない」と郷士は叫んだ。
「誰が言ったかは、大した問題ではありません」と博士は答えた。博士も船長も、トレローニーさんの弁明を、あまり本気にしていないのがわかった。もちろん僕もそうだった。あまりに口が軽かったからだ。とはいえ、この件については、郷士は本当のことを言い、島の位置を話した者はいなかったのだと、僕は思っている。
「さて、皆さん」と船長は続けた。「その地図をどなたがお持ちかは存じません。ですが、私にもアロウにも秘密にしていただくことを、条件といたします。そうでなければ、辞任をお許しいただきたい。」
「なるほど」と博士は言った。「この件を秘密にし、船尾を要塞にして、友人の身内で固め、船じゅうの武器と火薬をそこへ集めたいわけですね。つまり、反乱を恐れている。」
「先生」とスモレット船長は言った。「立腹するつもりはありませんが、私の言わないことを、言ったことにしていただいては困ります。それだけの根拠があって反乱を口にできるなら、そもそも船長として出航するわけにはいきません。アロウについては、まったく正直な男だと信じております。船員にもそういう者はいます。私の知るかぎり、全員そうかもしれません。ですが私は、船の安全と、乗っている一人残らずの命に責任があります。物事が、私にはどうも正しくない方向へ進んでいるように見える。ですから、いくつか予防策を講じていただくか、辞任させていただきたい。それだけです。」
「スモレット船長」と博士は笑みを浮かべて言った。「山とねずみの寓話をご存じですか? [訳注:大騒ぎした山から小さなねずみしか生まれなかった、という寓話] 失礼ながら、あの話を思い出しました。ここへ入ってきたときは、これ以上のことを言うおつもりだった。このかつらを賭けてもいい。」
「先生」と船長は言った。「鋭いお方だ。ここへ来たときは、解雇していただくつもりでした。トレローニーさんが一言でも聞いてくださるとは、思いませんでした。」
「私も聞くつもりはなかった!」と郷士は叫んだ。「リヴジーがいなければ、さっさと追い出していたところだ。だが、話は聞いた。望みどおりにする。しかし、君の印象は悪くなった。」
「それはご自由に」と船長は言った。「務めは果たします。それはおわかりいただけるでしょう。」
そう言って、船長は出ていった。
「トレローニー」と博士は言った。「予想に反して、あなたはどうやら、正直な男を二人、船に乗せることに成功したようです。あの男と、ジョン・シルバーです。」
「シルバーならよかろう」と郷士は叫んだ。「だが、あの鼻持ちならん大げさ男は、男らしくも船乗りらしくもなく、まったくイングランド人らしくない振る舞いだと思うね。」
「まあ」と博士は言った。「いずれわかります。」
甲板へ出ると、船員たちはもう、ヨー・ホーと掛け声を上げながら、武器と火薬を運び出し始めていた。船長とアロウが、そばで監督していた。
新しい配置は、僕にはたいへん気に入った。スクーナー船は全体を改装してあり、主船倉の後ろだったところに、六つの寝床が作られていた。この船室区画は、左舷の板張りの通路だけで、調理場と船首の船員室につながっていた。もともとは船長、アロウ、ハンター、ジョイス、博士、郷士の六人が使う予定だった。今度はそのうち二つをレッドルースと僕が使い、船長とアロウは甲板上の昇降口の覆いで寝ることになった。そこは左右に広げられ、ほとんど甲板室と呼べるくらいになっていた。もちろん天井はまだ低かったが、ハンモックを二つ吊るすだけの広さはあり、航海士まで、この変更を気に入ったようだった。彼も船員に不安を抱いていたのかもしれない。だが、それは推測にすぎない。これからわかるように、僕たちはその意見を長く聞いていられなかったからだ。
火薬と寝床を移す仕事でみんな忙しくしていると、最後の一人か二人が、ロング・ジョンと一緒に岸の小舟でやって来た。
料理番は猿のように器用に舷側を上り、仕事の様子を見るなり、「おや、みんな!」と言った。「何をしてる?」
「火薬を移してるんだ、ジョン」と一人が答えた。
「何だ、畜生!」とロング・ジョンは叫んだ。「そんなことをしてたら、朝の潮に間に合わねえぞ!」
「私の命令だ」と船長は短く言った。「君は下へ行きたまえ。船員には夕食が要る。」
「へい、承知しました」と料理番は答え、前髪に手を当てて敬礼し、すぐ調理場のほうへ消えた。
「あれはいい男です、船長」と博士は言った。
「おそらく、そうでしょう」とスモレット船長は答えた。「気をつけろ、みんな――ゆっくりだ」と、火薬を動かす連中へ続けた。それから突然、僕が船の中央に据えられた旋回砲、長い真鍮製の九ポンド砲を調べているのに気づき、「おい、そこの船の小僧!」と叫んだ。「そこを離れろ! 料理番のところへ行って、仕事をもらえ!」
僕が急いで立ち去ると、船長が博士に、かなり大きな声で言うのが聞こえた。
「私の船では、えこひいきはいたしません。」
正直に言って、そのとき僕は郷士とまったく同じ考えで、船長が大嫌いだった。
第十章 航海
その夜は一晩じゅう、荷物を所定の場所へ収める大騒ぎだった。しかもブランドリーをはじめ郷士の友人たちが、航海の成功と無事の帰還を祈りに、小舟で次々とやって来た。「ベンボー提督亭」では、この半分ほども働いた夜はなかった。夜明け少し前、甲板長が笛を鳴らし、船員たちが巻揚げ機の棒につき始めたころには、僕はくたくただった。それでも、その倍疲れていても、甲板を離れはしなかっただろう。短い命令、鋭い笛の音、船のランタンの薄明かりの中で持ち場へ急ぐ男たち。何もかも新しく、面白かった。
「さあ、バーベキュー、一節やってくれ!」と誰かが叫んだ。
「いつものやつだ」と別の声がした。
「ああ、いいとも、みんな」と、脇に松葉杖を挟んでそばに立っていたロング・ジョンが言い、すぐに、僕のよく知る節と歌詞を歌いだした。
「死人の箱に十五人」――
すると乗組員全員が合いの手を入れた。
「ヨー・ホー・ホー、ラム酒一本!」
そして三つ目の「ホー!」で、力を込めて棒を押した。
あんなに胸躍る瞬間でさえ、僕は一瞬で古い「ベンボー提督亭」に引き戻され、船長が甲高い声で歌に加わるのを聞くような気がした。だがまもなく錨綱は短く張り、すぐに錨が、しずくを垂らして船首にぶら下がった。やがて帆が風をはらみ、陸と船々が両側を流れ始めた。僕が一時間ばかり眠ろうと横になるより早く、ヒスパニオラ号は宝島への航海を始めていた。
航海を細かく語るつもりはない。かなり順調だった。船はよい船で、乗組員は腕のいい船乗り、船長は仕事を隅々まで心得ていた。だが宝島に着くまでに、知っておいてもらわなければならないことが、二つ三つ起こった。
まずアロウは、船長が恐れていた以上にひどかった。部下に対する威厳はなく、誰も彼を好きなようにあしらった。だが、それは最悪の点ではなかった。海へ出て一日か二日すると、目をぼんやりさせ、頬を赤くし、舌をもつれさせるなど、酔った様子で甲板に現れるようになった。何度も何度も、叱られて下へ追いやられた。転んで切り傷を作ることもあれば、昇降口の片側にある小さな寝床で、一日じゅう寝ていることもあった。ときには一日か二日、ほとんどしらふで、少なくともまずまずの仕事をすることもあった。
ところが、どこで酒を手に入れるのかは、どうしてもわからなかった。それが船の謎だった。どんなに見張っても解けず、面と向かって尋ねても、酔っていれば笑うだけで、しらふなら、水以外は口にしないと大まじめに否定した。
航海士として役に立たず、船員に悪い影響を与えるだけでなく、このままではじきに、自分で命を落とすのも明らかだった。だから、向かい波の立つ暗い夜に、突然姿を消し、二度と現れなくなっても、誰もたいして驚かず、ひどく悲しみもしなかった。
「海へ落ちたな」と船長は言った。「さて、皆さん。これで足かせをはめる手間が省けました。」
しかし、それで航海士がいなくなったから、当然、誰かを昇格させなければならなかった。甲板長のジョブ・アンダーソンが、船内ではいちばんふさわしかった。肩書きはそのままだったが、ある程度、航海士の役目を務めた。トレローニーさんにも船乗りの経験があり、その知識は大いに役立った。天候の穏やかなときには、よく自分で当直を引き受けた。また操舵長のイスラエル・ハンズは、用心深く、抜け目のない、経験豊かな老水夫で、いざというときには、ほとんど何でも任せられた。
ハンズはロング・ジョン・シルバーの親しい相談相手だった。そこで、この名を出したついでに、船の料理番、船員たちがバーベキューと呼ぶ男について話そう。

陸の上にいるように安心して料理を続ける姿は、見事なものだった
船上では、なるべく両手を自由に使えるよう、松葉杖を細い綱で首から下げていた。杖の先を隔壁に突っ張り、それに体を預け、船の動きに身を任せながら、陸の上にいるように安心して料理を続ける姿は、見事なものだった。ひどい荒天の中で甲板を横切る姿は、もっと不思議だった。とくに広い場所を渡る助けに、綱を一本か二本張っており、それは「ロング・ジョンの耳輪」と呼ばれていた。そこを手繰って移り、松葉杖を使ったかと思うと、首の綱で脇へぶら下げ、ほかの人が歩くのと同じ速さで進んだ。それでも、昔一緒に航海した船員の中には、こんなに不自由になって気の毒だと言う者もいた。
「ただ者じゃねえんだ、バーベキューは」と操舵長は僕に言った。「若いころ、しっかり学問をやってな、その気になりゃ本に書いてあるような言葉も使える。それに度胸だ。ロング・ジョンに比べりゃ、獅子なんぞ何でもねえ! 四人をつかまえて頭をぶつけ合わせるのを、この目で見た。丸腰でだぞ。」
船員はみんなシルバーを敬い、その言うことを聞きさえした。一人一人に合わせた話し方を知っていて、誰にでも何か特別な世話を焼いた。僕には飽きることなく親切で、調理場へ行くといつでも喜んで迎えた。調理場はぴかぴかに掃除され、吊るした皿は磨き上げられ、隅の籠にはオウムがいた。
「おいで、ホーキンズ」と、よく言った。「ジョンと話をしよう。おまえなら、誰よりも歓迎だ、坊主。座って、面白い話を聞きな。ほら、フリント船長がいる――有名な海賊にあやかって、このオウムをフリント船長と呼んでるんだ――このフリント船長が、俺たちの航海はうまくいくと予言してる。そうだったな、船長?」
するとオウムは、ものすごい早口で、「八レアル銀貨! 八レアル銀貨! 八レアル銀貨!」と言った。息が切れないのか不思議になるほど、あるいはジョンが籠にハンカチをかけるまで、言い続けた。
「この鳥はな」とシルバーは言った。「二百歳くらいかもしれねえ、ホーキンズ。こいつらは、たいていいつまでも生きる。こいつより悪事を見てきたやつがいるとすりゃ、悪魔本人だろうよ。イングランドと航海したんだ。有名な海賊、イングランド船長とな。マダガスカルにも、マラバールにも、スリナムにも、プロビデンスにも、ポルトベロにも行った。沈んだ銀船から財宝を引き揚げたときもいた。そこで『八レアル銀貨』を覚えたんだ。無理もねえ。三十五万枚だぞ、ホーキンズ! ゴアを出たインディアス副王号に切り込んだときもいたんだ。それなのに、見た目は赤ん坊みてえだろう。だが火薬の匂いは知ってるな――そうだな、船長?」
「回頭の用意!」とオウムは金切り声を上げた。
「ああ、見事な船だよ、こいつは」と料理番は言って、ポケットから砂糖を出して与えた。すると鳥は籠の格子をつつき、信じられないほど下品な悪態を、延々とつきだした。「ほらな」とジョンは付け加えた。「タールに触って汚れずにはすまねえんだ、坊主。この哀れな、何も知らない老いぼれ鳥が、ひどい悪口を吐いてる。意味なんぞ、まったくわかっちゃいねえ。牧師の前でも、同じようにやるだろうよ。」
そしてジョンは、あの生まじめな仕草で前髪に手を当てるのだった。それを見ると、僕は、この人こそ最高の善人だと思った。
その間も、郷士とスモレット船長の仲は、相変わらずよそよそしかった。郷士はそれを隠そうともしなかった。船長を軽蔑していたのだ。船長のほうは、話しかけられなければ何も言わず、答えるときも、鋭く、短く、そっけなく、一語も無駄にしなかった。問い詰められると、船員については自分が間違っていたらしいと認めた。何人かは望みどおりにきびきび働き、全員がまずまず行儀よくしている、と。船については、すっかり気に入っていた。「自分の女房に望めるよりも、一方位点は風上へ向いてくれますよ」と言った。「ただし」と付け加えた。「申し上げるのはこれだけです。まだ帰港したわけではない。この航海は好きではありません。」
それを聞くと、郷士はそっぽを向き、顎を上げて甲板を行ったり来たりした。
「あの男に、あと少しでも付き合ったら」と言った。「私は爆発するぞ。」
ひどい荒天にも遭ったが、それはヒスパニオラ号の性能を証明するだけだった。船上の誰もが、満足しているように見えた。そうでなければ、よほど気難しい人間だ。ノアが海へ出て以来、これほど甘やかされた乗組員はいなかったと思う。ちょっとした口実でラム酒の水割りが倍量配られた。郷士が誰かの誕生日だと聞いたときなど、思いがけない日に蒸しプディングが出た。そして船の中央には、いつもふたを開けたリンゴ樽が置かれ、食べたい者は誰でも自由に取れた。
「それでよい結果になったためしはありません」と船長はリヴジー博士に言った。「平水夫を甘やかせば、悪魔になります。それが私の考えです。」
だが、これからわかるように、リンゴ樽はよい結果をもたらした。もしあれがなければ、僕たちは何の警告も受けず、裏切りの手にかかって、みんな死んでいたかもしれない。
事の起こりは、こうだった。
僕たちは貿易風の吹く海を進み、目指す島の風上へ出た――これ以上はっきり書くことは許されない――そして今は、昼も夜も厳重に見張りながら、島へ向かって走っていた。どれほど長く見積もっても、往路の最後の日に当たるはずだった。その夜のうちか、遅くとも翌日の正午までには、宝島が見えるはずだった。船は南南西へ向かい、真横から一定の風を受け、海は穏やかだった。ヒスパニオラ号はゆったり規則正しく揺れ、ときどき船首の突き出し棒を波に差し入れ、しぶきを上げた。上下すべての帆が風をはらんでいた。冒険の第一段階がもうすぐ終わるので、誰もが上機嫌だった。
さて、日没を少し過ぎ、仕事がすべて終わって寝床へ向かう途中、リンゴが食べたくなった。僕は甲板へ駆け上がった。当直の船員はみんな前方へ行き、島を見張っていた。舵を取る男は帆の風上側を見つめ、静かに口笛を吹いていた。船首や舷側を洗う波音を除けば、それが唯一の音だった。
僕は体ごとリンゴ樽へ入り込んだが、リンゴはほとんど残っていなかった。けれど暗がりに座っていると、水音と船の揺れのせいで、眠ってしまったのか、眠りかけたのかした。そのとき、すぐそばへ重い男が、どすんと腰を下ろした。肩を寄せかけられて樽が揺れたので、僕は跳び出そうとした。すると男が話し始めた。シルバーの声だった。ほんの十数語を聞く前に、何があっても姿を見せるわけにはいかなくなった。恐怖と好奇心の極みに、震えながら身をひそめ、耳を澄ませた。そのわずかな言葉で、船上の正直な人たち全員の命が、僕一人にかかっているとわかったのだ。
第十一章 リンゴ樽で聞いたこと
「いや、俺じゃねえ」とシルバーは言った。「船長はフリントだ。俺はこの木の脚だから、操舵係長だった。同じ一斉砲撃で、俺は脚をなくし、ピューの親父は目をなくした。俺の脚を切ったのは、腕の立つ外科医だった。大学も出ていて、ラテン語なんぞ、桶いっぱいにあふれるほど知ってた。だが、そいつもほかの連中と同じように、コルソ城で犬みてえに吊るされ、天日干しになった。ロバーツの手下どもだ。船の名をころころ変えるから、そうなるんだ。ロイヤル・フォーチュン号だの何だのとな。船は最初につけた名のままでいい。それが俺の考えだ。イングランドがインディアス副王号を取ったあと、俺たちをマラバールから無事に連れ帰ったカサンドラ号も、そうだった。フリントの古い船、セイウチ号も同じだ。真っ赤な血でどろどろになり、金の重みで沈みそうなところを、この目で見たものさ。」
「ああ!」と別の声がした。船でいちばん若い水夫で、明らかに感嘆していた。「フリントは、仲間の中でも飛び抜けた男だったんだな!」
「聞くところじゃ、デイヴィスも大した男だった」とシルバーは言った。「俺は一緒に乗らなかったがな。初めはイングランド、次にフリント。それが俺の経歴だ。そして今度は、いわば自分の商売ってわけだ。イングランドのときに九百、フリントのあとで二千、しっかり貯めた。平水夫にしちゃ悪くねえだろう。みんな銀行に入れてある。肝心なのは稼ぎじゃねえ、貯めることだ。間違いねえ。イングランドの連中は今どこだ? 知らねえ。フリントの連中は? たいていこの船に乗って、プディングにありついて喜んでる。乗る前は乞食をしてたやつもいる。目をなくしたピューの親父だって、少しは恥を知りゃいいものを、貴族院の議員様みてえに、一年で千二百ポンド使いやがった。今どこにいる? 死んで地面の下だ。だがその前の二年間ときたら、畜生、飢えてたんだ。物を乞い、盗み、人の喉を切り、それでも飢えてやがった!」
「じゃあ結局、あまり得にはならねえんだな」と若い船乗りが言った。
「馬鹿には得にならねえ。何だってそうだ」とシルバーは叫んだ。「だが、いいか。おまえは若いが、切れ者だ。初めて会ったときからわかってた。だから一人前の男として話してやる。」
この忌まわしい老悪党が、僕に使ったのとまったく同じお世辞を、別の人間に言うのを聞いて、どんな気持ちだったか、想像できるだろう。できることなら、樽越しにでも殺してやったと思う。その間もシルバーは、聞かれているとは夢にも思わず、話を続けた。
「幸運の紳士ってのは、こういうものだ。荒っぽい暮らしで、首を吊られる危険もある。だが食う物も飲む物も、闘鶏並みに上等だ。航海が終わりゃ、ポケットにあるのは何百ファージングじゃねえ、何百ポンドだ。たいていはラム酒と遊びに使い、シャツ一枚でまた海へ出る。だが俺の進路は違う。全部しまっておく。ここに少し、あそこに少し、怪しまれねえよう、一か所に置きすぎねえ。俺は五十だ、いいか。今度の航海から帰ったら、本物の紳士になる。もういいころだろうって? ああ、だがそれまでも楽に暮らしてきた。欲しいものを我慢したことはねえ。海の上以外じゃ、いつも柔らかい寝床に寝て、うまいものを食ってきた。それで、始まりは何だったと思う? おまえと同じ平水夫だ!」
「だがよ」と相手は言った。「ほかの金は、今度で全部だめになるんじゃねえか? これが済んだら、ブリストルには顔を出せねえだろう。」
「ほう、金がどこにあると思ってる?」とシルバーはあざけるように尋ねた。
「ブリストルの銀行や何かだろう」と相手は答えた。
「あったさ」と料理番は言った。「錨を上げたときはな。だが今ごろは、女房が全部持ってる。『望遠鏡亭』も、借地権からのれんから道具まで、すっかり売ってある。あいつは俺と落ち合いに出発してる。おまえは信用してるから、場所を教えてやってもいいんだが、仲間が妬むといけねえ。」
「女房は信用できるのか?」と相手が尋ねた。
「幸運の紳士は」と料理番は答えた。「ふつう、仲間同士をあまり信用しねえ。それで正しい。だが俺には、俺のやり方がある。仲間が綱を外して逃げるとき――俺を知ってるやつならな――このジョンと同じ世界にいる間には、やりゃしねえ。ピューを恐れる者も、フリントを恐れる者もいた。だがフリント本人が、俺を恐れてた。恐れて、それが悔しかったんだ。フリントの一味は、海でいちばん荒っぽい連中だった。悪魔だって一緒に船に乗るのは怖がっただろう。さて、俺は自慢する男じゃねえ。付き合いやすいことも、おまえは見て知ってる。だが俺が操舵係長だったときは、フリントの海賊どもは、子羊なんてもんじゃなかった。ああ、このジョンの船なら、安心していられるぞ。」
「よし、言っておく」と若者は答えた。「あんたと話すまでは、この仕事は少しも気が進まなかったんだ、ジョン。だが今は、握手して誓うぜ。」
「勇ましい若者だ。それに頭もいい」とシルバーは答え、樽全体が揺れるほど力強く握手した。「幸運の紳士にこれほど似合う顔は、見たことがねえ。」
そのころには、彼らの言葉の意味がわかり始めていた。「幸運の紳士」とは、要するに、ただの海賊のことだった。僕が聞いた短いやり取りは、正直な船員の一人を堕落させる最後の場面だったのだ。もしかすると、船に残った最後の一人だったかもしれない。だが、その点については、すぐに安心できた。シルバーが短く口笛を吹くと、三人目の男がぶらぶらやって来て、仲間のそばへ座った。
「ディックは、こっちだ」とシルバーは言った。
「ああ、ディックならわかってた」と、操舵長イスラエル・ハンズの声が答えた。「馬鹿じゃねえからな、ディックは。」
そして噛みたばこを転がし、唾を吐いた。「だが、いいか」と続けた。「聞きてえのはこれだ、バーベキュー。いつまで、忌々しい物売り船みてえに、行ったり来たりしてるんだ? スモレット船長には、もううんざりだ。さんざんこき使いやがって、ちくしょう! 俺はあの船室へ入りてえ。あいつらの漬け物やワインや、あれこれが欲しいんだ。」
「イスラエル」とシルバーは言った。「おまえの頭は、今も昔も大した役に立たねえ。だが耳は聞こえるだろう。少なくとも、でかさは十分だ。いいか、俺の言うことはこうだ。俺が合図するまでは、船首で寝ろ。粗末な飯を食え。おとなしく話せ。酔うな。そいつは間違いねえぞ、坊や。」
「嫌だと言ってるか?」と操舵長はうなった。「いつだと聞いてるんだ。それだけだ。」
「いつだと! 畜生!」とシルバーは叫んだ。「知りたきゃ教えてやる。待てるぎりぎりまで待ってからだ。それが答えだ。ここには一流の船乗り、スモレット船長がいて、俺たちのために船を走らせてくれる。郷士と医者は地図や何やらを持ってる。俺は宝の場所を知ってるか? 知らねえ。おまえも知らねえだろう。なら、この郷士と医者に宝を見つけさせ、船へ積み込むのも手伝わせるんだ。畜生、それからだ。おまえら、ろくでなしどもが信用できるなら、スモレット船長に帰り道の半分まで船を操らせてから、仕掛けるところだ。」
「だが、ここにいるのは、みんな船乗りだろう」と若いディックが言った。
「平水夫だってんだ」とシルバーはぴしゃりと言った。「決められた針路を走ることはできる。だが誰が針路を決める? おまえら紳士方が、初めから終わりまで失敗するのは、そこだ。俺の思いどおりにできるなら、少なくとも貿易風の海までは、スモレット船長に戻してもらう。そうすりゃ、計算を間違えて、一日に水をさじ一杯なんてことにはならねえ。だが、おまえらの性分は知ってる。宝を積んだらすぐ、島で連中を片づける。惜しい話だ。まったく、おまえらは酔わなきゃ満足しねえ。畜生、おまえらみたいなのと船に乗ると、気が滅入るぜ!」
「落ち着けよ、ロング・ジョン」とイスラエルは叫んだ。「誰が逆らってる?」
「俺が、何隻の大船が乗り込まれるのを見たと思う?」とシルバーは叫んだ。「何人の元気な若造が、処刑埠頭で天日干しになるのを見たと思う? みんな、同じように、急いで、急いで、急ぎすぎたせいだ。聞いてるか? 海じゃ、いろいろ見てきたんだ。ちゃんと針路を決めて、少し風上を狙いさえすりゃ、馬車に乗れるんだぞ。だが、おまえらは違う。わかってる。明日のラム酒一口を取って、首を吊られるんだ。」
「ジョン、あんたが船付き牧師みてえな男なのは、みんな知ってる」とイスラエルは言った。「だが帆を扱い、舵を取る腕なら、あんたに劣らねえやつらもいた。そいつらは、ちょいと楽しむのが好きだった。そうお高くとまらず、陽気な仲間らしく、みんな派手に遊んだものさ。」
「そうか」とシルバーは言った。「で、今どこにいる? ピューはその手の男で、乞食になって死んだ。フリントもそうで、サバンナでラム酒に殺された。ああ、愉快な連中だったとも。だが、どこにいる?」
「だが」とディックが尋ねた。「いざ連中を取り押さえたら、どうするんだ?」
「それでこそ、俺の欲しい男だ!」と料理番は感心して叫んだ。「そういうのが肝心な話だ。さて、どう思う? 置き去りにして陸へ放り出すか? それならイングランドのやり方だ。それとも豚肉みてえに切り倒すか? それならフリントか、ビリー・ボーンズのやり方だ。」
「ビリーは、そういう男だった」とイスラエルは言った。「『死人は噛みつかねえ』が口癖だ。まあ、今は自分が死んだから、どういうことか、よくわかっただろうよ。荒くれ者が港へ着くというなら、まさにビリーのことだった。」
「そのとおり」とシルバーは言った。「荒っぽくて、手が早かった。だが、いいか。俺は気のいい男だ。まったく紳士だ、とおまえらは言う。だが今度は大事だ。務めは務めだ、みんな。俺は死に一票入れる。議員になって馬車に乗るようになったとき、船室の理屈屋どもが、祈りの最中の悪魔みてえに、ひょっこり帰ってきちゃ困る。待てというのが俺の考えだ。だが、そのときが来たら、遠慮なくやれ!」
「ジョン」と操舵長は叫んだ。「あんたは男だ!」
「見れば、もっとそう言うさ、イスラエル」とシルバーは言った。「ただ一つ、俺の取り分がある。トレローニーは俺のものだ。この両手で、あの子牛みてえな頭を、胴からねじ切ってやる。ディック!」と、話を切って付け加えた。「いい子だから、ひとっ跳びして、リンゴを一つ取ってくれ。喉を湿らせてえ。」
僕がどれほど恐ろしかったか、想像できるだろう! 力さえあれば、跳び出して逃げたはずだ。だが手足も心も、言うことを聞かなかった。ディックが立ち上がりかける音が聞こえた。すると誰かが止めたらしく、ハンズの声が叫んだ。
「そんなもの、よせよ! ジョン、あんな水っぽい物をしゃぶるな。ラム酒をやろうぜ。」
「ディック」とシルバーは言った。「おまえを信用してる。樽には量がわかる印をつけてあるからな。ほら、鍵だ。ブリキの杯に一杯くんで、持ってこい。」
あれほど怖がっていたのに、僕は考えずにいられなかった。アロウを破滅させた強い酒も、こうやって手に入っていたに違いない。
ディックが行っていたのは、ほんの少しの間だった。その間、イスラエルは料理番の耳元へ直接話しかけた。聞き取れたのは一言二言だったが、それでも大事なことがわかった。同じ意味に取れる断片に交じって、この一節が丸ごと聞こえたのだ。「残りは、もう一人も加わらねえ。」
つまり、まだ忠実な船員が残っていた。
ディックが戻ると、三人は代わる代わる杯を取って飲んだ。一人は「幸運を」と言い、もう一人は「フリントの親父に」と言った。シルバー自身は、歌うように、「俺たちに乾杯、風を受けてまっすぐ進め、獲物も山ほど、プディングも山ほど」と言った。
ちょうどそのとき、樽の中の僕に、ほのかな明かりが差した。見上げると月が昇り、後檣の見張り台を銀色に染め、前帆の風上側を白く照らしていた。ほとんど同時に、見張りの声が上がった。「陸だ!」
第十二章 軍議
甲板を駆け回る足音が、どっと響いた。船室や船首楼から、人々が転がるように飛び出してくるのが聞こえた。ぼくは一瞬のうちに樽から抜け出し、前帆の陰に身を隠すと、ぐるりと船尾のほうへ回り込んで、何食わぬ顔で甲板に出た。ちょうどハンターとリヴジー博士が風上側の船首へ走っていくところで、ぼくもそのあとに加わった。
そこにはもう全員が集まっていた。月が顔を出すのとほとんど同時に、帯のようにたなびいていた霧が晴れたのだ。南西のはるか向こうに、二マイルほど離れて低い丘が二つ見え、その一つの背後には、さらに高い第三の山がそびえていた。その頂はまだ霧の中に埋もれていた。三つとも先のとがった円錐形に見えた。
ぼくはそれを、ほとんど夢でも見るような気持ちで眺めていた。ほんの一、二分前に味わった恐ろしさから、まだ立ち直っていなかったのだ。やがて、スモレット船長が命令を下す声が聞こえた。ヒスパニオラ号は船首を二点ほど風上へ向け、島の東側をすれすれに通り抜ける針路を取った。
「さて、諸君」と、帆がすっかり整うと船長が言った。「前方に見えるあの陸地を、見たことのある者はいるか?」
「へえ、あります、船長」とシルバーが答えた。「おれが料理番をしていた商船で、あそこで水を補給しました。」
「停泊地は南側で、小島の陰だったかな?」と船長が尋ねた。
「そのとおりで、骸骨島と呼ばれてます。昔は海賊の大事な根城でしてね。同じ船に、あそこの海賊どもの呼び名をすっかり知ってる男がいたんです。北にあるのが前檣丘と呼ばれる丘で、南へ三つ並んでるんでさ。前檣、主檣、後檣ってわけです。ただ、主檣のほう――あの雲のかかったでかいやつですがね――あれはたいてい望遠鏡山と呼ばれてます。停泊地で船底の掃除をするあいだ、あそこに見張りを置いたからだそうで。失礼ながら、あそこは連中が船をきれいにする場所だったんですよ。」
「ここに海図がある」とスモレット船長が言った。「その場所かどうか見てくれ。」
海図を受け取ったロング・ジョンの目が、ぎらりと燃えた。だが、紙が真新しいのを見て、ぼくには、あてが外れるに違いないとわかった。これはビリー・ボーンズの船箱から見つけた地図ではなかった。地名も高さも水深も、何もかも正確に写されていたが、赤い十字印と書き添えられた覚え書きだけが省かれていたのだ。さぞ腹立たしかったろうに、シルバーはそれを顔に出さないだけの胆力を持っていた。
「へえ、船長」とシルバーは言った。「確かにここです。実によく描けてる。いったい誰が描いたんでしょうな? 海賊どもに、こんな学はなかったでしょうに。ああ、ここだ。『キッド船長の停泊地』――仲間が呼んでたのも、この名前です。南岸に沿って強い潮が流れてまして、それから西岸を北へ上がっていくんです。船長、風上に切り上がって、島の風上を保ったのは正解でしたよ」とシルバーは続けた。「少なくとも、入江へ入って船を傾け、船底の手入れをなさるおつもりなら。この海域に、それに勝る場所はありませんからね。」
「ありがとう」とスモレット船長が言った。「あとで力を借りることもあるだろう。もういいぞ。」
ジョンが、島のことを知っていると平然と言ってのけたのには驚いた。そして、こちらへ近づいてくるのを見たときには、正直、半ば震え上がってしまった。もちろん、リンゴ樽の中からぼくが相談を盗み聞きしたことを、ジョンは知らない。それでも今や、あの残忍さと裏表のある心、そして恐ろしい力が身にしみていたので、腕に手を置かれたときには、震えを抑えるのがやっとだった。
「ああ」とジョンは言った。「いいところだろう、この島は。おまえみたいな若いのが上陸するには、うってつけだ。泳いだり、木に登ったり、ヤギを追いかけたりできるぞ。自分もヤギになったつもりで、あの山々へ登るんだ。いや、おれまで若返る気がする。木の脚のことを忘れちまいそうだよ。若くて足の指が十本そろってるってのは、いいもんだ。これは間違いない。ちょいと探検に行きたくなったら、ジョンおじさんに言いな。持っていく弁当をこしらえてやるから。」
そして、いかにも親しげにぼくの肩をたたくと、足を引きずりながら船首へ行き、下へ降りていった。
スモレット船長と郷士とリヴジー博士は、後甲板で話し合っていた。一刻も早く聞いたことを伝えたかったが、人目のあるところで割り込む勇気はなかった。何かもっともらしい口実はないかと考えていると、リヴジー博士がぼくを呼んだ。下にパイプを置き忘れてきたので、たばこなしではいられない博士は、ぼくに取ってこさせるつもりだったのだ。だが、ほかの者に聞かれずに話せるほど近づくと、ぼくはすぐに切り出した。「先生、聞いてください。船長と郷士を船室へ連れていって、それから何か口実をつけて、ぼくを呼んでください。恐ろしいことがわかったんです。」
博士の顔色が少し変わった。だが、次の瞬間にはもう平静を取り戻していた。
「ありがとう、ジム」と博士はわざと大きな声で言った。「それだけわかればいい」まるで、何か質問をしたあとのような口ぶりだった。
そう言うと、くるりと向きを変え、二人のところへ戻っていった。三人はしばらく話していた。誰もぎくりともせず、声を上げもせず、驚いて口笛を吹くことさえしなかったが、博士がぼくの頼みを伝えたことは明らかだった。ほどなく船長がジョブ・アンダーソンに命令を下し、笛の合図で総員が甲板へ呼び出されたからだ。
「諸君」とスモレット船長は言った。「ひと言伝えておく。われわれが発見したあの陸地こそ、目指してきた目的地だ。トレローニーさんが気前のよい紳士であることは、皆も知っているとおりだが、たったいま、わたしに少々お尋ねになった。そこで、船上の誰もが、甲板でも帆桁でも、望みうるかぎり見事に務めを果たしてくれたとお答えした。これからトレローニーさんと博士とわたしは船室へ下り、諸君の健康と幸運を祝って一杯やる。諸君にもグロッグ[訳注:水で割ったラム酒]を配るから、われわれの健康と幸運を祝って飲んでくれ。わたしの感想を言おう。実にありがたい計らいだと思う。諸君もそう思うなら、この気前のよい紳士のために、船乗りらしい盛大な歓声を上げてくれ。」
当然、歓声が上がった。だが、その声はあまりにも力強く、心がこもっていたので、同じ男たちがぼくらの血を流そうと企んでいるなど、どうにも信じがたかった。
「スモレット船長にも、もうひと声!」と、最初の歓声が収まるとロング・ジョンが叫んだ。
これにもまた、心からの歓声が応えた。
それから三人は船室へ下り、ほどなく船首のほうへ、ジム・ホーキンズは船室へ来るようにとの伝言が届いた。
行ってみると、三人はスペイン産のワインと干しブドウを置いたテーブルを囲んでいた。博士はかつらを膝に置き、盛んにパイプをふかしていた。こうするのは動揺しているしるしだと、ぼくは知っていた。暖かい夜だったので船尾の窓は開けてあり、後方の航跡に月の光がきらめいていた。
「さあ、ホーキンズ」と郷士が言った。「話があるそうだな。聞かせてくれ。」
ぼくは言われたとおり、できるだけ手短に、それでいて細部も漏らさず、シルバーの話を伝えた。話し終えるまで誰も口を挟まず、三人とも身じろぎ一つせずに、最初から最後までぼくの顔を見つめていた。
「ジム」とリヴジー博士が言った。「座りたまえ。」
三人はぼくを同じテーブルにつかせ、ワインを一杯注ぎ、両手いっぱいに干しブドウを持たせてくれた。そして一人ずつ、頭を下げ、ぼくの幸運と勇気をたたえ、健康を祝って、感謝の乾杯をしてくれた。
「さて、船長」と郷士が言った。「あなたが正しかった。わたしが間違っていた。自分が大馬鹿者だったことを認めよう。今後はあなたの指示に従う。」
「わたしも同じほどの馬鹿者ですよ」と船長は答えた。「反乱を企む乗組員が、その前に何の兆候も見せなかったなど、聞いたこともありません。目のある者なら悪だくみに気づき、相応の手を打てるものです。だが、この連中には」と船長は付け加えた。「まったく一本取られました。」
