オズの不思議な国

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オズの不思議な国
L・フランク・ボーム 作
著者のことば
『オズの魔法使い』が出版されたあと、子どもたちから手紙が届くようになった。物語を読んで楽しかったこと、そしてかかしやブリキの木こりについて「もっと何か書いて」と頼む内容だった。最初のうち、私はその小さな手紙を――率直で真剣ではあったものの――かわいらしい賛辞として受け取っていた。だが手紙は、その後何か月も、さらには何年も、途切れることなく届きつづけた。
ついに私は、わざわざ長い旅をして私に会いに来て願いを伝えてくれたひとりの少女に約束した――ちなみにその子の名は「ドロシー」である――かかしとブリキの木こりのことを書いてほしいという小さな手紙が、千人の少女から千通届いたら、その本を書こう、と。小さなドロシーが実は妖精で、魔法の杖をひと振りしたのか、それとも舞台版『オズの魔法使い』の成功がこの物語に新しい友を増やしたのか。ともかく、千通の手紙はずいぶん前に目的地へ届き――そのあとにも、さらに多くの手紙が続いた。
そしていま、長らくお待たせした罪は認めつつも、私はこの本で約束を果たしたのである。
L・フランク・ボーム
シカゴ、1904年6月
ブリキの木こりとかかしを巧みに演じ、国じゅうの何千もの子どもたちを 喜ばせてくれた、すばらしき善良な仲間にして喜劇俳優、 デイヴィッド・C・モンゴメリーとフランク・A・ストーンに、 著者より感謝をこめて本書を捧げる

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チップ、パンプキンヘッドを作る
オズの国の北にあるギリキン国に、チップという少年が暮らしていた。実をいえば名前はそれだけではなく、年老いたモンビはたびたび、彼の正式な名はチッペタリウスだと言い張った。だが「チップ」で十分通じるのに、そんな長ったらしい名を口にする者などいなかった。
この少年は両親のことを何ひとつ覚えていなかった。幼いころ、モンビという老婆に育てられるため連れてこられたからだ。残念ながら、このモンビの評判はあまりよろしくなかった。ギリキンの人々は、彼女が魔法めいた術に手を染めているのではないかと疑っており、そのため彼女と付き合うのをためらっていたのである。

モンビは厳密には魔女ではなかった。というのも、オズの国のその地域を治める善い魔女が、自分の領内にほかの魔女が存在することを禁じていたからだ。だからチップの保護者であるモンビは、どれほど魔法を使いたいと望もうとも、せいぜい女妖術師、あるいはよくて女魔法使いにとどまらねばならないのだと心得ていた。
チップは老婆が鍋を煮られるよう、森から薪を運ばされた。トウモロコシ畑でも、鍬で土を掘ったり、皮をむいたりして働いた。さらに豚に餌をやり、モンビがことのほか自慢にしている四本角の雌牛の乳を搾った。
とはいえ、彼が一日じゅう働いていたと思ってはいけない。そんなことをしたら体に悪いと、チップは感じていたからだ。森へ行かされると、しばしば木に登って鳥の卵を探したり、すばしこい白ウサギを追いかけて遊んだり、曲げたピンで小川の魚を釣ったりした。それから大急ぎで腕いっぱいの薪を集め、家へ持ち帰るのである。トウモロコシ畑で働いているはずのときも、背の高い茎がモンビの目から彼を隠してくれると、チップはよくジリスの穴を掘った。あるいは気が向けば、トウモロコシの列のあいだに仰向けになって昼寝をした。こうして力を使い果たさぬよう気をつけながら、少年らしく丈夫でたくましく育っていった。
モンビの奇妙な魔法は、しばしば近所の人々を怖がらせた。彼らは彼女の不気味な力を恐れ、よそよそしく、それでいて丁重に扱った。だがチップは遠慮なく彼女を憎み、その気持ちを隠そうともしなかった。実際、彼女が自分の保護者であることを思えば、もう少し敬意を払うべきところを、チップはときどき必要以上に無礼だった。
モンビのトウモロコシ畑にはカボチャが実っていた。緑の茎の列のあいだに、黄金がかった赤い実がごろごろ転がっている。冬になったら四本角の雌牛に食べさせるため、植えられ、丁寧に世話されてきたものだった。ところがある日、トウモロコシがすべて刈り取られ積み上げられたあと、チップがカボチャを小屋へ運んでいたとき、ふと「ジャック・ランタン」を作り、老婆をそれでびっくりさせてやろうと思いついた。


そこで彼は、立派で大きなカボチャを選んだ。つややかな橙赤色をした一つである。そして彫りはじめた。ナイフの先で丸い目を二つ、三角の鼻を一つ、それに新月の形をした口を作った。出来上がった顔は、厳密にいって美しいとは言えなかった。だが大きく広い笑みを浮かべ、あまりにも陽気な表情をしていたので、チップ自身も自分の仕事ぶりをほれぼれ眺めながら笑ってしまった。
少年には遊び相手がいなかったので、子どもたちがよく「カボチャのおばけ」の中身をくり抜き、そこに火のついたろうそくを入れて顔をいっそうぎょっとするものにするのだとは知らなかった。けれどチップは、それに劣らず効果がありそうな独自の思いつきを抱いた。このカボチャ頭をかぶせる人間の形を作り、老婆モンビが真正面から出くわす場所に立たせておこうと考えたのである。
「そうしたら」とチップは笑いながらひとりごちた。「あの茶色の雌豚のしっぽを引っ張ったときより大きな声でキーキー叫んで、去年おれが熱病にかかったときよりひどく震えあがるぞ!」
この作業をやり遂げる時間はたっぷりあった。モンビは食料品を買うと言って村へ出かけており、少なくとも二日はかかる旅だったからだ。

そこでチップは斧を持って森へ入り、丈夫でまっすぐな若木を何本か選び、切り倒して小枝や葉をすべて払った。これで自分の人形の腕、脚、足を作るのだ。胴体には、大きな木の周りから厚い樹皮を一枚はぎ取り、大変な苦労の末、それをちょうどよい大きさの円筒形に整え、縁を木の釘で留め合わせた。それから楽しげに口笛を吹きながら作業を続け、手足に丁寧に関節をつけ、ナイフで削って形を整えた木釘で胴体に固定した。
この大仕事が終わるころには日が暮れはじめ、チップは牛の乳搾りと豚の餌やりをしなければならないことを思い出した。そこで木の人形を抱え上げ、自分といっしょに家へ持ち帰った。
その晩、台所の炉火の明かりで、チップは関節の角を注意深く丸め、ざらついたところをきちんと職人らしくなめらかにした。それから人形を壁に立てかけ、しげしげと眺めた。大人の男として見ても驚くほど背が高かったが、小さな少年の目にはそれがむしろ長所に映り、チップは自分の創造物の大きさにまったく文句をつけなかった。
翌朝、あらためて作品を見たチップは、カボチャ頭を胴体に取り付けるための首を人形に作り忘れていたことに気づいた。そこで彼は、さほど遠くない森へまた出かけ、仕上げに使うため木から何片か材木を切り取ってきた。戻ると、胴体の上端に横木を取り付け、その中央に穴をあけて首をまっすぐ立てられるようにした。首となるその木片の上端も尖らせておき、すべて準備が整うと、チップはカボチャ頭をのせ、首にしっかり押し込んだ。すると実に具合よくはまることがわかった。頭は思いのまま左右に向けられ、腕と脚の蝶番のおかげで、人形を好きな姿勢にすることもできた。
「よし、これは」とチップは誇らしげに言った。「本当にたいした男だ。老婆モンビから悲鳴をいくつか搾り取るには十分だぞ! でも、ちゃんと服を着せれば、もっと生きているみたいになるな。」
服を見つけるのは簡単ではなさそうだった。だがチップは大胆にも、モンビが思い出の品や宝物をすべてしまっている大きな長持ちをひっかき回し、そのいちばん底から紫のズボン、赤いシャツ、白い水玉模様のついた桃色のチョッキを見つけ出した。彼はそれらを自分の人形のところへ持っていき、服のサイズはあまり合わなかったものの、どうにかその生き物を小粋な格好に着せつけることに成功した。モンビの編み靴下と、チップ自身の履き古した靴一足でその男の装いは完成した。チップはあまりにうれしくて、少年らしい有頂天のまま、飛び跳ねたり声を上げて笑ったりした。
「こいつに名前をつけなきゃ!」彼は叫んだ。「これほど立派な男なら、名前がなくちゃおかしい。そうだな」と、少し考えてから彼は言い足した。「こいつの名は『ジャック・パンプキンヘッド』にしよう!」

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驚くべき生命の粉
よくよく考えた末、チップはジャックを置くのにいちばんよい場所は、家から少し離れた道の曲がり角だと決めた。そこで自分の男をそこへ運びはじめたが、重いうえに扱いにくいことがわかった。少し引きずったあと、チップはその生き物を両足で立たせ、片脚の関節を曲げ、次にもう片方の関節を曲げながら、同時に後ろから押した。こうして少年は、どうにかジャックを道の曲がり角まで歩かせることに成功した。途中で何度か転びもしたし、チップは畑や森で働いたとき以上に本気で骨を折った。だがいたずら心が彼を突き動かし、自分の工作の出来のよさを試すのも楽しかった。
「ジャックは上出来だ、よく動く!」チップは、慣れない大仕事に息を切らしながら、ひとりごちた。ところがそのとき、旅の途中で男の左腕が落ちていたことに気づいた。そこで引き返して探し、あとで肩の関節用に新しくもっと丈夫なピンを削ってやると、修理は見事にうまくいき、腕は前より頑丈になった。チップはまた、ジャックのカボチャ頭がねじれて背中のほうを向いていることにも気づいたが、これは簡単に直せた。ついに男が、老婆モンビの現れるはずの道の曲がり角に向けて立てられると、ギリキンの農夫のまずまずの模造品と思えるくらいには自然に見え――しかも、不意に出くわした者を驚かせるには十分すぎるほど不自然だった。
老婆が帰ってくるにはまだ早すぎたので、チップは農家の下に広がる谷へ下り、そこに生えている木から木の実を集めはじめた。
ところが、老婆モンビはいつもより早く戻ってきた。山の中の寂しい洞窟に住む、背の曲がった魔法使いに出会い、魔法に関する重要な秘密をいくつか彼と取り引きしてきたのである。こうして三つの新しい処方、四種類の魔法の粉、そして驚くほど強い力と効能をもつ薬草の詰め合わせを手に入れたモンビは、新しい妖術を試すため、できるかぎり急いで足を引きずりながら家路を急いだ。
手に入れた宝物に夢中だったモンビは、道の曲がり角を曲がってその男の姿をちらりと見ても、ただうなずいてこう言っただけだった。
「こんばんは、旦那さん。」
しかし次の瞬間、その人物が動きも返事もしないことに気づくと、彼女は抜け目ない視線をその顔へ向け、チップのジャックナイフで凝って彫られたカボチャ頭を見つけた。
「へっ!」モンビはうなるように声を上げた。「あの悪ガキ、またいたずらをしおったな! よろしい! たーいへん、よろしい! こんなやり方でわしを怖がらせようとするとは、青あざだらけになるまで叩いてやる!」
怒りにまかせて、彼女はにやにや笑う人形のカボチャ頭を叩き割ろうと杖を振り上げた。だがふいにある考えが浮かび、振り上げた杖を空中に止めたまま動きを止めた。
「おや、これは新しい粉を試すよい機会ではないか!」彼女は勢い込んで言った。「そうすれば、あの背曲がり魔法使いが正直に秘密を取り引きしたのか、それともわしがあやつをだましたのと同じくらい悪どく、わしをだましたのかがわかる。」
そこで彼女は籠を下ろし、手に入れた貴重な粉のひとつを探して中をがさごそやりはじめた。
モンビがそうしているところへ、チップがポケットいっぱいに木の実を詰めて戻ってきた。そして老婆が自分の男のそばに立っており、どう見ても少しも怖がっていないことに気づいた。
最初、彼はすっかりがっかりした。だが次の瞬間、モンビが何をするつもりなのか知りたくなった。そこで垣根の後ろに隠れ、こちらは見えるが向こうからは見えない場所に身を潜め、見張ることにした。
しばらく探したあと、老婆は籠から古いコショウ入れを取り出した。色あせたラベルには、魔法使いが鉛筆でこう書いていた。
「生命の粉。」
「おお――これじゃ!」彼女はうれしそうに叫んだ。「さて、どれほど効くか見てやろう。けちな魔法使いはあまりたくさんくれなかったが、二、三回分くらいはあるじゃろう。」

この言葉を聞いて、チップはたいそう驚いた。それから彼は、老婆モンビが腕を上げ、箱から粉を振り出して、自分の男ジャックのカボチャ頭にふりかけるのを見た。まるで焼きジャガイモにコショウをかけるような手つきだった。粉はジャックの頭からさらさら落ち、チップが着せた赤いシャツ、桃色のチョッキ、紫のズボンの上へ散り、さらには継ぎだらけの履き古した靴にまで少しかかった。
それからコショウ入れを籠に戻すと、モンビは左手を上げ、小指を上へ向けて言った。
「ウィーアウ!」
次に右手を上げ、親指を上へ向けて言った。
「ティーアウ!」
それから両手を上げ、指も親指もすべて広げて叫んだ。
「ピーアウ!」
するとジャック・パンプキンヘッドは一歩後ろへ下がり、非難するような声で言った。
「そんなふうに怒鳴らないでください! 私が耳が遠いとでもお思いですか?」
老婆モンビは歓喜のあまり狂ったように、その周りを踊り回った。
「生きておる!」彼女は金切り声を上げた。「生きておる! 生きておるぞ!」
それから杖を空中へ投げ上げ、落ちてきたところを受け止めた。そして両腕で自分自身を抱きしめ、ジグのステップを踏もうとした。彼女はそのあいだずっと、うっとりと繰り返していた。
「生きておる! ――生きておる! ――生きておるぞ!」
さて、チップがこれを見て仰天したことは、容易に想像できるだろう。
最初は怖ろしくてぞっとし、逃げ出したくなったが、脚がひどく震えてしまって動けなかった。ところが次に、ジャックが生き出すというのはひどくおかしなことに思えてきた。とくに、そのカボチャの顔の表情があまりにとぼけて滑稽で、見るなり笑いを誘ったのである。そこで最初の恐怖から立ち直ると、チップは笑い出した。その明るい笑い声が老婆モンビの耳に届き、彼女は急いで垣根へよろよろ近づくと、チップの襟首をつかみ、籠とカボチャ頭の男を置いた場所へ引きずっていった。
「この悪い、こそこそした、性根の曲がった小僧め!」彼女は怒り狂って叫んだ。「わしの秘密を盗み見て、わしを笑いものにするとは、思い知らせてやる!」
「おれはあんたを笑ってたんじゃないよ」とチップは抗議した。「あのパンプキンヘッドを笑ってたんだ! 見てみろよ! まるで絵みたいじゃないか?」
「私の外見について批判なさっているのでなければよいのですが」とジャックが言った。そのまじめくさった声と、変わらず陽気に笑っている顔の取り合わせがあまりにおかしく、チップはまたもやどっと笑い出した。

モンビですら、自分の魔法で命を吹き込まれたこの男に奇妙な興味を抱かずにはいられなかった。彼女はじっと彼を見つめたあと、やがて尋ねた。
「おまえは何を知っておる?」
「さて、それは答えにくいですね」とジャックは答えた。「というのも、自分では途方もなく多くのことを知っている気がするのですが、世界には知るべきことがどれほどあるのか、まだわかっていないからです。私がたいそう賢いのか、たいそう愚かなのか、それを見極めるには少し時間がかかりそうです。」
「なるほど」とモンビは考え深げに言った。
「でも、生きているとなると、これから彼をどうするつもり?」とチップは不思議そうに尋ねた。
「考えねばならん」とモンビは答えた。「だがすぐ家へ帰らねば。暗くなってきた。パンプキンヘッドが歩くのを手伝いなさい。」
「私のことはお気になさらず」とジャックは言った。「私はあなた方と同じくらい歩けます。脚と足があり、しかも関節がついているではありませんか?」
「ついておるのか?」老婆はチップのほうを向いて尋ねた。
「もちろんついてるよ。おれが自分で作ったんだ」と少年は誇らしげに答えた。
そこで彼らは家へ向かった。だが農家の庭に着くと、老婆モンビはカボチャの男を牛小屋へ連れていき、空いている区画に閉じ込め、外から扉をしっかり留めた。
「まずはおまえの始末をせねばならん」と彼女はチップに向かってうなずきながら言った。
これを聞いて、少年は不安になった。モンビが意地悪で復讐心の強い心を持ち、どんな悪事もためらわないことを知っていたからだ。
二人は家に入った。それは丸い、ドーム型の建物で、オズの国の農家のほとんどがそうである。
モンビは少年にろうそくを灯すよう命じ、自分は籠を戸棚に入れ、外套を釘に掛けた。チップはすばやく従った。彼女が怖かったからだ。
ろうそくが灯されると、モンビは炉に火を起こすよう命じた。チップがそれに取りかかっているあいだ、老婆は夕食を食べた。炎がぱちぱち音を立てはじめると、少年は彼女のところへ行き、パンとチーズを分けてくれと頼んだ。だがモンビは拒んだ。
「腹が減ったんだ!」チップはすねた声で言った。
「すぐに腹など減らなくなる」とモンビは険しい顔で答えた。
少年はその言葉が気に入らなかった。脅しのように聞こえたからだ。だがポケットに木の実があることを思い出したので、そのいくつかを割って食べた。そのあいだに老婆は立ち上がり、前掛けのパンくずを払い、小さな黒い鍋を火の上に掛けた。
それから彼女は牛乳と酢を同じ分量だけ量り、鍋へ注いだ。次に薬草や粉の包みをいくつか取り出し、それぞれを少しずつ鍋の中身へ加えはじめた。ときおりろうそくに近づいて、調合しているごた混ぜの処方を黄色い紙から読み取った。
チップはそれを見ているうちに、ますます落ち着かなくなった。
「それ、何に使うの?」彼は尋ねた。
「おまえにだ」とモンビは短く答えた。
チップは腰掛けの上でもぞもぞ身をよじり、泡立ちはじめた鍋をしばらく見つめた。それから魔女の厳しくしわだらけの顔にちらりと目をやり、この薄暗く煙たい台所でさえなければどこでもいいのにと思った。壁にろうそくが投げる影ですら、ぞっとさせるには十分だった。こうして一時間が過ぎ、そのあいだ沈黙を破るものは、鍋のぶくぶくいう音と炎のしゅうしゅういう音だけだった。
ついに、チップはまた口を開いた。
「おれ、その中身を飲まなきゃいけないの?」彼は鍋のほうへうなずきながら尋ねた。
「そうだ」とモンビは言った。
「おれ、どうなるの?」チップは尋ねた。
「正しく作れていれば」とモンビは答えた。「おまえは大理石の像に変わる。」
チップはうめき、袖で額の汗をぬぐった。
「大理石の像になんかなりたくない!」彼は抗議した。

「それは関係ない。わしがそうしたいのだ」と老婆は厳しく彼を見て言った。
「そうなったら何の役に立つの?」チップは尋ねた。「あんたのために働く者がいなくなるじゃないか。」
「パンプキンヘッドを働かせる」とモンビは言った。
チップはまたうめいた。
「どうしておれをヤギとかニワトリに変えないんだよ?」彼は不安そうに尋ねた。「大理石の像なんて、何にも使えないだろ。」
「いや、使える」とモンビは答えた。「来年の春、花壇を作るつもりだからな。その真ん中におまえを飾りとして置く。どうして今まで思いつかなかったのか不思議だよ。おまえは何年もわしの厄介者だったからね。」
この恐ろしい言葉に、チップは全身から汗の粒が吹き出すのを感じた。だがじっと座ったまま震え、心配そうに鍋を見つめていた。
「もしかしたら効かないかも」と彼は、弱々しくしょげた声でつぶやいた。
「いや、効くと思うよ」とモンビは陽気に答えた。「わしはめったに間違えない。」
再び沈黙が流れた。長く、陰気な沈黙だった。モンビがついに鍋を火から下ろしたときには、もう真夜中に近かった。
「すっかり冷めるまでは飲めん」と老婆の魔女は告げた。法律に逆らって、彼女は魔女術を行っていたのである。「いまは二人とも寝る。夜明けにおまえを呼び、すぐさま大理石の像への変身を仕上げる。」
そう言うと彼女は、湯気を立てる鍋を抱えて自分の部屋へよろよろ入っていった。チップには、彼女が扉を閉め、鍵をかける音が聞こえた。
少年は命じられたように寝床へは行かず、そのまま消えかけた炉火の残り火をにらみつけて座っていた。

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逃亡者たちの逃走
チップは考え込んだ。
「大理石の像になるなんて、ひどい話だ」と彼は反抗的に思った。「おれはそんなのごめんだ。あいつは、おれが何年も厄介者だったって言った。だからおれを始末するつもりなんだ。いいさ、像になるより簡単な方法がある。花壇の真ん中に永遠に立ちっぱなしで、楽しいと思う男の子なんているもんか! 逃げ出してやる。そうだ、それがいい――あの鍋の気味悪いものを飲まされる前に出ていくにかぎる。」
老婆の魔女のいびきが、彼女がぐっすり眠っていることを知らせるまで待つと、彼はそっと立ち上がり、食べ物を探しに戸棚へ向かった。
「食べ物なしで旅に出るなんて意味がない」と、狭い棚を探りながら彼は決めた。
パンの皮をいくつか見つけた。だが、モンビが村から持ち帰ったチーズを見つけるには、彼女の籠の中をのぞかねばならなかった。籠の中身をひっくり返していると、「生命の粉」の入ったコショウ入れが目に入った。
「これも持っていったほうがいい」と彼は思った。「でないと、モンビがこれを使ってまた悪さをする。」
そこで彼は、パンとチーズと一緒にその箱をポケットへ入れた。
それから用心深く家を出て、後ろ手に扉の掛け金をかけた。外では月も星も明るく輝いており、閉めきった悪臭のする台所のあとでは、夜は穏やかで誘うように思えた。
「出ていけてせいせいする」とチップは小声で言った。「あの老婆のことなんて、前から好きじゃなかった。いったいどうしてあいつと暮らすことになったんだろう。」
彼はゆっくり道のほうへ歩いていたが、ある考えが浮かんで足を止めた。
「ジャック・パンプキンヘッドを、老婆モンビの手にかけておくのは嫌だな」と彼はつぶやいた。「それにジャックはおれのものだ。たとえあの老魔女が命を吹き込んだとしても、おれが作ったんだから。」
彼は牛小屋まで引き返し、カボチャ頭の男が入れられていた区画の扉を開けた。
ジャックは区画の真ん中に立っていた。月明かりの中で、チップには彼が相変わらず陽気に笑っているのが見えた。
「来い!」少年は手招きして言った。
「どちらへ?」ジャックは尋ねた。
「おれにもわかったら、おまえにもわかるさ」とチップは、カボチャの顔へ同情めいた笑みを向けて答えた。
「今しなくちゃいけないのは、とにかく歩くことだ。」
「承知しました」とジャックは答え、ぎこちなく小屋の外へ、そして月明かりの中へ歩み出た。
チップは道のほうへ向かい、男はそのあとに続いた。ジャックの歩き方はどこか足を引きずるようで、ときおり脚の関節のひとつが前ではなく後ろへ曲がり、危うく転びそうになった。だがパンプキンヘッドはすぐそれに気づき、もっと注意深く足を運ぶようになった。おかげで事故は少なくなった。

チップは一瞬も足を止めず、道に沿って彼を導いた。あまり速くは進めなかったが、着実に歩いた。そして月が沈み、太陽が丘の向こうから顔を出すころには、ずいぶん長い距離を進んでいたので、少年が老婆の魔女の追跡を恐れる必要はなくなっていた。おまけに、彼は最初の道から別の道へ、さらにまた別の道へと曲がっていたので、もし誰かが追ってきたとしても、二人がどちらへ行ったのか、どこを探せばいいのかを見当づけるのはたいへん難しいはずだった。
少なくとも当分のあいだは、大理石の像に変えられる運命から逃れたとまずまず納得した少年は、連れを止め、道端の岩に腰を下ろした。
「朝ごはんにしよう」と彼は言った。
ジャック・パンプキンヘッドは興味深そうにチップを見つめたが、食事には加わらなかった。「どうやら私はあなたと同じ作りではないようです」と彼は言った。
「そうだな」とチップは答えた。「だって、おれがおまえを作ったんだから。」
「おお! あなたが?」ジャックは尋ねた。


「もちろん。組み立てたんだ。目も鼻も耳も口も彫った」とチップは誇らしげに言った。「それに服も着せた。」
ジャックは自分の胴体と手足を批評家のように眺めた。
「なかなかよい仕事をなさったように思えます」と彼は言った。
「まあまあだよ」とチップは控えめに答えた。自分の男の作りに、いくつか欠点があることが見えてきたからだ。「いっしょに旅するってわかってたら、もう少し丁寧に作ったかもしれない。」
「それでは」とパンプキンヘッドは驚きを込めた声で言った。「あなたは私の創造主、私の親、私の父ということになりますね!」
「あるいは発明者だな」と少年は笑って答えた。「そうだ、わが息子よ。たしかにそうだと思う!」
「ならば私はあなたに従う義務があります」と男は続けた。「そしてあなたには私を――養う義務があります。」
「そのとおりだ」とチップは跳ね起きて言った。「じゃあ出発しよう。」
「私たちはどこへ行くのです?」旅を再開すると、ジャックが尋ねた。
「はっきりとはわからない」と少年は言った。「でも南へ向かっているはずだ。そうすれば遅かれ早かれ、エメラルドシティに着く。」
「それはどんな都ですか?」パンプキンヘッドが尋ねた。
「オズの国の中心で、国じゅうでいちばん大きな町だよ。おれ自身は行ったことがないけど、その歴史なら全部聞いたことがある。オズという偉大で驚くべき魔法使いが建てた町で、そこにあるものはみんな緑色なんだ――ちょうどこのギリキン国のものがみんな紫色なのと同じように。」
「ここでは何もかも紫色なのですか?」ジャックは尋ねた。
「もちろんそうだ。見えないのか?」少年は答えた。
「私は色がわからないのかもしれません」とパンプキンヘッドは、あたりを見回したあとで言った。
「草は紫、木も紫、家も柵も紫なんだ」とチップは説明した。「道の泥だって紫さ。でもエメラルドシティでは、ここで紫のものは全部緑なんだ。東のマンチキン国ではすべて青、南のクアドラリング国ではすべて赤、西のウィンキー国では、ブリキの木こりが治めているんだけど、すべて黄色なんだ。」
「おお!」ジャックは言った。それから少し間を置いて尋ねた。「ブリキの木こりがウィンキーたちを治めているとおっしゃいましたか?」
「そう。彼はドロシーが西の悪い魔女を倒すのを助けた仲間のひとりで、ウィンキーたちはとても感謝して、彼に自分たちの支配者になってほしいと頼んだんだ――エメラルドシティの人々が、かかしに自分たちを治めてほしいと頼んだのと同じように。」
「まあ!」ジャックは言った。「その歴史を聞いていると、だんだん混乱してきます。かかしとはどなたですか?」
「ドロシーのもうひとりの友だちだ」とチップは答えた。
「ではドロシーとはどなたです?」
「外の大きな世界にあるカンザスという場所から来た女の子だ。竜巻でオズの国へ吹き飛ばされてきて、ここにいるあいだ、かかしとブリキの木こりが旅に同行したんだ。」
「それで今はどこに?」パンプキンヘッドが尋ねた。
「クアドラリングを治める善い魔女グリンダが、彼女を家へ帰してやった」と少年は言った。
「なるほど。それでかかしはどうなったのです?」
「言っただろ。エメラルドシティを治めている」とチップは答えた。
「先ほど、そこは驚くべき魔法使いが治めていたとおっしゃったように思いましたが」とジャックは反論し、ますます混乱しているようだった。
「うん、そう言った。じゃあよく聞け、説明するから」とチップは、ゆっくり話しながら、笑顔のパンプキンヘッドの目をまっすぐ見た。「ドロシーは魔法使いにカンザスへ帰してもらうため、エメラルドシティへ行った。かかしとブリキの木こりもいっしょだった。でも魔法使いは彼女を帰せなかった。思ったほどの魔法使いじゃなかったからだ。それでみんなは魔法使いに腹を立て、正体をばらすと脅した。だから魔法使いは大きな気球を作り、それに乗って逃げた。それ以来、誰も彼を見ていない。」
「なるほど、たいへん興味深い歴史です」とジャックは満足げに言った。「説明以外は、すっかり理解しました。」
「それはよかった」とチップは答えた。「魔法使いがいなくなったあと、エメラルドシティの人々は、かかし陛下を王にした。そして彼はとても人気のある支配者になったと聞いている。」
「その奇妙な王に会いに行くのですか?」ジャックは興味深そうに尋ねた。
「そうしてもいいと思う」と少年は答えた。「おまえにほかにもっといい用事がなければね。」
「いいえ、親愛なる父上」とパンプキンヘッドは言った。「私はあなたのお望みのところなら、どこへでも参ります。」

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チップ、魔法の実験をする
小柄で、見たところやや華奢な少年は、背の高い不器用なカボチャ頭の男に「父上」と呼ばれて、いささか困った様子だった。だがその関係を否定すれば、また長く退屈な説明をしなければならない。そこで彼は唐突にこう尋ねて話題を変えた。
「疲れたか?」
「もちろん疲れていません!」相手は答えた。「ですが」と少し間を置いて続けた。「このまま歩き続ければ、私の木の関節がすり減ってしまうのは確かです。」
旅を続けながら、チップはそれが本当だと考えた。木の手足をもっと注意深く、頑丈に作っておかなかったことを後悔しはじめた。とはいえ、老婆モンビを怖がらせるためだけに作った男が、古いコショウ入れに入った魔法の粉で命を吹き込まれるなど、どうして予想できただろう?
そこで彼は自分を責めるのをやめ、ジャックの弱い関節の欠点をどうすれば補えるか考えはじめた。
そうしているうちに二人は森の端へ来た。少年は、どこかの木こりがそこに置いていった古いノコギリ台の上に腰を下ろして休んだ。
「おまえも座れば?」彼はパンプキンヘッドに尋ねた。
「関節に負担がかかりませんか?」相手が尋ねた。
「もちろんかからない。休ませられるんだ」と少年は言った。
そこでジャックは座ろうとした。だが関節をいつもより深く曲げたとたん、それらはすっかり力を失い、彼はがらがらと地面へ崩れ落ちた。あまりの音に、チップは彼が完全に壊れてしまったのではないかと心配した。


彼は男のところへ駆け寄り、足元から持ち上げ、腕と脚をまっすぐにし、頭にひびが入っていないかどうか触って確かめた。だが結局ジャックはかなり無事なようだったので、チップは彼に言った。
「これからは立ったままでいたほうがいいみたいだ。いちばん安全そうだ。」
「承知しました、親愛なる父上。おっしゃるとおりに」と、笑顔のジャックは答えた。転んだことで少しも取り乱してはいなかった。
チップはまた腰を下ろした。しばらくするとパンプキンヘッドが尋ねた。
「あなたが座っているそれは何ですか?」
「ああ、これは馬だよ」と少年は何気なく答えた。
「馬とは何ですか?」ジャックは問いただした。
「馬? そうだな、馬には二種類ある」とチップは、どう説明したものか少し困りながら答えた。「ひとつは生きている馬で、四本の脚と頭と尻尾がある。人はその背に乗るんだ。」
「わかりました」とジャックは陽気に言った。「それが今あなたの座っている種類の馬ですね。」
「いや、違う」とチップはすぐ答えた。
「なぜです? それには四本の脚があり、頭があり、尻尾があります。」
チップはノコギリ台をもっとよく見た。するとパンプキンヘッドの言うとおりだった。胴体は木の幹で作られており、片端には枝が一本突き出したまま残されていて、尻尾によく似ていた。もう片方の端には目のように見える大きな節が二つあり、少し削り取られたところは馬の口と間違えてもおかしくなかった。脚といえば、木から切った四本のまっすぐな枝が胴体にしっかり差し込まれ、丸太を載せて挽くときにノコギリ台が安定するよう、広く開いていた。
「これは、思っていたより本物の馬に似ているな」とチップは説明しようとして言った。「でも本物の馬は生きていて、速足で走ったり跳ねたり、燕麦を食べたりする。これは木でできた死んだ馬みたいなもので、丸太を挽くときに使うだけだ。」
「もし生きていたら、速足で走り、跳ね、燕麦を食べるのでしょうか?」パンプキンヘッドが尋ねた。
「速足で走ったり跳ねたりはするだろうけど、燕麦は食べないだろうな」と少年はその考えに笑いながら答えた。「それにもちろん、これは決して生きられない。木でできているんだから。」
「私もそうです」と男は答えた。
チップは驚いて彼を見た。
「そういえば、たしかにそうだ!」彼は叫んだ。「それに、おまえに命を吹き込んだ魔法の粉が、このポケットに入っている。」

