ナイル川最後のエジプト人――ナイルのロマンス

「アッラーフ・アクバル!」と彼は言った。「異邦人よ、私の持つものすべてを歓迎しよう」(参照 )
挿絵 フランシス・P・ワイトマン
フィラデルフィア エドワード・スターン・アンド・カンパニー 1908年
Copyright, 1907, by Edward Stern & Co., Inc.
1908年5月1日刊行
本書を
エドワード・スターン氏に捧ぐ
エジプトの荒野をともに旅した友へ
著者
第一章 砂漠とナイル川の出会う場所
太陽はナイル川の胸に熱く照りつけ、そこにまとわりついていた。震え、ためらいながらも執拗に、赤黒い川面の奥へ光を突き通そうとして果たせず、苛立っているかのようだった。だがナイル川は太陽に屈しない。太陽を、その力が絶対である広大な天の領域へと押し戻す。
大河の両岸では、人々がラーの煮えたぎる円盤から身を潜めていた。シャドゥフ[訳注:てこの原理で川の水を汲み上げる灌漑用具]を扱う者たちは、革張りの桶と竹竿を放り出し、まばらに枝を広げた木の下や、熟したサトウキビの茎で持ち上げた莚の陰へ逃げ込んでいる。漁師の舟は小さな入り江に寄せられ、帆を日除けに広げて乗組員を守っていた。農作業に従事するファッラーヒーンたちはみな土造りの小屋へ引き揚げ、午後でもっとも苛烈な暑さを眠ってやり過ごしていた。
しかしナイル川の上では、小型蒸気ダハビーヤ[訳注:ナイル川を航行する帆船型の客船]が億劫そうに煙を吐き、海へとなだれ下る大河の流れを、鈍重な動きで遡っていた。裸で汗まみれのアラブ人火夫は、小さなボイラーからできる限り離れて立ち、浅黒い顔に心底うんざりした表情を浮かべてそれを見張っていた。機関士もアラブ人で、甲板に長々と横たわって半ば眠っている。だが両耳だけは、酷使されるがたついた機関が役目を果たせなくなったと告げる音を聞き漏らすまいと澄ませていた。小さな船室の後ろには、仲間たちと同じく裸で身じろぎもしない褐色の舵取りが座っている。そして甲板の日除けの下には、一行でただ一人の白人――カーキ色のニッカーボッカーと、喉元を大きく開けた白い絹のシャツを身につけた若いイングランド人が寝そべっていた。
この季節、エジプトに観光客はいない。四月のナイル川で白人を見かけたなら、その男は発掘に従事する探検隊の一員か、さもなくばカイロ、アシュート、あるいはルクソールから緊急任務で派遣された政府職員のどちらかである。
だがこのダハビーヤは政府船ではない。となれば、われらがイングランド人は役人よりも探検家である可能性が高かった。日に焼けた肌と、黒いブライヤーのパイプをふかしながら筋肉質の身体をくつろがせ、現状を静かに甘受している様子から見て、熱帯の気候に不慣れな男ではないことは明らかだった。眠ってはいない。低い籐の枕に頭を預け、鋭い青い目でナイル川の両岸を見渡していた。
三人のアラブ人は時折、驚きとある種の敬意が入り交じった忍びやかな視線を主人へ向けた。日中の暑さのなかを旅するとは、この異邦人は馬鹿に違いない。それだけは疑いようがない。いつ働き、いつ眠るべきかを土地の者は知っている――ヨーロッパ人が決して学ばぬ教訓だ。とはいえこの男は、愚かさに任せて行動する行きずりの冒険家ではない。何年も彼らの間で暮らし、アラビア語を流暢に話し、現代エジプトの至る所に残る死せる時代のヒエログリフさえ読み解く男だった。ハッサンもアブダラもアリも、それをよく知っていた。以前の探検でもウィンストン・ベイに同行し、醜い石に刻まれた醜い記号を、見事なアラビア語に訳すのを聞いていたからだ。それはそれで驚くべきことだが、彼らに言わせれば何の役にも立たず、実用性もない。そして主人自身もまた実用性に欠けていた。いつも愚かなことをし、不要な目的を果たすために、自分のみならず召使いたちの快適さまで犠牲にする。気まぐれに高い金を払わなければ、ウィンストン・ベイは従者を求めても誰一人見つけられなかっただろう。だがアラブ人は、ヨーロッパ人の誰もが欲しがる黄金を手にするためなら、四月の午後、ナイル川の上で焼かれることすら厭わない。
四時になると、そよ風が起こった。だが、だから何だというのか。旅はもうほとんど終わっている。船は川の湾曲を回り込み、その先、東岸に寄り添うようにアブ・フェダ山の低い山並みが見えていた。岩山が唐突に途切れる南側には、小さな椰子の木立がある。椰子と山の間には、ナイル川から一マイルほど内陸のアル・クシイェ村へ通じる踏み固められた道が延びていた。主人がこれほど遠くから、これほど急いで訪れようとしている、まさにその場所である。
ほとんど感じられぬほどの風ではあったが、疲れきった旅人たちをいくらか生き返らせた。ウィンストンは身を起こしてパイプの灰を落とし、同時に前方の死んだような景色を丹念に見渡した。
灰色の石灰岩からなる山々は、恐ろしい太陽熱の下で灼けつき、ひどく近寄りがたい姿をさらしていた。山裾から川まで、植物の影は一つもない。ただ硬く乾いた粘土の地面があるばかりだった。ところどころには砂漠の砂が吹き溜まっている。椰子の下にさえ厚く積もっていた。ナイル川とアル・クシイェの間にある土地は自然のなすがままに放置され、ファッラーヒーンたちは一度として開墾しようとしなかったからだ。
東岸近くは水深があった。川の湾曲によって流れが岸辺へ押し寄せていたからである。小さなダハビーヤは騒々しく煙を吐きながら岸へ近づき、硬い粘土の上にイングランド人を降ろした。それから浅瀬へ向かって後退し、ハッサンが機関を止める一方、アブダラが錨を下ろした。
ウィンストンはコルク製のヘルメットをかぶり、内側に緑の布を張った茶色い傘を携えていた。いかに精力的な男でも、ダハビーヤの甲板から岸辺の窯のような大気へ足を踏み入れた途端、村まで進もうとする決意を挫かれそうになった。
だが、こんなに早く部下を呼び戻すわけにはいかない。判断を誤ったと認めたものと受け取られるだろう。アラブ人を使うには、自分は何をしているか承知しているのだと信じ込ませるしかない。椰子の木は遠くなかった。太陽が低くなるまで、その陰で休めばいい。
十二歩も進まぬうちに、全身の毛穴から汗が噴き出した。それでも頑として歩き続け、最初の椰子が落とす細長い影までたどり着くと、砂の上にしゃがみ込み、ハンカチで顔を拭った。
息苦しいほどの静寂だった。それを破る音は何一つない。甲虫さえ砂の奥深くに隠れ、近くに人家もないため、ロバのいななきもラクダの荒々しいうなり声も聞こえなかった。この辺りではナイル川も静かに流れ、船もすでに機関の煙とがたつく音を止めていた。
ウィンストンは両手で砂の表層を払いのけた。表面の砂は熱すぎて、触れていられなかったからだ。それから身体を伸ばして休み、山とナイル川の間を抜けてくる微かな風を顔に受けようと、あちらへこちらへと身をよじった。どうあっても不快な一、二時間を過ごす運命である。選んだ場所より居心地のよさそうな影はないかと、ほかの木陰へ物欲しげな視線を送った。
そうして見回しているうち、少し離れたところに白いものを見つけた。木立の一番奥にある木の影、その真上にあり、好奇心をそそられた。一分ほどしてから、彼はゆっくり立ち上がり、白いものへ歩み寄った。近づいてみると、それは汚れた木綿のチュニックかブルヌースだった。半ば砂に埋まり、その一端には、粗い布地に色褪せた赤と黄色の縞が走る、汚れたターバンのひだが見えていた。
ウィンストンがブルヌースを踏みつけると、中のものが動き、くぐもったうなり声を発した。そこで容赦なく蹴りつけたが、今度は動きもせず、音も立てなかった。代わりにターバンのひだの間に細い隙間が開き、黒く光る一つの目が、侵入者をじっと見据えた。
「よくも私の眠りを妨げたな、この間抜け。私を獣とでも思っているのか?」
穏やかな声がアラビア語で言った。
暑さでウィンストン・ベイは気が立っていた。
「そうだ。おまえは犬だ。起きろ!」
そう命じ、もう一度その身体を蹴った。
ターバンが外され、顔が現れた。男は起き上がると、裸足の脚を身体の下で交差させ、苦しめる相手をまっすぐ見つめた。
あちこちがひどく変色した粗末なブルヌースのほか、男は何も身につけていなかった。胸元と膝から下に肌が露出しており、清潔そのものという印象からは程遠い。細身ながら肩幅は広く、手足が長い。腕も脚も筋張っており、その姿は不思議なほど、古代神殿の壁に描かれた絵文字の人物像を思わせた。額は高く、顎は角張り、目は大きく柔らかい。頬はふっくらし、口は広く官能的で、鼻は短く丸い。顎骨がわずかに前へ突き出し、髪は滑らかで細かった。肌の色はイングランド人の陽焼けした皮膚より濃くはないが、その褐色は柔らかで、たっぷりのクリームを注いだコーヒーに似ていた。それなりに美しい男である。威厳というより無頓着さを感じさせる表情の奥には、ウィンストン・ベイよりさらに抜け目なく経験豊かな観察者でさえ惑わせる顔が隠されていた。
イングランド人は相手をじっと見ながら言った。
「おまえはコプト教徒だな。」
うっかり母国語で話していた。男は笑った。
「世間一般の偏見に従い、コプト教徒はすべてキリスト教徒だと考えているなら、私はコプトではない。だが私がエジプト人であり、アラブの犬ではないという意味なら、その見立てはまさしく正しい。」
よどみのない英語だった。ウィンストンは思わず驚きの声を漏らした。土地の者が英語を話すこと自体は、さほど珍しくない。しかし彼の知る限り、これほど流暢かつ自信に満ちて話す者はいなかった。彼は過熱した砂を少し払い、初対面の男と向かい合って腰を下ろした。
「ひょっとすると」声にわずかな皮肉を込めて言った。「私はラムセス大王その人の末裔と話しているのかな。」
「それ以上だ」と相手は平然と応じた。「私の祖先はアフトカ・ラー。まぎれもない王家の血を引き、第二のラムセスを巧みに操った男だ。あの愚かな王は、自分がエジプト人を支配しているつもりだったがな。」
ウィンストンは面白がっているようだった。
「残念ながら」わざとらしく丁重な口調で言った。「その偉大なるご先祖について、これまで聞いたことがない。」
「なぜ聞いたことがあるはずだ?」とエジプト人は問い返した。「あんたもおそらく、古い神殿や墓の碑文を解読しようという愚かな企てのために、エジプト中をうろつき回る落ち着きのない研究者の一人なのだろう。多少は読める――そうだろう。だが、そのわずかな知識に惑わされ、混乱している。あんたたちが誇る最高の学者――マリエットだのペトリーだのマスペロだのは、一つの手がかりを見つければ二十もの推測を重ね、古代王たちの驚くべき歴史をでっち上げる。真実の記録を知る者にとっては、笑止千万な代物だ。」
「誰が知っている?」とウィンストンは素早く尋ねた。
男は目を伏せた。
「誰も知らぬかもしれない」ぼそりと言った。「せいぜい一人か二人だ。だが、まず古代エジプト人の言葉を学べば、あんたたちも今より多くを知るだろう。そうすれば記号や絵文字を解読したとき、それが何を意味するか、ある程度の確信をもって判断できる。」
ウィンストンは鼻を鳴らした。「質問に答えろ!」と厳しく言った。「真実の記録を知る者とは誰だ。記録はどこにある?」
「ああ、私はひどく無知な男だ」相手は謙虚な表情で首を振った。「哀れなカーラごときが、ヨーロッパの学者たちに異を唱えるなど、とてもとても。」
イングランド人はヘルメットで自分をあおぎ、しばらく黙って座っていた。
「だが、おまえの祖先――ラムセス大王を支配したという男は、何者だった?」やがて尋ねた。
「すでに言ったとおり、人々は彼をアフトカ・ラーと呼んだ。名高いハトシェプスト女王の末裔で、その血は純粋だった。本来なら、わが祖先こそエジプトの王として君臨すべきだった。だが最初のラムセスがメネスの王統を覆し、己の王朝を打ち立てた。自らの名で国を治めることはかなわなかったが、それでもアフトカ・ラーは、意志の弱いラムセスを介してエジプトを支配した。彼はラムセスのもとで、アメン神の大神官、収穫の主、財務長官の称号を帯びた。王国のすべてを統制し、切り盛りしたのだ。ラムセスを戦争へ送り出して忙しくさせ、王が戻れば神殿や宮殿を建てさせ、自分を讃える記念碑を建立させた。政治の実務へ口出しする口実を与えぬためだ。だから、虚栄心に満ちた王の碑文を読むあんたたちは、その権力に驚き、彼を偉大と呼ぶ。だが無知ゆえに、エジプト史上もっとも優れた統治者アフトカ・ラーの名さえ知らない。」
「確かに、われわれはその人物を知らない」ウィンストンは困惑した表情で目の前の男を観察した。「おまえはエジプト学者より詳しいようだな!」
カーラは傍らの砂へ両手を差し入れ、指の間から粒をこぼしながら、物思わしげにそれを見つめた。
「ラムセス2世は」彼は言った。「六十五年間統治し――」
「六十七年だ」とウィンストンが訂正した。「そう記されている。」
「偽りの碑文にはな」とエジプト人は説明した。「わが祖先はラムセスの死を二年間隠した。後継者となるメルエンプタハが不倶戴天の敵だったからだ。だがついに秘密を突き止めたメルエンプタハは、直ちにアフトカ・ラーを殺した。すでに老い、もはや抵抗できなかったのだ。その後、わが祖先が築いたピトムとラームセスの宝物都市は新王に接収されたが、そこから宝は一つも見つからなかった。死してなお、偉大なる祖先は敵を欺き、屈辱を味わわせたのだ。」
「聞け、カーラ」ウィンストンは、抑えきれぬ熱情に声を震わせた。「今おまえが話したことを知っているということは、科学者たちがこれまで知らなかった何らかの記録を発見したということだ。古代エジプト史の謎を解き明かそうと努めるわれわれにとって、その情報は計り知れない価値を持つ。おまえの知識を私にも分けてくれ。その秘密と引き換えに何が欲しいか言え。おまえは貧しい。私が金持ちにしてやる。無名なら、カーラの名を世に知らしめよう。若いのだから、人生を楽しめばいい。話せ、わが兄弟よ。私は必ず公平に扱う――イングランド人の名誉にかけて。」
エジプト人は顔さえ上げず、砂を弄び続けた。しかし厳粛な顔に、ゆっくりと笑みが広がった。
「まだ五分も経っていない」静かにつぶやいた。「私は二度蹴られ、犬と呼ばれた。ところが今ではイングランド人の兄弟となり、金持ちにしてもらい、名まで高めてもらえるらしい。」
ウィンストンは、また蹴ってやりたいと言わんばかりに顔をしかめた。だが誘惑には耐えた。
「どうしろと言うのだ?」無関心を装って尋ねた。「ブルヌースを見ればアラブ人だと思っても仕方ない。アラブ人は時々蹴られたほうが身のためだ。」
カーラは冗談にも謝罪にも気づかなかったのかもしれない。読み取れぬ顔をなお砂へ向けたまま、何も答えなかった。
イングランド人は落ち着かなげに身じろぎした。それからポケットから紙巻き入れを取り出し、開いてエジプト人の前へ差し出した。
カーラは紙巻きを見た。顔に浮かんだのは、このとき初めて見せる興味だった。ひどくゆっくりと一礼し、右手で額、次いで胸に触れ、それから身を乗り出して悠然と一本選んだ。
ウィンストンがマッチを取り出して火をつけると、エジプト人はその一挙一動を真剣な目で追った。まず自分の紙巻きに火を移し、次いでカーラの一本へ。カーラは再び額と胸に触れると、贅沢そうに煙を吸い込んだ。目は明るくなり、心から満足した表情を浮かべている。
イングランド人は相手が三服目を吸うまで黙って見守った。儀式が終わったと見て、慎重に言葉を選びながら話し始めた。
「われわれは、兄弟たるおまえの祖国で滅びた文明の記録を、あらゆる手を尽くして探している。だが過去と同じく未来においても、もっとも重要な文書を発見するのは現代のエジプト人自身だろうと、よく承知している。何世代にもわたって伝わる伝承のおかげで、おまえたちは重要なパピルスや石板の隠し場所を密かに知っている。アブ・フェダ山、あるいはアル・クシイェ近郊に隠された墓があり、おまえがその場所を知っているなら、二人で開けよう。そして手に入れたものから等しく利益を得ようではないか。」
エジプト人は首を振り、苛立たしげな仕草で紙巻きの灰を弾いた。
「あんたは、私の知識の源を見誤っている」やや刺々しい声だった。「この襤褸を見ろ」両腕を広げた。「報酬を得る方法を知っていたなら、あんたの申し出を断ると思うか? 私は何か月も紙巻きを吸っていない。冬に通訳のタドロスがアル・フェダへ来て以来、一度もだ。サンダルを履き潰しても買い替えるあてがないから裸足でいる。腹を空かせることもしばしばだ。仲間とも世間とも関わらず、ジャッカルのように身を潜めて暮らしている。それが王の息子、王家のカーラだ!」
ウィンストンは驚いた。土地の者が、いかに身分が低くとも自分の境遇を嘆いたり、不満を露わにしたりすることは滅多にない。だがここには、すべてに反抗する男がいる。
「なぜだ?」と尋ねた。
「高貴な生まれが私を孤立させるからだ」誇りをにじませて答えた。「エジプトの力が失われ、その子らがアラブのムスリムに蔑まれ、イングランドのキリスト教徒に打ちのめされている時代に、偉大なるアフトカ・ラーの直系の末裔カーラであるのは、楽なことではない。」
「村に住んでいるのか?」とウィンストンが尋ねた。
「いや。私の穴倉は山の裏手に固まった小屋の一つだ。フェダと呼ばれている。」
「誰と暮らしている?」
「祖母のハタッチャ。」
「ああ!」
「知っているのか?」
「いや。ただ、父の時代に社交界のロンドンを熱狂させた、エジプトの王女ハタッチャを思い出しただけだ。」
カーラは勢いよく身を乗り出し、それから山、砂漠、ナイル川を見回すように、半ば怯えた視線を走らせた。
「その女のことを話してくれ!」声を囁きに落として言った。
「王女のことか?」ウィンストンは驚いた。「実のところ、その経歴はほとんど知らない。聞いた話では、眩い東洋の豪奢をまとって突然現れ、たちまちイングランドの貴族たちが寵愛を求めて群がったという。なかでもローン卿は、美しいエジプト女と結婚するため妻と離婚までした。ところが彼女は結婚を拒んだ。ハタッチャがロンドンから姿を消すまで、醜聞には事欠かなかった。消え方は現れ方と同じく謎めいており、一日の予告もなかった。夢中になった崇拝者の何人かは捜索に莫大な財産を投じ、エジプト全土を探し回ったが、何の成果もなかった。その後、彼女の消息を聞いた者はいない。」
カーラは深く息を吸い、静かに吐き出した。
「祖母らしい」つぶやいた。「いつだってセトの娘だった。」
ウィンストンは相手を凝視した。
「まさか――」と言いかけた。
「そうだ」カーラは再び怯えたように周囲を見回し、囁いた。「それをしたのは祖母のハタッチャだ。このことは口外するな、兄弟。祖母はいまだに悪魔どもと通じている。もし憎まれれば、私たちは二人とも滅ぼされる。祖母の娘、つまり私の母は、今あんたが口にしたローン卿の子だった。だが母は父親のこともイングランドのことも知らなかった。私自身もナイル川から一日の旅ほども離れたことがない。ハタッチャが私を奴隷にしているからだ。」
「まだ生きているなら、相当な年齢だろう」ウィンストンは考え込むように言った。
「ロンドンへ行ったときは十七歳だった」カーラは答えた。「三年後、母を腕に抱いてここへ戻った。私が生まれたとき、その娘は三十五歳だった。それが二十三年前だ。五十八は老齢とはいえないが、私が物心ついた頃には、ハタッチャはすでに萎びた老婆だった。そして今も変わらない。オシリスの御頭にかけて、兄弟よ、祖母は私が墓の中で硬くなるまで生き続けるに違いない。」
「英語を教えたのは彼女か?」
「そうだ。赤子の頃にはもう話せた。二人きりの会話では、祖母はいつも英語を使ったからだ。あんたたちがコプト語と呼ぶ古代エジプト語も話せるし、祖先のヒエログリフや絵文字を正確に読める。当然、アラビア語も知っている。ハタッチャは入念な教師だった。」
「母親はどうした?」とウィンストンが尋ねた。
「私が幼い頃に逃げ出し、カイロのあるアラブ人のハレムへ入った。それきり私たちの人生から消え、私はずっと祖母と暮らしてきた。」
「どうやら」イングランド人は嘲るように言った。「おまえの王家の血も、結局それほど純粋ではないらしいな。」
「なぜだ?」カーラは冷静に返した。「われわれが受け継ぐのは母からではないか。王家のハタッチャが祖母である以上、祖父が誰であろうと大した問題ではない。母も、私の父が誰かなど考えなかったかもしれない。重要ではないからだ。私は母を通して偉大なるアフトカ・ラーの血を引いた。その血が私の中で再び生きている。結婚という空虚な儀式を取り払えば、ヨーロッパ人のあんたたちも、母を通じてしか真の血統を誇れない。父親を顧みない私の血以上に純粋だとは断言できまい。父が子に与えるものなどごく僅かだ。何者であろうと、その血を汚すことなどほとんどできない。」
相手はその議論にほとんど注意を払わなかった。内容は耳に胼胝ができるほど聞き慣れた陳腐なものだった。ウィンストンは、この型破りなエジプト人を通して得た奇妙な発見について深く考えていた。
「では」思考を追うように彼は言った。「祖先についての知識も、アフトカ・ラーの生涯と事績も、祖母から教わったのだな?」
「そうだ。」
「どうやってそれらを知ったのかは、明かしてくれなかった?」
「ああ。真実だから信じろと言うだけだ。ハタッチャは驚くべき女だ。」
「同感だ。では、全イングランドを華麗さと豪奢で驚嘆させるほどの金を、どこで手に入れた?」
「知らない。」
「今も裕福なのか?」
カーラは笑った。
「半ば飢え、狐のように穴で暮らしていると言わなかったか? 着るものは、互いに一枚ずつの破れた衣だけだ。だが人間の外側など、中身を持たぬ者にしか意味はない。宝は腐った箱にも収められる。」
「しかし個人的には、立派な箱のほうが好みなのだろう?」
「もちろんだ。襤褸を忘れさせるため、哲学を教えるのはハタッチャだ。」
イングランド人は考えた。
「畑で働いているのか?」と尋ねた。
「祖母が許さない」カーラは言った。「受けた不正が正されるなら、私は今でもエジプト王になるはずだと主張している。決して正されぬことが確実でも、道義上の正当性は変わらぬそうだ。」
「ハタッチャ自身は金を稼ぐのか?」
「朝から晩まで小屋に座り、敵への呪いをつぶやいている。」
「では、どうやって生きている?」
カーラは質問を意外に思ったらしく、慎重に答えを考えた。
「時折」彼は言った。「必要に迫られると、祖母はヒュスタスペス治世の古い硬貨を出す。それをアル・クシイェのシャイフがすぐピアストルに替えてくれる。カイロの博物館へ持っていけば、よい上乗せを得られるからだ。何年も前、一度シャイフがハタッチャを脅し、どこで硬貨を見つけたか白状させようとした。だが祖母はセトを呼び寄せ、シャイフに呪いをかけた。するとラクダは腐敗病で死に、子供たちは盲目になった。それ以来、シャイフはハタッチャに手を出さなくなったが、硬貨は喜んで受け取っている。」
「どこに保管している?」
「祖母だけの秘密だ。一か月前、病に倒れて死人のように横たわったとき、あらゆる場所を探したが、宝は見つからなかった。もう使い果たしたのかもしれない。」
「硬貨以外には何かあったか?」
「一度、宝石があった。それを通訳のタドロスに託し、カイロで英語の本と交換させた。」
「本はどうなった?」
「二人で読み終えると消えた。その後どうなったかは知らない。」
太陽が地平線へ近づき、椰子の落とす影が移動したため、二人はすでに二度場所を変えていた。今や影は細長く伸び、大気にも涼しさが混じり始めていた。
イングランド人は長い間、黙って考え込んだ。カーラは穏やかに三本目の紙巻きを吸っている。
発掘者同士、ひいてはエジプト学者全体の競争は激烈だった。誰もが発見者として認められたがっている。勇敢なアメリカ人デイビスが幸運な発見をして以来、古代エジプト遺跡の探検家たちは、世界の学者を驚かせ、関心を呼ぶ新たな古代の記録を掘り起こそうと目を光らせていた。確かにナイル川沿いからは価値ある品が数多く見つかっている。しかし、なお遥かに多くが発見を待っていると一般には信じられていた。
自由に使える財産とエジプト学への情熱を持つジェラルド・ウィンストンは、この魅力的な分野で飽くことなく探索を続けていた。アル・クシイェのシャイフから古代の硬貨と宝石が出たという噂を耳にし、ほかの誰かに先を越される前に、自ら村を訪れて富の秘密の出所を突き止めようと決意したのである。
お喋りなカーラの口から今しがた聞いた話により、アル・クシイェを訪れる必要はなくなった。しかし重要な発見の手がかりを掴んだことは、彼にとって明白だった。目の前の微妙な状況をどう扱うべきか、慎重に考えねばならない。一つ間違えば、すべての希望が潰える。
「もしわが兄弟が、さらに価値ある知識を得たなら」ようやく彼は言った。「有利な条件で売りたいと思うだろう。そして老いたハタッチャが、どこか秘密の墓を訪れ、そこからロンドンを一時驚嘆させた宝を持ち出したことは、われわれ二人にとって明らかだ。富を使い果たすと、彼女はみすぼらしい環境へ戻るほかなく、残ったわずかな硬貨を切り詰めて今日まで暮らしてきた。祖母の物語の一部が分かれば、残りを推測するのは容易い。ダレイオス・ヒュスタスペスの硬貨は紀元前五百年頃のものだから、それより二千年も前の時代についてハタッチャが豊富な知識を持つ理由にはならない。だがよく聞け、カーラ。祖母があれほどの宝を取り出した墓には、必ずほかにも多くが残っている。老女が怪しまれずに処分できる品ではなく、記録や遺物だ。私の手に渡れば計り知れない価値を持ち、喜んで何千ピアストルでも払おう。この望ましい結果を実現するため、私を助ける方法を考えてみろ。祖母から秘密を聞き出せれば、もう奴隷でいる必要はない。カイロへ行って踊り子を見物し、好きなだけ金を使える。あるいはロバとラクダを買い、シャイフとして身を立ててもいい。その間、私はこの辺りにダハビーヤを留め、毎日日没時にここを通り、おまえの合図を待つ。すべて理解したか、兄弟?」
「水晶のように明瞭だ」エジプト人は重々しく答えた。
もう一本の紙巻きを取り、優雅な落ち着きをもって火をつけ、立ち上がった。ウィンストンも立った。
太陽はアブ・フェダ山の向こう端へ沈み、ありがたい日陰とともに風が強まり、生温い大気をわずかに冷やしていた。
カーラは長身にブルヌースを巻きつけ、威厳をもって礼をした。
「オシリスの守りがあらんことを、兄弟。」
「ホルスがおまえに安らぎを授けんことを。」
ウィンストンはこの太古の宗教の信奉者に話を合わせた。それからエジプト人が熱い砂の上を誇らしげに歩み去るのを見守った。背筋を伸ばし、一歩一歩は遅く規則正しい。その堂々たる態度は、汚れたチュニックと洗っていない肌に比べると滑稽だった。
「ついている」ハッサンとアブダラを呼ぼうと岸へ向き直り、彼は考えた。「あの悪党の欲を刺激してやった。近いうちに、何かしら掘り出してくるに違いない。うえっ、汚い獣め。」
山裾まで来ると、カーラは唐突に足を止め、目の前の砂を暗い顔で見つめながら動かなくなった。
「紙巻きを手に入れる手間としてなら、悪くなかった」つぶやいた。次いで突然、激しい口調で付け加えた。「二度も足で踏みにじり、私を『犬』と呼んだ!」
砂へ唾を吐き、再び歩き始めた。
第二章 ハタッチャ
アブ・フェダ山は、全長およそ十二マイル、高さ二百ないし三百フィートの低い山並みから成っている。山々は楔形で、頂上の細く不揃いな稜線から、両側の斜面が急角度で落ち込んでいる。登ろうとする者に足場などほとんど与えないように見える。南端には多数のワニのミイラが発見された坑があり、かつてアル・クシイェの住民がワニを崇拝していたことを証明している。アル・クシイェはヒエログリフ文書にいう古代都市ケスであり、後にギリシャ人からクサエと呼ばれた。最盛期には上エジプト第十四ノモス、すなわち州の都であり、中王国の王たちが好んだ冬の住まいでもあった。すでに述べたとおり、現代の村はナイル河畔から一、二マイル離れ、湧き出す泉に潤された肥沃な谷に位置する。住民の大半はアラブ人、またはアラブ人と土着のファッラーヒーンとの混血である。後者はコプト教徒と同じく、古代エジプト人の直系の末裔だった。
初期のエジプト学者たちは、アブ・フェダ山の石灰岩の断崖に重要な墓が隠されていると期待した。しかし丹念な捜索で見つかったのは、ワニのミイラ坑と、岩を粗く削った、散在する面白みに欠けた空洞だけだった。かつてはミイラを収めていたかもしれないが、その中身は何世紀も前に略奪されていた。岩窟墓にわずかに残る碑文から、そこがケスの一般市民の埋葬地だったことが分かる。確認された空洞はいずれもナイル川に面していた。東を向く反対側の斜面は、岩場へ死者を葬り、ジャッカルや略奪者の手の届かぬ所へ置く機会を好んだエジプト人でさえ、墓として利用したことがないらしかった。
カーラは山の南端を回り、荒涼とした灰色の崖の縁に沿って進んだ。張り出した砂岩にぴったり寄り添うように、惨めな小屋が一塊になっている。緩い岩片と、天日で焼いたナイル川の泥を組み合わせて造ったものだった。この場所は土地の者からフェダと呼ばれ、わずか十二人ほどの住民は純粋なエジプト人の血筋を引き、アル・クシイェの住民との交わりを拒んでいた。
なかでもっとも堅固な住居が、ハタッチャと孫の住む小屋だった。山の窪み、あるいは洞窟に接して建てられており、葦の屋根は崖から数フィートしか突き出していない。建築者が前壁を左右対称にしようと不器用に試みたことは、石に採石場の印が残っている点からうかがえた。一度も扉を取りつけられず、編んだ莚で半ば隠された入口のアーチでは、石壁の厚さが優に四フィートもあった。
その横や前に並ぶほかの小屋は、造りが遥かに粗末だった。それでもすべてがひどく古びて見え、集落の北端と南端にある小屋は無人で、多かれ少なかれ崩れ、放置されていた。現在のアラビア語名にもかかわらず、フェダは古代ケスと同じほど古いという伝承があり、それを疑う理由はなかった。夏には申し分のない立地である。長く暑い午後の間、山が日陰を作るからだ。しかし周囲には砂と岩しかなく、前方にはアル・クシイェの境まで砂漠が延々と続いていた。
カーラは小屋の間の短く細い道へ入り、行く手にいた山羊を押しのけ、落ち着いて自宅へ進んだ。一室しかない部屋へ入ると、暗さに目が慣れるまで立ち止まり、それから軽い驚きを浮かべて辺りを見回した。
片隅では、乾いた葦の寝床に老女が横たわっていた。一枚きりの黒い木綿の衣は喉元が開き、皺だらけに萎んだ胸をさらしている。その胸は、老婆がひどく苦労して息をするかのように、痙攣的に上下していた。目は閉じ、顔の周囲に散らばる細くまばらな灰色の髪が、妖しく魔女めいた印象を与えていた。年齢と、これまで暮らしてきた気候にもかかわらず、ハタッチャの肌はヨーロッパ人とほぼ同じほど白く、ごく淡いため色味にほとんど気づかないほどだった。
葦の傍らに置かれた低い木の腰掛けには、椰子の枝を持った少女が座り、ハタッチャの顔へ蠅が止まらぬよう前後に振っていた。年は十五歳ほどだろうが、身体つきは二十五歳のイングランド娘と同じほど成熟していた。輪郭の整い方だけを見れば目を見張るほど美しいが、表情がまるでないため、美を解する者には魅力に乏しく映るだろう。黒い目は見事だったが、奥深く見えたその内側を探れば、期待外れに終わりそうだった。ありふれた黒いガウン、すなわちチュニックを着ていたが、暑さのため腰までずり下ろし、肩と乳房を露わにしていた。
祖母を長く思案深く見つめた後、カーラは少女の隣へ座り、腕を回して身体へ引き寄せた。少女は愛撫を拒みも応えもせず、力なく抱擁に身を任せ、自由な右腕では椰子の枝を振り続けた。
「ああ、ネフティス」カーラはコプト語で軽く言った。「われらのハタッチャは、また悪魔どもに捕まったのか?」
少女は答えなかった。しかしカーラの声を聞くと、老女は大きな目を開き、しばし孫をまっすぐ見つめた。衣を神経質に握り締めていた両手を、哀願するように持ち上げ、弱く嗄れた英語で言った。
「薬を、カーラ! 早く!」
男はためらったが、少女を放して立ち上がった。
「これが最後だ、ハタッチャ。もう手に入らないと知っているだろう」抗議するように言った。
「もう要らない」ひどく苦しげに答えた。「これが最後だ。早くしなさい、カーラ!」
声は奇妙なごぼごぼという音に消え、胸は今にも呼吸が止まりそうに震えた。
犬がするように興味深げに祖母を観察していたカーラも、その症状には心を動かされた。ネフティスを振り返った。
「外へ出ろ」コプト語で命じると、少女は立ち上がってアーチの外へ去った。
カーラは壁の一部へ歩み寄り、緩んだ石を外して秘密の空洞を露わにした。そこから小さな壺を取り出す。滑らかな黒い壺には、鈍い金属の栓がついていた。ハタッチャのもとへ運び、膝をついて栓を外し、壺の口を唇へ当てた。繊細な鉤爪のような指が器を貪るように掴み、老女は飲んだ。カーラは痩せた喉を見つめ、液体が食道を下る様子を追った。
飲み終えると、空の壺を隠し場所へ戻し、緩い石を元通りにはめた。それから寝床へ戻って腰掛けに座った。近くにはパンの欠片が入った鉢がある。身を屈めて一片を指で取り、丈夫な歯で噛みながら、動かぬハタッチャの姿を見下ろした。
エジプトの薄暮は短く、この頃には部屋はすっかり暗くなっていた。だが男の瞳孔は猫のように広がり、老女の胸がゆっくり上下するのを見て、再び楽に呼吸していると分かった。
一時間が過ぎた。その間カーラが動いたのは一度だけ、反対側の隅にある水差しから水を飲んだときだった。ハタッチャの容体は彼を悩ませた。祖母が死ねば、どうすべきか分からなくなる。働くことに慣れず、何の才覚も持たぬ彼には、人生が重荷となるだろう。しかもあらゆることを意志の強い老女に導かれるのが当たり前で、二十三年間の人生を通じて、必要なものを用意してきたのも祖母だった。カーラは多くの事柄を深く考えるよう育てられてきたが、この問題だけは一度も思いつかなかった。ハタッチャが語らなかったからであり、つい最近まで、祖母の死など考える必要がなかったからだ。だが今夜の容体は深刻で、貴重な命の霊薬も最後の一滴までなくなった。
アブ・フェダ周辺の者はみな、ハタッチャに一目置いていた。彼女が、それなりの根拠を示しながら王家の末裔だと主張していたからである。だがアフトカ・ラーの物語は知らず、何年も前のロンドンでの冒険もまったく疑っていなかった。ハタッチャがそうしたことを打ち明けるのはカーラだけだった。そしてカーラも、話が本人の耳へ戻る恐れのないイングランド人以外には、決して漏らそうとはしなかった。
しかしカーラ自身にも知らないことが多くあり、病む祖母を不安げに見つめながら、その事実を悟った。硬貨と宝石をどこから手に入れたのか、まだ残っているのかを話してもらわねばならない。祖母がいなくなれば、そうした品がいくらか必要になる。それに葬儀の問題もある――祖母は時折、死後の遺体の扱いについて奇妙な望みを口にしていた。どうやって実現する費用を得ればよいのか。
低く澄んだ声が耳へ届き、カーラはぎくりとした。ハタッチャの大きな目が開き、暗闇の中でもその輝きが見えた。
「もっと近くへ」と祖母は言った。
カーラは傍らの床へ下り、頭の近くで胡坐をかき、どんな囁きも聞き逃すまいと身を屈めた。祖母は英語で話した。
「アヌビスが私を呼んでいる、息子よ。その王国へ行かねばならぬ。年齢はまだ大したものではない。けれど愛と憎しみと復讐の企てが、この身体を使い果たした。おまえは私の後継者。私の宝と、復讐と、憎悪を受け継ぐ者だ。幼い頃からおまえを鍛えた使命を果たし、私の世話へ報いるときが来た。私の望みを一字一句違えず実行すると約束しなさい!」
「当然だ、ハタッチャ」カーラは冷静に答えた。「あんたは私の祖母ではないか。」
祖母はしばらく黙っていた。
「おまえは冷酷で、利己的で、残忍だ」再び語り始めた声は硬くなっていた。「私がそう育てた。聡明で、恐れを知らず、強い。それも私の教育によるもの。ならば聞きなさい。かつて私は若く、美しく、愛情に満ちていた。世界へ立ち向かえば、世界は崇拝しながら私の足元へひれ伏した。だが男を名乗るある者が、心から喜びと愛をことごとく踏み潰し、荒れ果て、打ち砕かれた私を置き去りにした。追い払われた雌鹿のように、私は宮殿の眩い光から泥の小屋へ這い戻った。腕にはわが子を抱いていた。この場所で何年も嘆き、苦しみ、慰めを見出せなかった。やがて私の平穏を壊した愛は消え、その代わりにセトが復讐の種を植えた。私はそれを慈しんだ。そして見よ、種は芽吹き、一本の木となった。その逞しい幹がおまえだ、息子よ。実は長く熟すのを待っていたが、今こそ食べ頃を迎えた。間もなくおまえも世界へ立ち向かう。だが、かつての弱い女としてではない。一人の男として。そして私の復讐を成し遂げる。そうであろう、カーラ?」
「あんたがそう言うなら、そうなる、ハタッチャ」彼は答えた。だが内心では訝しんでいた。
「ならば私の言葉へ細心の注意を払いなさい」祖母は続けた。「必要なとき、おまえを助けるものを何一つ忘れぬよう、心へしっかり刻み込むのだ。霊薬の力があるうちに、すべてを説明しよう。薬の力が尽きれば、私の息もともに消える。そうすれば、おまえの仕事が始まる。」
カーラはさらに身を低くした。いつになく鼓動は速まり、全身を興奮が駆け抜けた。ついに人生の頂点が訪れ、広大な未知の世界で、いかなることを成し遂げる運命なのか知ろうとしている。
一時間、また一時間と、ハタッチャの低い声は孫へ指示を与え続けた。理解しているか確かめるため、ときおり質問をし、いくつかの名については記憶へ消しがたく刻まれるまで何度も復唱させた。
最後にカーラの右手の人差し指を取り、それで裸の胸に神秘的な印を描かせた。そしてあらゆる点で指示に従い、ある重大な秘密を永遠に守るという恐ろしい誓いを復唱させた。
それから老女は倒れ込み、動かなくなった。
やがて夜明けが訪れ、一筋の光がアーチの下から忍び込み、隅の一団を照らした。
不潔で身なりの乱れた老いた老婆は、葦の寝床で死んでいた。その傍らにはカーラが座り、動かぬ顔で、向かいの壁をじっと見据えていた。
考えていたのだ。
第三章 通訳
早朝の涼しいうちに、ネフティスは頭へ土器の水差しを載せ、母の小屋から出てきた。毎日の水を汲むため、川へ向かうところだった。
ハタッチャの住まいの前を通りかかると、アーチの中にカーラが立っていた。彼は少女を引き寄せ、唇へ口づけした。少女の唇は冷たく、応えなかった。
「お祖母さんはどう?」無関心に尋ねた。
「イシスのもとへ行った」カーラは片手で腕を掴み、もう一方で褐色の頬を撫でながら答えた。
少女は身震いし、アーチを横目で見た。
「放して」と言った。
だがカーラは腕を回して抱き込み、再び口づけた。少女は水差しが落ちぬよう、片手で支えた。
そのとき突然、カーラは驚くべき目に遭った。身体が独楽のように回転し、反対側の壁へ激しく投げつけられたのだ。同時に水差しがネフティスの頭から落ち、地面で砕けた。少女はよろめき、アーチの石へもたれ、前方の道を見つめた。
目の前には、これ以上ないほど華美に装った若者が立っていた。エジプトで多くの者がかぶる赤いフェズ帽を、粋に頭へ載せている。胸を覆う青いサテンの上着には銀糸の組紐が精緻に縫いつけられ、前の開きからは白い絹のベストと、輝く銀ボタンの列が覗いていた。膝丈のズボンはサフラン色のポンジーで、トルコ人のもののように幅広くゆったりしている。その下から黄色い室内履きまでは裸足だった。さらに深紅の絹のたっぷりした帯、肩から垂れる外套を加えれば、その装いがどれほど華麗だったか想像できるだろう。
背は低く、やや太り気味で、丁寧に巻いた黒い口髭を持つ顔は驚くほど整い、美しかった。目はカーラとほぼ同じほど大きく黒い。今は炎のように輝き、怒りの皺が額を歪めていた。両脚を広げ、腰に手を当て、陰気な憤怒の眼差しで少女を見ている。
ネフティスは呆然と見返した。顔は先ほどと同じく無表情だったが、怯えたように鼻孔がわずかに広がった。
「タドロス!」とつぶやいた。
カーラは長身を地面から起こし、襲撃者を睨みつけた。
「またあの呪われた通訳か!」苦々しく叫んだ。
タドロスはわずかに頭を回し、敵へ侮蔑の視線を投げた。それから再び少女を見た。
「私との約束はどうした、女?」厳しく問い詰めた。「私が背を向ければ、汚いエジプト人なら誰にでも弄ばれるのか?」
ネフティスは答えなかった。上着に施された銀の組紐の模様を眺め、その曲線や捻れを丁寧に目で追った。青いサテンはラピスラズリの色だった。この衣装には大金がかかったに違いない――ひょっとすると五十ピアストルも。
「この不実の責任は母親に取らせる」通訳はアラビア語で続けた。「私を弄び、愚弄するつもりなら、婚約金を返してもらう――一ピアストル残らずだ!」
少女の目は足元へ落ち、割れた水差しの欠片を調べた。
「壊れちゃった!」泣き声で言った。