「船長」と博士が言った。「失礼ながら、それはシルバーの手腕でしょう。並外れた男ですよ。」
「帆桁から吊るしてやれば、さぞ並外れた見栄えでしょうな」と船長は答えた。「だが、おしゃべりをしていても始まらない。考えねばならんことが三つ四つあります。トレローニーさんのお許しがあれば申し上げたい。」
「船長はあなたです。どうぞお話しください」とトレローニー郷士は、堂々と言った。
「第一に」とスモレット船長は始めた。「引き返せない以上、先へ進むしかありません。反転の命令を出したら、連中は即座に蜂起するでしょう。第二に、まだ時間はあります。少なくとも宝が見つかるまでは。第三に、忠実な船員もいるということです。遅かれ早かれ戦うことになる。それなら、よく言うように機先を制して、連中がまったく予想していないときに、こちらから打って出るのがよいと考えます。トレローニーさん、お屋敷から連れてこられた使用人たちは、信用してよろしいですね?」
「わたし自身と同じほど信用できる」と郷士は断言した。
「三人」と船長は数えた。「ここにいるホーキンズも含めて、われわれを合わせれば七人。さて、信用できる船員は?」
「たぶん、トレローニーが自分で雇った者たちでしょう」と博士が言った。「シルバーに会う前に、自分で見つけた者です。」
「いや」と郷士は答えた。「ハンズも、その一人だ。」
「ハンズなら信用できると思っていたのですがね」と船長も言った。
「しかも、あいつらはみんなイングランド人だ!」と郷士は声を荒らげた。「船長、船ごと吹き飛ばしてやりたいくらいだ。」
「さて、お二方」と船長は言った。「わたしにも、たいした名案があるわけではありません。ひとまずじっと構えて、油断なく見張るしかない。神経のすり減ることだとは承知しています。戦ってしまうほうが、よほど気が楽でしょう。だが、誰が味方かわかるまでは仕方がない。船を止めて、風を待つ口笛でも吹く。それがわたしの考えです。」
「ここにいるジムが」と博士が言った。「誰よりも役に立ってくれるでしょう。船員たちはこの子には気を許すし、ジムはよく気のつく少年です。」
「ホーキンズ、君には大いに期待しているぞ」と郷士も言った。
そう言われると、ぼくはひどく心細くなった。自分には何もできない気がしたからだ。それでも、思いがけない出来事が重なり、結局は本当に、ぼくがみんなを救うことになった。ともあれ、いくら話し合ったところで、二十六人のうち確実に頼れるのは七人だけ。その七人の一人は子どもなのだから、こちらの大人六人に対して、向こうは十九人だった。
第三部 陸での冒険
第十三章 陸での冒険の始まり
翌朝、甲板へ出たとき、島の姿はすっかり変わっていた。風はもう完全にやんでいたが、夜のうちにかなり進み、ぼくらは低い東海岸の南東、半マイルほどの沖で、風待ちをしていた。島の大部分を灰色の森が覆っていた。低地では黄色い砂地が筋となってその色を破り、松の仲間らしい背の高い木が、一本ずつ、あるいは群れをなして、ほかの木々の上に突き出していた。それでも全体の色調は単調で、もの寂しかった。山々は草木の上に裸の岩を針のように突き立てていた。どれも奇妙な形だったが、ほかより三、四百フィート高い望遠鏡山は、形もとりわけ風変わりだった。ほとんど四方が切り立ち、その頂だけが、彫像を載せる台座のように、すっぱり切り落とされていた。
ヒスパニオラ号は外海のうねりに揺られ、排水口が水につかるほど傾いていた。帆桁は滑車を激しく引っ張り、舵は左右にどんどんぶつかり、船全体が工場のようにきしみ、うなり、跳ねていた。ぼくは後ろの支索にしっかりつかまっていなければならず、目の前の世界はぐるぐる回った。船が進んでいるときなら、ぼくも一人前の船乗りでいられた。けれども、こうして止まったまま瓶のように転がされる揺れには、どうしても気分が悪くなった。朝の空き腹とあっては、なおさらだった。
そのせいだったのかもしれない。あるいは、灰色の陰気な森や荒々しい岩峰、急な浜辺に泡立って砕け、目にも耳にも迫ってくる波、その島のたたずまいのせいだったのかもしれない。とにかく、太陽は明るく熱く輝き、海鳥が周囲で鳴きながら魚を捕っていたし、長い船旅の末に陸へ着けば誰だって喜びそうなものなのに、ぼくの心はすっかり沈んでしまった。あの最初のひと目以来、宝島を思うだけでも嫌になったのだ。
その朝は、うんざりする仕事が待っていた。風の吹く気配がまるでないので、ボートを下ろして人を乗せ、船を引いて島の角を回り、狭い水路を通って骸骨島の陰の泊地まで、三、四マイルも進まなくてはならなかった。ぼくは一艘のボートに志願して乗り込んだ。もちろん、ぼくなどが乗るべき場所ではなかった。蒸し暑く、船員たちは仕事をしながら盛んに悪態をついた。ぼくのボートはアンダーソンが指揮していたが、部下を静めるどころか、誰にも負けない大声で不平を言っていた。
「なあに」と、アンダーソンは毒づいてから言った。「いつまでも続くわけじゃねえ。」
これはひどく悪い兆候だと思った。その日までは、みんなきびきびと、進んで仕事をしていた。それが島を見ただけで、規律のたがが緩んでしまったのだ。
入江へ入るあいだじゅう、ロング・ジョンは舵取りのそばに立ち、操船を指図していた。水路のことは手のひらを見るように知っていた。船側の足場から測鉛を下ろす男は、どこでも海図より深い水深を報告したが、ジョンは一度もためらわなかった。
「引き潮で、ずいぶん底がさらわれるんでね」とジョンは言った。「この水路は、いわば、すっかりシャベルで掘り下げられたようなもんです。」
ぼくらは海図に錨の印がある、ちょうどその場所に停泊した。一方が本島、もう一方が骸骨島で、どちらの岸からも三分の一マイルほど離れていた。底はきれいな砂だった。錨が水に飛び込むと、雲のような鳥の群れが舞い上がり、森の上を鳴きながら旋回した。だが、一分もたたずにまた舞い降り、あたりはふたたび静まり返った。
そこは陸にすっぽり囲まれ、森に埋もれた場所だった。木々は満潮の波打ち際まで迫り、岸はたいてい平らで、遠くの山頂があちらこちらに、円形劇場の客席のように取り巻いていた。池と呼びたくなるその水面へ、小川が二本――いや、沼地といったほうがよさそうなものが二つ――流れ込んでいた。そのあたりの岸の葉は、どこか毒々しいほど鮮やかな色をしていた。家も柵も木々にすっかり埋もれ、船からは何も見えなかった。昇降口の海図がなければ、この島々が海から姿を現して以来、初めてここに錨を下ろしたのはぼくらだと思えたろう。
風はひと息も動かず、半マイル離れた外側の浜や岩に砕ける波の、低いとどろきだけが聞こえた。停泊地には、湿った葉や腐った木の幹の、よどんだ異様なにおいが漂っていた。博士が腐った卵でも嗅ぐように、何度も鼻をひくつかせているのが目についた。
「宝のことは知らんが」と博士は言った。「ここに熱病があることなら、かつらを賭けてもいい。」
ボートでの船員たちの様子も不穏だったが、船へ戻ると、それは本当に脅威となった。甲板のあちこちに寝そべり、ぶつぶつ不満を言い合っている。どんな些細な命令にも険しい顔を向け、いやいや、ぞんざいに従うだけだった。忠実な者までその気分に染まっていたに違いない。誰一人として、ほかの者をたしなめようとしなかったのだ。反乱の気配が、雷雲のように頭上を覆っていた。
その危険に気づいていたのは、船室のぼくらだけではなかった。ロング・ジョンは集まりから集まりへせわしなく回り、言葉を尽くして忠告していた。そして自分でも、これ以上ないほどの模範を示していた。働きぶりも愛想も、いつもの自分をしのぐほどで、誰にも笑顔を向けた。命令が出ると、たちまち松葉杖で立ち上がり、この世でいちばん陽気な声で「へい、承知しました!」と答える。ほかにすることがなくなると、仲間の不満を歌でかき消そうとするように、次から次へと歌い続けた。
あの陰鬱な午後の、数ある不吉なしるしの中でも、ロング・ジョンがあからさまに焦っていることが、何より恐ろしく思われた。
ぼくらは船室で相談した。
「いいですか」と船長は言った。「これ以上命令を出せば、船じゅうが一気にわれわれへ襲いかかってきます。つまり、こういうことです。命令すれば、乱暴な返事が返ってくる。そこで叱りつければ、たちまち槍が飛び出す。黙っていれば、シルバーは裏があると見抜くでしょう。そうなればおしまいです。いま頼りにできる男は、たった一人です。」
「それは誰だ?」と郷士が尋ねた。
「シルバーです」と船長は答えた。「あいつも、あなたやわたしと同じくらい、騒ぎを抑えたがっています。いまのところはただのいらだちだ。機会さえあれば、すぐに言いくるめて鎮めるでしょう。そこで、その機会を与えたいのです。午後は船員たちに上陸を許しましょう。全員が行けば、こちらは船を守って戦える。誰も行かなければ、船室に立てこもり、正しい者に神のご加護を願うまで。一部だけ行けば、よく覚えておいてください、シルバーは子羊のようにおとなしくさせて連れ戻してきます。」
そうすることに決まり、確実な味方全員に、弾を込めた拳銃が配られた。ハンター、ジョイス、レッドルースにも事情を打ち明けたが、三人は予想していたほど驚かず、むしろ頼もしい態度で受け止めた。それから船長は甲板へ上がり、船員たちに声をかけた。
「諸君」と船長は言った。「今日は暑く、みんな疲れて気も立っている。少し陸を歩いてきても悪くあるまい。ボートはまだ水に浮いている。ギグ[訳注:船に備えた細身のボート]を使ってよろしい。午後は、行きたい者は何人でも上陸していい。日没の半時間前に、大砲を一発撃って合図する。」
あの愚かな連中は、陸へ上がりさえすれば、宝につまずいてすねを打つとでも思ったに違いない。たちまち不機嫌が吹き飛び、遠い山までこだまする歓声を上げた。その声に、鳥たちはまた舞い上がり、停泊地の上を騒がしく飛び回った。
船長は賢い人なので、邪魔な場所にはいなかった。すぐに姿を消し、上陸する組をまとめる仕事をシルバーに任せた。そうして正解だったと思う。甲板にとどまっていたら、もう事情を知らないふりさえできなかっただろう。誰の目にも明らかだった。シルバーこそが船長で、その配下はひどく反抗的な連中だった。正直な船員もいた――それは間もなく確かめられることになる――が、よほど鈍感だったのだろう。いや、むしろ本当のところは、首謀者たちの振る舞いに影響され、誰もが程度の差こそあれ不満を抱いていたのだと思う。ただ、根は善良な者が何人かいて、それ以上のことには、誘われても脅されても加わらなかった。怠けて仕事をさぼることと、船を乗っ取り、罪のない人々を殺すこととは、まるで別なのだから。
それでも、ようやく上陸組が決まった。六人が船に残り、シルバーを含む残りの十三人がボートへ乗り込み始めた。
そのとき初めて、ぼくの頭に途方もない思いつきが浮かんだ。のちにみんなの命を救ううえで大いに役立つ、あの無謀な思いつきの最初の一つだった。シルバーが六人も残していく以上、ぼくらの仲間が船を奪い、その船で戦うのは無理だ。一方、残るのが六人だけなら、船室の仲間たちは、いまのところぼくの助けを必要としていない。そう考えるなり、陸へ行こうと思った。あっという間に船べりを滑り降り、いちばん近いボートの船首の腰掛けに身を丸めた。ほとんど同時に、ボートは船を離れた。
誰もぼくを気にとめず、船首のオールを漕ぐ男が「ジムか。頭を低くしてろよ」と言っただけだった。
ところが、もう一艘のボートにいたシルバーが鋭くこちらを見て、そこにいるのはぼくかと呼びかけた。その瞬間から、ぼくは自分のしたことを後悔し始めた。
二艘は浜辺を目指して競い合った。ぼくのボートは少し先に出たうえ、軽く、漕ぎ手も優っていたので、もう一艘をぐんぐん引き離した。船首が岸辺の木々に突っ込むと、ぼくは枝につかまって飛び出し、いちばん近い茂みへ駆け込んだ。そのときシルバーたちは、まだ百ヤードも後ろだった。
「ジム、ジム!」
叫び声が聞こえた。
だが、もちろん耳など貸さなかった。跳び、身をかがめ、枝を押し分け、もう走れなくなるまで、ただ前へ前へと走り続けた。
第十四章 最初の一撃
ロング・ジョンをまけたのがうれしくて、ぼくはだんだん楽しくなり、この見知らぬ土地を興味深く見回し始めた。柳やガマ、見たこともない奇妙な湿地の木々が生える沼地を抜け、いまは、起伏のある開けた砂地の縁に出ていた。長さは一マイルほどで、松が少しと、ねじくれた木がたくさん点々と生えていた。その木は枝ぶりこそオークに似ていたが、葉の色は柳のように淡かった。空き地の向こうには丘が一つそびえ、風変わりな岩だらけの二つの峰が、陽を浴びてくっきり光っていた。
ぼくは初めて、探検の喜びを味わった。島に住む者はなく、船の仲間は後ろに置いてきた。目の前にいるのは、ものを言わない獣や鳥だけだ。ぼくは木々の間をあちらこちらへ歩き回った。見知らぬ花が咲き、ところどころにヘビもいた。一匹は岩棚から頭を持ち上げ、こまの回る音に似た音を立てて威嚇した。それが命にかかわる敵で、その音こそ有名なガラガラヘビの音だとは、夢にも思わなかった。
やがて、さっきのオークに似た木が長く茂る場所へ出た。あとで聞いたところ、ライブオーク、つまり常緑のオークというのだそうだ。砂地を這うイバラのように低く伸び、枝は奇妙によじれ、葉は草葺き屋根のように密に重なっていた。茂みは砂の小丘の頂から下へ広がり、下るほど木の丈が高くなって、広い葦の沼地の縁に達していた。そこを、停泊地へ注ぐ二本の小川のうち、近いほうの一本が、しみ込むように流れていた。沼地からは強い日差しに蒸気が立ち上り、もやの向こうで望遠鏡山の輪郭が揺れていた。
不意に、ガマの茂みがざわつき始めた。野ガモが一羽、鳴いて飛び立ち、もう一羽が続いた。たちまち沼地一面の上空に、雲のような鳥の群れが鳴きながら旋回した。船の仲間の誰かが、沼の縁をこちらへ近づいているのだと、すぐに思った。その見当は外れなかった。ほどなく、遠く低い人の声が聞こえ、耳を澄ましていると、次第に大きく、近くなってきた。
すっかり怖くなったぼくは、いちばん近い常緑オークの下へ這い込み、ネズミのように息を潜めて、うずくまったまま聞き耳を立てた。
別の声が答えた。それから最初の声――もうシルバーだとわかった――がふたたび話し始め、ときおり相手の言葉を挟みながら、長々とよどみなく続いた。声の調子からすると、ひどく真剣に、ほとんど激しく言い合っているらしかったが、はっきり聞き取れる言葉はなかった。
やがて二人は足を止めたらしく、もしかすると腰を下ろしたのかもしれなかった。それ以上近づいてこなくなり、鳥たちも静まり、また沼地のそれぞれの場所へ降り始めたからだ。
そうなるとぼくは、自分の務めを怠けているような気がしてきた。こんな無法者たちと無鉄砲にも上陸してしまった以上、せめて相談を盗み聞きするくらいはしなくてはならない。低く茂る木々を隠れみのにして、できるかぎり近づくのが、ぼくの当然の役目だった。
声だけでなく、侵入者たちの頭上で、まだ警戒して飛び回る数羽の鳥の様子からも、二人のいる方角はかなり正確にわかった。
ぼくは四つん這いで、ゆっくり、だが着実に近づいていった。ついに葉の隙間へ頭を上げると、沼のそばの、木々に囲まれた小さな緑のくぼ地が、はっきり見えた。そこではロング・ジョン・シルバーと、もう一人の船員が向かい合って立ち、話していた。
二人には日がまともに照りつけていた。シルバーは帽子を足元へ放り出していた。髭のない色白の大きな顔が暑さで光り、訴えかけるように相手を見上げていた。
「なあ、相棒」と言っていた。「おれがおまえを砂金と同じほど大事に思ってるからこそだ。砂金と同じだぞ、間違いねえ! こんなにおまえを気に入ってなかったら、わざわざ忠告しに来ると思うか? もう決まっちまったことだ。おまえがどうこうできるもんじゃねえ。おまえの首を救いたくて話してるんだ。それを、あの荒くれどもの一人にでも知られたら、おれはどうなる、トム? なあ、どうなると思う?」
「シルバー」と相手は言った。その顔は真っ赤なだけでなく、声もカラスのようにかすれ、張り詰めた綱のように震えていた。「シルバー、おまえは年も食ってるし、まっとうな男だ。少なくとも、そう通ってる。金だって持ってる。貧乏な船乗りの大半にはないものだ。それに、勇気もあるはずだ。なのに、あんなくずどもの仲間に引きずり込まれるっていうのか? おまえともあろう男が! 神さまが見ていらっしゃる。おれなら、片手をなくすほうがましだ。自分の務めに背くくらいなら――」
そのとき突然、物音が言葉を遮った。ぼくは正直な船員を一人見つけた。まさにその同じ瞬間、もう一人の消息も届いたのだ。沼のはるか向こうで、突然、怒鳴り声のようなものが上がり、続いてもう一声、それから恐ろしい長い悲鳴が響いた。望遠鏡山の岩が幾度となくこだまを返し、沼の鳥がいっせいに羽音を立てて舞い上がって、空を暗くした。その死の叫びがいつまでも頭の中に鳴り響くうちに、あたりはふたたび静寂に支配され、舞い降りる鳥の羽音と遠い波のとどろきだけが、ものうい午後を乱していた。
トムはその音に、拍車を当てられた馬のように飛び上がった。だがシルバーは、まばたき一つしなかった。松葉杖に軽く身を預けたまま、いまにも飛びかかりそうなヘビのように、相手を見据えていた。
「ジョン!」と船員は手を差し出して言った。
「触るな!」とシルバーが叫んだ。鍛え抜かれた軽業師のような速さと確かさで、一ヤードも後ろへ跳んだように見えた。
「触られるのが嫌なら、それでもいいさ、ジョン・シルバー」と相手は言った。「おれを怖がるのは、やましいことがあるからだ。だが、頼むから教えてくれ。いまのは何だ?」
「あれか?」とシルバーは笑みを浮かべて答えた。だが、用心はますます深まり、大きな顔の中の目は針の先ほどに細くなって、ガラスのかけらのように光っていた。「あれか? ああ、たぶんアランだろうよ。」
その言葉に、気の毒なトムは、勇士のような怒りを爆発させた。
「アラン!」と叫んだ。「ならば、真の船乗りの魂に安らぎを! ジョン・シルバー、おまえとは長いこと仲間だったが、もう仲間じゃない。犬のように殺されるにしても、おれは務めを守って死ぬ。アランを殺したんだな? おれも殺せるものなら殺してみろ。おまえなんぞ、怖くはないぞ。」
そう言うと、この勇敢な男は料理番にくるりと背を向け、浜辺へ歩き出した。だが、遠くまでは行けない運命だった。ジョンはひと声叫ぶと木の枝をつかみ、脇の下から松葉杖を引き抜き、その不格好な飛び道具を空へ投げ放った。杖は先端から、すさまじい勢いで、トムの背中の真ん中、両肩の間に命中した。トムは両手を跳ね上げ、息の詰まるような声を漏らして倒れた。
その一撃でどれほど傷ついたのか、誰にもわからない。音からすれば、その場で背骨が折れたのかもしれなかった。だが、立ち直る暇など与えられなかった。脚も松葉杖もないのに、シルバーはサルのようにすばしこく、次の瞬間にはトムの上に乗りかかっていた。そして、抵抗できない体へ、二度、柄までナイフを突き立てた。隠れているぼくのところまで、刺すたびに荒く息をつく音が聞こえた。
気を失うとは本当はどういうことなのか、ぼくにはわからない。ただ、そのあとのしばらく、世界全体が渦巻く霧に包まれ、目の前から遠のいていったのは確かだ。シルバーも鳥も、望遠鏡山の高い頂も、ぐるぐる回り、逆さまになった。さまざまな鐘が鳴り、遠くの叫び声が耳の中で響いていた。
われに返ったとき、あの怪物はもう身なりを整え、脇に松葉杖を挟み、帽子をかぶっていた。すぐ前の草地にトムが動かず横たわっていたが、人殺しはそちらを少しも気にせず、草の束で血まみれのナイフをぬぐっていた。ほかは何も変わっていなかった。太陽はなお、蒸気の立つ沼地と高い山頂に容赦なく照りつけていた。ついさっき目の前で人殺しがあり、人間の命が残酷に断ち切られたのだとは、なかなか信じられなかった。
だが、ジョンはポケットから笛を取り出し、高低をつけて何度か吹いた。その音は熱い空気を遠くまで響いていった。もちろん、何の合図かはわからなかった。それでも恐怖がたちまちよみがえった。仲間がもっと来る。ぼくが見つかるかもしれない。正直な人をすでに二人も殺したのだ。トムとアランの次は、ぼくではないのか?
ぼくはすぐに身を引き抜き、できるかぎり速く、音を立てずに這い戻って、森の開けたほうへ向かった。そのあいだにも、老海賊と仲間たちが呼び交わす声が聞こえ、その危険な声に、ぼくの足には翼が生えた。茂みを抜けるなり、これまでにないほどの勢いで走った。人殺したちから離れられさえすれば、方向などほとんど構わなかった。走るほどに恐怖は膨らみ、ついには気が狂いそうになった。
これほど絶望的な境遇の者が、ほかにいるだろうか。大砲の合図が鳴っても、どうしてボートへ戻れるだろう。あそこには、まだ犯した罪の熱も冷めていない悪魔どもがいる。最初にぼくを見つけた男が、シギの首でもひねるように殺すのではないか。ぼくがいないこと自体が、怖がっている証拠、つまり、命取りになる秘密を知った証拠になりはしないか。もうおしまいだと思った。さようなら、ヒスパニオラ号。さようなら、郷士、博士、船長。ぼくに残されているのは、飢えて死ぬか、反逆者たちの手で殺されるか、そのどちらかしかなかった。
そんなことを考えながらも、ぼくはずっと走り続けていた。気づかぬうちに、二つの峰のある小山の麓近くへ来ていた。そこでは野生のオークがもっとまばらに生え、姿も大きさも、いかにも森の木らしくなっていた。その間に、五十フィートほどのものや七十フィート近い松が、ちらほら混じっていた。空気のにおいも、沼のそばよりずっと清々しかった。
ところがここで、新たな恐怖に心臓を激しく打たれ、ぼくは立ちすくんだ。

第十五章 島の男
このあたりは急で石の多い斜面になっていた。その山腹から砂利がざっと崩れ、木々の間を跳ねながら、がらがらと落ちてきた。反射的にそちらへ目を向けると、何かの姿がものすごい速さで松の幹の陰へ跳び込んだ。それがクマなのか、人間なのか、サルなのか、まるでわからなかった。黒っぽく、毛むくじゃらに見えた。それだけしかわからなかった。だが、この新たな化け物に出くわした恐ろしさに、ぼくは足が止まってしまった。
今や両側から行く手を断たれたようだった。後ろには人殺し、前にはこの得体の知れない生き物。すると、知らない危険よりも、知っている危険のほうがましに思えてきた。この森の生き物に比べれば、シルバーさえ、まだ怖くなかった。ぼくは向きを変え、肩越しに鋭く後ろを警戒しながら、ボートのほうへ引き返し始めた。
するとたちまち、その姿がまた現れ、大きく回り込んで、ぼくの行く手をふさごうとした。ぼくは疲れていたが、たとえ朝起きたばかりの元気があっても、こんな相手と速さを競うのは無駄だとわかった。その生き物は、木から木へシカのように飛び移り、人間のように二本脚で走った。だが、体をほとんど二つ折りにして走る姿は、これまで見たどんな人間とも違っていた。それでも、人間なのだ! そのことだけは、もう疑いようがなかった。
人食い人種の話を思い出した。もう少しで助けを呼ぶところだった。だが、どれほど野生じみていても、人間だとわかっただけでいくらか安心し、そのぶんシルバーへの恐怖が戻ってきた。そこでぼくは立ち止まり、逃げ道を考えた。そうしているうちに、拳銃のことが、はっと頭に浮かんだ。丸腰ではないと気づくと、また勇気が湧いた。ぼくは決然とこの島の男に向き直り、足早に近づいていった。
男はもう別の木の幹に隠れていたが、ぼくを注意深く見ていたに違いない。ぼくがそちらへ動き出すと、姿を現して一歩近づいた。それからためらい、下がり、また前へ出た。そして最後には、驚きあきれるぼくの前で、ひざまずき、両手を合わせて差し伸べ、何かを乞うような仕草をした。
それを見て、ぼくはまた立ち止まった。
「あなたは誰?」
ぼくは尋ねた。
「ベン・ガンだ」と男は答えた。その声は錆びた錠前のように、かすれてぎこちなかった。「哀れなベン・ガンだよ。この三年、人間らしい人間とは口をきいちゃいない。」
近くで見ると、男はぼくと同じ白人で、顔立ちはむしろ感じがよかった。肌の出たところはどこも日に焼け、唇まで黒くなっていた。その黒い顔の中で、明るい色の目がひどく目立った。ぼくが見たり想像したりした、どんな乞食よりもぼろぼろだった。古い帆布と船乗り服の切れ端をまとい、そのとんでもない継ぎはぎを、真鍮のボタン、木の小片、タールのついた帆縛り綱の輪など、さまざまなちぐはぐな留め具でつないでいた。腰には真鍮のバックルのついた古い革帯を巻いていたが、身につけたものでまともなのは、それだけだった。
「三年も!」
ぼくは叫んだ。「難破したの?」
「いや、相棒」と男は言った。「置き去りにされたんだ。」
その言葉は聞いたことがあった。海賊の間では珍しくない、恐ろしい罰だった。罪を犯した者を、わずかな火薬と弾だけ持たせて、遠い無人島に降ろし、そのまま置き去りにするのだ。
「三年前に置き去りにされてな」と男は続けた。「それからずっと、ヤギや木の実や牡蠣で暮らしてきた。人間、どこにいたって、なんとか自分で生きていけるもんさ。だがな、相棒、まともな人間の食い物が恋しくてたまらん。ひょっとして、チーズのかけらでも持っちゃいないか? ないか。そうか。長い夜に何度チーズの夢を見たことか。たいてい焼いたやつでな。だが、目が覚めると、やっぱりここなんだ。」
「船へ戻れたら」とぼくは言った。「何ストーン[訳注:一ストーンは十四ポンド]でもチーズをあげるよ。」
そのあいだも男は、ぼくの上着の布を触ったり、手をなでたり、靴を眺めたりしていた。話の合間ごとに、同じ人間がそばにいることを、子どものように喜んでいたのだ。だが、ぼくの最後の言葉を聞くと、はっとしたような、抜け目のない顔になった。
「船へ戻れたら、だって?」と繰り返した。「そりゃまた、誰が邪魔するんだ?」
「あなたじゃないことは、わかってるよ」とぼくは答えた。
「そのとおりだ!」と男は叫んだ。「で、おまえは――名前は何ていうんだ、相棒?」
「ジム」と教えた。
「ジム、ジム」と男は、すっかりうれしそうに言った。「いいか、ジム。おれは、おまえに聞かせるのも恥ずかしいような、荒れた暮らしをしてきた。たとえばだ、おれのこの姿を見て、信心深い母親に育てられたなんて思うか?」と尋ねた。
「ううん、特には思わないな」とぼくは答えた。
「だろうな」と男は言った。「だが、そうだったんだ。そりゃあ信心深い母親だった。おれも礼儀正しい、信心深い子で、教理問答だって、言葉の切れ目がわからんくらい、すらすら唱えられた。それがこのざまだ、ジム。始まりは、神聖な墓石の上で銅貨投げの賭けをしたことだった! そこから始まって、どんどん悪くなった。母親はそうなると言ってた。何もかも見通してたんだ、あの信心深い人は。だが、おれをここへ置いたのは神さまの摂理だ。このひとりぼっちの島で、よくよく考えた。それでまた信心に戻ったんだ。もうラム酒なんぞ、めったに口にせん。もちろん、最初の機会に祝いの指ぬき一杯くらいなら別だがな。必ずまっとうになる。どうすればいいかもわかってる。それからな、ジム」――男は周囲を見回し、ささやき声になった――「おれは金持ちなんだ。」
この気の毒な男は、ひとり暮らしで気がおかしくなったのだと、ぼくは確信した。その思いが顔に出たのだろう。男はむきになって繰り返した。
「金持ちだ! 金持ちだって言ってるんだ! いいか、ジム、おまえを一人前にしてやるぞ。ああ、ジム、最初におれを見つけたのが自分でよかったと、運のよさに感謝することになる!」
ところが、急にその顔へ暗い影が差した。男はぼくの手を強く握り、目の前に人差し指を突きつけた。
「なあ、ジム、本当のことを言え。あれはフリントの船じゃないな?」と尋ねた。
そのとき、ぼくにうまい考えが浮かんだ。味方が見つかったのではないかと思い、すぐに答えた。
「フリントの船じゃないよ。フリントは死んだ。でも、本当のことを言ってほしいなら言うけど、船にはフリントの手下だった連中が何人か乗ってる。ぼくらには不運なことにね。」
「片――脚の――男じゃないだろうな?」と男は息を詰めて言った。
「シルバー?」
ぼくは尋ねた。
「ああ、シルバー!」と男は言った。「そういう名前だった。」
「料理番だよ。それに首謀者でもある。」
男はまだぼくの手首を握っていたが、それを聞くと、ぎゅっとねじるほど力を込めた。「ロング・ジョンに遣わされてきたんなら」と言った。「おれは豚肉も同然だ。そいつはわかってる。だが、おまえだって、どうなると思う?」
ぼくはすぐに決心し、答える代わりに、今回の航海のことと、ぼくらの苦境を残らず話した。男は食い入るように聞き、話し終えると、ぼくの頭をぽんぽんとたたいた。
「おまえはいい子だ、ジム」と言った。「みんな、すっかりがんじがらめってわけだな? よし、ベン・ガンを信じろ。ベン・ガンなら何とかしてやれる。ところで、その郷士さんは、助けてもらったら気前よく礼をしてくれそうか? おまえの言うとおり、がんじがらめなんだろう?」
ぼくは、郷士ほど気前のよい人はいないと答えた。
「ああ、だがな」とベン・ガンは答えた。「門番の仕事をくれて、お仕着せを着せてくれるとか、そういう意味じゃない。それがおれの目当てじゃないんだ、ジム。つまりだ、ほとんどもう自分のものになってる金の中から、たとえば千ポンドほど、出してくれそうかってことだ。」
「きっとくれるよ」とぼくは言った。「もともと、みんなに分け前をくれるはずだったんだから。」
「それに、故郷まで乗せてくれるか?」と、ひどく抜け目のない顔で付け加えた。
「もちろん!」とぼくは叫んだ。「郷士は立派な紳士だもの。それに、あの連中を片づけたら、帰りの船を動かすのに、あなたにも手伝ってもらわなきゃ。」
「ああ」と男は言った。「そりゃそうだな。」
それで、ひどく安心したようだった。
「よし、話してやろう」と続けた。「ここまでは話す。それ以上は話さん。フリントが宝を埋めたとき、おれもあいつの船にいた。上陸したのは、フリントと六人――たくましい船乗り六人だ。連中は一週間近く陸にいて、おれたちは古いセイウチ号で沖を行ったり来たりしていた。ある日、合図が上がり、フリントが一人きりで小舟に乗って戻ってきた。頭には青い布を巻いていた。ちょうど朝日が昇るところで、やつの顔は死人みたいに真っ白だった。だが、とにかく戻ってきたのはやつだけで、六人はみんな死んで、埋められていた。どうやったのか、船の誰にもわからなかった。ともかく、一対六の戦いで、人殺しで、あっという間の死だったんだ。ビリー・ボーンズが航海士、ロング・ジョンが操舵長だった。二人が宝はどこかと尋ねた。すると、フリントはこう言った。『知りたけりゃ、陸へ上がって、そこにいればいい。だが、この船はもっと稼ぎに出るぞ、畜生!』ってな。そう言ったんだ。
「それで、三年前、おれは別の船に乗っていて、この島を見つけた。『みんな』とおれは言った。『ここにフリントの宝がある。上陸して探そうじゃないか』。船長はいい顔をしなかったが、仲間はみんな賛成して上陸した。十二日間も探したんだ。そのあいだ、連中のおれへの悪口は日に日にひどくなった。そしてある朝、全員が船へ戻った。『ベンジャミン・ガン、おまえには』と連中は言った。『マスケット銃を一丁、シャベルを一本、つるはしを一本、置いていってやる。ここに残って、ひとりでフリントの金を探すがいい』ってな。
「そうしてな、ジム、おれはここで三年暮らした。あの日から今日まで、まともな人間の食い物はひと口も食っちゃいない。だが、よく見ろ。おれを見ろ。おれがただの下っ端船員に見えるか? 見えない、とおまえは言う。そう、おれもただの下っ端じゃなかったんだ、と言うわけだ。」
そう言って、男は片目をつぶり、ぼくを強くつねった。
「いまの言葉を、郷士さんに伝えるんだ、ジム」と続けた。「あの男は、ただの下っ端じゃなかった。それを言うんだぞ。三年間、昼も夜も、晴れでも雨でも、この島にいた。ときには祈りの言葉を思い出したかもしれない、と言うんだ。ときには、まだ生きているなら老いた母親を思ったかもしれない、ともな。だが、ガンの時間の大半は――ここを言うんだぞ――時間の大半は、別のことに使われた。そう言って、おれがするみたいに、ちょいとつねってやれ。」
そして男は、いかにも秘密を分かち合うような顔で、またぼくをつねった。
「それから」と続けた。「こう言うんだ。ガンはいい男です、と。生まれながらの紳士を、成り行き任せの海賊紳士なんかより、ずっと――ずっと、だぞ――信用しています、と。自分も海賊だったから、よく知ってるんだとな。」
「うん」とぼくは言った。「話の意味は、ひと言もわからないよ。でも、それはそれとして、どうやって船へ戻ればいいんだろう?」
「ああ」と男は言った。「それが難しいところだな。まあ、おれがこの両手で作った舟がある。白い岩の下に置いてあるんだ。どうにもならなくなったら、暗くなってから、それでやってみよう。おい!」と突然叫んだ。「いまのは何だ?」
そのとき、日没まではまだ一、二時間あったのに、大砲が雷のようにとどろき、島じゅうのこだまが目を覚まして吠え返したのだ。
「戦いが始まったんだ!」
ぼくは叫んだ。「ついてきて!」
恐怖をすっかり忘れ、ぼくは停泊地へ向かって走り出した。すぐそばを、ヤギ皮をまとった置き去りの男が、軽々と小走りについてきた。
「左だ、左」と男は言った。「左へ寄れ、相棒のジム! 木の下を行け! あそこで初めてヤギを仕留めたんだ。いまはもう、このへんには降りてこない。ベンジャミン・ガンを怖がって、山のてっぺんに上がっちまった。ああ、あそこが『ぼつち』だ」――墓地と言いたかったのだろう。「盛り土が見えるか? たまにここへ来て祈ったもんだ。そろそろ日曜日かなと思うとな。礼拝堂とはいかんが、なんだか厳かな気がした。それに、おまえも言うだろうが、ベン・ガンは人手不足だった。従軍牧師もいなけりゃ、聖書も旗もなかったんだからな。」
ぼくが走るあいだ、男は返事を求めもせず、返事ももらわずに、こんなふうにしゃべり続けた。
大砲のあと、かなり間を置いて、小銃の一斉射撃が聞こえた。
また少し間があった。それから、前方四分の一マイルもない森の上に、ユニオンジャックがひるがえるのが見えた。
第四部 柵の砦
第十六章 博士が語り継ぐ――船を捨てるまで
ヒスパニオラ号から二艘のボートが岸へ向かったのは、一時半ごろ――船の言い方なら三点鐘だった。船長と郷士とわたしは、船室で相談していた。ひと息でも風があれば、船に残った六人の反逆者を襲い、錨綱を外して、沖へ逃れるつもりだった。だが風はなく、そのうえ、ハンターが下りてきて、ジム・ホーキンズがボートに潜り込み、ほかの者と上陸したと知らせた。これで、われわれはすっかり手も足も出なくなった。