彼はコショウ入れを取り出し、不思議そうに見つめた。
「ひょっとして」と彼は考え込むように言った。「これでノコギリ馬も生き返るかな。」
「もしそうなら」とジャックは落ち着いて答えた。彼は何ごとにも驚かないようだった。「私はその背に乗れます。そうすれば関節がすり減らずに済みます。」
「試してみよう!」少年は跳ね起きて叫んだ。「でも、老婆モンビが言った言葉と、手をどう掲げていたかを覚えているかな。」
彼は一分ほど思い返した。垣根の陰から老婆の魔女の動きを注意深く見て、その言葉を聞いていたので、彼女が言ったこと、したことを正確に繰り返せると思った。
そこで彼はまず、コショウ入れから生命の魔法の粉を少し、ノコギリ馬の胴体にふりかけた。それから左手を上げ、小指を上に向けて言った。「ウィーアウ!」
「それはどういう意味ですか、親愛なる父上?」ジャックが興味深そうに尋ねた。
「知らない」とチップは答えた。それから右手を上げ、親指を上に向けて言った。「ティーアウ!」
「それは何ですか、親愛なる父上?」ジャックが尋ねた。
「黙っていろって意味だ!」少年は、大事な瞬間に邪魔されたことに腹を立てて答えた。
「なんと私は覚えが早いのでしょう!」パンプキンヘッドはいつもの笑みを浮かべて言った。
チップは今度は両手を頭上へ上げ、指も親指もすべて広げて、大きな声で叫んだ。「ピーアウ!」
たちまちノコギリ馬は動き、脚を伸ばし、削り取られた口であくびをし、背中から粉を数粒振り落とした。残りの粉は馬の胴体の中へ消えてしまったようだった。
「お見事!」ジャックが声を上げた。少年は驚きながら見つめていた。「あなたはたいへん賢い妖術師です、親愛なる父上!」

—
ノコギリ馬の目覚め
生きている自分に気づいたノコギリ馬は、チップ以上に驚いたようだった。節くれだった目を左右へ動かし、今や自分がきわめて重要な存在として身を置くこの世界を、初めて不思議そうに眺めた。それから自分自身を見ようとした。だが実のところ、向きを変えられる首がない。そのため胴体を見ようとして、ぐるぐる回り続けるばかりで、ちらりとも見ることができなかった。脚は硬く不器用だった。膝の関節がないからである。ほどなく彼はジャック・パンプキンヘッドにぶつかり、その人物を道端を覆う苔の上へ転がしてしまった。
この事故にも、ノコギリ馬がしつこく円を描いて跳ね回ることにも、チップは不安になり、叫んだ。
「どうどう! どうどう、止まれ!」
ノコギリ馬はこの命令をまったく聞かず、次の瞬間、木の脚の一本をチップの足にひどく強く踏み下ろした。少年は痛みのあまり飛び上がって安全な距離まで逃げ、そこからまた叫んだ。
「どうどう! 止まれってば!」
ジャックはどうにか自分を起こして座る姿勢になり、たいへん興味深そうにノコギリ馬を見た。
「その動物には、あなたの声が聞こえないのだと思います」と彼は言った。
「十分大きな声で叫んでるだろ?」チップは怒って答えた。
「ええ。でも馬には耳がありません」と笑顔のパンプキンヘッドは言った。
「本当だ!」チップは初めてその事実に気づき、叫んだ。「じゃあどうやって止めればいいんだ?」
だがその瞬間、ノコギリ馬は自分で止まった。自分の胴体を見るのは不可能だと結論したからである。しかしチップの姿は見えたので、少年をもっとよく観察しようと近づいてきた。
その生き物の歩き方は実にこっけいだった。側対歩の馬のように、右側の脚を同時に動かし、左側の脚も同時に動かす。そのため胴体が揺りかごのように横へ揺れた。
チップはその頭をぽんぽん叩き、「いい子だ! いい子だ!」と甘やかすような声で言った。するとノコギリ馬は、突き出た目でジャック・パンプキンヘッドの姿を調べようと、跳ねるように離れていった。
「こいつに手綱を見つけなきゃ」とチップは言った。そしてポケットを探すと、丈夫なひもの巻いたものを取り出した。これをほどくとノコギリ馬に近づき、その首の周りにひもを結びつけ、もう一方の端を大きな木にしっかりくくった。ノコギリ馬はその行為の意味がわからず、後ろへ下がって簡単にひもを切ってしまった。だが逃げ出そうとはしなかった。
「思ったより力が強いな」と少年は言った。「それに、かなり頑固でもある。」
「耳を作ってあげたらどうです?」ジャックが尋ねた。「そうすれば、何をすればよいか言い聞かせられます。」
「すばらしい考えだ!」チップは言った。「どうしてそんなことを思いついたんだ?」
「いえ、思いついたわけではありません」とパンプキンヘッドは答えた。「その必要もありませんでした。いちばん単純で簡単なことですから。」
そこでチップはナイフを取り出し、小さな木の樹皮で耳をいくつか作った。
「あまり大きくしちゃいけない」と彼は削りながら言った。「でないと、うちの馬がロバになってしまう。」
「どうしてです?」道端からジャックが尋ねた。
「馬の耳は人間の耳より大きい。ロバの耳は馬の耳より大きいんだ」とチップは説明した。
「では、私の耳がもっと長ければ、私は馬になるのでしょうか?」ジャックは尋ねた。
「友よ」とチップはまじめに言った。「耳がどれだけ大きくても、おまえはパンプキンヘッド以外の何者にもならない。」
「おお」とジャックはうなずいて答えた。「わかったように思います。」
「もしわかってるなら大したものだ」と少年は言った。「でも、わかったと思うぶんには害はない。よし、この耳はもうできたかな。おれが取りつけるあいだ、馬を押さえててくれるか?」
「もちろんです。私を起こしてくだされば」とジャックは言った。
そこでチップは彼を立たせた。パンプキンヘッドは馬のところへ行って頭を押さえ、そのあいだに少年はナイフの刃で頭に二つ穴をあけ、耳を差し込んだ。
「たいへん立派に見えます」とジャックは感嘆して言った。
しかしその言葉はノコギリ馬のすぐそばで発せられ、しかも彼が生まれて初めて聞いた音だったため、動物はひどく驚き、前へ跳ねた。そしてチップを片側へ、ジャックをもう片側へ転がした。それから自分の足音のがたがたいう響きに怯えたかのように、前へ突進し続けた。
「どうどう!」チップは起き上がりながら叫んだ。「どうどう! このばか馬、止まれ!」
ノコギリ馬はおそらくこの声にも気を払わなかっただろう。だがちょうどそのとき、脚の一本をジリスの穴に突っ込み、真っ逆さまに地面へ転んだ。そこに仰向けに倒れ、四本の脚を空中で必死に振り回した。
チップは駆け寄った。
「まったく、たいした馬だと言わざるをえないな!」彼は叫んだ。「どうしておれが『どうどう』って叫んだときに止まらなかったんだ?」
「『どうどう』とは止まれという意味なのですか?」ノコギリ馬は驚いた声で尋ね、目を上向きに転がして少年を見た。
「もちろんそうだ」とチップは答えた。
「そして地面の穴もまた、止まれという意味なのですね?」馬は続けた。
「そのとおり。踏み越えれば別だけど」とチップは言った。
「なんとも奇妙な場所ですね」とその生き物は驚きあきれたように叫んだ。「そもそも私はここで何をしているのです?」
「おれがおまえに命を吹き込んだんだ」と少年は答えた。「でも、おれの言うことを聞いて、そのとおりにすれば、何も悪いことにはならない。」
「では、あなたのおっしゃるとおりにします」とノコギリ馬はしおらしく答えた。「ですが、さっき私はどうなったのですか? どうも何か具合が正しくないようです。」

「上下が逆さまなんだ」とチップは説明した。「その脚を一分じっとさせていれば、また正しい向きにしてやる。」
「私にはいくつの面があるのですか?」その生き物は不思議そうに尋ねた。
「いくつかだ」とチップは短く言った。「とにかく脚を動かすな。」
ノコギリ馬はおとなしくなり、脚をぴんと固く保った。そこでチップは何度か試みた末、彼を転がして起こし、まっすぐ立たせることができた。
「ああ、これで大丈夫そうです」と奇妙な動物はため息をついて言った。
「片方の耳が折れてる」とチップは注意深く調べたあとで告げた。「新しいのを作らなくちゃ。」
それから彼は、立ち上がろうとしてむなしくもがいているジャックのところまでノコギリ馬を連れて戻り、パンプキンヘッドがまっすぐ立つのを手伝ったあと、新しい耳を削り出して馬の頭に取りつけた。
「さて」と彼は自分の乗り物に向かって言った。「これから話すことをよく聞け。『どうどう!』は止まれという意味。『進め!』は前へ歩けという意味。『駆けろ!』はできるだけ速く進めという意味だ。わかったか?」
「わかったと思います」と馬は答えた。
「よし。おれたちはみんなでエメラルドシティへ旅をして、かかし陛下に会いに行く。そしてジャック・パンプキンヘッドはおまえの背に乗る。そうすれば関節がすり減らないからだ。」
「私はかまいません」とノコギリ馬は言った。「あなたに都合のよいことなら、私にも都合がよいのです。」
それからチップは、ジャックが馬に乗るのを手伝った。
「しっかりつかまっていろ」と彼は注意した。「でないと落ちて、カボチャ頭にひびが入るかもしれない。」
「それは恐ろしいことです!」ジャックは身震いして言った。「何につかまればよいのでしょう?」
「そうだな、耳につかまれ」とチップは少し迷ってから答えた。
「それはやめてください!」ノコギリ馬は抗議した。「そうすると聞こえなくなります。」
それはもっともだったので、チップはほかの方法を考えようとした。
「何とかする!」彼はやがて言った。森へ入り、若く丈夫な木から短い枝を一本切り取った。その片端を尖らせ、それからノコギリ馬の背中、頭のすぐ後ろに穴を掘った。次に道から石を一つ持ってきて、その棒を動物の背中へしっかり打ち込んだ。
「やめて! やめてください!」馬は叫んだ。「ひどく揺さぶられます。」

「痛いのか?」少年は尋ねた。
「痛いというわけではありません」と動物は答えた。「でも揺さぶられると、ひどく神経にさわります。」
「もう終わったよ」とチップは励ますように言った。「さあジャック、この棒にしっかりつかまっていれば、落ちて壊れることはない。」
そこでジャックはしっかりつかまった。チップは馬に言った。
「進め。」
従順な生き物はすぐ前へ歩き出し、足を地面から上げるたびに左右へ揺れた。
チップはノコギリ馬のそばを歩きながら、一行に新しい仲間が加わったことにかなり満足していた。やがて彼は口笛を吹きはじめた。
「その音は何を意味するのですか?」馬が尋ねた。
「気にするな」とチップは言った。「ただ口笛を吹いてるだけだ。満足してるってことくらいの意味だよ。」
「唇をすぼめられれば、私も口笛を吹くのですが」とジャックは言った。「親愛なる父上、私はいくつかの点でひどく欠けているのではないかと心配です。」

しばらく旅を続けると、彼らのたどっていた細い小道は、黄色いレンガで舗装された広い道へ変わった。道のわきで、チップは道しるべにこう書いてあるのに気づいた。
「エメラルドシティまで九マイル(約14.5キロ)。」
だがもう暗くなってきたので、彼は道端で夜営し、翌朝夜明けとともに旅を再開することにした。チップはノコギリ馬を、こんもりした木々が数本生えた草の丘へ連れていき、パンプキンヘッドが降りるのを慎重に手伝った。
「夜のあいだは、おまえを地面に寝かせておくよ」と少年は言った。「そのほうが安全だ。」
「私はどうすれば?」ノコギリ馬が尋ねた。
「立っていても害はない」とチップは答えた。「それに眠れないんだから、見張りをして、誰も近づいて邪魔しないようにしてくれ。」
それから少年はパンプキンヘッドの隣の草の上に身を伸ばした。そして旅でひどく疲れていたため、すぐにぐっすり眠ってしまった。

—
ジャック・パンプキンヘッド、エメラルドシティへ乗り込む
夜明けに、チップはパンプキンヘッドに起こされた。彼は目から眠気をこすり落とし、小さな小川で体を洗い、それからパンとチーズを少し食べた。こうして新しい一日の準備を整えると、少年は言った。
「すぐ出発しよう。九マイル(約14.5キロ)はかなりの距離だけど、事故が起きなければ昼までにはエメラルドシティに着くはずだ。」
そこでパンプキンヘッドは再びノコギリ馬の背に乗せられ、旅は再開された。
チップは、草や木の紫色が今ではくすんだラベンダー色に薄れていることに気づいた。やがてそのラベンダー色には緑がかった色合いが差しはじめ、かかしの治める大きな都に近づくにつれて、しだいに明るさを増していった。
小さな一行が黄色いレンガの道をまだ二マイル(約3.2キロ)ほど進んだところで、その道は広く流れの速い川に断ち切られていた。チップはどう渡ればよいのか困った。だがしばらくして、対岸から渡し舟に乗った男が近づいてくるのを見つけた。
その男が岸に着くと、チップは尋ねた。
「ぼくらを向こう岸まで漕いでくれますか?」
「金があるならな」と渡し守は答えた。その顔つきは不機嫌で感じが悪かった。
「でも、お金はありません」とチップは言った。
「まったくないのか?」男は尋ねた。
「まったくありません」と少年は答えた。
「なら、おまえらを渡すために腰を痛める気はない」と渡し守はきっぱり言った。
「なんて親切な方でしょう!」パンプキンヘッドはにこにこと言った。
渡し守は彼をじろりと見たが、返事はしなかった。チップは考えようとしていた。旅がこんなに急に行き止まりになってしまったことが、大きな失望だったからだ。
「どうしてもエメラルドシティへ行かなくちゃならないんです」と彼は船頭に言った。「でも、あなたが乗せてくれないなら、どうやって川を渡ればいいんです?」
男は笑った。だが、それは少しも感じのよい笑いではなかった。
「その木の馬は浮くだろう」と彼は言った。「そいつに乗って渡ればいい。おまえといっしょにいるカボチャ頭の間抜けは、沈もうが泳ごうが、どちらでもたいして変わらん。」

「私のことはご心配なく」とジャックは、気難しい渡し守に気持ちよさそうに笑いかけた。「私はきっと見事に浮くはずです。」
チップはこの実験を試す価値があると思った。危険というものを知らないノコギリ馬も、まったく異議を唱えなかった。そこで少年は馬を水の中へ導き、その背に登った。ジャックも膝まで水に入って、カボチャ頭を水面の上に保てるよう馬の尻尾をつかんだ。
「さて」とチップはノコギリ馬に指示した。「脚をばたつかせれば、たぶん泳げる。泳げれば、たぶん向こう岸へ着く。」
ノコギリ馬はすぐ脚をばたつかせはじめた。その脚はオールのように働き、冒険者たちをゆっくり川の向こう側へ運んだ。渡河は見事に成功し、ほどなく彼らは、濡れて滴を垂らしながら草の茂る岸を登っていた。
チップのズボンの脚と靴はすっかりびしょ濡れだった。だがノコギリ馬が実にうまく浮いたので、少年は膝から上は完全に乾いていた。パンプキンヘッドのほうは、華やかな衣服の縫い目という縫い目から水が滴っていた。
「太陽がすぐ乾かしてくれる」とチップは言った。「それに、とにかく渡し守なんかに負けず、無事に渡れたんだ。旅を続けられる。」
「泳ぐのは少しも嫌ではありませんでした」と馬が言った。
「私もです」とジャックが付け加えた。
彼らはすぐ、黄色いレンガの道へ戻った。それは向こう岸に置いてきた道の続きだった。そしてチップはまた、パンプキンヘッドをノコギリ馬の背に乗せた。
「速く走れば」と彼は言った。「風が服を乾かすのを手伝ってくれる。おれは馬の尻尾につかまって、後ろを走る。こうすれば、すぐにみんな乾くよ。」
「では馬には元気よく進んでもらわねば」とジャックは言った。
「全力を尽くします」とノコギリ馬は陽気に答えた。
チップはノコギリ馬の尻尾代わりの枝の先をつかみ、大きな声で叫んだ。「進め!」
馬はいい速さで走り出し、チップは後ろに続いた。やがてもっと速く行けると考え、彼は叫んだ。「駆けろ!」

さて、ノコギリ馬はこの言葉が、できるだけ速く進めという命令だと覚えていた。そこで道をものすごい速さで揺れながら進みはじめた。チップは生まれて初めてというほど速く走り、足をもつれさせまいと必死だった。
やがて息が切れた。馬に「どうどう!」と叫びたかったが、喉から言葉が出なかった。そのうち彼が握っていた尻尾の先――しょせん枯れた枝にすぎなかった――が突然折れ、次の瞬間、少年は道の埃の中を転がっていた。一方、馬とそのカボチャ頭の乗り手は疾走し続け、たちまち遠くへ消えてしまった。
チップが起き上がり、喉の埃を払って「どうどう!」と言えるようになったころには、もうそれを言う必要はなかった。馬はとうに見えなくなっていたからだ。
そこで彼は、できる唯一の賢明なことをした。腰を下ろしてしっかり休み、それから道に沿って歩きはじめた。
「そのうちきっと追いつくだろう」と彼は考えた。「道はエメラルドシティの門で終わるんだから、あいつらもそこより先へは行けない。」
そのころジャックは棒にしっかりつかまり、ノコギリ馬は競走馬のように道を駆けていた。二人ともチップが置き去りになったことを知らなかった。パンプキンヘッドは振り返らなかったし、ノコギリ馬には振り返ることができなかったからだ。
乗りながら、ジャックは草や木が鮮やかなエメラルドグリーンになっていることに気づいた。そこで、高い尖塔や丸屋根が見える前から、エメラルドシティに近づいているのだろうと見当をつけた。
ついに、エメラルドをびっしりちりばめた緑の石の高い壁が、前方にそびえ立った。ジャックは、ノコギリ馬が止まるだけの分別を持たず、この壁に二人もろとも激突してしまうのではないかと恐れ、思い切ってできるだけ大きな声で「どうどう!」と叫んだ。
馬があまりに急に従ったので、もし棒がなければ、ジャックは頭から投げ出され、美しい顔を台無しにしていただろう。
「速い乗り心地でしたね、親愛なる父上!」彼は叫んだ。ところが返事がないのを聞いて、振り向き、初めてチップがいないことに気づいた。
この明らかな置き去りはパンプキンヘッドを困惑させ、不安にした。少年はどうなったのか、この苦しい状況で次に何をすべきなのかと思案していると、緑の壁の門が開き、ひとりの男が出てきた。
その男は背が低く丸々していて、太った顔はいかにも人がよさそうだった。全身緑の服をまとい、頭には高く尖った緑の帽子、目には緑の眼鏡をかけていた。パンプキンヘッドの前でお辞儀をし、彼は言った。
「私はエメラルドシティの門の番人です。あなたはどなたで、どのようなご用件かお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
「私の名はジャック・パンプキンヘッドです」と相手はにこやかに答えた。「ですが用件については、それが何なのか、世の中でいちばん見当がつきません。」
門の番人は驚いたように見え、その返事に不満そうに首を振った。
「あなたは人間ですか、それともカボチャですか?」彼は丁寧に尋ねた。
「よろしければ、両方です」とジャックは答えた。
「では、この木の馬は生きているのですか?」番人は尋ねた。
馬は節くれだった片目を上へ転がし、ジャックに向かってウインクした。それから跳ね上がり、片脚を門の番人のつま先へ踏み下ろした。
「いたっ!」男は叫んだ。「その質問をしたことを後悔します。ですが答えとしては非常に説得力があります。あなたはエメラルドシティに何かご用がおありですか、旦那?」
「あるような気がします」とパンプキンヘッドはまじめに答えた。「ただ、それが何なのか思い出せません。私の父なら全部知っているのですが、ここにいないのです。」
「これは奇妙なことです。実に奇妙だ!」門の番人は言った。「しかしあなたは無害そうに見える。悪事を企む者が、そんなに楽しげに笑うことはありませんからな。」
「それについては」とジャックは言った。「私の笑顔はどうしようもありません。ジャックナイフで顔に彫られているのですから。」
「では、私の部屋へお入りください」と番人は続けた。「あなたのために何ができるか見てみましょう。」
そこでジャックはノコギリ馬に乗ったまま門をくぐり、壁の中に作られた小さな部屋へ入った。門の番人がベルのひもを引くと、ほどなくとても背の高い兵士――緑の制服を着ていた――が反対側の扉から入ってきた。この兵士は肩に長い緑の銃を担ぎ、膝まで届く美しい緑のひげを生やしていた。番人はすぐ彼に話しかけた。
「ここに奇妙な紳士がいる。なぜエメラルドシティへ来たのか、何が欲しいのかわからないそうだ。さて、どうしたものか?」
緑のひげの兵士は、たいそう注意深く、また好奇心いっぱいにジャックを見た。やがて、ひげに小さな波がさざめくほどきっぱり首を振ると、彼は言った。
「この方をかかし陛下のもとへお連れせねばなりません。」
「しかし、かかし陛下はこの方をどうなさるのだ?」門の番人が尋ねた。
「それは陛下のお仕事です」と兵士は答えた。「私には私自身の悩みだけで十分です。外から来た厄介事はすべて陛下にお任せせねばなりません。ですから、この者に眼鏡をかけさせてください。私が王宮へお連れします。」
そこで番人は眼鏡の大きな箱を開け、ジャックの大きく丸い目に合うものを試した。
「本当にその目を覆えるものは在庫に一つもありませんな」と小柄な男はため息をついて言った。「それに頭があまりに大きいので、眼鏡を結びつけねばならないでしょう。」
「ですが、なぜ眼鏡をかける必要があるのですか?」ジャックは尋ねた。

「ここではそれがしきたりです」と兵士は言った。「それに、華麗なエメラルドシティのきらめきとまぶしさで目がつぶれないよう守ってくれます。」
「おお!」ジャックは叫んだ。「ぜひ結びつけてください。目がつぶれるのは望みません。」
「私もです!」ノコギリ馬が口を挟んだ。そこで、目の代わりをしている突き出た節の上にも、すぐさま緑の眼鏡が一組取り付けられた。
それから緑のひげの兵士が二人を内門へ導くと、彼らはたちまち壮麗なエメラルドシティの大通りに出た。
美しい家々の正面はきらめく緑の宝石で飾られ、塔や小塔はすべてエメラルドで覆われていた。緑の大理石の舗道でさえ貴石で輝き、それを初めて目にする者にとっては、まことに壮大で驚くべき光景だった。
しかしパンプキンヘッドとノコギリ馬は、富や美というものを何も知らなかったので、緑の眼鏡を通して目にしたすばらしい眺めにはほとんど注意を払わなかった。二人は落ち着いて緑の兵士のあとに続き、驚いて彼らを見つめる緑の人々の群れにもほとんど気づかなかった。緑の犬が飛び出して吠えると、ノコギリ馬はすかさず木の脚で蹴りつけ、その小さな動物を鳴きながら家の一つへ追いやった。だが王宮へ向かう彼らの歩みを妨げる、これ以上深刻な出来事は起きなかった。
パンプキンヘッドは緑の大理石の階段を乗ったまま上がり、そのままかかしの前へ乗り込みたがった。だが兵士がそれを許さなかった。そこでジャックは大いに苦労して降り、召使いがノコギリ馬を裏手へ連れていった。一方、緑のひげの兵士はパンプキンヘッドを正面玄関から王宮の中へ案内した。
見知らぬ客は美しく家具のしつらえられた控えの間に残され、兵士は彼の到着を告げに行った。ちょうどその時刻、陛下は暇を持て余しており、することがなくて大いに退屈していたので、客をすぐ玉座の間へ通すよう命じた。
ジャックはこの壮麗な都の支配者に会うにあたり、恐れも気後れも感じなかった。世間のしきたりをまったく知らなかったからである。だが部屋に入り、きらびやかな玉座に座るかかし陛下を初めて目にすると、彼は驚きのあまり立ち止まった。

—
かかし陛下
この本の読者なら誰でも、かかしがどんなものか知っているだろう。だがジャック・パンプキンヘッドは、そのような創造物を一度も見たことがなかったので、エメラルドシティのすばらしい王に会ったことは、短い人生のどんな経験よりも彼を驚かせた。
かかし陛下は色あせた青い服を着ていた。頭は藁を詰めた小さな袋にすぎず、その上に目、耳、鼻、口が粗雑に描かれ、顔を表していた。服にも藁が詰められていたが、それがあまりに不均等、あるいはぞんざいだったため、陛下の脚や腕は必要以上にでこぼこして見えた。手には長い指の手袋をはめ、その中には綿が詰められていた。君主の上着からも、首筋やブーツの口からも、藁の束が突き出していた。頭には、きらめく宝石をびっしりはめ込んだ重い黄金の冠をかぶっていた。この冠の重みで額がしわになって垂れ下がり、描かれた顔に思慮深い表情を与えていた。実のところ、威厳を示しているのは冠だけだった。そのほかすべてにおいて、かかし王はただの素朴なかかし――薄っぺらで、不器用で、頼りないもの――にすぎなかった。
しかし、かかし陛下の奇妙な姿がジャックに衝撃を与えたのなら、パンプキンヘッドの姿もまた、かかしにとって負けず劣らず驚くべきものだった。紫のズボン、桃色のチョッキ、赤いシャツは、チップの作った木の関節にゆるく垂れ下がっており、カボチャに彫られた顔は、身にまとう者が人生を想像しうる限り最高に楽しいものと考えているかのように、絶えずにやりと笑っていた。
実際、最初のうち陛下は、この奇妙な訪問者が自分を笑っているのだと思い、そのような無礼に腹を立てかけた。だが、かかしがオズの国で最も賢い人物という評判を得たのは、理由のないことではなかった。彼は客をさらに注意深く調べ、やがてジャックの顔立ちは笑みに彫られており、望んでも深刻な顔はできないのだと見抜いた。

最初に口を開いたのは王だった。数分ジャックを見つめたあと、彼は驚きを含んだ声で言った。
「いったいどこから来たのだ。そして、どうして生きている?」
「陛下、恐れ入ります」とパンプキンヘッドは答えた。「ですが、おっしゃることがわかりません。」
「何がわからぬのだ?」かかしは尋ねた。
「その、お言葉がわからないのです。ご覧のとおり、私はギリキン国から来ましたので、外国人なのです。」
「ああ、なるほど!」かかしは叫んだ。「私はマンチキンの言葉を話している。それはエメラルドシティの言葉でもある。だが君は、たぶんパンプキンヘッド語を話しているのだな?」
「まさにそのとおりです、陛下」と相手はお辞儀して答えた。「ですから、私たちがお互いを理解することは不可能でしょう。」
「それはたしかに困ったことだ」とかかしは考え深げに言った。「通訳が必要だ。」
「通訳とは何ですか?」ジャックは尋ねた。
「私の言葉と君の言葉の両方を理解する者のことだ。私が何か言えば、通訳はその意味を君に伝えられる。君が何か言えば、通訳は君の意味を私に伝えられる。通訳は両方の言葉を理解するだけでなく、話すこともできるからだ。」
「それは実に賢い仕組みですね」とジャックは、困難から抜け出すこんな簡単な方法が見つかったことに大いに喜んで言った。
そこでかかしは、緑のひげの兵士に命じた。民の中からギリキンの言葉とエメラルドシティの言葉をともに理解する者を探し、ただちに連れてくるように、と。
兵士が立ち去ると、かかしは言った。
「待っているあいだ、椅子にかけてはどうか?」

「陛下、私にはお言葉がわからないことをお忘れです」とパンプキンヘッドは答えた。「座れとお望みなら、そうするよう合図をしていただかねばなりません。」
かかしは玉座から降り、肘掛け椅子をパンプキンヘッドの背後へ転がしてきた。それからジャックを突然押したので、彼はひどく不格好にクッションの上へ倒れ込み、ジャックナイフのように体を二つ折りにしてしまい、自分をほどくのに大いに苦労した。
「今の合図は理解できたかね?」陛下は丁寧に尋ねた。
「完全に」とジャックは言った。頭を支えている棒の上でカボチャがねじれていたため、腕を伸ばして頭を前へ向け直しながらだった。
「君は急いで作られたようだな」と、かかしはジャックが体をまっすぐにしようとする努力を見守りながら言った。
「陛下ほどではありません」と率直な返事が返ってきた。
「私たちのあいだにはこの違いがある」とかかしは言った。「私は曲がるが壊れぬ。君は壊れるが曲がらぬ。」
そのとき、兵士が若い娘の手を引いて戻ってきた。彼女はとても愛らしく慎ましやかに見え、かわいらしい顔と美しい緑の目と髪をしていた。上品な緑の絹のスカートは膝まで届き、豆のさやの刺繍が入った絹の靴下と、リボンや留め金の代わりにレタスの束で飾られた緑のサテンの靴がのぞいていた。絹の胴着にはクローバーの葉が刺繍され、同じ大きさのきらめくエメラルドで縁取られた、しゃれた小さな上着を身につけていた。
「おや、小さなジェリア・ジャムではないか!」緑の乙女がかわいらしい頭を王の前で下げると、かかしは叫んだ。「おまえはギリキンの言葉がわかるかね、娘よ?」
「はい、陛下」と彼女は答えた。「私は北の国で生まれましたので。」
「では、おまえが私たちの通訳となるのだ」とかかしは言った。「私の言うことをこのパンプキンヘッドに説明し、また彼の言うことを私に説明せよ。この取り決めでよろしいかな?」彼は客のほうを向いて尋ねた。
「実に結構です」と返事があった。
「では、まず彼に尋ねよ」とかかしはジェリアのほうを向いて続けた。「何が彼をエメラルドシティへ連れてきたのか、と。」
しかし娘はそうする代わりに、ジャックをじっと見つめたまま彼に言った。
「あなたは本当にすばらしい生き物ね。誰があなたを作ったの?」
「チップという名の少年です」とジャックは答えた。
「彼は何と言っている?」かかしが尋ねた。「私の耳が聞き違えたに違いない。何と言った?」
「陛下の脳みそは、どうやら緩んでしまっているようだと申しております」と娘はしとやかに答えた。
かかしは玉座の上で落ち着かなげに身じろぎし、左手で自分の頭を触った。
「二つの違う言葉を理解するというのは、なんと立派なことだろう」と彼は困惑したため息まじりに言った。「娘よ、彼に尋ねてくれ。エメラルドシティの支配者を侮辱した罪で牢屋に入れられることに異存はあるか、と。」
「私は侮辱などしていません!」ジャックは憤然と抗議した。
「まあまあ!」かかしは注意した。「ジェリアが私の言葉を訳すまで待ちなさい。そんな軽率に口を挟むなら、何のために通訳を置いたのだ?」
「わかりました、待ちます」とパンプキンヘッドは不機嫌な声で答えた――もっとも顔は相変わらずこのうえなく人のよい笑みを浮かべていた。「訳してください、お嬢さん。」
「陛下は、あなたがお腹をすかせているかお尋ねです」とジェリアは言った。
「ああ、まったく!」ジャックは少し機嫌よく答えた。「私は食べることができませんから。」
「私も同じだ」とかかしは言った。「彼は何と言った、ジェリア、娘よ?」
「陛下の片方の目がもう片方より大きく描かれているのをご存じか、と尋ねています」と娘はいたずらっぽく言った。