「ふん! ケネへ行けばいくらでもある」タドロスは土器の破片を蹴り飛ばした。「だがセラ婆さんがおまえをもっとしっかり躾けなければ、水差し以上の出費になるぞ。来い!」
仰々しく手を振り、少女の脇を尊大に通り過ぎ、母親の小屋の戸口へ向かった。なおその場に立ち尽くし、憎悪の視線を向けるカーラには目もくれなかった。
少女は従順に後を追った。
二人が入ったのは、泥壁の二つの穴から光が差す四角い部屋だった。家具は粗末で少なく、寝床にはナイル川の葦が敷かれている。左目の上に白い斑点がある黒山羊が、一方の穴から頭を出し、反芻していた。
背筋の伸びた小柄な萎びた老女が、戸口のすぐ内側で通訳タドロスを出迎えた。愛想のよい顔をしている。
「ようこそ!」胸の上で腕を交差し、身体が二つ折りになりそうなほど深く頭を下げた。
「この家に平安あれ」タドロスはぞんざいに返し、腰掛けへ身を投げ出した。
セラは土の床にしゃがみ、誇らしげに満足しながら通訳の衣装を眺めた。
「立派になったね、タドロス。きっと金持ちになりつつあるんだろう。その華麗なお姿をお迎えできて、光栄だよ。さあ、婚約者を見ておくれ、通訳殿! ますます太り、肌も柔らかくなって、おまえさんの選りすぐりのハレムを飾るにふさわしくなっただろう?」
「ネフティスについて話がある」通訳は紙巻きに火をつけながら言った。「この汚いフェダの連中に隙を見せすぎる。なかでも、あの獣のカーラにだ。」
この頃には口調は平静に戻り、顔から怒りも消えていた。
「どうしろと言うんだい?」年老いたセラは宥めるように尋ねた。「おまえさんが連れていくまでは、水を汲み、仕事を手伝ってもらわなきゃならない。王女みたいに奥へ閉じ込めておくわけにはいかないよ。それにフェダの男といえば、盲目のニッコー爺さんと、盲目ではない若いカーラだけさ。」
「気に入らないのはカーラだ」タドロスは気怠げに煙を吐いた。
「カーラ! だが王家のお方だよ。おまえさんもよく知っているだろう。古代王の末裔にはある種の自由が認められ、それ以外の自由も勝手に取るものさ。たまに口づけを楽しむだけだよ。あたしは見ていたけど、気にしていない。」
「王家のお方!」通訳は嘲るように繰り返した。「ハタッチャ婆さんの話が真実だと、どうして分かる?」
「真実に決まっている」セラは断固として返した。「あたしの母はハタッチャの母に仕えていた。その方が王の娘だったからだ。何世代もの間、カーラの祖先はエジプト人から崇められてきた。王座は過去の夢となり、貧しく暮らす運命にあってもね。物分かりよくおし、タドロス! おまえさんの血も、王家ではなくともあたしたちと同じほど純粋だ。なんだって? あたしたちエジプト人が誇りを忘れ、イングランドの犬や異教徒のアラブ人と肌をこすり合わせろとでも?」
「アラブ人もそう悪くはない」タドロスは考え深げに言った。「分別ある習慣をいくつも持っており、われわれも受け入れざるを得ない。このムスリムたちは国中に溢れ、居座るつもりだからな。単純なイングランド人も、馬鹿にはできないぞ、セラ。私は彼らをよく知っている。その仲間であるアメリカ人、ドイツ人、フランス人もだ。カイロやナイル川を見るため遠くから旅し、私が記念碑へ案内して歴史を説明すれば、金のソヴリン貨を懐へ落としてくれる。同時に、私が報酬を受け取るまでは、抜け目のないアラブ人から彼らを守ってやる。そうとも、どんな民族にも使い道がある。信じるがいい。」
「ああ、なんてすごいんだろう!」老女は心から感服して声を上げた。
「私は通訳だ」男は誇らしげに答えた。「私の名はカイロからハルツームまで知られている。」
セラへ紙巻きを一本投げると、老女は器用に受け取り、唇にくわえた。それからタドロスは寛大にも、自分の紙巻きから火を移すことを許した。
その間、タドロスの後から小屋へ入ったネフティスは、部屋の奥へ行き、ユーカリ材を粗く削って作った箱の蓋を開けていた。包みを取り出し、蓋を閉め、その中身を箱の上に広げた。それから一同へ背を向け、埃っぽい黒いガウンの留めを外し、腰まで落とした。頭から白いチュニックをかぶり、続いて安物のスパンコールをびっしりつけた粗い薄絹の衣をまとった。黒いガウンを脱ぎ、壁の掛け釘へ吊るす。次に幅広い金色の帯を腰へ巻いた。スパンコールつきの薄絹のひだを締めつけぬよう、緩く留めた。
タドロスはセラと話しながら、婚約者が変身していく様子を満足げに眺めていた。黒髪へ造花の蔓を巻きつけると、少女は彼のところへ来て膝に座った。足は裸のままで、あまり清潔ではなかったが、タドロスは気にしなかった。
「カーラのことはハタッチャに話すよ」老女は見るからに嬉しそうに紙巻きの煙を吸いながら言った。「もっと慎むよう言ってくれるだろう。」
「ハタッチャは死んだ」ネフティスが言った。
セラはしばし凝視し、紙巻きを落とした。それから甲高い声で泣き叫び、スカートを頭からかぶって前後に身体を揺すった。
「黙れ!」通訳は布を引き剥がして怒鳴った。「泣くのは弔問客が集まってからで十分だ。」
セラは紙巻きを拾った。
「ハタッチャがアヌビスのもとへ行ったのはいつだい?」娘に尋ねた。
「カーラは言わなかった」少女は答えた。「最後の日没には一緒にいた。あのときもう死にかけていた。」
「どうでもいい」通訳は平然と言った。「ハタッチャは冥界へ行ったほうが幸せだ。悪党の孫は、これから働くか、王家の腹を空かせるかだな。」
「さあ、どうだろう?」セラは畏怖を込めて囁いた。「あの人たちは一度も働いたことがない。神々が必要なものを与えているのかもしれないよ。」
「あるいは墓を荒らしたかだ」タドロスは返した。「そのほうが遥かにありそうだ。もしそうなら、ぜひ場所を突き止めたい。そういう発見は金になる。スカラベ、葬祭用の小像、護符、壺、古代の器具――どれもカイロで高く売れる。王墓なら、宝石や黄金の装飾品まで出ることもある。ハタッチャのもとへ行け、セラ。そして目を大きく開けておくんだ。ヘンフ! 諺に何とあった? 『幸運の先駆けは思慮である』。」
ネフティスの母は頷き、紙巻きから吸える最後の一服まで吸った。それから小屋を出て、ハタッチャの住居の分厚いアーチの中へ急いだ。
ほとんどが老いた、全員漆黒の服を着た五人の女が、死者の横たわる葦を囲んで輪になり、しゃがんでいた。誰かがハタッチャの目を閉じていたが、それ以外は息絶えたときのままだった。片隅ではカーラがサトウキビを噛んでいた。
セラも輪へ加わった。頭へ砂をかけ、律動的に身体を揺すりながら甲高く泣き叫ぶ。ほかの者もそれに倣い、神経を引き裂くような声を上げた。カーラはしばらく眺め、それからサトウキビを持って外へ出た。
しばらく迷うように立ち尽くした。やるべき仕事がある。弔問客たちが家を占領するまで、取りかからずにいただけだ。だが太陽はすでに熱く、これから長い旅が待っている。カーラは溜息をついた。働くことには慣れていない。
集落の北端へ歩き、盲目の男ニッコーの家へ入った。戸口の近くには長い頭と厳粛な目を持つシリア産のロバが立ち、飼い主は地面に座って、油へ浸した古布でその脚をこすっていた。カーラは手綱を掴み、ロバの頭へかけた。
「誰だ?」ニッコーは見えない目を上へ向けた。
カーラは答えず、鞍を動物の背へ載せ、腹帯を締めようとした。老人は細い脚をロバの脚へ絡め、手を伸ばして鞍を引き剥がそうとした。
「ハタッチャの畜生孫だな!」ニッコーは抗いながら叫んだ。「ほかの誰が、わしの可愛いマンメクを奪おうとするものか。やめろ。さもなくば、今朝着いた通訳を呼ぶぞ!」
返事の代わりにカーラは腹を蹴った。老人は呻きながら身体を二つに折り、地面へ転がった。王家の男はマンメクを戸口から連れ出し、軽やかに背へ飛び乗った。
「ウーア!」
踵で脇腹を蹴ると、マンメクは従順ながら勢いよく駆け出した。
カーラの向かった方角には道がなく、砂漠の砂は果てしなく見えた。ロバの背へ横向きに座り、サトウキビを吸いながら、それでも獣を速足で進ませた。一時間が過ぎ、さらに一時間。やがて前方に岩塊の山が現れ、その麓にはナツメ椰子の一群が見えた。近づくにつれて岩塊は大きくなり、岩の深い亀裂に切り裂かれた小山となった。亀裂の内側には緑があり、木の下には数頭の山羊が寝そべっている。カーラはその横を通り過ぎ、山裾にある、岩の張り出した洞窟の入口へ乗りつけた。
ロバから飛び降り、洞窟へ駆け込み、岩からきらめきながら冷たく湧き出す泉に膝をついた。マンメクもついてきて、カーラの顔の横から水へ鼻面を突っ込んだ。二人は一緒に水を飲んだ。
それから男は立ち上がり、大声で呼んだ。
「ヒーヤ、セベット! ヒーヤ!」
背後で誰かが笑い、カーラは踵を軸に振り向いた。そこには奇妙に歪んだ小人が立っていた。雪のように白い髪が、濃いチョコレート色の肌と異様な対照を成している。背丈はカーラの腰ほどしかないが、胴体も四肢も巨大で、途方もない力を秘めている印象を与えた。首から足元まで垂れる純白のブルヌースを身につけ、頭には何もかぶっていなかった。
若者が見つめる中、小人は口を開いた。
「用件は分かっている」古代エジプト語で言った。「ハタッチャが死んだ。」
「そのとおりだ」カーラは短く答えた。
「自分を防腐処理するまで、私が生きると誓っていた」小人は考え深げに鼻をこすった。「そして正しかった。年老いたハタッチャは驚くべき女であり、王家のお方だった。彼女との約束を果たそう。」
「できるのか?」カーラは驚いて尋ねた。「古代の防腐処理法を知っているのか?」
「いや、私はパラシテス[訳注:ミイラ作りで遺体を切開する職人]ではない。こんな堕落した時代には、商売としての価値がないからな。だが彼女の母――おまえの曾祖母は見事に防腐処理した。ハタッチャも出来栄えに大いに満足していたぞ。曾祖母は生きているように見えるだろう? 会ったことは?」
カーラは首を振った。
「まだない。」
「香料入りの樹脂や香辛料、椰子酒、没薬、肉桂、ナトロンも、ハタッチャからずっと以前に託されたまま、無事に保管してある。包帯にする上質な麻布と、内臓を収める壺も貯蔵庫に残っている。祖母がおまえに渡すよう私へ預けて以来、そのままだ。だから望みを叶えられない理由はない。」
「一緒に戻るのか?」とカーラが尋ねた。
「そうだ。そして死者をこの寂しい場所へ運ぶ」小人は答えた。「もはやハタッチャ本人ではなく、彼女が使い、再び使うことになる器にすぎない。ゆえに丹念に保存せねばならぬ。知ってのとおり、処理には四十日かかる。その終わりに、ハタッチャのミイラをおまえへ渡そう。そのとき、強大なるアフトカ・ラーのカルトゥーシュ[訳注:王名を囲む楕円形の枠]が刻まれた、平たい長方形のエメラルドを私へ渡してもらう。そういう約束だったな、わが王子?」
「そのとおりだ、セベット。」
「どこにあるか知っているな?」小人は不安げに尋ねた。
「知っている」カーラは答えた。
小人は満足したらしく、旅支度のため奥へ引っ込んだ。カーラは洞窟で眠り込んだ。太陽は恐ろしく熱く、長旅で疲れ果てていたのだ。盲人のロバも横になって眠った。
午後半ば、セベットは若いエジプト人を起こし、菓子をいくつかと山羊の乳を与えた。それから純白の頑丈なロバを連れ出し、意外なほど身軽に飛び乗った。鞍の環へ大きな袋が結びつけられているのを、カーラは認めた。
ほどなく二人は並んで砂漠を進んでいた。
「日没前にフェダへ着いてはならぬ」小人が言うと、カーラは同意して頷いた。二人は適度な速さで進み、エジプト生まれの者にしか耐えられぬ焼けつく陽光を受け続けた。
日没時にアブ・フェダ山が見え、フェダの細い道へ入った頃には暗くなっていた。カーラは飼い主の小屋の前でマンメクの背から降り、腿を叩いた。ロバは素早く戸口の中へ逃げ込んだ。それから若者は小人に続き、自宅の敷居まで行った。
弔問客は帰っており、ハタッチャだけが残されていた。誰かが蠅除けに粗い布を顔へかけている。
小人は懐から葦蝋燭を取り出し、火をつけた。顔の布を外すと、数分にわたり死んだ女の顔を真剣に見つめた。それから深く溜息をつき、鞍から袋を解き、蝋燭の炎を吹き消した。
カーラはアーチの中に立ち、細い月の縁を見ていた。ほどなくして、小人の白いロバが横へ来て止まった。袋は今や大きく膨れ、

二人は適度な速さで進み、エジプト生まれの者にしか耐えられぬ焼けつく陽光を受け続けた
重く、力なく鞍へ垂れ下がっていた。微かな光の中でも、カーラにははっきり見えた。
袋へ手を置いた。
「落ちずに運べるか?」と尋ねた。
「私がしっかり支える」小人は答え、荷の後ろからロバの背へ飛び乗った。「哀れなハタッチャよ! コンスとともに、これが最後の旅になるとは知るまい。」
「おやすみ」カーラは言った。
「おやすみ。四十日後だ、忘れるな。」
「四十日後に。」
「エメラルドは?」
「そのとき渡す。」
ロバは不器用な足取りでアーチを出て、音もなく細い道を進んだ。やがて夜へ溶け込み、消えた。
カーラは欠伸をし、小屋を注意深く見渡した。灯りが微かに燃えているのは、老いたセラの家だけだった。男は顔をしかめ、それから笑った。
「通訳にはネフティスをくれてやれ」つぶやいた。「私を呼んでいるのはカイロ、ロンドン、そして広い世界だ。女? ふん! 女ならどこにでもいる。」
家へ入り、アーチへ垂れた莚を下ろし、侵入を防ぐため厳重に固定した。
第四章 アフトカ・ラーの宝
カーラはアーチ脇の空洞から小さな青銅のランプを取り出した。中には油が半分ほど入り、表面に木綿の灯芯が浮かんでいる。ランプそのものは風変わりな意匠で、若者は幼い頃からその存在を覚えていたが、使われるのを見たことは滅多になかった。
灯芯へ火をつけ、明るく燃え上がるまで指で広げると、カーラはアーチへ背を向け、部屋の奥の壁を丹念に調べた。すでに述べたように、家は山の浅い洞窟へ接して建てられている。窪みが不規則な形をしているため、奥の壁の一部は頑丈な石積みで、残りは崖そのものだった。カーラはこれまで、その事実にほとんど注意を払わなかった。しかし今になって、石壁は深すぎる、あるいは形が不規則すぎて住居の一部にできない穴を塞ぐため築かれたに違いないと、はっきり気づいた。そうでなければ、崖がそのまま続いている以上、壁など不要だったはずだ。石は大きく、屋根の大部分を成す張り出した岩まで積み上げられ、漆喰で固められていた。
エジプト人の目は三段目の石へ止まり、隅から七番目まで数えた。見た目はほかと変わらない。しかしハタッチャの指示は正確だった。祖母は知っていたのだ。
その場所へ行き、石の右端を強く押した。石は動き、左端の上下を支える頑丈な青銅の軸を中心に、ゆっくり内側へ回った。
現れた開口部は長さ約四フィート、高さ三フィートほどだった。カーラはすぐさまランプを前へ伸ばしながら這い込んだ。やはり推測どおりだった。壁の向こうには、低いものの奥深く、入り組んだ洞窟があった。
まず入口の石を元の位置まで押し戻し、閉じた。内側には青銅の取っ手があり、簡単に開け直せるようになっていた。
洞窟は湿って涼しく感じられた。ランプを掲げると、山の奥深くへ通じる亀裂がいくつか見える。左から二番目の割れ目を選び、荒れた地面を慎重に進んだ。初めは間違えたかと思った。ほかにもっと先へ続きそうな道がいくつもあったからだ。しかし立ち止まり、ハタッチャの指示を思い返すと、正しいと分かった。
亀裂は突然曲がり、下方へ沈んでいた。だが足元の岩は今までより平らで、進みやすくなった。さらに百歩進んだところで、通路は岩が最初に裂けた鋭い尖端にぶつかり、唐突に終わった。
若いエジプト人は突き当たりまで行き、そこから慎重に三歩戻った。ランプを持ち上げ、坑道の右壁を詳しく調べる。不規則な裂け目や窪みが無数にあったが、その一つを観察すると、岩のほかの部分より黒い、あるいは暗い色をした小さな輪に囲まれているように見えた。
カーラは喜びの声を漏らした。祖母から鋭い目ならすぐ分かると保証されてはいたが、見つけられないのではないかと恐れていたのだ。
ブルヌースのひだから、短く尖った短剣を取り出した――居間のアーチ脇の隠し場所で見つけた武器である。岩の穴へ差し込み、柄まで深く押し込む。それから柄を回すと、鋭い「カチッ」という音が響いた。
カーラが一歩下がると、円形の岩の一部がゆっくり通路側へ開き、最初の道と直角に交わる別の坑道が現れた。先ほどと違い、これは天然の裂け目ではなく、人の手で巧みに掘られたものだった。天井はアーチ形で、床は平らかつ滑らかだった。
男は開口部をすり抜け、アーチ状の通路を進んだ。後ろの扉は閉めなかった。そうしないようハタッチャから警告されていたからだ。床は緩やかに傾斜し、一歩進むたびに山のさらに深部へ降りていると分かった。空気は熱く息苦しくなり、呼吸も困難になった。それでも前へ歩き続けた。五分ほど――一時間にも感じられた――ランプを掲げて進むうち、やがて灯芯の炎が揺らいだ。より新鮮な空気が届いたかのようだった。
その頃には胸が張り裂けそうになり、呼吸も途切れ途切れの喘ぎに変わっていた。急いで進むと、空気は涼しく新鮮になり、ありがたく肺いっぱいに吸い込んだ。
道はもはや下っておらず、間もなく前方に巨大な岩柱を見つけた。一見すると坑道を塞いでいるようだった。その表面には粗いヒエログリフが刻まれている。左側から回り込むと、高い丸天井の部屋へ出た。カーラは満足げに息を吐き、立ち止まった。
部屋は円形で、直径は十六フィートに満たない。ドームの通気孔は山頂のどこかへ通じているらしく、カーラは再び自然に呼吸できた。
「ここが」彼は言った。「ハタッチャの話していた書庫に違いない。」
丸天井の壁を一周するように壁龕が規則正しく並び、けばけばしい色の碑文と絵で覆われた箱状の容器が収められていた。部屋の中央には、上面を美しく磨いた大きな円形の花崗岩板が置かれている。
カーラは壁龕から箱を引き出し、ランプの隣の花崗岩板へ載せた。それから中のパピルス巻物を取り出し、興味深げに調べた。
そうだ。以前にも読んだことがある。祖母が彼の教育を助けるため、たびたび謎めいた方法で出してきた巻物の一つだった。もう一本、次いで三本目を、ゆっくり慎重に調べた。それらもよく知っていた。この古代の書庫には二百十八本のパピルス巻物があり、そこに収められた知識を、若いエジプト人は何年も前にすべて吸収していた。難なく読み、その文脈から、ヒエログリフ研究者をいまだ悩ませる多くの記号について、異なる意味を即座に理解できた。
写本は第四王朝からプトレマイオス朝時代に及び、パピルスの下にある大きな空洞には、ヘロドトス、ディオドロス・シクロス、マネト、ホラポッロ、ストラボらの初期の著作が並んでいた。さらに老いたハタッチャが近年カイロで購入した、現代エジプト史とヨーロッパ史の本もあった。エジプト初期王たちの歴史的な石碑も年代順に壁へ立てかけられている。アフトカ・ラーが創設し、幾世紀にもわたり守られ、書物を加えられてきたこの書庫は、まさに驚くべき祖国の記録の宝庫だった。
カーラは部屋を見回し、奇妙な笑みを浮かべた。
「ほかの者は古代エジプトを論じる」つぶやいた。「だが真実を知るのは私だけだ。」
別の空洞に積まれたパピルス巻物は、箱へ丁寧に収められたものほど重要ではないらしい。カーラは一抱えを中央の石板へ運び、衣で埃を払い、中身へざっと目を通して十五本を選んだ。残りは元の場所へ戻した。それを終えるとランプを持ち上げて通路へ戻り、今度は岩柱の右側を回った。
そこは途方もなく大きな長方形の部屋へ通じていた。カーラの青銅ランプの光では、前方の闇を数フィートしか照らせぬほど広大だった。だが巨大な青銅の腕木から別のランプが吊るされており、ほぼすべてに油が残っていた。エジプト人はそのいくつかへ火をつけた。
それから後ずさりし、抑えがたい畏怖を覚えながら周囲を見渡した。巨大な部屋には、アスワン産の頑丈な花崗岩台へ並べられたミイラ棺が満ちていた。入口にもっとも近い十数基の台は空だった。その先に、一インチ残らず精緻な彫刻を施した、黒檀製の華麗な棺があった。ハタッチャがロンドンに住んでいた頃、自分のために作らせ、彼女だけが知る方法で密かにここへ運び込ませたものだ。碑文はすべて記号文字だが、蓋には「Hatatcha」の一語だけがローマ字で記されている。当然、中は空だった。カーラは次の石台へ進んだ。そこには曾祖母ティ・アテンのミイラが横たわっていた。小人セベットが、あたかも生きているかのように仕上げたものだ。四肢には一本ずつ包帯が巻かれ、薄くきつく引かれた麻布越しにも顔の輪郭がはっきり見えた。カーラは溜息をつき、ミイラへ深々と礼をしてから部屋の奥へ進んだ。
進むにつれ、ミイラは古くなり、棺の豪華さと碑文の重要性も増していった。石台の中には、収められた人物の生涯を語るヒエログリフでびっしり覆われたものもあり、その上には奇妙なウシャブティ像[訳注:死後の労働を代行するとされた副葬人形]、護符、スカラベが所狭しと置かれていた。やがてカーラは部屋の奥へ達し、偉大なるアフトカ・ラーのミイラの傍らで足を止めた。名目上の王ではなかったものの、生前には、世間で無知にも「大王」と呼ばれる意志薄弱なラムセス2世を介して、エジプトを支配した男である。
エジプト人は偉大な祖先の遺骸の前で、長い間跪いた。ラムセス本人も、その父セティも、ほかの多くのエジプト王も、カイロの博物館で、好奇心に満ちた現代の観光客の群れに厚かましく見つめられている。だがこの高名な人物は、賢明にも自分と子孫の隔離を図った。生前、この隠し墓を造らせたのはアフトカ・ラーだった。そして秘密を徹底して守ったため、将来、余計な詮索をする異民族をここへ導くような彩色記録も碑文も、一つとして存在しなかった。
カーラは驚異の祖先のミイラ棺を、貪るように見つめた。棺には宝石がびっしり嵌め込まれ、これまで卑しい境遇にあった自分のような者にとっては、どれ一つ取っても財産と呼べるものだった。しかし宝石には手をつけなかった。代わりに石台の仕掛けを押すと、その一部が前へ滑り、開口部が現れた。
カーラはランプを持ち、穴の中へ這い込んだ。下へ続く階段は十七段。その先の短い通路を抜けると、硬い岩盤を削った別の大部屋へ出た。
ここがアフトカ・ラーの宝物庫だった。その中身はおそらく、もともとピトムとラームセスの宝物都市から持ち出された品々である。アフトカ・ラーの死後、二都市がすでに略奪されていたことが判明したのだ。
部屋全体が磨かれた花崗岩で覆われ、壁沿いには宝を載せる花崗岩の台が並び、斑岩、孔雀石、ラピスラズリ、カーネリアン、青銅で作られた、口の広い巨大な壺も置かれていた。台の上には純金の鎖、腕輪、装飾品、器具が山と積まれている。部屋の中央には、六基ずつ二列、計十二基のアラバスターの台座が立ち、それぞれが種々の宝石を収めた見事な壺を支えていた。床にも宝石や黄金の装飾品を入れた壺と容器が無数にあり、その一つにはダレイオス・ヒュスタスペスの貴重な硬貨が、なお半分以上残っているのをカーラは見つけた。比較的新しい年代のもので、出所がアフトカ・ラーの古代墓だと疑われる心配がなかったため、祖母が必需品を得るために使っていたものだった。
実際、アフトカ・ラーの後継者の多くが、この宝物庫から盗むどころか、品を加えてきたことは一目瞭然だった。十二個の大きな孔雀石の壺へ収められた当初の宝は、ハタッチャが一時そこから品を取り出したはずなのに、ほとんど手つかずだった。台や床へ散乱する宝は、すべてアフトカ・ラーが墓へ横たわった後に加えられたものだった。
カーラの顔は動かなかったが、目は眩く輝いた。壺へ手を差し入れ、ルビーを一掴み取り出した。大きさも色合いもさまざまで、現代の手法に従って薔薇形の面へカットされる代わりに、平らな面へ研磨されていた。一部には小さな文字が刻まれていたが、大半は滑らかに磨かれているだけだった。
エジプト人は壁沿いの台へ向かった。ここにもルビー、ダイヤモンド、アメシスト、エメラルドがあり、多様な意匠の黄金装飾へ嵌め込まれていた。なかには途方もない大きさで、極めて高価な石もあった。銀のヒエログリフを象嵌した黒木の小箱が、カーラの目を引いた。蓋を開け、重厚な金鎖を取り出して頭からかけた。環の一つ一つに、ある王の名と、その事績を語る文字が細かく刻まれている。カーラはいくつかの碑文を読み、驚嘆した。この鎖はもともと、メネスから数えて第十二代の王バ・エン・ネテルによって十二個の環で作られた。その治世には、ナイル川が十一日間、蜂蜜となって流れたという。後継者ウアッチ・ネスが鎖を受け継いで環を一つ加え、その後も代々環が足され、アフトカ・ラーの時代まで成長し続けた。長く重いのも当然だった。
カーラはこの素晴らしい鎖を戻す気になれなかった。環をブルヌースの内側へ落とし、首にかけたままにした。
一時間余り宝を調べた末、若者はそれらが自分の所有物ではなく預かり物にすぎないというハタッチャの警告を忘れ、当然のように自分のものと考えながらも、渋々部屋を出る支度をした。ただしその前に、壺から大粒のダイヤモンドを二十三個選び、ターバンのひだへ隠した。ブルヌースには滅多にポケットがなく、たっぷりしたターバンの布には多くの物を隠せるため、ターバンはエジプト人のポケットと呼ばれている。
「生きてきた一年につき、ダイヤモンド一個だ」カーラは言った。「これくらい受け取る権利はあるだろう。」
だが、それでも満足できなかった。再びルビーの壺へ手を突っ込み、指で掴めるだけ取った。ルビーの色が好きだった。心を惹かれたのだ。
それから階段を上り、ミイラの部屋へ戻り、強大なるアフトカ・ラーが横たわる孔雀石の石台の秘密の引き戸を閉じた。
事情を知らぬ者が、これほど近くに途方もない富が眠っていると、どうして疑うだろう? カーラは深く息を吐き、誇らしげに背筋を伸ばした。ようやく自分がいかに重要な人間かを悟り始めていた。
この部屋で灯したランプを消し、書庫へ引き返した。そこで十五本のパピルス巻物を集め、ブルヌースの前身頃へ包み、裾をしっかり握って運んだ。そうしてアーチ状の通路を戻り、開けたままにしていた岩の扉へ着いた。開口部を抜け、岩を元の位置へ押し戻す。重い閂が鋭い音を立てて嵌まるのを聞いた。
今いるのは、山の洞窟にある天然の亀裂だった。ハタッチャの住居と隔てる唯一のもの――石壁へたどり着くまで、さほど時間はかからなかった。
壁へ耳をつけ、しばらく待った。何も聞こえない。灯りを消し、石へ埋め込まれた取っ手を掴み、軸を中心に石を回した。次の瞬間には居間へ戻っており、通り抜けた壁は再び堅固で動かぬものに見えた。
山中の探索には数時間を費やしたらしく、夜はとうに更けていた。
カーラはパピルスを片隅へ投げ、祖母の寝床から取ったばらばらの葦で覆い、自分の寝床へ倒れ込んだ。二晩の大半を起きて過ごし、瞼は鉛を載せたように重かった。

再びルビーの壺へ手を突っ込み、指で掴めるだけ取った
第五章 一本のパピルス巻物
夜明け、通訳はアーチからそっと頭を差し入れ、眠るカーラを疑わしげに見た。夕方、若者の家を訪れたときには留守で、ハタッチャの遺体も消えていた。さらに遅い時間、そして真夜中にも来たが、ハタッチャの死体も孫の生きた身体も、やはり見当たらなかった。
老女の遺骸がどんな秘密の場所へ運ばれたのか、カーラがどちらから戻るのか知りたかった通訳は、東洋人らしい抜け目なさを発揮し、細い道を横切るよう二本の糸を張った――アーチの両側に一本ずつである。それから老いたセラの家の寝床へ戻り、眠った。
夜明けには目を覚まし、動き出していた。二本の糸はいずれも切れていない。にもかかわらず、若いエジプト人は部屋の中でぐっすり眠っていた。通訳は困惑して左耳を掻き、首を振った。カーラは確かに賢い。だが尋常でない行動から、何か重大なことが進行しているとタドロスは睨んだ。ハタッチャ婆さんの硬貨と古い宝石の件は、調べる価値が十分にある。
涼しいアーチの下で胡坐をかき、待った。カーラは眠り続けた。少女ネフティスが通訳の朝食に菓子を持ってきて、黙って手へ置き、水差しを持って川へ向かった。戻ると主人に水を飲ませるため立ち止まり、それからまた去った。
タドロスは紙巻きに火をつけ、最後まで吸った。それから莚を押し退け、長い間じっと部屋の中を見た。カーラは死者のように横たわっている。怠け者の彼が、何らかの奇妙な方法で力を使い果たしたに違いない――ひょっとすると祖母の遺体を、遠い墓まで運んだのだ。ああ、そこがまさしく、硬貨や宝石の出た秘密の場所なのだろう。カーラは知っているに違いない。ならば信頼を勝ち取るのが得策だ。片隅に積まれた葦は何だ? なぜハタッチャの寝床から動かされた? 通訳の関心が突然高まった。莚の一部を外し、部屋へ這い込んだ。カーラは気づかない。四つん這いになり、音もなく隅まで進む。葦の中を探り、一本のパピルス巻物を引き出した。
しばし通訳は動けず、心臓が激しく脈打った。なんという発見だ! 新たなパピルス巻物を発見するためなら喜んで破産する学者を、少なくとも十二人は知っていた。
ゆっくりアーチへ這い戻り、莚と灰色の石の間から光の筋が差す場所へ座った。そこで写本を広げ、食い入るように調べた。学者を自称できるほどではないが、ヒエログリフなら多少読めるし、古代の絵文字を見る目もあった。これは疑いなく極めて古く価値ある巻物で、ラムセスとヒッタイトの戦争にまつわる出来事を記している。保存状態も見事だった。ここにはテーベへ連れ帰った捕虜の名簿、あちらには軍の支出記録。さらにここには――
「ヘンフ!」
鋭く短い叫びに続いて葦が激しく鳴り、豹のような一跳びで、カーラは己の領域へ押し入った不埒な侵入者へ襲いかかった。タドロスが立ち上がるより早く、その身体へ馬乗りになり、しなやかで細い指を凶暴に喉へ食い込ませた。通訳は逃れようともがいたが、かなわなかった。息をしようとしても空気が入らない。日焼けした顔の皮膚が黒くなり、恐怖に見開かれた目が眼窩から飛び出した。
それを見ると、カーラの強張った顔が突然緩み、殺意に満ちた決然たる表情を失った。通訳の喉から手を離し、より多くの空気が入るよう莚を押し退けた。
相手は喘ぎ、低く呻きながら、ゆっくり呼吸を取り戻した。首にはカーラの指が残した大きな変色痕がついている。だが、そんなものは問題ではなかった。確実な死から生へ戻りつつある。その移行は、感謝と喜びを呼び起こすものだった。通訳にとって命は甘美だった――所有する何よりも甘美だった。
カーラは直立し、静かに腕を組み、ひどく思案深い顔で相手を見下ろした。復讐の手を止めた理由は二つある。タドロスを殺せば当局と面倒を起こし、行動の自由と監視を受けないことが重要なこの時期に、厄介な事態となる。第二に、まだ漠然とした計画の中で、通訳を自分の利益のため利用するつもりだった。タドロスは賢く、顔も広い。忠実でいることが自分の利益になると理解すれば、よい召使いになるだろう。ならば通訳は、しばらくの間、生かしておくのが最善だった。
タドロスは襲撃の衝撃からほぼ立ち直り、怒り始めた。
「どういうつもりだ、この犬! 野獣のように私を倒し、絞め殺そうとするとは!」最初に戻った息で詰問した。
「私の家へ忍び込み、私事を嗅ぎ回るとは、どういうつもりだ?」カーラは無愛想に返した。
通訳の目が足元のパピルスへ落ち、顔色が変わった。
「どこで手に入れた?」素早く尋ねた。「まだあるのか? 墓か、神殿か? 話せ、カーラ。すべて話すんだ。」
エジプト人は険しく笑った。
「まだある」言った。「見ろ。あの隅にあと十四本ある。だが墓から出たのか、神殿から出たのかは知らない。ハタッチャから受け継いだ遺産だ。どこで見つけたかは祖母にしか分からなかったが、秘密を冥界へ持っていった。」
タドロスはしばらく考えた。
「何年もの間、どこへ保管していた?」疑わしげな口調で尋ねた。
「寝床の葦の下だ。見てのとおり、昨夜すべて引っ張り出した。」
「硬貨はまだあったか?」
「少しだけ。」
手に載せて見せた。
「ああ!」
通訳は深く息を吸った。
「お金持ちだな、王子」彼は言った。「古代のパピルスが十五本! いずれにせよ、ひと財産の価値がある。」
「いくらだ?」カーラは面白がって尋ねた。
「この一本なら」タドロスは拾い上げ、記述をもう一度見るため一部を広げた。「カイロで五百ピアストル――ひょっとすると千で売れる。驚くほど鮮明で、保存状態もよい。」
「自分のものにするといい」カーラは言った。
タドロスは凝視した。
「少女ネフティスと交換しよう」若者は平然と続けた。「彼女のため、おまえはすでにセラ婆さんへ二百五十ピアストル払った。連れていく際には同額を払い、その後も養わねばならない。よかろう。私がその負担から解放してやる。金を節約できるばかりか、投資額の四倍の価値を持つパピルスが手に入る。」
タドロスは眉をひそめ、不機嫌そうな顔をした。
「だが、あの娘は私のものだ!」と叫んだ。
「そしてパピルスは私のものだ」カーラは返した。「これを使えばネフティスのような女を二、三人買えるかもしれない。だが構わぬ。交換でおまえにやろう。」
タドロスは落ち着かなげに身じろぎし、巻物へ欲しそうな視線を投げた。
「女を物のように扱う野蛮な取引は好かぬ」迷いながらつぶやいた。
「私もだ」カーラは同意した。「悪いのはセラだ。太った娘なら、高い値をつけたがる。そうでなければ、これまで養った分をどう取り返す? だがネフティスに五百は高すぎる。母親へ残りの二百五十ピアストルを私が払わねばならず――しかもおまえは巻物を得る。イシスにかけて、ひどい取引だ! よせ。もうこの話は終わりだ。パピルスを返せ。」
「待て、待て!」タドロスは叫んだ。「なぜそんな不公平な結論を出す? 取引は成立した。言葉を翻すのは卑劣なアラブ人だけだ。」
「おまえの言うとおりだ」カーラは長い腕を伸ばし、欠伸をしながら答えた。「だが見事なパピルスだぞ、タドロス――ヒッタイトとラムセス王についての記録だ。」
「分かっている、分かっている!」通訳は賞品を慌てて小脇へ抱えた。「すぐ一緒に来い。私の所有物を譲渡したとセラへ知らせる。」
喉がまだ痛んだため、ややふらつきながら立ち上がり、先に進んだ。
カーラは静かに後を追った。
セラの小屋では、母娘が粗末な葦の織機で布を織っていた。
「よく聞け」通訳は告げた。「このネフティスはあまりに節操がなく、私はいつまでもこの見捨てられた村へ来て見張ってはいられない。それに商売のためカイロへ戻らねばならぬ。そこで娘を友人のカーラへ売った。もし彼が娘を連れていく日が来たなら、私が約束した残りの二百五十ピアストルを払うことになっている。」
セラは驚いたようだったが、朗らかに頷いた。
「あたしはどちらでも同じだよ」答えた。「王家のお方がおまえさんを満足させる金を持っているなら、あたしが口出しすることじゃない。偉大なるアフトカ・ラーの末裔との結びつきは誇らしいものだからね。」
少女は糸を切ってしまった。結び直しながら、無関心な目で二人の男を交互に見た。
「ネフティスを妻にするとは約束しない」カーラはゆっくり言った。「もちろん、いずれそうなるかもしれない。先々の計画はまだ決めていない。だがタドロスとの契約によって婚約者として娘を得た。これからは彼の権利が私のものとなる。」
「毎日ふっくらしているよ」セラはネフティスを値踏みするように見た。「これほど望ましい妻を見つけるには、ずいぶん探さなきゃならないだろうね、カーラ。それでも、娘を失うのを急いではいないよ。たとえ金が入るにしてもね。決めるまで、ゆっくり時間をかけなさい。」
「そうしよう」カーラは短く答えた。
「ところで、お祖母さんのハタッチャはどうなった?」
「防腐処理を施すため、砂漠へ運んだ。」
それ以上の質問を避けるため、その場を去った。
第六章 カーラ、ナイル川で身を清める
タドロスは再び道へ出た彼を追った。
「残りのパピルスだが」彼は言った。「私に売ってもらいたいか?」
「すでに売れた」カーラは真実を顧みずに答えた。
「なんだって! 誰に?」
「イングランド人のウィンストン・ベイだ。」
タドロスは苛立ちの声を漏らした。
「どこで会った?」と尋ねた。
「ここのナイル船着き場だ。今夜、巻物を受け取りに船で来る。」
通訳の頭に、さまざまな考えが素早く浮かんだ。まったくひどい知らせだ。あの見事な巻物をすべて自分の手へ収める計画だった。辺鄙な岩山の村で孤立して暮らすエジプト人が、宝の存在を賢い通訳たる自分が知るより早く、悪党の科学者の一人に接触され、買収されていたとは、痛烈な失望だった。
「騙されるぞ」思い切って言った。
「構わない」カーラは無関心に答えた。
タドロスは絶望した。それでも一つだけ明らかなことがある。ウィンストン・ベイが新発見のパピルス十四本をカイロ博物館の理事へ持ち込もうとしているなら、通訳は自分の一本を先に、可能な限りの高値で売るべきだ。それは容易だった。ウィンストンのダハビーヤが下流へ着くまで四、五日かかる。タドロスなら小舟でナイル川を渡り、対岸の鉄道に乗れば、翌日にはカイロへ着く。即座に鉄道を使うと決めた。
「私自身も」カーラは言った。「近いうちにカイロへ行くつもりだ。おまえがいるなら、通訳として雇いたい。」
物思いから引き戻されたタドロスは、ぎくりとし、汚れた裸足から、くたびれたブルヌース、力強く穏やかな顔、色褪せたターバンまで、驚きながら相手を見上げた。自身もフェダの生まれで、嘲りを込めて「王家のお方」と呼ぶカーラを、幼い頃から知っていた。これまでは、彼を小村へ永遠に据えつけられた置物のように考えていた。無気力で怠惰な役立たず。何らかの謎めいた方法で祖母に養われ、孤独な環境の中で老いていく定めにある男だと。
パピルスを相続して、多少は重要な人物になったのだろう。だがカイロ訪問を考え、華麗に装う通訳を雇おうとは、タドロスにとって驚愕すべき事態だった。しかし、なぜいけない? 金が入るのだ。使い方なら、間違いなくタドロスが教えられる。カーラは自分の経歴における一つの事件――将来の繁栄をもたらす要素になるかもしれない。
「いつでも訪ねてくるがいい」尊大に言った。「私の経験と世間の知識を使わせてやろう。」
「それが欲しい」エジプト人は返した。「惜しまず報酬を払う。」
自宅へ入り、通訳はその背を見送りながら、自分も急いで出発の支度をしようと決めた。
当初より、気持ちは遥かに楽になっていた。ウィンストン・ベイがパピルスを買ったから何だ? 若者を案内するのはタドロスではないか。まことに結構。実に結構だ!
カーラは再び横になり、正午過ぎまで眠った。それから村のパンを焼くネフェルトの小屋へ行き、パン一塊と乳一鉢を交渉して手に入れた。さらに大きく粗い袋も譲り受けた。代わりに、ケネから来たハタッチャの水差しと、祖母が頭へ巻いていた古いスカーフを渡した。
パンを食べ、乳を飲むと、すっかり元気になった。袋を自宅へ運び、パピルス巻物を詰めた。
アーチ脇の秘密の空洞から、金属の栓がついた青銅の壺、祖母が時々身につけていたスカラベの指輪、鋼の刃を持つ細身の短剣を取り出した。岩扉の鍵となる青銅の短剣とランプは、空洞へ残した。
石を元へ戻すと、留守中に動かされたり盗まれたりしそうなものがないか辺りを見回した。しかし部屋には、盗人や略奪者を誘う品など何もなかった。そこで袋を肩へ担ぎ、外へ出て、山の端を回り、ナイル川へ向かった。
ウィンストン・ベイは約束を守っていた。遭遇した奇妙なエジプト人が、謎めいた祖母から貴重な情報か古代の遺物を手に入れる可能性に賭け、不満を募らせるアラブ人乗組員の抗議を無視して、ダハビーヤを近辺へ留めていた。カーラと話した翌日の午後、日没の一時間前に椰子の木立近くへ上陸し、暗くなるまで待ったが、エジプト人は姿を現さなかった。それから下流のテル・エル・アマルナへ移動し、翌日の正午までそこへ停泊していた。
今日も空振りに終わるだろうと考えていた。だがジェラルド・ウィンストンは、ひとたび目標を定めれば頑固な決意で追い続ける男だった。今後どうするか考える前に、少なくとも一週間は毎日約束の場所へ通うつもりでいた。重要な発見の手がかりを掴んでいることは疑いようがなく、簡単に探索を諦める気はなかった。
そのため二日目、木立へ近づき、日陰に白い衣の人影が座っているのを見たとき、胸は喜びに跳ねた。急いで進み、カーラだと気づいた。エジプト人はイングランド人が挨拶するまで動かず、それから重々しく頭を下げた。
ウィンストンの目は傍らの袋へ釘づけになり、抑えようとしても声には期待が滲んだ。
「どうだった、兄弟?」と叫んだ。
「祖母のハタッチャは死んだ」カーラは言った。
イングランド人は恐怖に身を引いた。
「殺したのか?」
「いや、まさか」相手は落ち着いて答えた。「あんたと話した後で家へ戻ったとき、すでに死にかけていた。ハタッチャを殺しても私の利益にはならない。分かるだろう。」
「何を聞き出した?」
「何も。質問できる状態ではなかった。ただ、遺産を探すなら寝床の葦の下を調べろ、と囁いた。それからアヌビスが祖母を王国へ連れていった。秘密があったとしても、祖母は一緒に持っていった。」
ウィンストンはひどく落胆した。自ら老女へ会い、秘密をもぎ取ろうとしなかったことを悔やんだ。今となっては、もう遅い!