ジム・ホーキンズを疑うなど、誰の頭にも浮かばなかった。だが、その身の安全が心配だった。あの連中の気の立ちようでは、少年と再会できるかどうかは五分五分と思われた。われわれは甲板へ駆け上がった。板の継ぎ目では瀝青がぶくぶく泡立ち、あたりのひどい悪臭に吐き気がした。熱病や赤痢ににおいがあるなら、あの忌まわしい停泊地のにおいこそ、それだった。六人の悪党は船首楼の帆の下に座り、不平をこぼしていた。岸では、川の流れ込むすぐそばにギグがつながれ、それぞれ一人ずつ男が座っているのが見えた。一人は「リリバレロ」を口笛で吹いていた。
待つのは神経にこたえた。そこで、ハンターとわたしが小ボートで上陸し、様子を探ることになった。
ギグは右寄りに進んでいたが、ハンターとわたしは、海図にある柵を目指してまっすぐ漕いだ。ボートの番に残された二人は、われわれを見て慌てたようだった。「リリバレロ」が止まり、どうしたものかと二人で相談しているのが見えた。シルバーへ知らせに行っていたら、成り行きはまるで違ったかもしれない。だが、おそらく命令を受けていたのだろう。その場におとなしくとどまり、また「リリバレロ」を吹くことにしたらしい。
海岸が少し湾曲していたので、それがわれわれと連中の間に入るように舵を取った。そのため、上陸する前にギグは見えなくなった。わたしは飛び降り、危険を冒さぬかぎりの速さで、走るように進んだ。暑さよけに大きな絹のハンカチを帽子の下へ入れ、用心のため、すぐ撃てる拳銃を二丁持っていた。
百ヤードも行かないうちに、柵へ行き当たった。
そこはこうなっていた。小丘の頂から、澄んだ泉が湧いていた。その泉を囲むように頑丈な丸太小屋が建てられ、詰めれば四十人ほど入りそうで、四方にマスケット銃の銃眼があった。周囲は広く切り開かれ、その外を、高さ六フィートの柵が囲んでいた。門も隙間もなく、壊すには時間と労力がかかるほど丈夫だったが、木と木の間は透いていて、攻め手の隠れ場所にはならなかった。丸太小屋の側が、あらゆる点で有利だった。中で安全に構え、ヤマウズラでも撃つように敵を撃てる。必要なのは、怠りない見張りと食料だけだ。完全な不意打ちさえ食わなければ、一個連隊が相手でも守り抜けそうだった。
ことに気に入ったのは泉だった。ヒスパニオラ号の船室は守るにはよい場所で、武器も弾薬も、食べ物も上等なワインもたっぷりあった。だが、一つだけ見落としていた。水がなかったのだ。そのことを考えていると、死に瀕した男の叫びが、島を渡って響いてきた。わたしはむごい死に慣れていないわけではない。カンバーランド公殿下の軍に従い、フォントノワの戦いでは自分も負傷した。だが、そのときは確かに脈が乱れた。「ジム・ホーキンズがやられた」と、真っ先に思った。
従軍経験は役に立つ。だが、医者であることは、もっと役に立つ。われわれの仕事には、ぐずぐずしている暇などない。そこで、わたしは即座に決心し、一刻も無駄にせず岸へ戻って、小ボートへ飛び乗った。
幸い、ハンターは腕のよい漕ぎ手だった。二人で水しぶきを飛ばして漕ぎ、ほどなくボートは船べりにつき、わたしはスクーナー船へ上がった。
当然ながら、全員が動揺していた。郷士は紙のように青ざめて座り、自分のせいでわれわれを危険に引き込んだと考えていた。根は実に善良な人なのだ。そして船首楼の六人のうち一人も、それに劣らず参っていた。
「あの男は」とスモレット船長は、そちらへ顎をしゃくって言った。「こういうことに慣れておらんのです。悲鳴を聞いて、もう少しで気絶するところでしたよ、博士。もうひと押しすれば、こちらへ来るでしょう。」
わたしは船長に計画を話し、二人で実行の細部を決めた。
老レッドルースを、船室と船首楼の間の通路に置いた。弾を込めたマスケット銃を三、四丁と、身を守るためのマットレスを持たせた。ハンターはボートを船尾の窓の下へ回し、ジョイスとわたしは、火薬、缶入りの食料、マスケット銃、乾パンの袋、塩漬け豚肉の小樽、コニャックの樽、それに何より大切なわたしの薬箱を積み込んだ。
そのあいだ、郷士と船長は甲板に残り、船長が、船にいる連中の頭格である艇長に声をかけた。
「ハンズ」と船長は言った。「ここにはわれわれ二人がいて、それぞれ拳銃を二丁ずつ持っている。おまえたち六人の誰かが、どんな合図でも出したら、その男の命はないぞ。」
連中は大いに面食らった。少し相談したあと、全員が船首の昇降口から下へ転がり込んだ。背後から襲うつもりだったに違いない。だが、横木のある通路でレッドルースが待ち構えているのを見ると、すぐさま回れ右をし、一人の頭がまた甲板に現れた。
「引っ込め、犬め!」と船長が怒鳴った。
頭はすぐ引っ込み、それからしばらく、この臆病な六人の船員は鳴りを潜めた。
そのころには、手当たり次第に積み込んだ小ボートは、危険のないぎりぎりまでいっぱいになっていた。ジョイスとわたしは船尾の窓から降り、オールの許すかぎりの速さで、ふたたび岸へ向かった。
この二度目の航行で、岸の見張りは本気で騒ぎ出した。「リリバレロ」がまた止まり、小さな岬の陰に隠れる直前、片方の男が岸へ飛び降り、姿を消した。計画を変えて連中のボートを壊そうかとも思った。だが、シルバーたちが近くにいるかもしれず、欲張ったためにすべてを失う恐れがあった。
すぐに先ほどと同じ場所へ着き、砦へ物資を運び始めた。最初は三人とも重い荷を担いで行き、柵の向こうへ放り込んだ。それからジョイスを見張りに残した。一人きりとはいえ、マスケット銃は六丁もある。ハンターとわたしはボートへ戻り、また荷を担いだ。息つく暇もなくそれを繰り返し、全部運び終えると、二人の使用人は丸太小屋の守りについた。わたしは全力で櫓を操り、ヒスパニオラ号へ戻った。
二度目の積荷まで運ぼうとしたのは、実際以上に無謀に聞こえるかもしれない。確かに人数では敵が勝っていた。だが、武器ではこちらが勝っていた。陸の連中は一丁もマスケット銃を持っていなかった。拳銃の射程に入る前に、少なくとも六人は片づけられると、われわれは見込んでいた。
郷士は船尾の窓で待っていた。先ほどの弱気は、すっかり消えていた。艇首の綱をつかんで結び、われわれは文字どおり命がけで積み込みを始めた。積荷は豚肉、火薬、乾パン。それに郷士とわたしとレッドルースと船長のため、マスケット銃と舶刀を一つずつだけ積んだ。残りの武器と火薬は、二ファゾム半[訳注:一ファゾムは六フィート]の海へ投げ捨てた。きれいな砂底で鋼が日の光を受け、はるか下に輝くのが見えた。
そのころには引き潮が始まり、船は錨を中心に向きを変えつつあった。二艘のギグのいる方向から、かすかに呼び交わす声が聞こえた。ジョイスとハンターはずっと東にいるので、その点では安心したが、こちらは出発を急がねばならなかった。
レッドルースは通路の持ち場から退き、ボートへ降りた。それから、スモレット船長が乗りやすいように、ボートを船尾の張り出しの下へ回した。
「さて、諸君」と船長は言った。「聞こえるか?」
船首楼から返事はなかった。
「エイブラハム・グレイ、おまえだ。おまえに話している。」
それでも返事はなかった。
「グレイ」とスモレット船長は、少し声を高めた。「わたしはこの船を離れる。船長についてこいと命令する。おまえが根は善良な男だということは知っている。おそらく、おまえたちの誰も、見せかけほど悪くはないのだろう。いま時計を手に持っている。三十秒やる。そのあいだに来い。」
しばらく沈黙があった。
「さあ、しっかりしろ」と船長は続けた。「いつまでも進退に迷うな。こうしている一秒ごとに、わたしも、この立派な方々も、命を危険にさらしているんだ。」
突然、もみ合う音と殴り合う音がした。次いでエイブラハム・グレイが飛び出してきた。頬にはナイフの切り傷があり、笛に呼ばれた犬のように船長へ駆け寄った。
「ご一緒します、船長」と言った。
次の瞬間、グレイと船長はわれわれのボートへ降り、岸を目指して漕ぎ出した。
船からは無事に離れた。だが、まだ岸の砦へ着いたわけではなかった。
第十七章 博士が語り継ぐ――小ボート最後の航行
この五度目の航行は、それまでとはまるで違っていた。第一に、われわれの乗った薬壺ほどの小さなボートは、ひどい積み過ぎだった。大人が五人、そのうちトレローニー、レッドルース、船長の三人は六フィートを超す長身で、それだけでも定員以上だった。そこへ火薬、豚肉、乾パンの袋が加わっていた。船尾の縁はほとんど水面に接していた。何度か水が入り、百ヤードも進まぬうちに、わたしの半ズボンも上着の裾もびしょ濡れになった。
船長の指図で重心を調整すると、ボートは少し水平になった。それでも、息をするのさえ怖いほどだった。
第二に、引き潮が本格的になっていた。波紋を立てる強い流れが泊地を西へ走り、そこから南へ、朝に入ってきた海峡を通って外海へ流れ出していた。小さなさざ波さえ、この積み過ぎの舟には危険だった。だが、いちばん困ったのは、流されて正しい針路を外れ、岬の向こうの上陸地点から遠ざかることだった。流れに任せれば、いつ海賊が現れるかわからないギグのそばへ着いてしまう。
「砦のほうへ船首を向けていられません」と、わたしは船長に言った。わたしが舵を取り、まだ疲れていない船長とレッドルースが漕いでいた。「潮に押し流されるんです。もう少し強く漕げませんか?」
「これ以上やれば、水をかぶります」と船長は答えた。「船首を上流へ向けてください。前へ進めるようになるまでです。」
試してみたが、潮はなお西へ押し流し、とうとう船首を真東、つまり行きたい方向とほぼ直角へ向けなければならなかった。
「これではいつまでたっても岸へ着けません」とわたしは言った。
「進める針路がそれしかないなら、そうするまでです」と船長は答えた。「上流へ向かっておかねばなりません。いいですか」と続けた。「いったん上陸地点の風下へ落とされたら、ギグに乗り込まれる危険ばかりか、どこへ着くかもわからなくなる。こうして進めば、やがて流れは弱まる。そうなれば岸沿いに戻れます。」
「もう流れは弱まってますよ」と、船首の腰掛けにいたグレイが言った。「少し向きを戻しても大丈夫です。」
「ありがとう」とわたしは、何事もなかったように答えた。われわれは皆、黙って彼を仲間の一人として扱うことに決めていたのだ。
突然、船長がまた口を開いた。その声は、少し変わったように聞こえた。
「大砲だ!」と言った。
「それは考えました」とわたしは答えた。砦を砲撃されることを心配しているのだと思い込んでいた。「あれを陸へ運べはしません。たとえ運べても、森の中を引いていくのは無理です。」
「後ろを見てください、博士」と船長は答えた。
われわれは長身の九ポンド砲をすっかり忘れていた。恐ろしいことに、五人の悪党がその周囲で動き回り、航海中にかぶせていた丈夫な防水布、連中のいう「上着」を外していた。そればかりか、砲弾と大砲用の火薬を置いてきたことも、その瞬間に思い出した。斧でひとたたきすれば、船の悪党たちはそれを全部手に入れられる。
「イスラエルはフリントの砲手でした」とグレイがかすれ声で言った。
われわれは危険を承知で、船首を上陸地点へまっすぐ向けた。すでに強い流れからかなり離れていたので、やむをえずゆっくり漕いでいても舵は利き、目標へ向かって進めた。だが、何より悪いことに、この針路ではヒスパニオラ号に船尾ではなく横腹をさらすことになり、納屋の扉ほど大きな標的を差し出してしまった。
酒で顔を赤くしたイスラエル・ハンズが、甲板へどんと砲弾を置くのが見え、その音まで聞こえた。
「いちばんの射手は?」と船長が尋ねた。
「断然、トレローニーさんです」とわたしは答えた。
「トレローニーさん、あの連中を一人、撃ち落としていただけますか。できればハンズを」と船長は言った。
トレローニーは鋼のように冷静だった。銃の口火薬を確かめた。
「さあ」と船長は叫んだ。「銃は慎重に扱ってください。さもないと舟が沈みます。全員、照準をつけるとき、釣り合いを取る用意を。」
郷士が銃を上げ、漕ぐ手が止まり、われわれは反対側へ体を傾けて釣り合いを取った。すべて実にうまくいき、一滴の水も入らなかった。

そのころには、連中は旋回台の上で大砲をこちらへ向けていた
そのころには、連中は旋回台の上で大砲をこちらへ向けていた。込め棒を持って砲口にいたハンズが、いちばん身をさらしていた。だが、運はなかった。トレローニーが撃つちょうどそのとき、ハンズがかがみ、弾は頭上をうなって通り過ぎて、ほかの四人のうち一人を倒した。
その男の悲鳴に、船上の仲間だけでなく、岸からも多くの声が応えた。そちらを見ると、ほかの海賊たちが木々の間から群れをなして現れ、ボートへ飛び乗るのが見えた。
「ギグが来ます」とわたしは言った。
「では、力いっぱい漕げ」と船長は言った。「もう水をかぶろうと構わん。陸へ着けなければ、すべておしまいだ。」
「乗り込んでいるのは一艘だけです」とわたしは付け加えた。「もう一艘の連中は、岸を回って行く手をふさぐつもりでしょう。」
「暑い中を走ることになりますな」と船長は答えた。「船乗りは陸では勝手が違う。わたしが怖いのは連中じゃなく、砲弾です。絨毯の上で球転がしをするようなものだ。ご婦人のお付きの女中でも外しません。郷士さん、火縄が見えたら知らせてください。そのときオールで制動をかけます。」
そのあいだも、積み過ぎの舟にしてはかなりの速さで進み、水も少ししか入っていなかった。もう岸は近かった。引き潮で木々の下に細い砂浜が現れており、あと三、四十回漕げば乗り上げられる。ギグの心配はもうなかった。小さな岬がすでにそれを隠していた。あれほど無情にわれわれを遅らせた引き潮が、今度は埋め合わせをするように、襲撃者を遅らせていた。残る危険は、大砲だけだった。
「できることなら」と船長は言った。「止まって、もう一人撃ち落としたいところだ。」
だが、連中は何があっても発砲を遅らせるつもりはないらしかった。倒れた仲間には目もくれなかった。その男はまだ生きていて、這って逃れようとしているのが見えた。
「来るぞ!」と郷士が叫んだ。
「止めろ!」と船長が、こだまのように即座に叫んだ。
船長とレッドルースは、力いっぱいオールを逆に動かした。その勢いで、船尾がまるごと水の下へ沈んだ。同じ瞬間、砲声がとどろいた。これがジムの聞いた最初の一発だった。郷士の銃声は、彼のところまで届かなかったのだ。砲弾がいつ通ったのか、われわれの誰にも正確にはわからない。おそらく頭上を飛び、その風圧も災難の一因となったのだろう。
とにかく、ボートは三フィートの浅瀬で、船尾からごく静かに沈んだ。船長とわたしは向かい合ったまま足で立った。残りの三人は頭から水へ突っ込み、ずぶ濡れになって、ぶくぶく泡を吐きながら浮かび上がった。
そこまでは、大きな損害ではなかった。命を落とした者はなく、歩いて安全に岸へ行けた。だが、物資はすべて水の底だった。さらに悪いことに、五丁の銃のうち、使える状態で残ったのは二丁だけだった。わたしはとっさに膝の銃をつかみ、頭上へ差し上げていた。船長は帯で肩に掛け、賢明にも発火装置を上にしていた。ほかの三丁は舟と一緒に沈んだ。心配はそれだけではなかった。岸の森では、すでに人声が近づいていた。戦力の半ばを失った状態で砦への道を断たれる危険に加え、ハンターとジョイスが六人ほどに襲われた場合、落ち着いて持ちこたえられるかどうかも気がかりだった。ハンターが頼りになるのはわかっていた。ジョイスのほうは心もとない。身の回りの世話をし、服にブラシをかけてくれる従僕としては感じがよく礼儀正しいが、戦士向きの男ではなかった。
そうしたことを胸に抱え、われわれは哀れな小ボートと、火薬や食料のほぼ半分を置き去りにして、できるかぎり速く水を歩き、岸へ上がった。
第十八章 博士が語り継ぐ――初日の戦いの終わり
われわれと砦の間に残る細長い森を、全速力で横切った。一歩進むごとに、海賊たちの声が近づいた。やがて、走る足音や、茂みを押し破る枝の折れる音まで聞こえてきた。
本格的なひと戦は避けられないと見て、わたしは口火薬を確かめた。
「船長」とわたしは言った。「トレローニーは百発百中です。あなたの銃を渡してください。あの人の銃は使えません。」
二人は銃を交換した。騒ぎの始まりからずっとそうだったように、トレローニーは無言で冷静なまま、ひと足立ち止まり、銃が使えることを確かめた。同時にわたしは、グレイが丸腰なのに気づき、自分の舶刀を渡した。グレイは手に唾をつけ、眉を寄せ、刃でひゅっと空を切った。その姿に、みんなが勇気づけられた。体の動き一つ一つから、新しい仲間が十分に役立つ男だとわかった。
さらに四十歩ほど進むと森の端へ出て、前方に柵が見えた。われわれが南側のほぼ中央へ達したのと、ほとんど同時に、水夫長ジョブ・アンダーソンを先頭とする七人の反逆者が、大声を上げながら南西の角へ現れた。
連中は不意を突かれたように立ち止まった。その立ち直る前に、郷士とわたしだけでなく、小屋からハンターとジョイスも撃つ暇があった。
四発はまばらな一斉射撃となったが、効き目は十分だった。敵の一人が倒れ、残りはためらわず向きを変え、木々の中へ飛び込んだ。
弾を込め直してから、われわれは柵の外側を歩き、倒れた敵を確かめに行った。心臓を撃ち抜かれ、完全に死んでいた。
うまくいったと喜び始めた、まさにその瞬間、茂みで拳銃が鳴った。弾がわたしの耳元をうなって通り、哀れなトム・レッドルースがよろめいて、地面にばったり倒れた。郷士もわたしも撃ち返したが、狙うものは見えず、おそらく火薬を無駄にしただけだった。それからまた弾を込め、トムのほうへ向かった。
船長とグレイがすでに傷を調べていた。わたしには、ひと目で助からないとわかった。
すぐに撃ち返したため、反逆者たちはまた散ったのだろう。それ以上邪魔されることなく、老猟場番を柵越しに運べた。血を流し、うめく彼を、われわれは丸太小屋へ担ぎ込んだ。
気の毒な老人だった。騒ぎが始まってから、死を迎えるため小屋に横たえられた今まで、驚きも不満も恐怖も、ましてあきらめの言葉も、ひと言さえ口にしなかった。通路ではマットレスの陰に勇士のように構え、どんな命令にも黙々と、粘り強く、忠実に従っていた。仲間の誰より二十歳も年上だった。そして今、この無愛想で老いた、役に立つ使用人が、死なねばならないのだ。
郷士はそのそばにひざまずき、手に口づけして、子どものように泣いた。
「先生、もうお迎えですかね?」とレッドルースが尋ねた。
「トム」とわたしは言った。「君は故郷へ帰るんだよ。」
「その前に一発、あいつらに食らわせてやりたかった」と答えた。
「トム」と郷士は言った。「わたしを許すと言ってくれないか?」
「旦那さまをわたしが許すなんて、失礼にはなりませんかね?」という返事だった。「まあ、そういうことでしたら。アーメン!」
少し黙ってから、誰か祈りを読んでくれないかと言った。「そういう習わしですから」と、申し訳なさそうに付け加えた。そして間もなく、もうひと言も口にせず、息を引き取った。
そのあいだ船長は、胸元やポケットが妙に膨らんでいると思っていたが、そこからさまざまな品を大量に取り出していた。イギリス国旗、聖書、かなり丈夫な綱の束、ペン、インク、航海日誌、何ポンドものたばこ。船長は柵の中に、切り倒して枝を払った長いモミの木を見つけた。ハンターに手伝わせ、小屋の丸太が交差して角を作っている場所へ、それを立てた。それから屋根へ登り、自分の手で旗を綱に結び、掲げた。
それで大いに気が楽になったらしかった。小屋へ戻ると、ほかには何もないかのように物資を数え始めた。だが、そのあいだもトムの最期を気にかけていた。すべて終わると、もう一枚の旗を持って近づき、うやうやしく遺体に掛けた。
「あまりお嘆きになりませんように」と、郷士の手を握って言った。「あの男は安らかです。船長と船主への務めを果たして撃たれた船乗りなら、心配はいりません。神学にはかなわんかもしれませんが、それが事実です。」
それから、わたしを脇へ呼んだ。
「リヴジー博士」と言った。「あなたと郷士は、救援の船が何週間で来るとお考えですか?」
わたしは、週ではなく月の話だと答えた。八月末までに戻らなければ、ブランドリーが捜索の船を出すことになっており、それより早くも遅くもない。「あとは、ご自分でお勘定ください」と言った。
「なるほど」と船長は頭をかきながら答えた。「神のお恵みをたっぷり見込んでも、これはずいぶん苦しい針路ですな。」
「どういう意味です?」
わたしは尋ねた。
「二度目の積荷を失ったのが惜しい、ということです」と船長は答えた。「火薬と弾は何とかなる。だが食料が乏しい。ひどく乏しいんです、リヴジー博士。口が一つ減って、かえって助かったくらいに。」
そう言って、旗の下の遺体を指した。
ちょうどそのとき、轟音とうなりを伴って、砲弾が小屋の屋根のはるか上を飛び越え、ずっと向こうの森へ落ちた。
「ほう!」と船長は言った。「好きなだけ撃つがいい! おまえたちの火薬は、もうたいして残っちゃいないぞ。」
二発目は狙いがよくなり、柵の内側へ落ちて砂煙を上げたが、それ以外に被害はなかった。
「船長」と郷士は言った。「船からこの家はまったく見えないはずだ。旗を狙っているに違いない。降ろしたほうが賢明ではないか?」
「旗を降ろすですと!」と船長は叫んだ。「いや、わたしはしません」その言葉が出たとたん、われわれも皆、同じ気持ちになったと思う。それは船乗りらしい毅然とした意地だけではなかった。砲撃など恐れていないと敵に示す、よい策でもあったのだ。
夕方じゅう、連中は大砲を撃ち続けた。砲弾は次々と飛び越え、手前へ落ち、あるいは柵内の砂を跳ね上げた。だが、ずいぶん高く狙わなければならないため、弾は勢いを失って落ち、柔らかい砂へ埋まった。跳弾を恐れる必要はなかった。一発は屋根から入り、床を抜けていったが、われわれはすぐこの乱暴な遊びに慣れ、クリケットほどにも気にしなくなった。
「一つだけ、ありがたいことがあります」と船長は言った。「目の前の森には、おそらく誰もいない。引き潮になってずいぶんたつ。物資はもう水から出ているはずだ。豚肉を取りに行く志願者は?」
最初に名乗り出たのは、グレイとハンターだった。十分に武装して柵から忍び出たが、無駄足に終わった。反逆者たちは思ったより大胆だったのか、それともイスラエルの砲術を信頼していたのか、四、五人がせっせとわれわれの物資を運び出していた。近くにはギグが一艘浮かび、流されぬよう時折オールを動かしていた。連中は水を歩いてそこへ荷を運んでいた。船尾の腰掛けではシルバーが指揮を執り、今では全員が、どこか秘密の武器庫から持ち出したマスケット銃を手にしていた。
船長は座って航海日誌を開いた。その書き出しは、こうだった。
「船長アレグザンダー・スモレット、船医デイヴィッド・リヴジー、船大工助手エイブラハム・グレイ、船主ジョン・トレローニー、船主の使用人にして陸者ジョン・ハンターおよびリチャード・ジョイス――以上、乗組員中、忠実にとどまった者のすべて――は、節食して十日分の物資を携え、本日上陸。宝島の丸太小屋にイギリス国旗を掲揚した。船主の使用人にして陸者トマス・レッドルースは、反逆者に撃たれて死亡。給仕見習いジェイムズ・ホーキンズは――」
その同じとき、わたしもまた、哀れなジム・ホーキンズの運命を案じていた。
陸側から呼び声がした。
「誰か呼んでいます」と、見張りのハンターが言った。
「先生! 郷士さん! 船長! おーい、ハンター、そこにいるの?」と声が聞こえた。
わたしは戸口へ走り、無事なジム・ホーキンズが柵をよじ登ってくるのを、ちょうど見ることができた。

第十九章 ジム・ホーキンズがふたたび語る――砦の守備隊
ベン・ガンは旗を見るなり立ち止まり、ぼくの腕をつかんで引き止めると、腰を下ろした。
「ほら」と言った。「間違いなく、おまえの仲間だ。」
「反乱を起こした連中のほうが、ずっとありそうだよ」とぼくは答えた。
「あれがか!」と男は叫んだ。「こんな海賊紳士しか寄りつかない場所なら、シルバーはジョリー・ロジャーを掲げるさ。それは間違いねえ。いや、あれはおまえの仲間だ。戦いもあったな。たぶん、おまえの仲間が勝ったんだろう。それで陸へ上がって、あの古い柵にこもってる。何年も何年も前に、フリントが作ったやつだ。ああ、やつは頭の切れる男だった、フリントは! ラム酒さえ別にすれば、肩を並べる者はなかった。誰も怖がりゃしなかった。ただ、シルバーだけは別だ。シルバーは、それほどの曲者だったからな。」
「うん」とぼくは言った。「そうかもしれない。それならそれでいいよ。だったら、なおさら急いで仲間のところへ行かなきゃ。」
「いや、相棒」とベンは答えた。「そうはいかん。おまえはいい子だ。おれの見込み違いでなけりゃな。だが、結局はまだ子どもだ。ベン・ガンは抜け目がない。おまえの行くところへは、ラム酒で釣られたって行かんぞ。生まれながらの紳士に会って、名誉にかけた約束をもらうまでは、ラム酒だって駄目だ。おれの言葉を忘れるなよ。『ずっと』――そう言うんだ――『ずっと信用している』。それから、ちょいとつねる。」
そうして、同じ得意そうな顔で、三度目にぼくをつねった。
「ベン・ガンに用ができたら、どこへ来ればいいかわかってるな、ジム。今日おれを見つけた、その場所だ。来る人は手に白いものを持つこと。それから、一人で来ること。ああ、それと、こう言うんだぞ。『ベン・ガンには、あの人なりの事情がある』とな。」
「うん」とぼくは言った。「わかったと思う。何か提案があって、郷士か博士に会いたいんだね。それで、ぼくが見つけた場所にいる。それだけ?」
「いつか、とおまえは聞く」と男は付け加えた。「正午の観測のころから六点鐘[訳注:この場合は午後三時]くらいまでだ。」
「よし」とぼくは言った。「じゃあ、もう行っていい?」
「忘れないだろうな?」と心配そうに尋ねた。「ずっと、とな。あの人なりの事情がある、と言うんだ。あの人なりの事情。そこが肝心だ。男と男の話なんだからな。よし、それじゃ」――まだぼくをつかんだまま――「行ってもいいだろう、ジム。それから、ジム、シルバーに会っても、ベン・ガンのことを売ったりしないな? どんな目に遭わされても口を割らないな? 割らない、とおまえは言う。もしあの海賊どもが陸へ上がってきたら、ジム、明日の朝には後家さんができるってもんだろう?」
そのとき、大きな砲声が話を遮った。砲弾が木々を突き破り、二人の話していたところから百ヤードもない砂地へ落ちた。次の瞬間、ぼくらはそれぞれ反対の方角へ逃げ出していた。
そのあとたっぷり一時間、砲声が何度も島を震わせ、砲弾が森を突き抜け続けた。ぼくは隠れ場所から隠れ場所へ移り、その恐ろしい飛来物に、ずっと追い回されているような気がした。だが、砲撃の終わるころには、弾のいちばん落ちる砦へ近づく勇気こそまだなかったものの、いくらか気を取り直していた。そして東へ大きく回り道をし、岸辺の木々の間へ忍び下りた。
日が沈んだばかりだった。海風が森をざわざわと吹き渡り、停泊地の灰色の水面を波立たせていた。潮もずいぶん引き、広い砂地が露出していた。昼の暑さのあとでは、風が上着を通して身にしみた。
ヒスパニオラ号は、まだ最初に錨を下ろした場所にいた。だが、見れば確かに、帆桁の先にはジョリー・ロジャー――黒い海賊旗――がひるがえっていた。見ているうちに、また赤い閃光が走り、砲声がこだまを鳴り渡らせ、もう一発の砲弾が空をうなって飛んだ。それが最後の砲撃だった。
ぼくはしばらく伏せたまま、攻撃後の慌ただしい動きを眺めていた。砦に近い浜では、男たちが斧で何かを壊していた。あとでわかったが、あの気の毒な小ボートだった。遠くの川口近くでは、木々の間に大きなたき火が赤く燃え、そこから船まで、一艘のギグが行き来していた。あれほど陰気だった男たちが、子どものように声を上げながら漕いでいた。だが、その声にはラム酒の気配があった。
やがて、砦へ戻ってもよさそうだと思った。ぼくは、停泊地の東側を囲み、潮が半ば引くと骸骨島につながる、低い砂州のかなり先まで来ていた。立ち上がると、そこからさらに少し先、低い茂みの間に、ひときわ白い、かなり高い岩が一つ立っているのが見えた。これがベン・ガンの言っていた白い岩かもしれないと思った。いつか舟が必要になるかもしれない。そのときには、どこを探せばいいかわかる。
それから森の縁をたどって、砦の裏手、つまり岸側へ回り込み、ほどなく忠実な仲間たちに温かく迎えられた。
ぼくはすぐに自分の話を伝え、あたりを見回した。丸太小屋は、屋根も壁も床も、角材にしていない松の幹でできていた。床は何か所も、砂の地面から一フィート、一フィート半も浮いていた。戸口には小さな庇があり、その下で泉が湧いて、妙な人工の水受けにたまっていた。それはほかでもない、大きな船用の鉄鍋だった。底を抜いて、船長の言い方では「適正喫水まで」、砂に埋めてあったのだ。
家の骨組み以外には、ほとんど何も残っていなかった。ただ、一隅には炉代わりの平たい石が敷かれ、その上に火を入れる、錆びた古い鉄籠があった。
小丘の斜面も柵の内側も、家を建てるために木が切り払われていた。切り株を見ると、どれほど立派で背の高い林が失われたのかわかった。木をなくしたあと、土の大部分は洗い流されるか、吹き寄せられた砂に埋まっていた。鍋から流れ出す細い水筋のそばにだけ、厚い苔やシダ、地を這う小さな低木が、砂の中で緑を保っていた。柵のすぐ外には――守りには近過ぎると、みんなが言っていた――高い木々が密に茂っていた。陸側はすべてモミだったが、海の側には常緑オークがたくさん混じっていた。
さっき述べた冷たい夕風は、粗末な建物のあらゆる隙間を笛のように鳴らし、細かな砂を絶えず床へ降らせた。目にも砂、歯にも砂、夕食にも砂。鍋の底の泉では、煮立ち始めた粥のように砂が踊っていた。煙突は屋根にあけた四角い穴だけで、煙のほんの一部しか外へ出なかった。残りは家の中を渦巻き、ぼくらは咳をし、涙を流し続けた。
そのうえ、新しく仲間になったグレイは、反逆者から逃れたときの切り傷のため、顔に包帯を巻いていた。そして哀れな老トム・レッドルースは、まだ葬られず、ユニオンジャックの下で冷たく硬くなり、壁際に横たわっていた。
もし手をこまねいて座っていたら、ぼくらはみんな気が滅入ってしまっただろう。だがスモレット船長は、そんなことをさせる人ではなかった。全員を呼び集め、二組の当直に分けた。博士とグレイとぼくが一組。郷士とハンターとジョイスがもう一組だった。誰もが疲れ切っていたが、二人は薪集めに、別の二人はレッドルースの墓掘りに出された。博士は料理番、ぼくは戸口の見張りを命じられた。船長自身は皆の間を回り、励まし、必要なところには手を貸した。
博士はときどき、空気を吸い、煙でつぶれそうな目を休ませるために戸口へ来た。そのたび、ぼくにひと言かけてくれた。
「あのスモレットという男は」と、あるとき言った。「わたしより立派な男だ。わたしがそう言うのだから、たいしたものだぞ、ジム。」
またあるときには、しばらく黙っていた。それから首を傾げ、ぼくを見た。
「そのベン・ガンは、まともな人間かね?」と尋ねた。
「わかりません、先生」とぼくは言った。「正気なのかどうか、あまり自信がありません。」
「迷う程度なら、正気なんだろう」と博士は答えた。「ジム、無人島で三年も爪を噛んで暮らした人間に、君やわたしと同じほどまともに見えろとは言えんよ。人間には無理な話だ。欲しがっていると言ったのは、チーズだったかな?」
「はい、チーズです」とぼくは答えた。
「いいか、ジム」と博士は言った。「食べ物にうるさいのも、役に立つものだぞ。わたしの嗅ぎたばこ入れを見たことがあるだろう? だが、わたしが嗅ぎたばこを使うところは見ていないはずだ。なぜなら、あの中にはパルメザンチーズをひとかけ入れてあるからだ。イタリアのチーズで、とても栄養がある。あれをベン・ガンにやろう!」
夕食を取る前に、ぼくらは老トムを砂に葬り、帽子を脱いで風の中、しばらく墓の周りに立った。薪はずいぶん集まっていたが、船長には足りなかったらしい。首を振り、「明日はもう少しきびきびやらねばならん」と言った。
それから豚肉を食べ、濃いブランデーの水割りを一人一杯ずつ飲むと、三人の指導者は隅へ集まり、今後の見通しを話し合った。
三人とも、どうすべきか途方に暮れていたらしい。食料があまりに少なく、救援が来るよりずっと前に、飢えて降伏せざるをえなかったからだ。それでも最善の望みは、海賊を一人ずつ倒し、旗を降ろすか、ヒスパニオラ号で逃げ出すかするまで追い込むことだ、と決まった。十九人いた敵は、すでに十五人に減り、ほかに二人が負傷していた。少なくとも一人――大砲のそばで撃たれた男――は、死んでいないにしても重傷だった。撃てる機会があれば必ず撃ち、その一方で、自分たちの命は極力慎重に守る。さらに、こちらには有力な味方が二つあった。ラム酒と、この土地の気候だった。
前者については、半マイルほど離れていても、夜更けまで連中のわめき声や歌が聞こえた。後者については、博士がかつらを賭けて言った。あんな沼地に野営し、薬も持っていないのだから、一週間もしないうちに半分は寝込むだろう、と。
「だから」と博士は付け加えた。「その前にこちらが全員撃ち殺されなければ、連中は喜んでスクーナー船に荷をまとめるだろう。船は船だ。また海賊稼業に戻れるだろうからね。」
「わたしが失った、最初の船です」とスモレット船長が言った。
想像のとおり、ぼくは死ぬほど疲れていた。ずいぶん寝返りを打ってからようやく眠りに落ちると、丸太のように眠った。
物音と人声で目を覚ましたとき、ほかのみんなはとっくに起き、朝食を済ませ、薪の山をさらに半分ほど増やしていた。
「休戦の白旗だ!」
誰かが言うのが聞こえ、すぐ続いて、驚きの声が上がった。「シルバー本人だ!」
ぼくは跳ね起き、目をこすりながら壁の銃眼へ走った。
第二十章 シルバーの使節
確かに、柵のすぐ外に男が二人いた。一人は白い布を振り、もう一人はほかでもないシルバー自身で、落ち着き払ってそばに立っていた。
まだ朝早く、ぼくが外に出た朝の中でも、これほど寒い朝はなかったと思う。寒さが骨の髄までしみた。頭上の空は明るく晴れ渡り、木々の梢は朝日にバラ色に輝いていた。だが、シルバーと副官のいる場所はまだすっかり陰で、夜のあいだに沼から這い出してきた低い白霧の中へ、二人は膝までつかっていた。この寒さと霧を見れば、島の評判は知れたものだった。湿気が多く、熱病の巣になる、不健康な土地なのは明らかだった。
「みんな、中にいろ」と船長は言った。「十中八九、罠だ。」
それから海賊へ呼びかけた。
「誰だ? 止まれ。さもないと撃つぞ。」
「休戦の白旗です!」とシルバーが叫んだ。
船長は庇の下にいた。不意に撃たれても当たらぬよう、注意深く身を隠していた。それから振り向いて、ぼくらに言った。
「博士の当直組は見張れ。リヴジー博士は北側をお願いします。ジムは東、グレイは西。非番の者は全員、マスケット銃に弾を込めろ。きびきびと、抜かりなく。」