「陛下、彼女を信じてはいけません!」ジャックは叫んだ。
「ああ、信じてはいない」とかかしは落ち着いて答えた。それから娘へ鋭い目を向け、尋ねた。
「おまえは本当に、ギリキンの言葉とマンチキンの言葉の両方を理解しているのだな?」
「もちろんです、陛下」とジェリア・ジャムは、王の顔を見て笑わないよう必死にこらえながら言った。
「ではどうして、私にも彼らの言葉がわかるように思えるのだ?」かかしは尋ねた。
「だって、同じ言葉ですもの!」娘はとうとう明るく笑いながら言った。「陛下は、オズの国全体で話されている言葉は一つだけだとご存じないのですか?」
「本当にそうなのか?」かかしは、これを聞いて大いに安心し、叫んだ。「ならば、私は簡単に自分自身の通訳になれたわけだ!」
「すべて私のせいです、陛下」とジャックは少しばかり間の抜けた様子で言った。「違う国から来たのだから、きっと違う言葉を話しているに違いないと思ったのです。」
「これは、決して考えてはならぬという君への教訓にすべきだ」とかかしは厳しく返した。「賢く考えられないなら、木偶のままでいるほうがよい――そして君はまさにそうなのだから。」
「そうです! ――まさにそのとおりです!」パンプキンヘッドは同意した。
「私には思えるのだが」とかかしは少し穏やかに続けた。「君の製作者は、上等なパイの材料を台無しにして、平凡な男を作ったようだ。」
「陛下、私は自分を作ってくれと頼んだわけではございません」とジャックは答えた。
「ああ! 私の場合も同じだった」と王は愉快そうに言った。「ならば、私たちは普通の人々とは違う者同士、友人になろうではないか。」
「心から!」ジャックは叫んだ。
「何と! 君には心があるのか?」かかしは驚いて尋ねた。
「いいえ。それは想像上のもので――言ってみれば、言葉のあやです」と相手は言った。
「ふむ、君の最も目立つ姿は木の姿のようだ。だから、脳みそを持たぬ以上、行使する権利のない想像力は控えてもらわねばならぬ」とかかしは警告するように言った。
「たしかに!」ジャックは、少しも理解しないまま言った。
陛下はそれからジェリア・ジャムと緑のひげの兵士を下がらせた。二人が去ると、新しい友人の腕を取り、中庭へ連れ出して輪投げ遊びをすることにした。

—
ジンジャー将軍の反乱軍
チップは、自分の男ジャックとノコギリ馬に早く合流したくてたまらず、エメラルドシティまでの道のりの半分を、休みもせずに歩き通した。ところがそこで、腹がすいていることに気づき、旅のために用意していたクラッカーとチーズがすっかりなくなっていることも知った。
この窮地をどうしたものかと考えていると、道ばたに座っている少女に出会った。少女の服装は、少年の目には驚くほど鮮やかに映った。絹の胴着はエメラルド色、スカートは四つのはっきりした色に分かれていて、前が青、左側が黄色、後ろが赤、右側が紫だった。胴着の前を留めるボタンも四つあり、いちばん上が青、その次が黄色、三つ目が赤、最後が紫だった。

その衣装の華やかさは、ほとんど野蛮なほどで、チップがしばらくそのドレスをまじまじと見つめていたのも無理はなかった。やがて視線はその上にある愛らしい顔へと移った。うん、顔はたしかに十分かわいい、とチップは判断した。だがそこには、不満げな表情と、どこか挑むような、あるいは大胆不敵な影が浮かんでいた。
少年が見つめているあいだ、少女は落ち着いてチップを見返していた。そばにはランチバスケットが置いてあり、片手には上品なサンドイッチ、もう片方の手にはゆで卵を持っていた。いかにも食欲旺盛に食べている様子は、チップの同情を誘った。
チップが昼食を少し分けてもらおうと口を開きかけたそのとき、少女は立ち上がり、膝の上のパンくずを払った。
「さて!」少女は言った。「もう行く時間だわ。そのバスケットを持ってちょうだい。お腹がすいているなら、中のものは好きに食べていいから。」
チップは大喜びでバスケットをつかみ、食べはじめた。しばらくのあいだは質問することも忘れ、その不思議な少女のあとをついて歩いた。少女は彼の前を早足で進み、その身には決断力と重要人物らしい雰囲気が漂っていたので、チップはこの子は何か偉い人なのではないかと思った。
やがて腹が満ちると、チップは少女の横へ走り寄り、そのすばやい足取りに合わせようとした。だがそれはかなり難しかった。少女はチップよりずっと背が高く、しかも明らかに急いでいたからだ。
「サンドイッチ、どうもありがとう」と、チップは小走りに進みながら言った。「名前を聞いてもいい?」
「私はジンジャー将軍」と、短い答えが返ってきた。
「へえ!」少年は驚いて言った。「どんな将軍なの?」
「この戦争で反乱軍を指揮しているの」と将軍は、必要以上に鋭い声で答えた。
「へえ!」チップはまた声を上げた。「戦争があるなんて知らなかった。」
「あなたが知っているはずはないわ」と少女は返した。「秘密にしてきたんだもの。それに、私たちの軍隊は女の子だけでできているのよ」と、少し誇らしげに付け加えた。「それなのに、まだ反乱が見つかっていないなんて、実にたいしたものだわ。」
「たしかに」とチップは認めた。「でも、軍隊はどこにいるの?」
「ここから一マイル(約1.6キロメートル)ほど先よ」とジンジャー将軍は言った。「私の明確な命令で、オズの国のあらゆる地方から部隊が集まっているの。今日こそ、われわれがかかし陛下を征服し、その玉座を奪い取る日なのよ。反乱軍は、私が到着しだいエメラルドシティへ進軍することになっているわ。」
「いやはや!」チップは大きく息をついて言った。「これは本当に驚いたな! どうしてかかし陛下を征服したいのか、聞いてもいい?」
「理由のひとつは、エメラルドシティがもう長いこと男たちに支配されてきたからよ」と少女は言った。
「それに、都は美しい宝石で輝いているけれど、あんなものは指輪や腕輪や首飾りにしたほうがずっといいわ。王の宝物庫には、私たちの軍隊の女の子ひとりひとりに新しいドレスを十二着ずつ買ってあげられるだけのお金もある。だから都を征服して、政府を私たちの好きなように動かすつもりなの。」
ジンジャーは熱意と決意に満ちた声でこう言ったので、本気であることは明らかだった。
「でも戦争って、恐ろしいものだよ」とチップは考え深げに言った。
「この戦争は楽しいものになるわ」と少女は明るく答えた。
「君たちの多くが殺されるんだよ!」少年は畏れを含んだ声で続けた。
「まさか」とジンジャーは言った。「女の子に逆らったり、傷つけたりする男がどこにいるの? それに私の軍隊には、醜い顔の子なんてひとりもいないのよ。」
チップは笑った。
「たぶん君の言うとおりだね」とチップは言った。「でも門の番人は忠実な番人だとされているし、王の軍隊も、戦わずに都を征服させたりはしないよ。」
「軍隊なんて年寄りで弱々しいわ」とジンジャー将軍は軽蔑して答えた。「力は全部ひげを伸ばすのに使ってしまったのよ。そのうえ奥さんがたいそう気性の激しい人で、もう半分以上を根っこから引き抜いてしまったの。オズの魔法使いが治めていたころ、緑のひげの兵士はなかなか立派な王立軍だったわ。人々が魔法使いを恐れていたからよ。でも、かかしを怖がる人なんていない。だから彼の王立軍なんて、戦時には大した役に立たないわ。」
この会話のあと、ふたりはしばらく黙って進み、まもなく森の中の大きな空き地に着いた。そこには四百人もの若い女たちが集まっていた。彼女たちは、征服戦争のために集まったというより、まるでピクニックに来たかのように陽気に笑い、楽しげに話していた。
彼女たちは四つの部隊に分かれており、全員がジンジャー将軍のものとよく似た服を着ていることにチップは気づいた。ただひとつ大きく違うのは、マンチキン国から来た少女たちはスカートの前が青で、クアドラリング国から来た少女たちは前が赤、ウィンキー国から来た少女たちは前が黄色、ギリキンの少女たちは前が紫であることだった。全員の胴着は緑で、それは征服するつもりのエメラルドシティを表しており、胴着のいちばん上のボタンの色が、着ている者の出身国を示していた。制服は気取っていて似合っており、一団になるとかなり見栄えがした。
チップは、この奇妙な軍隊が武器をまったく持っていないと思った。だが、それは間違いだった。少女たちはそれぞれ、後ろ髪の結び目に、長くきらめく編み針を二本ずつ挿していたのである。
ジンジャー将軍はすぐに木の切り株へ登り、軍隊に向かって演説した。
「友よ、市民の皆さん、そして女の子たち!」彼女は言った。「私たちはこれより、オズの男たちに対する偉大なる反乱を開始する! エメラルドシティを征服し、かかし王を退位させ、何千もの華麗な宝石を手に入れ、王家の宝物庫をあさり、かつて私たちを抑圧した者たちの上に権力を得るために進軍するのです!」



「ばんざい!」聞いていた者たちは言った。だがチップには、軍隊の大部分はおしゃべりに夢中で、将軍の言葉などろくに聞いていないように思えた。
そこで進軍の命令が下り、少女たちは四つの隊、つまり中隊にまとまり、意気揚々とエメラルドシティへ向けて出発した。

少年は彼女たちのあとについていった。反乱軍のさまざまな隊員たちから預けられた、いくつものバスケットや肩掛けや包みを抱えていた。まもなく彼女たちは都の緑の花崗岩の城壁にたどり着き、門の前で止まった。
門の番人はすぐに出てきて、まるでサーカスが町にやって来たかのように好奇心たっぷりに一同を眺めた。首には金の鎖で鍵束をぶら下げ、両手は無造作にポケットへ突っ込んでおり、都が反逆者に脅かされているなどとは、まったく思っていないようだった。彼は少女たちに愛想よく話しかけた。
「おはよう、お嬢さんたち! 何かご用かな?」
「ただちに降伏しなさい!」ジンジャー将軍は彼の前に立ち、かわいらしい顔でできるかぎり恐ろしく眉をひそめて答えた。
「降伏!」男は仰天して繰り返した。「いや、そんなの無理だ。法律違反だ! そんな話は生まれてこのかた聞いたことがない。」
「それでも降伏しなければならないの!」将軍は激しく叫んだ。「私たちは反乱しているのよ!」
「そうは見えないな」と番人は、ひとりひとりを感心したように眺めながら言った。
「でも反乱しているの!」ジンジャーは足を踏み鳴らし、いらだって叫んだ。「エメラルドシティを征服するつもりなの!」
「なんとまあ!」驚いた門の番人は答えた。「なんてばかげた考えだ! いい子たち、家へ帰ってお母さんの手伝いをして、牛の乳をしぼり、パンを焼きなさい。都を征服するのが危険なことだと知らないのかね?」

「怖くなんかないわ!」将軍は言い返した。その決然とした様子に、番人は不安になった。
そこで彼は緑のひげの兵士を呼ぶために鐘を鳴らしたが、次の瞬間には鳴らしたことを後悔した。たちまち大勢の少女たちに取り囲まれたからである。彼女たちは髪から編み針を引き抜き、その鋭い先を番人の丸々した頬や瞬く目のすぐそばに危なっかしく突きつけ、突き刺すまねをしはじめた。
かわいそうな男は大声で慈悲を乞い、ジンジャーが首から鍵束を外しても、少しも抵抗しなかった。
将軍は軍隊を従えて門へ突進した。そこで立ちはだかったのはオズ王立軍――つまり緑のひげの兵士の別名である。
「止まれ!」彼は叫び、長い銃を指揮官の顔へまっすぐ向けた。
少女たちの何人かは悲鳴を上げて後ずさったが、ジンジャー将軍は勇敢にもその場を動かず、責めるように言った。
「あら、どういうこと? 哀れで無防備な女の子を撃つつもり?」
「いや」と兵士は答えた。「銃には弾が入っていないからな。」
「弾が入っていない?」
「ああ。事故が怖いからな。それに、弾を込める火薬と弾丸をどこに隠したか忘れてしまった。少し待ってくれるなら、探してみるが。」
「お手数なく」とジンジャーは陽気に言った。そして軍隊のほうを振り返って叫んだ。
「女の子たち、銃には弾が入っていないわ!」
「やったあ!」反逆者たちはこの朗報に大喜びで叫び、緑のひげの兵士めがけて一斉に押し寄せた。あまりの混雑ぶりに、互いに編み針を突き刺さなかったのが不思議なくらいだった。
だがオズ王立軍は、女たちの突撃を受け止めるにはあまりにも女が怖かった。ただくるりと向きを変え、全力で門を抜け、王宮へ向かって逃げ出した。するとジンジャー将軍とその群れは、無防備な都へなだれ込んだ。
こうしてエメラルドシティは、一滴の血も流されることなく占領された。反乱軍は征服軍となったのである!

—
かかし、脱出を計画する
チップは少女たちからそっと離れ、緑のひげの兵士のあとを急いで追った。侵入した軍隊はもっとゆっくり都に入っていった。城壁や敷石から、編み針の先でエメラルドをほじくり出すために立ち止まっていたからだ。そのため、都が征服されたという知らせが広まる前に、兵士と少年は王宮へ着いた。
かかしとジャック・パンプキンヘッドは、まだ中庭で輪投げをしていた。そこへ、帽子も銃もなくし、服はひどく乱れ、長いひげを一ヤード(約91センチメートル)も後ろになびかせたオズ王立軍が飛び込んできて、ゲームは突然中断された。
「私に一点」とかかしは落ち着いて言った。「何事だ、わが兵よ?」と、兵士に向かって付け加えた。
「ああ! 陛下――陛下! 都が征服されました!」息も絶え絶えの王立軍があえいだ。
「ずいぶん急な話だな」とかかしは言った。「だが、ひとまず王宮の扉と窓をすべて閉めて掛け金をかけてくれたまえ。そのあいだに、私はこのパンプキンヘッドに輪の投げ方を見せてやる。」
兵士は急いでそれをしに行った。すぐ後ろに着いていたチップは、中庭に残り、驚きの目でかかしを見つめた。
陛下は、まるで玉座に危険など迫っていないかのように平然と輪を投げ続けていた。だがパンプキンヘッドはチップの姿を見つけると、木の脚で出せるかぎりの速さで少年のほうへよちよち歩いてきた。
「こんにちは、尊い親御さま!」彼は喜んで叫んだ。「あなたがここにいてくれてうれしいです。あの恐ろしいノコギリ馬に連れ去られてしまったのです。」
「そうじゃないかと思ってたよ」とチップは言った。「けがはした? どこか割れてない?」
「いいえ、無事に着きました」とジャックは答えた。「そして陛下は本当に親切にしてくださいました。」
そのとき緑のひげの兵士が戻ってきたので、かかしは尋ねた。
「ところで、誰が私を征服したのだ?」
「オズの国の四方から集まった少女たちの連隊です」と兵士は、まだ恐怖で青ざめながら答えた。
「そのとき、私の常備軍はどこにいたのだ?」陛下は重々しく兵士を見てたずねた。
「陛下の常備軍は走っておりました」と男は正直に答えた。「侵略者たちの恐ろしい武器に立ち向かえる男など、おりませんでしたので。」
「ふむ」と、かかしはしばらく考えてから言った。「玉座を失うこと自体は、さほど気にしない。エメラルドシティを治めるのは退屈な仕事だからな。それにこの王冠は重すぎて、頭が痛くなる。だが、私がたまたま王であるというだけの理由で、征服者たちが私を傷つけるつもりでないことを願うよ。」
「ぼくが聞いたところでは」とチップはためらいがちに言った。「外側はぼろ布の敷物にして、中身はソファのクッションに詰めるつもりだって。」
「それなら私は本当に危険だ」と陛下はきっぱり言った。「逃げる手段を考えるのが賢明だな。」

「どこへ行けるのですか?」ジャック・パンプキンヘッドが尋ねた。
「もちろん、友人のブリキの木こりのところだ。彼はウィンキーたちを治め、自らを彼らの皇帝と称している」と答えが返った。「彼なら必ず私を守ってくれるだろう。」
チップは窓の外を見ていた。
「王宮は敵に囲まれているよ」とチップは言った。「逃げるには遅すぎる。すぐに引き裂かれてしまう。」
かかしはため息をついた。
「非常時には」とかかしは宣言した。「立ち止まって熟考するのが常に良いことだ。すまないが、私が立ち止まって熟考するあいだ、少し待ってくれたまえ。」
「でも私たちも危険です」とパンプキンヘッドは不安げに言った。「あの女の子たちの誰かが料理を知っていたら、私の最期は近いです!」
「ばかな!」かかしは叫んだ。「たとえ料理の仕方を知っていたとしても、忙しすぎて料理などしている暇はない!」
「けれど私が長いことここで囚人のままでいたら」とジャックは訴えた。「腐ってしまう恐れがあります。」
「むむ! そうなれば付き合うにふさわしくなくなるな」とかかしは返した。「思ったより事態は深刻だ。」
「あなたは」とパンプキンヘッドは暗い声で言った。「何年も生きられるかもしれません。私の命はどうしても短い。ですから、残されたわずかな日々を有効に使わなければならないのです。」
「まあまあ! 心配するな」とかかしはなだめるように答えた。「私が考えるのに十分なあいだ静かにしていてくれれば、全員が逃げられる方法を探してみよう。」
そこでほかの者たちは辛抱強く黙って待ち、かかしは隅へ歩いていって壁に顔を向け、たっぷり五分間立っていた。その時間が過ぎると、彼は描かれた顔にいくらか明るい表情を浮かべてみんなのほうを向いた。
「君が乗ってきたノコギリ馬はどこにいる?」とかかしはパンプキンヘッドに尋ねた。
「ええと、私があれは宝物だと言いましたので、陛下の部下が王家の宝物庫に閉じ込めました」とジャックは言った。
「それしか思いつかなかったのでございます、陛下」と兵士が、自分が失敗したのではないかと恐れながら付け加えた。
「たいへん結構だ」とかかしは言った。「その動物に餌はやったか?」
「はい、もちろん。山盛り一ペック(約8.8リットル)の鋸屑を与えました。」
「すばらしい!」かかしは叫んだ。「ただちに馬をここへ連れてきたまえ。」
兵士は急いで去り、まもなく、木でできた馬の脚が敷石を打つカタカタという音が聞こえてきた。ノコギリ馬が中庭へ連れてこられたのだ。
陛下はその馬を批評するように眺めた。「特別優雅には見えないな!」と、考え込むように言った。「だが、走れるのだろう?」
「それはもちろん」とチップは、ノコギリ馬を感心して見つめながら言った。
「ならば、われわれを背に乗せ、反逆者どもの隊列を突破して、私の友ブリキの木こりのもとへ運んでもらわねばならない」とかかしは宣言した。
「四人は運べないよ!」チップが反対した。
「いや、三人なら運んでくれるよう説得できるかもしれない」と陛下は言った。「したがって、私は王立軍を後ろに残していく。あまりにも簡単に征服されたところを見ると、彼の能力にはあまり信頼が置けないからな。」
「それでも、走ることはできるよ」とチップは笑って言った。
「この打撃は予想しておりました」と兵士は不機嫌そうに言った。「ですが耐えましょう。美しい緑のひげを切り落として変装します。結局のところ、あの無鉄砲な少女たちと向き合うのも、この荒々しく手なずけられていない木の馬に乗るのも、危険度はたいして変わりません!」
「君の言うことももっともかもしれない」と陛下は言った。「だが私としては、兵士ではないので、危険が好きなのだ。さて、少年よ、君が最初に乗りたまえ。そして、できるだけ馬の首の近くに座ってくれ。」
チップはすばやく乗り込んだ。兵士とかかしは、パンプキンヘッドをそのすぐ後ろの席へ持ち上げることに成功した。王のために残された場所はあまりに少なく、馬が走り出せばすぐに落ちそうだった。
「物干し綱を持ってきたまえ」と王は自分の軍隊に言った。「そしてわれわれ全員を結び合わせよ。そうすれば、ひとりが落ちるときには全員が落ちる。」
兵士が物干し綱を取りに行っているあいだ、陛下は続けた。「用心するに越したことはない。私の存在そのものが危ういのだからな。」
「私もあなたと同じくらい用心しなければなりません」とジャックは言った。
「正確には違う」とかかしは答えた。「私に何か起きれば、それで私は終わりだ。だが君に何か起きても、種として利用できる。」
兵士は長い綱を持って戻り、三人をしっかり結び合わせ、さらにノコギリ馬の体にも縛りつけた。これなら転げ落ちる危険はほとんどなさそうだった。
「さあ門を開け放て」とかかしは命じた。「われわれは自由へ、あるいは死へ向かって突進する。」

彼らが立っていた中庭は、大きな王宮の中心にあり、四方を建物に囲まれていた。だが一か所だけ外門へ通じる通路があり、その門は主君の命令で兵士が掛け金をかけていた。陛下はそこから脱出するつもりだったので、王立軍はノコギリ馬を通路へ導き、門の掛け金を外した。門は大きな音を立てて後ろへ開いた。
「さあ」とチップは馬に言った。「ぼくたち全員を救うんだ。都の門までできるだけ速く走って、何があっても止まるな。」
「わかった!」ノコギリ馬は荒い声で答え、あまりに突然駆け出したので、チップは息をのんで、馬の首に打ち込んだ杭にしっかりしがみつかなければならなかった。
王宮を見張って外に立っていた少女たちの何人かは、ノコギリ馬の狂ったような突進でなぎ倒された。ほかの者たちは悲鳴を上げて道をあけ、逃げる囚人たちに向かって、ただ一人か二人だけが必死に編み針を突き出した。チップは左腕に小さなひと刺しを受け、その後一時間ほどひりひりした。だが針は、かかしにもジャック・パンプキンヘッドにもまったく効かなかった。ふたりは突かれていたことにさえ気づかなかった。
ノコギリ馬について言えば、それは見事な記録を打ち立てた。果物売りの荷車をひっくり返し、おとなしそうな男たちを何人も倒し、最後にはジンジャー将軍に任命された新しい門の番人――小うるさい小柄な太った女――まで転がしてしまったのである。
しかも、この勢いのある乗用馬はそこで止まらなかった。エメラルドシティの城壁の外へ出ると、西へ向かう道を速く激しい跳躍で突き進み、少年の息を奪い、かかしを驚嘆でいっぱいにした。
ジャックは以前にもこの狂ったような速さで乗ったことがあったので、両手で自分のかぼちゃ頭を棒の上に押さえつけることに全力を注ぎ、そのあいだ、哲学者のような勇気で恐ろしい揺れに耐えた。
「速度を落とせ! 速度を落とせ!」かかしは叫んだ。「私のわらが全部脚のほうへ落ちてしまう!」
だがチップは声を出す息もなく、ノコギリ馬は制止されることなく、速度も落とさずに荒々しい疾走を続けた。
やがて一行は広い川の岸にたどり着いた。木の馬はためらうことなく最後の一跳びをして、一行を空中へ放り出した。
その一秒後、彼らは水の中で転がり、水しぶきを上げ、ぷかぷか浮かんでいた。馬は足の置き場を見つけようと必死にもがき、乗り手たちは急流の下へ沈められたかと思うと、コルクのように水面へ浮かび上がった。

—
ブリキの木こりへの旅
チップは全身ずぶ濡れで、体のあらゆるところから水を滴らせていた。それでもなんとか身を乗り出し、ノコギリ馬の耳元で叫んだ。
「じっとしてろ、このばか! じっとしてろ!」
馬はすぐにもがくのをやめ、木の体は筏のように浮力があったので、水面に静かに浮かんだ。
「その『ばか』という言葉はどういう意味だ?」馬が尋ねた。
「非難するときの言葉だよ」とチップは、その表現を少し恥じながら答えた。「怒ったときだけ使うんだ。」
「それなら、お返しにおまえをばかと呼べるのは喜ばしいことだ」と馬は言った。「川を作ったのは私ではないし、道の途中に置いたのも私ではない。だから、水に落ちたことで私に腹を立てる者には、非難の言葉こそふさわしい。」
「まったくそのとおりだ」とチップは答えた。「だから、ぼくが悪かったと認めるよ。」
それからパンプキンヘッドに向かって呼びかけた。「大丈夫か、ジャック?」
返事はなかった。そこで少年は王に呼びかけた。「大丈夫ですか、陛下?」
かかしはうめいた。
「どうも、何もかも大丈夫ではないようだ」と弱々しい声で言った。「この水というものは、なんと濡れていることか!」
チップは縄できつく縛られていたので、仲間を見るために頭を回すことができなかった。そこでノコギリ馬に言った。
「脚でこいで岸へ向かえ。」
馬は従った。進みは遅かったが、ついに反対側の川岸へたどり着いた。そこは低くなっていて、ノコギリ馬が乾いた地面へよじ登ることができた。
少年は苦労してポケットからナイフを取り出し、乗り手たち同士と木の馬を結びつけていた縄を切った。かかしがぐしゃりという湿った音を立てて地面へ落ちるのが聞こえ、それから自分もすばやく降りて、友人ジャックを見た。
華やかな服を着た木の体は、まだ馬の背にまっすぐ座っていた。だがかぼちゃの頭はなく、首の役をする先の尖った棒だけが見えていた。かかしのほうは、揺れで体の中のわらが下へ落ち、脚と胴体の下部にぎっしり詰まってしまっていた。そのため下半身はふっくら丸く見える一方、上半分は空っぽの袋のようだった。頭には、落とさないよう縫いつけてある重い王冠がまだ載っていた。だが頭は濡れてぐったりしていたので、金と宝石の重みで前へ垂れ、描かれた顔がしわだらけにつぶれて、まるで日本の狆犬そっくりに見えた。
チップは笑っただろう――自分の男ジャックのことがそれほど心配でなければ。だが、どれほど傷んでいても、かかしは全部そろっていた。一方、ジャックの存在に不可欠なかぼちゃ頭はなくなっていた。そこで少年は、幸運にも近くに落ちていた長い棒をつかみ、不安げにまた川のほうを向いた。

はるか水面の向こうに、かぼちゃの黄金色が見えた。波に合わせてゆるやかに上下している。そのときはチップの手の届かないところにあったが、やがて少しずつ、また少しずつ近づいてきたので、少年は棒で引き寄せ、岸へたぐり寄せることができた。それから堤の上へ持っていき、ハンカチでかぼちゃの顔の水を丁寧に拭い、ジャックのところへ走っていって、頭を男の首に戻した。
「なんということでしょう!」これがジャックの最初の言葉だった。「なんて恐ろしい体験でしょう! 水はかぼちゃを腐らせるものなのでしょうか?」
チップは返事をする必要はないと思った。かかしにも助けが必要だとわかっていたからだ。そこで王の体と脚からわらを慎重に取り出し、日に干して乾かした。濡れた服はノコギリ馬の体にかけた。
「もし水がかぼちゃを腐らせるのなら」とジャックは深いため息をついて言った。「私の日数はもう数えられるほどです。」
「水がかぼちゃを腐らせるなんて、聞いたことがないよ」とチップは返した。「その水が煮え立っているなら別だけど。頭が割れていないなら、友よ、かなりいい状態のはずだ。」
「ああ、頭は少しも割れていません」とジャックは、いくぶん明るく宣言した。
「なら心配するな」と少年は言い返した。「心配は猫を殺したこともあるんだ。」
「それなら」とジャックは真剣に言った。「私は猫でなくて本当によかったです。」
太陽は彼らの服をどんどん乾かし、チップは陛下のわらをかき混ぜて、暖かな日差しが湿気を吸い取り、前のようにぱりっと乾くようにした。それが済むと、かかしの中にわらを詰めて均整の取れた姿に整え、顔のしわを伸ばしたので、いつもの陽気で魅力的な表情になった。
「どうもありがとう」と君主は明るく言い、歩き回って自分のバランスがよく取れていることを確かめた。「かかしであることには、いくつか明らかな利点がある。近くに修理してくれる友人さえいれば、それほど深刻なことは何も起こらないのだから。」
「強い日差しはかぼちゃを割るものでしょうか」とジャックは不安げな声で言った。
「まったく、まったくそんなことはない!」かかしは陽気に答えた。「わが少年よ、君が恐れるべきものは老いだけだ。君の黄金の若さが朽ちたとき、われわれはすぐに別れ別れになるだろう――だがそれを前もって気にする必要はない。われわれがその事実を発見し、君に知らせてやる。さあ! 旅を再開しよう。友人のブリキの木こりに早く挨拶したい。」
そこで彼らはふたたびノコギリ馬に乗った。チップは杭につかまり、パンプキンヘッドはチップにしがみつき、かかしは両腕でジャックの木の体に抱きついた。

「ゆっくり行け。もう追われる危険はないから」とチップは馬に言った。
「わかった!」その生き物はかなり荒い声で答えた。
「少し声がかれていませんか?」パンプキンヘッドが丁寧に尋ねた。
ノコギリ馬は怒って跳ね、節くれだった片目をチップのほうへぎろりと後ろに回した。
「いいか」と馬はうなった。「侮辱から私を守ってくれないのか?」
「もちろんだよ!」チップはなだめるように答えた。「ジャックに悪気はなかったはずだ。それに、ぼくたちがけんかするわけにはいかないだろう。みんな仲のいい友だちでいなきゃ。」
「あのパンプキンヘッドとはもう一切関わらない」とノコギリ馬は意地悪く宣言した。「やつはあまりにも簡単に頭を失う。私の好みには合わない。」
この言葉にはふさわしい返答がなかったので、しばらく一行は黙って進んだ。
やがてかかしが言った。
「これは昔を思い出させるな。この草の小丘で、私はかつて西の悪い魔女の刺す蜂からドロシーを救ったのだ。」
「刺す蜂はかぼちゃを傷つけますか?」ジャックは恐る恐る周囲を見回しながら尋ねた。
「もうみんな死んでいるから、問題はない」とかかしは答えた。「そしてここは、ニック・チョッパーが悪い魔女の灰色狼たちを退治した場所だ。」
「ニック・チョッパーって誰?」チップが尋ねた。
「それはわが友ブリキの木こりの名前だ」と陛下は答えた。「そしてここは、翼のある猿たちがわれわれを捕らえて縛り、小さなドロシーを連れ去って飛んでいった場所だ」と、一行がさらに少し進んだあとで続けた。
「翼のある猿はかぼちゃを食べることがありますか?」ジャックは恐怖に震えながら尋ねた。
「それは知らない。だが心配する理由はほとんどない。翼のある猿たちは今や、彼らに命令できる黄金の帽子を持つ善い魔女グリンダのしもべだからだ」とかかしは思案げに言った。
それから、詰め物をされた君主は過去の冒険の日々を思い出し、物思いに沈んだ。ノコギリ馬は花の散った野を揺れながら進み、乗り手たちをすばやく運んでいった。
やがて夕暮れが訪れ、そして夜の暗い影が落ちた。そこでチップは馬を止め、みんなは降りることにした。
「疲れきったよ」と少年は疲れたあくびをしながら言った。「草は柔らかくて涼しい。ここに横になって、朝まで眠ろう。」
「私は眠れません」とジャックは言った。
「私も眠ったことがない」とかかしは言った。
「私は眠りというものが何かさえ知らない」とノコギリ馬は言った。
「それでも、この哀れな少年のことは思いやらねばならない」とかかしは、いつもの思慮深い調子で提案した。「彼は肉と血と骨でできていて、疲れるのだ。小さなドロシーも同じだったことを覚えている。彼女が眠っているあいだ、われわれはいつも一晩中座っていなければならなかった。」
「ごめん」とチップはおとなしく言った。「でも、どうしようもないんだ。それに、ものすごくお腹もすいてる!」
「新たな危険が現れました!」ジャックは暗い声で言った。「あなたがかぼちゃを食べるのが好きでないことを願います。」
「煮込んでパイにしたものでなければね」と少年は笑って答えた。「だからぼくを怖がることはないよ、友だちジャック。」
「なんて臆病なパンプキンヘッドだ!」ノコギリ馬が軽蔑して言った。
「自分が腐るかもしれないとわかっていれば、あなたも臆病になるかもしれません!」ジャックは怒って言い返した。
「まあまあ!」かかしが割って入った。「けんかはやめよう。親愛なる友よ、われわれには皆それぞれ弱点がある。だから互いを思いやるよう努めねばならない。そしてこの哀れな少年は腹をすかせていて、食べるものが何ひとつないのだから、みんな静かにして、眠らせてやろう。眠りの中では、人間は空腹さえ忘れられると言われているからな。」
「ありがとう!」チップは感謝して叫んだ。「陛下は賢いだけでなく、まったく同じくらいお優しいです――これはかなりの褒め言葉ですよ!」
それからチップは草の上に身を伸ばし、かかしの詰め物の体を枕にすると、ほどなくぐっすり眠り込んだ。