「袋には何が?」ほとんど無関心そうに尋ねた。
「遺産だ」カーラは言った。
「中身は?」
「古代のパピルス写本が十四本。」
「十四本だと?」ウィンストンは突然の興奮に震えながら叫んだ。「見せてくれ、早く――見せてくれ!」
カーラは動かなかった。
「カイロへ行く」彼は言った。「あんたの船へ乗せてもらえるか?」
「ああ、もちろんだ。すぐ船へ来い。」
「そのほうがいい」エジプト人は言った。「ゆっくりパピルスを調べ、関心に値するか判断できる。」
ゆっくり立ち上がり、袋を肩へ載せた。ウィンストンは熱心に先を歩いた。息苦しい暑さも、ハタッチャの不幸な死も忘れた。ついに宝が掘り出されたのだ。十四本の写本があれば、重要な情報を数多く得られるに違いない。
ダハビーヤの甲板でパピルスを一瞥すると、驚嘆した。どれも完璧に保存され、壊れる危険なく広げられた。
「驚異的な状態だ!」と彼は言った。「どこで見つけたと言った?」
「ハタッチャの寝床の葦に覆われた、地面の窪みだ。」
ウィンストンは頭を上げ、相手をじっと見た。
「ならば、そこに長く置かれていたはずがない。」
「それは」カーラは肩をすくめた。「私の知るところではない。」
科学者は慎重に写本を広げた。
「これは」考え込むように言った。「詩人ペンタウルトの詩だ。しかも、これまで見たことのない作品だ。」
読み始めると、やがてカーラが一節を訂正し、どう訳すべきか説明した。ウィンストンの目が輝いた。このエジプト人は、実際に自分以上にヒエログリフを理解している。ある面では、計り知れない助けとなるだろう。写本と同じほど驚異的な発見かもしれない。
次の文書は、シリア侵攻前夜、アメンホテプ3世が兵士たちへ行った演説だった。美しく記されており、紀元前十五世紀の文学へ貴重な一作を加えることになる。
ウィンストンは夜遅くまで文書へ没頭した。真の宝と呼べるものもあれば、古さと美しい筆致以外に大した価値のないものもあった。それでも十四本を一つのコレクションと見れば、古代文学の並外れた書庫だった。幸運な発見者は、この重大な夜、ほとんど眠らなかった。
夜明け前、ダハビーヤは喘ぐように煙を吐き、カイロへ向かって川を下り始めた。甲板に身体を伸ばしてよく眠ったカーラには、これまで味わったことのない朝食が出された。香り高いコーヒーは新たな世界を開き、チョップと果物には目を輝かせた。それでもエジプト人の態度はあまりに沈着だったため、客人がきちんと調理された食事を初めて口にしたとは、ウィンストンには分からなかった。
その朝、イングランド人はあまりに満足していたため、とっておきの葉巻を一本カーラへ与えた。エジプト人はまたしても、未知の贅沢を味わった。
静かに煙を楽しみながら、ウィンストンは言った。
「巻物を売ってくれるか?」
「ああ」カーラは答えた。
「千エジプト・ポンドを払おう。およそ十万ピアストルだ。」
カーラは頭の中で計算し、暗く顔をしかめた。
「少なすぎるかもしれない」ウィンストンは素早く付け加えた。「しかし反対に、全体としては高すぎる可能性もある。文書をもっと慎重に調べるまでは、正確な価値をつけられない。」
「その申し出を受けよう」エジプト人はなお顔をしかめたまま言った。「公正で、むしろ気前がよいと思う。腹立たしいのは、自分が馬鹿なことをしたと分かったからだ。」
「どういう意味だ?」
「昨日、女を一人買い、価値の三倍も払った。」
ウィンストンは微笑んだ。
「気にするな」面白そうに言った。「女の価値が、かかった費用に見合うことなど滅多にない。女が絡めば、男はしばしば愚かになる。」
「兄弟の言葉は賢い」厳粛なカーラは返した。「苛立ちは隠そう。いつか埋め合わせを得られるかもしれない。」
「ハタッチャはダレイオス・ヒュスタスペスの硬貨を残していなかったか?」少し考えた後、ウィンストンが尋ねた。
「七枚ある」相手は取り出して見せた。
イングランド人は大喜びした。
「一枚につき五ポンド払おう。」
「なら、あんたのものだ」カーラは宣言した。
その後、青銅の壺も見せた。それも十分な代価でイングランド人の手へ渡った。
「これですべてか?」ウィンストンが尋ねた。
「すべてだ」カーラは答えた。
「金持ちになるぞ、兄弟。取引成立の証として、イングランド金貨十ポンドを渡そう。カイロへ着いたら、私の銀行家のもとへ連れていき、残額をおまえの口座へ移す。あとは必要に応じ、都合のよい額を引き出せる――金が残っている限りはな。」
「感謝する」エジプト人は答えた。
川を下る間、カーラはアラブ人たちの染み一つないチュニックとズボンへ目を留めた。誰もが「汚いコプト」を露骨に軽蔑していた。イングランド人の服装も熱心に観察した。船がアシュートへ寄り、当地の優れた病院で療養中の友人をウィンストンが見舞うことになると、カーラはバザールを歩き回り、いくつもの大きな包みを抱えてダハビーヤへ戻った。
その夜、ほかの者が眠りにつくと、川で身体を洗った。その後、ターバンの中身をこっそりセーム革の袋へ移し、首にかけた。それから古いブルヌースとターバンを川へ投げ捨てた。
朝、一同が目にしたのは生まれ変わったエジプト人だった。襟もネクタイも白で揃えたイングランド風のシャツ、足首をアラブ式に絞ったゆったりした麻のズボンを着て、その上に一点の汚れもない白いブルヌースをまとっている。頭には赤いフェズ帽、足にはアルジェリア製の赤い室内履き。首には歴代王の重厚な鎖をかけ、指にはアフトカ・ラーのスカラベを嵌めた祖母の指輪が輝いていた。
ウィンストンは驚き、感心してエジプト人を眺めた。やがて鎖へ目が留まると、驚嘆の声を上げた。
「どこで手に入れた?」見事な彫刻を施した環の一つを調べようと、鎖を掴みながら尋ねた。
「これも遺産の一部だ。だが手放すことのできない家宝である」カーラは答えた。「メネスからアフトカ・ラーに至る、わが祖先たる王たちの記録だ。」
そして鎖の意味を説明し、重い環に刻まれた碑文をいくつかウィンストンが解読するのを助けた。
「値のつけようがない宝だ!」目の前の品に際限なく驚き、学者は叫んだ。
「私が王家の血を引くという主張の証拠だ」相手は誇らしげに答えた。「生きている限り、これと離れるつもりはない。」
「もっともだ」ウィンストンは即座に同意した。その瞬間から、古代エジプト王たちの慎ましい末裔に、新たな敬意を抱いた。
写本のどれにもアフトカ・ラーの名はなかった。だが鎖の末端には、その抜け目ない指導者の環があり、実在した人物であることが疑いなく証明された。明らかに古代の品であるスカラベもまた、カーラの祖先が王の末裔である証拠だった。若いエジプト人はたちまち重要人物となった。
カーラはアシュートで箱をいくつか買い、今では紙巻きを吸っていた。新たな境遇に伴う贅沢のうち、これがもっとも満足できるものだった。ほかの何にも増して、現在の運命を喜ばせた。
ダハビーヤは四日目の朝、カイロへ到着した。
ウィンストンはすぐに馬車を雇い、カーラを銀行へ連れていき、合意した金額を若いエジプト人名義で預けた。流麗で繊細な英字を書くカーラは、小切手帳を渡され、次のように署名を登録した。「カーラ王子。」
「住所は?」銀行家が尋ねた。
「今着いたばかりで、まだ決まっていない」答えた。「明日、住所を知らせよう。」
「私にも居場所を知らせてくれ」ウィンストンは言った。「当地のエジプト学者たちへ紹介せねばならない。」
そうして新たな知人を残し、新発見の宝を多くの友人へ見せるため、大急ぎで博物館へ馬車を走らせた。
第七章 目標への一歩
カーラは街路を歩き回った。カイロは、どれほど世慣れた旅人をも驚かせる都である。経験の浅い土地の人間が圧倒されぬはずはなかった。だがエジプト人は、冷たく控えめな顔と、威厳に満ちた無表情の態度の下へ驚きを隠した。砂漠とナイル地方から出てきたばかりだと、誰にも悟られてはならない。とりわけ宝石商の店が関心を引き、何度も足を止めては、窓に飾られた華麗な宝石を調べた。値札のついた品もあり、その価値に驚いた。世界のどの首都よりも、カイロには希少で高価な宝石が集まっていると言われている。
夕方、イスマーイール・パシャの大橋を渡ってゲジーラ島へ行った。薄暮の中、馬車、ラクダ、自動車、ロバが互いの踵を追うように連なって進む光景を見つめた。馬車や自動車にはシリア人、トルコ人、コプト教徒、アラブ人が乗り、至る所で見られる赤いフェズ帽を除けば、ありふれたヨーロッパ服を着ていた。貴族たちはブルヌースや民族衣装を捨てている。カーラはそれを全面的に支持した。育った古い慣習へ新機軸を持ち込むことに反対ではない。自国と時代を支配するのがイングランド人なら、彼らと重要性を競おうとする者は、イングランド人の作法と習慣を取り入れるべきだ。
また、歩くより乗り物へ乗るほうが威厳ある振る舞いだと理解し始めた。ゲジーラ島で馬車を呼び止め、それに乗って橋を戻った。埃と暑さを避け、美しい衣装の女たちや端正に装った男たちの列へ加わった。比べれば自分の衣装は粗末だったが、見事な鎖は何人もの好奇心旺盛な者の目を引いた。
カイロは今や灯りで輝き、住民はカフェやレストラン前の歩道へ集まっているようだった。カーラは空腹に気づいた。馬車を帰し、屋外のテーブルへ座って、たっぷりと食事を注文した。向かいには、ぼんやりした顔の男に付き添われた若いイングランド娘が座っていた。カーラは食べながら、初めて間近に見るこの階級の娘を批判的に観察した。衣服は繊細で美しい。だが少しも太っていない。快活で、何の遠慮もなく喋り、笑っていた。隣の男と対等だと思っているらしい。男はいかに愚鈍そうでも、やはり男である。全体としてカーラは失望した。ヨーロッパ女性の受ける教育は彼女たちへ奇妙な観念を吹き込み、関わる際にはそれを尊重せねばならないと、祖母から警告されてはいたが。
娘を見ているうち、カーラの中でネフティスの評価が数段上がった。ネフティスは確かに、

夕方、イスマーイール・パシャの大橋を渡ってゲジーラ島へ行った
太り、肉づきも柔らかく、口数も少ない。そういう女を所有するのは実に望ましい。ひょっとすると、ネフティスへ法外な値を払ったわけではないのかもしれない。もっとも使命を果たすまでは、この自立した、お喋りな西洋女たちにも我慢せねばならない。ならばすぐにでも、その振る舞いを学び始めるべきだ。
やがて誰かが馴れ馴れしく肩へ触れ、カーラは憤慨した仕草で身を引いた。通訳タドロスが、以前にも増して華麗に着飾り、笑顔で立っていた。タドロスは上機嫌だった。パピルス巻物を博物館へ持ち込んで買い手を探す必要はなく、個人収集家へ期待を遥かに超える額で売ることができた。そもそも期待額も決して控えめではなかった。全体として素晴らしい取引だった。そしてカイロにいるというだけで使える金を持つと分かる、この世間知らずな同郷人からは、まだほかにも利益をつまみ取れるかもしれない。
声をかける前に、通訳はカーラの外見と態度の変化に気づいていた。かつての世捨て人は、もう胸の悪くなるほど不潔ではなく、身体も清潔そうで、雪のように白い立派なブルヌースを着ている。不快なターバンはフェズ帽へ変わり、赤い履物は上等なモロッコ革製だった。何より首の鎖は豪華で重く、目を見張る細工が施されている。カーラは人前へ出せる姿になっただけでなく、その振る舞いも威厳と品格に満ちていた。
すべてが、突然得た富を示していた。謎めいたハタッチャ婆さんは、パピルス巻物より遥かに多くを孫へ残したに違いない。カーラが秘密を守り、何も話すまいとしても、遠からず必ず尻尾を出す。今は酷暑の季節で、華やかなカイロでさえ無気力に沈んでいる。観光シーズンが来るまで、この骨を巧みにしゃぶる時間はいくらでもあった。
カーラは最初こそ怒りの声を上げたが、すぐ挨拶へ変えた。タドロスが見つけてくれたことを喜んでいたのだ。まだ宿を確保しておらず、装った冷静さにもかかわらず、都市の広大さにいくらか当惑していた。
通訳は、上流階級のコプト教徒がよく使う、まずまずの下宿へ連れていくことに同意した。到着すると、カーラの案内人は主人へ秘密の合図を送った。主人は新たな客へ通常の倍額を請求し、エジプト人は騙されていると知らぬまま支払った。割り当てられたのは、簡素な家具を置いた箱のような部屋だった。それでもカーラは、これほど贅沢な部屋へ泊まったことがなかった。扉を丁寧に調べ、鍵だけでなく頑丈な閂までついていると知って満足した。
「さて」通訳は言った。「まだ早い。夜の入口をようやく越えたばかりだ。劇場へ連れていき、踊り子を見せてやろう。その後は、赤と黒を使う奇妙で面白い遊戯へ金を賭ける店へ行こう。それからレストランで夕食を取り、ハンガリー人ジプシーの素晴らしい楽団を聴けばいい。どうだ?」
「まったく気に入らない」カーラは冷たく答えた。「私は寝る。朝七時に来て、命令を受けろ。」
タドロスは驚きのあまり息を呑んだ。
「七時では早すぎる」少し不機嫌に言った。「その時間、街は眠っている。」
「いつ目を覚ます?」
「店が開くのは九時頃だ。」
「なら九時に来い。おやすみ。」
この一方的な dismissal は通訳をひどく落胆させたが、退出する以外に選択肢はなかった。カーラが踊り子も賭博台も拒んだのは奇妙だ。だが本当に疲れているのかもしれない。初めからこの世間知らずに多くを期待すべきではない。
翌朝九時に行くと、若いエジプト人はすでに朝食を済ませ、苛立ちながら待っていた。
「街一番の宝石商へ連れていけ」カーラは言った。
通訳は眉をひそめたが、やがて表情を明るくし、手数料を確実にもらえる二流の店へ雇い主を連れていった。
「ここではない」カーラは言った。「もっと立派な店を見た。」
タドロスは別の店を試したが、やはり成功しなかった。そこで計画を変え、後で運よく手数料をせしめられることに期待して、カーラを直接アンダラフトの店へ連れていった。
「さて」彼は威勢よく言った。「まず何を見ようか?」
だがカーラは無視し、店主と二人きりで会いたいと申し出た。アンダラフト氏は快く応じ、エジプト人が大宝石商の私室へ入る一方、タドロスは外へ残された。
カーラは見事なルビーを商人の机へ置いた。相手は熱っぽい声を上げ、飛びついた。
「ひどく古い品だ」エジプト人は言った。「カイロに、現代風のカットを施せる者はいるか?」
「この美しい宝石を変えるなど、惜しいことです」アンダラフトは抗議した。「古代特有の平らな四角いカットで、石が完全に純粋で傷一つないと分かります。こうした標本は、今では希少です。そのままになさいませ。」
カーラは断固として首を振った。
「どうしても再研磨させる」彼は言った。「腕の立つ者に頼みたい。」
「ああ、それならオランダ人のヴァン・デル・ヴィーンです。重要な仕事はすべて彼へ任せています。ですが、ヴァン・デル・ヴィーン自身も、この品を冒瀆することへ反対するでしょう。見識ある男ですから。」
「どこにいる?」王子は尋ねた。
商人は考えた。
「紹介状を書きましょう」彼は言った。「どうしても再研磨するなら、ヴァン・デル・ヴィーン本人にさせたい。三人の息子もみな熟練職人ですが、父親に勝る者は世界におりません。」
書状を書き、宛名を記してカーラへ渡した。それからルビーを再び取り上げ、調べた。
「もし売却していただけるなら」ためらいがちに提案した。「十分な値をおつけできます。エジプト副王から、古代エジプト宝石の首飾りを注文されております。しかし二年間で入手できた石は三つだけ。大きさも美しさも、こちらには及びません。ご覧ください。」
引き出しを開け、三個の古い石――二個のエメラルドと一個のアメシスト――を見せた。カーラは微笑み、ブルヌースの下のポケットへ手を入れ、最初のものと比べても大きさでほとんど劣らぬルビーを、さらに五個取り出した。
「この五個をエジプト副王の首飾りへ加えるなら、いくら払う?」と尋ねた。
アンダラフトは仰天したが、喜びと熱意を可能な限り隠した。拡大鏡で宝石を慎重に調べ、一つずつ秤へ載せた。
「五個で」少し計算してから言った。「四百ポンドをお支払いしましょう。」
カーラは肩をすくめ、ルビーを拾い上げた。
「それは普通の宝石の価格だろう」彼は言った。「だが古さと研磨法により、これらには付加価値がある。八百ポンドでなければ売らない。」
商人は微笑んだ。
「宝石に造詣の深い方であることは、容易に分かります」丁重に言った。「ですが古物を愛するあまり、その思い入れによってルビーへ過大な価値を置いておられる。どうでしょう、六百で。」
「値段の駆け引きはしない」エジプト人は返した。「買えとも言わない。私の値を払う余裕がないなら、ルビーは手元へ残す。」
そして集めようと手を動かした。
「お待ちを!」宝石商は叫んだ。「どうでもよいことです。エジプト副王がお望みなのですから、その喜びのため私が犠牲を払わねばなりません。」
震えを抑えようとしてもかなわぬ手で、要求された額の小切手を書いた。カーラは受け取り、去った。アンダラフトにとっては実に有利な取引だった。エジプト人は抜け目なく振る舞ったつもりでも、自分が食い物にされたとは知らなかった。
ムスキの下手にある静かな脇道、ダイヤモンド研磨師の家で、カーラはヴァン・デル・ヴィーンと三人の息子を相手に長い話し合いをした。見事なダイヤモンドを調べた末、彼らは一年間、カーラ王子の仕事だけに専念することへ同意した。王子は、古代宝石のコレクションを再研磨する仕事を絶えず与えると約束した。
その後タドロスへ手紙を持たせ、約束どおり、仮住まいの住所をジェラルド・ウィンストンと銀行家へ知らせた。それから素晴らしい昼食を取り、キューバ葉巻を吸った。午後は懇願する通訳に従っていくつかの店を回り、簡単な買い物をし、早めに宿へ戻った。するとウィンストンが苛立ちながら待っていた。
「すぐ私と一緒に、友人のダレッシー教授へ会いに行ってもらいたい。新たなパピルスについて、すでに論争になっている。教授は君の写本解釈法へ強い関心を持っているが、その正確さについて、私が示せる以上の証拠を求めている。来てくれるか?」
「喜んで」カーラは答え、ウィンストンと馬車で学芸員の家へ向かった。ヒエログリフに関する知識は確かなもので、二人の学者との議論も嫌わなかった。実際、その説明があまりに明快で簡潔だったため、二人は等しく驚き、喜んだ。
エジプト人は、議論を邪魔されぬよう私室で二人と夕食を取った。物思いに沈みながら粗末な宿へ戻った頃には、夜も遅かった。
「タドロス」彼は言った。「街のよい地区で、快適な家を探せ。ダレッシー教授の家のようなものでいい。」
「大金がかかるぞ」通訳は反対した。
「構わぬ。値を払う」王子は傲然と返した。
そこで翌日、タドロスはエズベキーヤ庭園近くの家具つき住宅を月千二百ピアストルで借り、カーラへは二千ピアストルを請求した。王子はそこへ移り、その後三、四週間、ヴァン・デル・ヴィーン一家が宝を再研磨する様子を見守り、酷暑の季節をカイロで過ごすエジプト学者たちと長く語らい、サイード・パシャのもとマスペロが創設した大博物館の古代遺物コレクションを研究して過ごした。その傍ら、接触する人々の社交生活と礼儀作法を観察し、驚くほど短い間に自らも洗練された物腰を身につけた。
一か月の終わりに、通訳を連れてフェダへ戻った。タドロスは抗議しなかった。古い友人から素晴らしい利益を上げ、カーラ王子の支出をほぼ二倍へ膨らませる搾取の仕組みを完成させていたからだ。
二人は列車で移動し、舟で川を渡り、夕方に小村へ着いた。タドロスはカーラの大きな旅行鞄を持ち、有給の従者にふさわしく後ろを歩いた。
こうして村の細い道へ入ると、十二人ほどの住民が全員戸口へ立ち、帰ってきた同郷人を見つめながら重々しく頷いた。
カーラは通訳へ、荷物を自宅へ置き、自分の宿はネフェルト婆さんかアメンカの家に求めるよう命じた。それから待っていたセラと娘のもとへ進んだ。
ネフティスの太った頬をつねり、丸い裸の腕を触り、最後に唇へ口づけした。そして身体つきは着実によくなっており、カイロの多くの女を恥じ入らせるだろうと宣言した。
ネフティスは気怠げに愛撫を受け入れたが、華やかに着飾った通訳が近づき、様子を見守ると、目がわずかに明るくなった。その日のタドロスは金の刺繍を施した緑の上着を着ており、少女は明らかな満足をもって眺めた。
「安く売りすぎた、カーラ」通訳は細い口髭を考え深げに撫でた。
「その意見には同意しない」カーラは答えた。
「返してくれるなら倍額を払おう。」
「娘は売り物ではない。それから、よく聞け。フェダにいる間は手を出すな。さもなくば、おまえを殺さねばならなくなる。」
「心配するな。己の務めは承知している」通訳は踵を返して答えた。今カーラを怒らせるのは賢明でない。骨にはまだ肉が残っている。
ネフティスはスパンコールの衣をまとい、カーラの膝へ座った。その間、母親が菓子と乳を運んできた。カーラが少女の頭へビーズの首飾りをかけると、ネフティスは心から嬉しそうに笑った。セラはビーズに触れ、数を数えた。青いビーズで、値段は五ピアストルだったが、二人の女は大喜びし、何日にもわたって所有する喜びを味わうことだろう。
カーラがセラの小屋を出たのは、夜も遅くなってからだった。
「冬になれば」彼は言った。「おそらく娘を迎え、カイロへ連れていく。そのとき残りの金を払おう。それまでは、これをバクシーシ[訳注:心づけ、チップ]として受け取り、慰めにしろ。」
老女がこれまで手にしたことのない金貨を一枚渡し、自宅へ去った。
「ネフティス」母親は言った。「あんたを誇りに思うよ。あんたはあたしたち二人を金持ちにした!」
第八章 祖母のミイラ
フェダが眠りについた頃、カーラは隠し場所からランプと青銅の短剣を取り、奥の壁の石を回して山の洞窟へ入った。石を戻し、亀裂を進み、円形の岩扉を抜けてアーチ状の通路へ入り、そこからミイラの部屋へ下った。
ハタッチャのミイラ棺の蓋を外し、内部の埃を丁寧に払った。四十日は終わった。朝までには、棺へ主が収まるだろう。
見事な彫刻の棺の中には、表面を平らに磨いた長方形の緑の石があった。その一面には、次のようなアフトカ・ラーのカルトゥーシュが刻まれていた。

エジプト人はこの遺物を丁寧に調べ、ポケットへ入れた。ハタッチャが遺体の防腐処理の代価として、小人セベットに約束したエメラルドだった。もしアンダラフトがこの驚異を目にすれば、さぞ目を輝かせるだろう!
だが、その考えによって時間を無駄にしていると気づいた。ランプを持ち、アフトカ・ラーのミイラのもとへ行き、孔雀石の石板を滑らせて開け、その下に隠された宝物庫へ降りた。
最初に行ったのは、アラバスターの台座へ載る十二個の大壺の中身を丹念に調べ、目録を作ることだった。そこから選りすぐりのエメラルド、サファイア、ダイヤモンド、ルビーを取り出し、衣の中へ隠して持参した小さな革袋へ詰めた。無造作なやり方で、ひと財産を取ったのかもしれない。それでも宝はあまりに膨大で、壺の中身が減ったようにはほとんど見えなかった。
花崗岩の床に置かれた無数の壺の一つ――アフトカ・ラーの時代より遥か後に宝へ加えられたものだろう――から、エジプト人は、世界の宝の中でもほぼ比類なき大きさと質を備えた真珠を大量に見つけた。壺には一クォート分が入り、カーラはすべて取った。ハタッチャから、この真珠一粒だけで王国の身代金を賄えると聞かされてはいたが、その瞬間には価値を理解していなかった。
すでに集めた宝石だけでも身体へ重くのしかかっていた。だがカーラは貪欲だった。数多くの壺や器を調べ、気に入った宝石をあちらこちらから選び、精緻な金細工の装飾品もいくつも加えた。ついには、現在の目的を果たすには十分な量を取ったと認めざるを得ず、渋々上の部屋へ戻った。
石板を閉じたとき、アフトカ・ラーのミイラ棺に嵌められた奇妙な宝石へ目が留まった。彫金された金の帯に守られ、エジプトの偉人の棺を文字どおり覆い尽くす何千もの宝石とは、明らかに異なる輝きを、カーラのランプの光の下で放っていた。最初は暗い鋼のような光沢だったが、見つめるうちに濃く透明な橙色へ変わり、次いで炎の舌が走るオパールの地色へ変化した。さらに一瞬後には鈍い灰色へ褪せ、それが徐々に緑がかった色を帯びた。
カーラはランプを置き、短剣の先で石を台座からこじり出し、衣の内側の安全なポケットへ入れた。そのときミイラ棺の上に置かれていた黄金のイシス胸像が傾き、床へ落ちた。胸像の下の空洞から、小さなパピルス写本が転がり出た。カーラはそれも取り、胸像を元の位置へ戻した。その神経は鉄でできていたに違いない。不気味な出来事にも、驚く様子さえ見せなかった。
入口へ戻り、通路を進み、最後には宝を携え、かつて住んでいた部屋へ出た。辺りは静かで暗い。時折、盲目のニッコーのロバが穏やかにいななき、遠くで砂漠の梟が鳴いた。しかし村人たちは深い眠りに沈んでいるらしかった。
カーラは荷物を分け、大半を旅行鞄へ入れて厳重に鍵をかけた。それから葦の上へ横になり、眠ろうとした。そのときアーチの莚が押し退けられ、セベットが入ってきた。
「参りました、いとも尊きお方よ!」と告げた。
カーラは身を起こした。
「祖母は?」と尋ねた。
「こちらにおります、王子。ああ、なんと生前そのままのハタッチャでしょう! きっとお喜びになる。自分の技を褒めるようだが、巧みで、ほぼ完璧な仕事だ。」
そう言って、小人はロバを中へ引き入れた。その背には布で幾重にも包まれたミイラが載り、まっすぐ伸ばした姿勢を保つため、平たい板へ縛りつけられていた。
「顔をお見せしよう」セベットは熱っぽく続け、ミイラを持ち上げて地面へ置いた。
「手間は要らない」カーラは言った。「祖母の顔なら、後でゆっくり見る。夜が明けようとしている。報酬を受け取り、立ち去れ。」
再び灯したランプを持ちながら、小人へエメラルドを渡した。セベットはひどく慎重に石を調べた。
「確かに、アフトカ・ラーのカルトゥーシュを刻んだ大エメラルドだ」防腐処理師は低く重い声で言った。「ついに私のものとなったことを、オシリスに感謝しよう。ハタッチャは賢い女で、約束を守った。」
カーラは明かりを消した。だが月が輝き、その光の一部がアーチを通って闇を薄めていた。
「おやすみ」彼は言った。
小人は動かず、深く考えた。やがてミイラへ目を向けて言った。
「古き友は、どこで眠る?」
「祖母の秘密だ」王子は無愛想に返した。「あんたが質問しないと信じていた。」
「では、おまえ自身は? 生涯を終えたとき、ミイラになりたいとは思わぬのか?」
カーラは笑った。
「ああ、セベット。あんたは不死身なのか?」と尋ねた。「何世代にもわたって全員をミイラにするまで生きるつもりか? 私の曾祖母と祖母をミイラにした。今や髪は白い。満足し、自分の未来を考えるがいい。」
「すでに考えてある」小人は静かに答えた。「ではさらばだ、王家の血を引く王子よ。おまえの祖先たちは、まず墓のことを考え、それから墓へ入る前の人生を考えた。おまえは墓も復活も考えず、人生へ耽っている。それが新たな秩序なのだろう。死者を忘れ、物言わぬ者を地中へ隠し、腐らせ、崩れさせ、ただの塵へ変える文明の流れだ。よかろう。この時代はおまえのものであり、私のものではない。オシリスがおまえの人生を導かんことを、王子よ!」
ロバのもとへ向き直り、幽霊のような獣を夜の中へ連れ出した。カーラは立ち尽くした。ほどなくして足音も聞こえなくなった。
アーチの莚を厳重に固定し、再び壁の石を回した。それから薄闇の中でハタッチャのミイラを手探りし、両腕へ抱えて開口部を抜け、石を元へ戻した。遺体は重く、立ち止まってランプへ火をつける頃には息を切らしていた。
疲れきり、汗にまみれたカーラが、ようやく祖母のミイラを精巧な棺の傍らへ置くまで、ほぼ一時間かかった。板へ縛りつけた紐を解き、細心の注意を払いながら、身体を壊しも傷つけもせず棺の中へ収めた。次に頭を包む外側の麻布を剥がし、きつく巻かれた包帯の仮面越しに、ハタッチャの顔の輪郭がはっきり見えるようにした。それから脇へ下がり、ランプを掲げ、穏やかな顔を長く真剣に見つめた。
「約束した」彼はつぶやいた。「ここで再び誓いを唱えると。ローン卿の一族には誰一人慈悲を示さぬ。虎が獲物を狩るように、一人残らず追い詰め、世のすべての者が見ている前で打ち砕き、屈服させる。最後まで私の復讐から逃れられる者は一人もいない。そして最後には、ハタッチャこそが彼らを滅ぼしたと全員に思い知らせる。そうあれかし。私へ命を与えた太陽神アメン・ラーにかけて。今この身を流れる血の主アフトカ・ラーにかけて。地上と来世における安寧への希望にかけて。ハタッチャの意志に従うと誓う!」
声は冷たく平坦だった。顔は厳粛ながら動かなかった。ミイラの胸へ手を置き、祖母の死の床で用いた神秘的な印を繰り返した。それを終えると、重く彫刻された棺の蓋を持ち上げ、所定の位置へ置いた。
* * * * * * * *
翌朝、カーラはネフティスへ口づけし、カイロへ戻るため川を渡った。通訳は旅行鞄を持ち、その重さに不平を漏らした。機嫌が悪かった。金を稼ぐのは結構なことだし、カーラはまさしく鉱脈である。しかしネフティスがあれほど太り、柔らかくなったと知っていたなら、パピルス一巻程度では到底手放さなかっただろう。確かに主人が眠る間、密かに少女と会って抱き締めることはできた。しかし所有する満足感が欠けている。若い女を売るときには注意すべきだ。試乗していないラクダと同じで、思いがけず価値ある性質を発達させることがある。
こうした物思いに、通訳はカイロまでずっと心を奪われていた。しかし注意を向けるべき問題はほかにもあった。カーラ王子は、次の汽船でナポリへ渡り、それからパリとロンドンを旅するつもりだと告げた。そしてタドロスへ同行を求めた。
「そんなことは不可能だ!」タドロスは答えた。「私はエジプトの通訳、この職業の第一人者だ。知識、知性、忠実さのいずれにおいても、全国に並ぶ者のない案内人だ! だが祖国から離れれば、私は何になる? 哀れな観光客から私を奪えば、彼らはどうなる?」
「ヨーロッパでおまえが必要だ。ほかの誰にも頼めぬ仕事を、私のためにしてもらう」王子は冷静に言った。「おまえは節操のない悪党だと思っている。何のためらいもなく嘘をつき、雇われている間は毎日喜んで私から金を盗む。良心も道徳も持たず、法律だけを恐れている。おまえの性格を慎重に研究した。そして正しく見抜いた。」
タドロスは最初は恥じ入り、次いで卑屈になり、最後には憤慨した。
「エジプトのすべての神にかけて」真剣に叫んだ。「私は正直な男だ!」
「それこそ、反対の主張が正しい証拠だ」カーラは動じずに返した。「今の私には、手助けをする悪党が必要だ。選んだのはおまえだ。好きなら今後も私から金を掠め取れ。気にはしない。だが間もなく取りかかる微妙な仕事で忠実に仕えるなら、生きているどの通訳よりも裕福にしてやる。ラシードもハイエク一族も、嫉妬で真っ青になるほどにな。一方、裏切る道を選ぶなら、富は必要なくなる。冥界には商売がないからだ。」
タドロスはじっくり考えた。
「われわれはエジプト人だ」ついに言った。「おまえの敵は、等しく私の敵でもある。よかろう。命じろ。私は従う。わが民の王子ではないか。それに、なぜ私がおまえを裏切ろうと思う?」
「賢者も時には愚か者になる。おまえの場合、知恵を失うことは死を意味する。ほかの者が同額の金で買収しようとも、裏切りの罰を取り立てるのは私だけだ。おまえは賢いままでいると思う。」
「ああ、それは間違いない、王子!」タドロスは確信を込めて宣言した。
こうしてカーラはアレクサンドリアから船出した。ヴァン・デル・ヴィーン一家がすでに再研磨した大粒のダイヤモンド、彼以外の誰の目にもまだ触れていない驚異の真珠、そして値のつけようもないアフトカ・ラーの宝を携えて。
通訳は卑屈に、従順に、その後へ続いた。
第九章 アネス
第九代ローン伯爵チャールズ・コンシナーは、執事のルークが大きな青い官用封筒をテーブルに置いたとき、かなり意気消沈していた。ルークは気を利かせ、支払いをせかす債権者たちから毎日届く手紙の山、そのいちばん上に封筒を載せておいた。
華やかで放埒な人生を送るうちに、父から相続した莫大な財産は次第に溶けていき、今や老境に入った伯爵は、世間体を保つだけの金を工面することさえ難しくなっていた。その浪費には、一人息子のロジャー・コンシナー子爵も大いに力を貸していた。ここ二十年というもの、子爵もまた、一族の財産を蕩尽するために立派に自分の役割を果たしてきたのである。
しかし、浪費癖を除けば、父子に共通点はほとんどなかった。父は無鉄砲で気前がよく、結果など顧みず、たいていの男なら隠そうとする放蕩にも公然と耽った。息子は無口で陰気、ことさらに品行方正な人物を装い、道を踏み外すのは主として賭博台の上だけに限っていた。二人はそろって領地を抵当に入れ、売れる木も石もことごとく売り払った。そしてついに、避けようのない破局が訪れ、完全な破産を目前にすることとなった。
窮地を脱する道は、どこにも見当たらなかった。子爵は不運にも、家柄こそ申し分ないものの、財産をまったく持たない女性を妻に迎えていた。哀れな子爵夫人は、十八年ほど前に女児を産んで以来、慢性的な病人となっていた。半ば廃墟と化したロンドンの大邸宅で、ただ置いてもらっているにすぎず、夫にも義父にも顧みられなかった。二人とも、彼女を役立たずの厄介者としか見なくなっていたのである。そればかりか、若く不器用な娘が家にいることさえ疎ましがり、そのためアネスは十二歳でチェシャーの女学校へ追いやられた。そこでほとんど忘れ去られたまま十八歳を迎えたが、授業料の支払いが滞ったため、女校長によって実家へ送り返された。
帰宅したアネスは、長年の病人暮らしですっかり身勝手になった母に会った。若々しく明るい娘がそばにいても、母の神経を逆撫でするだけだった。陰気な父である子爵は、愛されたい、親しく言葉を交わしたいという娘の願いに、まったく無関心で応えようともしなかった。だが祖父のローン卿だけは、老いてなお美しい顔に弱かった。そしてアネスは、たしかに美しかった。それだけでなく、優しく清らかで、乙女らしい娘だった。人生の大半を身持ちの軽い女たちと過ごしてきた、疲れ果てた老蕩児ほど、そうした美点の価値をよく知り、深く味わえる者はいなかった。そこで彼は、邪悪に老いた心に娘を迎え入れて愛し、自分がその愛情にいかに値しない男であるかを、悟らせまいと努めた。孫娘への愛は、彼の人生でただ一つ、利己心のない誠実な愛となった。そしてその愛は、とうに失われていた自尊心を、わずかながらも驚くほど取り戻させたのである。
今や自分の家となった陰鬱な屋敷で、ほかに友を見いだせなかったアネスも、やがて祖父を深く慕うようになった。世慣れぬ身ながら聡明な娘は、祖父のこれまでの人生が、そして今なおその暮らしが、いささか粗野で放埒なものだと気づいていた。それでも、自分の力である程度は祖父を更生させられると、愛情ゆえに信じていた――実際、その期待はかなった。ただし、あくまである程度にすぎなかった。
一家の財政状態について、家族の間で秘密にされていることはほとんどなかった。父と息子は、担保を背負い込んだ領地からどうにか捻出できるわずかな金をどう分けるか、公然と口論した。そのため娘も、ほどなく一家の窮状を理解した。子爵は賭ける金がなくなると、耐えがたいほど不機嫌になり、態度もほとんど粗暴になった。ローン卿も、クラブで夕食を取り、その後に遊ぶ余裕がなくなると、孫娘を除く接する者すべてに苛立ち、罵声を浴びせた。家計はすべて掛け払いで賄われ、使用人の賃金も大幅に滞っていた。
こうして一家の窮状がほとんど絶望的となったとき、政府の印章を押した大きな青い封筒が届き、魔法のようにすべての問題を解決した。
新しく任命された閣僚――ローン卿にしてみれば友人よりむしろ敵と考えるべき男――が、驚くべき未知の理由からローン卿のために骨を折ってくれたのである。その結果、ローン卿にはクローマー卿の下で働くエジプトの外交官職が、子爵にはエジプト財務省の役職が与えられた。どちらも高給で名誉ある職であり、政府が父子を全面的に信頼していることを示す人事だった。
ローン卿は仰天した。自分からこれほどの厚遇を求める勇気など、到底なかっただろう。しかも、まさにその名と財産が破滅から救われようという絶妙な時機に、これほどの栄誉が向こうから転がり込んできたのである。ほとんど信じがたい幸運だった。
彼は喜々として任命を受け入れ、華やかなカイロで冬を過ごせる見込みに胸を躍らせた。ロジャーも父と同じく歓喜した。ロンドンでは彼が部屋へ入るだけで顔をしかめる者が増えていたが、東洋の都での賭博は、ロンドン以上に刺激的に違いなかった。病弱な子爵夫人は、エジプトへ行けば健康が回復するのではないかと期待した。アネスもまた、近頃の忌まわしい暮らしから抜け出せるなら、どんな変化でも歓迎した。
「お祖父様」アネスは真剣な顔で言った。「慈悲深い女王陛下は、お祖父様とお父様に、重大な信頼を託されました。お祖父様なら忠実に責務を果たし、名誉ある家名にふさわしい働きをなさると信じています。でも、お父様のことが心配です。どうか賭け事をやめさせ、もっと立派な生活を送るよう勧めてくださると約束していただけませんか?」
「ふん! 馬鹿なことを言うな、子供じゃあるまいし。重要な職務ができれば、ロジャーもきっと身を慎むさ。財務大臣が忙しく働かせるだろうから、くだらん真似をする暇も気もなくなる。心配するな、可愛い子よ。わしらの運は開けたのだ。これからは肉屋にもパン屋にも燭台屋にも支払いができる。コンシナー家がたちまち国民の誇りとなるのも、まず間違いあるまい。オホン! 出ていくついでに、ルークにブランデー・ソーダを持ってくるよう言ってくれ。それから、待て! 十月四日にはロンドンを発つのだから、おまえも母親も、遅れず出発できるよう支度を整えておくのだぞ。頼りにしているよ、アネス。」
アネスは祖父に口づけし、それ以上何も言わずに立ち去った。懸念も忠告も、やはり聞き流されてしまったのだと思い、ため息をつきながら。
一人になったローン卿は、自分がいったい何の運命の気まぐれによって、この幸運を授かったのか、あらためて思い巡らせた。まったく、謎を解く手がかりはなさそうだった。
事情を知る者にとってさえ複雑な話だったのだから、老貴族が理解できなかったのも無理はない。
何年も前、その閣僚とローン卿は親しい友人同士だった。やがて前者は、ロンドンの社交界で大評判となっていた小柄なエジプトの王女に夢中になり、結婚を申し込んだ。ローン卿もまた、美しいハタッチャに心を奪われ、彼女と結婚するため妻との離婚を申し立てるところまでいった。魅惑的なエジプト人女性は、ヨーロッパの習慣を知らぬ純真さゆえに、ローン卿の強引な情熱に屈した。大勢の求婚者の中から彼を選び、ローン卿の友人が捧げた誠実な愛を退け、知らぬまま仕掛けられた罠に落ちた。そして稀有な献身を誓った男の愛人となったのである。ところがほどなく、無情な蕩児は、あまりに容易な征服に飽き、無造作に彼女を捨てた。虚偽の申し立てによって求めていた離婚はすでに認められ、望みさえすれば犠牲者と結婚できる身になっていたにもかかわらず。
当時、ロンドン中が彼の行為に憤慨した。中でも最も激怒したのは、かつての友人だった。ハタッチャが恥を隠すためロンドンから逃げ去ると、友人はエジプトの王女をあらゆる場所で捜した。だが徒労に終わり、戻ってからローン卿と争い、共通の友人たちが割って入らなければ殺していたほどだった。
もちろん歳月は、古い傷をすべて焼き固めていた。だが、二人の男の憎悪は墓場まで続くはずだった。裏切った男は批判を気にも留めず、またそれに抗えるだけの富もあった。真に愛した男は失意に打ち砕かれ、それ以来、社交界、とりわけ女性との交際を避けた。だが気晴らしに政治へ没頭し、その世界で後年、多大な栄誉と名声を勝ち取った。そしてついには、女王陛下の閣僚となり、権力において首相本人に次ぐ地位にまで上り詰めた。
カーラ王子が彼を訪ねたのは、そうしたときだった。エジプト人は「ハタッチャ」という魔法の名を口にするだけで、この大人物との私的な面会を取りつけることができた。閣僚は静かに耳を傾け、カーラは祖母を裏切った男への復讐を求めた。
「イギリスには」閣僚は言った。「血の復讐などというものはない。三十余年前、絶望に心を引き裂かれながら育んだ怒りも、とうに燃え尽きた。こうした古い勘定は、人が手を下さずとも歳月が清算してくれる。ローンは今、破滅の瀬戸際にいる。一人息子は根っからの賭博師だ。一族の命運は尽きかけており、ハタッチャを裏切った男は、白髪を汚名にまみれさせたまま墓へ入る。それで十分ではないか?」
「到底、十分とは申せません」カーラ王子は平静に答えた。「彼らにも祖母と同じ苦しみを味わわせねばなりません。それも、罰を免れてきた年月の分だけ、さらに深い苦痛を加えて。これは祖母の遺志です――長く惨めだった生涯を通じての望みなのです。祖母の旧友であるあなたが、復讐する権利を否定なさるのですか?」
聞き手の胸に、憤りが洪水のように押し寄せた。年月が傷を焼き固めることはあっても、深い傷ならば、痕は消えない。
「私に何を求める?」と彼は答えた。
返事をする前に、カーラは床を見据えたまま、しばらく考え込んだ。
「ローン卿の一族に、女はいないのですか?」やがて彼は尋ねた。
「二人いるはずだ。息子の妻は病人で、もう一人は孫娘だ。」
「ああ!」
長く引き延ばされたその声には、勝ち誇った満足がこもっていた。エジプト人は再び考え込み、閣僚が苛立ちはじめたころ、ようやく奇妙な訪問者は口を開いた。
「閣下」彼は言った。「何をすれば私を助けられるかとお尋ねでしたね。お答えしましょう。ローン卿に、クローマー卿の下で働くカイロの外交官職を与えてください。息子にも何か名誉ある職を。そうすれば、一家全員がエジプト――私の国へ来ることになります。」
「それで?」
「ロンドンには血の復讐がありません。法の手が届かない罪は、罰されぬまま放置される。エジプトでは、我々は自然の子です。偽りの文明が不正を糊塗することも、名誉を守る権利を否定することもありません。閣下、哀れなハタッチャの記憶を尊ばれるなら、どうかローン卿とその一族をエジプトへ送ってください。」
「そうしよう」閣僚は厳しい顔で言った。
かくして政府は、老ローン卿と、その高名なる息子ロジャー・コンシナー子爵の存在を思い出し、信頼を要する任務を託してエジプトへ送り出したのである。
第十章 クローマー卿の夜会
本国政府にひたすら忠実なクローマー卿が、女王陛下の恩寵を新たに受けた者たちを、あらゆる礼を尽くして迎えようとしたのは当然だった。彼はローン卿一家のために豪華な晩餐会を催し、続いて開かれた夜会には、そのときカイロにいた主だった名士がほぼ全員出席した。
晩餐の席で、ジェラルド・ウィンストンはアネス・コンシナーを紹介され、幸運にも彼女を食卓まで案内する役に選ばれた。その澄んだ無垢な目にひと目見られただけで、大柄なイギリス人は魅了された。しかも、自分が最も関心を抱く話題について、彼女が知性豊かに、よどみなく話せると知って大いに喜んだ。
ウィンストンは、本国におけるローン卿の評判をいくらか知っていた。若いころのエジプト王女との情事だけでなく、その後に重ねた、明らかに醜悪な数々の醜聞も記憶していた。息子の子爵についても、すでにひどく汚れた家名をさらに貶めるような噂を耳にしていた。だがアネスの率直な目をのぞき込みながら、父祖の罪に染まっていると考えられる者などいなかった。ウィンストンは、そうした環境の汚れが彼女に及んでいる可能性をただちに退け、イギリス人の乙女が周囲の染みに気づかぬままでいることを、誇らしく喜んだ。ところが、娘の快活なお喋りに耳を傾けているうちに、場違いな考えがふと浮かび、思わず眉をひそめた。彼女は、たしかに庶出の血筋ではあるものの、先日フェダのヤシの下で見つけ、以来、驚くべき変貌を遂げてカーラ王子となった、あの薄汚いエジプト人の従妹なのだ。世間には認められていないとはいえ、れっきとした再従妹である。ローン卿は二人にとって共通の祖父だった。アネスに罪はない――おそらくこの不義の血縁を知ることもあるまい。だが事実を知っているだけに、彼女のためを思うと不安になり、エジプトなどへ一歩も足を踏み入れさせるべきではなかったと思いはじめた。
しかし彼女はここにいて、すぐ隣で、いかにも幸福そうに満ち足りていた。
「私のクレオパトラ観は間違っているのかもしれません」彼女はそう話していた。「けれどデンデラ神殿の碑文を見ると、彼女は驚くほど信心深く、高潔な女性だったように思えるのです。気高い女性の人格に対する私たちの見方を毒したのは、シェイクスピアの『アントニウスとクレオパトラ』なのかもしれません。」
「デンデラへ行ったことがあるのですか? 碑文も読めるのですか?」と彼は尋ねた。
「エジプトへ来てから、カイロより先にはまだ足を延ばしていませんわ、ウィンストンさん」彼女は笑って答えた。「ですから神殿について知っているのは、本で読んだことだけです。でも学校に、エジプト学へ情熱を注いでいた先生がいらして、その先生の周りには、同じ情熱を吹き込まれた少女たちの一団ができていました。研究の助けになりそうなものは、手に入る限り何でも読みました。それに――笑わないでくださいね! ――私、象形文字なら少しくらい書けるんです。」
「書くのは簡単です」彼は微笑んだ。「しかし、記号を解読して翻訳できますか?」
「いいえ。一つ一つの記号に違った意味があまりにもたくさんありますし、碑文を右から左へ読むのか、中央から始めるのか、上へ読むのか下へ読むのか、判断するのも不可能ですもの!」
「それなら、あなたより経験豊かな者でも頭を悩ませますよ、コンシナー嬢」彼は言った。「実際、象形文字を間違いなく読める存命の人物を、私は一人しか知りません。」
「どなたですの?」彼女は熱心に尋ねた。
彼は唇を噛み、不用意に口を滑らせた自分を責めた。この娘の前でカーラの名を出すなど、何があっても避けなければならない。
「近頃知り合った現地人です」彼は曖昧に答えた。「ところで、ナイル川の旅には出ないのですか?」
「祖父に時間ができれば、ぜひ行きたいと思っています。でも新しい職務には当分、全力を注がねばならないそうです。それに残念ながら、その仕事は上エジプトではなく、デルタ地帯の新しい工事に関係しているのです。」