それからまた反逆者たちへ向き直った。
「その白旗で、何の用だ?」と叫んだ。
今度は、もう一人の男が答えた。
「シルバー船長が、そちらへ入って条件を話し合いたいそうです!」と叫んだ。
「シルバー船長? 知らんな。誰だ、そいつは?」と船長は叫んだ。それから独り言を言うのが聞こえた。「船長だと? いやはや、大した出世だ!」
ロング・ジョンが自分で答えた。
「おれですよ、船長。あなたが職場を放棄なさってから、かわいそうなこの連中がおれを船長に選んだんです」――「放棄」という言葉を、ことさらに強めた。「条件が折り合えば、こちらも素直に従うつもりです。文句はありません。お願いしたいのは、スモレット船長、この柵から無事に出してくれることと、射程の外へ出るまで一分間は撃たないというお約束、それだけです。」
「いいか」とスモレット船長は言った。「わたしには、おまえと話したい気持ちなど少しもない。おまえが話したいなら、来ればよい。それだけだ。裏切りがあるとすれば、おまえの側だ。そのときは神にでも助けを求めるがいい。」
「それで十分です、船長!」とロング・ジョンは陽気に叫んだ。「あなたのひと言があれば十分だ。紳士を見分ける目はありますんでね。そいつは確かです。」
白旗を持つ男が、シルバーを引き止めようとするのが見えた。船長のつれない返事を思えば、無理もなかった。だが、シルバーは、怖がるなどばかげているとでもいうように、大声で笑い、男の背中をたたいた。それから柵へ進み、松葉杖を向こうへ投げ、片脚を掛けると、たいした力と巧みさで乗り越え、無事に内側へ降りた。
白状すると、ぼくは成り行きに夢中で、見張りとしてはまるで役に立っていなかった。それどころか、東側の銃眼を離れ、船長の後ろへ忍び寄っていた。船長は敷居に腰を下ろし、膝に肘をつき、両手で頭を支え、砂に埋めた古い鉄鍋から湧き出す水を見つめていた。そして「さあ、おいで、娘も若者も」を口笛で吹いていた。
シルバーは小丘を上がるのに、ひどく苦労した。急な斜面に、密な切り株、柔らかな砂。本人も松葉杖も、風に立って動けない船のようだった。それでも黙って根気よく進み、ようやく船長の前へたどり着くと、これ以上ないほど丁重に挨拶した。最上の服を着込んでいて、真鍮のボタンをずらりと並べた大きな青い上着が膝まで垂れ、立派な縁飾りのある帽子を後ろへずらしてかぶっていた。
「来たな」と船長は顔を上げて言った。「座ったほうがいい。」
「中へは入れてくださらんので?」とロング・ジョンは不平を言った。「外の砂に座るには、ずいぶん寒い朝ですよ、船長。」
「いいか、シルバー」と船長は言った。「正直な人間でいれば、いまごろ自分の炊事場に座っていられたのだ。自業自得だ。おまえがこの船の料理番なら、相応に厚く扱ってやる。だが、シルバー船長という、ただの反逆者で海賊なら、首を吊られてしまえ!」
「まあまあ、船長」と海の料理番は、言われたとおり砂に座りながら答えた。「ただし、立つときは手を貸していただきますよ。いい場所をお持ちですな。実に居心地がよさそうだ。おや、ジムもいる! おはよう、ジム。先生、ご機嫌よう。いやはや、皆さんおそろいで、いわば仲のいい一家ですな。」
「言いたいことがあるなら、言うがいい」と船長は言った。
「おっしゃるとおりです、スモレット船長」とシルバーは答えた。「仕事は仕事ですからな。さて、昨夜の手は見事でしたよ。そいつは認めましょう。てこ棒の扱いが、なかなか達者な者がいる。こちらの連中が何人か震え上がったのも否定はしません。もしかしたら全員かもしれん。おれだって怖くなったのかもしれん。それで、こうして条件を話しに来たのかもしれません。だが、よく聞いてください、船長。二度は通じませんぜ、畜生! こっちも見張りを立て、ラム酒を少し控えねばならん。みんな酔いつぶれてたと思ってるのかもしれませんが、おれはしらふでした。死ぬほど疲れていただけだ。あと一秒早く目が覚めていたら、現場でとっつかまえてやったのに。おれがそばへ行ったとき、あいつはまだ死んじゃいませんでしたよ。」
「それで?」とスモレット船長は、これ以上ないほど冷静に言った。
シルバーの言葉は、船長にはまるで謎だった。だが、その声からは、そんなことは少しも察せられなかった。ぼくには、だんだん見当がついてきた。ベン・ガンの最後の言葉を思い出したのだ。海賊たちがたき火の周りで酔って寝込んでいるあいだに、ベンが訪ねていったのではないか。そう思うと、敵はもう十四人だけだと、うれしく数え直した。
「つまり、こうです」とシルバーは言った。「おれたちは宝が欲しい。必ず手に入れる。こちらの目的はそれだ。あなた方は命を助けたいでしょう。それがそちらの目的だ。地図を持ってますね?」
「さあ、どうかな」と船長は答えた。
「いや、持ってるんだ。そいつは知ってますよ」とロング・ジョンは答えた。「そうつっけんどんになさらんでも。何の役にも立ちませんぜ、そいつは確かだ。つまり、おれたちはその地図が欲しいんです。そもそも、おれ自身は、あなた方に危害を加えるつもりなんぞなかった。」
「その手は通じん」と船長は遮った。「何をするつもりだったか、こちらはすっかり知っている。だが気にはせん。今や、おまえにはできんからだ。」
船長は静かにシルバーを見つめ、パイプへたばこを詰め始めた。
「エイブ・グレイが――」とシルバーが言いかけた。
「そこまでだ!」とスモレット船長は叫んだ。「グレイは何も話していないし、わたしも何も聞いていない。そのくらいなら、おまえもあいつも、この島までも、海から吹き飛んで地獄へ落ちるほうがましだ。それがわたしの考えだ。よく覚えておけ。」
この短い怒りの噴出に、シルバーは冷静になったらしい。それまではいら立ちかけていたが、ここで気を取り直した。
「そうかもしれませんな」と言った。「紳士方が何を立派な流儀とお考えになり、何をそう思わんか、おれにはとやかく言えません。さて、船長が一服なさるなら、おれも遠慮なくやらせてもらいますよ。」
そうしてパイプに詰めて火をつけた。二人はかなり長いあいだ、黙って吸い続けた。互いの顔を見たり、たばこを押し固めたり、前へかがんで唾を吐いたりした。見ていると、芝居のようだった。
「では」とシルバーはまた始めた。「こうしましょう。宝を探すための地図を渡し、かわいそうな船乗りを撃ったり、寝ている頭を叩き割ったりするのをやめる。そうすれば、二つの道を選ばせてやります。宝を船へ積んだあと、一緒に乗り込む。それなら、おれの名誉にかけて誓って、どこか安全な岸へ降ろしてやります。それとも、それが気に入らないなら――こちらには荒っぽい者もいるし、しごかれた古い恨みのある者もいるんでね――ここに残ってもいい。食料は人数割りできちんと分けましょう。それから、さっきと同じく誓いますが、最初に見かけた船へ声をかけ、迎えに来るよう頼んでやります。どうです、筋の通った話でしょう。これ以上気前のいい条件は望めませんぜ。それから願わくは」――声を高めた――「この小屋のみんなに、よく考えてもらいたい。一人に話していることは、全員に話していることですからな。」
スモレット船長は立ち上がり、左の手のひらへパイプの灰を落とした。
「それだけか?」と尋ねた。
「残らず全部だ、畜生!」とジョンは答えた。「断るなら、今度おれに会うときは、銃弾のおまけつきですぜ。」
「よろしい」と船長は言った。「では、こちらを聞け。武器を捨て、一人ずつここへ来るなら、全員に鉄鎖をはめ、イングランドへ連れ帰り、公正な裁判を受けさせると約束しよう。来ないなら、わたしの名はアレグザンダー・スモレット。国王陛下の旗を掲げた以上、おまえたち全員をデイヴィ・ジョーンズ[訳注:船乗りの伝承にいう海の悪霊。ここでは海の底の墓場を指す]のもとへ送ってやる。おまえたちには宝は見つけられん。船も動かせん。まともに操船できる者が一人もいないからだ。戦っても勝てん。そこにいるグレイ一人に、五人がかりで逃げられたではないか。おまえの船は身動きが取れんのだ、シルバー君。風下の岸へ追い詰められている。じきに思い知るだろう。わたしはここで、そう言っておく。親切な言葉は、これが最後だ。神にかけて、次に会うときは背中へ弾を撃ち込んでやる。さあ、行け。とっとと失せるんだ。大急ぎでな。」
シルバーの顔は見ものだった。怒りで目が飛び出さんばかりになった。パイプの火を振り落とした。
「立つのに手を貸せ!」と叫んだ。
「わたしは断る」と船長は答えた。
「誰か手を貸せ!」と怒鳴った。
ぼくらは誰一人動かなかった。シルバーは口汚い悪態をうなりながら砂の上を這い、庇の柱につかまると、松葉杖を頼りにようやく立ち上がった。それから泉へ唾を吐いた。
「そら!」と叫んだ。「おまえらなんぞ、こうだ。一時間もたたんうちに、このぼろ小屋をラム酒樽みたいに叩き潰してやる。笑え、畜生、笑うがいい! 一時間もたてば、その笑い面を泣き面に変えてやる。死ぬやつのほうが幸せだぞ。」
すさまじい悪態をつくと、よろめきながら砂をかき分けて下りていった。四、五度失敗した末に、白旗の男に助けられて柵を越え、その直後には木々の中へ消えた。
第二十一章 襲撃
シルバーの姿が消えると、それまでじっと見送っていた船長が小屋の中へ振り向いた。持ち場に残っていたのは、グレイ一人だけだった。船長が怒るところを見たのは、それが初めてだった。
「配置につけ!」と怒鳴った。ぼくらがすごすご持ち場へ戻ると、「グレイ」と言った。「おまえの名を航海日誌に書いておく。船乗りらしく務めを守った。トレローニーさん、あなたには驚きましたよ。博士、国王の軍服を着たことがあると思っていましたがね! フォントノワでもそんな働きぶりだったなら、寝台にいたほうがましでしたな。」
博士の当直組はみな銃眼へ戻り、残りは予備のマスケット銃への装填に取りかかった。誰もが顔を赤くし、言うまでもなく、こっぴどく叱られてしょげていた。
船長はしばらく黙って見ていた。それから口を開いた。
「諸君」と言った。「シルバーには舷側砲を一斉に浴びせてやった。わざと真っ赤に焼けた弾を食らわせたのだ。あいつが言ったとおり、一時間以内に乗り込んでくるだろう。こちらの数が少ないのは言うまでもない。だが、こちらには身を守る壁がある。それに、少し前までは、規律もあると言えたのだがな。諸君がその気になれば、必ず叩きのめせると、わたしは信じている。」
それから持ち場を見て回り、本人の言い方では、すべてが整っていることを確かめた。
小屋の短い二辺、東と西には銃眼が二つずつしかなく、庇のある南側にも二つ、北側には五つあった。七人に対してマスケット銃はきっかり二十丁あった。薪は四つの山、いわばテーブルに積まれ、それぞれの壁の中央あたりに一つずつ置かれていた。その上には弾薬と、装填済みの銃が四丁ずつ、守備につく者の手の届くように並べられていた。中央には舶刀がまとめてあった。
「火を外へ出せ」と船長は言った。「もう寒くはない。煙で目をふさがれては困る。」
トレローニー郷士が鉄籠ごと外へ運び、燃えさしを砂で消した。
「ホーキンズはまだ朝飯を食っていない。ホーキンズ、自分の分を取って、持ち場へ戻って食べろ」とスモレット船長は続けた。「急げ。この仕事が終わる前に、腹ごしらえが必要になるぞ。ハンター、全員にブランデーを一杯ずつ配れ。」
そのあいだに、船長は頭の中で守備の計画を仕上げた。
「博士、戸口をお願いします」と続けた。「身をさらさぬよう、中にとどまって、庇越しに撃ってください。ハンターは東側。ジョイス、おまえは西を守れ。トレローニーさん、あなたがいちばんの射手だ。グレイと二人で、この銃眼五つの長い北側をお願いします。危ないのはそこです。近づかれて、こちらの銃眼から中を撃たれたら、厄介なことになる。ホーキンズ、おまえとわたしは射撃ではたいして役に立たん。弾を込め、手助けをするぞ。」
船長の言うとおり、寒さは去っていた。周囲の木々の上に太陽が昇ると、空き地へ容赦なく照りつけ、霧をひと息に吸い尽くした。たちまち砂は焼け、小屋の丸太では樹脂が溶け始めた。上着は脱ぎ捨てられ、シャツの襟は開かれ、袖は肩までまくられた。ぼくらはそれぞれの持ち場で、暑さと不安に熱くなって立っていた。
一時間が過ぎた。
「くそ、連中め!」と船長は言った。「無風帯のように退屈だ。グレイ、風を呼ぶ口笛でも吹け。」
ちょうどそのとき、襲撃の最初の知らせが来た。
「恐れ入りますが、船長」とジョイスが言った。「誰か見えたら、撃ってよろしいのでしょうか?」
「そう言っただろう!」と船長は叫んだ。
「ありがとうございます」とジョイスは、変わらぬ穏やかな礼儀正しさで答えた。
しばらく何も起こらなかった。だが、そのひと言で全員が身構え、目と耳を研ぎ澄ませた。射手たちは銃を両手に構え、船長は小屋の中央に立ち、口を固く結び、眉を寄せていた。
そうして数秒が過ぎた。突然、ジョイスが銃を跳ね上げて撃った。その音が消えぬうちに、外でまた一発、また一発と、まばらな一斉射撃が起きた。柵の四方から、ガンの列のように銃声が続いた。何発かは丸太小屋に当たったが、中へ入った弾はなかった。煙が晴れて消えると、柵も周囲の森も、前と同じように静かで、人影もなかった。枝一本揺れず、銃身の光一つ、敵の居場所を明かさなかった。
「当てたか?」と船長が尋ねた。
「いいえ、船長」とジョイスは答えた。「外れたと思います。」
「正直に言うのが、次に大事なことだ」とスモレット船長はつぶやいた。「ホーキンズ、あの銃へ弾を込めろ。博士、そちらには何人いたと思いますか?」
「正確にわかります」とリヴジー博士は言った。「こちらからは三発です。閃光を三つ見ました。二つは近く、一つはもっと西でした。」
「三人か」と船長は繰り返した。「トレローニーさん、そちらは?」
だが、そちらは簡単には答えられなかった。北からは多数撃ってきた。郷士の数では七発、グレイによれば八発か九発だった。東と西からは、それぞれ一発だけ。したがって、本格的な攻撃は北から来て、ほかの三方では攻撃のふりでこちらを牽制するつもりなのは明らかだった。それでも船長は配置を変えなかった。反逆者が柵を越えたとき、無防備な銃眼が一つでもあれば、そこを占めて、自分たちの砦の中でネズミのように撃ち殺される、というのだった。
考える時間は、もうほとんどなかった。不意に大きな歓声が上がり、北側の森から一団の海賊が飛び出して、柵へまっすぐ走った。同時に森からまた射撃が始まり、一発の弾が戸口をうなって抜け、博士のマスケット銃を粉々に砕いた。
襲撃者たちはサルのように群がって柵を越えた。郷士とグレイは続けざまに撃った。三人が倒れ、一人は内側へ、二人は外へ落ちた。だが、そのうち一人は傷より恐怖のほうが大きかったらしく、すぐに起き上がり、たちまち木々の中へ消えた。
二人が倒れ、一人が逃げ、四人が守りの内側へ足場を得た。そのあいだ森の陰からは七、八人が、それぞれ何丁もの銃を用意しているらしく、激しい、だが効果のない射撃を小屋へ浴びせ続けた。

たちまち四人の海賊は小丘を駆け上がり、ぼくらへ襲いかかった
柵を越えた四人は、叫びながらまっすぐ建物へ走った。森の連中も、励ます叫びを返した。何発か銃が撃たれたが、射手があまりに慌てたため、当たったものはなさそうだった。たちまち四人の海賊は小丘を駆け上がり、ぼくらへ襲いかかった。
中央の銃眼に、水夫長ジョブ・アンダーソンの頭が現れた。
「かかれ、全員かかれ!」と、雷のような声で怒鳴った。
同時に、別の海賊がハンターの銃口をつかみ、手からもぎ取り、銃眼越しに引き抜いた。そしてすさまじい一撃を加え、哀れなハンターを気絶させて床へ倒した。そのあいだ第三の男は、無傷で小屋の周囲を走り抜け、突然戸口へ現れると、舶刀で博士に斬りかかった。
立場は完全に逆転した。ついさっきまでは、こちらが壁に守られ、身をさらした敵を撃っていた。今では無防備なのはこちらで、反撃することもできなかった。
小屋は煙に満ち、そのおかげで、まだどうにか身が守られていた。叫びと混乱、拳銃の閃光と銃声、そして大きなうめき声が、ぼくの耳に入り乱れた。
「外へ出ろ、みんな! 外で戦え! 舶刀だ!」と船長が叫んだ。
ぼくは積んであった舶刀を一本つかんだ。同時に誰かが別の一本を取り、その刃がぼくの指の関節を切ったが、ほとんど痛みも感じなかった。ぼくは戸口から、澄んだ日差しの中へ飛び出した。すぐ後ろに誰かいたが、誰かはわからなかった。正面では博士が、襲ってきた男を斜面の下へ追っていた。ぼくが目を向けたちょうどそのとき、相手の構えを打ち崩し、顔へ大きな切り傷を与えて、仰向けに倒した。
「小屋を回れ、みんな! 小屋を回れ!」と船長が叫んだ。その大混乱の中でも、声が変わったのに気づいた。
ぼくは反射的に従い、東へ向きを変え、舶刀を上げて小屋の角を回った。次の瞬間、アンダーソンと鉢合わせした。男は大声で吠え、頭上へ短剣を振り上げた。刃が日光にきらめいた。怖がる暇もなかった。まだ刃が振り下ろされる前に、とっさに横へ跳んだ。だが、柔らかな砂に足を取られ、頭から斜面を転げ落ちた。
ぼくが最初に戸口から飛び出したとき、ほかの反逆者たちは、ぼくらにとどめを刺そうと、すでに柵へ群がっていた。赤い寝帽の男は、舶刀を口にくわえ、柵の上へ達して片脚をまたがせていた。それからほんのわずかな時間しかたっていなかったので、ぼくがまた立ち上がったときも、様子は同じだった。赤い寝帽の男はまだ半分またがり、別の男はようやく柵の上に頭を出したところだった。ところが、そのひと呼吸のあいだに、戦いは終わり、勝利はこちらのものになっていた。
ぼくのすぐ後ろについてきたグレイが、大柄な水夫長を、振り損ねた刃を立て直す前に斬り倒していた。もう一人は銃眼から中を撃とうとした瞬間に撃たれ、まだ煙の上がる拳銃を手に、苦しみもがいていた。三人目は、ぼくが見たとおり、博士が一撃で片づけた。柵を越えた四人のうち、残る一人だけが行方不明だったが、その男は舶刀を戦場に捨て、死の恐怖に駆られて、もう柵をよじ登って逃げようとしていた。
「撃て! 小屋から撃て!」と博士が叫んだ。「君たちは中へ戻れ!」
だが、その言葉に応じる者はなく、一発も撃たれなかった。最後の襲撃者は逃げおおせ、ほかの者とともに森へ消えた。三秒後には、攻撃隊の姿は、倒れた五人しか残っていなかった。四人は柵の内、一人は外だった。
博士とグレイとぼくは、全速力で小屋へ駆け戻った。生き残った連中はじきに置いてきた銃へ戻り、いつまた射撃を始めてもおかしくなかった。
そのころには煙がいくらか晴れ、勝利の代償がひと目でわかった。ハンターは銃眼のそばで気絶していた。ジョイスは自分の銃眼のそばで頭を撃ち抜かれ、二度と動かなかった。そして真ん中では、郷士が船長を支え、二人とも同じほど青ざめていた。
「船長が負傷した」とトレローニー郷士は言った。
「やつらは逃げたか?」とスモレット船長が尋ねた。
「逃げられる者は、みんな逃げましたよ」と博士は答えた。「だが五人は、もう二度と走れません。」
「五人!」と船長は叫んだ。「よし、それならましだ。向こうが五人、こちらが三人減って、四対九か。最初より分がよくなった。あのときは七対十九だった。少なくとも、そう思っていた。それだけでも十分きついものだったからな。」
第五部 海での冒険
第二十二章 海での冒険の始まり
反逆者たちは戻ってこなかった。森から一発の銃声さえしなかった。船長の言葉では、連中は「今日の分をたっぷり食らった」のだ。ぼくらは邪魔されず、静かに負傷者を診て、昼食を用意することができた。郷士とぼくは危険を承知で外で料理した。だが、外にいてさえ、博士の患者たちの恐ろしいうめき声が聞こえ、何をしているのかわからなくなりそうだった。
戦いで倒れた八人のうち、まだ息があったのは三人だけだった。銃眼で撃たれた海賊と、ハンターと、スモレット船長である。そのうち前の二人は、ほとんど死んだも同然だった。実際、反逆者は博士の手術中に死んだ。ハンターも、何をしても、この世で意識を取り戻すことはなかった。一日じゅう、ぼくの家で卒中を起こした老海賊のように、大きな息をしながら持ちこたえた。だが、殴られて胸の骨を砕かれ、倒れた拍子に頭蓋骨を折っていた。その夜のいつか、何のしるしも声もなく、造り主のもとへ旅立った。
船長の傷は重かったが、命に別条はなかった。致命的な内臓の損傷はなかったのだ。最初に撃ったのはジョブ・アンダーソンで、その弾は肩甲骨を砕き、肺にも触れていたが、ひどくはなかった。二発目はふくらはぎの筋肉を裂き、ずらしただけだった。必ず治る、と博士は言った。ただし当分、これから何週間も、歩いても腕を動かしてもいけないし、できれば話すことさえ控えなければならなかった。
ぼくの指の関節の切り傷など、蚤に刺されたようなものだった。リヴジー博士は絆創膏を貼り、おまけにぼくの耳を引っ張った。
昼食後、郷士と博士はしばらく船長のそばに座って相談した。存分に話し終えたとき、時刻はまだ正午を少し過ぎたところだった。博士は帽子と拳銃を取り、舶刀を腰に帯び、地図をポケットへ入れ、マスケット銃を肩に掛けると、北側の柵を越え、木々の間を足早に出かけていった。
グレイとぼくは、相談中の指揮官たちの話が聞こえないよう、小屋の遠い端に並んで座っていた。グレイはこの出来事に仰天し、口から出したパイプを戻すことさえ忘れていた。
「いったい全体」と言った。「リヴジー先生は気でも違ったのか?」
「そんなことないよ」とぼくは言った。「この仲間じゃ、いちばんそうなりそうにない人だと思う。」
「いいか、相棒」とグレイは言った。「気が違ったんじゃないかもしれん。だが、あの人がそうじゃないなら、覚えとけ、おれのほうがおかしいんだ。」
「先生には考えがあるんだと思う」とぼくは答えた。「ぼくの見当が当たっていれば、ベン・ガンに会いに行くんだよ。」
あとでわかったが、ぼくの見当は当たっていた。だが、そのあいだに、小屋は息苦しいほど暑く、柵の中の小さな砂地は真昼の太陽に焼かれていた。ぼくの頭には、今度はあまり正しくない考えが浮かび始めた。涼しい木陰を、鳥に囲まれ、松のよい香りを吸いながら歩いている博士が、うらやましくなったのだ。こちらは焼かれ、服は熱い樹脂に貼りつき、周囲には血と、哀れな死体がいくつもあった。その場所が、恐怖にも劣らぬほど嫌になった。
小屋を洗い流し、昼食の道具を洗っているあいだじゅう、その嫌悪とうらやましさは強まる一方だった。ついに乾パンの袋のそばへ来たとき、誰も見ていなかったので、ぼくは冒険への第一歩を踏み出し、上着の両ポケットへ乾パンを詰め込んだ。
馬鹿だったと言われても仕方がない。確かに、愚かで無鉄砲なことをしようとしていた。だが、できるかぎり用心はしておくつもりだった。この乾パンがあれば、何か起きても、少なくとも翌日のかなり遅くまでは飢えずに済む。
次に拳銃を二丁手に入れた。火薬角と弾はすでに持っていたので、武装は十分だと思った。
頭にあった計画そのものは、悪くなかった。停泊地の東側を外海から隔てる砂州を歩き、昨夕見つけた白い岩を探し、そこにベン・ガンが舟を隠しているかどうか確かめるのだ。いまでも、確かめる価値のあることだったと思う。だが、柵を出る許可がもらえないのはわかっていたので、誰も見ていないときに黙って抜け出すしかなかった。そのやり方があまりに悪かったため、計画そのものまで間違ったものになってしまった。けれど、ぼくはまだ子どもで、もう決心していた。
やがて、実にうまい機会が来た。郷士とグレイが船長の包帯を手伝っていて、行く手をふさぐ者はいなかった。ぼくは一気に柵を越え、いちばん深い木立へ駆け込んだ。いなくなったと気づかれる前に、仲間の声も届かぬところまで来ていた。
これが二度目の愚行だった。小屋を守る無傷の大人を二人しか残さなかったのだから、最初よりはるかに悪かった。だが最初と同じく、これもまた、ぼくら全員を救う助けになった。
ぼくは島の東海岸をまっすぐ目指した。停泊地から見つかる危険をなくすため、砂州の外海側を歩くつもりだったからだ。まだ暖かく、日も照っていたが、午後はすでに遅くなっていた。高い森の間を進んでいくと、前方の遠くから、絶えない波のとどろきだけでなく、葉の激しく揺れる音や枝のこすれる音も聞こえた。いつもより強い海風が吹いているのだとわかった。やがて冷たい風が届き始め、もう少し進むと森の開けた縁へ出た。海は水平線まで青く、日を受けて輝き、波は浜辺に泡を投げ上げて砕けていた。
宝島の周りで、静かな海を見たことはない。頭上に太陽が照りつけ、風がひと息もなく、水面がなめらかで青くても、外側の海岸には、いつも大きな波が押し寄せた。昼も夜も、とどろき、とどろき続けた。島に、その音の届かぬ場所があるとは、ほとんど思えない。
ぼくは大いに気分よく波打ち際を歩いた。もう十分南へ来たと思うと、深い茂みを隠れみのにして、用心深く砂州の背へ這い上がった。
背後には外海、前には停泊地があった。海風は、異様な強さで早くも吹き尽くしてしまったかのように、もうやんでいた。代わって、南や南東から弱く移り気な風が吹き、大きな霧の塊を運んできた。骸骨島の風下にある停泊地は、最初に入ったときと同じく、静かな鉛色だった。波ひとつない鏡のような水面に、ヒスパニオラ号がマストの頂から喫水線まで、そっくり映っていた。帆桁の先にはジョリー・ロジャーが垂れていた。
船べりにはギグが一艘つき、船尾の腰掛けにシルバーがいた。あの男だけは、いつでも見分けがついた。船の船尾の舷墻には二人の男が身を乗り出していた。一人は赤い帽子で、数時間前、柵にまたがっているのを見た、まさにあの悪党だった。どうやら話し、笑っているらしかった。だが、一マイル以上も離れていては、もちろん何を言っているのか聞こえなかった。
突然、この世のものとも思えぬ恐ろしい金切り声が起きた。最初はひどく驚いたが、すぐフリント船長の声だと思い出した。主人の手首に止まる鳥の鮮やかな羽まで、見分けられるような気がした。
ほどなくボートは船を離れて岸へ向かい、赤い帽子の男と連れは、船室の昇降口から下へ降りていった。
ちょうどそのころ、太陽は望遠鏡山の陰へ沈んだ。霧が急速に濃くなり、本格的に暗くなり始めた。その晩のうちに舟を見つけるには、時間を無駄にできなかった。
茂みの上にはっきり見える白い岩は、まだ砂州の先、八分の一マイルほど向こうにあった。低木の間を、ときには四つん這いになって進むので、たどり着くにはかなりかかった。ざらついた岩肌に手を置いたころには、ほとんど夜になっていた。そのすぐ下には、緑の芝の、ごく小さなくぼ地があった。土手と、膝ほどの高さに密生する下草に隠されていた。その真ん中に、確かにヤギ皮の小さなテントがあった。イングランドでジプシーが持ち歩くものに似ていた。
ぼくはくぼ地へ降り、テントの端を持ち上げた。そこにベン・ガンの舟があった。これほど手作りらしい手作りもない。しなやかな木で組んだ粗末でいびつな骨組みに、毛を内側にしてヤギ皮を張ってあった。ぼくにとっても小さ過ぎるほどで、大人を乗せて浮くとは、とても思えなかった。できるだけ低く横木の腰掛けが一つ取りつけられ、船首には足を突っ張る板のようなものがあり、進むための両端に羽のついた櫂が一本あった。
そのときは、古代ブリトン人が作ったようなコラクル[訳注:木の骨組みに皮などを張った、軽い小舟]を見たことがなかった。だが、のちに見たので、ベン・ガンの舟を説明するなら、人間が最初に作った、いちばん出来の悪いコラクルのようだったと言うのが、いちばん近いと思う。それでも、コラクルの大きな長所だけは確かに備えていた。非常に軽く、持ち運びやすかったのだ。
舟を見つけたのだから、一度の抜け出しとしては、もう十分だったと思うだろう。だが、そのあいだに、ぼくには別の考えが浮かんでいた。すっかりその気になり、スモレット船長に真正面から反対されても、実行したかもしれない。夜陰に紛れて漕ぎ出し、ヒスパニオラ号の綱を切り、どこへなりとも勝手に流れ着かせるのだ。朝の攻撃で撃退された反逆者たちは、いま何よりも、錨を上げて逃げ出したがっていると、ぼくはすっかり思い込んでいた。それを阻めれば素晴らしい。そして、見張りにはボートを残していないとわかった今、たいした危険もなくできそうに思えた。
ぼくは腰を下ろして暗くなるのを待ち、乾パンをたっぷり食べた。目的には、このうえなく都合のよい夜だった。霧はもう空を残らず覆っていた。昼の最後の光が薄れ、消えると、宝島は完全な闇に沈んだ。ついにコラクルを肩に担ぎ、夕食を取ったくぼ地から、つまずきながら手探りで出たとき、停泊地全体で見えるものは、二つの光だけだった。
一つは岸の大きなたき火で、その周りでは、負けた海賊たちが沼地で酒盛りをしていた。もう一つは闇の中のぼんやりした光で、停泊する船の位置を示していた。船は引き潮に向きを変え、船首がこちらを向いていた。明かりは船室にしかなく、ぼくに見えたのは、船尾の窓から漏れる強い光が霧に映ったものだけだった。
引き潮はすでにしばらく続いていた。ぼくは何度も足首より深く沈みながら、ぬかるんだ砂地を長く歩いて、ようやく退いていく水際へ達した。それから少し水へ入り、力と工夫を使って、コラクルを底が下になるよう水面へ下ろした。
第二十三章 引き潮に流されて
コラクルは――この舟との付き合いが終わるまでに、嫌というほど思い知ったことだが――ぼくほどの背丈と体重の者には、とても安全な舟だった。浮力があり、波も巧みに乗り越えた。だが、扱うには、これほどひねくれたいびつな舟もなかった。どうしようと、前進するより横流れするほうが多く、いちばん得意な動きは、くるくる回ることだった。ベン・ガン自身も、「癖がわかるまでは妙に扱いにくい」と認めていた。
確かに、ぼくはその癖を知らなかった。舟は行きたい方向以外の、あらゆる方向へ向いた。たいていは横腹を先にして流れ、潮がなければ、絶対に船へたどり着けなかったと思う。幸い、ぼくがどう櫂を動かしても、潮はずっと運んでくれた。ヒスパニオラ号はその通り道にあり、外しようもないほどだった。
初め、船は闇よりさらに黒い染みのように前方へ浮かんだ。やがて帆桁と船体が形を取り始めた。そして、次の瞬間と思えるほどに――進むほど引き潮は速くなっていたのだ――ぼくは錨綱のそばへ来て、それをつかんでいた。
綱は弓弦のように張り詰めていた。潮が強く、船を錨から引き離そうとしていた。暗闇の船体の周囲では、さざめく流れが小さな山川のように、泡立ち、しゃべっていた。船乗りナイフでひと切りすれば、ヒスパニオラ号は潮に乗って勢いよく流れ出すはずだった。
ここまではよかった。だが、そのとき思い出した。張り詰めた綱を急に切れば、蹴り上げる馬と同じくらい危険なのだ。無鉄砲にも船を錨から切り離したら、十中八九、ぼくもコラクルも水面から跳ね飛ばされてしまう。
これで、ぼくはすっかり手が止まった。運がまた特別に味方してくれなければ、計画をあきらめるしかなかっただろう。だが、南東や南から吹き始めた弱い風は、日没後、南西へ回っていた。考え込んでいるちょうどそのとき、ひと吹きの風がヒスパニオラ号をとらえ、潮に逆らって押し戻した。うれしいことに、手の中の綱が緩み、それをつかんでいた手が、一瞬、水の下へ沈んだ。
そこでぼくは決心し、ナイフを取り出して歯で開き、綱のよりを一本ずつ切った。ついに二本だけで船がつながるところまで切ると、じっと待った。もう一度風が吹き、張りが緩んだときに、最後の二本を切るつもりだった。
そのあいだじゅう、船室から大声が聞こえていた。だが、正直なところ、ほかのことで頭がいっぱいで、ほとんど耳を貸していなかった。今はほかにすることがなくなったので、もっと注意して聞き始めた。
一人は、昔フリントの砲手だった艇長、イスラエル・ハンズの声だとわかった。もう一人は、もちろん、あの赤い寝帽の男だった。二人とも明らかに酔っていて、まだ飲んでいた。聞いているうちにも、一人が酔った声を上げ、船尾の窓を開けて、何かを放り出した。空き瓶だろうと思った。だが、酔っているだけではなかった。二人とも激しく怒っているのは明らかだった。悪態が雹のように飛び交い、ときおり、これでは殴り合いになるに違いないと思うほど、怒鳴り声が爆発した。だが、そのたびに口論はいったん収まり、しばらく低い不平声になる。そして次の爆発が起き、また何事もなく過ぎた。
岸では、木々の間に大きな野営の火が、暖かく赤く燃えていた。誰かが、単調な古い船乗り歌を、うなるように歌っていた。節の終わりごとに声が下がって震え、歌い手の根気が尽きるまで終わりそうになかった。航海中に何度も聞いた歌で、こんな文句を覚えていた。
「七十五人、海へ出て、
生きて戻るは、ただ一人。」
朝にあれほど大勢の仲間を失った一団には、あまりにも悲しく、ぴったり過ぎる歌だと思った。だが、見たところ、あの海賊たちはみんな、自分たちが航海する海と同じほど、情け容赦がなかった。
ついに風が来た。スクーナー船は闇の中で横へずれ、こちらへ近づいた。綱がまた緩むのを感じ、ぼくは力いっぱい最後の繊維を切り抜いた。
風はコラクルにはほとんど効かず、ぼくはたちまちヒスパニオラ号の船首へ押し流された。同時にスクーナー船は、潮を横切って、船首と船尾を入れ替えるように、ゆっくり回り始めた。
いつ水をかぶってもおかしくないと思い、ぼくは必死になって動いた。コラクルをまっすぐ船から押し離せないとわかると、今度は船尾へ向けて押し進めた。ようやく危険な隣人から離れ、最後のひと押しをしたとき、手に細い綱が触れた。船尾の舷墻を越えて、水へ垂れていたものだった。ぼくは即座にそれをつかんだ。
なぜそんなことをしたのか、自分でもよくわからない。初めはただの反射だった。だが、握ってみて、しっかり結ばれているとわかると、好奇心が勝ち始めた。船室の窓をひと目のぞこうと決めた。
綱を手繰り寄せ、十分近づいたと思うと、ひどい危険を冒して半ば腰を上げた。すると、船室の天井と内部の一部が見渡せた。
そのころには、スクーナー船と小さな連れ舟は、かなり速く水を滑っていた。すでに、たき火と並ぶところまで来ていた。船は無数の波紋を踏み越え、絶えずざぶざぶと音を立てていた。船乗りのいう、船が大声で「しゃべっている」状態だった。窓枠の上まで目を出すまでは、見張りがなぜ気づかないのか理解できなかった。だが、ひと目で十分だった。不安定な小舟からは、ひと目以上見る勇気もなかった。見えたのは、ハンズと連れの男が、互いの喉へ手をかけ、死にものぐるいで組み合っている姿だった。
ぼくはまた腰掛けへ身を落とした。危うく水へ落ちるところで、ぎりぎり間に合った。しばらく、煙たいランプの下で一緒に揺れる、あの怒りに赤く染まった二つの顔しか見えなかった。目を閉じ、また闇に慣らそうとした。
終わりのない歌も、ついに終わっていた。たき火の周りの人数の減った一団が、ぼくの何度も聞いた歌を、いっせいに歌い出した。
「死人の箱に十五人――
ヨーホーホー、ラム酒一本!