—
ニッケルめっきの皇帝
チップは夜明けまもなく目を覚ました。だがかかしはすでに起きていて、不器用な指で、近くの茂みから熟した木の実を両手いっぱいに摘んでいた。少年はそれをがつがつ食べ、十分な朝食になるとわかった。それから小さな一行は旅を再開した。
一時間ほど乗って進むと、丘の頂に着いた。そこからウィンキーたちの都が見え、つつましやかな家々の集まりの中から、皇帝の宮殿の高い丸屋根がそびえているのがわかった。
この眺めを見て、かかしは大いに活気づき、叫んだ。
「昔からの友人ブリキの木こりにまた会えるとは、なんとうれしいことだろう! 彼が自分の民を、私が私の民を治めたよりうまく治めていることを願うよ!」
「ブリキの木こりはウィンキーたちの皇帝なのか?」馬が尋ねた。
「まさにそのとおり。悪い魔女が滅ぼされて間もなく、彼らが自分たちを治めてほしいと招いたのだ。ニック・チョッパーは世界中でいちばんすばらしい心を持っているから、きっと優秀で有能な皇帝であることを示したに違いない。」
「『皇帝』というのは、帝国を治める人の称号だと思っていたよ」とチップは言った。「ウィンキー国はただの王国なのに。」
「そのことをブリキの木こりに言ってはいけない!」かかしは真剣に叫んだ。「彼の気持ちをひどく傷つけてしまうだろう。彼は誇り高い人物だし、そうであって当然の理由もある。そして王より皇帝と呼ばれるほうがうれしいのだ。」
「ぼくにはどっちでもかまわないけど」と少年は答えた。
ノコギリ馬はいまや、とても速い足取りで前へ進んだので、乗り手たちは背にしがみつくのに苦労した。そのため、宮殿の階段のそばで止まるまで、それ以上の会話はほとんどなかった。
銀の布の制服を着た老いたウィンキーが、彼らが降りるのを手伝おうと進み出た。かかしはその人物に言った。
「ただちに、そなたの主人である皇帝のもとへ案内せよ。」
男は困ったように一行を順番に見渡し、ついに答えた。
「しばらくお待ちいただかねばならないかと存じます。皇帝陛下は今朝、どなたにもお会いになっておりません。」
「どういうことだ?」かかしは心配そうに尋ねた。「彼に何も起きていなければよいが。」
「ああ、いえ。深刻なことは何もございません」と男は返した。「ただ本日は陛下がお磨きになる日でございまして、ちょうど今、その御尊体にはプッツ・ポマード[訳注:金属を磨くための研磨剤の名]が厚く塗られております。」
「ああ、なるほど!」かかしはすっかり安心して叫んだ。「わが友は昔からおしゃれに傾くところがあったが、今では自分の身なりをこれまで以上に誇りに思っているのだろうな。」
「まさにそのとおりでございます」と男は丁寧にお辞儀して言った。「われらが力ある皇帝は、最近ご自身にニッケルめっきを施されました。」
「なんとまあ!」これを聞いて、かかしは叫んだ。「もし彼の機知も同じように磨かれているなら、さぞきらめいていることだろう! だが中へ通してくれ――今の状態でも、皇帝はきっとわれわれに会ってくれるはずだ。」
「皇帝陛下のお姿は常に壮麗でございます」と男は言った。「ですが、皆さまのご到着をお伝えし、陛下より皆さまに関するご命令を拝ってまいりましょう。」
そこで一行は従者について立派な控えの間へ入った。ノコギリ馬もぎこちなくそのあとをついてきた。馬なら外に残るものだなどということを、まったく知らなかったのである。
旅人たちは最初、その周囲の様子にいくらか圧倒された。かかしでさえ、銀の布でできた豪華な掛け布が結び上げられ、小さな銀の斧で留められているのを見て感心しているようだった。美しい中央のテーブルには、大きな銀の油差しが置かれていた。それには、ブリキの木こり、ドロシー、臆病なライオン、そしてかかしの過去の冒険の場面が豪華に彫り込まれており、その彫刻の線は銀の上に黄色い金でなぞられていた。壁には何枚もの肖像画が掛かっていて、かかしの肖像がもっとも目立ち、入念に描かれているように見えた。一方、オズの有名な魔法使いがブリキの木こりに心を授けている場面を描いた大きな絵は、部屋の一方の壁のほとんど全体を覆っていた。
訪問者たちがこれらのものを黙って感嘆しながら眺めていると、突然、隣の部屋から大きな声が聞こえた。
「おお! おお! おお! なんという大きな驚きだ!」
そして扉が勢いよく開き、ニック・チョッパーが一同の中へ駆け込んできて、かかしを親愛のこもった抱擁でしっかり抱きしめたため、かかしにはいくつもの折り目としわがついてしまった。

「懐かしき親友よ! わが高貴なる仲間よ!」ブリキの木こりは喜びに満ちて叫んだ。「また会えるとは、なんとうれしいことだ!」
それからかかしを放し、腕の長さだけ離して、その愛する描かれた顔立ちをしげしげと眺めた。
だが、ああ! かかしの顔と体のあちこちには、プッツ・ポマードの大きなしみがべったりついていた。ブリキの木こりは友人を迎える熱意のあまり、自分の身支度がどんな状態だったかをすっかり忘れ、自分の体に厚く塗られたペーストを仲間の体へこすりつけてしまったのである。
「まったく!」かかしは悲しげに言った。「ひどいありさまだ!」
「気にすることはない、友よ」とブリキの木こりは返した。「君を私の帝国洗濯所へ送ろう。新品同様になって戻ってくる。」
「押しつぶされたりしないだろうな?」かかしは尋ねた。
「もちろんだ!」という返事だった。「それより教えてくれ、陛下はどうしてここへ? そしてお仲間はどなたかな?」
かかしはたいへん丁寧にチップとジャック・パンプキンヘッドを紹介した。後者の人物は、ブリキの木こりに大いに興味を抱かせたようだった。
「君があまりしっかりした作りでないことは認めねばならない」と皇帝は言った。「だがたしかに珍しい。したがって、われわれの選ばれた社交の一員となるに値する。」

「陛下、ありがとうございます」とジャックは謙虚に言った。
「健康を楽しんでいることを願うよ」と木こりは続けた。
「今のところは、はい」とパンプキンヘッドはため息まじりに答えた。「ですが、いつか腐ってしまう日のことを、いつも恐れております。」
「ばかな!」皇帝は言った――だがその声は親切で同情に満ちていた。「どうか、明日の雨で今日の太陽を湿らせるようなことはしないでくれ。君の頭が腐る暇もないうちに缶詰にしてしまえばよい。そうすれば、いつまでも保存できるかもしれない。」
この会話のあいだ、チップはあからさまな驚きとともに木こりを見つめていた。そして、有名なウィンキーの皇帝が、きちんとはんだ付けされ、リベットで留められたブリキの部品だけで人の形に作られていることに気づいた。動くと少しがらがら、がちゃんと音がしたが、全体としては非常に巧みに作られているようだった。ただ、頭からつま先まで覆っている厚い磨きペーストのせいで、その見た目だけが損なわれていた。
少年がじっと見つめているので、ブリキの木こりは自分が人前に出るにはあまりふさわしくない状態であることを思い出した。そこで友人たちにわび、私室へ退いて従者たちに磨かせてもらうと言った。それは短時間で終わった。皇帝が戻ってくると、ニッケルめっきされた体は見事に輝いていたので、かかしはその見違えるような姿を心から褒めた。
「このニッケルめっきは、正直に言って、よい思いつきだった」とニックは言った。「それに、私の冒険に満ちた経験のあいだに少し傷がついていたので、なおさら必要だったのだ。左胸に彫られたこの星に気づくだろう。これは私のすばらしい心がどこにあるかを示すだけでなく、偉大なる魔法使いがその巧みな手で、私の胸にその大切な器官を入れてくれたときにできた継ぎ当ても、たいへんきれいに覆っているのだ。」
「では、あなたの心は手回しオルガンなのですか?」パンプキンヘッドが不思議そうに尋ねた。
「決してそうではない」と皇帝は威厳をもって答えた。「私は、それが厳密に正統な心であると確信している。ただし、多くの人々が持つものより少し大きく、温かいがね。」
それからかかしのほうを向いて尋ねた。
「君の臣民たちは幸福で満足しているかね、親愛なる友よ?」
「それは言えない」と返事があった。「オズの少女たちが反乱を起こし、私をエメラルドシティから追い出したのだ。」
「なんとまあ!」ブリキの木こりは叫んだ。「なんという災難だ! 彼女たちはまさか、君の賢明で慈悲深い統治に不満を述べているわけではあるまい?」
「いや。しかし彼女たちは、一方にしか働かない規則はよい規則ではないと言っている」とかかしは答えた。「さらにその女性たちは、男たちがこの国を治めるのはもう十分長かったという意見でもある。だから私の都を占領し、宝物庫からすべての宝石を奪い、自分たちの好きなように物事を動かしているのだ。」
「なんということだ! なんと奇妙な考えだ!」皇帝は衝撃を受け、驚いて叫んだ。
「それに、彼女たちの何人かが言っていたよ」とチップは言った。「ここへ進軍して、ブリキの木こりの城と都を占領するつもりだって。」
「むむ! 彼女たちにそんな時間を与えてはならない」と皇帝は素早く言った。「すぐに出発し、エメラルドシティを奪い返し、かかしをふたたび玉座に据えよう。」
「君なら助けてくれると確信していた」とかかしはうれしそうな声で言った。「どれほどの軍隊を集められる?」
「軍隊は必要ない」と木こりは答えた。「われわれ四人と、私のきらめく斧の助けがあれば、反逆者たちの心に恐怖を打ち込むには十分だ。」
「五人です」とパンプキンヘッドが訂正した。
「五人?」ブリキの木こりは繰り返した。
「はい。ノコギリ馬は勇敢で恐れを知りません」とジャックは、四足獣との最近のけんかを忘れて答えた。
ブリキの木こりは困惑してあたりを見回した。ノコギリ馬は今までずっと隅で静かに立っていたので、皇帝は気づいていなかったのだ。チップはすぐにその奇妙な姿の生き物を呼び寄せた。ノコギリ馬はあまりにぎこちなく近づいたため、美しい中央のテーブルと彫刻入りの油差しを危うくひっくり返しそうになった。
「どうやら」とブリキの木こりはノコギリ馬を真剣に見つめながら言った。「驚きは尽きないものらしい! この生き物はどうして生きているのだ?」
「ぼくが魔法の粉でやりました」と少年は控えめに言った。「ノコギリ馬は、ぼくたちにとても役立ってくれました。」
「反逆者たちから逃げるのを助けてくれた」とかかしが付け加えた。
「ならば、彼を仲間として受け入れねばならない」と皇帝は宣言した。「生きたノコギリ馬はまったく珍しいもので、興味深い研究対象となるはずだ。彼は何か知っているのかね?」
「まあ、人生において大した経験があるとは言えませんが」とノコギリ馬は自分で答えた。「私はとても早く学ぶようですし、しばしば、自分が周囲の誰よりも多くを知っているように思えることがあります。」
「たぶんそうなのだろう」と皇帝は言った。「経験が必ずしも知恵を意味するわけではないからな。だが今は時間が貴重だ。すぐに旅立ちの準備をしよう。」

皇帝は大法官を呼び、自分の不在中に王国をどう運営するかを指示した。そのあいだ、かかしは分解され、頭の役をする描かれた袋は丁寧に洗濯され、偉大なる魔法使いから最初にもらった脳みそをもう一度詰め直された。服も帝国の仕立て屋たちによってきれいにされ、アイロンをかけられ、王冠は磨かれたうえで、また頭に縫いつけられた。ブリキの木こりが、この王権のしるしを捨ててはならないと主張したからである。かかしはいまやかなり立派な見た目になり、虚栄心にとらわれる性格ではまったくなかったものの、自分の姿にかなり満足し、歩くときに少し気取っていた。そのあいだ、チップはジャック・パンプキンヘッドの木の手足を修繕し、以前より丈夫にした。またノコギリ馬も、ちゃんと動く状態かどうか点検された。
そして翌朝、明るく早い時刻に、一行はエメラルドシティへ戻る旅に出発した。ブリキの木こりはきらめく斧を肩に担いで先頭に立ち、パンプキンヘッドはノコギリ馬に乗り、チップとかかしはその両側を歩いて、彼が落ちたり傷んだりしないように気を配った。

—
ウォグルバグ大博士
さて、ジンジャー将軍――覚えているだろうが、反乱軍を指揮していた人物である――は、かかしがエメラルドシティから逃げ出したことで、ひどく不安になっていた。陛下とブリキの木こりが力を合わせれば、自分と軍隊全体にとって危険になると恐れたのだが、それには十分な理由があった。オズの人々は、数々の驚くべき冒険を見事に切り抜けたこの有名な英雄たちの活躍を、まだ忘れていなかったからである。
そこでジンジャーは大急ぎで魔女の老モンビを呼び寄せ、反乱軍を助けに来てくれるなら大きな褒美を与えると約束した。
モンビは、チップにだまされたことにも、逃げられたことにも、大切な生命の粉を盗まれたことにも激怒していた。だから、チップを友人のひとりにしたかかしとブリキの木こりを打ち負かすためにエメラルドシティへ向かい、ジンジャーを助けるよう仕向けるのに、何の説得もいらなかった。
モンビは王宮へ到着するやいなや、秘密の魔法によって、冒険者たちがエメラルドシティへ向けて旅を始めていることを見抜いた。そこで塔の高いところにある小部屋へ退き、内側から鍵をかけると、かかしとその仲間たちの帰還を妨げるため、自分に使える術を行った。
それこそが、しばらくしてブリキの木こりが足を止め、こう言った理由だった。
「たいへん妙なことが起きた。この旅路の一歩一歩まで覚えているはずなのに、どうやらわれわれはすでに道に迷ってしまったようだ。」
「それはまったくありえない!」かかしは異議を唱えた。「親愛なる友よ、どうして道を外れたと思うのだ?」
「なぜなら、目の前に大きなひまわり畑があるからだ――そして私は、この畑を生まれてこのかた見たことがない。」
その言葉に一同があたりを見回すと、たしかに背の高い茎の畑に囲まれていた。どの茎の先にも巨大なひまわりが咲いている。それだけでなく、その花々は赤と金の鮮やかな色彩で目がくらむほどで、一本一本が小さな風車のように茎の上でぐるぐる回っていた。見る者の視界をすっかり眩ませ、どちらへ進めばよいのかわからなくするほど惑わせた。
「魔法だ!」チップが叫んだ。
一行が立ち止まり、ためらい、驚いていると、ブリキの木こりがいら立ちの叫びを上げ、斧を振りながら前へ進み、目の前の茎を切り倒そうとした。するとひまわりたちは突然、急速な回転を止めた。旅人たちは、花の中心にそれぞれ少女の顔が現れるのをはっきり見た。その愛らしい顔は、驚き固まった一団をあざけるような笑みで見つめ、それから、自分たちの姿がもたらした狼狽を見て、いっせいに楽しそうな笑い声を上げた。
「やめて! やめて!」チップは木こりの腕をつかんで叫んだ。「生きてる! 女の子だ!」
その瞬間、花々はまた回り始め、顔は薄れて、素早い回転の中へ消えてしまった。
ブリキの木こりは斧を落とし、地面に座り込んだ。
「あの美しい生き物たちを切り倒すのは心ないことだ」と彼はしょんぼり言った。「だが、ほかにどうやって道を進めばよいのかわからない。」
「私には、あれは奇妙なほど反乱軍の顔に似ているように見えた」とかかしは考え込んだ。「だが、少女たちがどうやってこれほど早くここまで追ってこられたのか、想像もつかない。」
「魔法だと思う」とチップはきっぱり言った。「誰かがぼくたちにいたずらしているんだ。昔、モンビばあさんがこんなことをするのを見たことがある。たぶんただの幻で、ここにひまわりなんて本当はまったくないんだ。」
「では、目を閉じて前へ歩こう」と木こりが提案した。
「すまない」とかかしは答えた。「私の目は閉じられるようには描かれていない。君にブリキのまぶたがあるからといって、われわれ全員が同じ作りだと思ってはいけない。」
「それにノコギリ馬の目は節目ですね」とジャックが、身を乗り出して観察しながら言った。
「それでも、とにかく君は素早く前へ進むんだ」とチップは命じた。「ぼくたちは君のあとについて逃げ出す。ぼくの目はもう眩みすぎて、ほとんど見えない。」
そこでパンプキンヘッドは勇敢に前へ進み、チップはノコギリ馬の短い尻尾をつかんで、目を閉じたまま続いた。かかしとブリキの木こりが最後尾を務めた。そして数ヤード(数メートル)も行かないうちに、ジャックの喜びの叫びが、前方の道が開けたことを告げた。
そこで全員が立ち止まって後ろを振り返ったが、ひまわり畑の痕跡はひとかけらも残っていなかった。
一行は前よりも明るい気分で旅を続けた。だが老モンビが風景の見え方をあまりに変えてしまったので、かかしが賢明にも太陽を頼りに方角を決めることを思いつかなければ、彼らはきっと迷っていただろう。どんな魔法でも太陽の進む道を変えることはできず、したがってそれは安全な道しるべだった。
しかし、別の困難が彼らの前に待ち受けていた。ノコギリ馬がウサギの穴に足を踏み入れ、地面に倒れてしまったのだ。パンプキンヘッドは高く空中へ放り出され、もしブリキの木こりが落ちてくるかぼちゃを巧みに受け止めて傷つけずにすませなければ、彼の歴史はまさにその瞬間に終わっていたことだろう。

チップはすぐに頭をまた首に取りつけ、ジャックを立たせた。だがノコギリ馬は、そう簡単には済まなかった。ウサギの穴から脚を引き抜いてみると、脚はぽっきり折れていたのである。これでは一歩も進めない。取り替えるか、修理しなければならなかった。
「これはかなり深刻だ」とブリキの木こりは言った。「近くに木があれば、この動物のためにすぐ別の脚を作れただろう。だが何マイル(何キロメートル)先まで見ても、灌木一本見えない。」
「それにオズの国のこのあたりには、柵も家もない」とかかしがしょんぼり付け加えた。
「じゃあどうするの?」少年が尋ねた。
「私の脳を働かせねばならないようだ」とかかし陛下は答えた。「経験からわかったのだが、時間をかけて考え抜きさえすれば、私は何でもできる。」
「みんなで考えよう」とチップは言った。「そうすれば、ノコギリ馬を直す方法が見つかるかもしれない。」

そこで彼らは草の上に一列に座り、考えはじめた。そのあいだノコギリ馬は、自分の折れた脚を物珍しげに見つめていた。
「痛いか?」ブリキの木こりが、やさしく同情のこもった声で尋ねた。
「少しも」とノコギリ馬は返した。「だが、私の体がこれほどもろいとわかって、誇りが傷ついた。」
小さな一団はしばらく黙って考え込んでいた。やがてブリキの木こりが頭を上げ、野原の向こうを見た。
「われわれに近づいてくるあの生き物は、いったい何だろう?」彼は不思議そうに尋ねた。
ほかの者たちもその視線を追い、自分たちがこれまで見たこともないほど風変わりなものが近づいてくるのに気づいた。それは柔らかな草の上を素早く、音もなく進み、数分後には冒険者たちの前に立って、彼ら自身と同じくらい驚いた様子で一行を見つめた。

かかしはどんな状況でも落ち着いていた。
「おはよう!」かかしは丁寧に言った。
見知らぬ者は大げさな身ぶりで帽子を取り、とても深くお辞儀をして、それから答えた。
「皆さま、おはようございます。皆さま方が一団として、たいへん良好な健康状態を享受しておられることを願います。どうぞ、私の名刺を差し上げることをお許しください。」
この丁重な言葉とともに、それはかかしへ名刺を差し出した。かかしは受け取ると、表に裏にひっくり返して見てから、首を振ってチップへ手渡した。
少年は声に出して読んだ。
「H・M・ウォグルバグ大博士。」
「おやまあ!」パンプキンヘッドは、いくらかじっと見つめながら叫んだ。
「なんとも奇妙だ!」ブリキの木こりは言った。
チップの目は丸くなり、驚きに満ちていた。ノコギリ馬はため息をつき、顔をそむけた。
「君は本当にウォグルバグなのかね?」かかしが尋ねた。
「もちろんですとも、親愛なる閣下!」見知らぬ者はきびきび答えた。「名刺に私の名が書いてあるではありませんか?」
「書いてある」とかかしは言った。「だが、『H・M』とは何の略か聞いてもよいかね?」
「『H・M』とは、高度に拡大された、という意味です」とウォグルバグは誇らしげに答えた。
「ああ、なるほど。」
かかしは見知らぬ者を批評するように眺めた。「では君は、実際、高度に拡大されているのかね?」
「閣下」とウォグルバグは言った。「私はあなたを、判断力と洞察力ある紳士とお見受けします。これまであなたがご覧になったどのウォグルバグよりも、私が何千倍も大きいとは思われませんか? したがって、私が高度に拡大されていることは明白であり、その事実を疑う正当な理由はございません。」
「失礼した」とかかしは返した。「最後に洗濯されて以来、私の脳はいささか混ざっているのだ。ついでに、名前の最後にある『T・E』が何の略か尋ねても差し支えないだろうか?」
「その文字は私の学位を表しております」とウォグルバグは、見下ろすような微笑を浮かべて答えた。「より明確に申し上げれば、その頭文字は、私が徹底的に教育された者であることを意味します。」
「おお!」かかしは大いに安心して言った。
チップはまだ、このすばらしい人物から目を離していなかった。彼が見たのは、大きく丸い虫のような胴体で、それを二本の細い脚が支えており、その先には繊細な足があり、つま先は上向きに反っていた。ウォグルバグの胴体はいくらか平たく、見える範囲から判断すると、背中はつやのある濃い茶色で、前面は薄茶色と白の帯が交互に並び、端で溶け合うようになっていた。腕は脚と同じくらい細く、やや長い首の上には頭が載っていた。その頭は人間の頭に似ていなくもなかったが、鼻の先はくるりと曲がった触角、すなわち「感覚器」で終わり、耳の上端からも触角が伸びていて、小さなくるくる巻いた豚のしっぽのように頭の両側を飾っていた。丸い黒い目がやや飛び出して見えることは認めねばならない。だがウォグルバグの顔つきは、決して不愉快なものではなかった。
服装として、その昆虫は黄色い絹の裏地がついた濃紺の燕尾服を着て、ボタン穴には花を挿していた。広い胴体にぴんと張った白いダック地のベスト、膝のところを金色の留め金で留めた淡褐色のプラッシュの半ズボン、そして小さな頭の上には、高い絹帽子がしゃれた角度で載っていた。
驚きに満ちたわれらの友人たちの前にまっすぐ立つウォグルバグは、ブリキの木こりと同じくらいの背丈があるように見えた。オズの国のどんな虫も、これほど巨大な大きさになったことは、きっとこれまで一度もなかっただろう。
「正直に言うと」とかかしは言った。「君の突然の登場には驚かされたし、間違いなく私の仲間たちもびっくりしたことだろう。とはいえ、そのことで君を苦しめることがなければよいのだが。おそらく、そのうち君に慣れるだろう。」
「どうか謝らないでください!」ウォグルバグは熱心に返した。「人々を驚かせることは、私に大きな喜びを与えてくれます。なにしろ私は普通の昆虫の部類には入れられませんし、出会う人々から好奇心と賞賛の両方を受ける資格があるのですから。」
「まったくそのとおりだ」と陛下は同意した。
「もし私が皆さまの尊いお仲間に座ることをお許しいただけるなら」と見知らぬ者は続けた。「喜んで私の経歴をお話ししましょう。そうすれば、私のこの異例の――いや、注目すべきと言ってよろしければ――姿を、よりよくご理解いただけるでしょう。」
「好きなように言えばよい」とブリキの木こりは簡潔に答えた。
そこでウォグルバグは、旅人たちの小さな一団と向かい合って草の上に座り、次のような物語を語った。

—
高度に拡大された物語
「語り始めるにあたり、私が生まれたときは普通のウォグルバグであったことを認めるのが正直というものでしょう」と、その生き物は率直で親しげな口調で話しはじめた。「それ以外を知らなかった私は、脚だけでなく腕も歩くために使い、石の端の下を這ったり、草の根のあいだに隠れたりして、自分より小さな昆虫を少し見つけて食べること以外には何も考えていませんでした。
「寒い夜には、服を着ていなかったため体がこわばり動けなくなりましたが、毎朝、太陽の暖かな光が私に新しい命を与え、活動を取り戻させてくれました。これは恐ろしい存在のあり方ですが、覚えておいていただきたいのは、それがウォグルバグの、そして地上に住む多くの小さな生き物たちの、定められた通常の生なのです。
「しかし運命は、私がどれほど卑しい身であろうと、より壮大な運命のために私を選び出していました! ある日、私は田舎の学校の近くまで這っていきました。中にいる生徒たちの単調なざわめきに好奇心を刺激され、大胆にも中へ入り、二枚の板の隙間を這って進み、ついには部屋の奥へたどり着きました。そこでは、赤々と燃える炉の前で、教師が机に座っていました。
「ウォグルバグのように小さな生き物に気づく者は誰もいませんでした。そして炉辺が日なたよりもさらに暖かく心地よいとわかると、私はそこを今後の住まいにしようと決意しました。そこで二つのレンガのあいだにすてきな巣を見つけ、何か月も何か月も、そこに身を隠して暮らしたのです。
「ノウイットオール教授は、疑いなくオズの国でもっとも有名な学者です。数日たつと、私は彼が生徒たちに行う講義や講話に耳を傾けるようになりました。その卑しく目立たないウォグルバグほど熱心な生徒は、ほかにひとりもいませんでした。そして私はそのようにして、私自身が白状するところ、まさに驚異的な知識の蓄えを得たのです。だからこそ、私は名刺に『T・E』、すなわち徹底的に教育された、と記しているのです。私の最大の誇りは、世界が私の教養と博識の十分の一をもつウォグルバグを、ほかに生み出せないという事実にあるのですから。」
「君を責める気はない」とかかしは言った。「教育は誇るべきものだ。私自身も教育されている。偉大なる魔法使いから与えられた脳みその詰め物は、私の友人たちに比類なしと見なされている。」
「それでも」とブリキの木こりが口を挟んだ。「よい心のほうが、教育や脳よりずっと望ましいと私は信じている。」
「私にとっては」とノコギリ馬は言った。「よい脚のほうが、そのどちらよりも望ましい。」
「種は脳の一種と考えられるでしょうか?」パンプキンヘッドが唐突に尋ねた。
「静かにしていろ!」チップが厳しく命じた。
「かしこまりました、親愛なる父上」と従順なジャックは答えた。
ウォグルバグは、これらの発言を辛抱強く――いや、敬意をこめてさえ――聞いてから、話を再開した。
「私は、あの人里離れた学校の炉辺で、たっぷり三年は暮らしたに違いありません」と彼は言った。「目の前に絶えず流れる澄んだ知識の泉を、渇いたように飲みながら。」
「なかなか詩的だ」とかかしが、満足げにうなずいて評した。
「ところが、ある日」と虫は続けた。「私の存在そのものを変え、現在の偉大さの頂へ私をもたらした、驚くべき出来事が起こりました。教授は私が炉辺を這っているところを見つけ、私が逃げ出す前に、親指と人差し指でつまみ上げてしまったのです。


「『かわいい子どもたち』と教授は言いました。『私はウォグルバグを捕まえたぞ――たいへん珍しく興味深い標本だ。ウォグルバグが何か知っている者はいるかね?』
「『いいえ!』生徒たちは声をそろえて叫びました。
「『それなら』と教授は言いました。『私の有名な拡大鏡を取り出し、この昆虫を高度に拡大された状態でスクリーンに映してあげよう。そうすれば、君たちは皆その独特な構造を注意深く観察し、その習性と暮らし方を知ることができる。』
「それから教授は戸棚からたいへん奇妙な器具を取り出しました。そして何が起こったのか私が理解する前に、私は高度に拡大された状態でスクリーンへ映し出されていたのです――まさに今、皆さまがご覧になっているように。

「生徒たちは私をよく見ようとして椅子の上に立ち、首を前へ伸ばしました。二人の小さな女の子は、もっとはっきり見えるように、開いた窓の敷居へ飛び乗りました。
「『見よ!』教授は大きな声で叫びました。『この高度に拡大されたウォグルバグを。現存するもっとも珍しい昆虫の一つである!』
「私は徹底的に教育されており、教養ある紳士に何が求められるかを知っていましたので、この瞬間、まっすぐ立ち上がり、片手を胸に当て、とても丁寧なお辞儀をしました。私の行動は予想外だったに違いなく、彼らを驚かせたのでしょう。窓敷居に腰かけていた小さな女の子のひとりが悲鳴を上げ、後ろ向きに窓から落ち、そのまま消えるときに仲間の女の子も引きずり落としてしまったのです。
「教授は恐怖の叫びを上げ、かわいそうな子どもたちが落ちてけがをしていないか確かめるため、扉から飛び出していきました。生徒たちは荒れ狂う群れとなってそのあとを追い、私は学校の教室にひとり残されました。なお高度に拡大された状態で、好きなようにできる自由があったのです。
「これは逃げ出すよい機会だと、すぐに思いつきました。私は自分の大きな体を誇りに思っていましたし、今なら世界中どこへでも安全に旅することができる、そして優れた教養によって、偶然出会うどんな学識ある人物とも交わるにふさわしい者になれると悟ったのです。
「そこで、教授が、けがよりも怖がっただけだった小さな女の子たちを地面から助け起こし、生徒たちがその周りにぎっしり集まっているあいだ、私は落ち着いて校舎を出て、角を曲がり、近くに立っていた木立の中へ誰にも気づかれずに逃げ込んだのです。」
「すばらしい!」パンプキンヘッドが感心して叫んだ。
「まさにそうでした」とウォグルバグは同意した。「高度に拡大されているあいだに逃げ出せたことを、私は一度も自分に祝いそびれたことがありません。もし私が小さく取るに足らない昆虫のままでいたなら、いかに過剰な知識を持っていたとしても、ほとんど役に立たなかったでしょうから。」