彼女は、二人の高官と軽やかに会話しているローン卿へ視線を向け、ウィンストンもその目を追った。「でも、あなた自身がナイル川流域でなさった経験を、少し聞かせていただけません?」と彼女は尋ねた。「あなたは大発見者で、近頃も値のつけられない古代のパピルスを何点も発掘したと伺いました。」
「興味深い品ではありますが」ウィンストンは謙遜して答えた。「あなたにそう言っていただくほど、並外れたものではありません。実のところ、コンシナー嬢、私は何年もエジプトで地道な調査を続けていますが、すでに集められた膨大な至宝に、多くを付け加えたとは言えないのです。」
「でも、エジプト副王殿下からベイの称号を授けられたのでしょう?」彼女はなおも食い下がった。
彼は気取ることなく、屈託なく笑った。
「エジプト副王は、金を使ってこの古い領土を有名にしてくれる者に、気前よく褒美を与える方なのです」彼は答えた。「エジプトでは、ベイはフランスの伯爵と同じくらい、どこにでもいますよ。」
「でも、何かは発見なさったのでしょう。たとえば、あの素晴らしいパピルスは――どこで見つけたのですか?」
「立派なイギリスのお金で買いました、コンシナー嬢。」
彼女は落胆したようだったが、ほどなく顔を輝かせた。
「少なくとも、コム・オンボスの誕生殿を発見し、発掘したのはあなたでしょう。それについて書かれた記事を『サタデー・レビュー』で読みました。」
「それなら、もう全部ご存じですね」と彼は言った。「ですが、ご覧ください。ほぼ向かい側に、あの偉大なマスペロ本人がいます――我々全員を合わせた以上に、エジプトへ貢献した人物です。いかにも学者らしく見えませんか? 彼の最も重要な業績について、お話ししましょう。」
これは彼が流暢に、熱を込めて語れる話題だった。アネスも、彼が望みうる限り熱心に耳を傾けた。
晩餐の後、一同は夜会に加わるため、宮殿の大広間へ移った。ほどなくクローマー卿が優雅に客を迎え、ローン卿、コンシナー子爵、そして令嬢アネス・コンシナーへ紹介していった。
ジェラルド・ウィンストンは一団から離れた場所に立っていたが、カーラ王子が進み出て紹介されるのを見ると、思わず身震いした。
ローン卿は、主催者のほかの客たちに等しく示してきたのと同じ親しみを込め、エジプト人を迎えた。そうしない理由があるだろうか。二人の血縁を知るのは、背後で黙って観察しているウィンストンだけだった――いや、カーラも知っている。あの日、フェダのヤシの下で自らそう語っていた。だが今の態度は重々しく礼儀正しく、顔には何一つ読み取れなかった。
アネスは、ゆっくりと先へ進み、後の者に場所を譲った端正な現地人へ微笑みかけた。
今ではヨーロッパ風の服装を好むカーラは、型どおりの夜会服を身につけていた。だが首から下げた重厚で奇妙な鎖と、左手の指にはめた比類なき宝石が、彼をひときわ目立たせていた。宝石には確かな色がない。それでも抗いがたい微妙な磁力でも宿しているかのように、あらゆる者の目を引きつけた。見る者によって色は異なり、青だと言う者もいれば、灰色だと言う者、茶色だと言う者、緑だと言う者もいた。しかし、不思議で人を惑わす輝きを放ち、小さな炎の舌が幾つも揺らめいているようだという点では、全員の意見が一致した。
それはカーラが、アフトカ・ラーの棺から拾い上げた石だった。
夜も更けたころ、エジプト人はアネスと短く話す機会を得た。彼女は明らかに、この高貴な風格の現地人に惹かれていた。王たちの鎖に興味を示すと、カーラは誇らしげに由来を説明し、環に刻まれた碑文の幾つかを読んで聞かせた。
「いつか」彼は言った。「すべての環を一つずつご一緒に見ていければ、私も嬉しく思います。ここには初期王朝の偉大な王たちの歴史が凝縮されています。同じような記録は、ほかのどこにも存在しません。」
「そうでしょうね」娘は答えた。「カーラ王子、ぜひ一度お訪ねください。私は熱烈なエジプト学愛好家なのです。ひどく無知ではありますけれど。」
「ありがとうございます」カーラは深々と頭を下げた。「私にできる限りのことをお教えできれば、光栄です。我が国には驚異に満ちた歴史があり、その多くはいまだ書物に記されていません。」
その直後、彼は夜会を辞した。大勢の婦人が喜んで彼をもてはやしたであろうにもかかわらず。首都ではすでに、古代エジプト王家の最後の末裔として知られていた。もちろん、その主張の真実を疑う者も一人や二人ではなかった。だが彼の血統を知る現地人たちが裏づけ、通訳のタドロスが盛んに宣伝し、王子が所有すると噂される莫大な財産も相まって、カイロ社交界ではきわめて興味深い人物となっていた。クローマー卿の夜会に居残る気さえあれば、注目に事欠かなかったことは確かである。しかし出席した目的はすでに果たした。彼は集まりを離れ、車寄せで待っていた馬車へ向かった。
「家へ!」彼はコプト語で命じ、通訳は上機嫌にうなずくと御者台へ飛び乗った。帰途、カーラは陰鬱な沈黙を守った。
一方、ウィンストンはアネスのもとへ戻ると、邪魔されずに話せる静かな隅に席を見つけてやった。エジプト人がイギリス人の娘に話しかけている間、不安を抱いてカーラを見守っていたのである。今、素朴な娘の心に現地人の王子が好印象を残したのなら、それを打ち消そうとひそかに決意した。
自分がなぜこの若い女性にこれほど強く心を寄せるのか、説明することはできなかった。これまで何人もの美しい乙女がジェラルド・ウィンストンに微笑みかけたが、心臓がほんの少し速く打つことさえなかった。いや、ときには彼を射止めようと手練手管を弄した女性すらいた。気さくで顔立ちもよい若いイギリス人は、申し分のない結婚相手と見なされるほど裕福だったからだ。しかし、流行を追う婦人たちとの交際には、いずれ必ず飽きた。ここエジプトで出会うのも、イギリスやアメリカから来た蝶のように軽薄な女たちか、知性あるヨーロッパ人の興味を引く力などない、顔の粗い鈍重な現地女性ばかりだった。
だがアネス・コンシナーは、ほかの誰とも違って見えた。初々しく可憐で、少女らしいからではない――これまでも立派な娘たちを見てきた。美しいからでもない――その羨むべき天分を持つ女性は大勢いる。優雅で知的で、心を奪うほど魅力的な物腰だからでもない――もっとも、それが男心を捉えるうえで大きな力を持つことは確かだった。結局のところ、彼女の最大の魅力は、その誠実さと、素晴らしい瞳の澄んだ奥に宿る光なのかもしれない。その瞳は最初から彼の心に焼きつき、最後まで力を失わぬ運命にあった。
彼女と心地よく語らいながら、何より奇妙に思えたのは、アネスがローン卿の孫娘であり、コンシナー卿の子だという事実だった。かつてカーラの口にした言葉が脳裏をよぎった。「親が子に与えるものなど、ほんのわずかだ。親が何者であろうと、子まで汚すことなどほとんどできない。」
おそらくこれは、これまで彼が信じようとしなかっただけで、思った以上に筋の通った考えなのだろう。
やがてアネスはカーラ王子の名を出し、知り合いなのかと尋ねた。
「ええ」彼は答えた。「私が発見したのです。カーラは、私が見つけた数少ない掘り出し物の一つですよ。」
「どこで発見したのです?」彼女はその口調を面白がって尋ねた。
「ナイル川の岸辺にある泥の村です。襤褸をまとい、垢にまみれていました。ですが非常に頭がよかった。かつて世間で暮らしたことのある賢い親族から教育を受けていたのです。しかも、どういうわけか、彼とその一族は古代から秘蔵されてきた財宝に触れることができた。富の使い道を知らぬまま、大金持ちだったわけです。私は彼の財宝――少なくともその一部――を買い取り、彼をカイロへ連れてきました。観察力があり、新しい環境にもすぐ順応しました。その後さらに財宝を売り、パリとロンドンを訪ねたそうです。わずか半年で、薄汚いナイル川の住人が世界に通じた男になり、富と才能があるという理由で社交界にも受け入れられました。」
「まあ、不思議ですこと!」彼女は声を上げた。「では本当に、古代の王たちの末裔なのですか?」
「そうだと思います――母方の血筋でね。エジプト人は母親からのみ血統をたどりますから。しかし矛盾したことに、誇りにするのは父親のほうです。エジプトの女は、たいてい哀れな存在で、無気力で知性に乏しい。この点では、ほかのほとんどすべての亜熱帯の国の女性と異なっています。」
「昔は違ったに違いありません」娘は真剣に言った。「世界最初の真の文明が、愚かな民族から生まれたとは思えませんもの。それに、この哀れな女たちが何世紀もの間、奴隷にされ、塵の中へ踏みにじられてきたことを考えてください。サラセン人が女性を蔑んだことが、今のエジプトにおける彼女たちの境遇を招いたのではないでしょうか。頭がよく、私たちの言う意味で女性らしい人には、一人も出会っていないのですか?」
彼はハタッチャのことを思った。
「現代にも、疑いなく少数の例外はいます」彼は答えた。「それに、古代の女性がエジプト史で確かな地位を占めていたという点では、あなたの言うとおりです。晩餐の席で勇敢に弁護した哀れなクレオパトラのほかにも、ハトシェプスト女王がいますし、ニトクリスをはじめ、不滅の名を残した女性たちがいました。博物館にはもう行きましたか?」
「ざっと見て回っただけです。でも、その一瞥だけで畏敬と驚きに満たされました。何日もかけて、あの至宝を研究するつもりです。」
「ぜひご一緒させてください」彼は頼んだ。「私がよく知る品々を、あなたが夢中になって楽しむ姿を見られたら嬉しい。それに、少しはお役に立てます。」
「まあ、ご親切に」娘はその提案を喜んだ。「お時間が許すなら、明日の午後に行きましょう。」
「お迎えに上がっても?」
「お願いします。一時には支度を整えておきます。この機会を余すところなく活かしたいですから。」
こうして彼は、明日の約束に心を弾ませながら帰宅した。女性と別れた後まで、その人のことを考えたのは、ジェラルド・ウィンストンにとって初めてだった。
その夜、彼は夢を見た。アネスの夢だった。
第十一章 罠を張る
カーラもまた夢を見た。娘の瞳が彼につきまとった。どこを見ても、明るく熱心な眼差し、訴えかけるような微笑み、美しい頭を優雅に傾ける姿が目に浮かんだ。カーラは執拗な幻影を呪い、追い払おうとした。それが自らの破滅を招きかねないと、よく分かっていたからだ。
当時のカーラは、かつてトルコ人の高官が所有していた、シュブラ街道沿いの立派な邸宅に住んでいた。現代的な設備を数多く備え、豪華な家具が置かれていた。主人の居室からハレムへ通じる中庭には、美しい庭園もあった。通訳のタドロスは、この邸宅の調度を整えたおかげで、かなりの財産を築けたとひそかに自慢していた――もっとも、他人に打ち明ける勇気はなかった。カーラがすべてを任せてくれたため、大量の金が通訳の指を素通りすることはなかったのである。
このころには、タドロスも愛する観光客を失ったことを嘆かなくなっていた。浪費家のアメリカ人を一ダース集めても、同国人の主人ほど彼を潤してはくれない。それに、まだ終わったわけではなかった。
夜会から数日後、カーラはロータス・クラブで昼食を取り、そこでコンシナー卿に会った。その後、王立エジプト軍のヴァリン大佐とエカルテ[訳注:二人で行うフランス発祥のカードゲーム]を一局打ち、大金を失った。コンシナーは興味深げに勝負を見守り、大佐が退席すると、自分もエジプト人と一戦交えたいと申し出た。カーラは丁重に承諾した。彼の打ち方は無頓着で、判断力もほとんど見せなかった。その結果、またしても負け、コンシナーは百ポンド儲けた。
王子は上機嫌に笑い、下手な腕前を詫びた。
「次にお相手いただくときは」彼は言った。「もう少しましな勝負ができるよう努めます。」
コンシナーは陰気に笑った。これほど裕福で無頓着な獲物に出会えるとは、まさに思いがけない幸運だった。経験の浅いエジプト人から金を巻き上げることに、格別の喜びを見いだせそうだと胸算用した。
ロータス・クラブは当時も今と変わらず、カイロで最も名が通り、同時に最も遊び慣れた連中が日々集まる場所だった。ローンとコンシナーも会員候補として掲示されていたが、前者がそこを訪れるのはたいてい真夜中過ぎだった。それも、ほかに面白いことがないとき、夜食を取るか、葡萄酒を一本楽しむためだけだった。カイロへ到着して以来、ローン卿はことのほか慎重に振る舞っているようだった。公務は軽く、適当な家を借りて整えるまで一行の仮住まいとなっていたサヴォイ・ホテルの客室で、ほとんどの日々を過ごした。しかし夜になるとアネスを一人にすることが多く、娘は流行のホテル生活がもたらす華やぎと、訪ねてくるわずかな知人との交際だけで満足せざるを得なかった。一方、子爵は今も昔も家族の輪から完全に外れていた。財務省の机には真面目に向かっているようだったが、勤務時間は正午で終わるため、午後も夜も自由にクラブで過ごせた。子爵夫人は相変わらず物憂げで無力な病人として自室に閉じこもり、二人のアラブ人使用人を忙しく働かせていた。
コンシナーはアネスに、エジプト滞在中はカードに触れないと約束していた。しかし本気で守るつもりが一度でもあったとしても、その決意はたちまち消えた。カーラには抗いがたかった。もちろん王子の運がよく、勝つこともあった。だがそういうときは、相手が勝ち分をすべて奪い返すまで、際限なく賭け金を倍にするのが常だった。
この無謀な方針に、ロンドンのクラブで慎重な勝負に慣れていたコンシナーは、初めこそ警戒した。だがカーラが、勝ったまま席を立つことを決してしないと気づいた。誰と勝負しても、最後には相手が、エジプト人の奇妙なやり方で利益を得ることになった。そのため、カーラ王子ほどクラブで人気を博し、「静かに一局」の相手として求められる者はいなかった。彼の富は莫大で尽きることがないように見え、その気前のよさは評判になった。
だが裕福なエジプト人は、誰よりもコンシナーとの交際を好むようだった。やがてクラブの常連たちも、二人が互いに勝負相手として選び合っていると理解するようになり、子爵は稀に見る幸運な男として、誰からも羨まれた。
しかしローン卿一行がエジプトへ到着してからの数週間、カーラがしていたことは、カードだけではなかった。ハタッチャの憎しみの犠牲者たちは、すでに彼の網へ引き渡されている。今や逃れる術がなくなるまで、網をきつく編み上げねばならなかった。東洋人の思考は複雑である。望みの対象や成果へ真っ直ぐ進むことはほとんどなく、狡猾に、入り組んだ策を幾重にも巡らせることを好む。
ローン卿に課された数少ない責務の一つは、ロゼッタ・バラージとそこから延びる運河の修復に従事する、イギリス人請負業者たちのエジプト政府への請求を監査することだった。この堰はもともと一八四二年に造られたが、施工があまりに粗悪で、以前から大規模な修理を必要としていた。ある場所では、マクファーランドという請負業者が、堰の水門を開いたとき周辺地域を守るため、運河の縁に沿って二マイルにわたる石の堤防を築く契約を結んでいた。ところが掘削を始めると、かつて同じ場所に実際に石堤が築かれていたことが分かった。防護の役に立つほど高くなかったため、ナイル川の泥に埋まり、存在そのものが忘れ去られていたのである。契約した工事の半分以上がすでに完成していると知った抜け目のないマクファーランドは、この幸運な発見を秘密にし、堤防を仕上げた。すると工事全体の請求書をローン卿へ提出して監査を受け、その後、政府から代金を取り立てようとした。この不正で盗み取られる額は、一万八千ポンドに上った。
ローン卿のあらゆる公務を、高給で雇った密偵に監視させていたカーラは、請負業者の計略を知った。マクファーランド本人が、酒に酔って気の緩んだ折、「親愛なる友」に自らの幸運を打ち明け、その話がカーラの手の者へ漏れたのである。
だがローン卿が不正に気づいていないこと、契約どおり工事が完了したと、ためらいなく承認しそうなことは明らかだった。
まさにカーラが求めていた好機だった。ある朝、詳細な指示を受けたタドロスがローン卿との密会を取りつけ、マクファーランドの企てる巧妙な政府詐欺を発見したと打ち明けた。ローンは驚いたが、密告者に礼を述べ、詐欺を暴くと約束した。
「それは愚かな真似です、閣下」通訳は率直に断言した。「エジプト政府は豊かになりつつあり、この契約を一ダース結んでも支払えるだけの金があります。この秘密を知っているのは、我々二人だけだと保証しましょう。では、我々は馬鹿ですか、閣下? あなたがこのトルコ人の国で暮らす見返りに、あるいは私が耳を澄ませていた見返りに、手数料を取ってはいけませんか? 私はお礼など欲しくありません。欲しいのは金です。千ポンドいただければ、私は永遠に沈黙します。残りについては、請負業者とお好きに分け前を決めればよろしい。」
ローンはたちまち怒り、憤慨した。高官たる自分の威厳を持ち出して、このような侮辱をよくも口にしたと通訳を怒鳴りつけ、脅しまでした。だがタドロスは平然としていた。
「これは単なる取引です」再び話すことを許されると、彼はそう言った。「私自身エジプト人ですが、エジプト人がエジプトを統治しているわけではありません。それに、イギリス人がまったく無私の動機でここへ来ているとも思いません。率直に申して、左右から金を盗まれている愚かなトルコ人を、あなたや私が守ろうとする必要がありますか? この件に危険はまったくありません。マクファーランドの不正が発覚しても、古い堤防の真実をあなたが知っていたと、誰も正当に非難できないからです。あなたの検査官は、今まさに現場へ行っています。戻れば、工事は契約どおり完了していると報告するでしょう。あなたは請求書を承認し、マクファーランドは支払いを受ける。その後、私は千ポンドを受け取るため、あなたを訪ねます。請負業者との取り決めについては、何も知りたくありません。では、話は決まりです。私が口の堅い男だと信じてくださって結構です、閣下。」
そう言って彼は立ち去り、ローンを一人、提案について考えさせた。
老貴族の経歴はこうした不正に穴だらけだったので、一見無害なこの話を思い巡らせても、良心が恐れおののくことはなかった。ただ安全かどうかを考え、発覚する危険は小さいと判断した。カイロでの暮らしは金がかかり、彼の俸給では、欲する娯楽をすべて楽しむには足りなかった。かなりの金額を得る機会を軽んじるべきではない。それに結局、これを利用しないのは愚かだという通訳の言葉は正しかった。
翌日、カーラ自身が請負業者に会い、企てられている詐欺の詳細をすべて知っていると率直に告げた。マクファーランドは怯え、自分には提出した請求書の代金を取り立てるつもりなどなかったと抗弁した。
だが王子はすぐに安心させた。
「計画どおり進めるのだ」彼は言った。「今さら退くには遅すぎる。ローンのもとへ行けば、真実を突き止めたと告げられるだろう。そこで彼と妥協し、盗み取る予定の全額の半分、つまり九千ポンドを差し出せ。必要なら、もっと払ってもよい。ただし、ローンに渡した分は一ピアストル残らず、私が個人的に返金する。閣下に領収書を書かせ、私へ渡せるならな。」
「なるほど」マクファーランドは訳知り顔でうなずいた。「奴を自分の支配下に置きたいわけですな。」
「そのとおりだ。そのためなら、いくらでも払う。」
「だが、あんたが奴を告発すれば、私も巻き添えになる。」
「告発はしない。ただ彼の頭上に突きつけておく武器にするだけで、決して使うことはない。それは保証する。一万八千ポンドを受け取り、イギリスへ帰れ。その金があれば、穏やかで裕福な暮らしを送れる。」
「そうします」請負業者は言った。「危険は承知で賭けましょう。」
「危険などない」カーラはきっぱりと答えた。
こうしてローン卿は請負業者との交渉を成功させ、請求書を監査する見返りとして、一万八千ポンドのうち一万二千ポンドを自分のものにした。政府はすぐに金を支払い、続いて獲物の分配が行われた。タドロスは千ポンドを受け取りに来て、もし秘密を漏らせば自らも罪に問われるような領収書を渡した。ローンも渋々ながらマクファーランドに領収書を渡した。ほかに話をまとめる方法がないと悟ったからである。
その領収書はカーラの手へ渡った。請負業者はただちにイギリスへ帰り、ローン卿はひそかに自らの「幸運」を喜び、金を使いはじめた。
この小喜劇が演じられる一方、カーラは幾度となくアネス・コンシナー嬢を訪ねた。彼女はその優雅な話しぶりと、エジプト史に関する並外れた知識に魅了された。若い令嬢の客間で、ときおりカーラと顔を合わせたウィンストンでさえ、古代についての知識では王子が上だと認めざるを得なかった。そしてアネスに向けられるエジプト人の関心へ無力な憤りを抱きつつも、彼女と同じほど熱心に、その興味深い話へ耳を傾けた。
一方アネスは、容姿にも大いに恵まれた端正な現地人を、賞賛してはならない理由など何も知らなかった。彼の好む話題へと誘い、初期王朝の神官儀礼にまつわる神秘を説明するにつれ、その暗く燃える瞳が輝くのを見るのが好きだった。男がどんな秘密の企みを抱いていようとも、イギリス人の娘には常に稀有な優しさと礼節をもって接した。とはいえ、率直すぎる物言いや、ときおり品を欠く比喩には、初期教育の粗さが表れていた。ウィンストンは次第にカーラを嫌い、恐れるようにさえなった。具体的に非難できる材料は何もなかったが、現地人の気質を知る経験から、本能的に信用できなかったのである。
カーラも、その不信を感じ取ったに違いない。二人の間には冷ややかさが生まれ、それまでの友情を瞬く間に破壊した。ほどなく互いに、アネスの好意、ひょっとすると愛情をめぐる恋敵なのだと悟った。
だが、どちらも戦いから退く気はなかった。アネスは二人へ等しく好意を分け与えた。特別に感じのよい二人の男性との交際を楽しむ以上のことなど、何も考えていなかったからだ。娘には、隣室に住み、親交を結んだ若いイギリス人女性を除いて、付き添い役がいなかった。しかしエヴァリンガム夫人は孤独な娘へ温かな関心を抱き、彼女一人では許されなかったであろう数々の外出に、喜んで同行した。ウィンストンと博物館を訪れる機会も多く、その時間は夢中になるほど面白かった。端正な若いエジプト学者は、実に愉快な案内役だった。有名な遺物を見て過ごした午後には、シェパード・ホテルのテラスへ移って五時のお茶を楽しみ、そこへカーラが加わることも多かった。王子はパリから有能なフランス人運転手とともに自動車を持ち込んでいた。エジプトの道路はほぼ完璧だったため、その車でピラミッド、ヘリオポリス、サッカラ、ヘルワンなどへ、何度も楽しい遠出をした。ウィンストンとエヴァリンガム夫人は必ず一行に加わり、二人とも、カーラが素晴らしい主人役であることを認めずにはいられなかった。
第十二章 ネフティス
カーラの計画は今や、一点を除いて見事に熟しつつあった。犠牲にするつもりの娘へ愛情を抱きたくはなかった。だが彼女は最初から強力な魔法をかけており、ひそかにどれほど抗っても、それを解くことができなかった。起きていても眠っていても、その顔が常に目の前に浮かび、クラブで父親と勝負している最中でさえ、追い払えなかった。
エジプト人は、この異常な状態に危険を見て取るだけの抜け目なさを備えており、ひどく不安を覚えた。
ついに、眠れぬ夜を過ごすうち、逃れる方法を思いついた。
「タドロス」翌朝、彼は通訳に言った。「フェダへ行き、ネフティスをここへ連れてこい。今のところ私のハレムは空だ。あの娘を最初の住人にしよう。」
通訳でさえ驚いた。主人は放埒なイスラム教徒より、ヨーロッパ人の礼儀作法や習慣を真似る人物だと思いはじめていたからだ。だが命令を受けた喜びが、その顔に浮かんだ。
「もちろんですとも、王子」彼は喜々として答えた。「フェダ行きの始発列車に乗り、三日以内にあの美女をあなたのハレムへ入れてみせます。」
カーラはその口調と表情を見逃さなかった。
「考え直した、タドロス」彼は厳粛に言った。「代わりにエベックを送る。カイロでおまえの働きが必要になるかもしれない。」
「エベック! あの耄碌した老アラブ人を! とても任せられません」通訳は大声でまくし立てた。「フェダを知っているのは私だけ、セラの扱い方を知り、あの太った娘を安全に連れてこられるのも私だけです。行くのは私です!」
「エベックを呼んでこい。」
「いいえ、私自身がフェダへ行きます。」
「主人は私か、タドロス?」
「金持ちだから、自分が主人だと思っているだけだ。おまえがどの墓を荒らしているかさえ分かれば、主人になるのは私だ!」
「ずいぶん危険な立場にいるのだぞ、哀れな通訳よ。」
反抗的に睨みつけていたタドロスは、カーラの冷たい眼差しを受け、目を伏せた。
「それに、セラ婆さんへ支払う二百五十ピアストルを、誰かが持っていかなければならん」彼は幾分うろたえながら呟いた。「あれが契約だ。金を受け取らなければ、娘を渡しはしない。」
「エベックを呼んでこい。」
通訳は従った。カーラの態度が気に入らなかった。抗議を続ければ、本当に危険かもしれない。主人の秘密を最も深く知るのは自分だった。だが何を知っている? 恐怖を抱くには十分だが、それだけにすぎない。
エベックは役目をきちんと果たした。セラに支払うべき金を渡しただけでなく、主人の指示どおり、金貨五枚を上乗せした。そして厚いヴェールで身を隠した娘をカイロへ連れてきて、カーラの家政婦へ引き渡した。
ハレムの部屋は掃除され、準備が整っていた。カイロでも群を抜いて贅沢な造りで、ネフティスは自分に与えられる部屋の豪華さに圧倒された。楽園の天女にもたとえられそうな、暗く真剣な美しい瞳を部屋中へさまよわせながら長椅子へ沈み込み、あまりの驚きに考えることも話すこともできなかった。
もっとも、どちらの能力もネフティスの長所ではなかった。自分を買った主人からの召喚に、おとなしく従っただけである。その召し出しが何を意味するのか、考えようともしなかった。考えて何になる? これが運命なのだ。ひょっとすると、いつかこんな変化が訪れるのではないかと、漠然と予感していたのかもしれない。カーラは一度、母に、娘を呼び寄せるかもしれないと話していた。しかしネフティス自身は、まるで気に留めていなかった。
ナイル川から水を運び、織機で働いたときと同じ無気力さで、老エベックについてカイロへやって来た。母を残して。セラは蓄えた黄金を眺め、ほくそ笑んでいた。
川を渡る旅は初めての経験で、鉄道での旅は驚異そのものだった。だが関心は示さなかった。大きな瞳はすべてを静かに見たが、不思議に思うほど頭が活発ではなかった。そうしたものが存在するとは聞いていた。そして今、目にした――千もの丸屋根と尖塔を持つ驚異のカイロ、万華鏡のように移ろう街路の光景、色鮮やかな衣装、異様な喧騒――その混沌すべてが、かえって感覚を鈍らせた。
ある意味では楽しんでいた。だがその楽しみは感覚的なものにすぎなかった。この服は通訳タドロスの組紐飾りの上着より豪華だ、あの家はハタッチャ婆さんが住んでいた家より立派だ、とは思った。しかし、こうした漠然とした比較を超えて、目にする光景のどれも、自分とは関係のないものだった。世界という大舞台で自分が演じている役、目前に迫る未来の不確かさ、背の高い灰色髭のアラブ人がなぜカイロへ連れてきたのか――そうしたことを考えることはなかった。
だからカーラの豪奢なハレムへ足を踏み入れても、周囲の贅沢が自分一人のために用意されたものだとは、初め理解できなかった。たとえ理解したとしても、その理由までは想像できなかっただろう。
クッションの上で休みながら、豪華な掛け布や絨毯、金箔を施した卓や椅子、大理石の彫像、隅でかすかな音を立てる香り高い噴水を、愚鈍ながらも子供のように一心に見つめた。今にも幻が消え、夢から目覚めてしまうのではないかと恐れるように。
濃紺のショールの下には包みを抱えていた。木綿のチュニック、スパンコールのついた衣、造花の花冠が入っていた。首には、かつてカーラからもらった青いビーズをかけていた――一個だけは丁寧に外し、お守りにするよう母セラへ渡していた。
カーラの家政婦を務める老婆が、大切な包みを軽蔑するように隅へ放り投げ、服を脱がせはじめても、ほとんど気にしなかった。ショール、黒い木綿の服、粗い肌着が、一枚ずつ取り去られ、次いで底の平たい手製の靴も脱がされた。
裸になると、老婆は隣室へ連れていった。そこには湯浴みの支度が整っていた。ネフティスは不思議に思ったが、口を利かなかった。家政婦の老ティルガも黙っていた。娘に必要なのは湯浴みというより、徹底して垢を落とすことだと見て取り、子供を洗うように全身をこすった。
その後、ふくよかで柔らかな肌を乾かし、油を塗り、香りをつけると、ティルガはネフティスを衣装部屋へ連れていった。絹紗の下着を着せ、金糸布の帯で留める見事な衣装をまとわせた。ぽってりした脚には桃色の長靴下をぴったりと履かせ、銀のビーズ飾りを施した桃色のサテン靴で足を飾った。
それからティルガは、娘の見事な髪を結い上げ、艶やかな巻き髪に宝石をちりばめた蝶の飾りを挿した。
大きな鏡の前へ連れていかれると、映った姿が自分だとは、ネフティスにはほとんど信じられなかった。だがついに、内なる女が目覚めた。

彼女は鏡の自分へ微笑みかけ、やがて笑った――初めは恥ずかしげに、次には心からの喜びに満ちて
彼女は鏡の自分へ微笑みかけ、やがて笑った――初めは恥ずかしげに、次には心からの喜びに満ちて。何時間でも鏡の前に立ち、この華麗な姿を眺めていられただろう。だが老婆は手首をつかんで引き離し、金色の家具と噴水がある私室へ引き戻した。
再び長椅子へ身を沈めると、傍らの小卓が目に入った。その上には、浮芯のついた青銅のランプと、煙草を載せた盆があった。ネフティスは、老ティルガへ半ば挑むような視線を向けながら、嬉々として一本つかみ、ランプの小さな炎で火をつけた。それからクッションにもたれ、心ゆくまで煙を吸い込んだ。
ティルガは賛同するようにうなずき、新しく世話を任された娘を批評する目で眺めた。ハレムについては豊富な経験があり、カーラ王子がいったいどこで、この見事な生き物を見つけたのかと不思議に思った。少なくとも東洋人の目には、ネフティスは稀有な美女だった。完璧な顔立ちと、ビロードのような大きな瞳を見て、賞賛せずにいられるヨーロッパ人男性も、ほとんどいなかっただろう。
豪華な衣装は、ナイル川の娘を一変させた。贅沢な環境は、その美しさをいっそう引き立てた。まるでハレムのために生まれ、運命そのものがこの経験にふさわしい資質を与えたかのようだった。
ネフティスが到着した午後、カーラはクラブでコンシナー卿とエカルテを打っていた。勝ち続けており、いつもの習慣どおり、負けるまで賭け金を倍にし続けると宣言した。
「君の金が欲しいわけではない、コンシナー」彼は無造作に言った。「そろそろ運も変わるだろう。」
子爵は目に見えて動揺していた。これまでの経験でも、これほど勝ち続ける男を見たことがなかった。カーラの倍賭け方式によって、すでに賭け金は莫大になり、勝負は見物人の一団を引き寄せていた。彼らも当人たちに劣らぬほど熱くなっていた。
午後は次第に暮れていき、ついに王子は低い声で、賭け金が一万ポンドになったと告げた。コンシナーは身を震わせた。それでも炎のような光を放つ王子の指輪を見つめながらカードを切り、できる限りの手を打った。カーラが勝つと、子爵は青ざめた顔でカードを投げ出した。すでに破産したも同然であり、二万ポンドを賭けてもう一勝負することなど、神経が耐えられなかった。
「もう終わりだ、王子」彼はしわがれ声で言った。
「ふん、大したことではない」カーラは軽く答えた。「もっと都合のいいときまで勝負を延ばせばよい。この呪わしい幸運――君以上に私が嘆いている――が途切れてからな。あらためて始め、金を取り戻す機会を差し上げよう。借用証書へ署名してくれれば、私は帰る。」
子爵は紙を一枚引き寄せ、一万ポンドの借用証書に署名した。クラブの規則により、書面には会員二人の証人が必要だったため、ヴァリン大佐とエリング・ヴァン・ローデンが鉛筆で頭文字を記した。
カーラは書類を無造作に脇ポケットへ押し込んだ。しかし次の瞬間、ふと何かを思いついたように紙を取り出し、細長く丸めた。それをランプの炎で燃やし、火種にして葉巻へ火をつけ直すと、細い灰になるまで指に持ったまま燃やし尽くした。誰も一言も発しなかった。ほかの者たちは意味ありげな目で、黙って彼を見守った。王子が借用証書を別の紙とすり替えたとは、誰も疑わなかった。灰が床へ払い落とされると、コンシナーは安堵の息をついた。
「勝つ喜びだけで、男には十分なはずだ」王子はそう言い、席を立って悠然と部屋を出た。
「それでも、名誉に関わる債務だ」ヴァリン大佐が重々しく言った。「だがコンシナー、相手がカーラ王子だったのは幸運だ。奴は途方もない金持ちで、金など何の意味もない。君が無理に受け取らせない限り、勝ち金を取り立てはしまい。」
「それは分かっている」子爵は答えた。「勝ち続けている最中に賭け金を倍にするなど、ほかの男なら決して許さなかった。王子にも許すべきではなかったのかもしれん。」
そうして彼もクラブを後にした。カーラが借用証書を焼き払ったように見せた寛大さにもかかわらず、持ち前の陰険な性格から、取引する相手を誰一人信用できなかったのである。しかも金額はあまりに莫大で、父の傷んだ領地が現在持つ価値の二倍を、丸ごと呑み込んでしまうほどだった。自分自身には、財務省から受け取る俸給以外、何一つ財産がない。だから危険を悟り、罠へ誘い込まれたのではないかという思いを、振り払うことができなかった。
一方タドロスは、主人が忘れていた、午後の列車でネフティスが到着する予定を覚えていた。本来ならクラブの控室でカーラの命令を待つべきだったが、代わりに邸宅へ戻り、娘がすでに一時間前から来ていることを知った。
「会ってやろう」彼は呟き、止めようとした老エベックを無視してハレムへ入った。
垂れ布を押しのけ、タドロスは平然と娘の私室へ踏み込んだ。そして目に映った光景に、驚きを隠しもせず立ち尽くした。ネフティスは長椅子へ横たわり、煙草を吸っていた。羽毛のような絹、金色の組紐、きらめく宝石で、眩いばかりに飾られていた。
昔馴染みの通訳を見つけると、彼女は微笑んでうなずいた。だがティルガは激しい抗議と呪詛の言葉を浴びせ、侵入者へ突進すると、痩せた両手で押し出そうとした。もちろん、まるで効果はなかった。
タドロスは抵抗し、老婆が叫ぼうとすると、片手で口を塞ぎ、同時にその体を押さえ込んだ。
「聞け、この老いぼれ!」彼は呟いた。「カーラ王子のもとでの職を失いたいのか? なら、利口になれ。おまえは私の命令に従う――通訳タドロスの命令だ。逆らうことは許さん。」
「私が従うのは王子だけだ」ティルガは不機嫌に言い返した。「主人が、おまえがハレムを汚したと知れば、もう通訳ではいられまい。」
「ああ、だが知られはしない! これは二人だけの秘密だ、ティルガ。おまえはこれから私に仕え、私は数か月で金持ちにしてやる。見ろ! ここに五百ピアストルある――立派なイギリスの金で五ポンドだ。これは、今後さらに渡すという約束にすぎん。受け取れ、ティルガ。」
老婆はしぶしぶ金を受け取った。
「王子に知られたら――」彼女は言いかけた。
「知られはしない」タドロスは即座に断言した。「何も気づかん。つい先ほど、クラブでイギリス人とカードをしているところを見てきた。外へ行け、可愛いティルガ。中庭で見張っていろ。」
老婆はなおも抗議を呟きながら足を引きずって出ていき、通訳はネフティスの隣に腰を下ろした。
第十三章 アフトカ・ラーの護符
カーラには、エヴァリンガム夫人の晩餐会へ行く支度をする時間しかなかった。アネスも出席する予定であり、娘を支配下に置くため進めている策略を、おろそかにしてはならない。何としても出席したいのは、そのためだ――彼は自分にそう言い聞かせた。
このころ、計画は順調に進んでいた。唯一の不都合は、ジェラルド・ウィンストンが明らかにコンシナー嬢へ夢中になっていることだった。しかしエジプト人は、若い娘の性格の深さを慎重に見極めていた。彼女は古代の事物に関心があり、そのため著名な学者であるウィンストンを歓迎しているだけだ。危険はない。カーラはカイロの学者全員を合わせた以上にエジプト学を知っていた。書物に記されていない奇妙で興味深い歴史の断片を話すたび、アネスの顔が輝くのを何度も見てきた。たしかに、ウィンストンは同じ国の人間であり、その点では有利だった。だがエヴァリンガム夫人が一度、彼の聞いているところで、端正な外国人はいつでもイギリス女性を魅了するものだと言ったことがある。カーラはその何気ない言葉を覚えており、真偽を何度も考えた末、信じるようになっていた。
もっとも、これらに勝る切り札を一つ残していた。もしイギリス人が最後にアネスの愛を勝ち得たとしても、娘を服従させる方法をカーラは知っていた。
部屋を出ると、通訳が中庭の柱にもたれているのを見つけた。
「ネフティスは来たか?」と彼は尋ねた。
「たぶん」通訳は眠そうにあくびをしながら答えた。「今日の午後に着く予定だったのでしょう?」
カーラは突然疑わしげに見た。
「会ったのか?」彼は問い詰めた。
「私があなたのハレム番ですか?」タドロスは憤然と言い返した。「ティルガ婆さんが、もう何時間も女部屋へ引っ込んでいます。おそらく、あなたのネフティスの世話でもしているのでしょう。」
主人へ侮蔑の眼差しを向けたが、カーラはそのまま歩き、馬車へ乗り込んだ。晩餐会へ間に合うぎりぎりの時間だった。ネフティスは後回しでよい。
この夜はウィンストンが来ておらず、王子はアネスがいつになく親しげだと感じた。あまりにも愉快に話し、その物腰は親密で、澄んだ目は優しく知性に満ちていた。そのためカーラはひとときの魔法に身を委ね、彼女と過ごす喜びの中で、ほかのすべてを忘れた。
その魔法から抜け出すのは容易でなかった。帰宅した後、一時間も部屋を歩き回り、イギリス人の娘の美しい顔と、その表情の変化を一つ残らず思い返した。やがてハタッチャの記憶が押し寄せ、恐るべき誓いを心に突きつけると、罪を犯したように飛び上がった。
冷たい外見とは裏腹に、カーラの気性は激烈だった。この娘を憎むと誓ったのに、今夜は情熱的に愛していた。だがハタッチャの教育も、完全に失敗したわけではなかった。彼は自らを鎮め、第三者になったように、危険を冷静に分析した。
アネスへの愛に屈することは、敵の奴隷となることを意味する。本能的に判断力が拒絶する状態だった。彼女の魅力に心を閉ざすのは難しいだろうが、その必要性は明白だった。情け容赦のない憎しみをもって策を進め、娘と自分の間に、できる限り多くの障壁を築くと決意した。自分の弱さを軽蔑し、弱さが存在すると知ったからこそ、それを征服しようと決めた。
かつてハタッチャは彼に言った。「おまえは冷酷で、利己的で、残忍だ。そうしたのは私だよ。」
そのとおりだった。これらの性質は、慎重に彼の中へ植えつけられていた。使命がある以上、自分がその性質を備えていることを誇りに思った。そして今後の人生で少しでも心の平穏を望むなら、その使命を完全に果たさねばならなかった。
翌朝、彼はネフティスに会いに行き、その驚くほどの美しさを見て顔を輝かせた。東洋人は一般に、女性の顔には関心を払わず、体つきだけを賞賛する。だがカーラは容貌の美しさを理解できる程度には近代的だった。一方で、豊満で柔らかな肉体こそ女性最大の魅力だとする東洋的偏見も、ある程度は持っていた。そのためネフティスは、あらゆる点で申し分なかった。娘の無関心さと、意志への完全な服従が彼を苛立たせたとしても、この時点では自覚していなかった。アネス・コンシナーに代わり、この娘を愛し、尊ぶことを望んでいた。見事にその結果をもたらしてくれるなら、ネフティスの多くを許すつもりだった。
以来、彼はナイル川の娘へ多くの時間を割き、一緒にいる間は外のあらゆる関心事を締め出そうと努めた。娘のために驚くほど豪華な衣装を買い、身の回りの世話と華麗な装いを整えるため、二人のアラブ人少女を雇った。カーラが持つ最上のダイヤモンドとルビーは、アンダラフトの手によって、幾つもの冠飾り、ブローチ、腕輪へ仕立てられた。秘密の墓から持ち出した素晴らしい真珠も数多く選別され、エジプト人の娘の豊かな首を飾る首飾りとして連ねられた。
ネフティスは、こうした持ち物を喜んだ。それらは、これまで生きてきた鈍い無気力から娘を引き出し、母親でさえ想像できなかった女らしい高揚を、胸の中に目覚めさせた。娘は考え、夢を見るようになりはじめたのかもしれない。しかしそうだとしても、外から分かる兆しはほとんどなかった。どんな女性の可能性も理解するのは難しいが、ネフティスを理解するのは不可能に思えた。あらゆる東洋人と同じく、生来贅沢を愛し、なぜ与えられたのかを問わぬまま、周囲の快適さを受け入れた。彼女が持つ感受性は、長らく眠り続けていた。それが今、目覚めつつあるのかもしれない。装いを喜ぶことは、その方向への第一歩に見えた。
カーラは、コンシナーから一万ポンドを勝ち取った夜以降、わざと数夜クラブへ近づかなかった。借金を帳消しにする機会が遅れ、敵が不安と苛立ちを募らせるのを望んでいたのかもしれない。もしそうなら、子爵が熱に浮かされたような不安を抱えてクラブへ通い詰め、新たに入ってくる者を見るたび、カーラではないかと期待していたと知れば、大いに満足しただろう。
やがてエジプト人は、十分待たせたと判断し、獲物をさらに網へ絡め取る準備をした。その夜、自室で飾り棚の秘密の引き出しから、小さく巻いたパピルスを取り出した。そこには象形文字がびっしりと記されていた。記憶を新たにするため、巻物を丁寧に読んだ。アフトカ・ラーの墓でイシス像が倒れ、足もとへ落ちてきて以来、読むのは初めてではなかった。
大意は、次のようなものだった。
「冥界でアヌビスと合流するための支度がついに整った今、太陽の子にしてアメン神の大神官たる我、アフトカ・ラーは、我が石棺の装飾に尊き『幸運の石』を加えさせた。これはラムセスの怒りからケシュ王とその民を救った返礼として、王より授けられたものである。我が魂が去った後、この驚異の石は墓を守り、その力で我が肉体と財宝が略奪されぬよう保つであろう。そして我がケメトへ帰還し、再び生を得る日まで守り続けると、我は信ずる。我が家の子孫は、誰であろうとこの石をその場から動かしてはならぬ。『幸運の石』は我がものであり、後に来るいかなる者にも遺さぬ。困窮の折、我が子らは必要なだけ財宝を取ってよい。だが『幸運の石』を動かす者には、我が魂の最も苦い呪いが降りかかる。この石は移ろう色によって見分けられる。長く同じ色であることは決してない。その色はルビー、カーネリアン、アメシストのように鮮やかではなく、常に暗く神秘的である。その位置を誰も取り違えぬよう、三重の黄金の帯にはめ込み、我が石棺の頭部へ据えた。そこに残さねばならぬ。我が手に入って以来、常に懐へ入れて身につけてきた。その魔力によって、セティの子ラムセスを意のままにし、その王国を我がもののように統治し、すべての敵と告発者を打ち破り、ケメトのいかなる者も持ったことのない富を築くことができた。また健康と、現世での目的を成就するための多くの歳月も、我にもたらした。このゆえに、新たな生を待つ永き時代の間も、我は石を手放さぬ。墓に何が起ころうとも、後の世に生きる者たちよ、この唯一の宝だけは我に残すよう、切に願う。」
末尾にはアフトカ・ラーの署名と印章があり、疑いなく本人の手になるものだった。
カーラはパピルスを再び巻いてしまい、自らの手にはめた奇妙な指輪を、微笑みながら見た。
「我が偉大なる祖先は身勝手だった」彼は呟いた。「子孫が自分と同じほど名を上げるのを、妨げたかったのだろう。それでも石棺から石を外す前にこの文を読んでいれば、アフトカ・ラーの望みを尊重したはずだ。だが自分がどんな宝を手にしたか知ったのは、その後だった。もう一度墓へ行かなければ石を戻せなくなっていた。呪いは恐ろしい。とりわけ祖先からの呪いは。今、ハタッチャの復讐を果たしているのも、彼女の呪いを避けるためだ。だがアフトカ・ラーも安心するとよい。私は護符を借りただけだ。祖母の敵から十分な償いを得た暁には、返してやる。それまでは、この石が悪運から私を守る。元の場所へ戻せば、呪いも退けられる。」
その言葉の中に、どこか矛盾した響きを感じた。眉間にしわを寄せ、しばらく深く考え込んだ。それから言った。「詭弁で自分を欺いてはならない。すでに呪いが働いており、そのせいでイギリス人の娘が、私の強さを弱さへ変えたのだとしたら? いや、あり得ない。この指輪を身につけているとき、私はあらゆる困難を克服し、望みどおりに勝利してきた。今夜の企ても必ず成功する。アネスの目に、すでに非難の色が浮かんでいるのが見えるとしても。今なお私は、自分自身の運命と他者の運命を支配する者だ。護符がアフトカ・ラーの言うほどのことを彼に成し遂げさせたのなら、どんな呪いよりも強いに決まっている。」
笑い声とともに、ひととき心を圧迫した不気味な感覚を振り払い、クラブへ向かった。
第十四章 古代と現代の悪党たち
コンシナーは早々とロータス・クラブへ到着し、入口に面した小卓へ座ると、ソリティアで時間を潰した。
やがてカーラが入ってきて、ことのほか上機嫌な様子で、親しげに挨拶した。
「さて、運試しといこうか?」向かい側へ腰を下ろして言った。
コンシナーはうなずき、カードを集めて切った。前回の勝負を知り、二人の再会から何が生まれるのか興味を抱いていた暇人たちが、結果を見るため卓の周囲へ集まった。
切り札勝負に勝ったカーラが配った。かなり無造作に打ち、負けた。賭け金は一ポンドだった。
「倍だ!」彼は笑って叫び、子爵は再びうなずいた。
運が移ったらしく、王子は繰り返し負けた。初めのうちは周囲の者と陽気に話し、相手の勝ちをまるで気にせず、無謀に賭け金を倍にし続けた。だがやがて物思いに沈み、カードを注意深く見るようになり、敵と同じほど抜け目なく勝負を追った。賭け金は四百ポンドまで膨れ上がり、見守る小さな一団に、鋭い興奮が走った。コンシナーは、一度の勝負で一万ポンドを取り戻すのだろうか?