残りは酒と悪魔が片づけた――
ヨーホーホー、ラム酒一本!」
まさに今、ヒスパニオラ号の船室でも、酒と悪魔がずいぶん忙しく働いている、と思ったそのとき、コラクルが突然ぐらりと揺れた。同時に大きく横を向き、進路が変わったようだった。そのあいだに、速度も妙に増していた。
ぼくはすぐ目を開けた。周囲では小さな波が、鋭いざわざわした音を立てて崩れ、かすかに燐光を放っていた。まだ数ヤード前のヒスパニオラ号の航跡に巻き込まれていたが、船自身もよろめいているようだった。暗い夜を背景に、帆桁が少し揺れるのが見えた。いや、よく見ていると、船もまた南へ回っているのは確かだった。
肩越しに後ろを見ると、心臓が肋骨へ跳ねついた。真後ろに、たき火の赤い光があった。潮は直角に向きを変え、背の高いスクーナー船と、踊るような小さなコラクルを、一緒に回していた。ますます速く、ますます高く泡立ち、ますます大きくうなりながら、狭い海峡を抜け、外海へ渦を巻いて流れていった。
突然、前のスクーナー船が激しく横へ振れ、たぶん二十度ほど向きを変えた。ほとんど同時に、船上から叫び声が続けざまに上がった。昇降口の梯子を踏み鳴らす足音が聞こえた。二人の酔っぱらいも、ようやく喧嘩をやめさせられ、災難に気づいたのだとわかった。
ぼくは、その頼りない小舟の底へ平たく横たわり、心から自分の魂を造り主にゆだねた。海峡の出口には荒れ狂う砕け波の帯があり、そこへ突っ込めば、苦しみはすぐ終わるに違いないと思った。死ぬことには耐えられるかもしれなかった。だが、迫ってくる最期を見つめることには耐えられなかった。
そのまま何時間も横たわっていたのだろう。波に絶えずあちらこちらへ打ちやられ、ときおり飛沫に濡れ、次に舟が落ち込めば死ぬのだと、ずっと思い続けていた。次第に疲れがのしかかった。恐怖のただ中でも、心はしびれ、ときおり意識がぼんやりした。ついに眠りが訪れ、海に翻弄されるコラクルの中で、ぼくは故郷と、懐かしい「ベンボー提督亭」の夢を見た。
第二十四章 小舟の航海
目を覚ますと、あたりはすっかり明るくなり、ぼくは宝島の南西端で波に揺られていた。日は昇っていたが、巨大な望遠鏡山の陰になって、まだ姿は見えない。こちら側の山肌は恐ろしい断崖となって、ほとんど海にまで落ちこんでいた。
ホールボウリン岬とミズンマスト丘がすぐそばにあった。丘は裸で黒々とし、岬は高さ四十か五十フィートの崖に囲まれ、その裾には崩れ落ちた大岩が山をなしていた。岸までは四分の一マイルもなかったので、まずは漕ぎ寄せて上陸しようと思った。
だが、その考えはすぐに捨てた。崩れた岩のあいだで砕け波が噴き上がり、うなっていた。大きな響きが次々とこだまし、激しいしぶきがひっきりなしに舞い上がっては降りそそぐ。これ以上近づけば、荒れた岸にたたきつけられて死ぬか、頭上に張り出した岩壁を登ろうとして、むなしく力を使い果たすだけだとわかった。
それだけではない。平らな岩の上には、ぬらぬらした巨大な怪物が這い集まっていた。途方もなく大きな、柔らかいカタツムリとでもいうようなやつらが、四十匹とも六十匹ともつかぬ群れをなし、大きな音を立てて海に飛びこんだり、吠え声を岩に響かせたりしていたのだ。
あとで知ったのだが、あれはアシカで、まるで害のない動物だった。だが、その姿に加え、岸は険しく、波は高いとあっては、その上陸場所にうんざりするには十分すぎた。あんな危険に飛びこむくらいなら、海の上で飢え死にするほうがましだと思った。
一方、前方には、もっとよさそうな場所があった。ホールボウリン岬の北では陸が大きく奥へ引っこみ、干潮になると黄色い砂浜が長々と姿を現す。そのさらに北には、もう一つ岬が突き出ている。海図に森の岬と記されていた場所で、背の高い緑の松に埋まり、その木々は海ぎわまで続いていた。
宝島の西海岸一帯には北へ向かう潮流があると、シルバーが言っていたのを思い出した。今いる位置から見ても、ぼくはすでにその流れに乗っているらしい。そこでホールボウリン岬をあとにし、もっと上陸しやすそうな森の岬に挑むまで、力を温存することにした。
海には、大きく滑らかなうねりがあった。風は南から穏やかに吹きつづけ、潮流とぶつからないので、波は崩れることなく盛り上がっては沈んだ。
そうでなかったら、ぼくはとうに命を落としていただろう。だが、この海では、小さく軽いぼくの丸い皮舟は、驚くほど楽々と安定して波に乗った。舟底に寝たまま、舷から目だけを出していると、青い大きな波頭がすぐ頭上にせり上がることが何度もあった。それでも小舟は、ちょっと跳ね、ばねに乗ったように踊るだけで、向こう側の波の谷へ、鳥のようにふわりと滑りこんでいくのだった。
しばらくすると、ぼくはすっかり大胆になり、起き上がって櫂さばしを試してみた。ところが、この小舟は重心がほんの少し変わるだけで、動きが激変する。身じろぎしたとたん、舟はそれまでの優しい踊りをやめ、目のくらむような急な水の斜面をまっすぐ駆け下りた。そしてしぶきを噴き上げながら、次の波の横腹にへさきを深々と突っこんだ。
びしょぬれになったぼくは、怖くなって、たちまち元の姿勢に戻った。すると小舟も落ち着きを取り戻したらしく、さっきと同じように、波のあいだを優しくぼくを運んでいった。余計な手出しをしてはいけないのは明らかだ。だが、進む方向を少しも変えられないのなら、いったいどうやって陸へたどりつけるというのだろう。
ひどく恐ろしくなったが、それでも冷静さは失わなかった。まず、細心の注意を払いながら、船乗り帽で少しずつ舟の水を汲み出した。それからもう一度、舷の上に目を出し、小舟がどうやってこれほど静かにうねりを抜けていくのか、よく観察してみた。
一つ一つの波は、岸や船の甲板から見るような、滑らかでつややかな大きな山ではなかった。実際は陸上の山並みそのもので、峰もあれば平らなところも谷もある。小舟は自然に任せておくと、右に左に向きを変え、いわばその低いところを縫って進み、急な斜面や、崩れかかる高い波頭を避けていたのだ。
「なるほど」とぼくは思った。「ここに寝たまま、釣り合いを崩さないようにしていればいいんだ。でも、舷から櫂を出して、平らなところで、ときどき一、二回、陸のほうへ押してやることならできるはずだ。」
思いつくが早いか、実行した。両肘をついた、ひどく苦しい姿勢で寝そべり、ときどき弱々しく一、二度漕いでは、へさきを岸へ向けた。
骨の折れる、はかどらない仕事だったが、それでも確かに岸へ近づいていた。森の岬にさしかかるころには、その先端に上陸するのはどうしても無理だとわかったものの、東へ数百ヤードは寄せることができていた。もう岸はすぐそこだった。涼しげな緑の梢が、そよ風にそろって揺れているのも見える。次の突端には必ずたどりつけると、ぼくは確信した。
まったく、ちょうどいいころだった。喉の渇きに苦しめられはじめていたのだ。頭上から照りつける太陽、波に幾千にも反射する光、浴びては乾く海水で唇にまでこびりついた塩。すべてが合わさって、喉は焼けつき、頭はずきずき痛んだ。すぐ近くの木々を見ると、あまりの恋しさに気分が悪くなるほどだった。だが潮流はたちまちぼくを岬の向こうへ運び、次の海面が開けたとき、ぼくの思いを一変させるものが目に飛びこんできた。
真正面、半マイルもないところを、帆を張ったヒスパニオラ号が走っていた。当然、捕まるに違いないと思ったが、水が欲しくてたまらなかったので、それを喜ぶべきか悲しむべきか、自分でもわからなかった。そして答えを出すよりずっと早く、驚きが心を占め、ただぽかんと見つめるほかなくなった。
ヒスパニオラ号は主帆と二枚のジブ[訳注:船首に張る三角帆]を揚げ、その美しい白い帆布は、雪か銀のように日に輝いていた。最初に見たときは、どの帆も風をはらみ、およそ北西へ針路を取っていたので、乗っている連中は島を回って停泊地へ戻るつもりなのだろうと思った。ところが、やがて船はますます西へ向きを変えはじめた。ぼくを見つけ、追おうとして回頭しているのかと思った。だが、とうとう船首をまっすぐ風上に向け、帆にまともに裏風を受けると、帆をばたつかせたまま、しばらくなすすべもなく止まってしまった。
「へたくそめ」とぼくは言った。「まだぐでんぐでんに酔っぱらってるんだな。」
スモレット船長がいたら、連中をどんなに飛び回らせただろう、とぼくは思った。
そのうちスクーナー船は、しだいに風下へ向きを変え、反対側から風をはらんだ。一分ほど勢いよく走ると、またもや船首を真正面から風に突っこんで止まった。同じことを何度も何度も繰り返す。あちらへこちらへ、北へ南へ東へ西へ、ヒスパニオラ号は突進したり飛び出したりしたが、そのつど最後には、初めと同じように帆をむなしくばたつかせるだけになった。誰も舵を取っていないことは明らかだった。だとすれば、船の連中はどこにいるのだろう。酔いつぶれているか、船を捨てたか、どちらかだと思った。ひょっとして乗りこめれば、船を船長に返せるかもしれない。
潮は小舟もスクーナー船も、同じ速さで南へ運んでいた。スクーナー船の走り方といえば、あまりにでたらめで途切れがちで、そのうえ風に立って動けなくなる時間が毎回あまりに長いので、後退こそしていないかもしれないが、前にはちっとも進んでいなかった。思い切って起き上がり、櫂を使いさえすれば、追いつけるに違いない。この計画には冒険の匂いがして、ぼくを奮い立たせた。前の昇降口のわきにある飲み水の小樽を思うと、湧き上がる勇気は倍にもなった。
ぼくは起き上がった。ほとんどすぐに、またもやしぶきの洗礼を受けたが、今度はくじけず、力と注意のかぎりを尽くして、舵取りのいないヒスパニオラ号を追いはじめた。一度は大波をまともにかぶり、鳥のように胸をどきどきさせながら、漕ぐのをやめて水を汲み出さなければならなかった。だが、しだいにこつがわかり、波のあいだで小舟を操れるようになった。ときおり、へさきに波がぶつかり、顔に泡が飛んでくるだけだった。
今やスクーナー船にぐんぐん近づいていた。舵柄があちこちにぶつかるたび、その真鍮の金具がきらめくのが見えたが、それでも甲板には人影一つ現れない。船は捨てられたと考えるほかなかった。そうでなければ、連中は船室で酔いつぶれているのだ。ならば、昇降口を閉ざして閉じこめ、船を好きにできるかもしれない。
しばらくのあいだ、船はぼくにとっていちばん困る状態になっていた。じっと止まっていたのだ。船首はほぼ真南を向いていたが、もちろん絶えず左右に振れていた。風下へそれるたび、帆が半ば風をはらみ、その力ですぐまた風上へ向き直る。これがいちばん困るといったのは、帆は大砲のように鳴り、滑車は甲板を転がってぶつかり、見るからに無力なありさまでありながら、それでも船はぼくから遠ざかっていたからだ。潮流の速さだけでなく、横流れする分まで加わっていた。それも当然、かなりの速さだった。
だが、とうとう好機が来た。数秒のあいだ風がぐっと弱まり、潮がゆっくりと船の向きを変えた。ヒスパニオラ号は船体の中央を軸にのろのろ回り、ついに船尾をこちらへ向けた。船室の窓はまだ大きく開き、テーブルの上のランプも、昼になってなお燃えていた。主帆は旗のようにだらりと垂れている。潮に流されるほかは、船はぴたりと止まっていた。
ついさっきまでは、むしろ引き離されていたのだが、今こそ力を倍にして漕ぎ、再び獲物に追いつきはじめた。
百ヤードもないところまで近づいたとき、風が突然また吹きつけた。船は左舷から風をはらみ、ツバメのように身を傾け、滑るように走り出した。
最初は絶望したが、次の瞬間には喜びに変わった。船はぐるりと回り、真横をぼくに向けた。さらに回りながら、ぼくらを隔てる距離を半分、三分の二、そして四分の三と詰めてきた。船首の下で波が白く煮え立つのが見えた。小舟の低い位置から見上げる船は、途方もなく高くそびえていた。
そのとき、ぼくは突然、事態を悟った。考える暇も、身を救うために動く暇も、ほとんどなかった。ぼくがうねりの頂に乗ったとき、スクーナー船は次のうねりを越えて傾きかかってきた。船首から突き出た斜檣が、ぼくの頭上に来た。ぼくは跳ね起き、そのまま小舟を水中へ踏み沈めて跳び上がった。片手で斜檣の先の延長材にしがみつき、足を支え綱と控え綱のあいだに引っかけた。そこで息を切らしてぶら下がっていると、鈍い衝撃が伝わってきた。スクーナー船が小舟に乗りかかってぶつかったのだ。こうしてぼくは、退路を断たれたままヒスパニオラ号に取りついたのだった。
第二十五章 ジョリー・ロジャーを降ろす
ようやく斜檣の上で体を支える場所を見つけたとたん、先端のジブがはためき、銃声のような音を立てて反対側から風をはらんだ。逆向きの力を受けて、スクーナー船は竜骨まで震えた。だが次の瞬間、ほかの帆はまだ風を受けていたので、そのジブはまたばたんと元に戻り、だらりと垂れた。
ぼくは危うく海へ振り落とされるところだった。もう一刻もぐずぐずせず、斜檣を這って戻り、頭から甲板へ転がりこんだ。
そこは船首楼の風下側だった。まだ風をはらんでいる主帆に遮られ、後部甲板の一部は見えなかった。人影は一つもない。反乱以来一度も水拭きされていない甲板には、幾人もの足跡が残っていた。首の割れた空き瓶が一本、排水溝の中を、生き物のようにあちこち転がっていた。
突然、ヒスパニオラ号が真正面から風に立った。背後のジブが大きく鳴り、舵がどしんと打ちつけられ、船全体が気分の悪くなるような揺れ方をして震えた。同時に主帆のブーム[訳注:帆の下辺を張る横棒]が船内側へ振れこみ、帆脚綱が滑車の中でうなった。そして風下側の後部甲板が目に入った。
見張りの二人は、確かにそこにいた。赤帽の男は仰向けになり、てこ棒のように硬直し、十字架にかけられた者のように両腕を広げ、開いた唇から歯をのぞかせていた。イスラエル・ハンズは船べりの内壁に寄りかかり、顎を胸に落とし、両手を開いて前の甲板に投げ出していた。その顔は日焼けの下で、獣脂ろうそくのように白かった。
しばらく船は、たちの悪い馬のように跳ねたり横に逃げたりしつづけた。帆がこちらから、次にはあちらから風をはらみ、ブームが左右へ振れるたび、マストはその力に大きくきしんだ。ときには細かいしぶきが雲のように船べりを越え、船首がうねりにどしんとぶつかった。帆や索具を備えたこの大きな船は、今はもう海底へ沈んだ、手作りのいびつな小舟より、同じ海をはるかに荒っぽく渡っていたのだ。
スクーナー船が跳ねるたび、赤帽の男はあちらこちらへ滑った。だが、ぞっとすることに、どれほど乱暴に揺すられても、姿勢も、歯をむいた笑い顔も、少しも変わらなかった。船が跳ねるたび、ハンズのほうはますます縮こまり、甲板へ沈みこむように見えた。足は次第に前へ滑り出し、体全体が船尾のほうへ傾いて、顔は少しずつぼくから見えなくなった。最後には耳と、ほつれたもみあげの巻き毛しか見えなくなった。
それと同時に、二人のまわりの甲板に、黒ずんだ血が飛び散っていることに気づいた。酒に酔って怒り狂い、互いに殺し合ったのだと、ぼくはほぼ確信した。
そうして見つめ、考えていると、船の揺れが一瞬収まったとき、イスラエル・ハンズが半ば身をひねった。そして低くうめき、体をよじりながら、最初に見た姿勢へ戻った。そのうめきには痛みと、死にかけた者の衰弱がにじんでいた。だらりと開いた顎といい、ぼくは胸を突かれた。だが、リンゴ樽の中で盗み聞きした話を思い出すと、哀れみはすっかり消えた。
ぼくは船尾へ向かい、主檣のところまで歩いた。
「乗船しましたよ、ハンズさん」と、皮肉をこめて言った。
ハンズは重たげに目を動かしてこちらを見たが、驚きを示す力も残っていなかった。ただ一言、「ブランデー」と言うのがやっとだった。
ぐずぐずしてはいられないと思った。再び甲板を横切って振れてきたブームをかわし、船尾へすり抜け、昇降階段を下りて船室へ入った。
想像もつかないほどの荒れようだった。海図を探して、鍵のかかった場所という場所がこじ開けられていた。悪党どもは野営地のまわりの沼を歩いたまま、ここで酒を飲んだり相談したりしたので、床には泥が厚くこびりついていた。鮮やかな白で塗られ、金色の玉縁で飾られた隔壁には、汚れた手形が模様のようについていた。隅では何十本もの空き瓶が、船の揺れにつれて触れ合い、ちりちり鳴っていた。博士の医学書の一冊がテーブルに開いたまま置かれ、ページは半分もむしり取られていた。たぶん、パイプに火をつけるのに使ったのだろう。このすべての中で、ランプはまだ煙まじりの明かりを放っていた。くすんだ褐色の、暗い光だった。
酒の貯蔵所へ行くと、樽はすべてなくなり、瓶の酒も驚くほど大量に飲み干されて、捨てられていた。反乱が始まって以来、連中は誰一人、一度たりとも正気ではなかったに違いない。
あちこち探して、ハンズには少しブランデーの残った瓶を見つけた。自分用には乾パンと果物の漬物、干しブドウを大きな一房、それにチーズをひとかけ掘り出した。それらを持って甲板へ上がり、自分の食料は舵頭の後ろ、艇長のハンズの手がとても届かないところへ置いた。それから前へ行って飲み水の小樽にかじりつき、たっぷりと水を飲んだ。そのあとになって初めて、ハンズにブランデーを渡した。
ハンズは瓶を口から離すまでに、一ジル[訳注:約四分の一パイント]は飲んだに違いない。
「ああ」とハンズは言った。「畜生、こいつが欲しかったんだ!」
ぼくはもう自分の場所に座り、食べはじめていた。
「ひどい怪我なの?」
ぼくは尋ねた。
ハンズはうなった。いや、吠えたと言ったほうがいいかもしれない。
「あの医者が船にいりゃあ」とハンズは言った。「ちょいと診てもらえば、すぐよくなるんだがな。ところが、おれにはからきし運がねえ。それがいけねえんだ。あの役立たずなら、とっくにくたばってるぜ」と、赤帽の男を示して付け加えた。「どうせ船乗りともいえねえ野郎だった。で、おめえはどこから来やがった?」
「そうだな」とぼくは言った。「この船を取り返しに来たんだよ、ハンズさん。だから、これからぼくがいいと言うまでは、ぼくを船長だと思ってもらいたいね。」
ハンズはひどく不機嫌そうにぼくを見たが、何も言わなかった。頬にいくらか血の気が戻っていた。それでもまだ重病人の顔つきで、船が揺れるたび、ずるずると甲板へ沈みこんでいた。
「それからね」とぼくは続けた。「あの旗は困るよ、ハンズさん。悪いけど降ろさせてもらう。あんなのなら、ないほうがましだ。」
ぼくはまたブームをかわして旗綱へ走り、忌まわしい黒旗を引き降ろし、海へ放り捨てた。
「国王陛下万歳!」と帽子を振って叫んだ。「これでシルバー船長もおしまいだ。」
ハンズは顎を胸につけたまま、鋭く、ずるそうな目でぼくを見ていた。
「どうやら」と、ついに口を開いた。「どうやら、ホーキンズ船長、おめえも陸に上がりてえんだろうな。ひとつ相談しねえか。」
「もちろん」とぼくは言った。「喜んで、ハンズさん。話してよ。」
そして旺盛な食欲で、また食事に取りかかった。
「こいつはな」と、ハンズは死体に向けて弱々しく顎をしゃくった。「オブライエンて名で、生粋のアイルランド野郎だった。おれとこいつで帆を揚げて、船を戻そうとしたんだ。だが、こいつはもう死んじまった。船底のどぶ水みてえに、すっかりな。さて、誰がこの船を動かす? おれには見当もつかねえ。おれが知恵を貸さねえかぎり、おめえには無理だろうよ。そこでだ。食い物と飲み物、それに傷を縛る古い襟巻きかハンカチをくれ。そうすりゃ、船の動かし方を教えてやる。お互い損はねえと思うがな。」
「一つ言っておくよ」とぼくは言った。「キッド船長の停泊地へは戻らない。北の入江に入って、静かに岸へ乗り上げさせるつもりなんだ。」
「わかってるとも!」とハンズは叫んだ。「おれだって、そこまで間抜けな陸者じゃねえ。見りゃわかるさ。ひと勝負して、負けたんだ。風上に立ってるのはおめえだよ。北の入江だと? おれに選り好みなんぞできるもんか。処刑埠頭までだって、船を走らせる手伝いをしてやらあ。畜生、本当だとも。」
なるほど、筋の通った話だと思った。ぼくらはその場で取り決めを交わした。三分後には、ぼくはヒスパニオラ号を順風に乗せ、宝島の海岸沿いに楽々と走らせていた。正午前に北端を回り、満潮までに風に逆らって北の入江へ戻れる見込みは十分あった。そこで安全に船を浜へ乗り上げさせ、潮が引いて上陸できるのを待てばいい。
それから舵柄を縛って固定し、船室へ下り、自分の箱から母にもらった柔らかな絹のハンカチを取り出した。ぼくが手を貸し、ハンズはそれで腿に受けた大きな刺し傷を縛った。血はまだ流れていたが、少し食べ、さらにブランデーを一、二口飲むと、目に見えて元気を取り戻した。体をまっすぐ起こし、声も大きく、はっきりして、すっかり別人のようになった。
風は申し分なかった。ぼくらは鳥のように風に乗って滑り、島の海岸は飛ぶように過ぎ去り、景色は刻々と変わった。じきに高地を通り過ぎ、丈の低い松がまばらに生えた、低い砂地の横を走っていた。それもすぐに過ぎ、島の北端をなす岩山の角を回った。
新米の船長として、ぼくはすっかり意気揚々としていた。明るい日差しも、次々に変わる海岸の景色も、うれしかった。水もおいしい食べ物も、今はたっぷりある。仲間を置き去りにしたことで激しく痛んだ良心も、この大手柄のおかげで静まっていた。ハンズが甲板を動くぼくをあざけるような目で追い、その顔に絶えず妙な笑いを浮かべてさえいなければ、もう何も望むことはなかったと思う。それは苦痛と衰弱のにじむ笑いでもあった。やつれた老人の笑いだった。だがそれだけではない。仕事をするぼくを抜け目なく、じっと、じっと見張る顔には、かすかな嘲りと、裏切りの影が潜んでいた。
第二十六章 イスラエル・ハンズ
思いどおりに吹いていた風は、今度は西へ回った。おかげで島の北東の角から北の入江の入口までは、いっそう楽に走れた。ただ、錨を下ろすすべがなく、潮がもっと満ちるまでは浜へ乗り上げるわけにもいかないので、時間を持て余した。ハンズは船を停めておく方法を教え、ぼくは何度も試した末に成功した。そして二人とも黙りこみ、もう一度食事をした。
「船長」と、やがてハンズは、あのいやな笑いを浮かべて言った。「ここにいる昔なじみのオブライエンを、海へ放りこんじゃくれねえか。おれはふだん、細けえことは気にしねえし、こいつを片づけたのも悪かったとは思っちゃいねえ。だが、飾りになる代物じゃねえだろう?」
「ぼくにはそんな力はないし、やりたくもないよ。そのまま寝ていてもらうさ」と、ぼくは答えた。
「こいつは縁起の悪い船だぜ、ジム。ヒスパニオラ号はな」と、ハンズは目をしばたたいて続けた。「このヒスパニオラ号じゃ、ずいぶん人が死んだ。おめえとおれがブリストルで乗りこんでから、気の毒な船乗りが大勢、あの世行きだ。こんなついてねえ船は見たことがねえ。たとえば、このオブライエンだ。こいつは死んでるな? ところで、おれは学がねえが、おめえは読み書きも勘定もできる。はっきり聞くがな、死んだ者はそれっきり死んだままか、それともまた生き返るのか?」
「体は殺せても、魂は殺せないよ、ハンズさん。それくらい知ってるでしょう」と、ぼくは答えた。「そこにいるオブライエンは、もう別の世界にいる。ぼくらを見ているかもしれないよ。」
「ほう!」とハンズは言った。「そいつは困ったな。人を殺しても、骨折り損みてえじゃねえか。とはいえ、おれの見たところ、幽霊なんぞたいしたことはできねえ。幽霊相手なら、賭けてみるさ、ジム。それに、おめえも腹を割って話してくれたことだし、ひとつ親切ついでに船室へ下りて、あれを持ってきてくれねえか。そう、あの……畜生、名前が出てこねえ。まあ、ワインを一本頼むぜ、ジム。このブランデーは頭に強すぎらあ。」
ハンズの口ごもり方は、どうもわざとらしかった。ブランデーよりワインのほうがいいなどという話も、まるで信じられなかった。何もかも口実なのだ。ぼくを甲板から追い払いたい。それは明らかだったが、何のためかは、どうしても想像がつかなかった。ハンズの目はぼくと一度も合わず、右へ左へ、上へ下へとさまよい、空を見たり、死んだオブライエンをちらりと見たりした。そのあいだずっと、笑っては舌を出し、いかにも後ろ暗く、きまり悪そうにしていた。何かたくらんでいることは、子供にだってわかる。だが、ぼくはすぐに返事をした。自分の有利な点がわかったし、こんなに鈍い男相手なら、疑っていることを最後まで隠せると思ったからだ。
「ワイン?」
ぼくは言った。「それはずっといいね。白にする? 赤にする?」
「まあ、どっちだってかまわねえよ、相棒」とハンズは答えた。「強くて、たっぷりありゃ、それでいいさ。」
「わかった」とぼくは答えた。「ポートワインを持ってくるよ、ハンズさん。でも、探し出すのにちょっとかかると思う。」
そう言って、できるだけ大きな足音を立てて階段を駆け下り、靴を脱ぐと、格子のある通路をそっと走り、船首楼のはしごを登って、前の昇降口から頭を出した。ハンズがぼくのそこからの出現を予想していないことはわかっていたが、それでもできるかぎり用心した。そして、ぼくのいちばん恐れていた疑いは、まさしく的中した。
ハンズはさっきの場所から起き、四つん這いになっていた。動くと脚がひどく痛むのは明らかだった。押し殺したうめきが聞こえたからだ。それでも、甲板を這っていく速さはたいしたものだった。三十秒もしないうちに左舷の排水溝へたどりつき、とぐろを巻いた綱の中から、長いナイフ、というより短い短剣を取り出した。柄のところまで血に染まっていた。ハンズは下顎を突き出してしばらく眺め、手に先端を当てて試すと、急いで上着の胸へ隠し、またもぞもぞと元の船べりへ戻った。
知るべきことは、それで十分だった。イスラエルは動ける。今では武器も持っている。あれほど苦労してぼくを追い払ったのだから、狙いがぼくなのは明らかだった。そのあとどうするつもりなのかは、もちろんわからない。北の入江から島を這って横断し、沼地の野営地まで行くのか。それとも長砲を撃ち、先に仲間が助けに来ることを当てにするのか。
だが、一つだけはハンズを信用していいと思った。その点では、ぼくらの利害がぴたりと一致していた。スクーナー船をどう扱うか、ということだ。二人とも、風波の避けられる場所に安全に乗り上げさせ、時が来たら、なるべく手間も危険もなく、また浮かべられるようにしたかった。それが済むまでは、間違いなく命は助かるだろうと思った。
そんなふうに考えをめぐらせながらも、体は休めていなかった。ぼくはそっと船室へ戻り、また靴を履き、手近なワインを一本つかんだ。そして、それを口実に、再び甲板へ姿を現した。
ハンズはぼくが離れたときと同じように、体をひとかたまりに崩して横たわり、光に耐える力もないかのようにまぶたを伏せていた。だが、ぼくが近づくと顔を上げ、手慣れた仕草で瓶の首を叩き落とし、いつもの「幸運を祈ってよ!」という乾杯の言葉とともに、ぐいとあおった。
それからしばらくじっと横になっていたが、やがて棒状のたばこを取り出し、噛む分を切ってくれと頼んだ。
「そいつをひと切れ切ってくれ」とハンズは言った。「おれはナイフを持ってねえし、持ってたところで、切る力もろくにねえ。ああ、ジム、ジム。おれはどうやら取り舵をしくじったらしい。最期の一噛みになるだろうが、切ってくれや。もうあの世へ出帆だ。間違いねえ。」
「切ってあげるよ」とぼくは言った。「でも、もしぼくがあんたで、そんなに具合が悪いと思うなら、キリスト教徒らしく、お祈りをするけどね。」
「なんでだ?」とハンズは言った。「なんでか、言ってみろ。」
「なんでだって?」
ぼくは叫んだ。「さっき死んだ人のことを聞いていたじゃないか。あんたは信頼を裏切り、悪事と嘘と人殺しに明け暮れてきた。今だって足もとには、あんたが殺した人が寝ている。それで、なんでかって聞くの? 神様にお慈悲を願うためだよ、ハンズさん。」
ぼくは少し熱くなっていた。ハンズが隠し持ち、腹黒い考えでぼくの命を奪おうとしている、血まみれの短剣を思ったからだ。ハンズはというと、ワインを大きく一口飲み、珍しくひどく厳かな調子で話しはじめた。
「三十年」とハンズは言った。「海を渡って、いいことも悪いことも、もっといいことも、もっと悪いことも見てきた。晴れも嵐も、食料切れも、刃物沙汰も、なんでもだ。だがな、これだけは言える。善いことをして得したやつは、まだ見たことがねえ。先に打って出るやつが、おれは好きだ。死人は噛みつかねえ。それがおれの考えよ。アーメン、そのとおり。さて、いいか」と、急に口調を変えた。「ばかな話はもうたくさんだ。潮も今ごろは十分満ちてるだろう。おれの言うとおりにしな、ホーキンズ船長。一気に乗りこんで、片づけちまおう。」
進む距離は全部で二マイルもなかったが、操船には細心の注意が必要だった。北の停泊地の入口は狭く浅いうえ、東西に横たわっていたので、船を入れるには巧みに操らなくてはならない。ぼくは機敏でよい部下だったと思うし、ハンズがすばらしい水先案内人だったことは、確かに言える。何度も向きを変え、浅瀬をかすめて入っていく、その確かさと鮮やかさは、見ていて気持ちがよいほどだった。
岬を越すとすぐ、陸がぐるりとぼくらを囲んだ。北の入江の岸も、南の停泊地と同じように、深い森に覆われていた。だが水面はもっと細長く、実際そうなのだが、川の河口という感じが強かった。真正面の南端には、朽ち果てかけた難破船が見えた。もとは三本マストの大船だったが、長いこと風雨にさらされ、水の滴る海藻が大きな網のようにまとわりついていた。甲板には岸の低木が根を下ろし、今は花をいっぱいに咲かせていた。哀れな眺めだったが、この停泊地が穏やかなことはわかった。
「ほら」とハンズは言った。「あそこを見ろ。船を乗り上げさせるには、うってつけの場所だ。平らないい砂地で、さざ波一つねえ。まわりは木に囲まれ、あの古船には庭みてえに花まで咲いてらあ。」
「乗り上げさせたら」とぼくは尋ねた。「どうやってまた浮かべるの?」
「こうするんだ」とハンズは答えた。「干潮に、向こう岸へ綱を渡す。でっけえ松の一本に回して、こっちへ戻し、巻き上げ機へひと巻きして、潮を待つ。満潮になったら全員で引く。そいつで、すんなり浮かぶってわけよ。さあ、小僧、構えろ。もう近いが、速すぎるぞ。少し右舷へ……そう……そのまま……右舷……左舷へ少し……そのまま……そのまま!」