「知らなかったよ」とチップは、困惑した表情でウォグルバグを見ながら言った。「虫が服を着るなんて。」
「自然の状態では着ません」と見知らぬ者は返した。「ですが旅を続けるうちに、私は幸運にもひとりの仕立て屋の九番目の命を救うことができました。ご存じかと思いますが、仕立て屋は猫と同じく九つの命を持っているのです。その男は非常に感謝しました。もし九番目の命を失っていれば、それが彼の終わりだったからです。そこで彼は、私が今着ているこのしゃれた衣装を仕立てさせてほしいと願い出ました。なかなかよく合っているでしょう?」そう言ってウォグルバグは立ち上がり、みんなが自分の姿を調べられるよう、ゆっくりと体を回した。
「腕のいい仕立て屋だったに違いない」とかかしは、少し羨ましそうに言った。
「少なくとも、心のよい仕立て屋ではあったな」とニック・チョッパーは言った。
「でも、私たちに会ったとき、あなたはどこへ行くところだったのですか?」
チップがウォグルバグに尋ねた。
「特にどこというわけではありません」と答えが返った。「もっとも、近いうちにエメラルドシティを訪れ、選ばれた聴衆を相手に『拡大の利点』について連続講演を行う手配をするつもりではあります。」
「われわれも今、エメラルドシティへ向かっている」とブリキの木こりは言った。「だから、君さえよければ、われわれと一緒に旅することを歓迎しよう。」
ウォグルバグは深い優雅さでお辞儀した。
「皆さまのご親切なお招きをお受けすることは、私にとって大きな喜びです」と彼は言った。「オズの国のどこを探しても、これほど気の合う一行に出会えるとは思えませんから。」
「それは本当です」とパンプキンヘッドは認めた。「私たちはハエと蜂蜜くらい相性がいいのです。」
「しかし――詮索がましく聞こえるならお許しください――皆さまはかなり、その、ええと! かなり普通ではないのではありませんか?」ウォグルバグは、隠しきれない興味でひとりひとりを見ながら尋ねた。
「君自身ほどではない」とかかしは答えた。「人生におけるあらゆるものは、それに慣れるまでは普通でないのだ。」
「なんと稀有な哲学でしょう!」ウォグルバグは感嘆して叫んだ。
「そうだ。今日は私の脳がよく働いている」とかかしは、誇らしげな響きを声にのせて認めた。
「では、皆さまが十分に休み、元気を取り戻されたのであれば、エメラルドシティへ向けて歩を進めましょう」と拡大された者が提案した。
「それができないんだ」とチップは言った。「ノコギリ馬が脚を折ったから、歩を進められない。それに新しい脚を作る木もこのあたりにはない。馬を置いていくわけにもいかないんだ。パンプキンヘッドは関節がこわばっているから、乗らなければならないし。」
「なんと不運なことでしょう!」ウォグルバグは叫んだ。それから一行を注意深く見渡して言った。
「パンプキンヘッドが乗るのであれば、彼を運ぶ馬の脚を作るために、彼の脚の一本を使えばよいのではありませんか? どちらも木でできているようにお見受けします。」
「いや、それこそ本物の賢さというものだ」とかかしは満足げに言った。「どうして私の脳がもっと早くそれを思いつかなかったのか不思議だ! 親愛なるニック、作業にかかってくれ。パンプキンヘッドの脚をノコギリ馬に取りつけるのだ。」
ジャックはこの考えを特に喜んだわけではなかった。だが、左脚をブリキの木こりに切断され、削られてノコギリ馬の左脚に合うようにされることには従った。ノコギリ馬もまた、この作業を特に喜んだわけではなかった。「解体されている」と呼んでずいぶん不平を言い、その後、新しい脚は立派なノコギリ馬にとって恥だと宣言した。
「口のきき方にはもう少し気をつけていただきたい」とパンプキンヘッドは鋭く言った。「どうか覚えておいてください。あなたがけなしているのは私の脚なのです。」
「忘れようにも忘れられない」とノコギリ馬は言い返した。「おまえの体のほかの部分と同じくらい、ひどく薄っぺらいからな。」
「薄っぺらい! 私が薄っぺらいですって!」ジャックは怒って叫んだ。「よくも私を薄っぺらいなどと言えますね?」
「おまえはびっくり箱の人形みたいにばかげた作りだからだ」と馬はあざけり、節くれだった目を意地悪くぎょろつかせた。「頭でさえまっすぐにとどまらず、自分が後ろを見ているのか前を見ているのかも、決してわからないではないか!」
「友よ、どうかけんかしないでくれ!」ブリキの木こりは心配そうに懇願した。「実のところ、われわれの誰ひとりとして批判を超えた存在ではない。だから互いの欠点を受け入れようではないか。」
「すばらしい提案です」とウォグルバグは賛同した。「金属の友よ、あなたはすばらしい心をお持ちに違いありません。」
「持っているとも」とニックは満足げに返した。「私の心は、私の中でまったく最良の部分だ。だが今は旅を始めよう。」
一行は片脚になったパンプキンヘッドをノコギリ馬に乗せ、座席に縄で縛りつけたので、絶対に落ちることはなかった。
それから、かかしの先導に従って、全員がエメラルドシティの方角へ進みはじめた。

—
老モンビ、魔法にふける
まもなく一行は、ノコギリ馬が足を引きずっていることに気づいた。新しい脚が、ほんの少し長すぎたのだ。そこで立ち止まらざるをえず、ブリキの木こりが斧でその脚を切り詰めた。すると木の馬は、前よりずっと楽そうに歩けるようになった。だがノコギリ馬は、まだ完全には満足していなかった。
「もう片方の脚を折っちまうなんて、情けないったらない!」と、ぶつぶつうなった。
「それどころか」と、横を歩いていたウォグルバグ大博士が、軽やかに言った。「その事故は、たいへん幸運だったと考えるべきだね。馬というものは、乗り慣らされるまでは、たいして役に立たないものだから。」
「失礼ですが」とチップは少しむっとして言った。ノコギリ馬にも、自分の作ったジャックにも、彼は深い愛着を抱いていたのだ。「その冗談はつまらないし、つまらないうえに古くさいと言わせてもらいます。」
「それでも、冗談は冗談だ」とウォグルバグ大博士はきっぱり言い張った。「言葉遊びから生まれた冗談は、教養ある人々のあいだでは、きわめて上品なものと見なされている。」
「それって、どういう意味だ?」とパンプキンヘッドが、ぼんやりたずねた。
「つまりだね、親愛なる友よ」とウォグルバグ大博士は説明した。「われわれの言語には、二つの意味を持つ言葉が数多くある。そして、ある一つの言葉の二つの意味を同時に生かした冗談を言えるということは、その冗談を言った者が文化と洗練を備え、さらに言語を完全に使いこなしている人物であることを証明するのだ。」
「ぼくはそうは思わないな」とチップははっきり言った。「駄じゃれなんて、誰にでも言えるよ。」
「そうではない」とウォグルバグ大博士はつんと答えた。「それには高度な教育が必要なのだ。君は教育を受けているのかね、若い君?」
「特には」とチップは認めた。
「ならば、この問題を判断する資格はない。私はみずから徹底的に教育を受けており、駄じゃれは才能の発露だと断言する。たとえば、私がこのノコギリ馬に乗ったとしよう。すると彼は、単なる動物であるだけでなく、乗り物にもなる。なぜなら、そのとき彼は“馬と虫車”になるからだ。」
これを聞いて、かかしは息をのんだ。ブリキの木こりはぴたりと足を止め、ウォグルバグ大博士を責めるように見つめた。同時にノコギリ馬は、あざけるように大きく鼻を鳴らした。パンプキンヘッドでさえ、顔に刻まれた笑みをしかめ面に変えることができないものだから、その笑みを隠そうと手を上げた。
だがウォグルバグ大博士は、まるですばらしい名言でも口にしたかのように胸を張って歩き続けたので、かかしは言わずにいられなかった。
「親愛なる友よ、人は教育を受けすぎることもある、と聞いたことがある。私は脳というものを、それがどのように配置され分類されていようと大いに尊敬しているが、君の脳は少々こんがらがっているのではないかと疑いはじめている。いずれにしても、われわれと一緒にいるあいだは、その優れた教育をどうか控えめにしていただきたい。」
「わたしたちは、あまり細かいことは気にしない」とブリキの木こりも加えた。「それに、たいへん心のやさしい者たちだ。だが、もし君の優れた教養がまた漏れ出したら――」彼は文を最後まで言わなかったが、輝く斧をあまりにも不用意にくるりと回したので、ウォグルバグ大博士はおびえた顔になり、安全な距離まで身を引いた。
ほかの者たちは黙って進み、すばらしく拡大されたその者は、しばらく深く考え込んだあと、しおらしい声で言った。
「自制するよう努めよう。」
「それだけで十分だ」とかかしはにこやかに答えた。こうして一行にはめでたく機嫌のよさが戻り、旅を続けた。
ふたたびチップを休ませるために足を止めたとき――疲れるように見えるのは少年だけだった――ブリキの木こりは、草原に小さな丸い穴がたくさんあるのに気づいた。
「ここは野ねずみたちの村に違いない」と彼はかかしに言った。「昔の友人、野ねずみの女王がこの近くにいるだろうか。」
「もしおいでなら、われわれに大いに力を貸してくださるかもしれない」と、ひらめきに打たれたかかしが答えた。「親愛なるニック、呼んでみてくれないか。」
そこでブリキの木こりは、首にかけていた銀の笛を鋭く吹いた。するとまもなく、近くの穴から小さな灰色のねずみがひょいと飛び出し、少しも恐れずに彼らのほうへ進んできた。ブリキの木こりはかつてその命を救ったことがあり、野ねずみの女王は彼が信頼に足る相手だと知っていたのである。
「ごきげんよう、女王陛下」とニックはねずみに丁重に語りかけた。「お元気でお過ごしのことと存じます。」
「ありがとう、とても元気です」と女王は、すまし顔で答え、後ろ足で立ち上がって頭の小さな金の冠を見せた。「昔なじみの友人たちの助けになることがあるかしら?」
「大いにあります」とかかしは勢い込んで答えた。「どうかお願いです。あなたの臣下を十二匹ほど、私と一緒にエメラルドシティへ連れていかせてください。」
「その子たちは、何か傷つけられることになりますか?」と女王は不安そうにたずねた。
「そうは思いません」とかかしは答えた。「私は彼らを、この体に詰まっている藁の中に隠して運びます。そして私が上着のボタンを外して合図を出したら、彼らはただ飛び出して、できるかぎり速く家へ駆け帰ればよいのです。そうしてくれれば、反乱軍に奪われた私の王座を取り戻す助けになります。」
「それなら」と女王は言った。「あなたの願いを断るわけにはいきません。準備ができたら、私の臣下の中でも特に賢い者を十二匹、呼びましょう。」
「準備は今できています」とかかしは答えた。そして地面にぺたりと横になり、上着のボタンを外して、体に詰め込まれた藁のかたまりを見せた。
女王が小さく甲高い声で呼びかけると、たちまち十二匹のかわいらしい野ねずみが穴から姿を現し、命令を待って支配者の前に並んだ。

女王が彼らに何を言ったのか、旅人たちの誰にもわからなかった。ねずみの言葉だったからだ。だが野ねずみたちはためらわず従い、一匹ずつかかしのもとへ走っていって、その胸の藁の中に身を隠した。
十二匹すべてがそうして隠れると、かかしは上着のボタンをしっかり留め、それから立ち上がり、女王の親切に礼を述べた。
「もう一つ、わたしたちのためにしていただけることがあるかもしれません」とブリキの木こりが言った。「先に走って、エメラルドシティへの道を示していただきたいのです。どうやら、何者かがわたしたちの到着を妨げようとしているようですから。」
「喜んでそうしましょう」と女王は答えた。「準備はいいですか?」
ブリキの木こりはチップを見た。
「休めたよ」と少年は言った。「出発しよう。」
そこで一行は旅を再開した。小さな灰色の野ねずみの女王がすばやく先へ走り、旅人たちが近づくまで立ち止まり、そしてまた矢のように駆け出していった。
この確かな案内役がいなければ、かかしと仲間たちは、エメラルドシティにたどり着けなかったかもしれない。老モンビの術によって、行く手には多くの障害が投げかけられたからだ。しかし、その障害はどれ一つとして本当に存在してはいなかった。どれも巧妙に作られたまやかしだったのだ。行く手をふさごうとする激流の岸辺に来ても、小さな女王はまっすぐ進み、見せかけの洪水を無事に通り抜けた。旅人たちもそのあとに続いたが、一滴の水にも触れなかった。
また、花崗岩の高い壁が頭上高くそびえ立ち、進行を阻んだ。だが灰色の野ねずみはそれをまっすぐ通り抜け、ほかの者たちも同じようにした。通り過ぎると、壁は霧のように溶けて消えた。
その後、チップを休ませるために少し立ち止まったとき、彼らの足もとから四十本もの道が、四十の異なる方向へ枝分かれしているのが見えた。やがてその四十本の道は、巨大な車輪のように、こちらへ、ついであちらへとぐるぐる回りはじめ、彼らの視界を完全に混乱させた。
だが女王は「ついてきて」と呼びかけ、一直線に駆け出した。一行が数歩進むと、回転する小道は消え失せ、二度と見えなくなった。
モンビの最後の仕掛けは、何よりも恐ろしかった。彼女はぱちぱち音を立てる炎の壁を草原の上へ送り込み、一行を焼き尽くそうとしたのだ。初めてかかしは恐怖に駆られ、逃げ出そうと向きを変えた。
「あの火が私に届いたら、たちまちおしまいだ!」と、藁がかさかさ鳴るほど震えながら言った。「私が出会ったものの中で、いちばん危険だ。」
「おれも逃げるぞ!」とノコギリ馬も叫び、向きを変えて動揺のあまり跳ね回った。「おれの木はからからに乾いてるから、焚きつけみたいに燃えちまう。」
「火って、かぼちゃにも危険なのか?」とジャックが恐る恐るたずねた。
「君はタルトみたいに焼かれる――そして私もだ!」とウォグルバグ大博士は答え、もっと速く走れるように四つんばいになった。
だがブリキの木こりは火を恐れなかったので、いくつかの分別ある言葉で大混乱を食い止めた。
「野ねずみを見てください!」と彼は叫んだ。「火は女王を少しも焼いていません。実のところ、あれは火などではなく、ただのまやかしです。」
実際、小さな女王が迫り来る炎の中を平然と歩いていくのを見て、一行の全員が勇気を取り戻し、彼女に続いた。焦げ跡一つつかなかった。
「これは確かに、きわめて異常な冒険だ」とウォグルバグ大博士は、ひどく驚いて言った。「ノウイットオール教授が校舎で教えていた自然法則を、すべて覆してしまうのだから。」
「もちろんそうだ」とかかしは賢そうに言った。「魔法はすべて不自然なものだ。だからこそ恐れ、避けるべきなのだ。だが前方にエメラルドシティの門が見える。ということは、われわれを妨げているように見えた魔法の障害は、これで全部乗り越えたと考えてよさそうだ。」
実際、都の城壁ははっきりと見えていた。忠実に案内してくれた野ねずみの女王は、別れを告げるために近くへやってきた。
「陛下の親切なお力添えに、心から感謝いたします」とブリキの木こりは、その美しい小さな生き物の前で一礼した。
「友だちの役に立てるのは、いつでもうれしいことです」と女王は答え、次の瞬間には家へ帰る道を矢のように駆け去っていた。

—
女王の囚人たち
エメラルドシティの門に近づくと、旅人たちはそこを反乱軍の少女二人が守っているのを見つけた。少女たちは髪から編み針を抜き取り、近づいてくる最初の者を突き刺すぞと脅して、入城を阻もうとした。
だがブリキの木こりは恐れなかった。
「最悪でも、わたしの美しいニッケルめっきに傷をつけるくらいでしょう」と彼は言った。「しかし、その“最悪”も起こりません。こんなばかげた兵士たちなら、わたしがたやすく怖がらせられると思います。みなさん、ぴったりついてきてください!」
それから斧を左右へ大きく円を描くように振り回しながら門へ進み、ほかの者たちもためらわずそのあとに続いた。
少女たちは、抵抗などまったく予想していなかったので、きらめく斧が振り回されるのにおびえ、悲鳴を上げて都の中へ逃げ込んだ。そのため旅人たちは無事に門を通り抜け、広い通りの緑の大理石の舗道を、王宮へ向かって進んでいった。
「この調子なら、陛下はじきにまた王座にお戻りです」とブリキの木こりは、門番をたやすく打ち負かしたことに笑いながら言った。
「ありがとう、友よニック」とかかしは感謝をこめて答えた。「君のやさしい心と鋭い斧に、逆らえるものは何もない。」
家々の列を通り過ぎると、開いた扉の中に、男たちが掃き掃除やほこり払い、皿洗いをしているのが見えた。一方、女たちはいくつもの輪になって座り、おしゃべりしたり笑ったりしていた。
「何が起こったのだ?」とかかしは、もじゃもじゃのひげを生やし、エプロンをつけて歩道で乳母車を押している、悲しげな男にたずねた。
「なにって、革命があったんですよ。陛下ならよくご存じのはずでしょう」と男は答えた。「陛下がお出かけになってから、女たちが自分たちの好きなように物事を動かしているんです。戻ってきて秩序を取り戻してくださる気になったのはありがたい。家事をして子どもの世話をするせいで、エメラルドシティの男という男が力を使い果たしていますから。」
「ふむ!」とかかしは考え深げに言った。「君の言うほど大変な仕事なら、女たちはどうしてあんなにたやすくこなしていたのだ?」
「本当にわかりません」と男は深いため息をついて答えた。「たぶん、女たちは鋳鉄でできているのでしょう。」
通りを進むあいだ、彼らの行く手を阻む動きはまったくなかった。女たちの何人かは、おしゃべりを少しだけやめて、仲間たちに好奇の目を向けたが、すぐに笑うか鼻であしらうかして顔をそむけ、またおしゃべりに戻った。反乱軍の少女たち数人と出くわしたときも、その兵士たちは驚いたりおびえたりするどころか、ただ道をあけ、抗議もせずに一行を通した。
この様子に、かかしは不安になった。
「われわれは罠に向かって歩いているのではないか」と彼は言った。
「ばかな!」とニック・チョッパーは自信たっぷりに答えた。「あの愚かな者たちは、もう降参しているのです!」
だがかかしは疑わしげに首を振り、チップが言った。

「何もかも簡単すぎるよ。前方に気をつけたほうがいい。」
「そうしよう」と陛下は答えた。何の妨げも受けず、彼らは王宮に着き、大理石の階段を上った。その階段はかつてはエメラルドで厚く飾られていたが、今では反乱軍によって宝石が容赦なく台座から引きはがされ、小さな穴だらけになっていた。それでも、ここまで反乱者は一人として行く手を遮らなかった。
アーチの廊下を通り、壮麗な玉座の間へと、ブリキの木こりとその仲間たちは進んだ。そして緑の絹のカーテンが背後で落ちると、彼らは奇妙な光景を目にした。
きらめく玉座にはジンジャー将軍が腰かけ、かかしの二番目によい王冠を頭にのせ、右手には王笏を持っていた。膝の上にはキャラメルの箱が置かれ、彼女はそれを食べていた。少女は王宮の中で、すっかりくつろいでいるように見えた。
かかしは一歩前へ出て彼女と向かい合った。ブリキの木こりは斧にもたれかかり、ほかの者たちは陛下の後ろに半円を作った。
「よくも私の玉座に座れたものだな?」とかかしは、その侵入者を厳しく見すえて詰問した。「自分が反逆罪を犯していることを知らないのか? 反逆には法があるのだぞ?」
「玉座は、それを奪う力のある者のものよ」とジンジャーは、もう一つキャラメルをゆっくり食べながら答えた。「見てのとおり、私はそれを奪った。だから今この瞬間は私が女王。そして私に逆らう者はすべて反逆罪を犯したことになり、あなたがたった今口にしたその法によって罰せられなければならないの。」
この見方に、かかしは困惑した。
「どうなのだ、友よニック?」と彼はブリキの木こりに向き直ってたずねた。
「そうですね、法の話となると、わたしには何も言えません」とその人物は答えた。「法律というものは、そもそも理解されるために作られたものではありませんし、理解しようとするのは愚かなことですから。」
「では、われわれはどうすればよいのだ?」とかかしはうろたえてたずねた。
「女王と結婚なさってはどうです? そうすれば、お二人で統治できます」とウォグルバグ大博士が提案した。
ジンジャーは虫をぎろりとにらみつけた。「お母さんのところへ帰してやればいいのに。そこが彼女のいるべき場所だろ」とジャック・パンプキンヘッドが言った。
ジンジャーは顔をしかめた。
「言うことを聞いて、おとなしくすると約束するまで、戸棚に閉じ込めておけばいいんじゃない?」とチップがたずねた。ジンジャーの唇が軽蔑にゆがんだ。
「それか、よく揺すぶってやれ!」とノコギリ馬が付け加えた。
「いいえ」とブリキの木こりは言った。「哀れな少女には、やさしく接しなければなりません。持てるだけの宝石をすべて与えて、幸せに満足して出ていってもらいましょう。」

これを聞いて女王ジンジャーは声を上げて笑い、次の瞬間、合図でもするように、美しい手を三度打ち鳴らした。
「あなたたちって、本当にばかげた生き物ね」と彼女は言った。「でも、もうあなたたちのくだらない話には飽きたし、これ以上かまっている暇もないわ。」
王と友人たちが、この生意気な言葉を驚いて聞いていると、ぎょっとすることが起こった。ブリキの木こりの斧が背後にいた何者かにひったくられ、彼は武器を失って無力になってしまったのだ。同じ瞬間、そのけなげな一団の耳に笑い声がどっと響いた。どこから聞こえるのかと振り向くと、彼らは反乱軍に取り囲まれており、少女たちは両手にきらめく編み針を持っていた。玉座の間全体が反乱者でいっぱいになったように見え、かかしと仲間たちは自分たちが囚人になったことを悟った。
「女の知恵に逆らうのがどれほど愚かなことか、わかったでしょう」とジンジャーは楽しげに言った。「そしてこの出来事は、私のほうがかかしよりエメラルドシティを治めるのにふさわしいことを証明しているだけよ。安心して、あなたたちに恨みはないわ。でも、将来私にとって面倒な存在になると困るから、全員を破壊するよう命じます。つまり、老モンビのものだから彼女の管理に戻さなければならない少年を除いてね。あなたたちの残りは人間ではないから、壊しても悪いことにはならない。ノコギリ馬とパンプキンヘッドの体は、焚きつけ用に細かく割らせるわ。かぼちゃはタルトにしてもらう。かかしはたき火を始めるのにちょうどいいし、ブリキの男は小さく切り刻んでヤギに食べさせればいい。この巨大なウォグルバグについては――」
「すばらしく拡大された、とお願いしたい!」と虫が割り込んだ。
「料理人に頼んで、あなたでグリーンタートルスープ[訳注:本来は海亀を使う高級スープ]を作らせようかしら」と女王は思案するように続けた。
ウォグルバグ大博士は身震いした。
「それがだめなら、煮込んでたっぷり香辛料をきかせたハンガリー風グヤーシュにしてもいいわね」と彼女は残酷に付け加えた。
この絶滅計画はあまりにも恐ろしく、囚人たちは恐怖におののいて互いを見つめた。ただ一人、かかしだけは絶望に屈しなかった。彼は女王の前に静かに立ち、逃げ道を見つけようと懸命に考えながら、額に深いしわを寄せていた。
そうしているうちに、胸の中の藁がかすかに動くのを感じた。たちまち彼の表情は悲しみから喜びへと変わり、片手を上げてすばやく上着の前を外した。
この動作は、周囲に群がる少女たちに見逃されなかった。だが彼が何をしているのか、誰も気づかなかった。小さな灰色のねずみが胸元から床へ飛び下り、反乱軍の足のあいだを走り抜けていくまでは。すぐにもう一匹が続き、さらに一匹、また一匹と、次々に飛び出した。すると突然、反乱軍から恐怖の悲鳴があがり、その声はどんなに勇敢な心も震え上がらせるほどだった。逃走は雪崩のような退却となり、その退却はたちまち恐慌へと変わった。
驚いたねずみたちが部屋の中をめちゃくちゃに走り回るあいだ、かかしが目にできたのは、少女たちが宮殿から姿を消すときの、渦巻くスカートとちらちら動く足だけだった。彼女たちは逃げようと半狂乱になり、互いを押し合い、ひしめき合っていた。
女王は最初の警報を聞くや、玉座のクッションの上に立ち上がり、つま先で狂ったように踊りはじめた。そこへ一匹のねずみがクッションを駆け上がったので、哀れなジンジャーはおびえきって跳び上がり、かかしの頭上をきれいに飛び越えてアーチの通路へ逃げ込んだ。そして都の門にたどり着くまで、その狂奔を一度も止めなかった。
こうして、説明するよりも短い時間のうちに、玉座の間には、かかしとその友人たちを除いて誰もいなくなった。ウォグルバグ大博士は深い安堵のため息をつき、叫んだ。
「ありがたい、助かった!」
「ひとまずは、そうです」とブリキの木こりは答えた。「ですが敵はすぐ戻ってくるでしょう。恐らく。」
「宮殿のすべての入り口にかんぬきをかけよう!」とかかしは言った。「そうすれば、どうするのが最善か考える時間ができる。」
そこで、まだノコギリ馬にしっかり縛りつけられているジャック・パンプキンヘッドを除く全員が、王宮のさまざまな入り口へ走り、重い扉を閉め、かんぬきと鍵をしっかりかけた。それから、反乱軍が数日では障壁を打ち破れないとわかると、冒険者たちは軍議のために、もう一度玉座の間へ集まった。

—
かかし、考える時間を取る
「私にはこう思える」と、全員がふたたび玉座の間に集まると、かかしが話しはじめた。「ジンジャーという少女が女王だと主張するのは、まったく正しい。そして彼女が正しいなら、私が間違っていることになり、われわれが彼女の宮殿を占拠している筋合いはない。」
「だが、あの娘が来るまではあなたが王だった」とウォグルバグ大博士は、両手をポケットに入れて気取って歩き回りながら言った。「だから私には、割り込んできたのはあなたではなく彼女のほうに思える。」
「特に、たった今ぼくたちが彼女を打ち負かして追い払ったんだから」とパンプキンヘッドも、自分の顔をかかしのほうへ向けるために両手を上げながら付け加えた。
「本当に彼女を打ち負かしたのかね?」とかかしは静かにたずねた。「窓の外を見て、何が見えるか教えてくれ。」
チップは窓へ走り、外をのぞいた。
「宮殿は少女兵士の二重の列で囲まれてる」と彼は告げた。
「そうだと思った」とかかしは答えた。「ねずみたちが彼女たちを宮殿から怖がらせて追い出す前と同じく、われわれはまぎれもなく彼女たちの囚人だ。」
「わが友の言うとおりです」とニック・チョッパーは言った。彼はセーム革で胸を磨いていた。「ジンジャーは依然として女王で、わたしたちはその囚人です。」
「でも、彼女がここへ入ってこられないといいんだけど」とパンプキンヘッドは恐怖に身震いしながら叫んだ。「ぼくをタルトにすると脅したんだもの。」
「心配はいりません」とブリキの木こりは言った。「大した問題にはなりません。ここに閉じこもっていても、いずれあなたは傷んでしまうのですから。腐った知性よりは、立派なタルトのほうがずっと見事です。」
「まったくそのとおりだ」とかかしも同意した。
「ああ、なんてことだ!」とジャックはうめいた。「ぼくの運命はなんと不幸なのだろう! ああ、親愛なる父よ、なぜぼくをブリキで――せめて藁で――作ってくれなかったんだ。そうすれば、いつまでももったのに。」
「ばか言うな!」とチップは憤然と言い返した。「そもそも作ってもらえただけで、ありがたいと思うべきだよ。」
それから彼は考え込むように付け加えた。「何だって、いつかは終わりが来るんだ。」
「だが、どうか思い出していただきたい」とウォグルバグ大博士が口を挟んだ。突き出た丸い目には苦悩の色が浮かんでいた。「あの恐ろしい女王ジンジャーは、私をグヤーシュにすると言い出したのだ――私を! 広い広い世界でただ一匹の、すばらしく拡大され、徹底的に教育されたウォグルバグであるこの私を!」
「なかなかすばらしい思いつきだったと思う」とかかしは、感心したように言った。
「スープにしたほうがよいとは思いませんか?」とブリキの木こりが友人のほうへ向き直ってたずねた。
「うむ、もしかすると」とかかしは認めた。
ウォグルバグ大博士はうめいた。
「心の目に見える」と彼は悲しげに言った。「親愛なる仲間、ブリキの木こりが細かく刻まれてヤギに食べられ、ノコギリ馬とジャック・パンプキンヘッドの体で作ったたき火の上で私のスープが煮え、女王ジンジャーが友人かかしを炎にくべながら、私がぐつぐつ煮られるのを見守っている光景が!」

この病的な想像は一行全体に暗い影を落とし、皆を落ち着かず不安にさせた。
「しばらくは起こりませんよ」とブリキの木こりは、明るく話そうと努めて言った。「ジンジャーが扉を破る算段をつけるまでは、わたしたちは彼女を宮殿の外に締め出しておけますから。」
「そのあいだに、ぼくは餓死するかもしれない。ウォグルバグ大博士だってそうだ」とチップが告げた。
「私について言えば」とウォグルバグ大博士は言った。「ジャック・パンプキンヘッドを食べれば、しばらく生きられると思う。かぼちゃを食物として好むわけではないが、多少の栄養はあるはずだし、ジャックの頭は大きくてよく太っている。」
「なんという心ないことを!」とブリキの木こりは、ひどく衝撃を受けて叫んだ。「お尋ねしますが、わたしたちは食人族なのですか? それとも誠実な友人同士なのですか?」
「この宮殿に閉じこもっているわけにはいかないことは、私にははっきり見える」とかかしはきっぱり言った。「だから、この陰気な話は終わりにして、逃げ出す手段を探ろう。」
この提案を聞くと、全員が熱心に玉座のまわりへ集まった。そこにはかかしが座っていた。チップが腰掛けに座ると、ポケットから胡椒入れが落ち、床を転がった。
「これは何です?」とニック・チョッパーは、その箱を拾い上げながらたずねた。
「気をつけて!」と少年は叫んだ。「それはぼくの生命の粉だよ。こぼさないで、もうほとんど残っていないんだから。」
「生命の粉とは何だね?」とかかしがたずねると、チップはその箱を慎重にポケットへ戻した。
「老モンビが、ねじくれた魔法使いから手に入れた魔法の粉だよ」と少年は説明した。「それでジャックを生き返らせたんだ。そのあと、ぼくがそれを使ってノコギリ馬を生き返らせた。振りかければ何でも生きるんだと思う。でも、あと一回分くらいしかない。」
「それなら、たいへん貴重なものです」とブリキの木こりは言った。
「実にそうだ」とかかしも同意した。「それはわれわれの困難から逃れるための、最良の手段になるかもしれない。私は数分、考えることにしよう。そこで友よチップ、ナイフを出して、この重い冠を私の額から切り離してくれないか。」
チップはすぐに、かかしの頭に冠を縫いつけていた糸を切った。エメラルドシティの元君主は、ほっとため息をつきながらそれを外し、玉座のそばの掛け釘にかけた。