不意にカーラは、カードを配る手を滑らせ、一枚落とした。拾おうと手を伸ばしたところ、足の下へ入り込み、二つに裂けた。ハートのクイーンだった。
「なんと間抜けな!」彼は裂けたカードを見せて笑った。「おい、新しい札を一組持ってきてくれ」給仕にそう命じた。
コンシナーは眉をひそめ、使い物にならなくなった札へ手を伸ばした。カーラは、破れた一枚も含めてカードをポケットへ入れた。
「それは私のものだ、王子」子爵は言った。「ソリティアに使っている札だ。」
「失礼、だが価値をなくしたのは私だ」カーラは答えた。「私の不器用さで君の札を駄目にしたのだから、新しい一組を贈らせていただく。」
コンシナーは唇を噛んだが何も答えず、王子が新しい札の封を切り、切り混ぜるのを黙って見守った。
次の一勝負は子爵が負け、得点は並んだ。さらにもう一度負け、三度目も負けた。
「新しい札になった途端、運が変わったな」彼は言った。「君が続けたいというのでなければ、今夜はこれで終わりにしよう。」
「よかろう」カーラはあっさり答え、カードを投げ出すと椅子へもたれた。ケースから新しい葉巻を選び、丁寧に火をつけた。
コンシナーも椅子を後ろへ引いたが、立ち上がらなかった。しばらくカーラの無頓着な動きを眺めた後、ポケットから奇妙な三つの骰子を取り出し、一瞬ためらってから卓上へ投げた。
「面白い品だ」彼は言った。「テーベのエジプト人墓から発見されたものだそうだ。三千年前の骰子らしい。」
カーラを含むその場の者たちは、興味深げに骰子を調べた。目の配置は現代とほぼ同じだった。この賭博方法が初期エジプト人によって発明されて以来、ほとんど改良されていない証拠である。
「実に保存状態がよい」ヴァン・ローデンは言った。「どこで手に入れたのです、子爵?」
「先日、歩き回っていたアラブ人から買った。たいそう珍妙に見えたのでね。」
「博物館にも何組かあります」ダハシュールの発掘を指揮するドイツ人、ピンチが言った。「古代人がどれほど多くを知っていたか、本当に驚くべきことです。」
コンシナー卿は骰子を手元へ引き寄せた。
「なあ、王子」彼は言った。「この古代品で運試しをしよう。エカルテより早くて簡単だ。」
「よかろう」カーラは承諾した。「賭け金は?」
「一投につき百ポンドとしよう。」
この提案に見物人たちは驚いた。だがカーラは即座に言った。
「承知した、閣下。」
彼は一度負け、二度負け、三度負けた。
コンシナーが勝ち誇った薄笑いを浮かべ、骰子を押し出すと、カーラは両手をポケットへ入れ、見物人へ静かな声で言った。
「諸君、証人になっていただきたい。私は悪党と勝負している。この骰子には細工がある。」
恐怖に満ちた沈黙がひととき続いた後、子爵は罵声とともに立ち上がった。
「侮辱だぞ、カーラ王子!」彼は叫んだ。
「座りたまえ」ヴァリン大佐は厳しく言った。「言葉だけで君を断罪することはできん。骰子を調べよう。」
ほかの者も同意した。顔には動揺と警戒が浮かんでいた。高潔さを誇るこの壁の内側で、これほど恥ずべき事件が起きたことは一度もなかった。クラブの名誉が懸かっていると、誰もが感じていた。
骰子は入念に検査された。カーラの告発どおりだった――重りが仕込まれていた。
「説明できますか、コンシナー卿?」一人が尋ねた。
「なぜ私に説明を求めるのか分からん」返事があった。「買ったときには、細工などまったく知らなかった。これで勝負しようと言ったのも、単なる思いつきだ。」
「こうした古代の骰子には、しばしば重りが仕込まれていることが知られています」事件を解決する糸口を見つけたかのように、ピンチが熱心に割って入った。「博物館に展示されているものにも、同じ巧妙な細工を施された組が二つあります。」
「そのとおりだ」ヴァリンも重々しくうなずいた。
「ならば」コンシナーは言った。「諸君には、意図的な不正ではないと認めていただけるはずだ。細工のある骰子で勝負を申し出てしまったのは、単に私の不運だ。」
「では、一晩中、印をつけたカードで勝負していたことも、閣下の不運ですか?」カーラは静かに言い返した。「皆の前でご自分の所有物だと主張したこの札に、なぜ秘密の印がついているのか、諸君へ説明していただこう。こんな印をつける目的は一つしかない――何も知らない相手を騙すことだ。」
そう言いながら、彼はポケットからカードを取り出し、ヴァリン大佐へ渡した。大佐は苦悩の表情で調べると、隣の者へ回した。
カードが順に回される間、コンシナーは呆然と一同を見つめた。証拠はあまりに動かしがたく、必ず訪れる汚名から逃れる道はないと悟った。
「諸君」最後の一人がカードを調べ、再び卓へ置くと、カーラは言った。「私が普段、ともに勝負する方々から金を勝ち取ることを望まず、そうする習慣もないことは、皆さんが証言してくださると信じている。むしろ負けるほうを好む。そうすれば友人を困らせたかもしれないという思いを抱かず、勝負の

恐怖に満ちた沈黙がひととき続いた後、子爵は罵声とともに立ち上がった
楽しみだけを得られるからだ。だが卑しい詐欺師が共謀して私から奪おうとするなら、話は別だ。コンシナー卿は私に一万ポンドの債務がある。ここで諸君の立ち会いのもと、即時の支払いを要求する。また今後、いかさま賭博師から私と仲間の会員を守っていただけるものと信じている。喜んでそうしてくださるだろう。あとは皆さんにお任せする。では、よい夜を、諸君。」
彼は威厳をもって一礼し、退席した。ほかの者たちも黙って後に続き、クラブの別室へ散った。クラブ役員であるヴァリンは、証拠となる骰子と印つきカードを持っていった。
自らが破滅したとよく分かっていたコンシナー卿は、カーラと己の「不運」へ呪詛を呟き続けた。やがて部屋に誰もいないと気づき、帰宅することにした。災難にすっかり打ちのめされていたため、玄関広間で帽子と外套を求めたとき、居合わせた者たちが熱心な話をやめ、注意深く彼へ背を向けたことにも気づかなかった。
子爵はハタッチャの名を一度も聞いたことがなかった。だが彼を襲ったのは、彼女の復讐だった。
第十五章 ウィンストン・ベイ、憤慨する
翌朝、サヴォイ・ホテルの客室で、ローン卿と息子は激しく争った。その日の新聞には、クラブでの事件が詳しく掲載されていた。名は伏せられていたものの、犯人が誰かを取り違える余地はなかった。「近頃、財務省の要職に就くため当地へ到着したイギリス貴族が、印をつけたカードと細工した骰子を使っているところを、裕福で高い地位にある著名なエジプト人紳士に発見された。同紳士は、複数の信頼すべきクラブ会員の面前で、ただちに不正を暴いた。幸いイギリス人の名は候補者として掲示されただけで、いまだ入会を認められていなかったため、彼の詐術とそれに伴う汚名が、人気と健全な運営を誇る同クラブへ何ら影を落とすものではない、云々。」
記事を読んだローン卿は、激しく狼狽し、憤慨した。
「この下劣で卑しい悪党め!」息子と向き合い、怒鳴りつけた。「カイロで確固たる名望を築こうという矢先に、よくも家名を泥へ引きずり込んだな! 賭博師であるだけでも卑劣だが、下賤ないかさま師、詐欺師にまで成り下がるとは、断じて許せん。何か言うことはあるか?」
「何も」コンシナーは不機嫌に言った。「私は無実だ。破滅させるための罠だった。」
「ふん! むしろ他人を破滅させるため、おまえが仕掛けた罠だろう。何か言え! 恥と不名誉を弁解し、少しでも軽くする言葉がないのか?」
「何を言っても無駄でしょう?」子爵は無感動に尋ねた。「信じる気などないのだから。」
「おまえは信じるか、アネス?」老人は娘の恐怖に凍った顔を見つめた。「わしの息子で、おまえの父親でもあるこの卑怯者が、無実だと思うか?」
「いいえ」コンシナーが興味深げに答えを聞こうと顔を上げると、アネスは身を縮めて答えた。「お父様は、残酷なほど私を欺きました。二度とカードへ触れず、金を賭けないと約束したのに、その言葉を破ったのです。もう信じられません。」
「当然だ」父は初めて顔を赤らめ、言い返した。「私の尊い家族は全員が腐りきっているから、いちばん若い者でさえ、コンシナー家の人間を正直で誠実だとは認められんのだ。」
「よく聞け、ロジャー。たとえおまえでも、アネスを侮辱することは許さん。わしが聖人でないことは認める。だが、ちまちました詐欺に手を染めたことはない。おまえの娘は、わしら二人を恥じ入らせるほど清らかだ。おまえとはもう縁を切る。これからは自分のやり方で、自分の魂を救うがいい。相続できたはずの財産は、おまえ自身が使い果たした。だが醜い顔をカイロから消し、二度と近づかないと約束するなら、現金で千ポンドやろう。おまえの妻と娘はわしが面倒を見る。どちらも一時間たりとも、おまえを恋しがりはすまい。」
「悪くない申し出だ」コンシナーはすぐに言った。「受けよう。その千ポンドをどこで手に入れた?」
「それは」ローン卿は尊大に言い放った。「おまえの知ったことではない! さあ行け。財務大臣へ辞表を出し、その後は姿を消せ。ほら、今すぐ小切手を書いてやる。」
コンシナーは紙を受け取った。
「これが有効で、銀行が現金に換えるなら」彼はゆっくりと言った。「約束どおりにして、二度と迷惑をかけない。さらばだ、アネス。おまえにつきまとっている、蛇のようなエジプト人には気をつけろ。この件を仕組んだのは奴だ。信用してはならん。母親にも、愛情のこもった別れの言葉を伝えておけ。私が顔を見せず、神経を苛立たせなくても、気にはするまい。」
「どこへ行くつもりだ?」ローン卿は尋ねた。
「その言葉をそのままお返しするなら、あんたの知ったことではない。」
父親へのこの返答を残して部屋を出ると、アネスは激しく泣き崩れた。父の悪行を知り、これほど惨めで辱められた思いをしたことはなかった。ローンは、ロジャーが以前から賭博師で、品性にも疑いが持たれていた事実を指摘し、孫娘を慰めようとした。だがアネスは父の更生を愛情深く願っていただけに、失望は実に苦いものだった。
「それほどひどい傷にはならないよ、可愛い子」老貴族は頭を優しく撫でながら言葉を続けた。「世間も、わしらがロジャーと縁を切ったと知れば、この苦しみに同情してくれる。数か月もすれば醜聞は忘れられ、また胸を張って生きられるだろう。わしはかなり悪い人生を送ってきたようだ、愛しい子よ。だが、おまえのためにも名誉を取り戻し、すべての同胞から尊敬を受ける身で死にたい。そして、それはできると思っている。心配するな、可愛い子よ! 勇気を出せば、この打撃も半分ほどしか痛まなくなる。」
孫娘の苦悩を見て、彼自身の目にも涙が浮かんだ。若い娘がいくらか自制を取り戻し、突然の不幸による最初の衝撃が和らぐまで、励まし続けた。それから優しく口づけし、職場へ出ていった。
朝刊の記事は、ジェラルド・ウィンストンにも大きな驚きと動揺を与えた。真っ先に考えたのは、アネスと彼女を襲った苦難だった。次にカーラへの憤りが湧いた。一時間ほど落ち着かずに部屋を歩き回った後、鞍を置いた馬を用意させ、シュブラ街道を走って、邸宅にいるエジプト人を訪ねた。
カーラは在宅しており、冷ややかな礼儀正しさで客を迎えた。ウィンストンはそれに気づかなかった。些細なことへ心を動かされる気分ではなかったのである。
「昨夜クラブで、コンシナーをいかさま師だと告発したそうだな」彼は性急に切り出した。
「それが?」カーラは問いかけるように眉を上げた。
「なぜそんなことをした?」
「真実だったからだ。私から金を盗んでいた。」
「私が何を言っているか分かるだろう! 君はコンシナー嬢の友人を装ってきた。その父を公衆の面前で辱めるなど、卑怯な敵のすることだ。」
「君なら私の立場でどうした?」カーラは静かに尋ねた。
「私か? 発見したことを隠し、男を帰しただろう。二度と勝負はしないが」ウィンストンは断言した。
「それで、ほかの者から金を奪うのを許すのか?」
「必要ならそうする。娘の名誉を守るためだ。だが内々に警告すれば、今後の不正はやめさせられただろう。」
「彼は以前からの常習犯だそうだ」カーラは椅子へもたれ、面白がる表情で相手を眺めた。「コンシナー嬢の名誉が、父親の品行のよさによって得られたものではないことを考えてみるといい。悪行の中で老いた祖父の評判によって得られたものでないのと同じだ。したがって、私が彼女を傷つけたとは思えない。」
ローン卿に言及した声に、激しい憎悪がわずかに滲み、ウィンストンの注意を引いた。次の瞬間、突然すべてが分かった。
「おい、カーラ」彼は厳しく言った。「ローンが昔、祖母のハタッチャに加えた仕打ちのために、あの一家を迫害し、罠を仕掛けているのか?」
「迫害も、罠を仕掛けることもしていない」カーラは断言した。「コンシナーは誰の助けも借りず、自ら破滅した。娘については、醜聞から守るべき理由が私にはある。」
「どういう意味だ?」
「彼女と結婚する。」
その冷静な宣言に、ウィンストンは愕然と見つめた。それから苦々しく笑った。
「馬鹿げているし、不可能だ。」
「なぜ?」
「君たちは従兄妹だ。」
「彼女は知らない。そして君も話さないだろう。彼女の祖父の名誉を、それほど大切にしているのだから」カーラは嘲るように言った。
「なるほど。彼女を破滅させるための策か。だが失敗する。彼女が君との結婚を承諾するはずがない。」
「なぜ分かる?」カーラは尋ねた。
「彼女が君を愛するとは考えにくい。」
「その点では意見が違う。たとえアネスが血縁を知ったとしても、問題にはならない。古代のエジプト王は姉妹と結婚した。それにローン卿は、私が自分の孫だという主張を断固として否定するだろう。私自身も否定する。君には事実を裏づける証拠がない。」
「自分の口で私に話しただろう。」
「もちろん――しかも真実だった。今この場で認めても構わない。証人はいないからな。だが公の場で同じ話をすれば、私は全面的に否定する。」
ウィンストンはしばらく考え込み、黙っていた。それから言った。
「恐るべき罪を犯そうとしているな、カーラ。だが道徳に逆らったところで何にもならない。コンシナー嬢が君との結婚を拒む理由は、ほかにもある。血縁とはまったく別の問題だ。」
「何を言っている?」
「今この瞬間も、君がハレムへ囲っている女のことだ。世間でも醜聞になっている。これほど大胆に良識へ逆らう君を、社交界がまだ追放していないことが不思議なくらいだ。君はアラブ人でもイスラム教徒でもない。おそらくコンシナー嬢はまだ知らないのだろう。だが耳に入ったら、君のような男に自分の幸福を委ねると思うか?」
カーラは眉をひそめた。こんな武器が自分に向けられるとは、これまで気づかなかった。
「私が使用人の中に奴隷娘を置いていると、わざわざコンシナー嬢へ知らせるつもりか」彼は嘲るように言った。
「エヴァリンガム夫人に、君の家庭内の関係について真実を話してもらう」ウィンストンはきっぱりと答えた。
エジプト人は立ち上がった。
「この話し合いは終わりにしたほうがよさそうだ、ウィンストン・ベイ」彼は言った。「君自身が、私の未来の花嫁へ求婚する身なのだ。己の利害がこれほど絡んだ問題を、公平に論じようとしても無駄だろう。」
「私の警告を無視するつもりか?」ウィンストンは怒って尋ねた。
「いや。ほのめかされた脅しを黙殺するだけだ。私の計画を妨げることはできない。」
「その計画を動かしているのは」ウィンストンは憤りを抑えようと努めながら言った。「愛ではなく憎しみだと思う。私は全力で阻止する。」
「当然だ。君にはその権利がある。」
ウィンストンは立ち去ろうとした。
「泥の村という生来の環境から、薄汚い現地人を連れ出すような愚かな真似をしたことを」彼は別れ際の一撃として、苦々しく言った。「私はいつまでも後悔するだろう。」
「君が連れ出さなくとも、薄汚い現地人は別の脱出手段を見つけただろう。自分を責める必要はない」カーラは微笑んで答えた。「だが今言った些事は、君が最も深く悔やむべきことではないぞ、愚かなイギリス人よ!」
「もっと愚かなことをしたか?」
「ああ。」
「何だ?」
「フェダのヤシの下で、私を二度蹴った。」
「ああ! 二度で我慢したことを悔やむべきだったな。」
「それで満足しておけ。二度で十分だ。それだけで君を大いに不幸にできる。一度でも多く蹴られていたら、殺すつもりだった。」
ウィンストンは、訪れたとき以上に思い悩みながら邸宅を出た。問題はコンシナー卿の名声が失われたことだけではなく、遥かに根深いらしい。カーラの自信に満ちた口調は、恋敵へ確かな印象を残していた。イギリス人は、自分自身にさえ認めたくないほど不安になった。アネスへの愛は誠実で、私心のないものだった。その娘が、今しがた後にした裏切り者の現地人へ愛情を抱く以上の災厄など、想像できなかった。そんな可能性は今まで思いも寄らず、そのためカーラの主張は不快であると同時に衝撃的だった。すぐに娘のもとへ行き、悲しみの時にある彼女を慰めたかった。だが生来の慎みが引き止めた。父親の悪行が公になって味わう屈辱からいくらか立ち直るまで、初めは一人でいたいはずだ。その後なら信頼と友情を伝え、時機が来れば愛を告げられる。それまでは、カイロで手に入る最も美しい薔薇を籠いっぱいに詰め、アネスへ贈ることで満足した。
カーラには、そのような繊細さはなかった。午後になるとサヴォイ・ホテルへ出向き、名刺を届けさせた。
アネスは一人だった。エヴァリンガム夫人は、つい先ほど馬車で出かけたところだった。娘はほとんど待ち望んでいたかのように、エジプト人を迎えた。
「私を許していただけますか、王子?」彼女は真っ赤な頬で目を伏せ、挨拶の代わりに尋ねた。
「何を許すのです、アネス嬢?」彼は優しく答えた。
「父が――父があなたへ加えた不正を」彼女は口ごもった。
カーラは微笑み、娘が恥ずかしげに目を上げたため、面白がっている表情を見られた。
「座って話しましょう」彼は娘の手を取り、椅子へ導きながら言った。「もっとも、話す必要もないでしょう。あなたは何一つ悪いことをしていないのですから、私が許すべきことなどありません。」
「でも父が――」彼女はおずおずと言いかけ、再び恥じて目を伏せた。
「ええ、分かっています、アネス嬢」彼は言った。「あなたのお父上は愚かなことをし、世間から非難されて当然です。私を通じて発覚したことは、非常に残念に思っています。ですが、どうすることもできなかったのです。ほかの者たちが印つきのカードを見て、告発せざるを得なくなりました。信じてください。できるものなら救いたかった。ですが無理だったのです。」
「信じます、カーラ王子」彼女は言った。「すべて父の責任です。受けた罰も、当然のものでした。」
「あなたのためを思うと、胸が痛みます」カーラは続けた。実際、苦悩に歪む可憐な顔は、その瞬間の彼の心へ強く訴えかけ、その言葉はほとんど本心だった。「この汚名があなたに何をもたらすか、私には分かります、アネス。これまで親しかった者たちは避け、あなたを妬んでいた者たちは、嘲りさえするかもしれない。世間は常に無情で、父の罪を子へ負わせます。だから、あなたの無実を認めるのは、最も真実な友だけでしょう。」
彼は言葉を止めた。娘は今や、声を抑えながらも惨めに泣いており、その涙は彼の心を奇妙なほど揺さぶった。
「だからこそ来たのです」彼は続けた。声は真摯な思いに震えていた。「あなたへの信頼と、揺るぎない友情をお伝えするために。いや、それだけではない。もしその権利をくださるなら、世界中の嘲りからあなたを守りましょう。」
娘は身を震わせ、神経質に、ほとんど怯えながら彼の顔を見た。
「おっしゃる意味が――分かりません、カーラ王子」彼女は呟いた。
「ならば、もっとはっきり申し上げましょう」彼はすぐに答え、立ち上がって娘の前に立つと、目を輝かせ、両手を差し伸べた。
「アネス、愛しい人、私はあなたを愛しています! 私にとって、あなたは地上の喜び、楽園の歓びそのものです。あなたのそばにいるときだけ、幸福と安らぎを得られる。妻になってください、アネス。あなた自身を私にください。そうすれば大切に守り、世界中があなたの足もとへひれ伏すほど、高い地位へお連れしましょう。」
男が本気であることは疑いようがなく、その言葉は彼女へ衝撃を与えた。どう返事をすればよいかも分からなかった。求婚は予想外であるばかりか、時機もひどく悪かった。乙女なら誰もが、そして誰もがそうあるべきように、アネスも愛について漠然と夢見たことはあっただろう。だがカイロであまりに幸福だったため、カーラの親切が、ほかの男性たちの友好的な厚意以上のものだとは考えていなかった。実際、そうした問題そのものを考えたことがなかった。そして悲しみに心を引き裂かれている今、求婚者の熱烈な訴えに応える感情など、胸のどこにもなかった。
「今すぐお返事はできません、カーラ王子」彼女はためらいながら言った。「すべて初めてのことで、あまりに突然でしたし、それに――私は誰とも結婚したくありません。」
怯えて身を縮める姿を見つめ、彼の顔は硬くなった。だが暗い瞳の渇望は消えなかった。近頃いかに洗練されたとはいえ、この現地人には、イギリス人の娘は自らの心と意志によって相手の権利を認めない限り、どんな男の要求にも身を委ねないということが理解できなかった。しかし望みを遂げるには、この難局で機転を利かせねばならないと悟る程度には賢かった。
「アネス」彼はより静かに言った。「今は、互いに言い逃れや誤解を許している場合ではありません。私はあなたを愛し、心から妻にしたいと告げました。今のあなたには守る者が必要です。返事を延ばすのは愚かであり、あなたの立場にとって危険でもある。少しでも私を愛しているなら、後でなく今日、そう言えるはずです。」
「ああ、そこなのです、王子! 私は、あなたが望むような意味では、あなたを愛していないと思います」その執拗さに気を取り直し、娘はより毅然とした声で答えた。「カーラ王子、あなたにはとても感謝していますし、求婚を光栄にも思います。でも私から差し上げられるのは、誠実な友情だけです。」
「ならば当面は、それで十分だと受け入れよう」彼は言った。「私は君の友情と結婚する、アネス。いつか愛が後からついてくるかもしれない。」
「そんなことは許せません!」彼女は困惑して叫んだ。「これほど親切にしてくださるあなたを傷つけるのは心苦しいのです。でも今日は、神経も乱れ、不幸のただ中にいます。今すぐ答えを強いるなら、『いいえ』としか言えないのが分かりませんか?」
彼は考え込み、彼女の顔立ちを注意深く見つめた。しばらくして答えた。
「今はこれ以上迫りません。考えるために二日差し上げましょう。そのとき答えていただけますか?」
彼女はためらった。答えはすでに決まっており、ただちに理解させるのが最善だと分かっていた。それでも世慣れない心には、考えをまとめ、もっと穏やかで効果的にカーラへ返事ができるまで、問題を先延ばしにするほうが容易に思えた。
「はい」彼女は答えた。「二日後にいらしてください。」
驚いたことに、彼は重々しく一礼し、ただちに部屋を出ていった。しかし差し当たっての窮地を、こうも簡単に避ける方法を見つけたことが嬉しく、安堵した。二日あれば、何を言うべきかもっとよく分かるだろう。
カーラは、自らの忍耐に驚いた。脅し、服従させることもできたのに、ただ懇願しただけだった。何が自分をそうさせたのか、まるで理解できなかった。娘の前にいるときは、自分が自分でなくなり、自分自身のことさえ分からなくなるようだった。
もしアネスが愛してくれさえすれば、祖母の悪意に満ちた復讐という遺産から、どれほど喜んで守ることだろう! たとえ愛してくれなくとも、妻として手に入れる決意は変わらなかった。このとき胸を占めていた渇望は、否定するにはあまりに大きかった。
涙と苦悩の中で、娘はかつてないほど美しく見えた。ゆっくりと家路につく馬車の中、カーラは、冷徹で計算高い性質にはまるで似つかわしくない、陶酔的な崇拝をもって彼女を思い続けた。この瞬間、彼は本当にアネスを愛していたのかもしれない。だが東洋の恋人は、ときに激しい情熱へ突然襲われる一方、すぐにそれを燃やし尽くす。そして反動が来れば、驚くほど唐突に生来の無気力へ戻るものだ。
帰宅したカーラは、ただちに中庭を横切り、女たちの居室へ入った。その朝、ウィンストンがネフティスとの関係を嘲って以来、そのことが心に刺さったままだった。今はアネスのもとを去ったばかりであり、愚かなナイル川の娘をカイロへ連れてきた自分の浅はかさを責めた。共に過ごすことで気を紛らわせようと努めたにもかかわらず、ネフティスはアネスへの愛を消せなかった。それどころか、どれほど美しくとも、その静かな無関心は、イギリス人の娘の快活さと無垢との鮮烈な対比によって、むしろ嫌悪を催させた。
ほどなくアネスをネフティスの場所へ据えることになると疑いもせず、大きな失望しか与えなかったエジプト人の娘と、突然手を切ろうと決意した。
カーラは暗い顔で垂れ布を押しのけ、ネフティスの部屋へ入った。娘は長椅子に座り、傍らには通訳が心地よさそうに陣取っていた。二人とも煙草を吸い、タドロスは片腕をネフティスの腰へ緩く回していた。
二人はしばらく主人の存在に気づかなかった。だが顔を上げると、カーラが腕を組み、目の前に立っていた。しかめ面は消え、その表情には明らかな満足があった。絶好の口実が見つかったのである。
「タドロス」彼は柔らかな声で言った。「中庭へ出てもらおう。そこで私を待っていろ。」
通訳は立ち上がり、煙草の灰を払った。明らかにひどく動揺していた。
「もしおまえが、カーラ――」彼は大きな騒々しい声で言いかけた。
「中庭へ行け」カーラは静かに遮った。
タドロスはためらい、ネフティスを見た。娘は怯えた目で主人の顔を見つめていた。その視線を追い、通訳は身震いした。カーラの顔は彫像のように冷たく、無表情だった。タドロスは、その表情を恐れることを学んでいた。足音を忍ばせて部屋を出ると、背後で垂れ布が閉じた。
隣室へ続くアーチの幕へすがりつくように、老ティルガが姿を現した。激しく震えていた。主人がアラブ人なら、自分の命はすでに失われている。エジプト人が同じ状況で何をするかは分からなかった。
カーラは近くへ来るよう手招きした。それからネフティスを指し、言った。
「宝石と装飾品を外せ。」
老婆が嬉々として従おうとすると、ネフティスは立ち上がり、恐怖に満ちた低い声で尋ねた。
「何をするつもり?」
カーラは答えなかった。ティルガの震える指が、冠、耳飾り、ブローチ、腕輪を次々に外し、卓の上へ山積みにするのを見守った。ネフティスは静かに従っていたが、老婆が真珠の首飾りをつかむと、身を引いて喉元を押さえ、大切な宝を守ろうとした。ほかの何よりも真珠を愛していた。
カーラは両手首を強くつかんで腕を脇へ引き下ろした。その間にティルガは、値のつけられない三連の真珠を娘の首から解き、卓上の山へ加えた。家政婦が、ダイヤモンド、ルビー、エメラルドの指輪をすべて外すまで、彼は娘を押さえ続けた。それから手を放すと、ネフティスは呻き、両手で顔を覆った。
「衣を脱がせろ」カーラは厳しく命じた。
ティルガは急いで従い、ネフティスが抵抗すると、平手で顔を打った。見事な衣を文字どおり引き剥がし、絹の靴下とサテンの靴も奪い取った。娘は羽毛のような下着を除き、すべての飾りを剥ぎ取られた姿で立ち尽くした。
「それは残してやれ」カーラは言った。「さて、黒い木綿の服はどこだ?」
ティルガは衣装部屋の戸棚から、急いで持ってきた。頭にかぶるショールと粗末な靴も一緒だった。
ネフティスは今や、玩具を奪われた子供のように惨めに泣いていた。
「着ない! そんなものは嫌! 持っていって!」フェダで着ていた古い服を出されると、泣き叫んだ。
だが老婆は怒って体を揺さぶり、もう一度平手打ちした。粗末で汚れた服をかぶせると長椅子へ押し戻し、裸足に平たい靴を履かせた。ネフティスの大きな目にはまだ涙が浮かんでいたが、以前の従順な態度へ戻り、避けられぬ運命に従った。
「エベックを呼べ」主人が命じると、ティルガは驚くほど機敏に動き、すぐにアラブ人を引っ張って戻ってきた。
「この女を連れて、来た場所であるフェダへ戻り、母親へ引き渡せ。日没に列車がある。急げば間に合うだろう。馬車で駅へ行け。」
エベックは主人の意外な命令にも驚きを見せず、頭を下げた。おそらく観察力があり、娘が追い出される理由を理解していたのだろう。
「セラ婆さんには金を返させますか?」彼は尋ねた。
「いや、持たせておけ。これは旅費だ。時間があれば駅でネフティスに食事をさせ、煙草も買ってやれ。さあ急げ。」
エベックは連れていくため娘の腕を取った。カーラの前を通り過ぎるとき、ネフティスは立ち止まり、絶望に満ちた激しさで言った。
「あんたなんか大嫌い! いつか殺してやる。」
カーラは笑った。上機嫌だった。
「さらばだ、ネフティス」彼は満足げに言い返した。「私からの贈り物として、敬意を添えてお返しするとセラへ伝えろ。」
それから部屋を出ると、扉の外でタドロスが直立していた。
「ついてこい」カーラは言い、通訳は従った。
自室へ先導し、通訳と向き合って腰を下ろした。
タドロスは立ったままだった。半分燃えた煙草の吸い殻を手に持ち、重大な関心事であるかのように、批評する目で見つめていた。
面白がったカーラは、黙ったまま待った。
やがて通訳は咳払いをした。
「なあ、カーラ」彼は話しはじめた。「最初に娘を買ったのは私だ。絶望的に貧しかったとき、立派な金を払った――その事実は少し考慮されてしかるべきだ。それなのに、おまえは無理やり売らせた。」
「ほう!」
「そうだ、取るに足らないパピルス一巻と引き換えに。取引を受け入れたのだから、文句は言わん。しかし起きたことすべてを私の責任にするな。オシリスの髭にかけて! 男の心まで、女の体のように売り買いできるものか? 馬鹿げている。」
彼は言葉を切り、片足からもう片足へ重心を移した。それから目を上げ、カーラがじっと見つめているのに気づいて苦しげな顔をした。
「我々の間に争いは必要ない」自信ありげに話そうと努めながら、彼は続けた。「私はおまえのジャッカルとなり、相応の報酬で汚れ仕事をしてきた。それがどうした? 私を破滅させれば、おまえも共倒れだ。そんな真似はできまい。しかし私は正直で、よい召使いだ。今後は恐れる必要などない。もう二度とハレムへ近づかないと、名誉にかけて約束しよう――この通訳タドロスの言葉にかけて!」
そのとき、甲高い悲鳴が耳へ届いた。タドロスは窓へ飛びつき、格子越しに、エベックが不幸なネフティスを馬車へ押し込む姿を見た。主人へ振り返った顔には、険しい表情が浮かんでいた。
「娘をどうするつもりだ?」彼は激しく問い詰めた。
「セラのもとへ送り返す。」
通訳は呪いを吐き、扉へ突進した。
「戻れ!」カーラが厳しく叫んだ。
タドロスは立ち止まり、ためらってから戻ってきた。自分には何もできないと悟ったのである。
「よかろう」彼は不機嫌に言った。「カイロよりフェダのほうが安全だ。だがカーラ、おまえは残酷だ。本当の男なら、獣にさえネフティスへしたような仕打ちはしない。宮殿の豪華な贅沢を教えた後、忘れ去られたナイル川の岸にある泥小屋へ突き戻すなど、紛れもない罪だ! 上等な服も、美しい装飾品も取り上げたのだろう?」
「ああ。」
「可哀想な娘だ! だがまあ――毒が怖ければ、蛇と議論などしないことだ。私も同じく、おまえの手中にある」通訳は陰気に言った。
カーラはその惨めな表情を見て、本当に笑った。
「おまえは愚か者として生まれ、愚か者として死ぬのだ、我がタドロスよ」彼は言った。「よく聞け。今の無駄話には、自分の裏切りを正当化する理由など一つもない――我々の慣習では死に値する罪だ。おまえはただ、不実な女を追い出した私を冷酷だと責めているだけだ。ならば、おまえを殺さずにおく、もっともらしい理由を言ってみろ。」
タドロスは青ざめた。
「二つある」彼は真剣に答えた。「一つは、私を殺せば警察と面倒を起こすこと。もう一つは、まだ私が必要だということだ。」
「よかろう。第一の理由は問題にならない。私自身に危険が及ばぬよう、ひそかに殺せるからだ。そして間違いなく、いつかはその方法でおまえを殺す。だが今のおまえの安全は、第二の理由にある。我がタドロスよ、まだおまえの働きは必要だ。もう用はないと確信するまで、生かしておいてやろう。」
通訳は大きく息をついた。
「忘れようではないか、カーラ」彼は言った。「多少、軽率だったことは認める。だが、それがどうした? どんな男でも、ときには軽率になる。私がおまえの利益にどれほど忠実か分かれば、責めるのもやめるだろう。」
カーラは答えなかった。馬車はとうに走り去っていた。通訳は再び落ち着かず、重心を移した。
「もう行っていいか?」と尋ねた。
「ああ。」
タドロスは退室した。その胸は恐怖と憎悪で満ちていた。だが恐怖が薄れた後も、憎悪は長く残った。
第十六章 カーラの脅迫
その二日間、カーラは落ち着かなかった。アネスの最終的な返事を恐れてはいなかったが、待つことにはうんざりした。前回の会見で話をまとめるのは容易だったはずなのに、避けられないことを先延ばしにしたいという娘の愚かな望みへ、弱々しく譲歩してしまった。フェダを出て以来、世界は彼の玩具だった。決意したことを成し遂げるのに、何の困難も感じなかった。そのため、アフトカ・ラーの驚異の「幸運の石」が持つ力へ、際限のない信頼を抱くようになっていた。あらゆる企てに強い影響を及ぼしていると信じていたのである。だからエジプト人は、花嫁を――本人が望もうと望むまいと、そんなことは問題ではない――立派な邸宅へ連れ帰る日まで、時間を有効に使うことだけを考えた。
カイロで最も名高い商人たちを呼びつけるためタドロスを送り、女部屋を王宮のように改装する手配を整えた。アネスが必要とするときのため、豪華な絹や刺繍を数多く選び、新しい女主人のわずかな望みにも応じられるよう、よく訓練されたアラブ人使用人を増員した。今後は、現代的なヨーロッパ家庭の方式で邸宅を運営し、ハレムの部屋も居間、応接室、客間へ造り替えねばならないと理解していた。
アネスとの結婚を機に、東洋の習慣をすべて捨て、新しく広い文明の作法を取り入れると決めた。妻を社交界へ連れ出し、妻を通じてさらに名声を得る。邸宅は祝宴と豪華なもてなしで名を馳せることになる。そんな生活は想像力を刺激し、イギリス人の娘との結婚によって実現できるのだ。
ハタッチャは一つの目的のため、カーラを教育し、鍛え上げた。だが今では、彼女の使命も、それを果たすという誓いも、等しく顧みられなくなっていた。近頃この問題についてかなり考え、アネス・コンシナーへの愛によって、彼女やその一族をさらに迫害する義務は、すべて帳消しになると結論づけていた。ハタッチャは死に、世間から忘れられている。敵へどんな復讐を加えようと、受けた不正を正すことはできない。魂はアヌビスとともに遥かな冥界にあり、肉体はフェダの墓にあるのだから、応報の正義を知ることもない。初めは良心に従い、祖母の遺志を成し遂げようと固く決意していた。しかし一人の娘の瞳に妨げられた。ハタッチャ自身も、愛に襲われたときは弱かったではないか。あらゆる策が実を結び、祖母の復讐が成就へ近づいたまさにそのとき、抗いがたい愛の力が手を止め、未来の幸福を妨げるものをことごとく投げ捨てさせた。
二日目の午後、丁寧に身なりを整え、サヴォイ・ホテルへ向かう準備をしておくよう運転手へ命じた。だが部屋を出ようとしたとき、アネスからの手紙が届けられた。封を引き裂き、熱心に文面を読んだ――
親愛なるカーラ王子――もう一度、不愉快な会見をする危険は冒したくありません。これからも過去と同じく、よい友人、よい仲間でいたいと願っているからです。ですが、どうか二度と結婚をお求めにならないでください。そのようなことは、まったく不可能です。あなたとの友情を喜ばしく思ってはいても、私に愛を抱いているというあなたのお気持ちに、同じ形でお応えすることはできません。そして真の女性は、愛なしに結婚することはありません。ですから、このような話を交わしたことはお忘れになり、今後二度と触れないでくださるようお願いいたします。
あなたの友、
アネス・コンシナー
手紙を読むにつれ、カーラの顔は硬く厳しくなり、暗い瞳が不吉に光った。今度はより慎重に、二度目を読んだ。率直に綴られた文のどこかに、希望や妥協を示す言葉がないか探した。だが一つもなかった。
失望と屈辱、そしてかなりの驚きが入り混じった感覚に襲われた。奇妙なことに、これほど明確な拒絶を受けるとは、一瞬たりとも予想していなかった。しかし彼の気性は性急で気まぐれだった。ほどなく怒りが、ほかのあらゆる感情を心から追い出した。怒りは膨れ上がり、熱く激しく燃え、彼の全身を支配した。
おそらく自尊心への打撃こそ、愛と取り違えていた情熱を打ち砕くうえで最も大きく作用した。いずれにせよ、愛は驚くべき速さで消え、半時間もすると、自分を拒んだイギリス人の娘への優しい感情は、ほとんど残っていなかった。彼女の返事を最終的なものとして受け入れ、ただちに以前の復讐計画を蘇らせた。どんな陶酔も、彼には同じほど甘く刺激的なのだろう。コンシナー一族全員の運命を握る絶対的な主人なのだという自覚に、歓喜しはじめた。やはりハタッチャは正しかった。このイギリス人たちは冷淡で不実であり、高貴な一族の者が気にかける価値などない。しばらくは不注意で弱くなっていたが、今や死者への誓いを一言一句違わず果たすと決意した。
気に障る紙を細かく引き裂き、以前の何一つ読み取れない態度へ戻って部屋を出た。それはタドロスが恐れることを学んだ表情だった。
「サヴォイ・ホテルへ」運転手へ命じた。
ローン卿は、ホテル一階の小部屋を事務所として確保しており、管轄する業務をそこで処理していた。カーラが訪ねたとき、彼は暇にしていた。客についてはわずかしか知らなかったものの、親しみのある礼儀正しさで迎えた。
「どうぞお掛けください、王子」椅子を勧めながら言った。「何なりと承りましょう。」
相手は冷たく頭を下げた。
「私の用件は、閣下にとっていささか不愉快なものとなるかもしれません」静かで平坦な声で切り出した。
ローンは抜け目なく彼を見た。
「ああ、息子が賭博の負けで、あなたへ多額の借金をしているそうですな」カーラの用件が分かったつもりで答えた。「今のところ、私の耳へ届いたのは噂だけです。しかしその件を訴えに来られたのなら、コンシナーの名誉に関わる債務について、私は何ら責任を負わないと申し上げておきましょう。」
エジプト人はフランス人のように肩をすくめた。
「それは別の問題です、閣下。今は話すつもりはありません」彼は答えた。「本日の用件は、あなたの孫娘との結婚について、同意をいただくことです。」
ローンは驚愕した。
「アネス! アネスと結婚したいと?」聞き違えたのではないかというように尋ねた。
「はい、閣下。」
王子の口調があまりに自信に満ちていたため、その唐突さに大きく動揺しながらも、ローン卿は思わず提案を検討しはじめた。男は端正で威厳があり、クロイソス王にも劣らぬ金持ちだと噂されている。しかし彼は外国人、とりわけ肌の色が濃い人間に、生理的な嫌悪を抱いていた。アネスをエジプト人へ渡すなど、考えるだけで胸が悪くなった。
「オホン! これは実に驚きです、王子」彼はたどたどしく言った。「あの子は、まだ結婚を考えるには若すぎます。」
カーラは、その意見へ返事をしなかった。
「すでに――その――本人へ、この申し出をなさったのですか?」しばらく考えた後、ローンは尋ねた。
「しました。」
「それで、何と?」
「私を愛していないという理由で、結婚を拒まれました」平静な返事だった。
ローンは目を見張った。
「なら、いったい何のために私のところへ来た?」怒りながら尋ねた。
「あの娘に、自由に選ばせてはならないからです」カーラは言った。
「ならない、ですと?」
「断じてなりません、ローン卿。彼女の拒絶には、あまりに多くのものが懸かっています。現在、あなたの孫娘は、あの不正直な父親のせいで、全世界の目に汚名を負っています。その父親は、先ほどあなたがおっしゃったとおり、私へ一万ポンドの借金があります。」
「アネスが汚名を負っているだと!」ローンは憤慨して叫んだ。「断じて違う! おまえの卑劣な当てこすりでさえ、あの清らかで無垢な娘を傷つけることはできん。コンシナーは去り、娘は今や、わし自身の保護下にある。父親が何をしようとも、あの子が受けるべき尊敬と配慮は、必ず受けさせてみせる。」
「そのような主張は、この状況では滑稽です、閣下」カーラは相手の苛立ちに劣らぬ平静さで答えた。「近い将来、あなた自身が汚名を受け、投獄されたとき、誰が孫娘の名誉を守るのです?」
ローンは怒りの咆哮を上げた。
「この極悪人め!」彼は叫んだ。「よくもここへ来て、わしを脅し、侮辱できるな! 出ていけ!」
「もう少しお聞きになったほうがよろしいでしょう」カーラは姿勢を変えずに言った。「請負業者マクファーランドを通じて政府から金を盗んだ件を、私が完全に把握しているとは、ご存じないようです。」
ローンは椅子へ崩れ落ち、青ざめて震えた。
「嘘だ!」彼は呟いた。
「嘘ではありません」平然としたエジプト人は言った。「証拠はすべて私の手中にあります。盗金を受け取った際、あなたがマクファーランドへ渡した領収書も持っています。」
ローンは彼を睨みつけたが、返す言葉がなかった。罠にかかった鼠のような気分だった。まったく予想外の方向から、最も油断していたときに打撃を受けた。誠実さを捨てたことを、早くも激しく後悔した。
「事実を知れば」カーラは続けた。「エジプト政府はあなたへ情けをかけません。クローマー卿でさえ処罰を求めるでしょう。在職中の横領によって、当地のイギリス人社会が不名誉を受けることを許さないからです。わざわざ指摘されずとも、ご自分の危険は理解なさっているはずです。つまり私の慈悲を除けば、逃れる望みは一切ありません。」