ハンズが命令を出し、ぼくは息を詰めて従った。やがて突然、ハンズは叫んだ。「今だ、相棒、風へ立てろ!」
ぼくは舵柄をいっぱいに押した。ヒスパニオラ号はすばやく向きを変え、木々に覆われた低い岸へ、船首をまっすぐ向けて進んだ。
この最後の操船に夢中になり、それまで厳重に続けていたハンズへの見張りを、ぼくはいくらか緩めてしまった。そのときさえ、船が底に触れる瞬間を待つのに気を取られ、頭上に迫る危険をすっかり忘れていた。右舷から首を伸ばし、船首の前に大きく広がる波紋を眺めていたのだ。突然、不安に襲われて振り返らなければ、抵抗もできずに殺されていただろう。何かきしむ音を聞いたのかもしれないし、動く影を目の端でとらえたのかもしれない。猫のような本能だったのかもしれない。ともかく、振り返ったときには、ハンズは右手に短剣を握り、ぼくまでの距離をもう半分も詰めていた。
目が合った瞬間、二人とも大声を上げたに違いない。だが、ぼくの声は恐怖の甲高い悲鳴、ハンズの声は突進する雄牛のような怒号だった。同時にハンズは飛びかかり、ぼくは横へ、船首のほうへ跳んだ。その拍子に舵柄を放したので、それは勢いよく風下へはねた。たぶん、これで命が助かったのだ。舵柄がハンズの胸を横ざまに打ち、一瞬、その動きをぴたりと止めたからだ。
ハンズが立ち直る前に、ぼくは追い詰められていた隅から無事に抜け出した。今なら甲板いっぱいを使って逃げ回れる。主檣のすぐ前で足を止め、ポケットから拳銃を抜いた。ハンズはもう向き直り、またまっすぐ追ってきていたが、ぼくは落ち着いて狙いをつけ、引き金を引いた。撃鉄は落ちた。だが火も音も出なかった。火皿の火薬が海水で使い物にならなくなっていたのだ。ぼくは自分の不注意を呪った。どうしてもっと早く、たった一つの頼みである武器を、装填し直しておかなかったのだろう。そうしていれば今ごろ、人殺しの前を逃げるだけの羊になど、ならずにすんだのに。
怪我をしているのに、ハンズの速さは驚くほどだった。白髪まじりの髪が顔へ乱れかかり、その顔は必死の勢いと怒りのため、赤い船旗のように真っ赤だった。もう一丁の拳銃を試す暇はなかったし、試す気もあまりなかった。どうせ役に立たないとわかっていたからだ。一つだけは、はっきりしていた。ただ後ろへ退くわけにはいかない。さっき船尾でそうなりかけたように、すぐ船首へ追い詰められてしまう。そうなったら、血に染まった九か十インチの短剣が、この世でのぼくの最期の経験になる。ぼくはかなり太い主檣に両手のひらを当て、全神経を張りつめて待った。
ぼくがかわすつもりなのを見て、ハンズも止まった。一、二瞬、ハンズが動くふりをし、それに合わせてぼくが身を移すという駆け引きが続いた。故郷のブラック・ヒル入江の岩のまわりで、何度も遊んだのと同じことだった。だが、これほど激しく胸を鳴らして遊んだことなど、もちろん一度もなかった。それでも、やはり子供の遊びだ。腿を負傷した年配の船乗りが相手なら、負けはしないと思った。実際、勇気が戻ってきて、この先どうなるだろうと、ちらちら考える余裕さえ生まれた。かなり長く引き延ばせるのは確かだが、最後に逃げ切れる見込みはまるでなかった。
こうして向き合っていると、突然、ヒスパニオラ号が何かにぶつかり、よろめき、一瞬砂をこすったかと思うと、殴られたように急激に左舷へ傾いた。甲板は四十五度になり、大樽一杯ほどの水が排水孔からどっと流れこみ、甲板と船べりのあいだにたまった。
ぼくらは二人とも一瞬でひっくり返り、ほとんど同時に排水溝へ転がり落ちた。赤帽の死体も、両腕を広げたまま、硬直した体であとから転がってきた。あまり近くに落ちたので、ぼくの頭がハンズの足にごつんとぶつかり、歯ががちがち鳴った。そんな衝撃を受けながらも、先に立ち上がったのはぼくだった。ハンズは死体にからまっていた。突然傾いた甲板では、もう走って逃げられない。別の逃げ道を、しかも即座に見つけなければならなかった。敵はもう、手の届くところにいた。ぼくはとっさに後檣の横静索[訳注:マストを左右から支え、はしごにもなる綱]へ跳びつき、両手を交互に繰り出して一気によじ登った。上の横木に腰を下ろすまで、息もつかなかった。

ぼくはとっさに後檣の横静索へ跳びついた
すばやく動いたおかげで、命が助かった。上へ逃げるぼくを狙った短剣は、足もとの半フィートも下でないところを突いていた。イスラエル・ハンズは口を開き、ぼくを見上げたまま、驚きと落胆を刻んだ彫像のように立ち尽くしていた。
ようやく少し時間ができたので、ぼくはすぐに拳銃の火皿の火薬を替えた。一丁が使えるようになると、念には念を入れ、もう一丁は弾を抜き、初めから装填し直した。
この作業を見て、ハンズはすっかりうろたえた。さいころの目が自分に不利になったと悟りはじめたのだ。明らかにためらったあと、ハンズも重たげに横静索へ取りつき、短剣を歯にくわえて、ゆっくり苦しそうに登りはじめた。負傷した脚を引き上げるには、ひどく時間がかかり、何度もうめかなければならなかった。ハンズが三分の一を少し上がるころには、ぼくは落ち着いて準備を終えていた。そして左右の手に拳銃を構え、声をかけた。
「あと一歩でも来たら、ハンズさん」とぼくは言った。「頭を撃ち抜くよ! 死人は噛みつかないんだろう?」と、くすりと笑って付け加えた。
ハンズはたちまち止まった。顔の動きから、何か考えようとしているのがわかった。その考え方があまりに遅く、苦しそうなので、安全になったぼくは声を上げて笑った。やがてハンズは一、二度ごくりと唾を飲み、ひどく困り果てた表情のまま話し出した。しゃべるために短剣を口から外したが、それ以外はまったく動かなかった。
「ジム」とハンズは言った。「どうやら、おれとおめえは綱がからまっちまったらしい。取り決めを交わすしかねえな。さっき船が傾かなけりゃ、仕留めてたんだがな。おれには運がねえ。まったくよ。どうやら降参するしかねえらしい。だがジム、一人前の船乗りが、おめえみてえな船の小僧に旗を降ろすのは、つれえもんだぜ。」
ぼくは庭を歩く雄鶏のように思い上がり、にやにやしながら、その言葉を聞いていた。そのとき、ほんの一瞬で、ハンズの右手が肩の後ろへ引かれた。何かが矢のように空を鳴らした。衝撃、そして鋭い痛み。ぼくの肩はマストに縫いつけられていた。その瞬間のすさまじい痛みと驚きの中で、両手の拳銃がともに火を噴き、ともに手から落ちた。自分の意志でしたこととは、とても言えない。狙って撃ったのでないことだけは確かだ。落ちたのは拳銃だけではなかった。押しつぶされたような叫びを上げ、ハンズは横静索から手を放し、頭から海へ飛びこんだ。
第二十七章 「八レアル銀貨。」
船が傾いていたので、マストは大きく海上へ張り出し、横木に座ったぼくの真下には、入江の水面しかなかった。そこまで高く登っていなかったハンズは、そのぶん船に近く、ぼくと船べりのあいだに落ちた。一度、泡と血にまみれて水面に浮いたが、それきり沈んで、もう上がってこなかった。水が静まると、船腹の陰の、明るくきれいな砂の上に、体を丸めて横たわっているのが見えた。一、二匹の魚が、その体のわきをすばやく通り過ぎた。水の揺らぎで、ときどき少し動き、起き上がろうとしているように見えた。それでも、撃たれたうえに溺れたハンズは、確かに死んでいた。ぼくを殺そうとしたその場所で、魚の餌になったのだ。
それを確かめたとたん、ぼくは気分が悪くなり、力が抜け、恐怖に襲われた。熱い血が背中と胸を流れていた。肩をマストへ縫いつけた短剣は、焼けた鉄のように熱く感じられた。だが、ぼくを苦しめたのは、そうした現実の痛みではなかった。それなら、声も立てずに耐えられる気がした。恐ろしかったのは、横木からあの静かな緑の水へ、ハンズの死体のそばへ落ちることだった。
ぼくは爪が痛くなるほど両手でしがみつき、危険そのものを隠してしまうように目を閉じた。少しずつ正気が戻り、脈もふだんに近い速さへ落ち着いて、ようやく自分を取り戻した。
まず短剣を抜こうと思った。だが、深く刺さりすぎていたのか、勇気が足りなかったのか、激しく身震いして、やめてしまった。妙なことに、その身震いこそが助けになった。実は短剣は、ほんのわずかでぼくを外れるところだったのだ。皮膚をわずかに引っかけていただけで、その皮膚が身震いで裂けた。確かに血は前より勢いよく流れたが、体は自由になった。マストに留められているのは、上着とシャツだけだった。
それも勢いよく身を引いて引き裂き、右舷の横静索を伝って甲板へ戻った。イスラエルがたった今落ちた、海上に張り出した左舷の横静索へは、こんなに動揺している今、何があっても足をかける気になれなかった。
下へ降り、できるだけ傷の手当てをした。かなり痛み、血も盛んに流れていたが、深くも危険でもなく、腕を動かしても、それほど苦にはならなかった。それからあたりを見回した。いわば船はもうぼくのものなのだから、最後の乗客、死んだオブライエンも片づけようと思った。
先に言ったとおり、オブライエンは船べりへ投げ出され、ぞっとするほど不格好な操り人形のように横たわっていた。等身大ではある。だが、生きた人間の色や姿の美しさとは、なんという違いだろう。その位置なら、ぼくにも簡単に扱えた。悲惨な冒険を重ね、死体への恐怖もほとんど薄れていたので、ぼくはふすまの袋でも持つように腰を抱え、一度ぐいと力を入れて、海へ転がし落とした。大きな水音がし、赤い帽子が脱げて水面に浮いた。しぶきが収まると、オブライエンとイスラエルが並んで横たわっているのが見えた。二人とも、水の震えにつれてゆらゆら揺れていた。オブライエンはまだかなり若かったのに、頭はひどくはげていた。そのはげ頭を、自分を殺した男の膝に載せて寝ている。すばやい魚が、二人の上を行ったり来たりしていた。
今や船には、ぼく一人だった。ちょうど潮が引きはじめていた。太陽はもう沈む間際で、西岸の松の影が停泊地を横切り、甲板に模様を落としはじめていた。夕風が吹き出していた。東にある二つ峰の丘がかなり遮ってはいたが、それでも索具はかすかに歌いはじめ、遊んでいる帆はばたばたと揺れた。
船にとって危険だと気づいた。ジブはすぐに降ろし、甲板へ落としたが、主帆はもっと厄介だった。船が傾いたとき、当然ブームも舷外へ振り出され、その先端と一、二フィートほどの帆は、水にまで浸かっていた。そのため危険はいっそう大きいと思ったが、かかる力があまりに強く、手を出すのも怖かった。とうとうナイフを取り出し、揚げ綱を切った。帆の上端はたちまち落ち、大きくたるんだ帆布が水面いっぱいに広がった。だが、どれほど引いても引き降ろし綱は動かなかったので、ぼくにできるのはそこまでだった。あとはヒスパニオラ号も、ぼくと同じように運に任せるしかない。
このころには、停泊地全体が影に沈んでいた。最後の日差しが森の切れ目を抜け、難破船を覆う花々の上で、宝石のように輝いていたのを覚えている。肌寒くなりはじめ、潮は急速に沖へ引き、スクーナー船はますます横倒しになっていった。
ぼくは船首へ這っていき、下をのぞいた。十分浅そうだったので、万一のために切れた太綱を両手で握り、そっと船外へ降りた。水は腰に届くか届かないかだった。砂は締まっていて、波の模様がついていた。ぼくは上機嫌で岸へ歩いていった。ヒスパニオラ号は横になり、主帆を入江の水面へ大きく広げたまま残された。ちょうどそのころ太陽は完全に沈み、薄闇の中、揺れる松のあいだで風が低く口笛を吹いた。
ともかく、とうとう海を離れた。しかも手ぶらで戻ってきたのではない。あそこにスクーナー船がある。ついに海賊から解放され、ぼくらの仲間が乗りこんで、また海へ出るのを待っている。頭にあるのは、防柵の砦へ帰り、自分の手柄を自慢することばかりだった。勝手に抜け出したことは少し叱られるかもしれない。だが、ヒスパニオラ号を取り返したという、決定的な言い分がある。スモレット船長でさえ、無駄に時間を過ごしたのではないと認めてくれるだろう。
そう思い、意気揚々と、仲間のいる丸太小屋へ帰る道を歩き出した。キッド船長の停泊地へ注ぐ川のうち、いちばん東の川は、左手の二つ峰の丘から流れていたはずだ。川幅の狭いうちに渡ろうと、そのほうへ進路を取った。森はかなり開けていた。低い尾根沿いに歩くと、じきに丘の角を回り、間もなくふくらはぎの半ばまで水に浸かって、川を渡った。
そこは、置き去りにされた男、ベン・ガンに出会った場所に近かった。ぼくはあたりに目を配り、いっそう用心して歩いた。もうほとんど夜になっていた。二つの峰のあいだの裂け目が見えてきたとき、空を揺らめかせる明かりに気づいた。あの島の男が、大きな焚き火で夕食を作っているのだろうと思った。それにしても、ずいぶん不用心だと内心驚いた。ぼくにこの明かりが見えるなら、岸の沼地に陣取っているシルバーにも見えるのではないか。
夜はしだいに深く暗くなり、大まかに行き先を定めるだけでも精いっぱいになった。後ろの二つ峰の丘も、右手の望遠鏡山も、ますますぼんやりしてきた。星は少なく、光も淡い。低地をさまようぼくは、茂みに足を取られ、砂のくぼみに何度も転がりこんだ。
突然、あたりがほのかに明るくなった。見上げると、望遠鏡山の頂に淡い月光が差していた。少しあと、木々の低いところの向こうを、幅広い銀色のものが動くのが見えた。月が昇ったのだとわかった。
その光に助けられ、残りの道はすばやく進めた。歩いたり走ったりしながら、もどかしい思いで防柵へ近づいた。だが、その前にある林へ入ると、さすがに何も考えず進むほどではなく、足を緩め、少し用心した。仲間に間違えて撃たれるなど、冒険の結末としてあまりに情けない。
月はどんどん高くなり、木のまばらなところでは、光がかたまって差しこみはじめた。そして真正面の木々のあいだに、それとは別の色の明かりが現れた。赤く熱を帯び、ときどき少し暗くなる。まるで焚き火の熾火がくすぶっているようだった。
いくら考えても、それが何なのかわからなかった。
とうとう空き地の縁まで来た。西の端はすでに月光に浸されていたが、残りの部分と丸太小屋は、長い銀色の光の筋を交えた黒い影の中にあった。小屋の向こうでは、大きな焚き火が赤々とした熾火になり、柔らかく淡い月光とは強い対照をなす、揺るぎない赤い照り返しを放っていた。動く人影はなく、風の音以外、何も聞こえなかった。
ぼくは足を止めた。胸には大きな疑問があり、たぶん少し恐怖もあった。ぼくらは大きな焚き火などしなかった。むしろ船長の命令で、薪はかなり節約していたのだ。留守のあいだに何か悪いことが起こったのではないかと、心配になってきた。
影から出ないように東の端へ忍び寄り、いちばん暗く、都合のよい場所で柵を越えた。
さらに用心して、ぼくは四つん這いになり、物音一つ立てず小屋の角へ這っていった。近づくにつれ、突然、心が大きく軽くなった。それ自体は気持ちのよい音ではなく、ほかのときなら何度も文句を言った音だった。だが今は、仲間たちがそろって大きく穏やかな寝息を立てているのが、音楽のように聞こえた。海上での見張りの声、あのすばらしい「異状なし」さえ、これほど安心させてくれたことはない。
とはいえ、一つだけは確かだった。見張りはまったくなっていない。今忍び寄っているのがシルバーと手下たちだったら、誰一人夜明けを迎えられなかっただろう。船長が怪我をしたせいだ、とぼくは思った。そして、見張る人数も足りない危険の中へ仲間を置き去りにした自分を、また厳しく責めた。
そのころには戸口まで来て、立ち上がっていた。中は真っ暗で、何一つ見分けられなかった。音といえば、絶え間ないいびきと、ときどきする小さな音だけだった。ぱたぱたとも、何かをつつくともつかない音で、何なのかまるでわからなかった。
両腕を前へ伸ばし、ぼくは静かに中へ入った。自分の場所へ横になって、朝、みんながぼくを見つけたときの顔を楽しもう。そう思って、声を立てずに笑った。足が柔らかいものに当たった。眠っている者の脚だった。その男は寝返りを打ってうなったが、目は覚まさなかった。
そのとき突然、闇の中から甲高い声が飛び出した。
「八レアル銀貨! 八レアル銀貨! 八レアル銀貨! 八レアル銀貨! 八レアル銀貨!」と、小さな水車のかたかたいう音のように、調子も変えず、切れ目なく続いた。
シルバーの緑のオウム、フリント船長だ! ぼくが聞いたのは、この鳥が木の皮をつつく音だったのだ。どの人間よりもしっかり見張っていたオウムが、うんざりするほど繰り返す決まり文句で、ぼくの到着を知らせたのだった。
立ち直る暇はなかった。オウムの鋭く切れ切れの声に、眠っていた連中は目を覚まして跳ね起き、シルバーの声が、激しい悪態とともに叫んだ。
「誰だ!」
ぼくは向きを変えて逃げようとし、一人に激しくぶつかった。跳ね返され、別の男の腕の中へまともに飛びこんだ。その男は腕を回し、ぼくをしっかり捕まえた。
「松明を持ってこい、ディック」と、ぼくが確実に捕らえられると、シルバーが言った。
一人の男が丸太小屋を出て、やがて燃える木ぎれを持って戻ってきた。

第六部 シルバー船長
第二十八章 敵の陣地で
松明の赤い光が丸太小屋の中を照らし、ぼくのいちばん恐れていた事態を明らかにした。小屋も食料も、海賊の手に落ちていた。コニャックの樽も、豚肉もパンも、前と同じようにそこにあった。しかも、恐怖を十倍にもしたことに、捕虜らしい者は一人も見当たらなかった。仲間は全滅したとしか考えられず、一緒に死ぬためにここへ残らなかったことが、激しく胸を刺した。
海賊は全部で六人だった。ほかには誰も生き残っていなかった。五人は立っていた。酔いつぶれた最初の眠りから突然起こされ、顔は赤く、むくんでいた。六人目だけは肘をついて起き上がっただけだった。死人のように青白く、頭に巻いた血染めの包帯から、最近負傷し、手当てを受けたのはさらに最近だとわかった。あの大きな襲撃で撃たれ、森へ逃げ戻った男を思い出し、間違いなくこいつだと思った。
オウムはロング・ジョンの肩に止まり、羽づくろいをしていた。シルバー自身は、見慣れた姿より少し青白く、険しい顔をしているようだった。交渉に来たときの上等な羅紗の服をまだ着ていたが、ひどく傷み、泥だらけで、森の鋭いいばらに引き裂かれていた。
「おやおや」とシルバーは言った。「こいつはジム・ホーキンズじゃねえか、たまげたな! ちょいと寄ってみたってわけか、え? いや、うれしいことをしてくれる。」
そう言うと、ブランデーの樽にまたがって座り、パイプにたばこを詰めはじめた。
「明かりを貸しな、ディック」と言い、十分火がつくと、「もういいぞ。そいつを薪の山に立てとけ。それから、諸君、しゃんとしろ! ホーキンズさんのために立ってることはねえ。こいつは気にしねえよ、間違いなくな。さて、ジム」と、たばこを押さえながら続けた。「よく来たな。哀れなジョンじいさんにゃ、うれしい驚きだ。初めて会ったときから利口な子だとは思ってたが、こればっかりはさっぱり読めなかったぜ。」
想像のつくとおり、ぼくは一言も答えなかった。壁を背に立たされ、シルバーの顔を見ていた。外からは、かなり勇敢に見えたことを願う。だが胸の中は、真っ暗な絶望でいっぱいだった。
シルバーは落ち着き払って一、二服吸い、また話しはじめた。
「いいか、ジム。こうして来ちまったからにゃ」と言った。「おれの考えを聞かせてやろう。おれは前からおめえが好きだった。度胸のある小僧だし、若くて男前だったころのおれに、そっくりだからな。仲間になって分け前をもらい、紳士として一生を終えりゃいいと、ずっと思ってた。さて、坊や、今度はそうするしかねえ。スモレット船長は立派な船乗りだ。そいつはいつでも認める。だが規律にはうるせえ。『務めは務めだ』ってな。それは正しい。だから船長にゃ近づかねえほうがいい。あの医者まで、おめえにすっかり腹を立ててる。『恩知らずの小悪党』って言ってたぜ。要するに、こういうことだ。元の仲間へは戻れねえ。向こうが受けつけねえからな。たった一人で第三の船組を作るってんなら別だが、そいつは寂しかろう。となりゃ、シルバー船長の仲間になるしかねえのさ。」
そこまでは、むしろありがたい話だった。仲間はまだ生きているのだ。ぼくが抜け出したことを船室組が怒っているという話は、半ば本当だと思ったが、聞いて苦しくなるより、ほっとする気持ちのほうが大きかった。
「おめえがこっちの手中にあるなんて話は、持ち出さねえよ」とシルバーは続けた。「まあ、実際そうなんだがな。そこは間違いねえ。おれは話し合いが好きなんだ。脅していい結果になったためしは見たことがねえ。この稼業が気に入りゃ、仲間になれ。気に入らなきゃ、ジム、断ったっていい。自由だとも、相棒、遠慮はいらねえ。船乗りがこれ以上公正なことを言えるもんなら、見せてもらいてえぜ!」
「それじゃ、返事をするんですか?」
ぼくは、ひどく震える声で尋ねた。この嘲るような話のあいだじゅう、頭上にぶら下がる死の脅しを感じていた。頬は熱くなり、胸の鼓動は痛いほどだった。
「坊や」とシルバーは言った。「誰も急かしちゃいねえ。よく方角を見定めな。おれたちは急がせねえよ。おめえと一緒だと、時間も楽しく過ぎるからな。」
「じゃあ」と、少し勇気が出て、ぼくは言った。「選ぶのなら、事情を知る権利があると思う。どうしてあんたたちがここにいて、ぼくの仲間はどこにいるのか。」
「事情だと?」と海賊の一人が、低くうなって繰り返した。「へっ、そいつがわかりゃ、たいした幸せ者だ!」
「話しかけられるまで、その口のハッチを閉めておけねえか、相棒!」とシルバーは険しく怒鳴った。それから初めの愛想のよい口調へ戻り、ぼくに答えた。「昨日の朝だ、ホーキンズさん。短い当直のころに、リヴジー博士が白旗を持ってやって来た。言うには、『シルバー船長、君らはおしまいだ。船がなくなったぞ!』ってな。さて、こっちは酒の一杯もやって、歌も添えていたかもしれねえ。否定はしねえよ。ともかく、誰も沖を見ちゃいなかった。見てみたら、畜生、船が消えてやがる! あんな間の抜けた面を並べた連中は、見たことがねえ。おれの面がいちばん間抜けだったと言や、信じてもらえるだろう。『さて』と医者は言った。『取引しよう』。そこで、おれと医者は取引した。だから今ここにいる。食料、ブランデー、丸太小屋、おめえが親切にも切っておいてくれた薪。言ってみりゃ、マストの横木から船底まで、まるごと全部だ。向こうは引き払っちまった。どこにいるかは知らねえ。」
シルバーはまた静かにパイプを吸った。
「それから」と続けた。「おめえまでその取り決めに入ってるなんて、妙な考えを起こさねえよう、最後のやり取りも教えてやる。『何人で出ていくんだ?』とおれが聞いた。『四人だ』と医者は言った。『四人で、一人は負傷している。あの小僧なら、どこにいるか知らん。忌々しいやつだ。気にもかけていない。もういい加減うんざりだ』ってな。そのままの言葉だぜ。」
「それで全部ですか?」
ぼくは尋ねた。
「まあ、おめえに聞かせるのは、そこまでだ、坊や」とシルバーは答えた。
「今度は、ぼくが選ぶんですね?」
「そうだ、今度はおめえが選ぶ。間違いねえ」とシルバーは言った。
「わかった」とぼくは言った。「ぼくは、これからどうなるかもわからないほど、ばかじゃない。最悪のことになっても、たいしてかまわないよ。あんたたちと出会ってから、人が死ぬのを見すぎたんだ。でも、二つ三つ言っておくことがある」と、ぼくは続けた。このころには、すっかり気が高ぶっていた。「まず一つ。あんたたちは今、ひどいざまだ。船も失い、宝も失い、仲間も失って、計画は何もかもめちゃくちゃになった。誰のせいか知りたいなら教えてやる。ぼくだ! 島を見つけた晩、ぼくはリンゴ樽の中にいた。ジョン、あんたと、ディック・ジョンソン、あんたと、それから今は海の底にいるハンズの話を聞いていたんだ。そして一時間もしないうちに、一言残らず報告した。スクーナー船の綱を切ったのもぼくだ。船に残しておいた連中を殺したのも、あんたたちの誰一人、二度と見つけられない場所へ船を運んだのも、ぼくだよ。笑うのはこっちだ。初めからずっと、ぼくが上手をいってた。あんたたちなんか、ハエほども怖くない。殺したければ殺せばいいし、助けたければ助ければいい。でも、最後に一つだけ言う。助けてくれたら、過去のことは水に流す。あんたたちが海賊として裁判にかけられたとき、できるだけ助けるよ。選ぶのは、あんたたちだ。もう一人殺して何の得もしないか、ぼくを生かして、絞首台から救ってくれる証人を残すかだ。」
息が切れたので、そこで話をやめた。驚いたことに、誰一人動かなかった。みんな羊のように座ったまま、ぼくをじっと見ていた。その視線を受けながら、ぼくはまた口を開いた。
「それから、シルバーさん」とぼくは言った。「ここでは、あんたがいちばんましな人だと思う。もし最悪のことになったら、ぼくがどんな態度だったか、博士に伝えてくれるとうれしい。」
「覚えておこう」とシルバーは言った。その口調があまりに奇妙なので、ぼくの頼みを笑っているのか、勇気を買ってくれたのか、どうしても判断できなかった。
「おれも一つ付け足してやる」と、マホガニー色の顔をした年配の船乗りが叫んだ。ブリストルの波止場にあるロング・ジョンの店で見た、モーガンという男だった。「ブラック・ドッグを知ってたのも、こいつだ。」
「そうだ。それにもう一つあるぞ」と船の料理番も付け加えた。「畜生、ビリー・ボーンズから海図をかすめ取ったのも、この小僧だ。初めから終わりまで、ジム・ホーキンズにつまずかされっぱなしよ!」
「なら、こうしてやる!」とモーガンは悪態をついた。
そして二十歳の若者のように跳ね起き、ナイフを抜いた。
「待て、そこ!」とシルバーが叫んだ。「何様のつもりだ、トム・モーガン? ひょっとして、ここの船長は自分だとでも思ったか? 畜生、思い知らせてやる! おれに逆らえば、この三十年、おめえよりましな男が大勢行ったところへ送ってやるぞ。帆桁にぶら下がったやつもいりゃ、舷から落ちたやつもいる。みんな魚の餌になったのさ。おれの目をまともににらんで、そのあといい日を送ったやつは一人もいねえ。トム・モーガン、そいつは覚えとけ。」
モーガンは止まった。だが、ほかの連中から、しわがれた不満の声が上がった。
「トムの言うとおりだ」と一人が言った。
「一人のやつにこき使われるのは、もう十分だ」と別の男が続けた。「てめえにまでいびられてたまるか、ジョン・シルバー。」
「諸君の中に、おれと決着をつけてえ者でもいるのか!」とシルバーが吠えた。樽の上からぐっと身を乗り出し、右手にはまだ火のついたパイプを持っていた。「何がしてえか、はっきり言え。口がきけねえわけじゃあるめえ。望むやつには、望みどおりにしてやる。長年生き抜いてきた末に、ラム樽生まれのくそ野郎に、おれの進路をふさがれてたまるか。作法は知ってるな。おめえら、自称、運をつかむ紳士どもだろう。よし、こっちは用意ができてる。度胸のあるやつは舶刀を抜け。このパイプが空になる前に、松葉杖のまんまで、腹ん中の色を見てやるぜ。」
誰も動かなかった。誰も答えなかった。
「それがおめえらの正体か?」と、パイプを口へ戻しながらシルバーは続けた。「いや、見栄えだけは立派な連中だ。喧嘩じゃ役に立ちそうもねえがな。ジョージ国王陛下の英語なら、わかるかもしれねえ。おれは選挙で選ばれた船長だ。おれが船長なのは、おめえらより何海里も抜きん出てるからだ。運をつかむ紳士らしく戦う気がねえんなら、畜生、おとなしく従え。そいつは間違いねえぞ! おれはこの小僧が気に入った。こんないい小僧は見たことがねえ。この小屋のドブネズミを二匹束にしたって、こいつのほうがよっぽど男だ。だから言っておく。こいつに手を出せるもんなら出してみろ。それがおれの言い分だ。よく覚えとけ。」
長い沈黙が続いた。ぼくは壁を背に、まっすぐ立っていた。胸はまだ大槌のように鳴っていたが、心には一筋の希望が差していた。シルバーは壁にもたれ、腕を組み、口の端にパイプをくわえ、教会にでもいるように落ち着いていた。だが目は油断なく動き、荒くれた手下たちを横目で見張っていた。連中のほうは、しだいに小屋の奥へ寄り集まり、低いささやき声が、小川の音のように絶えず聞こえた。一人ずつ顔を上げると、松明の赤い光が、一瞬、そのこわばった顔を照らした。だが目を向ける先はぼくではなく、シルバーだった。
「言いてえことが、ずいぶんあるらしいな」とシルバーは言い、遠くへ唾を飛ばした。「聞こえるようにしゃべるか、黙るかしろ。」
「お言葉ですが、船長」と一人が答えた。「規則の一部は勝手に扱っておいでだが、ほかの規則にも目を配っていただきてえ。この船員一同は不満を持ってる。脅しなんぞ、綱針一本ほどにも思っちゃいねえ。よその船と同じく、この船員にも権利がある。そこは言わせてもらう。あんた自身の規則でも、仲間同士で相談していいはずだ。失礼は承知で、今のところあんたが船長だとは認めるが、おれは自分の権利を行使して、外で評議を開く。」
その男は、いかにも大げさな船乗りの敬礼をして、平然と戸口へ歩き、小屋を出ていった。三十五歳ほどの、背が高く、人相の悪い、黄色い目の男だった。ほかの者も一人ずつあとに続き、通るたびに敬礼し、それぞれ一言、言い訳を添えた。「規則どおりでさ」と一人が言い、「船首楼会議だ」とモーガンが言った。そうして全員が何かしら言い残して外へ出て、松明のそばにシルバーとぼくだけが残された。
船の料理番は、すぐにパイプを口から外した。
「よく聞け、ジム・ホーキンズ」と、かろうじて聞こえる、落ち着いたささやき声で言った。「おめえは板半枚で死ぬところだ。それよりずっとひでえ、拷問も待ってる。連中はおれを引きずり下ろすつもりだ。だが覚えておけ、おれは何があってもおめえを守る。初めはそんな気はなかった。おめえがあの啖呵を切るまではな。あれだけの金を失って、おまけに絞首刑かと思うと、ほとんどやけになってた。だが、おめえは筋の通ったやつだとわかった。そこで自分に言ったのさ。ジョン、ホーキンズを守れ。そうすりゃホーキンズもおめえを守る。おめえはこいつの最後の切り札だ。畜生、ジョン、こいつもおめえの最後の切り札なんだぞ、ってな。背中合わせだ。証人を生かしておけば、そいつがおめえの首を救ってくれる!」
ぼくは、おぼろげにわかりはじめた。
「もう、すべておしまいだってこと?」
ぼくは尋ねた。