「これが、王であったことをしのぶ最後の品だ」と彼は言った。「そして手放せてうれしい。この都の先代の王はパストリア王という名で、その冠をオズの魔法使いに奪われ、魔法使いが私に譲った。今は少女ジンジャーがそれを求めている。彼女の頭痛の種にならないことを、心から願うよ。」
「やさしいお考えです。大いに感服します」とブリキの木こりは、賛同するようにうなずいた。
「では、静かに考えにふけることにしよう」とかかしは続け、玉座にもたれた。
ほかの者たちは、彼を邪魔しないように、できるかぎり静かにじっとしていた。皆、かかしの並外れた脳に大きな信頼を寄せていたからだ。
そして、不安げに見守る者たちには実に長い時間に思えたあと、考える者は身を起こし、友人たちに向かって、いかにもおどけた表情を浮かべて言った。
「今日は私の脳が見事に働いている。実に誇らしい。さて、聞いてくれ! 宮殿の扉から逃げようとすれば、確実に捕まる。そして地面を通って逃げることもできないとなれば、ほかにできることは一つだけだ。空を通って逃げるのだ!」
彼はこの言葉の効果を見るために言葉を切った。だが聞いている者たちは皆、困惑し、納得していないようだった。
「オズの魔法使いは気球で逃げた」と彼は続けた。「もちろんわれわれは気球の作り方を知らない。だが空を飛べるものなら、どんなものでもわれわれをたやすく運べるはずだ。そこで私は、熟練の機械職人である友人ブリキの木こりに、丈夫な翼を備えた何らかの機械を作ってもらうことを提案する。そして友人チップが、そのモノを魔法の粉で生き返らせるのだ。」
「ブラボー!」とニック・チョッパーが叫んだ。
「なんて見事な脳だろう!」とジャックがつぶやいた。
「実にかなり賢明だ!」と教育あるウォグルバグ大博士が言った。
「できると思う」とチップは断言した。「つまり、ブリキの木こりがそのモノを作れるならね。」
「最善を尽くします」とニックは陽気に言った。「実を言えば、わたしは試みたことで失敗することはあまりありません。ただし、そのモノは宮殿の屋根の上で作らねばなりません。そうすれば、楽に空へ上がれますから。」


「もちろんだ」とかかしは言った。
「では、宮殿じゅうを探しましょう」とブリキの木こりは続けた。「見つけられる材料をすべて屋根へ運んでください。そこでわたしが作業を始めます。」
「ただ、その前に」とパンプキンヘッドが言った。「どうか、この馬からぼくを解放して、歩けるようにもう一本脚を作ってください。今の状態では、ぼくは自分にも誰にも役に立ちません。」
そこでブリキの木こりは、マホガニーのセンターテーブルを斧でばらばらにし、その脚の一本を、ジャック・パンプキンヘッドの体に取りつけた。それは美しい彫刻の施された脚で、ジャックはその獲得物をたいへん誇らしく思った。
「妙な気分だ」と、ブリキの木こりの作業を見守りながら彼は言った。「ぼくの左脚が、ぼくの中でいちばん優雅でしっかりした部分になるなんて。」
「それは君が並外れた存在であることを証明している」とかかしは答えた。「そして私は、この世で考慮に値する人々は、並外れた者だけだと確信している。ありふれた人々は木の葉のようなもので、誰にも気づかれずに生き、死んでいくのだ。」
「哲学者らしいお言葉!」とウォグルバグ大博士は叫び、ジャックを立たせるためにブリキの木こりを手伝った。
「今はどんな感じ?」とチップは、パンプキンヘッドが新しい脚を試すためにどしどし歩き回るのを見ながらたずねた。
「新品同様だ」とジャックはうれしそうに答えた。「そしてみんなの脱出を手伝う準備も万端だ。」
「では、仕事にかかろう」とかかしは実務的な口調で言った。
こうして、囚われの身を終わらせることにつながりそうなことなら何でもうれしく思いながら、友人たちは空飛ぶ機械の製作に使えそうな材料を探しに、宮殿の中へ散っていった。

—
ガンプの驚くべき飛行
冒険者たちが屋根の上にふたたび集まると、一行のさまざまな面々が、実に奇妙な品々を選び出してきたことがわかった。何が必要なのか、誰にもはっきりした考えはなかったようだが、それぞれ何かしら持ってきていた。
ウォグルバグ大博士は、大広間の暖炉棚の上に飾られていたガンプの頭を持ってきていた。大きく広がる角がついたその頭を、虫は細心の注意と、さらに大きな苦労をもって階段を上り、屋根まで運んだのだ。このガンプはヘラジカの頭に似ていたが、鼻だけは生意気そうに上を向き、あごには雄ヤギのようなひげが生えていた。なぜウォグルバグ大博士がこの品を選んだのか、彼自身にも説明できなかった。ただ、それが好奇心をそそったから、というほかなかった。
チップはノコギリ馬の助けを借りて、大きな布張りのソファを屋根まで運んだ。それは背も両端も高い昔風の家具で、たいへん重かった。重さの大部分をノコギリ馬の背に預けても、少年はようやく不格好なソファを屋根にどさりと下ろしたとき、息が切れていた。

パンプキンヘッドは、最初に目に入ったほうきを持ってきた。かかしは中庭から持ってきた物干し綱やロープの巻きを抱えて到着したが、階段を上る途中で、垂れ下がったロープの端にすっかり絡まってしまい、自分も荷物も一緒くたになって屋根の上へ転がり込んだ。チップが助けなければ、そのまま屋根から転がり落ちていたかもしれない。
ブリキの木こりが最後に現れた。彼も中庭へ行っていた。そこにはエメラルドシティの住人すべての誇りである巨大なヤシの木があり、彼はそこから大きく広がった葉を四枚切り取ってきたのだ。
「親愛なるニック!」と、友人のしたことを見たかかしは叫んだ。「君はエメラルドシティで人が犯しうる最大の罪を犯してしまった。私の記憶が正しければ、王室のヤシの木から葉を切り落とした罰は、七回殺されたうえで終身刑になることだ。」
「もうどうにもなりません」とブリキの木こりは答え、大きな葉を屋根の上に投げ出した。「ですが、それもまた、わたしたちが逃げなければならない理由の一つになるかもしれません。さて、わたしが使える材料を、みなさんが何を見つけてきたのか見てみましょう。」
屋根の上に散らかった雑多な材料の山に、多くの疑わしげな視線が向けられた。最後にかかしが首を振って言った。
「さて、友人ニックがこのがらくたの山から、空を飛んでわれわれを安全な場所まで運ぶモノを作り出せるなら、私は彼を、思っていた以上の機械職人だと認めよう。」
だがブリキの木こりは、最初のうちは自分の力をまったく確信しているようには見えなかった。セーム革で額を熱心に磨いたあとで、ようやくその仕事に取りかかる決心をした。
「この機械にまず必要なのは」と彼は言った。「一行全員を運べるだけの大きな胴体です。このソファが、わたしたちの持っているものの中でいちばん大きく、胴体として使えるでしょう。ですが、もし機械が横に傾けば、わたしたちはみな滑り落ちて地面へ落ちてしまいます。」
「ソファを二つ使えば?」とチップがたずねた。「下に、これと同じものがもう一つあるよ。」
「たいへん賢明な提案です」とブリキの木こりは叫んだ。「すぐにもう一つのソファを持ってきてください。」
そこでチップとノコギリ馬は大変な苦労をして、二つ目のソファを屋根まで運び上げた。そして二つを縁と縁で合わせると、背と端が座席のまわり全体を守る胸壁のようになった。
「見事だ!」とかかしは叫んだ。「この居心地のよい巣の中なら、実に気楽に乗っていられる。」
二つのソファはロープと物干し綱でしっかり結び合わされ、それからニック・チョッパーは一方の端にガンプの頭を取りつけた。
「これで、そのモノのどちらが前かがわかります」と彼はその考えに大いに満足して言った。「そして実際、じっくり眺めれば、ガンプは船首像としてたいへん見栄えがよい。この大きなヤシの葉は、わたしが命を七回危険にさらして手に入れたものですが、翼として役立ってもらわねばなりません。」
「強さは十分かな?」と少年がたずねた。
「手に入るものの中では、これがいちばん丈夫です」と木こりは答えた。「そしてそのモノの胴体に対して釣り合いが取れていないとはいえ、わたしたちはあまり選り好みできる立場ではありません。」
そうして彼は、ソファの両側に二枚ずつヤシの葉を取りつけた。
ウォグルバグ大博士は、かなり感心した様子で言った。
「そのモノはこれで完成だ。あとは生き返らせるだけである。」
「ちょっと待って!」とジャックが叫んだ。「ぼくのほうきは使わないのかい?」
「何のために?」とかかしがたずねた。
「後ろの端に取りつければ、尻尾になるじゃないか」とパンプキンヘッドは答えた。「尻尾なしで、そのモノが完成したなんて言うつもりじゃないだろうね。」
「ふむ!」とブリキの木こりは言った。「尻尾の使い道はわかりません。わたしたちは獣や魚や鳥をまねようとしているわけではない。そのモノに求めるのは、空を通ってわたしたちを運ぶことだけです。」
「もしかすると、そのモノが生き返ったら、尻尾を舵に使えるかもしれない」とかかしが提案した。「空を飛ぶなら、鳥と似ていないこともない。そして私の見たところ、鳥はみな尻尾を持っていて、飛ぶときにそれを舵として使っている。」
「よろしい」とニックは答えた。「ほうきを尻尾に使いましょう」そしてそれをソファの胴体の後ろ端にしっかり取りつけた。
チップはポケットから胡椒入れを取り出した。
「そのモノはずいぶん大きいな」と彼は不安そうに言った。「残りの粉で全部を生き返らせられるかどうかわからない。でも、できるだけ行き渡るようにするよ。」
「翼にいちばん多くかけてください」とニック・チョッパーは言った。「できるだけ強くしなければなりませんから。」
「頭も忘れないように!」とウォグルバグ大博士が叫んだ。
「尻尾も!」とジャック・パンプキンヘッドが付け加えた。
「静かにしてよ」とチップは神経質に言った。「ちゃんとしたやり方で魔法の呪文をかける余裕をくれなきゃ。」
彼はたいへん慎重に、そのモノに貴重な粉を振りかけはじめた。まず四枚の翼それぞれに薄く粉をかぶせ、ついでソファに振りかけ、ほうきにもわずかに粉をまとわせた。
「頭! 頭だ! お願いだから、頭を忘れないでくれ!」とウォグルバグ大博士が興奮して叫んだ。
「粉はもう少ししか残ってない」とチップは箱の中を見て告げた。「それにぼくには、頭よりソファの脚を生き返らせるほうが大事な気がする。」
「そうではない」とかかしは判断した。「何ものにも、それを導く頭が必要だ。そしてこの生き物は歩くのではなく飛ぶのだから、脚が生きているかどうかは実際のところ重要ではない。」
そこでチップはこの判断に従い、残りの粉をガンプの頭に振りかけた。
「さあ」と彼は言った。「ぼくが呪文をかけるあいだ、静かにしていて!」
老モンビが魔法の言葉を唱えるのを聞いていたし、ノコギリ馬を生き返らせることにも成功していたので、チップは少しもためらわず、三つの神秘的な言葉を口にした。それぞれに、手の独特な身ぶりを添えて。
それは厳かで、胸を打つ儀式だった。
呪文を唱え終わると、そのモノは巨大な全身をぶるりと震わせ、ガンプはその動物におなじみの甲高い叫び声を上げた。それから四枚の翼が激しくばたばたしはじめた。


チップはなんとか煙突をつかんだ。そうしなければ、翼が起こしたすさまじい風で屋根から吹き飛ばされていたところだった。かかしは体が軽いので、まるごと宙へ巻き上げられたが、幸運にもチップが片脚をつかんでしっかり押さえた。ウォグルバグ大博士は屋根にぺったり伏せて無事だった。ブリキの木こりはブリキの重みでしっかりその場に固定され、両腕でジャック・パンプキンヘッドを抱え込んで、なんとか助けた。ノコギリ馬は仰向けに倒れ、脚を空中でむなしくばたつかせていた。
そして今、全員が体勢を立て直そうともがいているあいだに、そのモノは屋根からゆっくり浮かび上がり、空へ昇っていった。
「おい! 戻ってこい!」とチップはおびえた声で叫んだ。片手で煙突を、もう片手でかかしをつかんでいた。「今すぐ戻ってこい、命令だ!」
そのとき、脚ではなくそのモノの頭を生き返らせたかかしの知恵が、疑いようもなく証明された。すでに空高く上がっていたガンプは、チップの命令で頭を向け、やがてぐるりと旋回して王宮の屋根を見下ろせる位置になった。
「戻ってこい!」と少年はもう一度叫んだ。
ガンプは従った。四枚の翼をゆっくり優雅に空中で動かし、そのモノは再び屋根に降り立って静かになった。

—
ジャックドーの巣の中で
「これは」とガンプは、巨大な体の大きさにはまるで釣り合わない、きいきいした声で言った。「私が聞いたことのある中で、もっとも目新しい経験だ。はっきり覚えている最後のことは、森の中を歩き、大きな音を聞いたことだ。おそらくそのとき何かが私を殺したのだろうし、それで私の終わりであるべきだった。ところが、私はここにいる。再び生きて、四枚の怪物じみた翼と、まともな動物や鳥なら所有するのを恥じて泣き出すとあえて言えるような体を持って。これはどういう意味なのだ? 私はガンプなのか、それともジャガーノート[訳注:巨大で制御不能な力を持つもののたとえ]なのか?」
その生き物は話しながら、あごひげをたいへんこっけいにぴくぴく動かした。
「君はただのモノだよ」とチップは答えた。「ガンプの頭がついたね。ぼくたちは君を作って生き返らせたんだ。ぼくたちが行きたいところへ、空を通って運んでもらうために。」
「たいへんよろしい!」とそのモノは言った。「私はガンプではないのだから、ガンプとしての誇りも独立心も持てない。ならば、何であれ君たちの召使いになるのも同じことだ。ただ一つの慰めは、私があまり丈夫な体質には見えず、奴隷状態で長生きしそうにないことだ。」
「どうか、そんなことは言わないでください!」とブリキの木こりは叫んだ。そのすばらしい心は、この悲しい言葉に強く揺さぶられた。「今日は気分がすぐれないのですか?」
「ああ、その点については」とガンプは答えた。「今日が私の存在の初日なので、気分がよいのか悪いのか判断できない。」
そして物思わしげに、ほうきの尻尾を左右へ振った。
「まあまあ!」とかかしは親切に言った。「どうか、もう少し明るくなって、与えられた人生を受け入れるよう努めてくれ。われわれはやさしい主人になるし、君の存在をできるだけ愉快なものにするよう努力する。われわれが望む場所ならどこへでも、空を通って運んでくれる気はあるかね?」
「もちろん」とガンプは答えた。「私は空を航行するほうを大いに好む。もし地上を旅して、自分と同じ種のものに出くわしたら、その恥ずかしさはひどいものになるだろうから!」
「それはよくわかります」とブリキの木こりは同情して言った。
「とはいえ」とそのモノは続けた。「ご主人たちをじっくり見渡してみると、私よりずっと芸術的に作られている者は、誰もいないように思える。」
「見かけは当てにならない」とウォグルバグ大博士は真剣に言った。「私はすばらしく拡大され、かつ徹底的に教育されている。」
「ほう!」とガンプは無関心につぶやいた。
「そして私の脳は、実に珍しい標本と見なされている」とかかしは誇らしげに付け加えた。
「なんとも奇妙な!」とガンプは言った。
「わたしはブリキでできてはいますが」と木こりは言った。「全世界で最も温かく、最も称賛すべき心を持っています。」
「それを聞いてうれしい」とガンプは軽く咳をして答えた。
「ぼくの笑顔は」とジャック・パンプキンヘッドは言った。「君が最大の注意を払うに値するものだ。いつも同じだから。」
「Semper idem[訳注:ラテン語で「常に同じ」]」とウォグルバグ大博士がもったいぶって説明した。ガンプは彼をじっと見つめた。
「そしておれは」とノコギリ馬は、気まずい沈黙を埋めるように宣言した。「そうならずにいられないから、ただただ目立っているだけだ。」
「かくも並外れたご主人たちにお会いできて、まことに誇りに思う」とガンプは軽い調子で言った。「もし私自身について、これほど完全な紹介を得られさえすれば、それだけで大いに満足なのだが。」
「それはいずれできるだろう」とかかしは言った。「『汝自身を知れ』というのは、なかなかの偉業とされていて、君より年長であるわれわれでさえ、それを完成させるのに何か月もかかった。だが今は」と彼は付け加え、ほかの者たちのほうを向いた。「乗り込んで旅立とう。」
「どこへ行くの?」とチップはソファの座席へよじ登り、パンプキンヘッドが続くのを手伝いながらたずねた。
「南の国には、善い魔女グリンダという、とてもすばらしい女王が治めている。彼女ならきっと喜んでわれわれを迎えてくれる」とかかしは、不器用にそのモノへ乗り込みながら言った。「彼女のところへ行って、助言を求めよう。」
「実に巧みな考えです」とニック・チョッパーは断言し、ウォグルバグ大博士を押し上げ、それからノコギリ馬をクッション席の後ろの端へ転がし込んだ。「わたしは善い魔女グリンダを知っています。きっと真の友になってくれると信じます。」
「みんな準備はいい?」と少年がたずねた。
「はい」とブリキの木こりが告げ、かかしの隣に腰を下ろした。
「じゃあ」とチップはガンプに話しかけた。「どうかぼくたちを南へ飛ばしてくれ。家や木を越えられる高さ以上には上がらないで。あまり高いと目が回るから。」
「承知した」とガンプは短く答えた。
それは四枚の巨大な翼をばたつかせ、ゆっくり空へ舞い上がった。それから、小さな冒険者一行が体を支えようとソファの背や側面にしがみつく中、ガンプは南へ向きを変え、すばやく、堂々と飛び去っていった。

「この高度から見る景観効果は、すばらしい」と教育あるウォグルバグ大博士が、進みながら評した。
「景色はどうでもよい」とかかしは言った。「しっかりつかまれ。さもないと転げ落ちるかもしれない。そのモノはかなり揺れるようだ。」
「もうすぐ暗くなるね」とチップは、太陽が地平線の低いところにあるのを見て言った。「朝まで待つべきだったのかもしれない。ガンプは夜にも飛べるのかな。」
「私もそれを考えていた」とガンプは静かに答えた。「ご覧のとおり、これは私にとって新しい経験なのだ。以前は地上をすばやく運んでくれる脚があった。だが今は、その脚が眠っているように感じる。」
「眠ってるんだよ」とチップは言った。「生き返らせなかったから。」
「君に期待されているのは飛ぶことだ」とかかしが説明した。「歩くことではない。」
「歩くなら、われわれ自身でできる」とウォグルバグ大博士が言った。
「私に求められていることがわかりはじめた」とガンプは述べた。「だから、君たちを喜ばせるよう最善を尽くそう」そして彼はしばらく黙って飛び続けた。
やがてジャック・パンプキンヘッドが落ち着かなくなった。
「空を通って乗っていると、かぼちゃは傷みやすくなるのだろうか」と彼は言った。
「うっかり頭を横から落としでもしないかぎり、そうはならない」とウォグルバグ大博士が答えた。「その場合、君の頭はもはやかぼちゃではなくなる。つぶれてスカッシュになるからだ。」
「そういう思いやりのない冗談は控えてくれと頼まなかったか?」とチップは、厳しい表情でウォグルバグ大博士を見て言った。
「頼まれた。そして私はかなり多くを控えている」と虫は答えた。「だがわれわれの言語には、すぐれた駄じゃれの機会があまりにも多い。私のような教育ある者にとって、それを口にしたい誘惑はほとんど抗しがたいのだ。」
「そういう駄じゃれは、多少の教育を受けた人たちが何世紀も前に見つけているよ」とチップは言った。
「本当かね?」とウォグルバグ大博士はぎょっとした顔でたずねた。
「もちろん本当だよ」と少年は答えた。「教育あるウォグルバグは新しいものかもしれない。でも君の披露ぶりから判断すると、ウォグルバグの教育そのものは、大昔からある代物だね。」
虫はこの言葉に大いに感じ入ったようで、しばらくしおらしく黙っていた。
かかしは席をずらしたとき、チップが放り出した胡椒入れがクッションの上にあるのを見つけ、それを調べはじめた。
「外へ投げちゃって」と少年は言った。「もう空っぽだし、取っておいても意味がないよ。」
「本当に空なのか?」とかかしは、箱の中を不思議そうにのぞき込みながらたずねた。
「もちろんだよ」とチップは答えた。「粉は一粒残らず振り出したんだから。」
「では、この箱には底が二つある」とかかしは告げた。「内側の底が、外側の底から丸々一インチ(約2.5センチ)離れている。」
「見せてください」とブリキの木こりは、友人から箱を受け取って言った。「はい」と彼はよく調べたあとで断言した。「これは確かに二重底です。さて、何のためでしょうね?」
「分解して調べられない?」とチップはたずねた。今やその謎にすっかり興味を持っていた。
「ええ、下の底はねじ式です」とブリキの木こりは言った。「わたしの指は少し硬いので、開けられるか試してもらえますか。」
彼は胡椒入れをチップに渡した。チップは何の苦もなく底をねじって外した。すると下の空洞には銀の丸薬が三つあり、その下に丁寧に折りたたまれた紙が一枚入っていた。
少年は丸薬をこぼさないよう気をつけながら、その紙を広げた。そこには赤いインクで数行がはっきり書かれていた。
「声に出して読んでくれ」とかかしが言った。そこでチップは次のように読んだ。
「ニキディク博士の有名な願いを叶える薬。
「*使用法:* 丸薬を一つ飲み込むこと。二ずつ十七まで数えること。 その後、願いを唱えること。願いはただちに叶えられる。
注意:乾燥した暗所に保管すること。」
「これはたいへん貴重な発見だ!」とかかしは叫んだ。
「本当にそうだね」とチップは真顔で答えた。「この丸薬は、ぼくたちの大きな助けになるかもしれない。老モンビは、胡椒入れの底にこれがあることを知っていたのかな。同じニキディクから生命の粉を手に入れたって、彼女が言っていたのを聞いた覚えがある。」
「その人物は強力な魔法使いに違いありません!」とブリキの木こりは叫んだ。「粉が成功したのですから、丸薬にも信頼を置くべきです。」
「だが」とかかしはたずねた。「二ずつ十七まで数えることなど、誰にできるのだ? 十七は奇数だ。」
「確かに」とチップはひどく落胆して答えた。「二ずつ十七まで数えるなんて、誰にもできない。」
「それでは、その丸薬はわれわれの役に立たない」とパンプキンヘッドが嘆いた。「この事実は、ぼくを悲しみで打ちのめす。ぼくは、頭が決して傷まないように願うつもりだったのに。」
「ばかな!」とかかしは鋭く言った。「もし丸薬を使えるなら、そんなことよりずっとよい願いをかける。」
「それよりよいものがあるとは思えない」と哀れなジャックは抗議した。「いつ傷むかわからない身になれば、ぼくの不安がわかるだろう。」
「わたしとしては」とブリキの木こりは言った。「あらゆる点であなたに同情します。しかし二ずつ十七まで数えられない以上、同情だけが、あなたの得られるすべてでしょう。」
このころにはすっかり暗くなっており、航行者たちの上には雲に覆われた空が広がっていた。月の光も、その雲を突き抜けることはできなかった。
ガンプは着実に飛び続けたが、どういうわけか、巨大なソファの胴体は一時間ごとに、ますます目まいがするほど揺れるようになった。
ウォグルバグ大博士は船酔いだと言い張った。チップも青ざめ、いくらか苦しそうだった。だがほかの者たちはソファの背にしがみつき、外へ投げ出されないかぎり、その揺れを気にしていないようだった。
夜はどんどん暗くなり、ガンプは黒い空をどこまでも飛び続けた。旅人たちは互いの姿さえ見えず、重苦しい沈黙が彼らの上に降りた。
長い時間が過ぎたあと、深く考え込んでいたチップが口を開いた。
「善い魔女グリンダの宮殿に着いたら、どうやってわかるの?」と彼はたずねた。
「グリンダの宮殿までは遠いです」と木こりは答えた。「わたしはそこを旅したことがあります。」
「でも、ガンプがどれくらい速く飛んでいるか、どうやってわかるの?」と少年は食い下がった。「地上は何一つ見えないし、朝になる前に、行きたい場所をはるかに通り過ぎてしまうかもしれない。」
「それはまったくそのとおりだ」とかかしは少し落ち着かない様子で答えた。「だが、今すぐ止まる方法は思いつかない。川に降りるかもしれないし、尖塔のてっぺんに降りるかもしれない。それは大惨事になるだろう。」
そこで彼らは、ガンプが大きな翼を規則正しくばたつかせて飛び続けるのに任せ、辛抱強く朝を待った。
すると、チップの不安は正しかったことが証明された。灰色の夜明けの最初の光の筋とともに、彼らがソファの側面越しにのぞくと、奇妙な村々が点在する起伏のある平原が見えた。家々はオズの国の家がみなそうであるような丸屋根ではなく、中央の頂点へ向かって傾斜する屋根を持っていた。奇妙な姿の動物たちも開けた平原を動き回っていた。その土地は、以前に善い魔女グリンダの領地を訪れ、そこをよく知っているブリキの木こりにもかかしにも、見覚えがなかった。
「われわれは迷った!」とかかしは悲しげに言った。「ガンプはわれわれをオズの国の外へすっかり運び出し、砂漠を越えて、ドロシーが話してくれた恐ろしい外の世界へ連れてきてしまったに違いない。」
「戻らなければ」とブリキの木こりは真剣に叫んだ。「できるだけ早く戻らなければ!」
「向きを変えて!」とチップはガンプに叫んだ。「できるだけ早く向きを変えて!」
「そうしたらひっくり返る」とガンプは答えた。「私は飛ぶことにまったく慣れていない。いちばんよいのは、どこかへ着地し、それから向きを変えて改めて出発することだ。」
しかしそのとき、彼らの目的にかなうような着地場所は見当たらなかった。彼らは大きな村の上を飛び越えた。ウォグルバグ大博士は、それは都だと断言した。それから高い山脈に差しかかり、そこには深い峡谷や切り立った崖がいくつもはっきり見えた。
「止まるなら今がチャンスだ」と少年は、彼らが山頂にとても近いのを見て言った。それからガンプに向き直り、命令した。「最初に見える平らな場所で止まって!」
「よろしい」とガンプは答え、二つの崖のあいだにある岩の台地へ降りていった。
だが、こうしたことに慣れていなかったため、ガンプは自分の速度を正しく見積もれなかった。平らな岩の上で止まるどころか、体の幅の半分ほどそこを外し、鋭い岩の縁に右側の翼二枚をぶつけて折ってしまい、それから崖を転がり落ちていった。
仲間たちはできるかぎりソファにしがみついていたが、ガンプが突き出た岩に引っかかると、そのモノは突然止まり――上下逆さまになり――全員がたちまち外へ放り出された。

幸運なことに、彼らが落ちたのはほんの数フィート(約数メートル)だけだった。下には、岩棚のくぼみにジャックドー[訳注:小型のカラスの仲間]の群れが作った巨大な巣があったのだ。そのため誰も――パンプキンヘッドでさえ――落下でけがをしなかった。ジャックの大切な頭は、かかしの柔らかな胸の上に載っていて、すばらしいクッションになった。チップは木の葉や紙の山の上に落ち、それがけがから守ってくれた。ウォグルバグ大博士は丸い頭をノコギリ馬にぶつけたが、ほんの一瞬不便を感じただけで済んだ。
ブリキの木こりは最初ひどく驚いたが、美しいニッケルめっきに傷一つつかずに済んだことがわかると、すぐいつもの陽気さを取り戻し、仲間たちに向かって話した。
「わたしたちの旅は、かなり突然終わってしまいました」と彼は言った。「この事故について、友人ガンプを正当に責めることはできません。彼は状況のもとで最善を尽くしたのですから。しかし、この巣からいったいどうやって逃げ出すかは、わたしよりよい脳を持つ誰かに任せなければなりません。」
ここで彼はかかしを見つめた。かかしは巣の縁まで這っていき、下をのぞき込んだ。彼らの下には、数百フィート(百メートル以上)もの深さの垂直な絶壁があった。上には滑らかな崖があり、折れたガンプの体がソファの一端から岩の突起に引っかかってぶら下がっている箇所を除いて、途切れも裂け目もなかった。逃げ道は本当にないように思えた。そして自分たちのどうしようもない苦境を悟ると、小さな冒険者一行は途方に暮れてしまった。
「これは宮殿よりひどい牢獄だ」とウォグルバグ大博士が悲しげに言った。
「宮殿に残っていればよかった」とジャックはうめいた。
「山の空気は、かぼちゃにはよくないんじゃないかと心配だ。」
「ジャックドーが戻ってきたら、もっとよくないぞ」とノコギリ馬がうなった。彼は仰向けに横たわり、立ち上がろうとむなしく脚を振っていた。「ジャックドーは特にかぼちゃが好きなんだ。」
「鳥たちがここへ来ると思う?」とジャックはひどく動揺してたずねた。
「もちろん来るよ」とチップは言った。「ここはあいつらの巣なんだから。それに何百羽もいるに違いない」と彼は続けた。「見てよ、こんなにいろんな物を運び込んでいるんだから!」
実際、その巣の半分は、小さな品々の実に奇妙な寄せ集めで埋まっていた。鳥たちには何の役にも立たないものばかりだったが、盗みを働くジャックドーたちが、長い年月をかけて人間の家から盗んできたものだった。そしてその巣は人間が届かない場所に安全に隠されていたので、この失われた財産が取り戻されることは決してなかった。

ウォグルバグ大博士ががらくたの中を探っていると――ジャックドーは貴重品だけでなく役に立たないものも盗んでいた――足で美しいダイヤの首飾りを掘り出した。それはブリキの木こりにたいへん称賛されたので、ウォグルバグ大博士は優雅な演説とともに彼にそれを贈った。木こりはそれを首にかけ、誇らしげにし、太陽の光に大きなダイヤがきらめくと、たいそう喜んだ。
だがそのとき、ひどくやかましい鳴き声と翼の羽ばたきが聞こえてきた。その音が近づくにつれ、チップは叫んだ。
「ジャックドーが来る! ここにいるのを見つけたら、怒ってきっとぼくたちを殺すよ。」
「これを恐れていたんだ!」とパンプキンヘッドはうめいた。「ぼくの時が来た!」
「私の時もだ!」とウォグルバグ大博士が言った。「ジャックドーは私の種族の最大の敵だからな。」
ほかの者たちは少しも怖がっていなかった。だがかかしは、怒れる鳥たちに傷つけられそうな仲間を救おうと、すぐ決めた。そこでチップに命じてジャックの頭を外させ、それを抱えて巣の底に横になるように言った。それが済むと、ウォグルバグ大博士にもチップのそばに横たわるよう命じた。過去の経験から何をすべきかよく知っていたニック・チョッパーは、それからかかしを(頭以外)ばらばらにし、藁をチップとウォグルバグ大博士の上に散らして、二人の体を完全に覆った。
それが終わるか終わらないかのうちに、ジャックドーの群れが彼らのもとへたどり着いた。巣の中に侵入者がいるのを見るや、鳥たちは怒りの悲鳴をあげて彼らに飛びかかった。

—
ニキディク博士の有名な願いを叶える薬
ブリキの木こりはふだんは平和を好む者だったが、必要とあらばローマの剣闘士のように激しく戦うこともできた。そこで、ジャックドーたちが翼をもみ合うように突進してきて彼を危うく倒しそうになり、鋭いくちばしと爪が彼の輝くめっきを傷つけようとしたとき、木こりは斧を取り上げ、頭上で素早く回転させた。
だが、そのようにして多くの鳥を撃退しても、鳥たちはあまりに数が多く、しかも勇敢だったため、前と同じ激しさで攻撃を続けた。巣の上で helpless にぶら下がるガンプの目をつつくものもいた。だがガンプの目はガラスでできており、傷つけることはできなかった。ほかのジャックドーたちはノコギリ馬に突進した。だがその動物はまだ仰向けのままだったので、木の脚で猛烈に蹴り出し、木こりの斧に劣らない数の攻撃者を撃退した。
このように抵抗されると、鳥たちは巣の中央に横たわり、チップとウォグルバグ大博士、そしてジャックのかぼちゃ頭を覆っていたかかしの藁に襲いかかった。そしてそれをむしり取り、くわえて飛び去っては、藁一本一本を下の大きな裂け目へ落としはじめた。