「何が言いたい?」老貴族はかすれ声で尋ねた。
「今のところ、この秘密を握っているのは私一人だということです。公になる必要はない。アネスを妻としてくだされば、あなたの安全が保証されるだけでなく、今後何一つ不自由しないよう取り計らいましょう。それを約束できるだけの富はあります。」
「あの子はおまえを拒んだ。」
「構いません。あなたが無理に承諾させればよい。」
「いや、神にかけて、そんなことはしない!」ローンは飛び上がった。「地獄も、そこに棲む悪鬼どもも、あの無垢な子をわしと同じところまで引きずり落とすことはできん。わしは愚かさゆえに重罪人となり、道徳的な気骨がないゆえに愚か者となった。だがそれでも、わしの心はおまえほど黒くないぞ、カーラ王子!」
エジプト人は動じずに耳を傾けた。
「もっと慎重にお考えになるべき問題です」彼は言った。「個人の安全と衝突しない限り、感傷は実に美しい。あなたの件を検討すれば、一方には安楽と繁栄、もう一方には汚名と牢獄があります。」
「そんなものは、アネスの幸福と比べれば何の重みもない」老人は即座に答えた。「好きなときに告発するがいい。己の愚行の報いを、あの哀れな娘の犠牲によって免れようなどとは、断じて思わん。さあ、出ていけ!」
カーラは静かな軽蔑を浮かべて笑った。
「その憤りは、見ていて実に清々しい」彼は言った。「正直さも同じほどお持ちなら、私を恐れる理由はなかったでしょう。」
「今も恐れてなどいない」ローン卿は挑むように言い返した。「好きにしろ、この卑劣なニガーめ。どんな手を使おうと、おまえの恥知らずな申し出に手を貸すよう、わしを買収することはできん。」
その蔑称にカーラは顔を赤らめたが、立ち上がって扉へ向かうまで何も答えなかった。それから半ば振り返り、言った。
「あなたの危険をもっとよく理解していただくため、ローン卿、一つお教えしましょう。私はハタッチャという名のエジプト人女性の道具にすぎません。かつてあなたが、その人生と幸福を無造作に破壊した女性です。彼女は忘れなかった。あなたとあなたの一族への復讐は、恐るべきものとなるでしょう。私をその遂行者ではなく、阻止する者として雇わない限り。私個人の利害から、あなたと取引しようとしているのです。どうなさいます、閣下? もっと詳しく話し合いますか。それとも、立ち去ることをお望みですか?」
ローンは怯えた目で彼を見つめていた。ハタッチャの名を聞くと、千もの記憶が脳裏を駆け抜け、それに伴う千もの恐怖が、彼女へした仕打ちを思い出させた。あまりに恐怖と驚きへ囚われたため、カーラはもう一度尋ねねばならなかった。
「立ち去りましょうか、閣下?」
「ああ」答えが返った。臆病さに打ち勝った寛大な心が、老人の激しく打つ胸から、無理やり引き出したような一言だった。
カーラは眉をひそめた。失望していた。だがこれ以上の議論は無駄だったため立ち去り、会話で明かされた事実に茫然自失したローンを残した。
第十七章 アネスの降伏
カーラは真っ直ぐアネスの部屋へ行き、どうしても会わねばならないと言い張った。
突然の訪問に娘はひどく困惑した。エジプト人がただ抗議と懇願を繰り返したいのだと思い、面会という試練を避けようと懸命になった。そのときはエヴァリンガム夫人が一緒にいた。途方に暮れたアネスは、カーラの熱情について簡単に打ち明け、これほど辛い状況でどう振る舞うべきか、助言を求めた。
エヴァリンガム夫人は意志が強く、判断力に優れた女性だった。背が高く、見事な体つきで、疑いようのない美貌を備え、立ち居振る舞いには女王のような威厳があった。著名な技師の妻として、東洋で長く暮らしており、その型破りな一面にも、最も格式ある社交界にも慣れていた。アネスよりかなり年長だったが、初対面のときから孤独な娘へ好意を示し、自ら表現したように、喜んで「翼の下」へ、そして思いやりに満ちた心の内へ迎え入れた。そのためアネスはさまざまな面で友人を頼るようになり、この危機にも彼女へ助けを求めた。
「会ったほうがいいでしょうね」事情を慎重に考えた後、エヴァリンガム夫人は助言した。「彼が無理にでも求めているらしい説明を避ければ、面会するまで執拗に悩ませ続けるような男よ。すぐに済ませたほうがいいわ。優しく、けれどきっぱりと言うのよ。求婚を繰り返す口実になるような希望を、一つも残してはだめ。」
「一緒にいてくれない、ローラ?」アネスは懇願した。
「それではカーラ王子に対して、あまり公平でないでしょう」エヴァリンガム夫人は微笑んだ。「私がいれば必要以上に居心地を悪くし、屈辱を与えてしまうわ。いいえ、隣室へ退いている。呼べば聞こえるけれど、姿は見えないところにね。勇気を出して、アネス。あなたのように、知らず知らず男心を捉えてしまう女性には、こういう不愉快な務めが押しつけられることも多いの。それは避けられない代償よ。気の毒な王子には同情するけれど、彼は私たちの民族ではないし、イギリス人の娘へ恋などするべきではなかったのよ。」
そう言うと庇護している娘へ口づけし、隣室へ退いた。扉をわずかに開けたままにしておくことも忘れなかった。アネスはため息をつき、アラブ人の召使いへ、カーラを通すよう命じた。
エジプト人が入ってきても、その態度には拒絶された恋人の絶望も、訴えによって成功を勝ち取ろうとする熱意も、まるで見られなかった。それどころか、冷たく、それでも深い敬意を込めて頭を下げ、言った。
「無理にお会いいただいたことを、お許しください、アネス嬢。ですが、必要だったのです。」
「私のこともお許しください、カーラ王子」娘は震える声で言った。「いらしてくださらなければよかったのに。私の返事は最終的なものです。決して――」
彼は尊大で無関心な身振りとともに手を振り、その言葉を止めた。
「手紙に書かれた拒絶を、繰り返していただく必要はありません」彼は言った。「決断を覆すよう求めることになるかもしれませんが、これは我々二人の取引の問題です。気持ちの入り込む余地はありません。」
「王子」彼の厳しい眼差しに気圧され、身を引きながら答えた。「おっしゃる意味が――分かりません!」
「お掛けください」彼は求めた。「ご説明します。」
彼女は黙って従い、いくらか自制を取り戻した。エジプト人の言葉は奇妙だったが、愛を訴えるよりは、まだ耐えやすかった。何も知らぬ娘は、愛以外の話題なら何であれ歓迎した。
カーラは残酷なほど率直に話した。
「お父上の不正によって生じた醜聞は、あまりに新しい。あなたはまだ、その汚れから逃れられていません」彼は切り出した。「コンシナー卿は、私へ一万ポンドほどの借金を残してカイロから逃げました。私の言葉を疑わずに済むよう、この借用証書をご覧ください。この都に住む、二人の信頼すべき紳士が証人となっています。」
彼は紙を手渡し、アネスは意味も分からぬまま、機械的に受け取った。
「我々の法律では」彼は続けた。「この金を回収するため、コンシナー家の誰に対しても訴えを起こせます。そのような訴訟を起こせば、ローン卿は完全に破産すると聞いています。」
今や彼女は男を恐れていた。それでも誇りをもって身を正した。
「そんなことは少しも問題になりません、王子」彼女は答えた。「ローン卿は正当な債務なら、喜んでお支払いになります。たとえ無一文になるとしても。」
「閣下は、ご本人ほど名誉高くはお考えでないようです」カーラはあからさまに嘲った。「ですがこの借用証書は、実際にはさほど重要ではありません。あなたと祖父が、すでに私へ負っている債務を強調するためにお見せしただけです。お父上は逃亡し、自らの悪行がもたらす結果から巧みに逃れました。残念ながら、ローン卿には同じ真似ができません。」
「息子の過ちでローン卿を責める人などいません」彼女は抗議した。カーラの残酷な言葉に、ひどく苦しんでいた。
「そういう意味ではありません」彼は答えた。「ローン自身の悪行は息子よりはるかに重大です。発覚すれば、牢獄から逃れることはできません。」
アネスは恐怖に息を呑んだ。初めは信じがたい告発だった。だがカーラの口調は断定的だった。祖父の疑わしい人生が脳裏に閃き、それ以上尋ねることを恐れた。
尋ねる必要はなかった。男は静かに、マクファーランドの犯罪と祖父の加担について説明し続けた。娘は目を大きく見開き、青ざめた顔へ絶望を浮かべたまま座っていた。
ついにカーラは、二枚目の紙を取り出した。
「これは、アネス嬢」彼はより優しく言った。「盗んだ金の分け前を受け取った際、ローン卿が署名した領収書です。動かしがたい証拠であり、もちろん署名もお分かりになるでしょう。さらに、犯罪について二人の証人を出すこともできます。この罪には、先ほど申し上げたように、長期の投獄と、未来永劫にわたる不名誉という罰が科されます。しかし、それは発覚した場合だけです。発覚しない罪には、何の罰もありません。個人的には、ローン卿が汚名を着せられ、牢獄へ送られるのも、病弱なお母上が困窮するのも、あなた自身が非難に満ちた世間の慈悲へ委ねられるのも望みません。だから今日、ここへ来たのです。あなたが許してくださるなら、ローンの愚行がもたらす結果から、皆を救うために。」
アネスは混乱を抑えようとした。冷静に考えたかった。カーラがあまりに鮮明にローン卿の罪を語ったため、夢のようにすべてが目の前に浮かび、老人の足が底なしの穴の縁でよろめいていると分かった。しかしエジプト人の最後の言葉を正しく聞いたのなら、悪夢から目覚め、それを追い払う機会を約束しているようだった。
「どうすれば、私たちを救えるのです?」彼女は疲れた声で尋ねた。
「あなたを妻にすることで」彼は答えた。「すべてはあなた次第です、アネス嬢。ローン卿を、発覚するあらゆる可能性から守れるのは私だけです。今、私との結婚を約束するなら、必ず守りましょう。それだけではありません。祖父君の領地にかけられた抵当をすべて清算し、残りの生涯を安楽に、万人から名誉と尊敬を受けながら暮らせるようにします。誠意の証として、約束をいただいた瞬間、お父上の一万ポンドの借用証書も差し上げましょう。」
「私が断ったら?」彼女は震えながら尋ねた。
「そうなれば、私には救う力がなくなります。あなたは年老いた祖父を牢獄へ突き落とし、名誉を挽回する望みもないほど辱め、汚名を着せることになる。」
「いや、いや! そんなことはできません」彼女は惨めに泣き声を上げた。「祖父は私へとてもよくしてくれ、深く愛してくれました。自分の幸福を守るため、祖父を犠牲にする勇気など――いえ、そんなことは絶対にしません!」
「期待したとおりです」カーラは勝ち誇った響きを声に滲ませた。「私が祖父君を罪の結果から守る代わりに、私と結婚すると、神聖な名誉にかけて誓いますか?」
「はい」彼女は震えながら両手を握りしめ、答えた。
「私が指定する、どの日、どの時刻であろうと、私のもとへ来ますか?」
「はい。」
「アネス! アネス! 何てことを言ったの? 何をしてしまったの?」エヴァリンガム夫人が隠れていた場所から駆け出し、怯えた娘を両腕へ抱き締めた。
「何をしたの?」アネスは虚ろに繰り返した。「ローラ、愛する祖父を汚名と破滅から救ったのよ。」

「そんな約束、守らせないわ!」夫人は断言した
「そんな約束、守らせないわ!」夫人は断言し、激しくカーラへ向き直った。「脅迫で――ゆすりで無理やり引き出した約束よ。この悪党は、あなたの寛大で愛情深い心につけ込んでいる。そんな馬鹿げた約束は、絶対に守らせない。」
「いいえ」アネスは勇敢に答えた。「私は誓いました。だから守ります。」
カーラは卓の上へ紙を一枚置いた。
「お父上の借用証書です、アネス嬢。破り捨てて構いません。」
一瞬ためらってから、二枚目の紙も置いた。「そして、こちらが盗金を受け取った際の祖父君の領収書です。あなたの誠意を完全に信じていますから、罪を立証する証拠をすべて、あなた自身の手へ委ねます。では、ごきげんよう、アネス嬢。」
重々しく礼儀正しい一礼を残して部屋を出ると、エヴァリンガム夫人は力強い腕で娘を抱き上げ、隣室へ運び、優しく寝台へ横たえた。あまりに激しい緊張に耐えきれず、アネスは気を失っていた。
第十八章 活路を求めて
ジェラルド・ウィンストンは、コンシナー卿が公衆の面前で恥辱にまみれた日から数日間、惨めで落ち着かない日々を過ごした。アネスを訪ねたくてたまらなかったが、押しかける勇気はなく、代わりに毎日花を贈った。しかしついに、エヴァリンガム夫人を訪ね、アネスがどんな様子なのか、父親の過ちのために自分が案じるほど深く悲しんでいるのかを確かめようと決心した。
エヴァリンガム夫人はサヴォイ・ホテルの部屋におり、ウィンストンはすぐに通された。
「コンシナー嬢のことを伺いたくて」と、温かく迎えられたあとで彼は切り出した。二人は親しい友人であり、夫人も彼の来訪を喜んでいた。
「アネスはひどく苦しんでいるわ」と夫人は沈痛に答えた。
「屈辱を感じるのは、もちろん理解できます」と彼はため息をついて続けた。「ただ、勇気を持って、この不幸な出来事をあまり深刻に受け止めないでくれればと願っていたのですが。」
「まだ若いのよ」とエヴァリンガム夫人は言葉を濁した。「私たちのように、こういうことを冷静に受け止めることはできないわ。それに、コンシナー卿の問題は、誰よりもあの子の心を深く傷つけていることを忘れてはいけないわ。」
「子爵夫人は別として、ですか。」
「あら、気の毒な子爵夫人は何も知らないのよ! 自分の病気のことばかり考えて日々を過ごし、実の娘にさえほとんど会おうとしないの。ねえ、ジェラルド。あれほどひどい環境で育ちながら、どうしてあの子があんなに優しく、思いやりのある女性になれたのか、不思議に思うことがあるわ。」
「おっしゃりたいことはわかります。コンシナーは本国でも以前から評判が怪しかったし、ローンも昔は多少なりとも恥ずべき生活を送っていました。しかし、エジプトへ来てからはずいぶん立派に振る舞っているようですし、心を入れ替えた可能性もあります。」
夫人はすぐには答えず、しばらく考え込んでいたが、不意に驚くほど唐突な質問をした。
「ジェラルド、あなたはアネスを愛しているの?」
彼は顔を赤らめ、返す言葉を探して口ごもった。カーラと話して以来、自分がアネスを愛していることは認めていた。だが、他人にその秘密を見抜かれたことで、この大男はすっかりうろたえてしまった。
「なぜ、そんなことを?」と、時間を稼ぐために彼は尋ねた。
「あの子には今こそ、真実の愛を持つ友人が必要だからよ。これから先のどんなときよりもね」と夫人は真剣に言った。
「何があろうと、僕は彼女の真の友人でいるつもりです。」
「それだけでは足りないの」とエヴァリンガム夫人は食い下がった。「正直に答えて、ジェラルド。あの子を愛しているの?」
「はい。」
「一族のいかがわしい過去を承知のうえで、妻にしたいと思うほど?」
「はい」と彼は再び答え、問いかけるように夫人を見た。
「では、大きな秘密を打ち明けるわ。何が起きているのか、あなたにも知らせておくべきですもの。それに、アネスをあなたから永遠に引き離そうとする狡猾な企みを打ち破れる望みがあるのは、私の助けを借りたあなたしかいないのよ。」
そこで夫人は、カーラとアネスの会話を立ち聞きした一部始終を語り、祖父を恥辱から救うため、アネスがエジプト人との結婚を約束したことを伝えた。
「そんな馬鹿な!」と彼は怒りに声を上げた。「女を無理やり妻にしようとするなんて、あの男は愚か者です。しかも、そんな手段で目的を果たそうとするとは、とんでもない悪党だ。」
「わかっているわ。この件については長い時間をかけて真剣にアネスを説得したけれど、すべて無駄だった。あの子はローン卿を恥辱から救うため、自分を犠牲にすると決めている。そしてカーラ王子も譲らない。どういう理由かはわからないけれど、あの子を妻にすると固く決めているのよ。恋する男の口ぶりではなかったし、アネスも、彼を愛することも尊敬することも決してできないとはっきり告げたというのに。本当に理解できないわ。」
「理由ならよくわかります」とウィンストンは暗い顔で答えた。「人間の持つ最も強く、最も邪悪な情念に突き動かされているんです――復讐ですよ。よければ聞いてください。あのエジプト人の目的を理解する助けになる、ある因縁をお話しします。」
彼はハタッチャとローン卿の物語を語り、カーラが初めからコンシナー家全体を破滅させようと企んでいたと考える根拠も付け加えた。
「なんて恐ろしい!」とエヴァリンガム夫人は憤然と叫んだ。「あなたの話が本当なら、この土着の王子もローンの孫であり、アネスの従兄ということになるわ。」
「その点は本人にも指摘しましたが、結婚の妨げにはならないと言い張りました。実際のところ、血縁関係など邪悪な計画を遂行する妨げにはならない、という意味なのでしょう。ローン卿は、自分のために孫娘が犠牲になろうとしていることを知っているのですか?」
「いいえ。アネスに、秘密を明かさないと約束させられたの。私たちの知っていることをすべて話したところで、彼が何か力になれるとも思えないわ。」
「そうかもしれません。話は本当なのでしょうか? ローンは実際にその金を横領したのですか?」
「わからないわ。」
「まずすべきことは」と若者は考えながら言った。「カーラの主張が真実かどうか確かめることだと思います。アネスの感情につけ込み、意に反して結婚を承諾させるために、罪状をでっち上げた可能性もある。」
「そのとおりね。どうやって調べるの?」
「簡単です。明日ロゼッタ・バラージへ行き、堤防を調べます。そのあと記録を確認し、マクファーランドという男がどんな契約を結び、その履行のためにいくら受け取ったのかを調べればいい。そうすれば真相がわかります。二日もあれば全部済ませられます。」
「では行って。でも急いでちょうだい。一日一日が貴重なのよ。王子がいつアネスに約束を果たせと言い出すかわからないのだから。」
二人はさらにしばらく状況を話し合い、ウィンストンは早朝の列車に乗る準備のため退出した。
その二日後の夕方、彼は再びエヴァリンガム夫人を訪ねた。
「どうだった?」と夫人は待ちかねたように尋ねた。「何がわかったの?」
「すべて事実でした」と彼は沈鬱に答えた。「詐欺は巧妙に完遂されていて、カーラがアネスに説明したとおりの手口です。ローン卿が有罪なのは間違いありません。そしてカーラには、その気になれば彼を告発し、投獄させる力も意志もある。それも疑いようがありません。」
「なら」とエヴァリンガム夫人はきっぱり言った。「アネスを救う別の方法を見つけなくては。かわいそうに、あの子は心を打ち砕かれている。苦悩と二人きりになるたび、絶えず嘆いているわ。ローン卿も懸命に慰めている。あの人なりに、心から孫娘を愛しているのだと思う。でも、アネスが父親のことで悲しんでいると思い込み、真相には気づいていない。」
「彼女は今も約束を守るつもりなのですか?」
「ええ。私が何を言っても決意は揺らがない。あの子は優しく愛情深いけれど、その奥には鉄の意志と、初期の殉教者さながらの頑固さがある。祖父の安全に比べれば、自分の幸福など何でもないと思っているのよ。」
「では、どうすれば?」と彼は神経質に床を歩き回りながら尋ねた。
「アネスに愚かな約束を破らせるためには、カーラに劣らぬ策略を使わなくては」とエヴァリンガム夫人は即座に答えた。
「よく意味がわかりません」と彼は夫人の前で足を止め、表情から手がかりを読み取ろうとした。
「私は思うの――いいえ、ジェラルド、確信しているわ。あの子はあなたを愛している。あなたが留守のあいだ、うまく質問してあなたの話をさせ、そのときの正直な目を観察したの。ほかの男をひそかに愛しているからこそ、今回の犠牲があれほどつらく、いずれ心まで打ち砕かれてしまうのよ。」
それを聞いた彼は少女のように頬を染めたが、明らかに安堵し、喜んでもいた。
「でも、やはりまだわかりません、エヴァリンガム夫人。」
「あなたが鈍いというより、男だからよ」と夫人は微笑んだ。「あなたがアネスを自分自身から救う道具になるの。もうすぐ、あの子のところへ連れていくわ。部屋は廊下の向かい側で、ローン卿は一時間前にホテルを出たから、きっと今は一人でしょう。今夜は私が付き添って体面を保ってあげる。でも、そのあとは自分で勝負しなさい。全力を尽くして、アネスの口からあなたを愛していると告白させるの。それができれば、私たちの勝ちよ。」
「なぜです?」
「わからないの、ジェラルド? まともな娘なら、愛する男の人生を台無しにしてまで、祖父を自業自得の報いから救おうとはしない。あの子が誰かを犠牲にしたがっているなら、自分やあなたではなく、ローン卿を犠牲にさせるのよ。」
「えっ!」と彼は呆然とした。「そんなことはできませんよ、エヴァリンガム夫人。」
「なぜ?」
「正直でも公平でもありません。それに僕は利己的で――その、卑怯です。」
「私はあなたのことなど考えていないわ。道具として以外はね。考えているのはアネスと、あの子の一生の幸福よ。あなたは、復讐を遂げるためにあの子を押し潰そうとするカーラのような男へ、進んでアネスを差し出すつもり?」
「いいえ、しかし――」
「あの子が盲目的な愚かさから、自分で心を打ち砕き、一生を台無しにするのを許すの? 自分なら救えるとわかっているのに?」
「許しません。」
「これはあなたとカーラの戦いなの。ローン卿は重罪人よ。行為に見合う罰から救ったところで、別の犯罪が露見する日を先延ばしにするだけ。あれほど罪深い年月を重ねた男が改心する望みはほとんどないし、仮に望みがあっても、代償が高すぎる。この堕落した貴族をかばってカーラの望みを通すこと――つまりアネスを破滅させること――と、あなたたちの愛、二人で長く幸福な人生を送る可能性を比べて考えなければならない。ジェラルド・ウィンストン、それでもためらうつもり?」
「おっしゃるとおりにします、エヴァリンガム夫人」と彼は激しく答えた。「彼女をあの悪魔に渡すことはできない――あんな恐ろしい運命に。何をすべきか教えてください。従います!」
「まずは私と一緒に、あの子の部屋へ行くこと。それから、そんな長い顔はやめなさい! 明るく陽気に振る舞い、あの子の恐ろしい境遇など何も知らないつもりで、優しく求愛するの。明日も訪ねる約束をして、その後は一晩たりとも一人にせず、昼間もあらゆる時間に顔を出しなさい。時間が貴重だということ、今の状況にはあなたの技量と外交手腕のすべてが必要だということを忘れないで。長期戦にはできないわ。正面から攻め落とす覚悟を決めるのよ。」
「や、やってみます」と彼は緊張して言った。
こうして彼は、不幸が降りかかって以来初めてアネスと再会した。そして見事に役目を果たしたので、エヴァリンガム夫人も協力者にほとんど文句をつけるところがなかった。少女の腫れたまぶたと、悲しげに運命を受け入れた表情を目にした彼は、愛ゆえの憐れみと、彼女を絡め取った残酷な企みへの憤りに駆られた。今すぐ愛を告白し、自分に彼女を守る権利を与えてほしいと懇願したい衝動を、かろうじて抑えねばならなかった。
アネスは彼の熱を帯びた顔に、自分への愛をいくらか読み取ったのかもしれない。身を守る最善の手段になりそうな世間話を絶やさぬよう、エヴァリンガム夫人に加勢した。そのおかげで、しばらくは心配も恐怖も忘れることができた。ジェラルドが翌日の午後に新しい本を持ってくると言うと、一瞬ためらったものの、最後には承諾した。こうして彼は、ほんの数時間前には考えられなかったほど心を弾ませ、希望を抱いて部屋を出た。
その夜から、それまでの内気さは消え失せた。アネスがあまり露骨なことを言わせまいとしているのは明白だったが、彼はそれを完全に無視し、できる限り情熱的に求愛した。だが、ときにはアネスも迫り来る運命を忘れ、幸福なひとときの喜びに身を委ねた。女の直感が鋭く働き、ジェラルドに愛されていることはすでにわかっていた。そして夜になると寝台に横たわり、楽園の門が突然目の前に開かれたのに、喜んで駆け込もうとする両足は縛られ、中へ入れないのだと惨めに泣き続けた。
この数日間、ローン卿は多くの時間を孫娘のために費やし、ほとんど崇めるような優しさで接し、あらゆる方法で気を晴らさせようと努めた。老人は、自分に残された猶予が短いかもしれないと悟っていた。カーラはいつ脅しを実行し、自分を当局へ告発してもおかしくない。彼は思わず、逮捕に来る役人の足音がしないか、絶えず耳を澄ませていた。アネスがどのように自分を救ったかなど何も知らず、なぜこれほど長く無事でいられるのか不思議にさえ思っていた。
そしてアネスは、祖父の愛情深い気遣いに触れ、その端整な顔がしばしば苦悩に曇るのを見て、老いた祖父が投獄され、屈辱と恥辱にまみれるくらいなら、カーラとの契約を果たそうという決意をいっそう強めた。
ジェラルド・ウィンストンへの芽生えた愛と、一族の名誉を守りたいという願いとの狭間で、少女はまことに哀れな窮地に立たされていた。それでも、義務の道がどちらへ続いているかについて、一瞬たりとも迷いはしなかった。
エジプト人に煩わされずに済む一日一日を、感謝すべき貴重な恩恵だと感じる一方、カーラからの呼び出しを常に恐れていた。しかしカーラは急がなかった。待たされる日々がアネスにとってどれほど苦しいかを悟り、その苦しみが長引くのを楽しんでいたのだ。かつて少女に抱いていた愛情は魔法のように消え失せ、代わりにあまりにも恐ろしい復讐の企みが育ち、ハタッチャ自身でさえ実行をためらったのではないか、とカーラが思うほどだった。
だが、カーラはためらわなかった。企みの悪魔的な性質そのものが彼を魅了し、歓喜させ、その実現を待ち望む心は熱い喜びに満ちていた。
タドロスはカーラの周到な監視網を取り仕切るため、多くの時間をホテルで過ごした。ドラゴマン[訳注:旅行案内人兼通訳]という職業のおかげで特別な便宜を受けられ、玄関番もロビーへの自由な出入りを許していたが、上階の廊下へ入るには明確な用件が必要だった。その口実を用意するのが、ホテルに宿泊している愛想のよいフランス人である。この男はカーラに雇われ、建物内部を監視していた。一方、外では半ダースほどのアラブ人とコプト教徒が目を光らせていた。こうしてタドロスはローン卿とアネスの動向を細かく把握し、訪問者まで監視することができた。犠牲者たちが逃亡を計画している兆候があれば、どんな不審な事情も直ちにカーラへ報告するよう命じられていた。
しかしドラゴマンの報告によれば、すべて順調であり、狙われた獲物たちは運命を逃れようとしていないようだった。
カーラはアネスの繊細な名誉心と強い性格を大いに頼りにしていた。彼女の本質を正確に読み取っていたので、期待を裏切られる可能性はほとんどなかった。しかしローンには少し不安を感じ、どこへ行こうと手下に尾行させていた。だが、アネスの秘密を知ってもローンが黙って孫娘の犠牲を受け入れると思っていたのなら、カーラは老人を見誤っていた。アネスのほうが祖父をよく理解していた。孫娘の幸福と引き換えに自分をかばうというカーラの提案を、祖父が憤然と拒絶したことは知らなかったものの、真相を知れば自分を救うため直ちに法の裁きへ身を委ねるとわかっていた。そして、そこには狡猾なエジプト人さえ気づいていない危険が潜んでいた。
ローンは多くの行いにおいて、疑いなく無節操な悪党だった。だが、より高潔だった歴代コンシナー家の血から受け継いだある種の性質が深く刻み込まれており、騎士道に関わる事柄では、その名誉を覆すことはできなかった。
ドラゴマンは、ウィンストンが頻繁にアネスを訪ねていることをカーラに報告しなかった。監視中のタドロスは物思いにふけり、その思索から主人への反感が日増しに強くなり、腹心の召使いとしての価値を大きく損なっていた。反感だけでなく、タドロスはカーラを恐れ、さらに彼の懐具合にも不安を覚えていた。惜しみなく金をばらまくのが常だった王子が、最近は一ピアストルさえ見せなくなったのだ。タドロスはいぶかり、疑念を募らせた。ある晩、カーラへ報告した際に言った。
「商人どもが金を払えとうるさく騒いでおります。以前ほど迅速に支払ってくれなくなったと言っています。」
カーラは驚いて顔を上げた。
「私の信用はないのか?」
「今のところはあります」とドラゴマンは答えた。「しかし、この邸に注ぎ込んでいる豪奢な品々の代金を払い始めなければ、長くは続きません。」
「なるほど」とカーラは考え深くうなずいた。「愚か者どもだ、タドロス。だが、面倒を起こすかもしれん。もうしばらく約束で満足させておけ。難しい仕事ではあるまい。」
タドロスは疑わしげに彼を見た。
「教えてください、王子。宝をすべて使い果たしたのですか?」
エジプト人は微笑んだ。
「私が千年生きたとしても、タドロス、その半分すら使い切れまい。」
「では、なぜ商人たちに払わないのです?」
「今は銀行にもう金がなく、追加の金を確保するためカイロを離れるのも都合が悪いからだ。」
「ああ、なるほど!」とドラゴマンは安堵のため息をついた。「またフェダへ行かなくてはなりませんな。」
カーラは、タドロスをいつも不安にさせる、じっと考え込むような視線を向けた。しかし口を開いたとき、その声は柔らかく穏やかだった。
「なぜ私の宝がフェダにあると思うのだ、わが友よ?」
その口調にドラゴマンは安心した。
「そこにあると考えるのが当然だからです、王子」と彼はあっさり答えた。「あなたの家でパピルスを初めて見たことも、その後、貴重な宝石でいっぱいの重い旅行鞄をあそこから運び出したことも、よく覚えております。」
「ほう、そうだったか?」
「もちろんです、カーラ。そうでなければ、ヴァン・デル・ヴィーン夫妻にあれほど多くの古代の宝石を再研磨させたり、宝石商アンダラフトへ売って、さらに多くを現金に換えたりできたはずがないでしょう?」
「よく観察していたな、タドロス。」
「当然です。私は馬鹿ではありません。しかし、おっしゃるとおりフェダにまだ宝があるなら、次に銀行へ預け入れができるまで、あの悪党商人どもを黙らせておきましょう。」
カーラはなおもドラゴマンの表情を読み取っていた。
「おまえが馬鹿でないことは明白だ、タドロス」と静かに言った。「だが、これほど抜け目なく賢いとは思わなかった。よく考えてみろ。フェダにあるのは岩山と、ナイル川の泥で固めた石造りの家が数軒だけだ。おまえにもよくわかっているだろう。おまえにとっても私にとっても生まれ故郷なのだからな。さて、あの素朴な村のどこで、宝が発見されたと思う?」
「それがわからなかったのです」とタドロスは認めた。「ただ、正確な場所を私に知られたくないのでしょう。とはいえ、その宝が非常に古いものであるのは明らかです。ならば、あなたの祖先が山の中か、あるいは村に隣接する砂漠に隠したに違いありません。」
「長く埋もれ、忘れ去られた神殿か? そうだろう、タドロス?」
「いやいや、もちろん墓ですよ! 神殿に真珠やルビーを蓄えたりはしません。そんな装身具が見つかるのは墓だけです。だからこそ、あなたがエジプトの偉大な王たちの最後の末裔だという話を信じるのです。この墓が偶然発見されたものでないことはわかっています。その存在の秘密は、代々受け継がれてきたに違いない。ハタッチャが知っていて、死ぬ前にあなたへ教えた。だから宝はあなた個人の財産であり、その所有こそ高貴な血筋の証しなのです。宝が潤沢でよかった。あなたの金遣いでは、そうでなければすぐ底をついていたでしょうから。」
「実に賢い推論だ」とカーラは言った。「私の遺産のうち、すでにどれほどがおまえの懐へ流れ込んだのだろうな。」
「多すぎることはありません。ご安心を」とドラゴマンは真顔で答えた。「私はたいへん正直で、正当な役得しかいただいておりません。この程度の端金なら、他人より私のところへ来たほうがよいのです。私はあなたの親族で、あなたとほぼ同じくらい純粋なエジプト人なのですから。」
「そのとおり。文句はない、タドロス。だが、私の金を得るときには、それと一緒に私の事情まで知りすぎぬよう注意しろ。そういう知識は、きわめて危険になりかねない。今しがたおまえの唇からこぼれ落ちた知恵の真珠を考えてみろ。返礼が必要ではないか? 私はすでに、おまえに大きな借りがある。」
「謎かけはやめてください」とドラゴマンは不安げに唸った。「どういう意味か、はっきり言ってください。」
「ネフティスが水瓶を割った日のことを覚えているか?」
「はい。」
「おまえは王子である私を殴り、地面に倒した。」
「そのあと、あなたは私の首を絞めたでしょう。それで五分五分ではありませんか。」
「まだだ。首を絞めたのは、私を覗き見したからだ。あれは別の罪だ。殴られた分はまだ清算されていない。」
タドロスは眉をひそめた。
「私は根に持つ性質ではありませんがね」と呟いた。
「おまえの勘定には、ほかにもいくつか付けられている」とカーラは続けた。「それでも、忠実に仕え、私がおまえを必要としているうちは清算を求めまい。だが記録には残っているぞ、タドロス。いつか勘定を合わせねばならん。それを忘れるな。そういう理由もあり、自分は馬鹿ではないと宣言したことも考えれば、私の宝の場所について自分が間違っていたと、おまえも認めるはずだ。よく考えれば、宝はルクソールかアビドスにある、あるいはそもそも作り話で、初めから存在しなかったという結論に至るだろう。そして他人とおしゃべりするとき、隠された墓や神殿について口にすることは許されない。おまえが慎重に振る舞うことを確信し、私の事情を胸に収めておくと信じている。裏切ると思えば、待たずに今ここで殺す。だが、おまえはそんなことはすまい。生きることと、貯め込んだ金が好きすぎて、両方を失う危険は冒せまいからな。」
タドロスは深く考え込みながら仕事へ戻った。彼の恐怖心を弄んだことで、カーラはやりすぎたのだ。あまりに恐ろしくなったドラゴマンは、自分の命が一本の糸に吊られていると信じた。そこで、この恐るべき同胞の支配から逃れる道を、必死になって探し始めた。
翌朝、ジェラルド・ウィンストンは今後の計画を話し合ってエヴァリンガム夫人のもとを辞したあと、ホテルの廊下でタドロスと鉢合わせした。彼がカーラのドラゴマンであり腹心の召使いだと、すぐに気づいた。しかも、今しがたコンシナー家の部屋から出てきたのではないかと疑ったため、ためらわず声をかけた。
「少しだけ、内密にお話しできますか?」
「もちろんです、旦那様。」
ウィンストンは先に立ってエヴァリンガム夫人の居間へ入った。夫人は彼が戻ったことに驚いたが、カーラの腹心と面談する重要性をすぐに理解した。
「あなたはカーラ王子のドラゴマンですね?」とイギリス人は切り出した。
「はい、ウィンストン・ベイ。」
「当然、個人的にも忠誠を尽くしている?」
「まあ、それなりには」とタドロスは何を言うべきか迷いながら答えた。「何しろ、たっぷり払ってくれますから。」
ウィンストンとエヴァリンガム夫人は視線を交わした。続いて夫人が話を引き取った。
「カーラ王子は悪党よ」と彼女は厳しい口調で言った。「今まさに、人間の頭で考え得る限り最も悪魔的な企みの一つを完成させようとしている。」
タドロスは答えなかった。否定するのは自分の役目ではない。
「その企みを打ち破りたいという私たちの願いと決意から、あなたにも率直に話しているの。コンシナー嬢を、あなたの主人との卑劣な結婚から救わなければならない。」
タドロスは注意深く耳を傾けた。
「目的を果たすためなら、私たちは大金を使う用意がある――忠実に協力してくれる者が、残りの人生を不自由なく暮らせるほどの金をね。」
含みのある言葉のあとに沈黙が続いた。タドロスは二人の探るような視線を感じ、誰かに聞かれていないか素早く辺りを見回しながら咳払いをした。安全だと確かめると、生来のぶっきらぼうな口調で答えた。
「安全にやり遂げる方法を教えてくださるなら、その金を稼ぐ用意はあります。カーラは悪魔です。私たちが陰謀を企てていると疑えば、三人ともためらわず殺すでしょう。」
「カーラの計画について知っていることを話せば、千ポンド払おう」とウィンストンは言った。「コンシナー嬢を救うことに成功すれば、さらに二千ポンド出す。」
タドロスは喜んだ。どうせカーラとは縁を切るつもりだった。それで大金まで得られるとは幸運だった。
「お引き受けします。ただし、一刻の猶予もないことをお知らせしておきます。今しがたコンシナー嬢に伝言を届け、今夜九時にカーラのもとへ行く準備をするよう伝えたところです。」
「今夜だって!」とウィンストンは青ざめて叫んだ。「彼女は何と?」
「王子との契約を守り、指定された時刻に同行する準備を整えると約束しました。私が迎えに行き、幌を閉じた馬車でカーラの邸へ連れていくことになっています。」
「そのあとは?」とエヴァリンガム夫人は勢い込んで尋ねた。
「偽の結婚式を執り行います。すべて正式だと娘さんに思わせ、騒ぎを起こさせないための罠です」とタドロスは平然と答えた。「カーラの召使いの一人で、マイケルというコプト教徒が司祭の服を着て、コプト式の婚礼を執り行います。あなたがたのものとさほど違わないキリスト教の儀式です。しかし、その男は司祭ではないので、結婚は無効です。狙いは娘さんの名誉を汚すこと。そのあとカーラは彼女を追い出します。そして祖父のローン卿を法の手に引き渡すつもりです。」
「なんて恐ろしい犯罪なの!」とエヴァリンガム夫人は憤然と叫んだ。「アネスは、それで祖父が救われると信じて自分を犠牲にしようとしているのよ。」
「それがカーラの約束です」とドラゴマンは答えた。「しかし、守るつもりなどありません。ローンの領収書も、偽造した写しを渡したのではありませんか? なぜか王子はコンシナー家全体を破滅させようとしています。娘さんの父親はすでに恥辱にまみれさせ、カイロから追い出しました。」
「動機は理解している」とウィンストンは言った。「アネスを手中に収めれば、カーラがローン卿を見逃さないというあなたの主張も正しいだろう。危険は恐ろしく、差し迫っている。何を言ってもアネスは目的を捨てない。自分がローンを救っていると思い込み、犠牲のことを老人に話さないよう、私たちに約束させている。だから手が縛られているんだ。」
「思うに」とエヴァリンガム夫人はしばらく考えたあと言った。「カーラが使っているのとまったく同じ武器で戦うしかないわ。ドラゴマンの助けがあれば、本人の意志に反してでもアネスを救うのは難しくないはずよ。」
「どうやって?」とジェラルドは真剣に尋ねた。
夫人はすぐには答えず、ドラゴマンの顔をじっと見つめた。
「名前は?」
「タドロスです、奥様。」
「私たちの指示に忠実に従い、カーラ王子に裏切らない?」
「はい。私はカーラが嫌いです。裏切ったと知れば、機会を得次第、私を殺すでしょう。しかし、どうせ私が必要でなくなれば殺すつもりなのです。あなたがたの計画にカーラ王子の殺害が含まれているなら、大歓迎ですよ。」
「殺しはしない。でも、あなたを危害から守ると約束するわ。仕事は簡単よ。今夜コンシナー嬢を迎えに行ったら、王子の邸ではなく川岸へ馬車を走らせ、ウィンストン・ベイのダハビーヤ[訳注:ナイル川を航行する帆船型の船]に乗せるの。船はローダ島の向かい、西岸に停泊させる。ゲジーラ島の橋を渡り、できる限り速く船へ向かいなさい。私たちが待っているわ。」
「僕のダハビーヤを!」とウィンストンは驚いて叫んだ。
「そうよ。囚人を乗せてナイル川を遡る旅の準備を、すべて整えておくの。」
「囚人?」
「ええ、アネスよ。カーラに約束した以上、当然、自分から行こうとはしないでしょう。私が監視役として同行する。それから、ローン卿も加わるよう仕向ける方法を考えなくては。ひとたび謎めいた川へ船出すれば、カーラには犠牲者たちがどこへ消えたかわからない。そして戻るまでに、王子が私たちのアネスと結婚するなど不可能になるよう、すべてを整えてしまうの。だからローン卿にも同行してほしいのよ。あの人もしばらくカーラから安全になる。」
「やっとわかりました」とウィンストンは言った。「冒険の結末まではまだ見えませんが、少なくとも今後の策を立てる時間が得られ、カーラの目前の計画を妨害できます。」
「それが狙いよ」と夫人は答えた。「すぐに何かしなければならない。アネスを誘拐すれば、時間を稼げるだけでなく、本人の愚行が招く結果から一時的に救うこともできる。」
そしてタドロスへ向き直った。
「私の計画をどう思う?」
「すばらしい」と彼は言った。「一つだけ問題があります。このホテルの周囲には何人か密偵がおり、すぐに私たちを追い、ダハビーヤに乗ったことをカーラへ知らせるでしょう。ですが、追跡をかわす方法はあると思います。連中は私の命令下にありますから、九時前に別の持ち場へ移しておきます。それを除けば、私の役目は娘さんをダハビーヤへ送り届けるだけですね?」
「それだけでいいわ。」
「赤い明かりを三つ掲げる」とウィンストンは言った。「船の正確な位置を間違えないように。」
「船は知っています」とドラゴマンは答えた。「機関士のアブダラは友人です。」
「裏切らないわね?」とエヴァリンガム夫人は不安げに尋ねた。「すべてあなたに懸かっているのよ、タドロス!」
「承知しています。決して裏切りません。」
「三千ポンドを手にできると信じているよ」とウィンストンは意味ありげに言った。
「その点については、旦那様」とドラゴマンは威厳を込めて答えた。「強欲だけでなく、人情も少しは持ち合わせているとお認めいただきたい。エジプト人ですから金は好きです。男ですから、窮地にある女性を助けたいとも思う。しかし何より、私を心底憎むカーラに反逆するのが楽しみなのです。こうして三つの情熱――愛と憐れみと憎しみ――が私の忠誠を保証します。この大義への献身を疑えますか?」
そう言って彼は立ち去り、共謀者たちは夜の冒険の詳細を詰め始めた。
第十九章 誘拐