「そうだとも、まったくな!」とシルバーは答えた。「船が消えりゃ、首も消える。そういうことだ。ジム・ホーキンズ、あの湾を見てスクーナー船がいねえとわかったとき、おれもたいてい頑丈な男だが、へなへなになっちまった。あの連中と評議のことなら、いいか、ありゃ正真正銘のばかと臆病者だ。できることなら、あいつらからおめえの命を守ってやる。だがな、ジム、持ちつ持たれつだ。おめえもロング・ジョンがぶら下がらねえよう助けてくれ。」
ぼくは当惑した。この老海賊、この一件の首謀者が求めていることは、あまりにも望みのない話に思えた。
「できることは、するよ」とぼくは言った。
「よし、取引成立だ!」とロング・ジョンは叫んだ。「度胸のある返事だ。畜生、これで望みが出てきた。」
シルバーは薪のあいだに立てた松明へ、ひょこひょこと近づき、パイプに火をつけ直した。
「よくわかってくれ、ジム」と、戻ってきて言った。「おれの首の上にあるのは、飾りじゃねえ。今じゃ郷士さんの味方だ。おめえが船をどこかへ無事にしまいこんだのはわかってる。どうやったかは知らねえが、船は無事なんだ。ハンズとオブライエンが甘かったんだろう。もともとあいつらは、たいして信用しちゃいなかった。いいか、おれは何も聞かねえし、ほかのやつらにも聞かせねえ。勝負がついたときは、わかるんだ。それに、義理堅い小僧も見分けがつく。ああ、若いおめえと、おれとなら、ずいぶん大きな仕事ができただろうによ!」
シルバーは樽からコニャックをブリキの小さなカップへ注いだ。
「ひと口やるか、相棒?」と聞いた。ぼくが断ると、「じゃあ、おれだけちょいとやるぜ、ジム。気つけが要る。厄介事が待ってるからな。厄介事といやあ、どうしてあの医者は、おれに海図をくれたんだ、ジム?」
ぼくの顔に浮かんだ驚きがあまりに真実だったので、シルバーはこれ以上尋ねても無駄だと悟った。
「ああ、でも、くれたんだよ」と言った。「裏があるに違いねえ。何かあるぞ、ジム。いいことにせよ、悪いことにせよな。」
そしてブランデーをもう一口飲み、最悪のことを覚悟するように、明るい髪の大きな頭を振った。
第二十九章 再び黒丸
海賊たちの評議がしばらく続いたあと、一人が小屋へ戻り、また同じ敬礼をした。ぼくには皮肉めいて見える敬礼だった。そして少しのあいだ松明を貸してくれと頼んだ。シルバーは短く承知し、使いの男はまた出ていった。ぼくら二人は暗闇に残された。
「ひと荒れ来るぞ、ジム」とシルバーは言った。そのころには、まったく親しげで打ち解けた口調になっていた。
ぼくは最寄りの銃眼へ行き、外をのぞいた。大きな焚き火の熾火はすっかり燃え尽きかけ、低く暗く光っていたので、陰謀をたくらむ連中が松明を欲しがった理由がわかった。防柵へ下る斜面の半ばあたりに、一団となって集まっていた。一人が明かりを持ち、別の一人が輪の中に膝をついていた。その手にある抜き身のナイフが、月光と松明を受け、さまざまな色に光るのが見えた。ほかの者はみな、作業を見守るように少しかがんでいた。膝をついた男が、ナイフだけでなく本も持っていることが、かろうじてわかった。どうしてこんな似つかわしくない物を持っているのだろうと、まだ不思議に思っているうちに、その男は立ち上がり、一同そろって小屋へ歩き出した。
「来るよ」とぼくは言い、元の場所へ戻った。のぞいていたと思われるのは、誇りが許さない気がした。
「よし、来させろ、坊や。来させりゃいい」とシルバーは陽気に言った。「こっちにゃ、まだ一発残ってる。」
扉が開き、五人の男が入口のすぐ内側で固まり、一人を前へ押し出した。別の状況なら、その男が右の握りこぶしを前へ突き出し、一歩ごとにためらいながら、のろのろ進む姿はおかしかっただろう。
「進め、小僧!」とシルバーは叫んだ。「食やしねえよ。よこしな、陸者め。規則は知ってる。使者に手出しはしねえ。」
こう励まされ、海賊は少し勢いをつけて進み、シルバーの手へ何かを渡すと、それよりずっとすばやく仲間のもとへ戻った。
船の料理番は、渡された物を見た。
「黒丸か! そうだと思ったぜ」と言った。「紙はどこから手に入れた? おや、ちょいと待て。こいつは縁起が悪いぞ! 聖書を切り抜きやがったな。どこのばかだ、聖書を切ったのは?」
「ほらな」とモーガンが言った。「なあ、言っただろう? ろくなことにゃならねえって、おれは言ったんだ。」
「これで、おめえらみんなおしまいだ」とシルバーは続けた。「全員ぶら下がることになるだろうな。どの間抜けが聖書なんぞ持ってた?」
「ディックだ」と一人が言った。
「ディックか? ならディックは、お祈りでも始めるんだな」とシルバーは言った。「こいつの運も、これまでだ。間違いねえ。」
だが、ここで黄色い目の長身の男が口を挟んだ。
「その話はやめろ、ジョン・シルバー」と言った。「船員一同は正式な評議を開き、規則どおりに黒丸を渡したんだ。そっちも規則どおり、裏返して、書いてあることを読め。話はそれからだ。」
「ありがとよ、ジョージ」と船の料理番は答えた。「おめえはいつでも仕事が早えな。規則もそらで覚えてる。感心だ、ジョージ。さて、いったい何だ? ほう、『解任』か。そういうことか。ずいぶん見事な字だな。印刷みてえだ。おめえが書いたのか、ジョージ? この船でも、ずいぶん幅を利かせるようになったじゃねえか。次は船長になるかもしれねえな。もう一度、松明を貸してくれねえか? パイプの吸いが悪いんだ。」
「さあ、もうよせ」とジョージは言った。「これ以上、この船員をだますことはできねえ。自分じゃ面白え男のつもりだろうが、もう終わりだ。その樽から降りて、投票に加わってもらおうか。」
「規則を知ってるって言ったはずだがな」とシルバーは軽蔑するように答えた。「おめえが知らなくても、おれは知ってる。ここで待たせてもらうぜ。まだおれが船長なんだからな。まず不満を述べろ。それからおれが答える。それまでは、その黒丸に乾パン一枚ほどの値打ちもねえ。その先は、それからだ。」
「ふん」とジョージは答えた。「心配しなくていい。こっちはちゃんと筋を通してる。第一に、この航海を台なしにした。違うと言えるもんなら言ってみろ。第二に、敵をこの罠から、ただで逃がした。なんで出たがったか、おれは知らねえ。だが出たがってたのは明らかだ。第三に、移動中のやつらを襲わせなかった。お見通しだぜ、ジョン・シルバー。裏で組んでるんだろう。それが悪いんだ。で、第四に、この小僧だ。」
「それで全部か?」とシルバーは静かに尋ねた。
「十分だろう」とジョージは言い返した。「てめえのしくじりで、おれたちはみんなぶら下がって、天日干しにされるんだ。」
「よし、聞け。その四つに答えてやる。一つずつな。おれがこの航海を台なしにしたって? さて、おれがどうしたかったかは、みんな知ってるな。そのとおりにしてりゃ、今夜は全員が生きて、ぴんぴんして、うめえ干しブドウ入りプディングで腹をいっぱいにして、ヒスパニオラ号に乗ってたはずだ。船倉には宝を積んでな、畜生! さて、誰が邪魔をした? 正当に選ばれた船長のおれに、誰が無理強いした? 上陸した日に黒丸を突きつけ、この騒ぎを始めたのは誰だ? ああ、見事な踊りだ。その点は同感だよ。ロンドンの処刑埠頭で、縄の先につるされて踊るホーンパイプそっくりだ。だが、誰がやった? アンダーソンにハンズ、それにおめえだ、ジョージ・メリー! あの出しゃばりどもの中で、生き残ってるのはおめえだけだ。そのおめえが、海の悪魔も顔負けの厚かましさで、おれに代わって船長になろうってのか。全員を沈めた張本人が! 畜生、どんな大ぼらよりも、よっぽどひでえ話だ。」
シルバーは言葉を切った。ジョージと、それまで味方していた連中の顔を見ると、この言葉は無駄ではなかったとわかった。
「一番目は、これで終わりだ」と、訴えられた男は叫び、額の汗をぬぐった。小屋が揺れるほどの勢いで話していたのだ。「まったく、おめえらと話してると吐き気がするぜ。知恵も記憶もありゃしねえ。こんなやつらを海へ出すとは、おふくろどもは何してたんだか。海だと! 運をつかむ紳士だと! 仕立屋でもやってるほうが似合いだぜ。」
「続けろよ、ジョン」とモーガンが言った。「ほかの件も話してくれ。」
「ああ、ほかの件か!」とジョンは答えた。「どれも立派な言い分だな。この航海はしくじったって? ああ、畜生、どれほどひでえしくじりか、おめえらにもわかりゃいいんだがな! 絞首台があんまり近くて、考えるだけで首がこるぜ。見たこともあるだろう。鎖でつるされ、鳥にたかられ、潮に乗って下る船乗りが指さすんだ。『あれは誰だ?』と一人が聞く。『あれか? ジョン・シルバーだよ。よく知ってた男だ』と別のやつが答える。船を回して次の浮標へ向かうと、鎖のじゃらじゃらいう音が聞こえる。今のおれたちは、そろいもそろってそこまで来てるんだ。あいつと、ハンズと、アンダーソンと、ほかの破滅好きのばかどものおかげでな。四番目の、あの小僧の話が聞きてえんなら、畜生、こいつは人質じゃねえか。人質を無駄にするのか? しねえよ。こいつが最後の望みになるかもしれねえ。そうなっても驚かねえぞ。小僧を殺す? おれはごめんだ、仲間たち! 三番目はどうだ? ああ、三番目には言いてえことが山ほどある。大学を出た本物の医者が、毎日診に来てくれるのは、ありがたくねえってのか。頭を割られたジョン、おめえもか? ジョージ・メリー、おめえもか? 六時間も前じゃねえ、熱でがたがた震えてやがったくせに。今この瞬間も、目はレモンの皮の色じゃねえか。それに、おめえらは救援の船が来ることも知らねえのかもしれねえな。だが来るんだ。そう遠くねえ。そのときになって、人質がいて喜ぶのは誰か、見てみようぜ。さて、二番目、なぜ取引したかだがな。おめえらが膝をついて這ってきて、やってくれと頼んだんだ。膝をついて来たんだぞ。それほどしょげ返ってたんだ。おれが取引しなけりゃ、飢え死にしてたろうよ。まあ、そいつはどうでもいい。これを見ろ。これが理由だ!」
そう言って、シルバーは床へ一枚の紙を投げた。ぼくはすぐに見覚えがあるとわかった。三つの赤い十字がついた、黄色い紙の海図。あの船長の箱の底で、油布に包まれていた、ほかならぬあの海図だった。なぜ博士がこれを渡したのか、どうしても想像がつかなかった。
ぼくには理解できないことだったが、生き残りの反乱者たちには、海図の出現は信じられないほどの出来事だった。ネズミに飛びかかる猫のように、一斉に飛びついた。紙は手から手へ渡り、一人が持つのを別の一人がひったくった。調べながら悪態をつき、叫び、子供のように笑うありさまは、すでに金そのものを手にしているばかりか、それを積んで安全な海へ出たかのようだった。
「そうだ」と一人が言った。「間違いなくフリントの字だ。J・F、その下に線を引いて、端をきゅっと結ぶ。いつもそう書いた。」
「たいしたもんだ」とジョージは言った。「だが、船もねえのに、どうやって運び出すんだ?」
シルバーは突然跳ね起き、片手を壁について体を支えた。「言っておくぞ、ジョージ」と叫んだ。「もう一言でも生意気を言ってみろ。勝負をつけてやる。どうやってだと? 知るもんか! そいつはおめえが教えるんだな。余計な邪魔をして、おれのスクーナー船を失わせた、おめえとほかの連中がな。くたばれ! だができやしねえ。ゴキブリほどの知恵もねえからな。だが礼儀正しく話すことくらいはできる。そうしてもらうぞ、ジョージ・メリー。覚えとけ。」
「そいつはもっともだ」と老いたモーガンが言った。
「もっともだとも」と船の料理番は言った。「おめえらは船をなくし、おれは宝を見つけた。どっちが上だ? さて、おれは辞めるぞ、畜生! 好きなやつを船長に選べ。おれはもう、ごめんだ。」
「シルバー!」と連中は叫んだ。「バーベキュー万歳! 船長はバーベキューだ!」
「今度はそういう歌か?」と料理番は叫んだ。「ジョージ、おめえは次の機会を待つしかねえらしいな。おれが執念深くねえ男で、運がよかったぜ。昔から、そういう性分じゃねえんだ。さて、仲間たち、この黒丸はどうする? 今じゃたいした役には立たねえな。ディックが運を台なしにして、聖書を駄目にした。それだけのことだ。」
「それでも、口づけして誓いを立てるくらいには使えるだろう?」とディックがうなった。自分に招いた呪いが、どう見ても気になっていた。
「切り抜いた聖書でか?」とシルバーは嘲った。「無理だね。歌の本に誓うのと、変わりゃしねえ。」
「そうなのか?」とディックは、どこかうれしそうに叫んだ。「なら、それも悪くねえな。」
「ほら、ジム。珍しい品をやるよ」とシルバーは言い、その紙をぼくへ投げた。
クラウン銀貨ほどの大きさの丸い紙だった。最後の一葉だったので片面は白く、もう片面には『ヨハネの黙示録』の一、二節が印刷されていた。その中の「外には犬どもと人殺しどもがいる」という言葉が、鋭く心に刺さった。
印刷のある面は木灰で黒く塗られていたが、すでに灰が落ちはじめ、ぼくの指を汚した。白い面には、同じ灰で、ただ一言「解任」と書かれていた。
その珍品は、これを書いている今も手もとにある。だが文字の跡は、爪で引っかいたような一本の線を除いて、何も残っていない。
その晩の騒ぎは、それで終わった。間もなく皆で一杯ずつ飲み、横になって眠った。シルバーの仕返しも、ジョージ・メリーを見張りに立て、裏切るような真似をすれば殺すと脅しただけだった。
ぼくは長いこと、目を閉じられなかった。考えることは山ほどあった。その午後にぼくが殺した男のこと。自分のひどく危うい立場。そして何より、今シルバーが演じている不思議な勝負のことだ。片手で反乱者をまとめながら、もう片方の手では、可能でも不可能でもあらゆる手段をつかみ、仲直りをして、みじめな命を救おうとしていた。本人は大きないびきをかき、安らかに眠っていた。だが、どんな悪党であれ、取り巻く暗い危険と、待ち受ける恥ずべき絞首台を思うと、ぼくは胸が痛んだ。
第三十章 名誉にかけた約束
森の端から響く、明るく張りのある呼び声に、ぼくは目を覚ました。いや、全員が起きた。戸柱にもたれて眠っていた見張りさえ、身を震わせて姿勢を直すのが見えた。
「丸太小屋の諸君!」と声は呼んだ。「医者が来たぞ。」
本当に博士だった。その声を聞けたのはうれしかったが、喜びだけではなかった。命令に背き、こっそり抜け出した自分の行いを思い出すと、いたたまれなかった。その結果、どこへ来てしまったか、どんな連中の中で、どんな危険に囲まれているかを思うと、恥ずかしくて顔を見られない気がした。
まだやっと夜が明けたばかりだから、博士は暗いうちに起きたに違いない。ぼくが銃眼へ走って外を見ると、博士は以前のシルバーのように、地を這う霧に脚の半ばまで包まれて立っていた。
「これは博士! おはようございます!」とシルバーは叫んだ。一瞬ですっかり目を覚まし、人のよい笑みを満面に浮かべていた。「実にお早いことで。ことわざにも言うとおり、早起き鳥は配給にありつけるってわけですな。ジョージ、しゃんとしろ、小僧。リヴジー博士が舷を越えるのを手伝え。患者はみな元気でさあ。どいつも元気で、ご機嫌でしてね。」
シルバーは丘の上に立ち、脇に松葉杖を挟み、片手を丸太小屋の壁について、こんな調子でまくしたてた。声も態度も表情も、すっかり昔のジョンだった。
「それに、先生にはびっくりするお知らせもありましてね」と続けた。「小さなお客が来てるんで。へへ! 新しい下宿人ですよ。ぴんぴんして、弦を張ったバイオリンみてえに元気でしてね。昨夜は荷役監督みてえにぐっすりでした。ジョンのすぐ隣で、一晩じゅう頭を並べてね。」
博士はそのころには防柵を越え、料理番のかなり近くまで来ていた。次の言葉を聞いたとき、その声色が変わったのがわかった。
「まさか、ジムか?」
「そのとおり、ほかでもねえ、あのジムです」とシルバーは答えた。
博士はぴたりと足を止めた。何も言わなかったが、また歩けるようになるまで、数秒かかった。
「そうか、そうか」と、やっと言った。「まず務め、そのあとで楽しみだ。君自身もそう言いそうだな、シルバー。患者を診せてもらおう。」
次の瞬間には小屋へ入り、ぼくへ厳しく一度うなずいただけで、病人を診はじめた。裏切りを平気でする悪魔どもの中では、命が糸一本に懸かっていることくらい、わかっていたはずだ。だが、少しも恐れる様子はなかった。静かなイングランドの家庭へ、いつもの往診に来たように、患者へ気軽に話しかけた。その態度が連中にも移ったのだろう。海賊たちは何もなかったかのように応じた。博士はまだ船医で、自分たちは今も忠実な水夫であるかのようだった。
「順調だな、君」と、頭に包帯を巻いた男へ言った。「危ういところを助かった者がいるとすれば、君こそそうだ。頭が鉄でできているに違いない。さて、ジョージ、具合はどうだ? ずいぶん見事な顔色だな。まったく、肝臓がひっくり返っているぞ。薬は飲んだか? 諸君、こいつは薬を飲んだかね?」
「へい、先生、確かに飲みました」とモーガンが答えた。
「というのもだね」とリヴジー博士は、いかにも楽しげに言った。「私は反乱者の医者、いや、むしろ監獄の医者と呼びたいが、ともかくその役を引き受けた以上、ジョージ国王陛下と絞首台のために、一人も死なせないのが務めだと思っているのだよ。陛下に神のご加護を。」
悪党どもは顔を見合わせたが、痛いところを突かれても、黙って飲みこんだ。
「ディックが具合悪いんで、先生」と一人が言った。
「そうか?」と博士は答えた。「ではこちらへ来たまえ、ディック。舌を見せてごらん。うむ、これで具合がよかったら驚くな。フランス人も逃げ出しそうな舌だ。こいつも熱病だ。」
「ほらな」とモーガンが言った。「聖書を駄目にしたせいだ。」
「君の言い方を借りれば、救いようのないばかであるせいだ」と博士はやり返した。「まともな空気と毒気、乾いた土地と病気の巣くう汚い沼の区別もつかないからだ。もちろん私の見立てにすぎんが、そのマラリアを体から追い出すまでには、全員ひどい目に遭う公算が大きいね。沼地で野営するとは! シルバー、君には驚いたよ。全体としては、ほかの連中ほどばかではない。だが衛生の心得については、初歩の初歩さえ知らないらしい。
「よし」と、全員に薬を与え終えると付け加えた。連中は本当におかしいほど素直に処方に従い、血なまぐさい反乱者や海賊というより、慈善学校の子供たちのようだった。「今日の仕事はこれで終わりだ。さて、今度はあの子と話をさせてもらいたい。」
そう言って、さりげなくぼくのほうへ顎を向けた。
ジョージ・メリーは戸口で、まずい薬に唾を吐き、むせていた。だが博士がその話を切り出すや、顔を真っ赤にして振り返り、「駄目だ!」と叫んで悪態をついた。
シルバーは手のひらで樽を叩いた。
「黙れえ!」と吠え、まさしく獅子のような目で一同を見回した。「博士」と、いつもの口調に戻って続けた。「それは考えておりました。先生がこの小僧をかわいがってるのは承知ですからね。われわれ一同、ご親切には心から感謝しております。ご覧のとおり信用もして、薬だって割りラムみたいに飲み干してるわけで。そこで、みんなが納得する方法を思いついたんです。ホーキンズ、若い紳士として、名誉にかけて約束してくれるか。貧しい生まれでも、おめえは紳士だからな。綱を切って逃げ出さねえと、名誉にかけて誓えるか?」
ぼくは求められた誓いを、すぐに立てた。
「では、博士」とシルバーは言った。「あの柵の外へ出てください。そちらに着いたら、おれが小僧を内側へ連れていきます。柵越しなら話ができるでしょう。では、ごきげんよう。郷士さんとスモレット船長にも、みんなからよろしくお伝えください。」
シルバーの怖い顔だけで抑えられていた不満は、博士が小屋を出たとたん、爆発した。シルバーは二枚舌を使っている。自分だけ助かろうとしている。仲間でもあり犠牲者でもある連中の利益を売り渡している。要するに、まさにそのとおりのことをしていると、激しく責められた。今回はあまりに明白なので、どうやって怒りをかわすのか、ぼくには想像もつかなかった。だが、シルバーはほかの連中の二倍は役者が上だった。昨夜の勝利もあって、連中の心を大きく押さえていた。思いつくかぎりの言葉で、ばか、間抜けと罵り、ぼくが博士と話すのは必要なことだと言った。海図を連中の顔の前でひらひらさせ、宝探しへ出るその日に取り決めを破ってよいのかと迫った。
「違うぞ、畜生!」と叫んだ。「取り決めを破るのは、時が来てから、こっちがやるんだ。それまでは、あの医者の靴にブランデーを塗ってやることになったって、うまく丸めこんでおくのさ。」
そして火を起こせと命じ、ぼくの肩に手を置いて、松葉杖で堂々と出ていった。あとに残された連中は混乱し、納得したというより、まくしたてられて黙らされたという様子だった。
「ゆっくりだ、坊や、ゆっくり」とシルバーは言った。「急ぐところを見られたら、あっという間に歯向かってくるかもしれねえ。」
そこでぼくらは、砂地をことさらにゆっくり歩き、防柵の向こうで待つ博士へ近づいた。楽に話ができる距離まで来ると、シルバーは止まった。
「このことも覚えておいてくださいよ、博士」と言った。「小僧からも聞けるでしょうが、おれはこいつの命を救って、そのために解任までされたんです。間違いなくね。博士、おれみてえにぎりぎり風へ向かって走ってる男、最後の息を賭けて銅貨投げをしてるような男に、ひと言いい言葉をかけてくださっても、無理な頼みじゃねえでしょう。今じゃ、おれの命だけじゃない。この小僧の命までかかってるんです。どうかそいつも覚えておいて、情けのある言葉をください。先へ進む望みを、少しばかりね。」
外へ出て、仲間と小屋を背にすると、シルバーは別人になっていた。頬はこけたように見え、声は震えていた。これほど真剣な人間はいなかった。
「どうした、ジョン。怖いのか?」とリヴジー博士は尋ねた。
「博士、おれは臆病者じゃありません。ええ、これっぽっちも!」と、指を鳴らした。「臆病者なら、そうは言いませんよ。だが正直に認めましょう。絞首台を思うと震えるんです。先生は立派で、筋の通ったお方だ。これ以上のお方には会ったことがねえ。悪いことを忘れねえのと同じく、おれのしたよいことも忘れないでくださる。それはわかってるんです。だから、おれは下がります。ほら、このとおり。先生とジムを二人きりにしましょう。このことも勘定に入れてください。これだって大した譲歩なんですからね!」
そう言って、声の届かないところまで少し下がり、切り株に腰を下ろして口笛を吹きはじめた。ときどき座ったまま体を回し、ぼくと博士を見たり、荒くれた手下たちを見たりした。手下たちは、起こし直している火と、朝食用の豚肉やパンを運び出す小屋のあいだを、砂地を踏んで行き来していた。
「さて、ジム」と博士は悲しげに言った。「こんなところへ来てしまったな。自分で仕込んだ酒は、自分で飲むしかない。おまえを責める気には、どうしてもなれないよ。だが、優しかろうが厳しかろうが、これだけは言う。スモレット船長が元気だったら、おまえは抜け出す勇気などなかったはずだ。船長が負傷して、止められなくなった途端にやった。まったく、卑怯そのものだ!」
正直に言うと、ここでぼくは泣き出した。「博士」とぼくは言った。「もう勘弁してください。自分でも十分責めたんです。どうせぼくの命はもうないようなものだし、シルバーがかばってくれなければ、今ごろ死んでいました。博士、これだけは信じてください。ぼくは死ねます。死んで当然かもしれない。でも、怖いのは拷問です。もし拷問されたら……」
「ジム」と博士が遮った。その声はすっかり変わっていた。「ジム、それは駄目だ。飛び越えてこい。一緒に逃げよう。」
「博士」とぼくは言った。「ぼくは約束したんです。」
「わかっている、わかっている!」と博士は叫んだ。「今は仕方がないんだ、ジム。責めも恥も、何もかも、私が全部引き受ける。だが、ここに残すわけにはいかん。跳べ! ひと跳びで外だ。カモシカのように走って逃げよう。」
「いいえ」とぼくは答えた。「博士だって、絶対にそんなことはしないでしょう。郷士さんも船長も、しない。ぼくもしません。シルバーはぼくを信じました。ぼくは約束したんです。だから戻ります。でも、博士、最後まで聞いてくれませんでしたね。もし拷問されたら、船の場所を口走るかもしれないんです。運もよかったし、危険も冒しましたけど、ぼくは船を取り返しました。北の入江の南の浜、満潮線のすぐ下にあります。半分も潮が引けば、すっかり陸に上がるはずです。」
「船だって!」と博士は叫んだ。
ぼくは冒険のいきさつを手短に話した。博士は黙って最後まで聞いた。
「何か運命のようなものがあるな」と、ぼくが話し終えると言った。「節目ごとに、私たちの命を救うのはおまえだ。それなのに、おまえの命を失わせておくと思うか? それでは恩返しにもならない。おまえは陰謀を見抜き、ベン・ガンを見つけた。後のほうは、おまえが九十まで生きても、生涯いちばんの手柄になるだろう。おお、なんということだ! ベン・ガンといえば、これは厄介そのものだ。シルバー!」と叫んだ。「シルバー! 一つ忠告しよう」と、料理番がまた近づくと続けた。「宝を探しに行くのは、あまり急がないことだ。」
「先生、できることならしますが、それは無理でさあ」とシルバーは言った。「失礼ながら、宝を探しに行くほかに、おれと小僧の命を守る道はねえんです。そこは間違いありません。」
「そうか、シルバー」と博士は答えた。「それなら、もう一歩踏みこんで言おう。見つけたときは、ひと荒れ来ると思って用心したまえ!」
「先生」とシルバーは言った。「男同士の話として、それじゃ言いすぎでもあり、足りなさすぎでもある。何をたくらんでおいでなのか、なぜ小屋を捨てたのか、なぜ海図をおれにくれたのか、おれにはわからねえ。そうでしょう? それでも目をつぶってお言いつけどおりにしてきた。望みを持てる言葉一つなしにね。だが、これじゃあんまりだ。腹の中をはっきり話してくださらねえなら、そう言ってください。おれは舵を放します。」
「いや」と博士は考えこみながら言った。「これ以上話す権利は、私にはない。私一人の秘密ではないのだ、シルバー。そうでなければ、必ず話すと誓える。だが、許されるかぎりは君の力になろう。いや、もう一歩先まで行こう。きっと船長に大目玉を食うだろうがね。まず一つ、希望を与えよう。シルバー、この狼の罠から二人とも生きて出られたら、偽証にならないかぎり、君を救うために最善を尽くす。」
シルバーの顔が輝いた。「先生が実のおふくろだったって、それ以上のことは言えませんや!」と叫んだ。
「それが第一の譲歩だ」と博士は続けた。「第二は忠告だ。この子をすぐそばから離すな。そして助けが必要になったら、大声で呼びたまえ。私はこれから、君のために助けを用意しに行く。それだけでも、でまかせで言っているのではないとわかるだろう。ではな、ジム。」
リヴジー博士は柵越しにぼくと握手し、シルバーにうなずくと、足早に森へ入っていった。
第三十一章 宝探し――フリントの道しるべ
「ジム」と、二人きりになるとシルバーが言った。「おれがおめえの命を救ったなら、おめえもおれの命を救った。忘れねえよ。医者が逃げろと手招きするのを、横目で見てた。おめえが断るのも、声が聞こえたみてえにはっきり見えた。ジム、貸しが一つできたな。襲撃に失敗してから、初めて希望の光が見えた。おめえのおかげだ。さて、これから宝探しだが、封をした命令書を持たされたようなもんで、気に入らねえ。おれとおめえは、ぴったりくっついていなきゃならねえ。背中合わせにな。運命にも運勢にも負けず、二人で首を守ろうぜ。」
ちょうどそのとき、火のそばにいた男が、朝食ができたと呼んだ。ぼくらはじきに砂の上へ思い思いに座り、乾パンと焼いた塩漬け肉を食べていた。連中は牛一頭を丸焼きにできるほどの火を起こしていた。今では熱くなりすぎ、風上からしか近づけず、そこでも注意が必要だった。食べ物についても同じ浪費ぶりで、食べられる量の三倍は作ったと思う。そのうち一人が、空っぽな笑い声を上げ、残りを火へ投げこんだ。珍しい燃料をくべられ、火はまたごうごうと燃え盛った。これほど明日のことを考えない人間は、生まれて初めて見た。その日暮らしとしか言いようがない。食料は無駄にし、見張りは眠る。短い一戦だけなら勇敢でも、長い戦いを続ける能力はまるでないと、ぼくにはわかった。
肩にフリント船長を止まらせ、盛んに食べていたシルバーでさえ、この無分別を一言もとがめなかった。それがなおさら驚きだった。このときほど狡猾に立ち回るシルバーを、ぼくは見たことがなかったからだ。
「そうだ、仲間たち」とシルバーは言った。「この頭でおめえらの代わりに考えてやるバーベキューがいて、運がよかったな。欲しいものは手に入れたぜ。確かに、船はあいつらが持ってる。どこにあるかは、まだわからねえ。だが宝に行き着きゃ、すぐ動いて探し出すんだ。それに、仲間たち、ボートを持ってるのはこっちだ。なら、こっちが有利だろうよ。」
こうして熱いベーコンを口いっぱいにほおばりながら話し続け、連中の希望と自信を取り戻させた。そして同時に、自分自身の希望も立て直していたのだと、ぼくは強く思う。
「人質のほうは」と続けた。「大好きな連中と話せるのも、これが最後だろうよ。こいつのおかげで情報が手に入った。それには礼を言う。だが話はこれっきりだ。宝探しには綱をつけて連れていく。万一に備えて、当分は金塊みてえに大事に取っとくんだ。いいな。船と宝を両方手に入れ、愉快な仲間同士で海へ出りゃ、そのとき改めてホーキンズさんの処遇を相談しよう。親切のお返しに、きっちり分け前をやるとも。」
連中がすっかり機嫌を直したのも無理はなかった。ぼくのほうは、ひどく気が沈んだ。今シルバーが描いた計画が実行できるなら、すでに二重の裏切り者であるこの男は、ためらわずそれを選ぶだろう。まだ両陣営に片足ずつ置いているのだ。ぼくらの側について期待できる最大のものは、絞首刑を免れることだけだ。それより海賊とともに富と自由を得るほうを選ぶのは、疑いようもなかった。
いや、たとえ成り行きでリヴジー博士との約束を守らざるを得なくなったとしても、その先にはどれほどの危険があることか。手下たちの疑いが確信に変わった瞬間、片脚のシルバーと、子供のぼくは、たくましく身軽な五人の船乗りを相手に、命懸けで戦わなければならないのだ!