かかしの頭は、自分の内側が気ままに破壊されていくのを恐怖とともに見て、ブリキの木こりに助けを求めて叫んだ。そのよき友は、いっそうの力をこめて応えた。彼の斧はジャックドーの間できらめくように閃き、幸いにもガンプが体の左側に残った二枚の翼を狂ったように振りはじめた。この大きな翼の羽ばたきはジャックドーたちを恐怖に陥れた。そしてガンプが必死にもがいて、自分が引っかかっていた岩の突起から身を解き、ばたばたと巣の中へ沈み込むと、鳥たちの恐慌は頂点に達し、悲鳴を上げて山々の向こうへ逃げ去った。
最後の敵が消えると、チップはソファの下から這い出し、ウォグルバグ大博士が続くのを手伝った。
「助かった!」と少年は大喜びで叫んだ。
「まったく助かった!」と教育ある虫は応じ、喜びのあまりガンプの硬い頭にほとんど抱きついた。「それもすべて、そのモノの羽ばたきと、木こりの見事な斧のおかげだ!」
「助かったなら、ここから出してくれ!」とジャックが呼んだ。彼の頭はまだソファの下にあった。チップはなんとかそのかぼちゃを転がし出し、ふたたび首の上に置いた。彼はノコギリ馬もまっすぐ立たせ、こう言った。
「勇敢に戦ってくれて、本当にありがとう。」
「わたしたちは実にうまく切り抜けたと思います」とブリキの木こりは誇らしげな調子で言った。
「そうではない!」と、うつろな声が叫んだ。
これに驚いて全員が振り向き、巣の後ろに横たわっているかかしの頭を見た。
「私は完全に破滅した!」とかかしは、皆の驚きを見て断言した。「私の体に詰まっていた藁はどこにある?」
その恐ろしい問いに、全員がぎょっとした。彼らは恐怖にかられて巣の中を見回したが、藁はひとかけらも残っていなかった。ジャックドーたちは最後の一本まで盗み取り、そのすべてを、巣の下で数百フィート(百メートル以上)も口を開ける裂け目へ投げ込んでしまったのだ。


「哀れな、哀れな友よ!」とブリキの木こりは、かかしの頭を取り上げてやさしくなでながら言った。「あなたがこんな早すぎる最期を迎えるなど、いったい誰が想像できたでしょう?」
「友人たちを救うためにしたことだ」と頭は答えた。「だから私は、これほど気高く無私の方法で滅びたことをうれしく思う。」
「だが、なぜ皆そんなに落ち込んでいるのです?」とウォグルバグ大博士がたずねた。「かかしの服はまだ無事ではありませんか。」
「ええ」とブリキの木こりは答えた。「ですが、友人の服は詰め物がなければ役に立ちません。」
「お金を詰めたら?」とチップがたずねた。
「お金!」と全員が驚きの声をそろえて叫んだ。
「もちろん」と少年は言った。「巣の底には、一ドル札、二ドル札、五ドル札、十ドル、二十ドル、五十ドルの札が何千枚もあるよ。かかしを十体詰められるくらいある。どうしてお金を使わないの?」
ブリキの木こりは斧の柄でがらくたをかき回しはじめた。すると確かに、彼らが最初はただの価値のない紙だと思っていたものは、いろいろな額面の紙幣だった。いたずら好きのジャックドーたちが、訪れた村や都から何年もかけて盗んできたものだった。
その近づきがたい巣には莫大な財産が横たわっていた。そしてチップの提案は、かかしの同意を得て、すぐ実行に移された。
彼らは最も新しく、最も清潔な紙幣を選び出し、さまざまな山に分けた。かかしの左脚とブーツには五ドル札を詰め、右脚には十ドル札を詰めた。そして胴体には五十ドル、百ドル、千ドル札をぎっしり詰め込んだので、上着のボタンを気持ちよく留めるのがやっとだった。


「これであなたは」とウォグルバグ大博士は、作業が終わると重々しく言った。「われわれ一行の中で最も価値ある一員となった。そして誠実な友人たちの中にいるかぎり、使い果たされる危険はほとんどない。」
「ありがとう」とかかしは感謝して答えた。「新しい人間になった気分だ。もっとも一見したところ、私は貸金庫と間違えられるかもしれないが、どうか覚えておいてほしい。私の脳は今も、以前と同じ材料でできている。そして、緊急時に私を頼れる人物にしてきたのは、いつもこの脳なのだ。」
「さて、その緊急時が今だよ」とチップが言った。「君の脳がここから助け出してくれないなら、ぼくたちは残りの人生をこの巣で過ごすことになる。」
「この願いを叶える薬はどうだろう?」とかかしは、上着のポケットから箱を取り出してたずねた。「これを使って逃げられないだろうか?」
「二ずつ十七まで数えられないかぎり無理です」とブリキの木こりは答えた。「しかし友人ウォグルバグ大博士は高度に教育されていると主張しているので、そのやり方をたやすく考え出せるはずです。」
「教育の問題ではない」と虫は答えた。「単なる数学の問題だ。教授が黒板でたくさんの計算をしているのを見たことがあるし、彼は、xやyやaのようなものを、プラスやマイナスやイコールなどとたっぷり混ぜ合わせれば、どんなことでもできると主張していた。だが私の記憶するかぎり、二という偶数で十七という奇数まで数えることについては、何も言っていなかった。」
「やめて! やめて!」とパンプキンヘッドが叫んだ。「頭が痛くなる。」
「私もだ」とかかしが付け加えた。「君の数学は、私には混ざったピクルスの瓶のように思える。欲しいものを探せば探すほど、手に入る見込みがなくなる。もしそれが少しでも可能なら、きわめて単純な方法でできるに違いないと私は確信している。」
「そうだよ」とチップは言った。「老モンビはxだのマイナスだのは使えない。学校へ行ったことがないんだから。」
「半分の一から数えはじめたらどうだ?」とノコギリ馬が不意に言った。「そうすれば、誰でも二ずつ十七までとても簡単に数えられる。」
彼らは驚いて互いを見つめた。ノコギリ馬は一行の中で最も愚かだと思われていたからだ。
「君は私をまったく恥ずかしくさせる」とかかしはノコギリ馬に深く頭を下げて言った。
「それでも、この生き物は正しい」とウォグルバグ大博士が断言した。「二分の一を二倍すれば一になる。そして一まで行けば、そこから二ずつ十七まで数えるのは簡単だ。」
「どうして自分で思いつかなかったのか不思議だ」とパンプキンヘッドが言った。
「私は不思議ではない」とかかしは答えた。「君はわれわれの誰より賢いわけではないのだからな。だが、すぐ願いをかけよう。誰が最初の丸薬を飲み込む?」
「君がやってみたら?」とチップが提案した。
「私はできない」とかかしは言った。
「どうして? 口はあるだろ?」と少年がたずねた。
「ある。だが私の口は描いてあるだけで、それにつながる喉はない」とかかしは答えた。「実際」と彼は一人ひとりを批評するように見ながら続けた。「この一行で飲み込めるのは、少年とウォグルバグ大博士だけだと思う。」
その言葉が真実だと認め、チップは言った。
「じゃあ、ぼくが最初の願いを引き受けるよ。銀の丸薬を一つちょうだい。」
かかしはそれを渡そうとした。だが詰め物の入った手袋は、小さなものをつかむには不器用すぎたので、彼は箱を少年のほうへ差し出した。チップは丸薬を一つ選んで飲み込んだ。
「数えろ!」とかかしが叫んだ。
「二分の一、一、三、五、七、九、十一」とチップは数えた。「十三、十五、十七。」
「さあ願ってください!」とブリキの木こりは心配そうに言った。
だがちょうどそのとき、少年は恐ろしい痛みに襲われ、不安になった。
「丸薬に毒があった!」と彼はあえいだ。「あ――あ! あああああ! 痛い! 助けて! 火事だ! あああ!」そして彼は巣の底で身をよじって転げ回り、皆をおびえさせた。
「何をしてあげられますか。どうか話してください!」とブリキの木こりは懇願した。同情の涙がニッケルの頬を伝っていた。
「わ――わからない!」とチップは答えた。「ああ! あの丸薬なんて飲まなきゃよかった!」
するとたちまち痛みは止まり、少年は再び立ち上がった。そしてかかしが胡椒入れの端を驚いて見つめているのに気づいた。
「何が起こったの?」と少年は、さっきの大騒ぎを少し恥ずかしく思いながらたずねた。
「何と、三つの丸薬がまた箱の中にある!」とかかしは言った。
「もちろんだ」とウォグルバグ大博士は断言した。「チップは、それを一つも飲まなければよかったと願ったのではないか? さて、その願いは叶い、彼はその一つを飲まなかった。だから当然、三つとも箱の中にある。」
「そうかもしれないけど、丸薬は同じようにひどい痛みを与えたよ」と少年は言った。
「ありえない!」とウォグルバグ大博士は断言した。「君がそれを飲んでいないなら、丸薬が君に痛みを与えたはずがない。そして君の願いが叶ったことは、君が丸薬を飲まなかったことを証明しているのだから、君が痛みを受けなかったこともまた明白だ。」


「じゃあ、痛みの見事なものまねだったんだね」とチップは怒って言い返した。「次の丸薬は君が試してみればいい。願いを一つ、もう無駄にしちゃったんだから。」
「いや、無駄にはしていない!」とかかしは抗議した。「箱の中にはまだ三つ丸薬があり、一つずつ願いに使えるのだから。」
「今度は君がぼくの頭を痛くしてるよ」とチップは言った。「さっぱりわからない。でも、ぼくはもう二度と丸薬を飲まないからね!」そう言って、彼はむっつり巣の奥へ引っ込んだ。
「では」とウォグルバグ大博士は言った。「私が、すばらしく拡大され徹底的に教育されたやり方で、われわれを救う番だ。願いをかける能力と意志のある者は、どうやら私だけのようだからな。丸薬を一ついただこう。」
彼はためらわずそれを飲み込んだ。一同はその勇気に感心して見守った。虫はチップがしたのと同じ方法で、二ずつ十七まで数えた。そして何らかの理由で――おそらくウォグルバグの胃は少年より丈夫だからだろう――その銀の粒は彼に何の痛みも引き起こさなかった。
「ガンプの折れた翼が直り、新品同様になるよう願う!」とウォグルバグ大博士は、ゆっくりと印象的な声で言った。
皆はそのモノのほうを見た。願いはあまりにも早く叶えられていたので、ガンプは完全に修復されて彼らの前に横たわり、王宮の屋根の上で最初に生き返ったときと同じように、空を飛ぶ力を取り戻していた。

—
かかし、善い魔女グリンダに訴える
「ばんざい!」とかかしは陽気に叫んだ。「これで、このみじめなジャックドーの巣から、いつでも好きなときに出ていけるぞ。」
「だが、もうすぐ暗くなる」とブリキの木こりが言った。「朝まで待って飛び立たないと、また厄介ごとに巻き込まれるかもしれない。夜の旅は好きじゃない。何が起きるかわからないからね。」
そこで夜明けまで待つことに決まり、一行は夕闇のなか、ジャックドーの巣に宝物がないか探して時間をつぶした。
ウォグルバグは、細工の見事な金の腕輪を二つ見つけた。細い腕にぴったりだった。かかしは指輪が気に入り、巣の中にはそれがたくさんあった。ほどなくして、綿を詰めた手袋の指一本一本に指輪をはめ、さらにそれだけでは飽き足らず、親指にも一つずつ加えた。ルビー、アメジスト、サファイアといったきらめく石のついた指輪を慎重に選んだので、かかしの両手はいまやたいそうまばゆい見栄えになった。
「この巣はジンジャー女王にとっては、まるで遠足みたいなものだろうな」と、かかしは考えこむように言った。「どうやら彼女と娘たちは、私の都からエメラルドを奪うためだけに、私を征服したらしいからね。」
ブリキの木こりはダイヤの首飾りだけで満足し、それ以上の飾りは断った。だがチップは、重い飾り鎖のついた立派な金時計を手に入れ、たいそう誇らしげにポケットへしまった。さらに宝石のついたブローチをいくつもジャック・パンプキンヘッドの赤いチョッキに留め、細い鎖でロルネット[訳注:柄つきの眼鏡]をノコギリ馬の首に取りつけた。
「とてもきれいだ」と、その生き物はロルネットを満足げに眺めながら言った。「でも、これは何のためのものだ?」
しかし、その問いに答えられる者はひとりもいなかった。そこでノコギリ馬は、これは珍しい飾りなのだと決め、とても気に入った。
仲間のだれも粗末に扱われぬよう、最後にはガンプの角の先に大きな印章指輪をいくつもはめた。もっとも、その奇妙な人物は、その気遣いに少しも喜んでいるようには見えなかった。
やがてあたりはすっかり暗くなり、チップとウォグルバグは眠りについた。ほかの者たちは腰を下ろし、辛抱強く夜明けを待った。
翌朝、彼らはガンプが役に立つ状態になっていたことを、心から喜ぶことになった。夜が明けると、ジャックドーの大群が、巣を取り戻すためにもう一戦交えようと近づいてきたからだ。
だが冒険者たちは、襲撃を待たなかった。できるだけ素早くソファのクッション席に転がり込み、チップがガンプに出発の合図をした。
たちまちガンプは空へ舞い上がった。大きな翼は力強く、規則正しく羽ばたき、ほんの数分で巣からずっと遠くへ離れた。おしゃべりなジャックドーたちは追いかけようともせず、そのまま巣を占領した。
そのモノは真北へ飛んだ。つまり、来たときと同じ方向へ戻っているのだ。少なくとも、かかしはそう判断し、ほかの者たちも方角を判断するならかかしがいちばんだと認めた。いくつもの町や村の上を通り過ぎると、ガンプは彼らを広い平原のはるか上へ運んだ。家々はしだいにまばらになり、やがてすっかり姿を消した。次に現れたのは、世界のほかの土地とオズの国を隔てる広い砂漠だった。そして正午前には、彼らがふたたび故郷の国境内に入ったことを示す、丸屋根の家々が見えてきた。
「だが家も柵も青い」とブリキの木こりが言った。「これは、私たちがマンチキン国にいるということだ。つまり、善い魔女グリンダからはずいぶん遠い。」
「どうしたらいい?」少年は案内役のほうを向いて尋ねた。
「わからない」と、かかしは率直に答えた。「エメラルドシティにいるのなら、そこから真南へ進めば目的地に着ける。しかしエメラルドシティへ行くわけにはいかないし、ガンプは翼をひとはばたきするたびに、たぶんますます間違った方向へ私たちを運んでいる。」
「それならウォグルバグにもう一粒、薬を飲ませるんだ」とチップはきっぱり言った。「そして正しい方向へ向かうよう願わせよう。」
「よろしい」と、大きく拡大された者は答えた。「私はかまわない。」
だが、かかしが二つの銀の願いを叶える薬を入れた胡椒入れをポケットから探しても、それは見つからなかった。不安に駆られた旅人たちは、その大切な箱を求めて、そのモノの隅から隅まで探した。だが、それは完全に消えていた。
それでもガンプは飛び続け、どこへ向かっているのかもわからぬまま彼らを運んでいった。
「ジャックドーの巣に胡椒入れを置いてきてしまったにちがいない」と、かかしはついに言った。
「大きな不幸だ」とブリキの木こりは言った。「だが願いを叶える薬を見つける前より悪くなったわけではない。」
「むしろ前よりよくなっているよ」とチップが答えた。「使った一粒のおかげで、あの恐ろしい巣から逃げ出せたんだから。」
「それでも残り二粒を失ったのは重大だし、私は不注意を厳しく叱られるべきだ」と、かかしは悔い入るように言った。「こんな風変わりな一行では、いつどんな事故が起きてもおかしくない。現に今だって、新しい危険に近づいているかもしれないのだ。」
だれもそれに反論する勇気はなく、陰気な沈黙が続いた。
ガンプはひたすら飛び続けた。
突然、チップが驚きの声を上げた。「南の国に着いたにちがいない!」と叫んだ。「だって下が何もかも赤い!」
すぐに全員がソファの背から身を乗り出して見下ろした――ただしジャックだけは、カボチャの頭が首から落ちる危険を冒すには慎重すぎた。まさにその通りだった。赤い家、赤い柵、赤い木々は、彼らが善い魔女グリンダの領内に入ったことを示していた。そして間もなく、彼らが勢いよく滑るように進むうち、ブリキの木こりが通り過ぎる道や建物に見覚えがあることに気づき、名高い女魔法使いの宮殿へ着けるよう、ガンプの飛び方をわずかに変えた。

「よし!」かかしは喜んで叫んだ。「失くした願いを叶える薬はもういらない。目的地に着いたのだから。」
そのモノはしだいに低く、地面近くへ降りていき、ついにはグリンダの美しい庭園の中へ降り立った。そこはビロードのような緑の芝生で、すぐそばには噴水があり、水の代わりにきらめく宝石のしぶきを高く空へ吹き上げていた。宝石はやわらかな、ちりんちりんという音を立てて、受け皿として置かれた彫刻入りの大理石の鉢へ落ちていった。
グリンダの庭園では何もかもがたいそう華やかで、旅人たちが感嘆のまなざしであたりを眺めていると、一隊の兵士が音もなく現れ、彼らを取り囲んだ。だがこの偉大な女魔法使いの兵士たちは、同じく少女たちではあったが、ジンジャーの反乱軍とはまるで違っていた。グリンダの兵士たちはきちんとした制服を着て、剣や槍を携えていた。そして戦いの技に熟練していることを示す、見事で正確な足取りで行進した。
この部隊――グリンダの親衛隊――を指揮する隊長は、かかしとブリキの木こりをすぐに見分け、敬意をこめて敬礼した。
「こんにちは!」とかかしは勇ましく帽子を取り、木こりは兵士らしく敬礼した。「われわれは、あなたがたの美しき統治者への謁見を願いに参った。」
「グリンダさまは今、宮殿の中で皆さまをお待ちです」と隊長は答えた。「皆さまが到着されるずっと前から、こちらへ来られるのをご覧になっていましたので。」
「それは不思議だな!」とチップは驚いた。
「少しも不思議ではない」と、かかしが答えた。「善い魔女グリンダは強大な女魔法使いで、オズの国で起きることは何ひとつ見逃さないのだ。きっと私たちがなぜ来たのかも、私たち自身と同じくらいご存じだろう。」
「じゃあ、わざわざ来た意味は何だったの?」とジャックが間の抜けた声で尋ねた。
「君がパンプキンヘッドだと証明するためだ!」とかかしは言い返した。「だが女魔法使いがお待ちなら、待たせてはならない。」
そこで一同はソファからよじ降り、隊長の後について宮殿へ向かった。ノコギリ馬までも、この奇妙な行列の中に加わった。
精巧に細工された金の玉座にグリンダは座っており、風変わりな訪問者たちが入ってきて前にお辞儀をすると、笑みをこらえるのがやっとだった。かかしとブリキの木こりのことは知っており、好ましく思っていた。だが不器用なパンプキンヘッドや、大きく拡大されたウォグルバグは初めて見る生き物で、ほかの者たち以上に奇妙に見えた。ノコギリ馬に至っては、命を吹き込まれた木片にしか見えなかった。そしてあまりにぎこちなくお辞儀をしたので、頭が床にぶつかり、兵士たちのあいだに笑いの波が起きた。グリンダも率直にそれに加わった。

「輝かしき殿下にご報告申し上げます」と、かかしは厳かな声で言い始めた。「私のエメラルドシティは、編み針を持った生意気な娘たちの一団に踏みにじられ、男たちはみな奴隷にされ、通りや公共の建物からエメラルドの宝石を奪われ、私の玉座は横取りされました。」
「知っています」とグリンダは言った。
「彼女たちはまた、私ばかりか、ここにおられる善き友人や同盟者たちまでも滅ぼすと脅しました」と、かかしは続けた。「もしもその手から逃れることができなかったなら、私たちの命はとうに尽きていたでしょう。」
「知っています」とグリンダは繰り返した。
「そこで、あなたのお力添えを願いに参りました」と、かかしはまた話し始めた。「あなたは不幸な者や虐げられた者を助けることを、いつも喜ばれると信じておりますので。」
「それは本当です」と女魔法使いはゆっくり答えた。「けれどエメラルドシティはいま、自ら女王と宣言させたジンジャー将軍が治めています。私に彼女へ逆らうどんな権利があるでしょう?」
「だって、彼女は私から玉座を盗んだのです」とかかしは言った。
「では、あなたはどうやってその玉座を手に入れたのです?」とグリンダは尋ねた。
「オズの魔法使いから、そして民の選びによって授かりました」と、かかしはそう問われて落ち着かない様子で答えた。
「では、その魔法使いはどこから手に入れたのです?」彼女は重々しく続けた。
「聞くところによれば、先王パストリア王から奪ったそうです」と、かかしは女魔法使いのまっすぐな視線を受けて、混乱しながら言った。
「ならば」とグリンダは言い切った。「エメラルドシティの玉座は、あなたのものでもジンジャーのものでもありません。魔法使いに奪われた、このパストリア王のものです。」
「その通りです」と、かかしは謙虚に認めた。「ですがパストリア王はすでに亡くなり、去ってしまいました。だれかがその後を治めねばなりません。」
「パストリア王には娘がいました。エメラルドシティの玉座を正当に受け継ぐ者です。それを知っていましたか?」と女魔法使いは問うた。
「いいえ」とかかしは答えた。「しかしその娘がまだ生きているなら、私は邪魔をしません。自分が玉座に戻るより、ジンジャーを偽りの支配者として追い出せれば、それで同じくらい満足です。実のところ、王でいるのはそれほど楽しいものではありません。とくに優れた脳みそを持っている者にとっては。私はかなり前から、自分がもっと高尚な地位にふさわしいとわかっていました。ですが、その玉座の持ち主である娘はどこにいるのです? 名は何というのです?」
「名はオズマです」とグリンダは答えた。「けれど彼女がどこにいるのか、私は探し出そうとしても無駄でした。オズの魔法使いは、オズマの父から玉座を盗んだとき、その娘をどこか秘密の場所に隠しました。そして私の知らない魔法の仕掛けによって、私ほど経験豊かな女魔法使いにさえ見つけられないようにしたのです。」
「それはおかしい」とウォグルバグが尊大に口を挟んだ。「私は、すばらしいオズの魔法使いなど、ただのいかさまだと聞いておりますぞ!」
「ばかな!」その言葉にひどく腹を立て、かかしは叫んだ。「彼が私にすばらしい脳みそをくれたではないか?」
「私の心には、いかさまなど少しもない」とブリキの木こりは、ウォグルバグを憤然とにらみながら言った。
「もしかすると、私の聞いたことが間違っていたのかもしれません」と昆虫はたじろぎながら口ごもった。「私は魔法使いと個人的な面識がありませんので。」
「まあ、私たちはあったのだ」と、かかしは言い返した。「そして彼はたいへん偉大な魔法使いだった。これは保証する。たしかに少しばかりのまやかしはしていたが、もし偉大な魔法使いでなかったなら――問いたいものだ――このオズマという娘を、だれにも見つけられないほどしっかり隠すことなど、どうしてできたというのか?」
「わ、私にはわかりません!」ウォグルバグはおとなしく答えた。
「今までの君の発言でいちばん道理にかなっている」とブリキの木こりが言った。
「その娘がどこに隠されているのか、本当にもう一度探らねばなりません」と女魔法使いは考え込むように言った。「私の図書室には、魔法使いがこのオズの国にいたあいだの行動をすべて記した本があります――少なくとも、私の密偵たちが観察できた行動はすべて。この本を今夜じっくり読み、失われたオズマを見つける手がかりとなる行動を選び出してみましょう。そのあいだ、どうか私の宮殿で楽しく過ごし、召使いたちをあなた方のもののようにお使いください。明日、もう一度お会いしましょう。」

この丁重な言葉でグリンダは冒険者たちを退がらせた。彼らは美しい庭園の中を歩き回り、南の国の女王が王宮のまわりにそろえた楽しいものを味わいながら、数時間を過ごした。
翌朝、彼らは再びグリンダの前に現れた。グリンダは彼らに言った。
「魔法使いの行動の記録を慎重に調べました。その中で疑わしく思えるものは三つだけでした。彼は豆をナイフで食べたこと、老いたモンビのもとへ三度ひそかに訪れたこと、そして左足を少し引きずっていたことです。」
「ああ! 最後のは確かに怪しい!」パンプキンヘッドが叫んだ。
「必ずしもそうとは限らない」とかかしが言った。「魚の目があったのかもしれない。私には、豆をナイフで食べたことのほうが怪しいように思える。」
「もしかすると、魔法使いがもともと来た偉大な国オマハでは、それが礼儀正しい習慣なのかもしれない」とブリキの木こりが提案した。
「ありえる」とかかしは認めた。
「けれど、なぜ」とグリンダは尋ねた。「彼は老いたモンビのもとへ三度もひそかに訪れたのでしょう?」
「ああ! まさしく、なぜでしょう!」ウォグルバグが重々しく相づちを打った。
「魔法使いが老女に、自分の魔法の手品をいくつも教えたことはわかっています」とグリンダは続けた。「彼女が何らかの形で手助けしていなければ、そんなことはしなかったでしょう。したがって、モンビが彼を助け、エメラルドシティの玉座の真の後継者であり、簒奪者にとって絶えざる脅威であったオズマを隠したのだと、十分な理由をもって疑えます。もし民が彼女の生存を知れば、たちまち彼女を女王に据え、正当な地位へ戻すでしょうから。」
「見事な論法だ!」かかしが叫んだ。「モンビがこの邪悪な事件に関わっていたことに疑いはない。だが、それを知ったところで、どう役に立つのだ?」
「モンビを見つけなければなりません」とグリンダは答えた。「そして、その娘がどこに隠されているのか白状させるのです。」
「モンビはいま、エメラルドシティでジンジャー女王と一緒にいます」とチップが言った。「ぼくらの行く手にあれほどたくさんの障害を投げかけ、ジンジャーにぼくの友だちを滅ぼすと脅させ、ぼくをあの老いぼれ魔女の手に戻させようとしたのは彼女です。」
「では」とグリンダは決めた。「私は軍を率いてエメラルドシティへ進み、モンビを捕らえましょう。その後で、彼女にオズマの真実を語らせることができるかもしれません。」
「あの人は恐ろしい老女です!」チップはモンビの黒い釜を思い出して身震いしながら言った。「しかも頑固なんです。」
「私自身もかなり頑固です」と女魔法使いは甘い笑みを浮かべて答えた。「ですから、モンビなど少しも恐れません。今日は必要な準備をすべて整え、明日の夜明けにエメラルドシティへ進軍します。」

—
ブリキの木こり、薔薇を摘む
善い魔女グリンダの軍は、夜明けに宮殿の門前へ集結すると、たいそう壮麗で威厳があった。少女兵たちの制服は美しく、明るい色合いで、銀の穂先をつけた槍は明るくきらめき、長い柄には真珠母が象眼されていた。将校たちはみな鋭く輝く剣と、孔雀の羽で縁取られた盾を身につけていた。実際、どんな敵であろうと、このまばゆい軍勢に勝てるはずがないように思えた。
女魔法使いは美しい輿に乗った。それは馬車の車体のようで、絹のカーテンのついた扉と窓があった。だが馬車にある車輪の代わりに、輿は二本の長い水平な棒の上に載っており、十二人の召使いの肩で担がれていた。
かかしと仲間たちは、軍の速い行軍についていくため、ガンプに乗ることにした。そこでグリンダが出発し、王室楽隊の奏でる勇ましい音楽に合わせて兵士たちが進み出すと、友人たちはソファに乗り込み、その後に続いた。ガンプは女魔法使いの乗る輿の真上あたりを、ゆっくりと飛んでいった。

「気をつけて」とブリキの木こりは、下の軍を見るために身を大きく乗り出しているかかしに言った。「落ちるかもしれない。」
「問題ありませんな」と教養あるウォグルバグが言った。「彼はお金を詰め込まれているかぎり、破産することはありませんから。」
「ぼく、君に頼まなかったっけ」とチップは非難めいた声で言いかけた。
「頼まれました!」ウォグルバグは即座に言った。「そしてお詫びします。本当に自制するよう努めます。」
「そうしたほうがいい」と少年は言った。「少なくとも、ぼくらと一緒に旅をしたいならね。」
「ああ! 今さらあなた方と別れるなど、私には耐えられません」と昆虫はしみじみつぶやいた。そこでチップは、その話を終わりにした。
軍は着実に進んだが、エメラルドシティの城壁に着いたころには夜になっていた。とはいえ新月のかすかな光のもと、グリンダの軍勢は音もなく都を取り囲み、緑の草地に緋色の絹の天幕を張った。女魔法使いの天幕はほかより大きく、純白の絹でできていて、その上には緋色の旗がひるがえっていた。かかし一行のためにも天幕が張られた。こうした準備が軍隊らしい正確さと素早さで整えられると、軍は休息に入った。
翌朝、兵士たちが駆け込んできて、都を取り巻く大軍について知らせたとき、ジンジャー女王の驚きはたいへんなものだった。彼女はただちに王宮の高い塔へ登り、あらゆる方角に旗がひるがえり、グリンダの大きな白い天幕が門の真正面に立っているのを見た。
「私たちは完全に終わりだわ!」ジンジャーは絶望して叫んだ。「敵の長い槍と恐ろしい剣を相手に、私たちの編み針が何の役に立つというの?」
「いちばんいいのは」と少女のひとりが言った。「けがをする前に、できるだけ早く降伏することです。」
「そうはいかない」とジンジャーは少し勇敢に答えた。「敵はまだ城壁の外にいる。だから交渉に持ち込んで時間を稼がなくては。あなた、休戦旗を持ってグリンダのところへ行き、なぜ私の領土へ侵入するなどという大胆なことをしたのか、そして要求は何なのか尋ねてきなさい。」
そこで少女は門を抜け、平和の使いであることを示す白旗を掲げて、グリンダの天幕へやって来た。「あなたの女王に伝えなさい」と女魔法使いは少女に言った。「老いたモンビを私に引き渡し、私の囚人とすること。これがなされれば、これ以上彼女を煩わせることはしません。」


さて、この伝言が女王に伝えられると、彼女はうろたえた。モンビは彼女の筆頭顧問であり、ジンジャーはその老いぼれ魔女をひどく恐れていたからだ。だが彼女はモンビを呼び寄せ、グリンダの言葉を伝えた。
「私たち全員に災いが迫っているね」と、老いた魔女はポケットに入れていた魔法の鏡をのぞいたあと、ぶつぶつ言った。「だが、あの女魔法使いが自分をどれほど賢いと思っていようと、うまくだませばまだ逃げられる。」
「あなたを彼女の手に引き渡すほうが、私にとって安全じゃないかしら?」ジンジャーは不安そうに尋ねた。
「そんなことをすれば、エメラルドシティの玉座を失うことになるよ!」魔女はきっぱり答えた。「だが私の好きにさせてくれれば、二人とも簡単に救ってみせる。」
「では好きになさい」とジンジャーは答えた。「女王でいるのはとても貴族的で、家へ帰ってまた母のためにベッドを整えたり皿を洗ったりする羽目にはなりたくないから。」
そこでモンビはジェリア・ジャムを呼び寄せ、自分のよく知るある魔法の儀式を行った。その魔法の結果、ジェリアはモンビの姿と顔つきになり、一方で老いた魔女は少女そっくりに変わった。だれにもそのごまかしは見破れそうになかった。
「さあ」と老いたモンビは女王に言った。「あなたの兵士に、この娘をグリンダへ引き渡させなさい。あの女は本物のモンビを手中にしたと思い込み、すぐに南の自分の国へ帰るだろう。」