エヴァリンガム夫人は午後をアネスと一緒に過ごした。少女は目に見えて神経を尖らせ、興奮していたが、弱さを隠そうと痛々しい努力をしていた。カーラのことにも、自分の幸福を犠牲にして祖父の潔白と一族の名誉を守る、その時刻が来たことにも、いっさい触れなかった。
友人は、約束の愚かさや、それを守ることの馬鹿らしさを一度か二度口にした。だが、それはアネスをひどく苦しませるばかりで、決意に目立った影響を与えなかった。そこでエヴァリンガム夫人は話題を捨て、もっと明るい方向へ会話を転じた。ジェラルド・ウィンストンの名を出すと、アネスの頬が真紅に染まり、次いで死人のように青ざめるのに気づいた。少女の境遇を耐え難いものにしたくなければ、これも避けるべき話題だった。実際、ジェラルドと過ごした最後の数日間によって、アネスは自分の殉難がどれほど大きいかを思い知らされていた。カーラが現れ、一族の名誉を破壊し、愛する祖父を投獄するという恐ろしい脅迫をしなければ、自分の人生を完全な幸福で満たしたであろうものを、すべて失おうとしているのだと、今や悟り始めていた。
夕方早く、エヴァリンガム夫人は友人に口づけし、廊下を挟んだ自室へ戻って、予定された航海のための簡単な支度を整えた。
その頃、ウィンストンはローン卿の説得にかかっていた。幸いにも若者はアネスの祖父に大いに気に入られており、老人は、愛する孫娘を今の絶望の淵から救い出す計画について、ジェラルドの説明に熱心に耳を傾けた。
「ナイル川を旅すれば、気分が晴れ、悩みをくよくよ考えずに済むだろうとエヴァリンガム夫人は確信しています」と彼は提案した。「この案をどう思われますか?」
「すばらしい」とローンは言った。「アネスを説得できるならな。先日、気分転換に数週間ヘルワンへ行こうと誘ったのだが、そんな話は聞きたくもないと断られた。」
「そこが問題なのです」とウィンストンは打ち明けるように言った。「彼女はカイロを離れないとエヴァリンガム夫人に言いました。しかし、あなたが同行できないのではないかという不安が、その決断のもとになっていると思うのです。そこで、ちょっとした陰謀を企てることにしました。彼女が落ち込んだ状態にあるので、皆心配しているのです。閣下が一か月ほどカイロを離れられない理由は何かありますか?」
「アネスのためになるなら、何もない。」
「結構です! では、これが計画です。私の専用ダハビーヤを航海に出せるよう整えました。エヴァリンガム夫人はお孫さんの付き添いとして乗船し、あなたにも加わっていただきます。そうすればアネスは心から喜び、満足するでしょう。邪魔になるのは一つだけ――本人が乗船を拒んでいることです。その障害は、エヴァリンガム夫人が乗り越えてくれます。経験豊かな女性で、アネスを実の娘同然に愛している。そこで今夜、あなたと私は誰にも意図を明かさず、ひそかに船へ乗り込みます。そして九時にアネスを連れて合流するという夫人の約束を信じて待ちましょう。どうやってお孫さんの、カイロを離れたくないという抵抗を克服するのかは聞かないでください。女の知恵を信じましょう。全員が乗り込んだらナイル川を遡り、お孫さんの青白い頬に薔薇色を取り戻し、皆で存分に楽しむのです。」
ローンは熱烈に賛同した。自身もひどい神経状態にあり、いつ何時、証拠のある犯罪で告発され、アネスと永遠に引き離されるかと怯えていた。今、カーラに行き先を知られずカイロを離れれば、数週間の猶予が得られる。彼は喜んで好機に飛びついた。
老人が計画を漏らす危険はないとウィンストンはわかっていた。だがカーラが次にどう動くか見当もつかなかったため、用心を怠らないことにした。ローンをしっかり引き留め、その人とわずかな荷物をダハビーヤへ乗せるまで離れず、成功をエヴァリンガム夫人に知らせる使いを送った。
ここまではすべて順調だった。だが九時が近づくにつれ、エヴァリンガム夫人の不安は増した。ローン卿はアネスに、夕食のため外出し、ホテルへ戻るのは夜遅くなるかもしれないと伝言していた。少女は幸運な機会を喜び、自室で夕食を取った。エヴァリンガム夫人に呼び止められたアラブ人の召使いによると、アネスはほとんど食べず、絶望的な悲しみに打ちひしがれたように、ずっと泣いていたという。
今やすべてはドラゴマン、タドロスの忠実さに懸かっていた。女の知恵を絞ってもこれ以上策は浮かばず、エヴァリンガム夫人は八時半に馬車へ乗り、静かに川岸へ向かった。ウィンストンが掲げた三つの赤い明かりが見える場所で馬車を止め、ドラゴマンの到着を待った。
一方タドロスは、任務の進め方についてカーラから詳しく指示を受け、エジプト人の専用馬車でホテルへ向かった。御者はドラゴマンの命令に絶対従うよう言いつけられていた。そのため、サヴォイ・ホテルで降りたタドロスが、城塞へ行って真夜中までモスクの陰で待つよう命じても、何も疑わなかった。
それからドラゴマンは、眠そうで間の抜けた顔をしたアラブ人が御する別の馬車を雇い、直ちにホテルへ入り、アネスの部屋へまっすぐ向かった。
付き人を全員下がらせていたため、少女自身が扉を開けた。
「九時です、お嬢様」とタドロスは中へ入りながら告げた。
少女は恐怖に満ちた仕草で両手を握り合わせた。
「カーラ王子は……どこに?」と心ここにあらずといった様子で尋ねた。
「邸におられ、婚礼の一行とともに到着をお待ちです。式はごく内々に執り行われますが、キリスト教の定めには厳格に従います。主人から、あらゆる配慮と礼節を尽くし、今後はお嬢様の幸福を育むことを最大の望みとする、と伝えるよう申しつかっております。」
彼女は身震いした。
「言ったのは、それだけ?」
「お嬢様への約束は忠実に守り、ローン卿の平穏と安全も慎重に確保する、とも。」
「行きましょう」と彼女は急いで言った。「準備はできているわ。」
「お荷物は?」
彼女は傍らに置かれた小さな旅行鞄を指した。タドロスは屈んで拾い上げた。
アネスは怯えた目で周囲を見回し、ローン卿宛ての手紙をテーブルに置くと、急いで部屋を出た。扉に鍵はかけなかった。
ドラゴマンは女性専用の脇玄関へ案内した。幸運にも、そのときはほとんど人がいなかった。逃亡を邪魔されるのを恐れるかのように、アネスは素早く馬車へ乗り込んだ。タドロスは扉を閉め、御者の隣に座った。
「オペラ座へ」と、歩道にたむろする数人へ聞かせるために言った。
二ブロックほど進んだところで、アラブ人の御者に煙草店の前で止まらせ、紙巻き煙草を買いに行かせた。男が店内へ消えるや、タドロスは馬を走らせ、鞭を当てた。驚いたアラブ人が通りへ戻ったときには、馬車は角を勢いよく曲がり、乗客もろとも消えていた。
アネスは座席のクッションへ身を預けるなり、半ば昏睡状態に陥っていた。疲れきった頭は、いま突き進んでいる不確かな運命について考えることも、推測することも拒んでいた。交差路を越えるたび馬車が揺れ、灯火が次々と流れ去るのをぼんやり見てはいたが、進んでいる方向にも、旅の長さにも気づかなかった。ナイル川の橋を渡ると馬は速度を落とした。しかし西岸の暗い小道へ入ると、恐ろしい勢いで駆けた。実際の状況を理解できる状態なら、少女も恐怖を覚えただろう。
突然、向かいの座席へ投げ出されそうな衝撃とともに、馬車が止まった。窓の外を見ると、ぼんやりした赤い明かりが三つ灯り、その向こうでは、川面に射した月光の切れ端がきらめいていた。
タドロスが降りる手助けに来たとき、その背後にエヴァリンガム夫人が立っているのが見えた。
「ここはどこ?」と少女は取り乱して尋ねた。
「静かに、かわいい人」と友人は彼女を腕に抱き、優しく口づけした。「あなたの結婚式に、私が来ては迷惑かしら?」
「でも、なぜここに?」とアネスは訴えた。「なぜ川にいるの? カーラ王子はどこ?」
「来て。驚かせてあげるわ」とエヴァリンガム夫人はなだめるように言い、まだ半ば茫然として何が何だかわからない少女をダハビーヤへ案内し、明るく照らされた小さな船室へ連れていった。そこにはローン卿とジェラルド・ウィンストンが座っていた。
アネスは目を見張り、取り乱して周囲を見回すと、悲痛な叫びを上げて祖父の腕へ飛び込んだ。
「わからない!」と彼女は泣き叫び、取り乱してすすり泣いた。「いったいどういうこと? なぜお祖父様がここに? カーラ王子はどこ?」
ローンはその言葉に困惑し、彼女の動揺にも胸を痛めた。
「カーラ王子だと!」と繰り返した。「馬鹿な、アネス。あのろくでなしのニガーが欲しいとでも言うのか?」
「違う、違うわ!」と彼女は答えた。「でも、あの人は私を欲しがっているし、私は約束したの。行かなくては。なぜ私はここにいるの? 何をしたの?」
その頃までには、ドラゴマンは馬を椰子の木につなぎ、船へ乗っていた。ちょうどハッサンが渡り板を引き込み、アブダラが息も絶え絶えのエンジンを始動させたところだった。タドロスは船室の入口に立ち、アネスの抗議へじっと耳を傾けていた。
「お聞きください、お嬢様」と彼はわざと厳しい声を上げた。「私はカーラ王子のドラゴマンですから、お嬢様は私の監督下にあり、言うことに従うと約束されました。そうではありませんか?」
彼女は振り返った。
「あなたはカーラ王子の命令に従っているの?」と問い詰めた。
「もちろんです! 王子はお嬢様を驚かせたかったのです。正直さを試してみただけで、イギリス人の娘が約束を守るかどうか知りたかったのだ、と申しております。しかし、お嬢様を不幸にしたいわけではありません。王子であり、寛大なお方です。ゆえに契約から解放し、今この瞬間より、お嬢様は自由に好きなことをしてよいのです。」
アネスは真っ青になり、震えていた。
「でも、お祖父様は――」と勢い込んで言いかけた。
タドロスは言葉を遮った。
「ローン卿もご無事です。その証拠に、こうしておそばにいらっしゃる。これから先はもう、何も恐れる必要は――」
彼は突然口をつぐんだ。張り詰めきった少女の神経は、運命の急転に耐えられなかったのだ。ジェラルドは崩れ落ちる身体を受け止め、寝台へ運んだ。エヴァリンガム夫人が優しく介抱し、失神を和らげる薬を施した。
ローン卿はというと、大声で悪態をつき、ドラゴマンを睨みつけていた。
「いったい何だ、この忌々しい茶番は?」と叫んだ。
タドロスは微笑んだ。ジェラルドは歩み寄ってドラゴマンの両手を取り、温かく握り締めた。
「ありがとう!」と彼は言った。「あなたは忠実な味方だ。私たちを困った状況から救うため、うまく嘘をついてくれたことは忘れない。」
そしてローン卿へ振り向いた。「閣下に理解できないことがありましたら」と彼は言った。「喜んで説明いたします。カーラ王子は、あなたとアネスを駒にして、周到な勝負を仕掛けていました。ですが、ついにこちらが王手詰みにしたと思います。」
老貴族はすぐには答えなかった。自分から質問するとなれば、必然的にきわめて微妙な問題になる。彼は物思わしげに岸辺へ目を向けた。カイロの明かりがゆっくりと視界から消えていくところだった。
第二十章 シャイフの承諾
カーラは自画自賛していた。幼少期をあばら家で過ごした者にしては、偉人たちの運命を実にうまく操ってきた。祖母の復讐計画は、自ら巧みに整えた細部によって補われ、驚くほど満足のいく形で実を結んだ。そして今夜、ローン卿の一族を完全に破滅させる運命にあった。偽りの結婚によってアネスの名誉を取り返しがつかないほど傷つけたうえで、明日には横領の罪で閣下を投獄させる。彼が少女に預けたふりをし、彼女が間違いなくすぐに処分した証拠は、マクファーランド宛ての領収書を偽造したものにすぎなかった。原本は今も彼の手元に安全に保管されている。
これは巧妙な策略だった。少女の性質についての判断も驚くほど正確だった。祖父の安全を確実にするため書類を破棄した以上、アネスはカーラとの契約を破ることができない。後戻りする道はなかった。カーラは代価を支払い、彼女には自分の義務を果たさない口実が何も残されていなかった。
カーラが中庭へ入ると、辺りは明かりで燃え立っていた。改装を終えた女たちの居住区は、まことに豪華絢爛だった。華麗な衣装をまとった十二人の召使いが持ち場に立ち、新しい女主人の到着を身じろぎもせず待っていた。最近カーラの家に雇われたマイケルという悪党のコプト教徒は司祭服をまとい、作り物の威厳で中庭を行き来していた。その姿に、仲間の召使いたちはひそかに笑みを浮かべていた。
出席者は王子自身の使用人だけだった。将来アネスが、この儀式を自分の転落の言い訳に使おうとした場合、茶番の式すらなかったと否定できる立場にいたかったからだ。だが最初は、この方法で彼女の疑念を鎮め、容易な犠牲者にすることが愉快だった。また、復讐の味わいをいっそう深めてもくれた。
タドロスには入念に指示してあり、任務を果たすのに何の問題もないはずだった。通常の遅れを見込んでも、九時半までには邸へ戻るだろう。ドラゴマンを信頼していたのは、完全に支配下に置いていたからだ。しかし持ち前の用心深さから、使者を見張り、不審な行動があれば報告する密偵も送り込んでいた。タドロスはその密偵の存在を知らなかった。知っていれば、これほど自信を持てなかっただろう。
九時半になったが、馬車の車輪が静寂を破ることはなかった。召使いたちはその場で微動だにせず、カーラは白いキッド革の手袋をはめながら、深く考え込んで中庭を歩き回った。偽司祭は、式が行われる薔薇の東屋の下に立ち、借りてきたコプト語聖書から儀式の箇所を探していた。
九時四十五分。十時。黒い瞳の召使いたちは、主人が落ち着きを失い、玄関へ不安げな視線を投げていることに気づいた。
無関心を装っていた者まで神経を尖らせ始めた二十分後、馬蹄の響きと車輪が激しく回る音が静寂を破った。一台の馬車が邸の前へ駆けつけ、停止した。
カーラは期待を胸に急いで進み出たが、タドロスの監視に送った密偵と顔を合わせると、唐突に足を止めた。
「ドラゴマンはどこだ?」と鋭い声で問い詰めた。
「殿下、ドラゴマンは裏切り者です」と男は言った。
カーラの苛立ちは突然消えた。態度は落ち着き、声も柔らかくなった。
「説明してくれ。」
男は頭を下げた。
「ホテルに着くと、タドロスは閣下の馬車を追い払いました――」
「今どこにある?」
「わかりません。それから別の馬車を雇いました。番号九十三、エフタ・マラダというアラブ人の馬車です。タドロスは娘を連れ出してエフタの馬車へ乗せ、オペラ座へ行くよう命じました。私は後ろへ飛び乗って同行しました。ほどなくタドロスは、エフタに使いを頼んで追い払うと、急いで馬車を走らせました。ナイル川を渡って西岸へ出て、ローダ島の向かいまで川沿いに下り、娘をダハビーヤへ乗せました。」
「そうか。続けろ。」
「船が川上へ向けて出発すると、私は捨てられた馬車を使い、できる限り速くここへ来ました。以上です、閣下。」
「誰のダハビーヤだ?」
「ウィンストン・ベイのものです。本人も船上にいました。」
「ほかに誰か見たか?」
「コンシナー嬢の友人である女が。」
「エヴァリンガム夫人だ。」
「それにローン卿という、年老いたイギリス人も。」
「ほう! ずいぶん賑やかな一家団欒だな。それで、愛しのタドロスも一緒に行ったのか?」
「はい、閣下。」
「川上へ、と言ったな?」
「はい、閣下。」
「ご苦労。下がってよい。」
カーラはエベックへ振り向いた。
「明かりを消し、召使いたちを部屋へ戻せ」と静かに言った。
自室で白い手袋をむしり取り、夜会服から灰色の旅行着へ着替えた。それから人気の消えた中庭へ戻り、月明かりの下、噴水の脇へ腰を下ろして葉巻を吸った。
打撃は鋭く、突然だった。タドロスが生来、欺瞞と二枚舌に長けていることは十分承知していたが、同時に、威勢のいいドラゴマンが卑劣な臆病者であることも知っていた。それだけに、裏切りで見せた勇気には戸惑わされた。
しかしカーラは、逆境を嘆きもせず、落胆もしなかった。ドラゴマンを殺すのが遅すぎたことを一瞬悔やんだが、召使いの離反について長く考えるのを自分に許さなかった。まず求めるべきは、綿密に練った計画の明らかな失敗を覆す方法である。ドラゴマンへの報酬は、いずれ与えればよい。今は標的たちの逃亡を何としても阻止しなければならなかった。
即座に行動する必要はない。ダハビーヤは遅い汽船で、ナイル川の流れに逆らい、のろのろと進まざるを得ないことを知っていた。敵たちは、カーラが居場所を知らないと思い込み、それを追跡から身を守る頼みにしているのだろう。誰かが自分に対し、抜け目のない策を練ったことは認めざるを得なかった。ナイル川では、小舟に乗った一行は海上にいるのと同じほど孤立する。急行船や観光船が時折通るものの、速度が速く、現れてから半時間もしないうちに消える。それ以外では、絵のように美しく、幽霊さながらに流れていく土着民の荷船だけが、広い川面のさざ波を乱す。両岸には数多くの村が点在し、この季節はシャドゥーフ[訳注:梃子を利用した伝統的な揚水装置]で働く者も多い。しかし土着民たちはナイル川を行き交う船を見飽きている。大きな観光船が着岸し、乗客からわずかな稼ぎを得られるのを心待ちにしている場合は別だが、それも特定の名所に限られていた。
ゆえにカーラには、じっくり考える時間があった。この災難に見える出来事が、計画の成功にとって格別に有利に働くのではないか、とさえ思えた。カイロでは、市警察が警戒を怠らず、ほぼ買収もできないため、慎重に行動しなければならない。ナイル川沿いの住民は法を敬うのではなく恐れている。だが首都から遠すぎるため、それほど強くは恐れていない。観光客が上陸する場所には騎馬警官が配置され、生意気な村人たちを鞭で打ち、檻の虎が調教師に抱くような鈍い無関心へ追い込む。だが警官が背を向ければ野蛮さを取り戻し、人のあまり訪れない村ではシャイフが絶対的な王だった。
カーラはこうした事情を慎重に検討し、復讐を完遂する新たな計画をほどなく立てた。葉巻を吸い終えると床に就き、夜明けまで眠った。
「数日留守にする」と、早い朝食を取りながらエベックに言った。「戻ったとき、すべてが完璧に整っているようにしろ。商人が金を要求しに来たら、私がカイロへ戻り次第、直ちに支払うと約束しておけ。」
「はい、我が主。」
朝の列車でルクソール方面へ向かい、正午までにベニ・ハッサンの村の対岸にある駅へ着くと、小舟で川を渡った。
ハッサンの子らは何世紀にもわたり、「ナイル川の盗賊」として知られてきた。川岸近くに連なる三つの村は、ムハンマド・アリーの治世に、部族を分散させて盗癖を断とうと政府が完全に破壊した村に取って代わったものだ。だがベニ・ハッサンの民は泥造りの家々を再建し、平然と居座った。今でもその悪評を十分知らされた単独旅行者は、慎重に村を避けている。
上陸すると、村は無人のように見えた。右手の高い椰子の下には、布で身を包んだ人影が数人、動かず横たわり、小さな黒山羊や放し飼いの鶏が気だるげに歩き回っていた。だが訪問者は気に留めなかった。老人と女たちが小屋の中に大勢おり、若者は遠く丘陵の墓へ出かけるか、近くのシャドゥーフで日銭を稼いでいると知っていた。
左へ曲がり、緩やかな坂道を上って、高台にある二つ目の堂々たる椰子林へ向かった。その木陰には、ベニ・ハッサンでも上等な家々が建っていた。村を訪れるのは初めてだったが、幼い頃から数えきれないほど話を聞いていた。葦と泥の壁、椰子の葉の屋根を持つ大きな建物の前で立ち止まったとき、目指す場所を正しく推測できたとほぼ確信していた。
「シャイフ・アンタールはここに住んでいるか?」と、見物に出てきた子供へ尋ねた。
子供はうなずき、中へ駆け込んだ。カーラは焼けた泥の道に胡坐をかき、両足の靴を脱いで脇へ置き、辛抱強く迎えを待った。
五分ほどすると、巨大なアラブ人が頭を下げて低い戸口をくぐり、訪問者へ静かながら抜け目のない一瞥を向けてから、歩み寄ってカーラの前に立った。
「アッラーフ・アクバル!」と彼は両腕を大きく広げ、歓迎した。「旅人よ、我が持てるすべてを歓迎しよう。」
「アッラーが偉大なるシャイフの住まいを祝福し、守られんことを!」とカーラは純正なアラビア語で応じた。
シャイフは客と向き合って地面に胡坐をかき、自分も赤いモロッコ革の履物を脱いだ。髭は灰色で、黒い眼光は鋭かった。痩せた身体の肉は鉄のように硬く、並外れた力を示していた。メッカ巡礼を果たした証しである緑のターバンを巻いていた。
「偉大なるシャイフ・アンタール、アッラーに愛され、預言者の敵すべてに呪いをもたらす御方を拝見でき、喜ばしく存じます」と、二人が互いを真剣に観察した短い沈黙のあと、カーラは切り出した。
「兄弟よ、見事な言葉だ」と厳かな返事があった。「だが、あなたの存在がこの粗末な家にもたらした栄光と名誉に驚くあまり、尊き客人の高名が、移ろいやすい我が記憶から抜け落ちてしまった。」
カーラは地面へ深々と頭を下げた。
「私はアブ・フェダ山の者。ハタッチャ姫の孫にして、アフトカ・ラーと古代エジプトの王統を引く者。我が名はカーラ。」
シャイフは威厳ある仕草で手を差し出し、客人の手を握った。
「最後の偉大なエジプト人の名声は、すでに我が耳にも届いている」と言った。「三日前、船の《ラムセス》号でここへ来たシリア人のドラゴマン、ラシードが、カイロでのあなたの暮らし、豪華さと莫大な富、寛大さと知恵を語ってくれた。フェダなら知っている。アル・クシイェのシャイフは我が友だ。エジプト人カーラの栄光は、ナイル川沿いに住むすべての者を照らしている。」
この賛辞を十分かつゆっくり味わうため、再び間を置いたあと、カーラは深いため息をついて答えた。
「されど我が心は安らかではありません、高貴なるアンタール。我が敵どもが私を圧迫し、大きな悲しみを与えている。ゆえに兄弟へ助けを求めざるを得なかったのです。」
シャイフの目が光った。
「すでにカーラの敵には混乱が降りかかっている」と彼は言った。「アンタールの憎悪がもたらす災いから、逃れられるはずがない!」
「ならば、感謝の念が滝のごとく我が胸から溢れるのをご覧ください」とカーラは目を伏せて答えた。「カーラにこの兄弟愛へ報いる力はほとんどない。だが、我が敵が打ち倒されるその日、偉大なるシャイフには、尊敬すべき貧者たちへ一万ピアストルを代わりに分配していただかねばなりません。」
アンタールは考え込んだ。大きな報酬には、大きな奉仕が伴う。
「兄弟よ、物語を聞かせてくれ」と彼は言った。「耳を傾けよう。」
そこでエジプト人は、英語では到底その華麗さを伝えきれないアラビアの美辞麗句を駆使しながら、一艘の船が敵を乗せ、ナイル川をゆっくり遡ってベニ・ハッサンの村々へ近づいている話をした。女たちと男たちの人相を述べ、ウィンストン・ベイの名を出したとき、シャイフが露骨に嫌そうな唸り声を上げるのに気づいた。さらに物語を続けるという体裁で、兄弟たる偉大なシャイフ・アンタールがダハビーヤへ襲いかかり、船を奪い、乗客と乗組員全員をカーラへ引き渡したと語った。ただ一人、ドラゴマンのタドロスは不幸にも殺され、船外へ投げ捨てられ、川底の泥の中に永遠の眠りを見いだす。そしてウィンストンの乗組員に代わり、ベニ・ハッサンの屈強な男六人が乗り込み、アンタール自身の命令であるかのように、カーラの命令へ進んで従う。その後カーラはシャイフを乗せてナイル川を遡り、フェダへ着く。そこで貧者のための一万ピアストルのみならず、シャイフ自身と女たちを飾るため、途方もない価値を持つ宝石を数多く贈る。
なかなか美しい物語ではないか、と彼は結んだ。そしてアンタールの慧眼には、予言のように聞こえないだろうか、と。
シャイフは長いあいだ真剣に考えた。昔から知り、深く尊敬するウィンストン・ベイへ手を出したくはなかった。だが宝石への言及には抗い難く、科学者に正体を見破られずに済む方法も見つけられるだろう。
取引の成立には数時間を要したが、最後には必要な奉仕と、果たすべき細部を二人とも完全に理解した。ダハビーヤへの襲撃について話し合い、計画を立て、報酬の条件にも合意した。タドロスの殺害は、シャイフが異議なく受け入れた一項だった。
エジプト人とアラブ人という二人の狡猾な悪党が襲撃を指揮する以上、何も知らないウィンストン・ベイの一行が完全な破滅を免れる望みは、ほとんどないように思われた。
第二十一章 ロータスを食む者と鰐
旅というものの全領域に、絶対的に理想と呼べる航海があるとすれば、それはナイル川を遡る旅である。川の曲がり角ごとに変化する景色。移ろう光、穏やかな水のさざめき、遠くから響く土着の船頭たちの歌声や掛け声。月光に浮かぶリビア丘陵の稜線。昼には、鮮烈な深紅と黄色のサボテンが点在する岩だらけの荒野。雲一つないエジプトの空を魅惑的な輝きで染め上げる夕日。黄昏時、高い堤防の上を行く驢馬や駱駝の隊列が描く影絵。これらが、旅人の憂いなきロータス食い[訳注:『オデュッセイア』に登場する、俗世を忘れて安楽に暮らす人々の比喩]のような生活と結びつけば、あまりにも鮮烈で甘美、そして完全に満ち足りた印象を残す。旅の世界のどんな経験も、これに比肩することも、記憶から消し去ることもできない。
アネスは、カーラ王子が最後には寛大な心を見せ、約束から解放してくれたというドラゴマンの話を信じた。ウィンストンもエヴァリンガム夫人も、その言葉が真実だと保証する勇気はなかった。しかし黙っているあいだ、タドロスは臆面もなく、主人は気まぐれで突飛ではあるものの、非常に心優しく思いやりがあり、いかなる形でも誰かを不当に扱うことなどできない、と説明した。
「ローン卿の件ですが、お嬢様」と彼は打ち明けるように言った。「卿が軽率なことをしたのは疑いありません。それが、高い名誉心を持つ主人を苛立たせた。そこで今後もっと慎重になるよう教えるため、少し脅かしただけなのです。しかし公衆の恥辱にさらすつもりなど、ほんのわずかもありませんでした。これは保証します。カーラ本人がそう申しておりました。」
ドラゴマンはこうした作り話を大いに楽しんでいた。とりわけアネスが完全に信じ込み、そのおかげで気持ちを明るくし、目新しく楽しい環境に満足していくのを見るのは愉快だった。船上の誰もが少女を大切にし、航海の快い影響のもと、アネスはある程度、以前の明るさと活発さを取り戻した。ジェラルドの目に宿る愛の光を見て、幸福そうに頬を染めても、もはや害はなかった。三人の同行者は、世界で最も愛する人々だった。近頃の心配も胸の痛みも、すべてカイロへ置き去りにしたようで、これから何週間も続く大きな楽しみに胸を躍らせることができた。
しかしカーラ王子を誤解していたことは申し訳なく思い、カイロへ戻ったらすぐ許しを請おうと心に決めた。
ジェラルドとエヴァリンガム夫人は、アネスの思い違いを訂正こそしなかったが、ドラゴマンの話が日増しに大胆になることには少し不安を覚え、もっと用心するよう警告した。少女が健康と落ち着きを取り戻したら真相を説明し、タドロスの話を徹底的に否定するつもりだった。今は、瞳が輝き、頬に薔薇色が戻ってくるのを見るだけで満足していた。
ローン卿は賢明にも、質問しないことに決めていた。耳にした話から、カーラが今やアネスを迫害するのではなく助けており、そうであれば自分への危険も最小限になったと理解した。エジプト人がなぜ態度を変えたのかは少しもわからなかった。もしカーラが単に脅かすつもりだったなら、見事に成功している。恐怖と絶望によってすでに受けた苦しみだけで、ハタッチャに対する遠い昔の罪を償うには十分だ、とローンは自分に言い聞かせた。だがカーラもそう思っているのか? それには答えられなかったが、少なくとも今はすべての心配を先送りにした。
このすばらしい日々に、アネスをどれほど深く愛し、その存在がどれほど大きな幸福をもたらすかを示さずにいられたなら、ジェラルド・ウィンストンは人間ではなかっただろう。月明かりに照らされた甲板の夜は、どれほど内気な恋人にも勇気を与えるのに十分だった。ジェラルドは黄金の機会を無駄にするわけにいかなかった。アネスを勝ち取れるとすれば、この旅の最中しかない。大胆になれというエヴァリンガム夫人の助言に背を押され、ほどなく運命を賭け、その成功に驚嘆した。少女はあまりにも深く苦しんできたため、恋人の心を弄ぶ気などなかった。すぐに承諾を得られた。ルクソールかアスワンで結婚するつもりだった。どちらにもイギリス国教会があり、正式な挙式に必要なものは十分整っている。ローンはウィンストンを気に入っており、アネスの幸福を保証する計画に反対しなかった。唯一の欠点は、性急すぎることだけだった。
この計画は恋人を喜ばせたのと同じほど、アネスを喜ばせた。彼を永遠に失ったと思っていた苦悩の日々、ジェラルドの愛が持つ本当の価値を痛感していたため、今や彼にしがみついた。自分の未来の幸福を完全に満たしてくれるのは、この人なのだとわかっていた。それでも、不必要に遅らせれば危険になるという不安を覚えていた。また、カーラとの契約によって突然結婚する可能性と向き合う覚悟はできていた。当時は忌まわしい試練だったものが、今では勝利の冠になるのだ。
「あなたの望むときでいいわ、ジェラルド」と彼女は言った。「私はあなたの妻になる。結婚の証人は、大切なお祖父様とエヴァリンガム夫人以外、誰も望まないわ。幸福はあまりに貴重で、人生はあまりに不確か。だから、あなたの申し出を拒むつもりはないの。」
「ありがとう、愛しい人」と彼は厳かに言った。
「それから、アスワンよりルクソールがいいわ。昔、エジプトの王女たちが暮らし、愛に生きた古いテーベの都で結婚するなんて、とてもロマンチックでしょう?」
「ルクソールにしよう」と彼は宣言した。
その一週間は、決して忘れられない喜びに満ちていた。恋人同士の甘い心の交わし方は、タドロスにとって何もかも初めて見る驚くべきものだったが、彼でさえ絶えず笑みを浮かべていた。カーラがドラゴマンの運命を支配すると宣言して以来、初めて完全に安全だと感じ、これほど簡単なことなのに、なぜ長いあいだ傲慢で横暴な主人との決別をためらっていたのか不思議に思った。ダハビーヤが気だるい流れに逆らってのんびり進むなか、タドロスはカーラが今頃何をしているのか考えた。狙っていた犠牲者たちの逃亡を知ったときの怒りと困惑を思い浮かべ、笑わずにはいられなかった。まあ、カーラは自分の狡知をドラゴマンの知性へぶつけたのだ! 敗北したのも無理はない。
七日目の午後、一行はベニ・ハッサンの前をゆっくり通過した。日没から翌朝の日の出まで毎晩船を係留していたため、進み方は控えめだった。川から眺めるベニ・ハッサンは絵のように美しかった。汚物も悪臭も届かず、立派な椰子の群れが、間近に調べれば不相応だとわかる威厳を村へ与えていた。
広い日除けの下で、ジェラルドの隣に幸せそうに座っていたアネスは村を大いに褒めた。恋人は帰路に立ち寄り、近くの丘にある有名な墓を見学する機会を作ると約束した。
黄昏時、一行はベニ・ハッサンとアンティノエの中間で錨を下ろした。船は東岸から数ヤード離れた水上に静止した。
エジプトのこの地方では夕べが心地よく、ダハビーヤの乗客たちが寝床へ入ったのは真夜中だった。タドロスだけは目が冴え、ほかの者が眠ったあとも長いあいだ汽船後部の甲板に寝そべっていた。高い岸辺を物思わしげに眺めながら、すでに蓄えた十分な貯金へウィンストン・ベイの三千ポンドを加えたあとの、豊かな未来を楽しく夢見ていた。
やがて、岸の頂に黒い物体が一瞬現れ、下方の闇へ素早く消えた。続いてもう一つ、さらにもう一つ。
タドロスは困惑して頭を掻いた。黒い物体には形があるようだが、死人のように無音だった。全部で十二ほど数えた。幽霊なのか、ジャッカルなのかと考え続けていると、鋭い耳が岸辺近くで水の跳ねる音を捉えた。
ジャッカルではない――それだけは確かだ。あの貪欲な獣は決して水へ入らない。幽霊も水浴びはしないはずだ。寝そべっている場所から川面までは一フィートもない。船尾から大きく身を乗り出したタドロスは、薄暗がりの中、水面で上下するいくつもの頭を見つけた。
すぐ警報を発するべきだった。だが恐怖で決断できず、行動に移す前に、仲間の乗客たちを起こすには遅すぎた。
船首をよじ登ってきたのは、十人ほどの裸のアラブ人だった。輝く歯の間に短刀をくわえ、黒い目を獰猛に辺りへ走らせていた。
タドロスが最初に抱いた衝動は戦うことだった。だが立ち上がろうとしたそのとき、見知った男が船尾へ駆け、女たちの眠る小さな船室へ飛び込んだ。
カーラだった。
それを見た瞬間、ドラゴマンから迷いは消えた。岩から滑り落ちる海豹のような素早さで甲板から水へ身を滑らせ、恐怖の悲鳴と怒号が次々に耳を打つなか、音もなくナイル川を泳いで対岸へ向かった。
水は冷たく、泳ぎながら身震いした。だが寒気は外よりも内から来ていた。今のナイル川に鰐はいない。しかし場所によっては蛇や鮫に似た魚がおり、泳ぐ者の脚から肉を一口分食いちぎる。タドロスも知っていたが、そのときは考えなかった。頭に映るのはカーラの黒い顔――冷酷で悪意に満ちた顔だった。ダハビーヤには確実な死が待っている。ドラゴマンを突き動かす唯一の衝動は、危険から可能な限り遠ざかることだった。
船上の混乱のおかげで、逃亡にはすぐ気づかれなかった。体力を使い果たしかけるほど長く泳いだ末、西岸へたどり着き、硬い地面へ倒れて喘いだ。
ゆっくり息を整えながら、ダハビーヤから聞こえる物音を捉えようと耳を澄ませた。しかし対岸には今や重苦しい静寂が支配していた。汽船の灯火が夜の向こうにかすかに輝いていたが、船上へ残した者たちの運命は謎に包まれていた。カーラと暗殺者の一団は、少女を除く全員を殺すかもしれない。彼女まで殺す可能性もある。いずれにせよ、ドラゴマンがこの企てに関わるのは唐突に終わった。
一マイルほど先には、鉄道駅のある小さな町ローダがあった。追手が来ても見つからないよう岸辺から十分離れ、歩き始めた。
運命の突然の逆転に、彼はひどく意気消沈し、狼狽していた。いつも彼を際立たせていた意気軒昂な態度は、跡形もなく消えていた。すでに稼いだ三千ポンドを取り返しようもなく失い、カーラの容赦なき敵意に一生追われるとわかった以上、ドラゴマンの境遇はまことに悲惨だった。
これからどうすればよいのか考えた。カイロへ戻ることは論外だ。故郷フェダへ帰ろう。ネフティスと母親がいる。カーラが不意に現れても、匿ってくれるだろう。そうだ、フェダだけが避難所だ――少なくとも、今後の計画を考える時間ができるまでは。
やがてカイロの対岸にある古代のナイル川の島にちなんで名づけられた、ローダの駅へ着いた。眠そうなアラブ人の駅員が一人で留守を預かっており、ドラゴマンの濡れた服を露骨に怪しんだ。質問すると、朝六時に南行きの列車が来ると告げた。
タドロスは駅の外へ出て、近くの家の脇に都合のよい隠れ場所を見つけた。影が深く、誰にも見つからない。そこで横になり、列車の到着を待ちながら休んだ。
夜明けまでに服は乾いた。しかし青いサテンの胴着が川の水で駄目になり、シリア風の飾り帯がみっともなく皺だらけになっていることへ、残念ながら気づいた。彼は命の次に華麗な衣装を愛していたので、この気の滅入る発見が、沈んだ気分を持ち上げることはなかった。
列車が入ってくると乗り込み、コンシナー卿の向かいの席に座っている自分に気づいた。二人はしばらく互いを見つめ、やがて子爵は唸り声と笑い声を奇妙に混ぜたような音を出した。
「カーラの分身か」と英語で嘲った。
「ご容赦を、閣下」とドラゴマンは急いで言った。「同盟は解消されました。王子を憎む理由なら、私のほうが多いくらいです。」
「ほう?」とコンシナーは答えた。
「あれは、あなたがたイギリス人の地獄から直接湧いて出た悪魔です」とタドロスは熱を込めて断言した。「カーラを生み出せる悪魔の住処など、ほかには知りません。ただ一つ確かなことがあります」と、彼は苦々しさを強めて続けた。「死ぬ前に必ず復讐する!」
男の怨念に満ちた断言には、紛れもない毒がこもっていた。コンシナーは微笑んで言った。
「その復讐に加われるなら、私も嬉しい。」
突然タドロスの頭に、あまりに壮大で重大な考えが浮かんだ。本人すら驚き、相手の顔を呆然と見つめた。しばらく無言で列車に揺られ、考えを頭の中で転がし、そのあらゆる側面を慎重に検討した。それから用心深く尋ねた。
「どちらへ行かれるのです、閣下?」
「アシュートだ。」
「ずいぶん前にカイロを離れたと思っていました。」
「そのとおりだ。アレクサンドリアへ行ったが、面白いものは何もなかった。今はアシュートへ向かっている。そこからアスワンへ行き、さらにワディハルファまで足を延ばすつもりだ。」
「急ぐ旅ですか?」
「まったく。」
「では、クシイェで私と一緒に列車を降りてください。興味をお持ちになる提案があります。」
コンシナーはしばらく彼を観察した。
「その計画には、我々の復讐も含まれているのか?」
「はい。」
「よかろう。提案どおりにする。」
「結構!」とタドロスは叫んだ。そして身を乗り出して囁いた。「復讐と財宝です、閣下! 試す価値があるでしょう?」
第二十二章 ドラゴマンのひらめき
二人はフェダの対岸にある駅で列車を降り、ドラゴマンは土着民を雇い、小舟で川を渡らせた。コンシナーは質問せず、目的地にもまるで関心がない様子だった。実際、恥ずべき逃亡によってカイロを去って以来、人生はあまりに目的を失っていたため、退屈な単調さを和らげる気晴らしなら何でも歓迎だった。
フェダへ着くと、タドロスはコンシナーを老いたパン焼き女ネフェルトの小屋へひそかに連れていった。そこはハタッチャの住居――今ではカーラの所有となっている家――の通り向かいにあった。子爵は、身を隠さねばならないあばら家の汚さに腹を立てかけたが、ドラゴマンが向かいのアーチの陰へ連れていき、考えている計画について説明すると態度を変えた。
タドロスはまず、「王家の御方」の若き日の経歴を語り、老ハタッチャがまったく働かずに、自分とカーラを養っていた事実を強調した。それからハタッチャの死と、自分がカーラの手元にある貴重なパピルスの巻物を発見した経緯を話した。そこから「王子」が華々しくカイロへ登場するまでは、わずかな一歩にすぎない。この歴史全体から導き出せる説明は一つだけだった――カーラが莫大な富を納めた古代の墓を知っているという事実である。
「以前」とドラゴマンは言った。「カーラと私はフェダを訪れました。しかし目的を疑わず、ある娘にすっかり夢中になっていたので、見張ることを怠りました。翌朝、あの男が旅行鞄へ宝を詰め込んでいるのを見つけました――すばらしい宝石の数々です。それ以来、王侯のように暮らせたのも、あれのおかげです。」
「どこで手に入れた?」とコンシナーは勢い込んで尋ねた。
「申し上げたとおり、隠された墓です。秘密を知るのはあの男だけです。」
「宝はすべて持ち出したと思うか?」
「これまで持ち出した以上の量が残っていると考える理由があります。以前、油断したカーラが、千年かかっても使い切れないと口にしました。」
「その墓を見つけられると思うか?」
「こちらが賢く動けば。手がかりなしに探しても無駄ですが、必要な手がかりはカーラ自身が与えてくれます。」
「どうやって?」と子爵は尋ねた。
「もうすぐここへ来るのです。」
コンシナーは眉をひそめた。
「あの男とは会いたくない」と急いで言った。
「私もです」とタドロスは身震いして答えた。「ですが、会う必要はありません。カーラは、私たちが村にいるとは疑わないでしょう。」
「では?」
「新たな宝を取りに来るのです。以前の分を使い果たしたことは、確かな理由があって知っています。商人たちに支払いを約束している以上、フェダ行きを遅らせる勇気はないでしょう。それに今も、ここからさほど遠くない場所にいます。ウィンストン・ベイのダハビーヤで来るなら明日には着く。鉄道を選べば、今晩にも来るかもしれません。」
「その場合、どうするつもりだ?」とコンシナーは問い詰めた。
「見張ります。宝の隠し場所を突き止め、カーラが去ったら、好きなだけいただく」と自信満々に答えた。
詳しく詰めてみると、この考えは十分実行可能に思えた。二人はカーラの住居へ入り、念入りに調べた。
「おそらくここが出発点です」とドラゴマンは説明した。「ここから山中へ秘密の通路が延びているか、あるいは砂漠へ忍び出し、墓の入口が移ろう砂の下に隠されているのでしょう。どちらの場合にも見張る準備が必要です。だから私一人で全財産を手に入れようとせず、あなたへ協力を提案したのです。二人で分けても余るほどあると確信しています。」
「だろうな」と子爵はそっけなく答えた。すでに莫大な富の幻を目にしていた。それがあればロンドンへ帰り、自分へ浴びせられた嘲笑と醜聞をすべて超越する立場へ返り咲ける。
村のわずかな住民は鈍く、無気力で、二人の存在にはまったく気づいていなかった。二人は長時間、真剣に相談した。最終的に、カーラが近づいたらコンシナーは古い寝床の乾いた葦の下へ隠れることに決めた。子爵が室内を動く者のあらゆる行動を観察できるよう、タドロスが位置を整える。それからドラゴマン自身は村の端に潜み、カーラが砂漠へ忍び出した場合に尾行する。
実のところ、宝が山中に隠されているとタドロスは固く信じていた。しかしコンシナーを手駒にできるのに、自分の命を危険へさらす気はなかった。発見されれば死ぬ――それは十分承知している。危険は避けるに越したことはない。子爵がカーラの秘密を知ることに成功すれば、自分で知ったも同然だ。この追放されたイギリス人の扱い方は心得ていた。財宝が予想どおり莫大なら寛大に振る舞う余裕もあり、共犯者に公平な分け前を与えてもよい。そうでなければ――それは後で考えればよい。
タドロスは、よそ者を村人たちの好奇の目にさらしたくなかった。だがドラゴマンが古い友人たちのもとへ再びやって来たと知られても害はない。そこでコンシナーには、足音がするたび暗い隅へ逃げ込んでネフェルトのあばら家に隠れているよう強く命じ、自分は賢明な計画を進めるため、セラと娘を訪ねた。
第二十三章 母と娘