この二重の不安に加え、仲間たちの行動は、まだ謎に包まれていた。なぜ防柵を捨てたのか。なぜ海図を渡したのか。そして、さらにわからないのが、博士が最後にシルバーへ言った「見つけたときは、ひと荒れ来ると思って用心したまえ」という忠告だった。これだけ重なれば、朝食がどれほど味気なく、捕らえた連中に従って宝探しへ出るぼくの心が、どれほど不安だったか、わかってもらえるだろう。
誰かが見ていたら、ぼくらは奇妙な一行に見えたはずだ。全員が汚れた船乗り服を着て、ぼく以外は歯まで武装していた。シルバーは前と後ろに一丁ずつ、二丁の銃を吊るし、腰には大きな舶刀、裾の角ばった上着の両ポケットには拳銃を一丁ずつ入れていた。その奇妙な姿の仕上げに、肩にはフリント船長が止まり、意味もない船乗り言葉の断片をしゃべり散らしていた。ぼくは腰に綱を巻かれ、船の料理番のあとをおとなしく歩いた。シルバーは綱の端を、空いた手で持ったり、丈夫な歯でくわえたりしていた。まるで踊り熊のように引かれていたのだ。
ほかの男たちも、それぞれ荷物を持っていた。つるはしやシャベルを担ぐ者もいた。連中がヒスパニオラ号から真っ先に陸へ持ち出した必需品が、それだったのだ。ほかの者は昼食用の豚肉、パン、ブランデーを背負っていた。食料はすべて、もとはぼくらのものだと気づいた。昨夜のシルバーの言葉が本当だったとわかった。博士と取引をしなければ、船に見捨てられたシルバーと反乱者たちは、水と、狩りで得た獲物だけで生きていくしかなかったのだ。水は連中の好みではないだろう。船乗りはふつう、射撃がうまくない。そのうえ食べ物にこれほど困っていたのなら、火薬だけ豊富にあったとも思えない。
そんな装備で、ぼくらは全員出発した。頭を割られた男まで加わっていたが、あいつは絶対に日陰で休んでいるべきだった。一人また一人と、二艘のボートが待つ浜へ、ばらばらに下りていった。そのボートにも、海賊の酔っぱらった愚行の跡があった。一艘は腰掛けが壊れ、両方とも泥だらけで、水も汲み出していなかった。安全のため、二艘とも連れていくことになり、人数を分けて乗り、停泊地の水面へ漕ぎ出した。
渡るあいだ、海図について議論があった。赤い十字はもちろん大きすぎて、それだけでは目印にならない。裏面の覚え書きも、これから述べるように、多少あいまいだった。読者も覚えているかもしれないが、こう書かれていた。
「大木。望遠鏡山の肩、北北東より北へ一方位点。
「骸骨島、東南東微東。
「十フィート。」
つまり主な目印は、大木だった。目の前の停泊地は、高さ二百から三百フィートの台地に縁どられていた。その北側は望遠鏡山の南肩の斜面へ続き、南側は再び高くなって、ミズンマスト丘という険しい崖山になっていた。台地の上には、高さの違う松が密に点在していた。そのあちらこちらで、別の種類の木が、まわりより四十か五十フィートも高くそびえていた。どれがフリント船長のいう「大木」なのかは、現地へ行って羅針盤を合わせるしか、決めようがなかった。
それなのに、半分も渡らないうちに、ボートの男たちはそれぞれ自分の木を選んでいた。ロング・ジョンだけが肩をすくめ、着くまで待てと言っていた。
シルバーの指示で、早くから腕を疲れさせないよう、ゆっくり漕いだ。かなり長い時間をかけ、二本目の川の河口へ上陸した。望遠鏡山の、木々に覆われた谷間から流れ下る川だった。そこから左へ折れ、台地へ向かって斜面を登りはじめた。
初めのうちは、重くぬかるんだ地面と、もつれ合う湿地の草木に、ひどく行く手を阻まれた。だが、少しずつ坂が急になり、足もとに石が増え、森の様子も変わって、木々の間隔が開きはじめた。今近づいているのは、島の中でも本当に気持ちのよい場所だった。強い香りのエニシダや、花をつけたさまざまな低木が、ほとんど草の代わりをしていた。緑のニクズクの茂みのあいだには、赤い柱のような松の幹と、その広い影が点々とあり、ニクズクの香辛料の匂いと松の香りが混じり合っていた。空気も新鮮で、よく動いていた。真上から日差しを浴びながら歩く身には、すばらしく爽やかだった。
一行は扇形に散らばり、叫びながら、あちこち跳ね回って進んだ。ほぼ中央で、ほかの者よりかなり後ろを、シルバーとぼくがついていった。ぼくは綱につながれ、シルバーは深く息を切らしながら、崩れる砂利をかき分けた。ときどきは、ぼくが手を貸さなければならなかった。そうしなければ、足を滑らせ、坂を後ろへ転がり落ちただろう。
こうして半マイルほど進み、台地の縁へ近づいたとき、いちばん左にいた男が、恐怖に襲われたような大声を上げた。何度も何度も叫び、ほかの者がそちらへ走り出した。
「宝を見つけたんじゃねえだろう」と、右から急いできた老モーガンが、ぼくらを追い越しながら言った。「宝は、てっぺんにあるんだからな。」
実際、ぼくらもそこへ着いてみると、まるで別のものだった。かなり大きな松の根元に、わずかな衣服の切れ端とともに、人間の骸骨が横たわっていた。緑のつる草がからまり、小さな骨のいくつかは持ち上げられてさえいた。誰の胸にも、一瞬、冷たいものが走ったと思う。
「船乗りだな」と、ほかの者より大胆に近寄り、ぼろ布を調べていたジョージ・メリーが言った。「少なくとも、こいつは上等な船乗り服の布だ。」
「ああ、そうだろうよ」とシルバーは言った。「こんなところに司教がいるとも思えねえからな。だが、なんだ、この骨の並び方は? 自然じゃねえぞ。」
確かに、もう一度見ると、自然な姿勢で死んだとは思えなかった。多少は乱れていたが、それは肉をついばんだ鳥か、ゆっくり育って遺骨を包んだつる草の仕業だろう。全体としては、男は完全にまっすぐ寝ていた。足は一方を向き、両腕は潜る人のように頭上へ伸ばされ、正反対を指していた。
「この古い石頭に、一つ考えが浮かんだ」とシルバーは言った。「ここに羅針盤がある。あそこに、歯みてえに突き出た骸骨島の頂がある。この骨の線に沿って、方位を測ってみてくれねえか。」
そのとおりにした。体は島の方向をまっすぐ指し、羅針盤も、ちゃんと東南東微東を示した。
「思ったとおりだ!」と料理番は叫んだ。「こいつは道しるべなんだ。あの上へまっすぐ行けば、北極星と、ありがてえ金の山へ続く線に出る。だが、畜生、フリントのことを思うと腹の底が冷えるぜ。こいつは間違いなく、あいつの冗談だ。あいつと六人だけがここにいた。全員を殺したんだ。そしてこいつをここへ引きずってきて、羅針盤で合わせて寝かせた。なんて野郎だ! 長い骨だな。髪は金色だった。ああ、アラダイスだろう。アラダイスを覚えてるか、トム・モーガン?」
「ああ、覚えてる」とモーガンは答えた。「おれに借金があった。それに、おれのナイフを持って上陸しやがった。」
「ナイフといやあ」と別の男が言った。「どうして、こいつのナイフはあたりにねえんだ? フリントは船乗りの懐を探るようなやつじゃなかった。鳥だって、ナイフは残すだろう。」
「畜生、そのとおりだ!」とシルバーは叫んだ。
「何も残っちゃいねえ」と、まだ骨のまわりを探っていたメリーが言った。「銅貨一枚も、たばこ入れもねえ。こいつはおかしいぞ。」
「ああ、まったくだ」とシルバーも同意した。「おかしいし、気味も悪いってわけだ。いやはや、仲間たち、もしフリントが生きてたら、ここはおれたちにゃ危ねえ場所だな! あいつらは六人、おれたちも六人。そしてあいつらは今、骨になってる。」
「おれは、この目であいつが死んだのを見た」とモーガンが言った。「ビリーが中へ連れてってくれたんだ。目に一ペニー銅貨を載せて寝てたよ。」
「死んだ。ああ、確かに死んで地獄へ行った」と包帯の男が言った。「だが、幽霊になるやつがいるなら、フリントだろうよ。ああ、あいつの死にざまはひどかった!」
「まったくだ」と別の男が言った。「暴れたかと思や、ラムをよこせと怒鳴り、今度は歌いやがる。『十五人の男』、歌うのはあれだけだった。正直言うが、仲間たち、あれからあの歌を聞くのは、どうも気が進まねえ。ひでえ暑さで、窓が開いててな。あの古い歌が、はっきり、はっきり聞こえてきたんだ。本人はもう、死の手に引かれてたのによ。」
「さあ、さあ」とシルバーは言った。「その話はしまえ。あいつは死んだし、幽霊にもならねえ。おれが保証する。少なくとも昼間は出ねえよ。そいつは間違いねえ。心配しすぎりゃ猫も死ぬ。金貨めざして進もうぜ。」
ぼくらは確かに歩き出した。だが、暑い日差しと、まぶしい昼の光にもかかわらず、海賊たちはもう、ばらばらに叫びながら森を走ろうとはしなかった。肩を並べ、声をひそめて話した。死んだ海賊への恐怖が、心にのしかかっていた。
第三十二章 宝探し――木立の中の声
一つには、この恐怖で気勢をそがれたため、もう一つには、シルバーと病人を休ませるため、一行は坂を登りきると、すぐに全員座りこんだ。
台地は少し西へ傾いていたので、休んだ場所からは、どちらを向いても広い眺めが開けた。前方では木々の梢越しに、砕け波に縁どられた森の岬が見えた。後ろを向けば、停泊地と骸骨島が見下ろせるばかりか、砂州と東の低地をはるかに越え、東の大海原まで見渡せた。頭上には望遠鏡山がそびえ、松が一本ずつ点在するところもあれば、断崖が黒々と迫るところもあった。音といえば、四方から上ってくる遠い砕け波の響きと、茂みで鳴く無数の虫の声だけだった。人影はなく、海には帆もない。景色が広大であるほど、孤独は深く感じられた。
シルバーは座ったまま、羅針盤でいくつか方位を測った。
「『大木』は三本ある」と言った。「骸骨島から見て、だいたい正しい線上だ。『望遠鏡山の肩』ってのは、あそこの低い出っ張りのことだろう。もう宝を見つけるのは子供の遊びだ。先に昼飯にしてもいいくらいだな。」
「腹は減ってねえ」とモーガンがうなった。「フリントを思い出したせいだろうな。」
「まあ、おめえ」とシルバーは言った。「あいつが死んでることを、ありがたく思うんだな。」
「ぞっとする悪魔だった」と、第三の海賊が身震いして叫んだ。「あの青い顔ときたら!」
「ラムのせいさ」とメリーが付け加えた。「青いって! ああ、確かに青かった。そいつは本当だ。」
骸骨を見つけ、そんな考えに取りつかれてから、連中の声はどんどん低くなっていた。今ではほとんどささやき声で、森の静けさを乱すほどでもなかった。すると突然、前方の木立の中から、細く、高く、震える声が、聞き覚えのある節と歌詞を歌い出した。
「死人の箱に十五人――
ヨーホーホー、ラムを一本!」
これほど恐怖に打ちのめされた人間を、ぼくは見たことがない。六人の顔から、魔法のように血の気が失せた。跳ね起きる者もいれば、ほかの者にしがみつく者もいた。モーガンは地面に這いつくばった。
「フリントだ、――!」とメリーが叫んだ。
歌は始まったときと同じく、突然やんだ。まるで歌い手の口を誰かが手で塞いだように、一つの音の途中で切れたのだった。日の照る澄んだ空気を、緑の梢のあいだを遠く渡ってくるその声は、ぼくには軽やかで、快くさえ聞こえた。それだけに、仲間たちへの影響は奇妙だった。
「よせ」とシルバーは言った。灰色の唇から、苦労して声を押し出した。「そいつはいけねえ。向きを変える用意をしろ。妙な始まり方だし、誰の声かはわからねえが、誰かがふざけてるんだ。血も肉もある人間だ。そいつは間違いねえ。」
話すうちに勇気が戻り、顔にも少し色が差した。ほかの者も、その励ましに耳を傾け、少しずつ落ち着きを取り戻しかけていた。そのとき同じ声が、また響いた。今度は歌ではなく、遠くかすかな呼び声だった。望遠鏡山の裂け目にこだまし、さらにかすかになって返ってきた。
「ダービー・マグロー」と、その声は泣き叫んだ。その音を表すには、それがいちばんふさわしい。「ダービー・マグロー! ダービー・マグロー!」と、何度も何度も。そして少し声を高め、ここには書けない悪態をついてから、「ラムを船尾へ持ってこい、ダービー!」
海賊たちは地面に根を生やしたように動かず、目をむいていた。声が消えてからも長いあいだ、恐ろしい顔で、黙って前方を見つめつづけた。
「これで決まりだ!」と一人が息を詰まらせた。「逃げよう。」
「あいつの最期の言葉だ」とモーガンがうめいた。「この世での、最期の言葉だ。」
ディックは聖書を取り出し、早口で祈っていた。海へ出て悪い仲間に交わるまでは、ディックはきちんと育てられた男だったのだ。
それでもシルバーは負けなかった。歯がかちかち鳴るのは聞こえたが、まだ降参してはいなかった。
「この島でダービーのことを知ってるやつはいねえ」とつぶやいた。「ここにいるおれたちのほか、一人もな。」
それから力を振り絞って叫んだ。「仲間たち、おれは宝を取りに来たんだ。人間にも悪魔にも負けるもんか。生きてるフリントだって怖くなかった。畜生、死んだやつとも渡り合ってやる。ここから四分の一マイルもないところに、七十万ポンドがあるんだぞ。あんな大金を前に、青い顔の酔いどれ船乗りが怖くて尻を向ける運の紳士なんぞ、どこにいる? しかも、相手は死人だ!」
だが手下たちには、勇気を取り戻す気配はなかった。それどころか、冒瀆的な言葉に、ますます恐怖を募らせているようだった。
「やめろ、ジョン!」とメリーが言った。「幽霊に逆らうな。」
ほかの連中は、怖すぎて返事もできなかった。勇気があれば、一人ずつでも逃げ出しただろう。だが恐怖のせいで離れられず、ジョンの勇敢さが助けになるかのように、そのそばへ固まっていた。シルバー自身は、もうほとんど弱気をねじ伏せていた。
「幽霊か? まあ、そうかもしれねえ」と言った。「だが一つ、腑に落ちねえことがある。こだまがした。さて、影のある幽霊を見たやつはいねえだろう。だったら、どうしてこだまがあるんだ? そいつを聞きてえな。どう考えても、おかしいだろう。」
ぼくには、ずいぶん弱い理屈に思えた。だが迷信深い人間の心を何が動かすかは、わからない。驚いたことに、ジョージ・メリーは大いに安心した。
「そりゃそうだ」と言った。「ジョン、おめえの頭は飾りじゃねえな。よし、方向転換だ、仲間たち! おれたちは間違った針路に乗ってたらしい。考えてみりゃ、フリントの声には似てた。そいつは認める。だが、まったく同じってわけでもなかったぞ。むしろ、ほかの誰かの声に似てた。あれは……」
「畜生、ベン・ガンだ!」とシルバーが怒鳴った。
「そうだ、そうだった!」とモーガンが、ぱっと膝立ちになって叫んだ。「ベン・ガンだ!」
「それで、どう違うんだ?」とディックが尋ねた。「ベン・ガンだって、フリントと同じで、生きてここにいるわけじゃねえ。」
だが年季の入った船乗りたちは、この言葉を鼻で笑った。
「ベン・ガンなんぞ、誰も気にしねえよ!」とメリーが叫んだ。「生きてようが死んでようが、誰も怖がるもんか!」
驚くほど、連中は元気を取り戻し、顔色も元へ戻った。じきに耳を澄ます合間におしゃべりを始め、その後はもう何も聞こえなかったので、間もなく道具を担いで、また歩き出した。メリーがシルバーの羅針盤を持って先頭に立ち、骸骨島との線を外さないよう進んだ。メリーの言ったとおりだった。生きていても死んでいても、ベン・ガンを怖がる者はいなかった。
ディックだけは、まだ聖書を握り、歩きながら恐ろしそうにあたりを見回していた。だが誰も同情せず、シルバーは用心深さをからかいさえした。
「言っただろう」とシルバーは言った。「聖書を駄目にしたって、おれは言ったんだ。誓いにも使えねえもんを、幽霊がありがたがると思うか? これっぽっちもねえよ!」と、一瞬松葉杖を止め、太い指をぱちんと鳴らした。
だがディックは気が晴れなかった。実際、病気になりかけていることが、ぼくにもじきにわかった。暑さと疲労と恐怖の衝撃が手伝い、リヴジー博士の予告した熱が、急速に高くなっているらしかった。
台地の上は開けていて、気持ちよく歩けた。先にも言ったとおり西へ傾いていたので、道は少し下りだった。大小の松は間隔を空けて生え、ニクズクやツツジの茂みのあいだにも、広い空き地があり、熱い日差しに焼かれていた。ほぼ北西へ島を横切るにつれ、一方では望遠鏡山の肩の下へ近づき、他方では、かつてぼくが小舟に揺られ、震えていた西の湾が、ますます広く見渡せた。
一本目の大木へ着いたが、方位を測ると違っていた。二本目も同じだった。三本目は、低木の茂みの上に、二百フィート近くそびえていた。植物の巨人だった。赤い幹は小屋ほども太く、まわりに広がる影の中では、一個中隊が演習できそうだった。東からも西からも、遠い海上からよく見え、海図に航海の目印として記されていてもおかしくなかった。
だが、今みんなの心を打っていたのは、その大きさではなかった。広がる影のどこかに、七十万ポンド分の金が埋まっているという思いだった。近づくにつれ、金への思いは、それまでの恐怖をすべて飲みこんだ。目は燃え、足は速く軽くなった。一人一人を待つ財宝、一生分の贅沢と快楽に、魂のすべてが縛りつけられていた。
シルバーは松葉杖で、うなりながら跳ね進んだ。鼻孔は大きく膨らんで震えていた。熱く照る顔にハエが止まると、狂人のように悪態をついた。ぼくをつないだ綱を乱暴に引き、ときどき殺気のこもった目を向けた。考えを隠そうともしなかった。ぼくには印刷された文字のように、はっきり読めた。金が目前に迫ると、ほかのことはすべて忘れられていた。ぼくへの約束も、博士の警告も、過ぎ去ったことだった。宝を手に入れ、夜陰に紛れてヒスパニオラ号を見つけて乗りこみ、島にいる善良な人間の喉をすべて切り裂き、初めの計画どおり、罪と富を積んで出帆するつもりなのは、疑いようもなかった。
そんな不安に震えるぼくには、宝探しの連中の速い歩調についていくのは、つらいことだった。ときどきつまずくと、シルバーは綱を荒々しく引き、殺すような目でにらんだ。ぼくらより遅れ、最後尾になったディックは、上がりつづける熱に浮かされ、祈りと悪態を一人でぶつぶつ言っていた。それもぼくをいっそうみじめにした。おまけに、かつてこの台地で起きた惨劇が、頭から離れなかった。青い顔をした、神をも恐れぬ海賊。サバンナで歌い、酒を叫び求めながら死んだあの男が、ここで六人の仲間を、その手で切り殺したのだ。今はこんなに静かな林も、そのときは悲鳴に満ちていたに違いない。そう思うだけで、今もまだ、その叫びが響いている気さえした。
ぼくらは茂みの縁まで来ていた。
「それっ、仲間たち、一斉に行け!」とメリーが叫び、先頭の連中が走り出した。
ところが突然、十ヤードも行かないうちに、みんなが止まった。低い叫びが上がった。シルバーは速度を倍にし、取りつかれたように松葉杖の先を突き立てて進んだ。次の瞬間、シルバーもぼくも、ぴたりと立ち止まった。
目の前には、大きな掘り跡があった。新しいものではなかった。側面は崩れ、底には草が生えていた。その中に、二つに折れたつるはしの柄と、いくつもの荷箱の板が散らばっていた。一枚の板には、焼きごてでセイウチ号と押されていた。フリントの船の名だった。
事実は疑いようもなかった。宝の隠し場所は見つけられ、空にされていた。七十万ポンドは消えていた!
第三十三章 頭領の失墜
この世に、これほどの大逆転はなかった。六人とも、殴られたようになった。だがシルバーだけは、ほとんど一瞬で衝撃を乗り越えた。魂のすべてを、疾走する競走馬のように金へ向けていたのに、ほんの一秒で、ぴたりと止められた。それでも冷静さを保ち、気を立て直し、ほかの者が落胆をのみこむ前に、計画を変えたのだ。
「ジム」とシルバーはささやいた。「こいつを持て。騒ぎに備えろ。」
そして二連発の拳銃を渡した。
同時に、静かに北へ動きはじめ、数歩で、ぼくら二人と残りの五人とのあいだに穴を挟んだ。それからぼくを見て、うなずいた。「こいつは危ねえ瀬戸際だ」とでもいうようだった。実際、ぼくもそう思った。顔つきは今や、まったく親しげだった。こうした度重なる変わり身に、ぼくはうんざりし、思わずささやいた。「また寝返ったんだね。」
シルバーに答える暇はなかった。海賊たちは悪態をつき、叫びながら、次々に穴へ飛びこみ、板を投げのけ、指で土を掘りはじめた。モーガンが金貨を一枚見つけた。悪態を噴き出すように並べながら、それを掲げた。二ギニー金貨だった。十五秒ほどのあいだに、それは全員の手を渡った。
「二ギニー!」とメリーは怒鳴り、シルバーに向かって振った。「これがてめえの七十万ポンドか? 取引の名人なんだろう? 何一つしくじったことのねえ男なんだろう、この木っ端頭の陸者め!」
「掘りな、若い衆」とシルバーは、冷ややかに人を食った調子で言った。「根っこの実くらいは見つかるかもしれねえぜ。」
「根っこの実だと!」とメリーは金切り声を上げた。「聞いたか、仲間たち? あいつは初めから全部知ってたんだ。顔を見ろ。そう書いてあるだろう。」
「おや、メリー」とシルバーは言った。「また船長に立候補か? まったく、押しの強いやつだな。」
だが今度は、全員が完全にメリーの味方だった。連中は怒りに燃えた目をこちらへ向けながら、穴から這い上がりはじめた。一つ、ぼくらに都合のよいことに気づいた。全員が、シルバーとは反対側へ出たのだ。
こうして、片側に二人、向こう側に五人、あいだに穴を挟んで向き合った。誰も、最初の一撃を放つほどには勇気が高まっていなかった。シルバーは動かなかった。松葉杖でまっすぐ立ち、連中を見つめていた。これまで見たどのときにも劣らず、落ち着いていた。勇敢な男だ。それは間違いなかった。
とうとうメリーは、ひとつ演説すれば勢いがつくと思ったらしい。
「仲間たち」と言った。「向こうはたった二人だ。一人は、おれたちをここへ連れてきて、こんなざまにしやがった老いぼれの片脚野郎。もう一人は、心臓をえぐり出してやりてえ、あの小僧だ。さあ、仲間たち――」
腕を上げ、声を高め、明らかに突撃を率いるつもりだった。そのとき、パン、パン、パンと、茂みから三発のマスケット銃が火を噴いた。メリーは頭から穴へ転がり落ちた。包帯の男は独楽のようにくるりと回り、体を伸ばして横倒しになった。まだぴくぴくしていたが、死んでいた。残りの三人は向きを変え、全力で逃げた。
まばたきする間もなく、ロング・ジョンは、もがくメリーへ二連発の拳銃を撃ちこんだ。最期の苦悶の中、メリーが目をむいて見上げると、「ジョージ」と言った。「これで決着がついたらしいな。」
同時に、博士とグレイとベン・ガンが、煙の上がるマスケット銃を持ち、ニクズクの木々のあいだからぼくらに合流した。
「前へ!」と博士は叫んだ。「駆け足だ、みんな。ボートへ行かれる前に回りこむぞ。」
ぼくらは全速力で走り出し、ときには胸まである茂みを突き抜けた。
シルバーが必死についてこようとしたのは、言うまでもない。胸の筋肉が裂けそうになるほど松葉杖で跳ね続けた、その奮闘ぶりは、五体満足な人間にも真似できまい。博士もそう思っている。それでも、斜面の縁に着いたとき、シルバーはもう三十ヤードも遅れ、息が詰まりそうになっていた。
「博士!」と呼んだ。「あれを見てくだせえ! 急ぐこたあねえ!」
確かに、急ぐ必要はなかった。台地の開けたところで、生き残った三人が、逃げはじめたのと同じ方向、まっすぐミズンマスト丘へ走っているのが見えた。ぼくらはすでに、連中とボートのあいだにいた。そこで四人は座って息をつき、ロング・ジョンが顔をぬぐいながら、ゆっくり追いついてきた。
「本当にありがてえ、博士」と言った。「おれとホーキンズには、ぎりぎりのところでしたぜ。それに、ベン・ガン、おめえだったのか!」と付け加えた。「まったく、大したやつだな。」
「おらあベン・ガンだよ」と、置き去り男は答えた。きまり悪そうに、ウナギのように体をくねらせた。「それで」と、長い間を置いて付け加えた。「ごきげんよう、シルバーさん。おかげさまで元気です、って返事をするところだね。」
「ベン、ベン」とシルバーはつぶやいた。「おめえにしてやられるとはな!」
博士はグレイを戻らせ、反乱者たちが逃げるとき捨てたつるはしを一本、取ってこさせた。それからボートのある場所へゆっくり坂を下りながら、何が起きたかを手短に話してくれた。シルバーは深い関心をもって聞いた。そして、その話の初めから終わりまで、主役は少々頭の鈍い置き去り男、ベン・ガンだった。
ベンは、長い孤独な島歩きのあいだに、あの骸骨を見つけていた。持ち物をさらったのもベンだった。宝を見つけ、掘り出したのもベンだった。穴に折れていたのは、ベンのつるはしの柄だったのだ。何度も何度も疲れる道を往復し、大きな松の根元から、島の北東の角にある二つ峰の丘の洞窟へ、宝を背負って運んだ。ヒスパニオラ号が来る二か月前から、宝はそこで安全に蓄えられていたのだ。
襲撃のあった日の午後、博士はその秘密をベンから聞き出した。翌朝、停泊地から船が消えたのを見ると、シルバーのところへ行き、もう役に立たない海図を渡した。食料も渡した。ベン・ガンの洞窟には、自分で塩漬けにしたヤギ肉が十分あったからだ。防柵から二つ峰の丘へ安全に移り、マラリアを避け、金を見張れるようにするためなら、何でもかんでも渡したのである。
「おまえのことは、ジム」と博士は言った。「胸が痛んだよ。だが、務めを守った者たちのために、最善と思うことをした。その中におまえがいなかったとしたら、それは誰の責任だね?」
今朝、反乱者たちのために仕組んだひどい失望に、ぼくまで巻きこまれると知ると、博士は洞窟まで走り通した。郷士を船長の見張りに残し、グレイと置き去り男を連れて出発し、島を斜めに横切って、松のそばへ先回りしようとした。だが、ぼくらの一行が先を行っているとじきにわかったので、足の速いベン・ガンを先へ送り、一人でできることをさせた。そこでベンは、昔の仲間の迷信につけこむことを思いついた。それが見事に成功し、宝探しの連中が着く前に、グレイと博士も追いついて、すでに待ち伏せできていたのだ。
「ああ」とシルバーは言った。「こっちにホーキンズがいて、運がよかった。こいつがいなけりゃ、哀れなジョンが切り刻まれても、先生は気にも留めなかったでしょうな。」
「少しもね」とリヴジー博士は晴れやかに答えた。
そのころには、ボートへ着いていた。博士はつるはしで一艘を壊し、それから全員がもう一艘へ乗りこみ、海を回って北の入江へ向かった。
八か九マイルの航程だった。シルバーはすでに疲労で死にそうだったが、ぼくらと同じように櫂を持たされた。じきに、穏やかな海をすいすい進んでいた。ほどなく海峡を抜け、島の南東の角を回った。四日前、ヒスパニオラ号を曳いて回った、あの角だった。
二つ峰の丘のそばを通ると、ベン・ガンの洞窟の黒い口と、そのそばでマスケット銃にもたれて立つ人影が見えた。郷士だった。ぼくらはハンカチを振り、三度、歓声を上げた。シルバーの声も、誰にも劣らず元気に加わっていた。
さらに三マイル進み、北の入江の入口を少し入ったところで、何に出くわしたと思う。ヒスパニオラ号が、ひとりでに航海していたのだ! 直前の満潮で浮き上がっていた。もし強い風か、南の停泊地のような速い潮流があったら、二度と見つからないか、見つかっても救いようのない座礁をしていただろう。幸い、主帆が傷んだほかに、大した問題はなかった。別の錨を用意し、水深一・五ファゾムのところへ下ろした。そこから全員でまた漕ぎ戻り、ベン・ガンの宝の家にいちばん近いラム酒入江へ向かった。そのあとグレイが一人でボートを漕いでヒスパニオラ号へ戻り、一晩、船を見張ることになった。
浜から洞窟の入口までは、緩い坂が続いていた。上では郷士が迎えてくれた。ぼくには親切で温かく、勝手に抜け出したことを、叱りもしなければ褒めもしなかった。シルバーが丁寧に敬礼すると、郷士の顔は少し赤くなった。
「ジョン・シルバー」と郷士は言った。「君は途方もない悪党で、詐欺師だ。とんでもない詐欺師だよ。君を訴追してはいかんと聞いている。よろしい、しないことにしよう。だが、死んだ者たちは、ひき臼の石のように君の首へぶら下がっているぞ。」
「まことにありがとうございます、旦那」とロング・ジョンは答え、また敬礼した。
「私に礼など言うな!」と郷士は叫んだ。「これは私の重大な職務怠慢だ。下がっていろ!」
そうして、ぼくらはみな洞窟へ入った。広く風通しのよい場所で、小さな泉と澄んだ水たまりがあり、シダがその上へ垂れかかっていた。床は砂だった。大きな火の前にはスモレット船長が横たわっていた。そして奥の隅、炎の揺らめきがかすかに届くところに、貨幣の大きな山と、金の延べ棒を四角く積み上げた塊が見えた。これこそ、ぼくらがはるばる探しに来たフリントの宝だった。すでにヒスパニオラ号の十七人が、このために命を落としていた。集めるまでには、何人の命を奪ったのだろう。どれほどの血と悲しみ、どれほどの立派な船が深海へ沈められ、どれほどの勇敢な男が目隠しをされて板を歩かされ、どれほどの砲弾、恥辱、嘘、残虐があったのだろう。生きている人間には、おそらく誰にも語り尽くせまい。だが、まだこの島には三人、シルバーと老モーガンとベン・ガンがいた。それぞれ、その罪に手を染め、そしてそれぞれ、その報酬の分け前を、むなしく望んでいたのだった。
「入れ、ジム」と船長は言った。「おまえは、おまえなりにはよくやる子だ。だが、私とおまえが、また一緒に海へ出ることはあるまい。おまえは私には、運に愛されすぎている。そこにいるのはジョン・シルバーか? 何をしに来た?」
「務めに戻ってまいりました、船長」とシルバーは答えた。
「そうか」と船長は言った。それだけだった。
あの晩、仲間全員に囲まれて食べた夕食は、なんというものだったろう。ベン・ガンの塩漬けヤギ肉に、ヒスパニオラ号から運んだご馳走と古いワイン一本。これほど陽気で幸せな人々は、ほかにいなかったに違いない。シルバーもそこにいた。火の明かりがほとんど届かない奥へ座りながら、食欲旺盛に食べ、何か必要になると、すぐに進み出た。ぼくらの笑いにも、静かに加わった。往路の航海で見た、あの愛想がよく、丁寧で、腰の低い船乗りと、まったく同じだった。
第三十四章 最終章
翌朝、ぼくたちは早くから仕事に取りかかった。この莫大な量の金を、陸路で一マイル近く運んで浜へ出し、そこからさらに三マイル、ボートでヒスパニオラ号まで運ぶのは、わずかな人数では大仕事だったからだ。まだ島のどこかにいるあの三人のことは、さほど気にならなかった。丘の中腹に見張りを一人置けば、不意打ちは防げたし、それに、連中も戦いにはもううんざりしているはずだと思った。
そこで仕事はどんどん進んだ。グレイとベン・ガンがボートで往復し、その留守に、残りのみんなで宝を浜へ積み上げた。金の延べ棒は、二本を縄の端でくくっただけで、大の男にもずっしりと重く、ゆっくり歩かずにはいられないほどだった。ぼくは運搬にはあまり役に立たないので、一日中洞穴で、硬貨を乾パン袋に詰める仕事に追われた。
それは実に奇妙な取り合わせだった。いろいろな国の貨幣が交じっているところはビリー・ボーンズの蓄えと同じだったが、量も種類も比べものにならず、それを仕分けるほど楽しい仕事はなかったと思う。イングランド、フランス、スペイン、ポルトガルの貨幣、ジョージ王やルイ王の金貨、ダブロン金貨に二ギニー金貨、モイドール金貨、ゼキーノ金貨。この百年間のヨーロッパのあらゆる王の肖像があり、糸くずかクモの巣の切れ端のような模様を刻んだ、不思議な東洋の貨幣もあった。丸いもの、四角いもの、首から下げるためか、真ん中に穴のあいたもの――世界中のほとんどあらゆる種類の貨幣が、そこにはそろっていたのではないだろうか。その数ときたら、まさしく秋の落ち葉さながらで、かがみっぱなしの背中も、仕分けをする指も痛くなるほどだった。

*世界中のほとんどあらゆる種類の貨幣が
そこにはそろっていたに違いない*
毎日毎日、この仕事が続いた。夕方になるたびにひと財産が船に収まっていたが、翌日にはまた、ひと財産が待っていた。その間、生き残った三人の反乱者の消息はまったく聞こえてこなかった。
とうとう――たしか三日目の晩だったと思う――博士とぼくが、島の低地を見下ろせる丘の中腹を散歩していると、眼下の深い闇から、叫びとも歌ともつかない声が風に乗って聞こえてきた。耳に届いたのはほんのひと節で、あとはまた元の静けさに戻った。
「神よ、あの者たちをお許しください」と博士は言った。「反乱者たちだ!」
「みんな酔っぱらってるんですよ、先生」と、背後からシルバーの声が割り込んだ。
言っておくと、シルバーはまったく自由に行動することを許されていた。毎日冷たくあしらわれているのに、またもや自分を、ひいきにされている気心の知れた家来か何かのつもりでいるらしかった。実際、どんなに邪険にされてもよく堪え、少しもめげずに丁重に振る舞って、みんなに取り入ろうとしつづけるのには感心した。それでも、シルバーを犬よりましに扱う者は、ほとんどいなかったと思う。例外がいたとすれば、昔の操舵長を今なおひどく恐れていたベン・ガンか、実際に恩を受けたぼくぐらいだった。もっとも、そのぼくだって、高台でシルバーが新たな裏切りを企むのを見ていたのだから、誰よりもあの男を悪く思う理由があったはずだ。そんなわけで、博士の返事もかなりとげとげしかった。
「酔っているのか、熱に浮かされているのか」と博士は言った。
「おっしゃるとおりで、先生」とシルバーは答えた。「それに、どっちだろうと、先生やおれには大した違いはありませんや。」
「まさか君も、自分を情け深い男だと認めてほしくはあるまい」と博士は皮肉をこめて答えた。「だから、私の気持ちは君には意外かもしれんな、シルバー君。だが、もしあの連中が熱に浮かされているとわかったら――少なくとも一人は熱病で倒れていると、私はほとんど確信しているのだが――私はここを出て、自分の身にどんな危険があろうと、治療をしに行くつもりだ。」
「失礼ながら、先生、そいつはいけません」とシルバーは言った。「大事な命を落としますぜ。こいつは間違いありません。おれは今じゃ、身も心も先生方の味方です。仲間が減るのは見たくありませんし、まして先生ならなおさらだ。どれだけご恩があるか、わかってますからね。だが、あそこにいる連中は、約束なんぞ守れやしません――いや、守る気になったって無理なんです。それに、先生が約束を守るってことも、連中には信じられねえんですよ。」
「なるほど」と博士は言った。「約束を守る男といえば君だからな。それはよく知っている。」
さて、三人の海賊についてぼくたちが知ったのは、それがほとんど最後だった。そのほかには、ただ一度、はるか遠くで銃声が聞こえ、狩りをしているのだろうと思っただけだ。相談の結果、連中は島に置き去りにするしかないということになった。言っておくと、ベン・ガンは大喜びし、グレイも大賛成だった。ぼくたちは十分な量の火薬と弾丸、塩漬けのヤギ肉の大部分、薬を少々、それにいくらかの生活必需品、道具、衣服、予備の帆一枚、一、二ファゾムの綱を残してやった。そして博士のたっての希望で、たっぷりのタバコも贈り物として添えた。
それが、島でぼくたちのした、ほぼ最後の仕事だった。それまでに宝はすっかり船に積み、万一に備えて、十分な水と残りのヤギ肉も運び込んであった。そしてとうとう、ある晴れた朝、ぼくたちはやっとの思いで錨を上げ、北の入江を出た。なびいているのは、船長が柵の中に掲げ、その下で戦った、あの旗だった。
間もなくわかったことだが、あの三人は、ぼくたちが思っていた以上に、こちらの動きを注意深く見張っていたに違いない。狭い水路を抜けるとき、船を南側の岬にごく近づけなければならなかったのだが、そこに突き出した砂州で、三人が並んでひざまずき、両腕を上げて助けを求めていたのだ。あの惨めな姿のまま見捨てていくのは、誰にとっても胸が痛んだと思う。だが、もう一度反乱を起こされる危険は冒せないし、国へ連れ帰って絞首台へ送るのも、残酷な親切というものだった。博士は大声で呼びかけ、物資を残してやったことと、その置き場所を教えた。それでも連中は、ぼくたち一人一人の名を呼びつづけ、神にかけて慈悲を見せてくれ、こんなところで見殺しにしないでくれと訴えた。
やがて、船がなおも進路を変えず、声も届かないところへぐんぐん遠ざかるのを見て、三人のうちの一人――誰だったかはわからない――が、しわがれた叫びを上げて跳ね起きた。すばやくマスケット銃を肩に当てて撃つと、弾はシルバーの頭上をひゅっとかすめ、主帆を突き抜けた。
そのあと、ぼくたちは舷側の囲いの陰に身を伏せた。次に外をのぞいたときには、三人の姿は砂州から消えていたし、砂州そのものも、遠ざかるにつれてほとんど見えなくなっていた。ともあれ、それで決着はついたのだ。そして昼前には、宝島でいちばん高い岩山も、青く広がる海の水平線の下に沈んだ。そのときのぼくの喜びは、とても言葉にはできない。
人手がひどく足りなかったので、船にいる者はみんな働かなければならなかった。ただ船長だけは、船尾に敷いたマットレスに横になって指示を出していた。ずいぶん回復してはいたものの、まだ安静が必要だったのだ。新しい船員を雇わずに帰国の航海に乗り出すのは危険だったので、ぼくたちはアメリカのスペイン領でいちばん近い港を目指した。その航海でさえ、ままならない風や、二度ほどの激しい時化に悩まされ、着くころには全員が疲れきっていた。
陸に囲まれた、このうえなく美しい湾に錨を下ろしたのは、ちょうど日没のころだった。するとすぐに、黒人やメキシコの先住民、混血の人々を乗せた小舟が岸からやって来て、船を取り囲んだ。果物や野菜を売り、銭を投げてくれれば潜って拾ってみせると申し出る人々だった。あんなにも大勢の陽気な顔、とりわけ黒人たちの笑顔や、熱帯の果物の味、そして何より、町にぽつぽつともり始めた明かりは、島で過ごしたあの暗く血なまぐさい日々とはまるで違い、実に心地よかった。博士と郷士はぼくを連れ、宵のひとときを過ごそうと上陸した。そこでイングランドの軍艦の艦長と出会い、話が弾んで、その艦へ招かれた。要するに、あまりにも楽しい時を過ごしたので、ヒスパニオラ号の横へ戻って来たころには夜が明けかけていた。
甲板にはベン・ガンが一人でいた。そしてぼくたちが船に上がるなり、妙に体をくねらせながら、打ち明け話を始めた。シルバーがいなくなったのだ。かつて島に置き去りにされていたベン・ガンは、数時間前、シルバーが岸の小舟で逃げるのを手助けしていた。そして、それはただ、ぼくたちの命を守るためだったのだと言い張った。「あの一本脚の男が船に残っていたら」、みんな間違いなく命を取られていたというのだ。
だが、それだけではなかった。あの船の料理番は、手ぶらで出ていったわけではない。誰にも気づかれずに船内の仕切り板を切り破り、この先の旅の足しにと、硬貨の袋を一つ持ち去っていた。おそらく三百か四百ギニーは入っていただろう。
そんな安い代償であの男と縁が切れたのだから、ぼくたちはみんな喜んでいたと思う。
さて、手短に言えば、ぼくたちは船員を何人か雇い入れ、無事に帰りの航海を終えた。ヒスパニオラ号がブリストルに着いたのは、ちょうどブランドリーさんが捜索に向かう僚船の準備を考え始めたころだった。出帆した者のうち、船とともに帰って来たのは、わずか五人。「残りは酒と悪魔にやられた」の歌詞が、まさにそのとおりになったわけだ。もっとも、あの歌に出てくる別の船ほどひどい有様ではなかったが。
「七十五人で船出して、
生きて戻ったのは、たった一人。」
ぼくたちはみんな宝をたっぷり分けてもらい、それぞれの性分に従って、賢く使ったり、愚かに使ったりした。スモレット船長は、今では船乗りを引退している。グレイは金を蓄えただけでなく、急に向上心に目覚めて航海の仕事を学び、今では立派な全装帆船の航海士で、船の共同所有者にもなっている。そのうえ結婚し、子供もいる。ベン・ガンはといえば、千ポンドをもらったのに、三週間で使い果たすか、なくすかしてしまった。正確に言えば十九日間で、二十日目には、また物乞いに戻っていたのだ。その後、島にいたときに恐れていたとおり、屋敷の門番小屋を任されることになった。今も元気で、土地の少年たちには少々からかわれるものの、みんなの人気者だ。日曜日や聖人の祝日には、教会でひときわ見事な歌声を聞かせている。
シルバーの消息は、その後まったく聞かない。あの恐ろしい一本脚の船乗りは、とうとうぼくの人生からきれいに姿を消した。だが、たぶん昔の黒人の女房と再会し、今でもフリント船長と一緒に、三人で何不自由なく暮らしているのかもしれない。そうであってほしいと思う。あの世で安楽に暮らせる見込みは、まずないのだから。
銀の延べ棒と武器は、ぼくの知るかぎり、今もフリントが埋めた場所に眠っている。少なくとも、ぼくが掘り出しに行くことは決してない。牛に馬車の綱で引きずられたって、あの呪われた島へ戻るものか。今でも見る、いちばん恐ろしい夢は、あの島の岸に打ち寄せる波のとどろきが聞こえてくる夢だ。あるいは、フリント船長の鋭い声がまだ耳に響くなか、寝床でがばっと跳ね起きることもある。「八レアル銀貨! 八レアル銀貨!」