そこで、年寄りの女のようによろよろ歩くジェリアは都の門から連れ出され、グリンダの前へ連れてこられた。
「こちらがご要求の人物です」と衛兵のひとりが言った。「わが女王は、約束どおりお引き取りになり、私たちを平穏にしてくださるようお願いしております。」
「もちろんそうしましょう」とグリンダはたいそう満足して答えた。「もしこの者が、見かけどおりの人物であるならば。」
「間違いなく老いたモンビです」と衛兵は言った。彼女は本当にそう信じていた。そしてジンジャーの兵士たちは都の門の内側へ戻っていった。
女魔法使いはすぐに、かかしとその友人たちを天幕へ呼び寄せ、失われた少女オズマについて、モンビと思われる者を問いただし始めた。だがジェリアはこの件について何ひとつ知らなかったので、やがて問い詰められてひどくおびえ、こらえきれずに泣き出した。グリンダは大いに驚いた。
「これは愚かな小細工です!」女魔法使いは怒りに目を光らせて言った。「これはモンビではありません。彼女に似せられた別の者です! 言いなさい」と彼女は震える少女のほうを向いて命じた。「あなたの名前は何です?」
ジェリアはそれを言う勇気がなかった。ごまかしを白状すれば魔女に殺すと脅されていたからだ。だがグリンダは、優しく美しいとはいえ、オズの国のだれよりも魔法に通じていた。そこで力ある言葉をいくつか唱え、独特の身ぶりをすると、たちまち少女を本来の姿へ戻した。同時に、遠くジンジャーの宮殿にいた老いたモンビも、突然、自分本来の曲がった姿と邪悪な顔つきに戻ってしまった。
「おや、ジェリア・ジャムじゃないか!」かかしは、自分の古い友人のひとりだとわかって叫んだ。
「ぼくたちの通訳だ!」パンプキンヘッドが愉快そうに笑って言った。

するとジェリアは、モンビが仕掛けた策略を話さざるを得なくなり、さらにグリンダの保護を願った。女魔法使いはそれを快く認めた。だがグリンダは今や本気で怒っており、ごまかしが露見したこと、本物のモンビを引き渡さなければ恐ろしい結果を招くことを、ジンジャーへ伝えさせた。ジンジャーはこの伝言に備えていた。というのも魔女は、本来の姿に戻された時点で、グリンダが自分の策略を見破ったことをよく理解していたからだ。だが邪悪な老女はすでに新たなごまかしを考えつき、ジンジャーにそれを実行すると約束させていた。そこで女王はグリンダの使者に言った。
「あなたの女主人に伝えなさい。モンビはどこにも見つからない。ただしグリンダが都に入り、自分でその老女を探すのは歓迎する。望むなら友人たちを連れてきてもよい。けれど日没までにモンビを見つけられなければ、その女魔法使いはおとなしく立ち去り、二度と私たちを煩わせないと約束しなければならない。」
グリンダはこの条件に同意した。モンビが都の城壁内のどこかにいることをよく知っていたからだ。そこでジンジャーは門を開け放たせ、グリンダは兵士の一隊を率いて入城した。その後に、かかしとブリキの木こりが続き、ジャック・パンプキンヘッドはノコギリ馬にまたがり、教養ある、大きく拡大されたウォグルバグは威厳をもって後ろからぶらぶら歩いた。チップは女魔法使いのそばを歩いた。グリンダがその少年をたいそう気に入っていたからだ。
もちろん老いたモンビは、グリンダに見つかるつもりなどなかった。そこで敵たちが通りを進んでいるあいだに、魔女は王宮の庭にある茂みに咲く赤い薔薇へ姿を変えた。なかなか巧妙な考えで、グリンダも疑わない策だった。こうして、モンビを探すむなしい捜索に、貴重な数時間が費やされた。
日没が近づくと、女魔法使いは、自分が老いた魔女のすぐれた狡知に敗れたことを悟った。そこで配下の者たちに、都を出て天幕へ戻るよう命じた。
その時ちょうど、かかしと仲間たちは王宮の庭を探していた。そしてグリンダの命令に従おうと、失望しながら向きを変えた。だが庭を出る前に、花好きのブリキの木こりは、たまたま茂みに咲く大きな赤い薔薇を見つけた。そこでその花を摘み、自分のブリキの胸のブリキのボタン穴にしっかり留めた。

そのとき、薔薇から低いうめき声が聞こえたような気がした。だが彼はその音に注意を払わなかった。こうしてモンビは、だれにも一行が探しものを手に入れたと疑われぬまま、都の外へ、グリンダの陣営へ運ばれていった。

—
老いたモンビの変身
魔女は最初、自分が敵に捕まったと知っておびえた。だがすぐに、ブリキの木こりのボタン穴にいるのも、茂みに咲いているのも、安全さではまったく同じだと考えた。だれもその薔薇とモンビが同じものだとは知らなかったし、都の門の外に出た今、グリンダから完全に逃れる見込みはいっそう高まっていたからだ。
「だが急ぐことはない」とモンビは考えた。「しばらく待って、私に出し抜かれたと知ったときのあの女魔法使いの屈辱を楽しんでやろう。」
そこで一晩じゅう、その薔薇は木こりの胸に静かに載っていた。そして朝になり、グリンダが仲間たちを会議に召集すると、ニック・チョッパーはその可憐な花を白い絹の天幕へ連れていった。
「どういうわけか」とグリンダは言った。「私たちは狡猾な老モンビを見つけられませんでした。ですから、今回の遠征は失敗に終わりそうです。それが残念でなりません。私たちの助けがなければ、小さなオズマは決して救い出されず、エメラルドシティの女王という正当な地位に戻ることもないでしょう。」
「そんなに簡単にあきらめるのはやめよう」とパンプキンヘッドが言った。「ほかのことをしよう。」
「ほかのことをしなければならないのは確かです」とグリンダは微笑んで答えた。「けれど、私よりずっと魔法を知らない老いた魔女に、どうしてこうもたやすく敗れたのか理解できません。」
「私たちが現地にいるあいだに、オズマ姫のためにエメラルドシティを征服し、そのあとで娘を探すのが賢明だと思う」とかかしが言った。「そして娘が隠されているあいだは、私が喜んで代わりに統治しよう。私はジンジャーよりずっと統治の仕事を理解しているからね。」
「けれど私はジンジャーを煩わせないと約束しました」とグリンダは反対した。

「では皆さん、私の王国――いや、むしろ帝国へ一緒にお戻りになってはいかがでしょう」とブリキの木こりは、一行全員を王者らしい腕のひと振りで丁寧に含めて言った。「私の城でおもてなしできれば、このうえない喜びです。部屋は十分すぎるほどあります。それに、もしどなたかニッケルめっきをお望みなら、私の従僕が費用なしでいたします。」
木こりが話しているあいだ、グリンダの目は彼のボタン穴にある薔薇に注がれていた。そして今、彼女はその大きな赤い花びらがかすかに震えたように思った。これでたちまち疑いが芽生え、次の瞬間には、その薔薇に見えるものが老いたモンビの変身にほかならないと女魔法使いは判断した。同じ瞬間、モンビも自分が見破られたことを悟り、急いで逃げ道を考えねばならなかった。変身は彼女にとってたやすいことだったので、すぐに影の姿となり、天幕の壁に沿って入口へ滑っていった。そうして消えようと考えたのである。
だがグリンダは魔女に劣らぬ狡知を持つだけでなく、はるかに豊かな経験を積んでいた。そこで女魔法使いは影より先に天幕の開口部へたどり着き、手をひと振りして入口をぴたりと閉ざした。モンビが入り込めるほどの裂け目すら見つからないほどだった。かかしと友人たちは、グリンダの行動にひどく驚いた。だれも影に気づいていなかったからだ。だが女魔法使いは彼らに言った。
「皆さん、完全に静かにしていなさい! 老いた魔女は今まさに、この天幕の中で私たちと一緒にいます。私は彼女を捕らえるつもりです。」
この言葉にモンビはひどくうろたえ、すばやく影から黒い蟻へ姿を変えた。その姿で地面を這い、小さな体を隠せる裂け目や割れ目を探した。

幸いにも、天幕が張られていた場所は都の門のすぐ前で、地面は固く滑らかだった。蟻がまだ這い回っているうちに、グリンダはそれを見つけ、捕らえようと素早く駆け寄った。だが、その手がまさに下りようとした瞬間、恐怖でほとんど狂乱した魔女は最後の変身を行い、巨大なグリフィン[訳注:鷲の頭と翼、獅子の胴を持つ伝説上の怪物]の姿となって天幕の壁を突き破った。突進の勢いで絹は引き裂かれ、次の瞬間には旋風の速さで駆け去っていた。
グリンダはためらわず追った。ノコギリ馬の背に飛び乗り、叫んだ。
「さあ、生きている資格があることを証明しなさい! 走って――走って――走りなさい!」
ノコギリ馬は走った。稲妻のようにグリフィンを追い、木の脚はあまりに速く動いたため、星の光線のようにきらめいた。友人たちが驚きから立ち直る前に、グリフィンもノコギリ馬も視界の外へ駆け去っていた。
「来い! 追いかけよう!」かかしが叫んだ。
彼らはガンプが横たわっている場所へ走り、急いで乗り込んだ。
「飛んで!」チップがせきこんで命じた。
「どこへ?」ガンプは落ち着いた声で尋ねた。
「わからない」と、遅れにひどく焦っていたチップは答えた。「でも空へ上がれば、グリンダがどっちへ行ったかわかると思う。」
「よろしい」とガンプは静かに答えた。そして大きな翼を広げ、高く空へ昇った。

はるか遠く、草原の向こうに、今や二つの小さな点が前後して疾走しているのが見えた。彼らはその点がグリフィンとノコギリ馬にちがいないとわかった。そこでチップはガンプにその点へ注意を向けさせ、魔女と女魔法使いに追いつくよう命じた。だがガンプの飛行がどれほど速くとも、追われる者と追う者はさらに速く進み、数分もしないうちにぼんやりした地平線に溶け込んで見えなくなった。
「それでも追い続けよう」とかかしが言った。「オズの国は広くない。遅かれ早かれ、二人とも必ず止まるはずだ。」
老いたモンビは、グリフィンの姿を選んだ自分をたいそう賢いと思っていた。グリフィンの脚はこのうえなく速く、力もほかの動物より長く持つからだ。だが彼女は、ノコギリ馬の尽きることのない力を計算に入れていなかった。その木の脚は、速度を落とさず何日でも走れるのだ。したがって一時間も懸命に走ると、グリフィンは息が切れ始め、苦しげにあえぎ、息を荒げ、前よりゆっくり進むようになった。やがて砂漠の端にたどり着き、深い砂の上を駆け始めた。だが疲れた足は砂の奥深くに沈み込み、数分もしないうちにグリフィンは前のめりに倒れ、完全に力尽き、砂漠の荒れ地に横たわった。
少しして、まだ元気いっぱいのノコギリ馬に乗ったグリンダが追いついた。女魔法使いは帯から細い金の糸をほどき、息を切らして動けないグリフィンの頭へ投げかけた。こうしてモンビの変身の魔力を打ち消した。
その獣は激しく一度身震いすると、視界から消えた。そしてその場には老いた魔女の姿が現れ、女魔法使いの静かで美しい顔を、凶暴ににらみつけていた。

—
オズのオズマ姫
「あなたは私の囚人です。これ以上もがいても無駄です」とグリンダは、柔らかく甘い声で言った。「少しじっと横になって休みなさい。それから私の天幕へ連れて帰ります。」
「なぜ私を追うのだ?」モンビはまだ息が足りず、はっきり話すのもやっとだった。「私がおまえに何をしたというのだ。なぜこんなに迫害されねばならない?」
「私には何もしていません」と優しい女魔法使いは答えた。「けれど、あなたはいくつもの邪悪な行いをした疑いがあります。そしてあなたが魔法の知識をそのように悪用したことが本当だとわかれば、私は厳しく罰するつもりです。」
「おまえなど恐れぬ!」老いぼれはしゃがれ声で言った。「私に危害を加える勇気などないくせに!」
ちょうどそのとき、ガンプが彼らのところへ飛んできて、グリンダのそばの砂漠に降り立った。友人たちは、ついにモンビが捕らえられたと知って大喜びし、急ぎ相談した結果、全員でガンプに乗って陣営へ戻ることになった。そこでノコギリ馬が乗せられ、次にグリンダはモンビの首に巻かれた金の糸の端を握ったまま、囚人をソファへよじ登らせた。ほかの者たちも続いて乗り込み、チップがガンプに戻るよう命じた。
旅は無事に終わった。モンビは陰気でむっつりした様子で座っていた。魔法の糸が喉を取り巻いているかぎり、老いぼれはまったく無力だったからだ。軍はグリンダの帰還を大歓声で迎え、友人たちはすぐに王の天幕へ再び集まった。その天幕は彼らの不在中にきちんと修理されていた。
「さて」と女魔法使いはモンビに言った。「すばらしいオズの魔法使いがなぜあなたのもとへ三度訪れたのか、そして奇妙にも姿を消した子どもオズマがどうなったのか、話してもらいます。」
魔女はグリンダを挑むように見つめたが、一言も発しなかった。
「答えなさい!」女魔法使いが叫んだ。
だがモンビはなおも黙っていた。
「もしかしたら知らないんじゃないかな」とジャックが言った。
「お願いだから黙っていて」とチップが言った。「君のばかげた言葉で何もかも台無しになるかもしれない。」
「わかったよ、親愛なるお父さん!」パンプキンヘッドはおとなしく答えた。
「ああ、私がウォグルバグでよかった」と、大きく拡大された昆虫がそっとつぶやいた。「カボチャから知恵が流れ出すなど、だれも期待できませんからな。」
「さて」とかかしが言った。「モンビに話させるにはどうしたらいい? こちらの知りたいことを言わせられなければ、捕まえたところで何の役にも立たない。」
「親切にしてみてはどうでしょう」とブリキの木こりが提案した。「どんなに醜い相手でも、親切で征服できると聞いたことがあります。」
すると魔女は彼をあまりにも恐ろしい目でにらみつけたので、ブリキの木こりは恥じ入ったように後ずさりした。
グリンダはどうすべきか慎重に考えていたが、やがてモンビのほうを向いて言った。
「こうして私たちに逆らっても、何も得るものはありません。これは断言します。私は少女オズマについて真実を知ると決めています。あなたが知っていることをすべて話さないなら、私は必ずあなたを死刑にします。」
「ああ、だめです! それはなさらないで!」ブリキの木こりが叫んだ。「だれかを殺すなんて恐ろしいことです――たとえ老いたモンビであっても!」
「けれど、これはただの脅しです」とグリンダは答えた。「私はモンビを死刑にはしません。彼女は真実を話すほうを選ぶでしょうから。」
「ああ、なるほど!」ブリキの男はたいそう安心して言った。
「あなたの知りたいことをすべて話したとしよう」とモンビが言った。あまりに突然話し出したので、皆はぎょっとした。「そのとき私をどうするつもりだ?」
「その場合」とグリンダは答えた。「私はただ、強力な薬を飲んでもらいます。それを飲めば、これまで学んだ魔法をすべて忘れることになります。」
「そうなれば、私は無力な老女になってしまう!」
「でも生きてはいられるよ」とパンプキンヘッドが慰めるように言った。
「お願いだから黙っていて!」チップははらはらして言った。
「やってみるよ」とジャックは答えた。「でも、生きているのはよいことだと認めるだろう。」
「とりわけ徹底的に教育を受けている者ならば」とウォグルバグがうなずきながら付け加えた。
「選びなさい」とグリンダは老いたモンビに言った。「沈黙を続けるなら死、真実を語るなら魔力の喪失です。ですが、あなたは生きることを選ぶと思います。」
モンビは不安そうに女魔法使いをちらりと見た。そしてグリンダが本気であり、軽く扱える相手ではないと悟った。そこでゆっくり答えた。
「質問に答えよう。」
「そうすると予想していました」とグリンダは穏やかに言った。「賢い選択です。保証します。」
それから彼女は隊長のひとりに合図した。隊長は美しい金の小箱を持ってきた。女魔法使いはそこから巨大な白真珠を取り出した。真珠には細い鎖がついており、彼女はそれを首にかけた。真珠が胸の上、ちょうど心臓の真上に乗るようにしたのである。
「では」と彼女は言った。「最初の質問をします。魔法使いはなぜあなたのもとへ三度訪れたのです?」
「私が彼のところへ行かなかったからだ」とモンビは答えた。
「それは答えになっていません」とグリンダは厳しく言った。「真実を言いなさい。」
「そうだね」とモンビは目を伏せて答えた。「彼は私がティービスケットを作る方法を学びに来たのだ。」
「顔を上げなさい!」女魔法使いが命じた。
モンビは従った。
「私の真珠は何色です?」グリンダが問いただした。
「なぜ――黒い!」老いた魔女は驚いた声で答えた。
「ならば、あなたは嘘をつきました!」グリンダは怒って叫んだ。「真実が語られたときだけ、私の魔法の真珠は純白のままなのです。」
モンビは、女魔法使いをだまそうとしても無駄だとわかった。そこで敗北に顔をしかめながら言った。
「魔法使いは私のところへ少女オズマを連れてきた。そのとき彼女はまだ赤ん坊にすぎなかった。そしてその子を隠してくれと頼んだ。」
「そうだと思っていました」とグリンダは落ち着いて言った。「彼にそう仕える代わりに、何を受け取ったのです?」
「彼の知っている魔法の手品をすべて教えてもらった。よい術もあったし、ただのいかさまもあった。だが私は約束を守り続けた。」
「その娘をどうしたのです?」グリンダが尋ねた。この問いに、皆は身を乗り出し、答えを熱心に聞こうとした。
「魔法をかけた」とモンビは答えた。
「どんなふうに?」
「彼女を変えたのだ――その――」
「何に変えたのです?」魔女がためらうと、グリンダが問い詰めた。
「男の子に!」モンビは低い声で言った。
「男の子!」全員の声がこだました。そしてこの老女がチップを幼いころから育ててきたことを知っていたので、全員の目が少年の立っている場所へ向けられた。
「そうだ」と老いた魔女はうなずいた。「それがオズマ姫だ――父の玉座を盗んだ魔法使いが私のところへ連れてきた子だ。それこそがエメラルドシティの正当な支配者なのだ!」そう言って、長く骨ばった指をまっすぐ少年へ向けた。
「ぼくが!」チップは仰天して叫んだ。「だって、ぼくはオズマ姫なんかじゃない――女の子じゃない!」
グリンダは微笑み、チップのところへ行くと、彼の小さな茶色い手を自分の可憐な白い手で取った。
「今のあなたは女の子ではありません」と彼女は優しく言った。「モンビがあなたを男の子に変えたからです。けれどあなたは女の子として生まれ、しかも姫として生まれました。だから本来の姿に戻り、エメラルドシティの女王にならなくてはなりません。」
「ああ、ジンジャーを女王にしてよ!」チップは泣き出しそうになって叫んだ。「ぼくは男の子のままでいたい。かかしやブリキの木こりやウォグルバグやジャックと旅をしたい――そうだ! 友だちのノコギリ馬やガンプとも! 女の子になんかなりたくない!」
「気にするな、相棒」とブリキの木こりはなだめるように言った。「聞くところでは、女の子でいるのは痛いことではないらしい。それに私たちはみな、これまでどおり君の忠実な友だちでいる。正直に言うと、私はずっと、女の子のほうが男の子より感じがいいと思っていた。」
「少なくとも、同じくらい感じはいい」とかかしも、愛情をこめてチップの頭をなでながら付け加えた。
「そして同じくらい優秀な学生でもあります」とウォグルバグが宣言した。「あなたが再び女の子へ変身したら、私はぜひあなたの家庭教師になりたいものです。」
「でも――ちょっと待って!」ジャック・パンプキンヘッドが息をのんで言った。「君が女の子になったら、もうぼくの親愛なるお父さんではいられないじゃないか!」
「うん」とチップは不安ながらも笑って答えた。「その関係から逃れられるなら、残念ではないよ。」
それから彼はグリンダのほうを向き、ためらいがちに付け加えた。「少しのあいだ試してみてもいいかもしれない――どんな感じか確かめるためにね。でも女の子でいるのが嫌だったら、また男の子に戻してくれると約束してください。」
「実のところ」と女魔法使いは言った。「それは私の魔法の及ぶところではありません。私は変身術を扱いません。変身は正直なものではなく、きちんとした女魔法使いは、物を本来そうでないものに見せかけることを好まないのです。その術を使うのは良心のない魔女だけです。ですから、あなたを魔法から解放し、本来の姿へ戻すには、モンビにやらせねばなりません。これが彼女にとって魔法を使う最後の機会になります。」
オズマ姫についての真実が明らかになると、モンビはチップがどうなろうと気にしなかった。だがグリンダの怒りを恐れていたし、少年は自分がエメラルドシティの支配者になったなら、モンビの老後の面倒を見ると寛大に約束した。そこで魔女は変身を行うことに同意し、その準備がただちに整えられた。
グリンダは自分の王用の寝椅子を天幕の中央に置かせた。その上には薔薇色の絹で覆われたクッションが高く積まれ、上の金の手すりからは薄桃色のゴッサマー[訳注:ごく薄い絹や紗のような布]が幾重にも垂れ下がり、寝椅子の内側をすっかり隠していた。
魔女がまず行ったのは、少年に薬を飲ませることだった。その薬により、少年はすぐ深く夢のない眠りに落ちた。するとブリキの木こりとウォグルバグが彼をそっと寝椅子へ運び、柔らかなクッションの上に寝かせ、薄布の垂れ幕を引いて、地上のあらゆる視線から彼を隠した。
魔女は地面にしゃがみ込み、胸もとから取り出した乾いた草で小さな火を起こした。炎が立ちのぼり、澄んで燃え上がると、老いたモンビは魔法の粉をひとつかみ火の上へまいた。するとたちまち豊かな紫色の煙が立ちのぼり、天幕じゅうを芳香で満たし、静かにするよう警告されていたにもかかわらず、ノコギリ馬にくしゃみをさせた。
それから、ほかの者たちが不思議そうに見守るなか、老いぼれはだれにもわからない言葉で韻を踏む呪文を唱え、痩せた体を火の上で七度、前後に折り曲げた。そして今、呪いは完成したようだった。魔女はまっすぐ立ち上がり、「イエオワ!」という一語を大声で叫んだ。
煙は漂い去り、空気はふたたび澄み、さわやかな風が天幕を満たした。そして寝椅子の桃色のカーテンが、内側から揺らされたかのようにかすかに震えた。
グリンダは天蓋のところへ歩み寄り、絹の垂れ幕を分けた。それからクッションの上へ身をかがめ、手を差し伸べると、寝椅子から若い少女の姿が立ち上がった。五月の朝のようにみずみずしく、美しかった。瞳は二つのダイヤのように輝き、唇はトルマリンのような色合いを帯びていた。背中には赤みがかった金色の髪が滝のように流れ、額のところで細い宝石の輪がそれを留めていた。絹の紗の衣は雲のように彼女のまわりに漂い、足には可憐なサテンの靴が履かれていた。
この精妙な幻のような姿を前に、チップの昔の仲間たちはまる一分ものあいだ驚き見つめ、それから皆が、愛らしいオズマ姫への心からの敬意をこめて深く頭を下げた。少女自身は、喜びと満足に輝くグリンダの明るい顔を一度見つめ、それからほかの者たちへ向き直った。彼女は甘くはにかんだ声で言った。
「どうか皆さん、前より私を嫌いにならないでください。私は同じチップなのです。ただ――ただ――」
「ただ、違っているだけだね!」とパンプキンヘッドが言った。そして皆は、それが彼のこれまででいちばん賢い言葉だと思った。

—
満ち足りるという富
驚くべき知らせがジンジャー女王の耳に届いたとき――魔女モンビが捕らえられたこと、彼女がグリンダに罪を告白したこと、そして長く行方知れずだったオズマ姫が、ほかならぬ少年チップの身の上に見いだされたこと――ジンジャーは悲しみと絶望の本物の涙を流した。
「ああ」と彼女はうめいた。「女王として治め、宮殿に住んだあとで、また床をこすり、バターをかき混ぜる生活に戻らなきゃならないなんて! 考えるだけでも恐ろしい! 絶対に承知しないわ!」
そこで、宮殿の台所でほとんどの時間をファッジ作りに費やしていた兵士たちが抵抗を勧めると、ジンジャーは彼女たちの愚かなおしゃべりに耳を貸し、善い魔女グリンダとオズマ姫へ鋭い挑戦状を送った。その結果は宣戦布告となり、その翌日、グリンダは旗をひるがえし、楽隊を奏でさせ、陽光の下できらきら輝く槍の森を従えて、エメラルドシティへ進軍した。
だが城壁まで来ると、この勇ましい一団は突然足を止めた。ジンジャーがすべての門を閉ざしてかんぬきを掛けており、エメラルドシティの城壁は、緑の大理石を幾重にも積んで高く厚く築かれていたからだ。進軍をこうして阻まれたグリンダは、眉をひそめて深く考え込んだ。その一方でウォグルバグが、いかにも断定的な口調で言った。
「都を包囲し、飢えさせて降伏させるしかありません。それが私たちにできる唯一のことです。」
「そうではない」と、かかしが答えた。「私たちにはまだガンプがいる。そしてガンプはまだ飛べる。」
この言葉に女魔法使いは素早く振り向き、その顔には明るい笑みが浮かんだ。
「その通りです」と彼女は叫んだ。「あなたが脳みそを誇るのももっともです。すぐにガンプのところへ行きましょう!」
そこで彼らは軍の列のあいだを通り抜け、かかしの天幕の近くに横たわっているガンプの場所へ向かった。まずグリンダとオズマ姫が乗り、ソファに腰を下ろした。次にかかしと友人たちが乗り込んだが、それでも隊長ひとりと兵士三人を乗せる余地があり、グリンダは護衛としてそれで十分だと考えた。

さて、姫のひと言で、彼らがガンプと呼んでいた奇妙なモノはヤシの葉の翼をはばたかせ、空へ舞い上がった。そして冒険者一行を城壁のはるか上へ運んだ。彼らは宮殿の上空を漂い、ほどなく中庭のハンモックにジンジャーが寝そべっているのを見つけた。彼女は緑の表紙の小説をくつろいで読み、緑のチョコレートを食べながら、城壁が敵から守ってくれると信じきっていた。素早い命令に従い、ガンプはまさにその中庭へ無事に降り立った。ジンジャーが悲鳴を上げる以上のことをする間もなく、隊長と三人の兵士が飛び降り、かつての女王を捕らえ、両手首に頑丈な鎖をかけた。
その行動で、実際には戦争は終わった。反乱軍はジンジャーが捕虜になったことを知るとすぐに降伏し、隊長は安全に通りを進んで都の門まで行き、それを大きく開け放った。すると楽隊はもっとも心を奮い立たせる音楽を奏で、グリンダの軍は都へ行進して入った。伝令たちは、大胆不敵なジンジャーの征服と、美しいオズマ姫が王家の祖先の玉座に就いたことを告げ知らせた。

ただちにエメラルドシティの男性たちはエプロンを脱ぎ捨てた。そして女性たちは夫たちの料理を食べることにすっかりうんざりしていたので、皆がジンジャーの敗北を喜んで迎えたと言われている。確かなのは、善良な妻たちが一斉に自分の家の台所へ駆け込み、疲れ切った男たちのためにたいへんおいしいごちそうを用意したので、どの家庭にもただちに調和が戻ったということだ。
オズマが最初に行ったのは、反乱軍に対し、公共の通りや建物から盗んだエメラルドその他の宝石をすべて返還させることだった。そして虚栄心の強い娘たちが台座から外した宝石の数はあまりに多く、王室の宝石職人たちは全員、それらを元の場所にはめ直すため、一か月以上も絶え間なく働いた。
そのあいだに反乱軍は解散させられ、少女たちは母親のもとへ帰された。ジンジャーもまた、行儀よくするという約束のもとで釈放された。
オズマはエメラルドシティがこれまで知ったなかで、もっとも愛らしい女王となった。そしてとても若く未経験ではあったが、知恵と正義をもって民を治めた。グリンダがあらゆる場面でよい助言を与えたからであり、公共教育官という重要な地位に任命されたウォグルバグも、王の務めが難しくなったときにはオズマの大いなる助けとなった。
少女は、ガンプの働きに感謝して、その生き物に望む褒美を何でも与えようと言った。
「それなら」とガンプは答えた。「どうか私をばらばらにしてください。私は命を与えられることを望んでおらず、自分の寄せ集めの人格を大いに恥じております。かつて私は森の王者でした。それはこの角が十分に証明しています。ところが今の私は、この布張りの隷属状態で、空を飛ぶことを強いられている――脚など私にはまったく役に立ちません。ですから、私は解体されることを願います。」
そこでオズマはガンプを分解するよう命じた。角の生えた頭はふたたび広間の炉棚の上に掛けられ、ソファはほどかれて応接間へ置かれた。箒のしっぽは台所でいつもの仕事へ戻り、最後に、かかしはそのモノが作られた運命の日に自分が外した物干し綱や縄を、もとの掛け釘へすべて戻した。
それでガンプは終わりだと思うかもしれない。実際、飛行機械としてはそうだった。だが炉棚の上の頭は、話したくなるたびに話し続け、女王との謁見を広間で待つ人々を、しばしば唐突な質問でびっくりさせた。
ノコギリ馬はオズマの個人的な持ち物だったので、優しく世話された。オズマはしばしば、その奇妙な生き物に乗ってエメラルドシティの通りを進んだ。木の脚がすり減らぬよう金の蹄鉄を履かせたので、その金の靴が舗道でちりんちりんと鳴るたび、女王の臣民たちは彼女の魔法の力の証を思い、畏敬の念に満たされた。
「すばらしい魔法使いも、オズマ女王ほどすばらしくはなかった」と人々はささやき合った。「彼はできもしないことをたくさんできると主張した。ところが私たちの新しい女王は、だれも成し遂げるとは思わないようなことをいくつもやってのけるのだ。」
ジャック・パンプキンヘッドは生涯の終わりまでオズマのもとに残った。そして自分が恐れていたほど早く腐ることはなかったが、いつまでも相変わらず愚かなままだった。ウォグルバグは彼にいくつかの芸術や科学を教えようとした。だがジャックはあまりにも出来の悪い生徒だったので、彼を教育しようとする試みはすぐに放棄された。
グリンダの軍が故郷へ戻り、エメラルドシティに平和が戻ったあと、ブリキの木こりは自分のウィンキー国へ帰るつもりだと告げた。
「それほど大きな王国ではありません」と彼はオズマに言った。「だがそのぶん治めやすいのです。そして私は絶対君主であり、公私の事柄について、だれも私のやり方に一切干渉しないので、自分を皇帝と呼んでいます。家へ帰ったら、新しいニッケルめっきの上着をつけるつもりです。最近、少し傷つき、引っかき跡もできましたから。その後で、あなたが訪ねてくださればうれしく思います。」
「ありがとう」とオズマは答えた。「いつかその招待を受けるかもしれません。でも、かかしはどうなるのです?」
「私は友人のブリキの木こりと一緒に帰ります」と、詰め物の男は真剣に言った。「私たちは今後けっして離れないと決めたのです。」

「そして私は、かかしを王室財務官に任命しました」とブリキの木こりは説明した。「お金でできている王室財務官を持つのはよいことだと思いついたのです。どう思われます?」
「私は」と小さな女王は微笑んで言った。「あなたのお友だちは世界中でいちばん裕福な人にちがいないと思います。」
「その通りです」とかかしは答えた。「だがお金のためではありません。私は、あらゆる点で脳みそはお金よりはるかに優れていると考えているからです。お気づきかもしれませんが、脳みそなしにお金を持っていても、それを有益に使うことはできません。しかしお金なしに脳みそを持っていれば、それはその者を生涯の終わりまで快適に暮らさせてくれます。」
「それと同時に」とブリキの木こりは言った。「よい心というものは脳みそでは作れず、お金でも買えないことを認めねばなりません。結局のところ、世界中でいちばん裕福なのは私かもしれません。」
「あなた方は二人とも豊かです、友よ」とオズマは優しく言った。「そしてあなた方の富こそ、持つ価値のある唯一の富――満ち足りるという富なのです!」

—
おしまい

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公開日: 2025-09-09