セラの小屋へ近づいたドラゴマンは、敷居の前で足を止め、中の様子をうかがった。自分の無謀な行いのせいで、ナイル川の娘が美しい衣装と宝石を剥ぎ取られ、蔑まれ、見捨てられてカイロから故郷へ送り返されたことを思い出し、ためらったのだ。
彼女の屈辱と絶望は、それ以来ずっと彼を悩ませていた。
だが今、ネフティスは従順に使い古された織機の前へ座り、かつてと同じ機械的な倦怠感で杼を行き来させていた。色褪せた黒い服は胸元が開き、継ぎだらけで破れていた。それが唯一の衣服だった。首には青い数珠まで戻っている。
しかしタドロスへ向けた目は、どこか以前と違っていた。かつてのビロードのような深みは鈍い膜に覆われ、滑らかだった額は不機嫌なしかめ皺に損なわれていた。
だが少しするとドラゴマンに気づいたらしく、突然、熱を帯びた眼差しを見せ、頬を赤らめて立ち上がった。
「また私を迎えに来たの?」と尋ねた。
「違う」とタドロスは長椅子へ身を投げ出して答えた。なぜそんな感情を抱くのかわからなかったが、気後れしていた。いつもの自惚れと、他人を顧みない利己心にもかかわらず、恥じ入り、悲しんでいた。
ネフティスは身体を戻し、織物を再開した。その目は再び膜に覆われた。母親の客にはもう注意を払わなかった。
だがセラは多弁で、憤慨していた。
「あのカーラめ」と彼女は声を尖らせた。「毒蛇だ――鰐だ――卑しく、恥知らずな詐欺師だ! アラブ人より悪い。ヘンフ! ここにいたら、踏みつけて塵にしてやる。なぜ私の美しい娘をハレムから追い出したのだ? 言ってみろ!」
「ただ、ネフティスと私が旧友として、ときどきあなたやフェダの知人のことを話したかったからですよ。噂話をしたり、一緒に煙草を吸ったりして何が悪いのです? 以前は私が彼女を所有していたのですよ。」
「そのとおり。売ったおまえが馬鹿だった。」
「それでも、ネフティスが貴重な経験をしたことは忘れてはいけません」と彼はもっと軽い調子で続けた。「一時は女王だった。サテンの衣と輝く宝石に飾られ、比べる者もないほど豪華で華麗だった。ああ、短いあいだでもあれほどの贅沢を味わえる娘は、そう多くない! 満足させてやりなさい。」
「満足だと!」と老セラは甲高く叫んだ。「あれでこの子は駄目になった。もう昔の家では幸福になれない。めったに口を開かず、話すときはカーラを呪うだけだ。見てみろ! 以前のように肥えて美しいか? 違う。このまま長く生きれば、骸骨になって死んでしまう!」
「アッラーがお許しにならぬよう!」とタドロスは慌てて叫んだ。「ですが、連れ戻してもらえると思っているなら望みはありません。カーラが心を和らげ、再び寵愛することは絶対にないでしょう。あの男には女を見る目がない。しかし私は」と誇らしげに胸を叩いた。「私がネフティスを引き取ります。カーラほど豪華に着飾らせるとは約束できませんが、また太らせ、以前と同じように絹の衣と飾りを与えましょう。」
「煙草もか?」
「もちろん。」
彼は懐から待望の紙巻き煙草の箱を取り出し、女のほうへ投げた。セラは待ちきれない様子で一本に火をつけ、箱をネフティスへ渡した。少女はしばらく虚ろに見つめていたが、やがて理解したようだった。一本取り、母親の煙草から火を移した。子供のように楽しげな笑みがゆっくり顔へ広がり、織機を離れ、タドロスの膝へ座った。
「もうすぐカーラがフェダへ来るはずです」とドラゴマンは言った。「しかし、私がいることを知られてはならない。仲違いをしましてね。喧嘩になり、あの男は私を脅しています。」
「心配はいらない」とセラは平然と言った。「奥の壁の空洞へ隠してやれる。王家の御方も知らぬ場所だ。あの男が去るまで、そこで安全にしていられる。」
「結構!」
「カーラはいつ来る?」と女は尋ねた。「なぜまたフェダへ来るのだ?」
「今晩か明日には来るでしょう。理由は知りません。」
「ハタッチャのミイラのそばで祈るためかもしれない。」
「どこにあるのです?」と彼は素早く尋ねた。
「わからない」と女は答えた。「あの家を何度も調べたが、秘密の扉はどこにも見つからなかった。墓は丘の中――あるいは砂漠かもしれない。小人セベットの住むオアシスがある。あいつはハタッチャに最も忠実な従者の一人として知られていた。」
「そうですね」とドラゴマンは考え込んだ。
「墓はセベットのオアシスにあるに違いない。以前カーラは、老ニッコーの驢馬を盗んでそこへ行った。」
「前に私たちがここへ来たときですか?」とタドロスは尋ねた。
「違う。ハタッチャが死んだときだ。」
「なら、墓はオアシスではありません。フェダのすぐ近くにあるはずです。だが聞いてください、セラ。私がネフティスを引き取り、養うと約束するなら、カーラが来たときに助けてもらわねばなりません。」
「古い壁へ隠すと約束した」と女は答えた。「それ以上に何ができる?」
「あります。すぐ丘へ行き、王家の御方が来ないか見張るのです。老いていても目は鋭いでしょう。カーラはナイル川から来ます――川を渡ってくるか、北から煙を吐き帆のない船で来る。見つけ次第、急いでここへ知らせに来てください。そうすればカーラを迎える準備ができます。やってくれますか?」
「紙巻き煙草の箱を持っていってよいか?」
「ええ。」
「ならば言うとおりにしよう。」
女はすぐ丘へ向かい、タドロスとネフティスを残した。だが少女はすでに彼の存在を忘れ、光のない目でまっすぐ前を見つめていた。
ドラゴマンはため息をついた。
「実に困ったことだ」と彼は少女を批評するように眺めて呟いた。「だが、やはり本当らしい――痩せてきている。」
第二十四章 シャイフの異議
ダハビーヤの誰一人として、危険を疑ってすらいなかった。ウィンストン・ベイは、特定の村に住む土着民の信用ならない性質をよく知っていた。それでも汽船が襲われ、乗客が危害を受けるなど夢にも思わなかった。ゆえに奇襲は完全に成功した。
はっと目を覚ましたエヴァリンガム夫人は、甲板を踏む大勢の足音を聞き、アネスと眠っていた船室へ男が入ってくるのを見た。
最初は悲鳴を上げようとした。だが代わりに枕の下から小型拳銃を引き抜き、侵入者へ至近距離から立て続けに二発撃った。
どちらの弾も当たらなかったが、激しい悲鳴――今ではアネスも加わっていた――と同じほどカーラを驚かせた。彼は慌てて船室から退き、その隙にエヴァリンガム夫人は扉を閉め、備えつけられた太い閂を掛けた。
後部船室は女たちに譲られていたため、ウィンストンとローン卿は船首側の小さな船室を使っていた。両者の間には厨房と機関室があった。土着民たちは船首近くから乗り込んだため、最初に前部船室へ飛び降り、白人二人が完全に目覚める前に捕らえた。ローンはまったく抵抗しなかったが、ウィンストンは激しく暴れたため、巨大なシャイフを先頭に三人がかりでようやく押さえ込んだ。数分もせず、二人は手足を固く縛られた。脱出を防ぐため、抜き身の短刀を手にした土着民たちを見張りとして残し、寝台へ放置された。
ウィンストンの乗組員である四人のアラブ人も容易に制圧された。カーラが船首へ来る頃には、全員が甲板上で念入りに縛り上げられていた。流血はまったくなく、汽船はカーラと傭兵たちの完全な支配下に置かれた。
「よし」とシャイフは、エジプト人が近づくと満足げにうなずいた。「簡単だったぞ、王子。白人二人は下におり、船は我々のものだ。」
カーラはランタンの薄明かりで、囚人たちの顔を覗き込んだ。
「ドラゴマンはどこだ?」と尋ねた。「命じたとおり殺したのか?」
「残念ながら、その楽しみには恵まれなかった」とシャイフは答えた。「船にいなかったのだ。」
「確かなのか?」
「間違いない、王子。」
「隠れているかもしれん。女たちの船室を除き、船の隅々まで徹底的に捜せ。」
シャイフは肩をすくめたが、配下へ命じた。考えられるすべての隠れ場所を調べたものの、ドラゴマンは見つからなかった。
そのあいだカーラは甲板へしゃがみ、今後どう動くべきか真剣に考えた。無言のシャイフは平然と隣へ座っていた。アラブ人たちが捜索に失敗して戻ると、エジプト人は味方へ言った。
「朝まで囚人を見張らせろ。今はこれ以上何もできん。」
そこで一同は甲板へ横たわり、夜明けまで休んだ。
物の見分けがつくほど明るくなると、カーラは立ち上がり、ウィンストンとローン卿を甲板へ連れてくるよう命じた。そこで二人は初めてエジプト人の姿を見て、なぜ襲われたのか理解した。
「このちょっとした余興は、君のおかげだろうと思っていたよ」とウィンストンは敵を怒りに満ちた目で睨んだ。「カーラ王子、こんな無法を働けば、自分と将来を破滅させることになると理解していないらしいな。」
「いや」とカーラは微笑んだ。「理解していない。」
「今のエジプトでは、こんな行為は許されない」とベイは続けた。
「知られればな」とカーラは認めた。
「私が黙っていると思うのか?」とウィンストンは憤然と問い詰めた。
「そうだ。」
「なぜだ?」
「カイロへ戻すつもりがないからだ。理解してもらおう、ウィンストン・ベイ。私は個人的に君を憎んでいるわけではない。だが君は私の目的を妨害し、それによって自らを滅ぼした。君の船を奪うという無法まで犯したのは、アネス・コンシナーとローン卿を手に入れるためにほかならない。自分を守るには、将来厄介をもたらし得る船上の全員を黙らせねばならない。ゆえに君を殺す必要がある。」
「できるものか!」
「私を見誤っている」とカーラは冷静に答えた。「だが、今すぐ誠意の証しを見せよう。」
アンタールへ向き直って言った。「同志よ、ウィンストン・ベイの心臓へ短刀を突き立ててくれ。」
シャイフは動かなかった。
「どうした?」とカーラは苛立って叫んだ。
「契約にない」と動じないアラブ人は答えた。
「勘違いしている」とエジプト人は鋭く言った。「私の命令に従うこと、特に黙らせたい敵を殺すことは、十分に了解されていたはずだ。」
「兄弟よ、思い出してもらいたい」とシャイフは答えた。「もう一つの約束もあった。宝石とピアストルに関する、ささやかな事柄だ。」
「必ず渡す!」
「ならば従おう――受け取ったあとで。」
ウィンストンは微笑んだ。それを見たカーラは悪態をついた。
「今さら私の邪魔をするのか? 互いに安全に退くには、もう遅すぎるのだぞ」とアンタールへ怒りをぶつけた。
「とんでもない。殺しに反対しているのではない、兄弟よ。だが我が民は貧しく、約束された金があれば苦しみを大いに和らげられる。宝石とピアストルを見せてもらえば、あなたの望みはすべて叶えよう。」
ウィンストンは巨大なアラブ人をじっと見た。以前どこかで会ったような気がしたが、思い出せない。アンタールは灰色の髭を刈り込んだだけでなく、濃い黒に染めていた。それでも土着民が皆、狡猾で欲深いのは同じであり、今の会話から一つの考えが浮かんだ。
「聞いてくれ、シャイフ」とアラビア語で言った。「望みが金なら、カーラの申し出の倍を払おう。人が復讐のために払う金より、自分の命のために払う金のほうが多いのは当然だ。値を言え。その額を払う。」
アンタールはエジプト人へ振り向いた。鋭い顔には満足げな表情が浮かんでいた。
「兄弟が答えるそうだ。」
「馬鹿馬鹿しい」とカーラは断言した。「ウィンストン・ベイはおまえを弄んでいるだけだ。金はすべてカイロにある。受け取りに行けば、おまえを牢へ放り込み、政府の警察を満足させるため、おまえの民を滅ぼし、家々を取り壊すだろう。」
「高貴なシャイフは馬鹿ではない」とウィンストンは言った。「我々を支配下へ置き、厳重に監視したまま、使いをカイロへ送り、金を受け取らせればよい。それに、私は彼を裏切らないと約束する。私の言葉はカーラ王子のものと同じだけ価値がある。」
「そもそも、なぜカイロへ行く?」とエジプト人は尋ねた。「私とフェダへ来れば、対価を渡そう。ウィンストン・ベイの全財産をもってしても、アンタールの手へ渡す宝の豪華さには及ばない。」
シャイフの目が輝いた。
「よし!」と叫んだ。
「私に忠実でいるな?」とカーラは尋ねた。
「当然だ。」
「私の意のままになる宝は莫大だ。おまえのものになるのは一握りの宝石どころではない。今後永遠に部族を富ませるほど与えよう。」
「兄弟は真実を語っていると信じよう。」
「ならば」と安堵したカーラは言った。「私への信頼の証しとして、ウィンストン・ベイを殺してもらいたい。ほかの者はフェダへ着くまで生かしておいてよい。」
「タッ! 儀式を分けて何になる?」とシャイフは無関心に手を振った。「豚を何度にも分けて刺すのは好かん。一度で済む刃の掃除を、何度もしなければならなくなる。辛抱せよ、兄弟。フェダへ着き、あなたの王侯らしい寛大さで友情がいっそう固められたなら、短時間ですべての殺しを済ませ、終わりにしよう。それでよかろう?」
カーラはためらったが、狡猾なシャイフが自分を信用していないのは明らかだった。しかもウィンストンが対抗して高値を出すと繰り返し申し出れば、欲深いアラブ人への約束を自分が果たさない限り、効果を上げる恐れがある。アンタールの働きに大金を払うつもりはなく、当初は「一握り」の宝石も、ごくわずかにする予定だった。だがアンタールは巧みに彼を罠へかけた。老シャイフを命令へ従わせるには、法外な額を費やさねばならないと悟った。
とはいえ、大した問題ではない。全財宝は自分へ受け継がれる前、ハタッチャのものだった。その一部を彼女の復讐のために使うなら、十分価値がある。宝が事実上無尽蔵であることを知るのは自分だけだ。大男のアラブ人を宝石と黄金の装身具へ埋めても、自分の一生では使い切れないほど残るだろう。
そこでカーラは満足を装い、アンタールの提案へ同意した。機関士のアブダラは縄を解かれ、ナイル川上流への航海を再開するよう指示された。フェダへ着くには三十時間かかる見込みだった。
ローンとウィンストンは甲板へ残ることを許されたが、椅子に縛りつけられ、厳重に見張られた。朝食が配られることになり、カーラは女たちの船室へ盆を運ぶアラブ人へ同行した。昨夜から女たちには手を出していなかった。自分が守らせるのと同じほど安全に、二人が室内へ立てこもったと承知していたからだ。
扉を大胆に叩いて言った。
「入れろ。」
「誰?」とエヴァリンガム夫人が尋ねた。
「カーラ王子だ。」
「何の権利があって、この船に乗り込み、私たちを煩わせるの?」と夫人は続けた。
「中へ入れてもらえれば説明しよう。」
しばらく沈黙があった。
「朝食を持ってきた。扉を開けるのを召使いが待っている」とカーラは続けた。
少し意外なことに閂が外され、アネスが扉を大きく開けた。
「少し待って!」とエヴァリンガム夫人が叫んだ。中へ入ろうとしたカーラは、夫人が船室の中央に立ち、拳銃を向けているのを見た。
「昨夜は驚いて外してしまったけれど」と夫人は平然と言った。「今朝ならほぼ確実に、まっすぐ撃てると思うわ。」
カーラは少し後ずさった。
「なぜ私を恐れる?」
「恐れてなどいないわ」と夫人は答えた。「恐れているのはあなた。それも当然よ。私はあなたを信用していない。掛け値なしの悪党だと、自分で証明したから。私かコンシナー嬢へ言いたいことがあるなら聞きましょう。そうでなければ立ち去ったほうがいいわ。私は非常に神経質で、指は引き金にかかっているの。」
「この汽船は私が占拠した」と告げた。「船上の者は全員、私の囚人だ。」
「なんて芝居がかっているのかしら!」と夫人は笑った。「私たちをどうするつもりか聞いてもいい? 船底に穴を開けて沈める? それとも黒旗を掲げ、現代のナイル川の海賊になるの? さあ、海賊さん。秘密を打ち明けてちょうだい。」
「時が来れば、すべてを知ることになる。おそらく知りたくないことまでな」と彼女の嘲りに激怒して答えた。「だが一つだけ確かだ。コンシナー嬢は――」と、奥で青ざめて立つ少女へ邪悪な一瞥を向けた。「二度と私から逃げられない。カイロへ連れ戻し、私の邸へ厳重に閉じ込める。エヴァリンガム夫人、あなたの命は一本の糸に懸かっている。慎重さと沈黙を信頼できるなら助けてもよい。だが、将来告発される危険を冒せないことくらい、あなたなら理解できるだろう。」
「あなたね」とエヴァリンガム夫人は答えた。「あなた自身の惨めな命こそ、今この瞬間、一ファージングの価値もないわ。この娘や私をもう一度でも煩わせたり、醜い顔をこの船室へ見せたりしたら、その場で撃ち殺すと誓う。セリム、その盆を運びなさい。テーブルへ置いて。それでいいわ。さあ、カーラ王子、姿を消すまで一分あげる。」
一分も必要なかった。怒りで顔を歪め、自分を見事に退けた女を呪いながら、一瞬で消えた。
甲板でシャイフと会った。
「機関士に船を急がせろ」と言った。「アブ・フェダ山へ着くまで、昼夜を問わず進み続けるのだ。」
「承知した」とシャイフは答えた。「兄弟よ、私もあなた以上に待ちきれん。急いでいないのは、我々が刃を研ぐのを見ていた囚人たちだけだ。」
第二十五章 青銅の閂
老セラはその日も翌日も、丘の見張り場で忠実に監視を続けた。退屈な時間は、大切な箱からときどき紙巻き煙草を取り出して慰めた。
二日目の正午過ぎ、彼女はタドロスのもとへ急いだ。
「来るぞ」と言った。
ドラゴマンは跳ね起きた。
「どちらから?」
「川下だ。汽船に乗っている。半時間もすれば船着き場へ着く。」
「すぐ戻ってください」とタドロスは命じた。「上陸するまで待ち、それからすぐ私へ知らせるのです。私はハタッチャの家にいます。」
セラは従った。ドラゴマンが驚いたことに、ネフティスも母親について丘へ向かった。老女が戻ってくると少女は我に返り、熱のこもった会話とドラゴマンの命令から、カーラが来るのを理解したようだった。しかし何も言わず、母を追って急ぎ、川を見渡せる高台で隣に陣取った。
タドロスはハタッチャの家へ駆けた。ネフェルトのあばら家に閉じ込められることへ反発したコンシナーが、その朝からこちらに居座っていた。村人は誰も不気味なアーチをくぐろうとしないため、こちらも同じくらい安全な隠れ場所だった。子爵が人目につかない限り、タドロスに異存はなかった。しかし暗い部屋には気を紛らわせるものがほとんどなく、コンシナーは、惨めな待ち時間を耐えても約束の報酬に見合わないのではないかと考え始めていた。そのとき、待望の行動の時が来たと共謀者が告げに現れ、心から安堵した。
「一刻の猶予もありません」とタドロスは言った。「早く葦の下へ!」
子爵はすぐに乾いた葦の下へ潜り込んだ。ドラゴマンは頭が少し高くなって壁の石へ寄りかかる姿勢を取らせた。それによって、疎らに置かれた覆いの隙間から、部屋のあらゆる場所を観察できた。
安全に隠すと、タドロスは後ろへ下がり、葦を批判的に調べた。最近動かされたとカーラに疑われないよう確認したのだ。配置は申し分なかった。隠れていると知っていても、コンシナーの姿は自分にさえ見えない。
「居心地はどうです?」
「あまりよくない。」
「つまり、その姿勢で一時間以上、静かにしていられますか?」
「大丈夫だ」とコンシナーは葦の下から答えた。
「では私は行きます」とタドロスは告げた。「行動には十分注意してください。次の一時間に起きることへ、二人の財産が懸かっています。一つの間違いも許されません。私は通りと、その向こうの砂漠を見張ります。では、幸運を!」
家を出ると、内側のアーチへぼろぼろの敷物を垂らし、ネフェルトの小屋へ渡った。
ほどなくセラが駆けてきた。
「上陸して、こちらへ来る」と報告した。
「結構。家へ帰ってください。」
「煙草が全部なくなった。」
彼はもう一箱投げた。女はすぐ自分の戸口へ消えた。ネフティスは一緒でなかったが、そのときタドロスは少女のことを忘れていた。
ネフェルトの表部屋へ忍び込み、窓代わりの穴から、向かいにあるハタッチャの住居のアーチを見られる位置で、闇へ身を隠した。
カーラは狭い通りへ入り、用心深く辺りを見回した。好奇心の強い土着民が一人もいないことを喜んだ。シャイフと一味はダハビーヤと囚人を支配下に置き、カーラが報酬を持って戻るのを苛立ちながら待っている。ゆえに、闇に動きを隠してもらうことなく、直ちに秘密の墓へ入らなければならない。しかしフェダの住民は鈍く、無気力だ。自分を覗き見ることはあるまい。
指にはめた指輪を誇らしげに見た。アフトカ・ラーの護符は実に強力だった。望みをすべて叶え、今も彼を守っている。この機会に先祖の墓へ戻すべきだろうか? 永遠にミイラとともに置くよう懇願し、持ち出す者には恐ろしい災厄が降りかかると脅した、あの古の人物のもとへ? なぜカーラが貴重な「幸運の石」を、山中の地下牢へ置かねばならない? なぜ持ち主へ授ける力を、自ら手放さねばならない? 冥界でとうに忘れ去られたアフトカ・ラーには、もはや役立たない。しかしカーラにはさまざまな形で役立つはずだ。そうだ。自分勝手にもミイラとともに残したがった死人の懇願と呪いに逆らい、持ち続けよう。
いつの日か、何年も先になれば、取り出した石棺へ石を戻すかもしれない。だが今ではない。奇妙な宝石をもう一度見ると、その瞬間はひときわ明るく見え、あらゆる方向へ炎の舌を放っていた。呪いだと? ヘンフ! 世界で最も偉大な幸運の護符が自分のものなのに、なぜミイラの呪いなど気にかける必要がある?
住居のアーチへ滑り込み、背後の敷物をぴたりと閉じた。タドロスは一挙一動を見届け、安堵のため息をついた。少なくとも当面、この冒険は自分よりコンシナーの手に委ねられている。発見される危険を負うのも子爵だ。
ドラゴマンは土の長椅子へ座り、アーチを見つめ続けた。やがてネフティスがこっそり姿を現した。猫のように慎重な足取りで、石のアーチの下に低く身を屈めている。敷物をめくろうとはせず、仕切りのすぐ外で地面へしゃがんだ。タドロスは興味深そうに観察し、片手が胸元へ差し込まれ、何か武器でも握っているように見えることへ気づいた。
短刀か? おそらく。ネフティスは不当な扱いを受けた。カーラを憎むのも無理はない。ドラゴマンは割って入り、彼を救うべきか? 何のために? 少女が斬りつける頃には、王家の御方の秘密はコンシナーのものになっている。そのあとなら――ネフティスが、秘密の発覚に伴う厄介事をすべて片づけてくれるだろう。明らかに、干渉する価値のある事態ではなかった。
そのあいだコンシナーは、カーラが入ってきたことと、覗き見を防ぐため敷物を入念に留めたことの両方に気づいていた。敷物は光の大半も遮った。だが暗さに目が慣れていたイギリス人より、エジプト人のほうが不自由した。
カーラは手探りで壁沿いに秘密の窪みへ進まねばならなかったが、正確な場所を知っており、すぐに見つけた。コンシナーは、彼がそこから奇妙な形の刃を持つ細身の青銅の短刀と、古風な油灯を取り出すのを見た。それを持って反対側の壁――山に接して築かれた壁――へ近づき、一つの石を力強く押した。
石は内側へ開いた。密偵の目に、その先は闇しか映らなかった。しかしまず、隅から開口部まで石の数を数え、それが三段目の石積みにあると確認した。そのときにはカーラは中へ入り、穴を閉じていた。
コンシナーは興奮のあまり息を荒らげていた。大発見はいとも簡単になされた。カーラが出て村を離れるまで待ちさえすれば、自分も秘密の墓と宝物庫を訪ねられる。
だが時がゆっくり過ぎていくにつれ――一瞬一瞬が引き延ばされ、何時間にも思えた――コンシナーは不安になった。カーラがどこへ行こうと追う必要がある、とタドロスが強調していたことを思い出した。秘密が表面に見えるものだけとは限らない。
ためらって貴重な時間を無駄にしたのではないかと恐れ、葦の覆いを払いのけ、壁へ近づいた。石を数える必要すらなかった。長いあいだ見つめていたため、カーラが触れた正確な場所を覚えていた。
押すと巨大な石が再び奥へ開いた。彼は先ほどの男と同じように中へ入り、闇と向き合った。
ドラゴマンはこうなる可能性を予測し、抜かりなく共犯者へ蝋燭を持たせていた。コンシナーは火をつけ、急いで戻る必要が生じても脱出に苦労しないよう、石の入口を少し開けたままにした。それから山中へ続く数本の通路を慎重に探索し始めた。
間違った道を進んで時間を浪費したが、ついに燃え尽きたマッチを見つけた。カーラがランプへ火をつけた際、無造作に捨てたものだ。それは岩の間を延びる、粗く不気味な横穴の入口に落ちていた。
それでもコンシナーは跡を追った。手探りでよろめきながら進み、ほとんど行き止まりになったところで、崖の中に設けられた円形の扉へ行き着いた。扉は大きく開いていた。その先には、人の手で山の奥深くへ造られた通路が続いていた。
子爵は足を止め、扉を念入りに調べた。非常に巧みに造られ、開口部へ正確にはまっている。ばね仕掛けで動く巨大な青銅の閂が六本、縁に沿って並び、一つだけの蝶番も巨大で、同じく純青銅製だった。だが、扉を開くための鍵穴もレバーも見当たらない。外側は不規則な岩肌で、通路の側面と調和していたが、縁と内側の表面は鑿で丁寧に削られていた。枠を調べると、閂を受ける青銅の穴が崖へしっかり埋め込まれている。扉を閉めれば、閂が自動的に掛かるのだと理解できた。では、どうやって開けたのか? それは解けない謎だった。カーラは扉を解錠したあと、不注意にも秘密の穴から短刀を抜き、墓の中まで持っていったからだ。無謀な行為だった。万一通路内で短刀を落とせば、それは宝物庫に現存する唯一の鍵なので、二度と墓へ入れなくなる。それに短刀を穴から抜いても無意味だった。ハタッチャが以前カーラへ説明したとおり、この扉は内側から開けられないのだ。
エジプト人はこの通路を進んだに違いないとコンシナーは確信し、用心深く扉をくぐった。長くまっすぐな道が下方へ傾斜し、さほど進まないうちに空気が濃く、息苦しくなった。それでもカーラが進めた場所なら自分も行けると考え、蝋燭を頭上に掲げ、可能な限り速く歩き続けた。
その頃エジプト人は、広大なミイラの間へ達していた。急いでいたため青銅の灯明には一つも火をつけず、手にした小さなランプの揺らめく芯が放つ薄暗い明かりだけを頼りにしていた。ハタッチャとティ・アテンの遺体にはほとんど目も向けず、並ぶミイラ棺の間を急いで部屋の奥へ向かった。そこには威厳に満ち、堂々たるアフトカ・ラーの巨大な石棺が立っていた。カーラがランプを側面へ近づけ、宝物庫への道を開く孔雀石の板の秘密の仕掛けを探すと、千の宝石が揺らめく炎の中で不気味に輝いた。
抗議の呻きにも似た音を立てて石が横へ滑った。そこで初めて、恐ろしい周囲の様子を急に認識し、エジプト人はぎくりとした。
だが自制心を取り戻し、呟いた。「大いなる祖先の霊が、護符を失ったことを嘆いているのかもしれぬ。遠い冥界から霊魂が這い戻れたなら、間違いなく幸運の石を返せと要求するだろう……まだだ、アフトカ・ラー!」と嘲るように大声で呼びかけた。「呪いはあと一年取っておけ。そうすれば必要なくなる。今はおまえより私のほうが護符を必要としている!」
そう言って開口部へ這い込み、階段を下りて下の部屋へ入った。二枚の帆布袋を持ってきており、一方には、辺りへ散らばる装身具のうち、最も粗末で価値の低いものを詰め始めた。それでもシャイフ・アンタールへの謝礼は、働きの価値をはるかに上回っていた。狡猾なアラブ人をこれほど高く買収せねばならないことに、カーラは呻いた。
もう一枚の袋には、自分の宝を入れるつもりだった。恐ろしくなり始めたこの陰鬱な場所へ何度も足を運ばずに済むよう、巨大な宝石の中でも最も希少なものと、黄金の装身具の中でも最も豪華なものを選び、すべて一緒くたに放り込んだ。袋は溢れんばかりになり、中身を揺すって落ち着かせなければ、口を縛れないほどだった。
持ち上げて運ぼうとすると、二つの袋は重かった。青銅のランプの鎖を灰色の上着のボタンへ留め、前方へ吊るした。それから両脇に荷物を抱え、階段を上り、開口部から上の部屋へ足を踏み入れた。
その瞬間、宝の重みがずれた。よろめいたカーラは、アフトカ・ラーの巨大な石棺へ激しく倒れ込んだ。その衝撃で、黄金のイシス像が置かれていた場所からぐらりと傾いた。像はカーラの胸へぶつかってランプをひっくり返し、完全な闇に閉ざした。それから跳ね返り、彼の手を捉えて墓の大理石の側面との間で押し潰した。鋭い痛みに叫び声を上げ、気が遠くなり、吐き気を覚えながら石棺の石へしがみついた。闇の中で動かず、胸像が足元の開口部へ落ち、階段を一段ずつゆっくり転がり、最後には虚ろな音を立てて下の宝物庫へ落ち、幾時代もかけて蓄積された富の山へ加わるのを聞いていた。
カーラは震えた。恐るべき出来事、包み込む闇、静寂の場へ響いた轟音、そのあとに続く張り詰めた静けさ――すべてが共謀して彼の神経を打ち砕き、心を恐怖で満たした。袋は手から落ちていた。傷ついた手を上げ、指先で触れ、突然恐怖の叫びを上げた。祖先の貴重な「幸運の石」を留めた指輪が衝撃で壊れ、護符が消えていた。
消えた! ならば呪いが降りかかったのだ。今この瞬間にも呪われ、すぐそばにはアフトカ・ラーの恐ろしい霊が立ち、闇の中で嘲笑い、彼の失敗を喜んでいるかもしれない。
全身を震わせながら膝をつき、湿った石の上をあちこち這い始めた。目を暗闇へ見開き、わずかな突起にも指を伸ばし、この窮地で唯一自分を守ってくれる驚異の石を再び見つけようとした。呪いはすでに降りかかっている。しかし、その恐るべき力に抵抗するのだ。抵抗しなければならない。今屈服すれば、将来も運命から逃れることはできない。石を――石を見つけなければ! どこか、この広大な死の部屋に転がり、彼に拾われるのを狡猾に待っているはずだ。
カーラの本性と切り離せなかった冷淡さは、完全に消え失せた。幾世紀もの血から受け継いだ迷信的な恐怖が心臓をしっかり掴み、その奴隷にしていた。四つん這いになり、無駄な捜索であちこち這い回りながら、意味のない言葉を呟いた。小さな羊皮紙に記された警告、幸運の護符を奪う者へ祖先がかけた厳粛な呪い。それだけが、今の災厄によって突如理性を失い、制御不能となった頭を占めていた。
闇は重苦しかった。黄金の胸像が宝物庫へ転がり落ちて以来、物音一つない。隠された導管から空気が供給されているにもかかわらず、淀み、ミイラの瀝青臭が充満しているように思えた。沈黙と死んだ空気と闇が共謀して窒息させようとしているように感じ、カーラは震える身体を引きずった。やがてランプを見つけたが、油はこぼれ、芯も消えていた。マッチを擦るという考えは浮かばなかった。
「石がここにあるなら」と彼は考えた。「暗闇の中でも炎の舌が見えるはずだ。私から逃れることはできない。見つけるまで探さねば。」
アフトカ・ラーの巨大な石棺の周囲を二度這い回り、用心深く手探りしながら、見開いた目で闇を睨んだ。そのとき、ついに努力が報われた。目の前を炎の筋が走り、消えた。さらにもう一本。動きを止め、凝視した。かすかな青い雲が現れ、そこから炎が放射された。あるときは深紅、次には硫黄のような黄色、そして純白へ変わる。しかし炎は常に中央の雲から激しく走り、その雲は徐々に形を成し、驚異の石の不規則な長円形を描き出した。
光は明らかに強くなり、炎の舌はより速く、鮮やかに走った。周囲を照らし、アフトカ・ラーの墓の輝く端を浮かび上がらせた。
カーラは恐怖にも似た驚きで見つめた。護符は、短刀でこじり取った三重の黄金の輪の真下にある床へ転がっていた。不法な持ち主のもとから逃れただけでなく、古代のエジプト人が最初に置いた場所へ戻り、魔法の輝きでカーラを嘲笑っていた。
手を伸ばせば掴めた。だがアフトカ・ラーの呪いへの恐怖があまりに大きく、悪魔的な宝石から身を引きたい衝動に駆られた。
なんという輝きだ! 石棺と、その向こうの壁を照らしている。床へ幅広い黄色い光の筋を投げている。両手両膝をついて這いつくばるカーラ自身まで照らしている。普通の宝石にできることではない。魔術だ。これは――
地下室中へ恐ろしく反響する悲鳴を上げ、立ち上がった。肩越しの一瞥によって、奇妙な光の秘密が明らかになったのだ。
部屋の奥に男が立ち、火のついた蝋燭を頭上に掲げていた。身じろぎもせず、宝石をちりばめた墓の前で這いつくばるエジプト人を興味深そうに見つめている。
だが今度は、カーラの悲鳴へ驚愕の叫びを返し、思わず逃げるように身を翻した。エジプト人は立ち上がり、急速に距離を詰めた。
沈黙するミイラの列の間をカーラが突進するあいだ、コンシナーはどうすべきか決められず、茫然と待っていた。やがて危険を悟ると、蝋燭を地面へ叩きつけ、通路を全速力で駆け戻った。
そのため再び闇へ沈んだものの、カーラはイギリス人よりはるかに道を熟知し、一瞬もためらわず追跡した。アフトカ・ラーの呪いも、護符も、すでに忘れていた。他人が秘密を知ったのだ。宝の安全を守るには、侵入者を生かして墓から出すわけにいかない。
一方コンシナーは、状況を理解するのが遅かった。それでもエジプト人が悪意を持っているのは間違いなく、脱出するには長く狭い通路を上るしかない。逃げる途中、書庫とミイラの間を隔てる巨大な柱へ激突し、横穴の壁へ跳ね返されて激しく地面へ倒れた。
たちまちカーラが飛びかかり、膝で子爵の胸を押さえ、細く鉤爪のような指を敵の喉へ絡ませた。
しかし格闘となれば、イギリス人も侮れない。カーラが片手を離し、胸元の青銅の短刀を探した瞬間、コンシナーは腰へ腕を回して掴み、軽々と投げ飛ばした。二人の体勢が逆転し、大柄な身体が華奢なエジプト人の上へ乗り、その動きを封じた。短刀を見つけられなかったカーラは、再び強靭な指で喉を掴んだ。
この絶体絶命の窮地で取れる手段は一つしかなかった。コンシナーは敵の頭を持ち上げ、石の床へ叩きつけた。エジプト人の握力が緩み、意識を失った。子爵は死をもたらす抱擁から身を引き剥がし、ゆっくり立ち上がった。頭がぐらつき、短く喘ぎながら、しだいに呼吸を取り戻した。
しばらく壁へ寄りかかって身体を支えた。それから気力を奮い起こし、岩壁へ片手をつけて道を探りながら、よろよろと通路を進んだ。
しかしさほど進まないうち、衣擦れの音がして、カーラが息を吹き返したことを知らせた。恐怖の状況で鋭敏になった耳が、敵が起き上がったことを捉え、追ってくる足音を聞いた。
コンシナーはすでに、恐怖に駆られて可能な限り速く退却していた。深い闇の中を進む途中、何度か岩の横穴へ激しくぶつかり、倒れそうになった。だが大部分は滑らかでまっすぐな道だった。エジプト人は追いついてこないようだった。コンシナーが首を絞められて朦朧としているのと同じく、カーラも頭を打たれて意識が定まらないのだろう。
こうして二人は、息苦しい空気の中を喘ぎながら進み続けた。突然コンシナーは岩の行き止まりへ正面から激突し、半ば気を失って床へ倒れた。カーラの足音が聞こえ、エジプト人が少しずつ近づいているとわかった。茫然としながらも、突然の死が迫っていると悟った。最後の力を振り絞って立ち上がり、円形の開口部から転がり出ると、残った力のすべてを使って扉を叩き閉めた。
閂が穴へ飛び込む鋭い音と、閉じ込められたカーラのくぐもった恐怖の叫びを聞いた。
自分のしたことに心底怯えながらも、再び立ち上がり、外側の回廊へ通じる入口を目指して急いだ。
この自然の通路は、ある程度までは人工の通路と同じように床が滑らかだった。粗い部分へ出る前に、コンシナーは前方にかすかな明かりを見つけた。部屋の壁に開けたままの穴から差し込む光だった。
落ち着きは今や完全に失われていた。発見されたとき、臆病さはあますところなく露呈しており、青銅の閂が敵を閉じ込めた今でさえ、追跡から安全だとは確信できなかった。カーラの絶望的な叫びが耳に残るなか壁へ着き、開口部を通り、さらに用心して背後の石を元へ戻すと、恐慌状態で部屋を横切った。
ネフティスは近づく足音を聞き、カーラだと思った。男が敷物を引き剥がし、アーチから飛び出した瞬間、少女は立ち上がり、憎しみを込めて手を突き出した。
コンシナーは呻き声を上げて足元へ倒れ、硬い地面を流れる血で濡らした。タドロスが助けに駆けつけたときには、すでに死んでいた。
犠牲者が共犯者だと確認したドラゴマンは、絶望して取り乱した。住居へ駆け込み、不安げに辺りを見回した。彼の目には、部屋は以前に百回見たときとまったく同じように映った。カーラの姿はなく、タドロスがあれほど巧みに暴こうと企てた秘密は、永遠に失われてしまった。
「畜生、ネフティス!」とアーチへ戻って叫んだ。「殺す相手を間違えて、俺の財運を永遠に台無しにしたな!」
だが少女は消えていた。母親の小屋へ戻り、静かに織機の前へ座り、杼を動かす仕事を再開していた。

コンシナーは呻いて彼女の足元へ倒れ、流れ出す血で硬い地面を濡らした
第二十六章 ドラゴマンの勝利
シャイフのアンタールは、忍耐が尽きるまでカーラを待った。それからダハビーヤを離れ、砂地を越えてフェダへ向かった。約束の報酬を持って王子が戻るのを、何が遅らせているのか突き止めるためだった。アンタールには、このあばら家の集まりが自分の村と比べてみすぼらしく、魅力に乏しく見えた。この丘に宝の墓があるとも思えない。フランス人やイタリア人の発掘者が隅々まで調査し、鰐のミイラを収めた穴をいくつか見つけただけだと知っていた。
シャイフは突然疑い始めた。カーラの約束は、真実にしてはあまりに大げさだった。きっと初めからアンタールを騙し、報酬なしで働かせようとしたのだ。確かにカーラはカイロで裕福だと評判だった。だが相続した財産など、とっくに使い果たしていてもおかしくない。一つだけアンタールが確信していたことがある。エジプト人の王子は直ちに宝を差し出さねばならない。さもなくば、騙されたと考えたシャイフは、自分のために少しばかり復讐するだろう。
そう考えながら丘の角を曲がると、待ち構えていたタドロスと鉢合わせした。ドラゴマンは、銀と青の華麗な胴着のポケットへ両手の親指を入れていた。落胆した姿勢で足を大きく開いて立ち、表情は悲しげで不満そうだった。
「ほう」とシャイフは唸った。「カーラが殺せと言った男ではないか!」
「疑いありません」とタドロスはおとなしく答えた。「働いて得た賃金を払うより、人を殺すほうがずっと簡単ですからね。」
「金を借りているのか?」とアンタールは鋭く問い詰めた。
「ええ。今となっては、もう受け取れません。」
「なぜだ?」
「聞いていないのですか? カーラ王子は数時間前にこの村へ来ましたが、カイロで十数件もの犯罪容疑がかかっており、警察隊長が待ち受けていたのです。」
「何だと! 貴様が警察を呼んだのか?」とアンタールは怒って叫んだ。
「私が? 馬鹿な! 私は金を受け取りに来たのです。しかし警察はカーラを南へ連れていきました。アシュートから来る兵士の一隊と合流するためです。まもなく大勢でここへ戻り、カーラの行いのせいで厄介事に巻き込まれたウィンストン・ベイを救出するでしょう。」
「嘘をついているな」とシャイフは断言した。「役人を我々へ差し向けたのは貴様だ。裏切り者め!」
タドロスは傷ついたような顔をした。
「シャイフ、あなたとは長い付き合いです」と彼は言った。「私はいつでも正直だったでしょう。警察とは何の関わりも持ったことがありません。しかし政府がウィンストン・ベイを見守り、敵から守るのを怠るとでも? 兵士とカーラを連れて隊長が戻ったら、本人へお尋ねください。もうすぐ来ます。ドラゴマンのタドロスは、自分がここへ来たことに何の関係もないと教えてくれるでしょう。」
シャイフは落ち着きなく辺りを見回した。
「すぐ来ると言ったか?」
「いつ来てもおかしくありません。どうやらウィンストン・ベイのダハビーヤで問題が起きており、兵士たちが事態を正すそうです。」
アンタールは罠にかかった。大半の土着民と同じく騎馬警察をひどく恐れ、その一隊と向き合う気などなかった。急いで川を見下ろす丘の端へ走り、指を口へ入れて鋭く口笛を吹き、仲間へ合図した。
たちまち部下たちが遠くの船から群れをなして飛び出し、砂地を駆けてきた。シャイフは合流すると、一団を率いて北へ向かい、ほどなく険しい山の岩場へ姿を消した。
タドロスは、あまりに容易な勝利へ腹を抱えて笑いながら、最後のアラブ人が見えなくなるまで眺めていた。それからダハビーヤへ歩いていった。黄昏が深まるなか囚人たちの縄を切り、大仰な言葉を連ねて、自分が敵を打ち破ったのだとウィンストン・ベイの一行へ請け合った。自分の知略と勇気のおかげで命が助かったのだ、と。
「皆さんは空気のように自由です」と彼は言った。「もう何も恐れる必要はありません。これからは私がそばにおります。」
「カーラはどこだ?」とウィンストンは尋ねた。
タドロスにはわからなかった。しかし、宝物庫の中から戻る前にコンシナーがエジプト人を殺したのではないかと疑っていた。カーラの不可解な失踪は、ほかに説明のしようがない。子爵の名を出せば、その殺人によってネフティスと自分まで厄介事へ巻き込まれかねないため、最初の嘘を貫いた。
「カーラはこちらへ、アラブ人どもはあちらへ逃げています」と尊大に言った。「この驚くべき離れ業をどう成し遂げたか語るには、私はあまりに謙虚です。しかし、驚異的な知恵と成功であったことは認めていただかねばなりません。皆さんの利益へ忠実であり続けたことで、恐ろしい運命からお救いしたのです。」
ウィンストンは答えなかった。ちょうどそのとき、アネスを固く抱き締めるのに忙しかったのだ。エヴァリンガム夫人は潤んだ目と微笑む唇で、幸福な二人を見守っていた。
だが老ローン卿は、救出者の働きには、もっと形のある謝意がふさわしいと思った。
「おまえは勇敢な男だ、タドロス」と言った。
「まったくです、閣下」とドラゴマンは真剣に同意した。
「カイロへ戻ったら、ふさわしい報酬を与えよう。」
タドロスは嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます、閣下。私はそれだけのことをいたしました。」
「今は」と閣下は続けた。「結婚式を挙げるため、ルクソールへ向かう。」
「タドロスをドラゴマンにすれば」とエジプト人は悠然と紙巻き煙草へ火をつけながら言った。「不可能なことなどありません。」
公開日: 2025-11-28